説明

オーガ式製氷機

【課題】オーガ式製氷機において、製氷効率の向上、製氷機構部および製氷機自体の小型化、製造コストの低減および製氷水の安定供給等を図る。
【解決手段】オーガ式製氷機は、冷凍回路により冷却される冷凍ケーシング33および回転刃50を有するオーガ34からなる製氷機構部32を備え、製氷機構部32内に製氷水を供給して氷を生成させ、回転駆動するオーガ34の回転刃50により氷を剥離して搬送する。冷凍ケーシング33には、製氷水を貯留する製氷水貯留部144が設けられ、製氷水貯留部144の内部に、オーガ34を製氷水に浸漬するよう配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガ式製氷機に関し、更に詳細には、冷凍回路により冷却される製氷面を有する冷凍ケーシングおよび該製氷面に臨む回転刃を有するオーガからなる製氷機構部を備えたオーガ式製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、オーガ式製氷機を、製氷機構部を破断して示した概略構成図である。このオーガ式製氷機10は、ハウジング11の上部に配設された冷凍ケーシング13および該冷凍ケーシング13の内側に配設されたオーガ(回転刃体)14からなる製氷機構部12を備えている。またオーガ式製氷機10は、冷凍ケーシング13の上部に配設された固定刃15と、前記オーガ14を所定の回転速度で定速回転させるギヤードモータ等の駆動手段16と、給水パイプ18を介して冷凍ケーシング13に連結されるリザーバタンク(製氷水タンク)17とを備えている。前記冷凍ケーシング13は、円筒形状をなして内壁面を製氷面21とするシリンダ20と、図示省略した冷凍回路のエバポレーターであってシリンダ20の外側に螺旋状に巻回された冷却パイプ22と、シリンダ20および冷却パイプ22を外部から被覆する所要厚の断熱材23とを備えている。前記オーガ14は、円筒状本体の外周面に螺旋状に突設された回転刃24を備え、回転刃24の刃先面が前記製氷面21に非接触状態で臨んでいる。
【0003】
このようなオーガ式製氷機10は、リザーバタンク17に補給した製氷水を、給水パイプ18を介して製氷機構部12内(冷凍ケーシング13とオーガ14との間)に供給したもとで、冷凍回路により冷凍ケーシング13のシリンダ20を冷却することで、該シリンダ20の内部壁面である製氷面21に氷が生成される。そして、駆動手段16を駆動してオーガ14を所定方向へ定速回転させると、前記回転刃24が製氷面21に生成された氷を剥離しながら上方へ搬送する。そして上方へ搬送された氷は、連続して搬送される下方の氷に押されて固定刃15で収集された後、製氷機構部12の上方に連結された氷放出シュート25に押し出されて図示省略した貯氷室へ移送される。このようなオーガ式製氷機に関しては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平8−3897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図10に示した従来のオーガ式製氷機10では、製氷機構部12とリザーバタンク17とが離間して配置されて給水パイプ18で連結されており、リザーバタンク17および給水パイプ18の各外表面が外気に接している。このため、リザーバタンク17の周辺温度が上昇した場合には該リザーバタンク17に貯留されている製氷水の温度が上昇し、暖められた製氷水が製氷機構部12内に供給されるようになるので、製氷効率の低下を招来する問題を内在していた。また、冷凍ケーシング13の温度上昇を防止して製氷効率を高めるには、製氷機構部12の外周面に設けられる断熱材23の厚みを大きく設定しなければならず、製氷機構部12の大型化を招来すると共に、当該断熱材23の材料費および成形工数等の増加により製造コストが嵩む問題を内在していた。更に、リザーバタンク17が製氷機構部12と離間して配置されているため、オーガ式製氷機10全体のサイズも大型化していた。更にまた、リザーバタンク17内の空気が前記給水パイプ18内に移動して溜まることがあり、リザーバタンク17から冷凍ケーシング13への製氷水の安定供給に支障を来たすこともあった。
【0006】
そこで本発明では、前述した従来の技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、製氷効率の向上、製氷機構部および製氷機自体の小型化、製造コストの低減および製氷水の安定供給等を図るようにしたオーガ式製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に記載の発明は、
冷凍回路により冷却される製氷面を有する冷凍ケーシングおよび該製氷面に臨む回転刃を有するオーガからなる製氷機構部を備え、前記製氷機構部内に製氷水を供給して前記製氷面に氷を生成させ、回転駆動する前記オーガの回転刃により前記氷を剥離して搬送するオーガ式製氷機において、
前記冷凍ケーシングに、前記製氷機構部に供給される前記製氷水を貯留する製氷水貯留部を設け、
前記製氷水貯留部の内部に、円筒形の前記オーガが内外の両周面を製氷水に浸漬するよう配設されたことを特徴とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、冷凍ケーシングに設けた製氷水貯留部内に貯留されている製氷水は、冷却された該製氷水貯留部に貯留されている間に冷却され、適宜冷却された製氷水が製氷のために供給されるようになるので、冷凍ケーシングの製氷面における氷の生成が促進されて製氷効率の向上が図られる。また、冷凍ケーシングに製氷水貯留部を設けたので、オーガ式製氷機全体の小型化が図られる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記製氷水貯留部は、前記冷凍ケーシングに対向するよう延在して該製氷水貯留部の側面をなす壁部と、この壁部の下部から半径方向に延出して該製氷水貯留部の底面をなす底部と、この底部に載置される前記冷凍ケーシングとから構成され、該製氷水貯留部にリザーバタンクを介さず製氷水が直接供給されることを要旨とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記オーガは、前記冷凍ケーシングにおける円周面をなす製氷面に対応して円筒形に形成され、
前記オーガは、前記回転刃が設けられる第1の周面と反対側の第2の周面を、該オーガの半径方向の移動を規制するよう軸部で支持する軸受部により、軸線を上下方向に延在させて回転自在に保持されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、製氷に際して、第1の周面に設けた回転刃より受けるラジアル荷重を、第1の周面と反対側の第2の周面を支持する軸受部の軸部で適切に受けることができる。またオーガは、製氷水貯留部の内部に貯留された製氷水に浸漬され、オーガと軸受部との間に存在する製氷水が潤滑剤として機能するので、オーガおよび軸部の摩耗を低減することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記製氷水貯留部は、前記軸部を挟んで前記オーガの周面と対向する壁部が、該軸部から隙間をあけて延在するよう設けられ、前記軸部の上端において前記オーガと軸部との間から前記隙間に連通するよう構成されることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、軸部を挟んでオーガの周面と対向する壁部が軸部から隙間をあけて延在するよう構成してあるので、該壁部の断熱が図られる。また、軸部の上端においてオーガと軸部との間から製氷水貯留部に連通する構成であるので、軸受部の内側から排出された製氷水およびオーガに搬送される氷に付着している水が外部に漏出することはなく、再び製氷水として製氷水貯留部に戻すことができる。この際、摺動面間の異物をスムーズに排出することができる。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記底部は、前記壁部に連設する端縁と反対側の端縁を該底部に載置した前記冷凍ケーシングの側方に延出させて、該冷凍ケーシングを伝う結露水を受けるドレン部が設けられることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、冷凍ケーシングを伝って流下する結露水を製氷水貯留部に設けられたドレン部で受けて、結露水の流出を防止することができる。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記製氷水貯留部は、該製氷水貯留部の底面をなす底部が前記冷凍ケーシングと比較して熱伝導性が低くなるよう設定され、
前記製氷水貯留部は、前記底部を取付架台に載置して、該底部に載置した冷凍ケーシングと該取付架台とが底部を挟んで固定されることを要旨とする。
請求項6に係る発明によれば、底部が断熱部材として機能するので、冷凍ケーシングと外部との熱交換を抑制でき、また取付架台の結露を抑制することができる。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記冷凍ケーシングは、前記取付架台の下方から前記底部を介して下端面に対してネジ固定されることを要旨とする。
請求項7に係る発明によれば、冷凍ケーシングの組付けが容易である。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記オーガは、前記冷凍ケーシングの製氷面との間に製氷水を導く孔部を備えていることを要旨とする。
請求項8に係る発明によれば、冷却される冷凍ケーシングではなく、オーガ側からオーガと冷凍ケーシングの製氷面との間に製氷水を供給することで、製氷水の凍結による供給不良を回避し得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るオーガ式製氷機によれば、製氷効率の向上、製氷機構部および製氷機自体の小型化等を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】前提例に係るオーガ式製氷機を一部破断して示した概略構成図である。
【図2】前提例のオーガ式製氷機の主要構成部材を分離して示した分解斜視図である。
【図3】オーガの構成を上側から見た斜視図である。
【図4】ベース部材の構成を下側から見た斜視図である。
【図5】氷収集部材の構成を上側から見た斜視図である。
【図6】氷収集部材を装備した場合における氷の生成、搬送および放出状態を示したオーガ式製氷機の主要部の説明断面図である。
【図7】氷収集部材を装着しない場合における氷の生成、搬送および放出状態を示したオーガ式製氷機の主要部の説明断面図である。
【図8】実施例に係るオーガ式製氷機を一部破断して示した概略構成図である。
【図9】実施例の別例に係るオーガ式製氷機を一部破断して示した概略構成図である。
【図10】従来例に係るオーガ式製氷機を一部破断して示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るオーガ式製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例と共通する構成を有する前提例のオーガ式製氷機30を一部破断して示した概略構成図であり、図2は、前提例のオーガ式製氷機30の主要構成部材を分離して示した分解斜視図である。前提例のオーガ式製氷機30は、冷凍ケーシング33およびオーガ(回転刃体)34からなる製氷機構部32と、オーガ34を所定速度で定速回転させる駆動手段36と、製氷機構部32が内部に収容されたリザーバタンク(製氷水貯留部)37とを備えている。前提例のオーガ式製氷機30は、後述するように、製氷機構部32がリザーバタンク37の内部に臨み、該製氷機構部32の冷凍ケーシング33およびオーガ34が、リザーバタンク37内に貯留された製氷水に浸漬した状態に配設されている。なお説明の便宜上、水平に配設される後述の駆動手段36が延在する方向を製氷機の左右方向(図1における左方が製氷機の左側、右方を右側)とし、垂直に配設される後述の回転軸56の延在方向を製氷機の上下方向(図1の上方を製氷機の上側、下方を下側)とする。
【0020】
前記製氷機構部32およびリザーバタンク37は、図1に示すように、該製氷機構部32で製氷された氷が貯留される貯氷室105の上部壁面に取付けられるフレーム(取付架台)38の上壁部90に対して下方から固定され、駆動手段36は該上壁部90に対して上方から固定されている。製氷機構部32および駆動手段36は、後述するベース部材39に夫々連結することで、フレーム38に適切に取付けられる。また、前提例のオーガ式製氷機30は、後述するように、剥離後の氷の単位空間当たりの密度を高めることができる氷収集部材35を、オーガ34の上部に着脱自在に装着し得るようになっている。従って、オーガ34の上部に前記氷収集部材35を装着した場合(図1、図6)には、単位空間当たりの密度を高めた氷が生成され、オーガ34の上部に氷収集部材35を装着しない場合(図7)には、単位空間当たりの密度が低い氷が生成されるよう構成されている。なお、ここでいう「単位空間当たりの密度が高い氷」とは、剥離後の氷を氷収集部材35で収集する際に、該氷を適度に押し固めることで得られる所謂「チップ状の氷」を意味し、「単位空間当たりの密度が低い氷」とは、剥離後の氷に含有した余剰の製氷水を分離させた所謂「フレーク状の氷」を意味する。
【0021】
冷凍ケーシング33は、図1および図2に示すように、製氷面となる内部壁面40および外部壁面41を有する所要厚の円筒状に構成され、冷凍回路(図示省略)における冷却パイプ(エバポレータ)42が、内部壁面40と外部壁面41との間で周方向へ螺旋状に配設された構造となっている。この冷凍ケーシング33は、熱伝導性および防錆性等に優れた素材(例えばステンレス鋼等)から形成されており、冷凍回路の運転下に冷却パイプ42内に循環する冷媒により、内部壁面40および外部壁面41の両面が好適に冷却されるよう構成されている。そして、冷凍ケーシング33の上端面には、前記ベース部材39に当該冷凍ケーシング33を固定する第1組付ボルトB1が締結される第1ボルト締結孔47が、円周方向へ所要間隔毎(等間隔)に複数個(前提例では6個)穿設されている。また、冷凍ケーシング33の下端面には、オーガ34の下端部を外側から摺接支持するリング状の支持部材44が配設されている。
【0022】
オーガ34は、図1〜図3に示すように、耐摩耗性および防錆性等に優れた素材(例えばステンレス鋼等)から所要厚の円筒状に形成され、前記冷凍ケーシング33内に収容され得る形状・サイズに構成されている。前提例におけるオーガ34は、上方および下方に開口した円筒状本体の外周面に合計4個の回転刃50が螺旋状に突設されており、冷凍ケーシング33の内側に収容した際には、各回転刃50の刃先面が内部壁面40に非接触状態で近接するよう構成されている。また、オーガ34の上部における円筒中心(回転中心)には、前記駆動手段36の出力部に連結される回転軸56の下端部が一体回転可能に嵌着される支持ボス部52が形成されると共に、該支持ボス部52とオーガ内周面との間に複数(前提例では6本)のスポーク部51が周方向に離間して設けられている。そして、各スポーク部51が配設されたオーガ34の上部内側には、生成された氷の通過を許容する氷通過口53が、各スポーク部51の間に画成されている。また、オーガ34の下部外側には、冷凍ケーシング33の下端に取り付けた前記支持部材44に内側から摺接する支持片54が形成されていると共に、該支持片54には適宜数の通水口55が形成されている。なお前記各スポーク部51は、その長さ方向の略中間部分に段部を設けた形状とされ、支持ボス部52に隣接した側が一段低くなっており、後述する氷収集部材35の装着を許容するよう構成される。
【0023】
ベース部材39は、図1、図2および図4に示すように、冷凍ケーシング33の外形寸法と略同一の外形寸法に形成されたフランジ状の円盤部材であって、その下側に冷凍ケーシング33を組付け得るようになっている。ベース部材39の中心部分には貫通口60が形成され、前記回転軸56の挿通を許容するようになっている。そして、ベース部材39の上面には、前記駆動手段36の係合突部100に嵌合連結される円筒リブ61が突設されている。また、ベース部材39の外周縁に隣接した部位には、当該ベース部材39と前記冷凍ケーシング33とを組付ける第1組付ボルトB1が挿通する第1ボルト通孔62が、同心円上において所要間隔毎に複数個(前提例では6個)形成されている。すなわち各第1ボルト通孔62は、前記冷凍ケーシング33の上端面に形成した各第1ボルト締結孔47に夫々整合するように形成されている。また、前記各第1ボルト通孔62が形成された部位から径方向内側の部位には、当該ベース部材39をフレーム38の上壁部90に固定する第2組付ボルトB2が締結される第2ボルト締結孔63が、同心円上において所要間隔毎に複数個(前提例では6個)形成されている。
【0024】
また、図4に示すように、前記ベース部材39の下面には、冷凍ケーシング33の内壁面に隣接する部位に、下方および回転中心方向へ鋭角状に膨出して傾斜案内面64Aを備えた固定刃64が、同心円上において所要間隔毎に複数個(前提例では6個)形成されている。各固定刃64は、オーガ34の各回転刃50により冷凍ケーシング33の内部壁面40に沿って略垂直上方へ移動した氷を、オーガ34の回転と共に回転することを防止すると共に、前記傾斜案内面64Aによってオーガ34の回転中心方向(水平方向)へ変向させるよう機能する。ベース部材39の下面は、内側部分が外周部分と比べて凹設され、内側部分と外周部分との間に半径方向外側から内側に向かうにつれて上方傾斜するガイド面67が設けられている。このガイド面67は、オーガ34の回転刃50により上方へ搬送された氷を、オーガ34の回転中心側に変向させるよう機能する。なお、前提例の固定刃64は、ガイド面67から突設される。更に、ベース部材39の下面においてオーガ34の上部開口部に臨む部位には、該ベース部材39の中心から外周端方向へ直線状または曲線状に延在する複数の突条片(回転規制片)65が、略放射状に突設されている。これら突条片65は、ベース部材39と後述する氷収集部材35との間に搬送された氷に上方から接触して、該氷収集部材35において収集される当該氷がオーガ34の回転と共に回転することを防止するために機能する。更に、ベース部材39の下面における中心部分には、下方および径方向外方へ膨出する放出案内面66が形成されている。この放出案内面66は、氷収集部材35の後述する氷放出口71に臨むように位置して、氷収集部材35に沿って回転中心方向(水平方向)に移動した氷を、オーガ34の回転と共に回転することを防止すると共に下方向へ変向させ、かつ下方向へ変向した氷を氷放出口71へ送り出すよう機能する。
【0025】
そして、前提例のオーガ式製氷機30は、図2および図5に示すように、オーガ34の上部開口部に氷収集部材35を着脱可能に装着し得るようになっており、この氷収集部材35と前記ベース部材39とにより氷収集部Sを形成するようになっている。すなわち、オーガ34の上部開口部に氷収集部材35を装着した場合(図1、図6)には、剥離後の氷が氷収集部Sに収集されることで、単位空間当たりの密度が高められた氷が生成され、オーガ34の上部開口部に該氷収集部材35を装着しない場合(図7)には、氷収集部Sが形成されていないので、単位空間当たりの密度が低い氷が生成されるよう構成されている。この氷収集部材35は、オーガ34の外形寸法と略同一の外形寸法に形成されたフランジ状の円盤部材であって、オーガ34に組付けた際には該オーガ34の上部開口部を覆蓋するようになっている。そして、氷収集部材35の中心部分には、前記回転軸56が遊嵌状態で挿通して回転可能に摺接する貫通口70が形成され、また貫通口70の径方向外側には、該貫通口70を挟んで2個の氷放出口71,71が略扇状に形成されている。
【0026】
また、氷収集部材35の上面には、該氷収集部材35の外周端から氷放出口71,71に向けて直線状または湾曲状に延在する氷押圧案内片(氷案内部)72,72が突設されている。これら氷押圧案内片72,72は、図5に矢印で表示するように、オーガ34の外周面から回転中心方向に搬送される氷を、回転中心に隣接して設けた氷放出口71,71に向けて押すように機能する。従って、図5に示すように、剥離後の氷を収集する部分である氷収集位置P2が、冷凍ケーシング33の内部壁面40に生成された氷をオーガ34の回転刃50が剥離する氷剥離位置P1(回転刃50の刃先面の位置)よりも、該オーガ34の回転中心に近くなるように設定されている。これにより、氷収集部材35で収集される氷は、オーガ34の回転中心に移動するに従って収集速度が徐々に小さくなるので、氷収集効率が向上するようになる。また、収集される氷がオーガ34の回転中心に向けて移動するため、駆動手段36に対するトルク負荷が軽減されるようになる。なお、各氷放出口71,71の開口サイズを変更することで、氷収集部材35による氷収集度合を調整することが可能であり、例えば開口サイズを小さくするほど、単位空間当たりの密度を高めた氷を生成し得る。
【0027】
リザーバタンク37は、図1および図2に示すように、前記製氷機構部32を収容可能なサイズに形成され、冷凍ケーシング33の外形サイズより大径の外筒部80と、オーガ34の内径サイズより小径の内筒部81と、これら外筒部80および内筒部81の下端間に設けられる底壁部82とから形成されている。外筒部80の上端縁内側は全面的に開口していると共に、内筒部81の上端縁内側も全面的に開口しており、かつ内筒部81の高さは外筒部80の高さと同一または適宜低く設定されている。従ってリザーバタンク37は、最大で内筒部81の開口位置まで製氷水を貯留することが可能となっている。そして外筒部80の上端縁には、径方向外方へ延出しかつ周方向全周に亘って延在するリブ83が形成されており、このリブ83には、当該リザーバタンク37をフレーム38の上壁部90に組付けるための第3組付ボルトB3が締結される第3ボルト締結孔84が、周方向へ所要間隔毎に複数個(前提例では7個)形成されている。また内筒部81は、図1に示すように、オーガ34の内側に突出するようになり、該内筒部81の上端開口部が製氷機構部32におけるオーガ34の氷通過口53に下方から整合して、該氷通過口53から落下放出された氷の氷放出シュートとして機能するようになっている。なお、外筒部80の一部に形成された膨出部85には、図2に示したフロートスイッチ45およびウォータバルブ46が臨むよう構成されている。
【0028】
フレーム38は、前記リザーバタンク37の最大直径より左右方向の寸法を大きく設定した上壁部90と、この上壁部90の左端および右端から夫々垂直下方へ延在し、前記リザーバタンク37の最大高さ寸法より高さ寸法を大きく設定した左縦壁部91および右縦壁部92と、左縦壁部91の下端から左方向へ水平に延出した左支持部93および右縦壁部92の下端から右方向へ水平に延出した右支持部94とを備えている。上壁部90の略中央部分には、前記ベース部材39の円筒リブ61の挿通を許容する円形開口部95が形成されていると共に、該ベース部材39を上壁部90に固定する第2組付ボルトB2の挿通を許容する第2ボルト通孔96が、円形開口部95の端縁に沿って同一円周上に所要間隔毎に複数個(前提例では6個)形成されている。また、上壁部90に設けた第2ボルト通孔96の外側には、前記リザーバタンク37を上壁部90に固定する第3組付ボルトB3の挿通を許容する第3ボルト通孔99が、同一円周状に所要間隔毎に複数個(前提例では7個)形成されている。そして、上壁部90の前端縁および後端縁には、該上壁部90の端縁に沿って左右方向に延在する補強リブ97,97が、該上壁部90に一体的に形成されている。なお、フレーム38の形態は、図2に例示のものに限定されず、製氷機構部32およびリザーバタンク37等の各構成部材を適切に固定保持し得るものであれば、これ以外の形態のものであってもよい。
【0029】
駆動手段36は、例えば減速ギア機構を兼備した電気モータ等であって、図1に示すように、本体下面に突出した係合突部100に臨む出力軸部(図示省略)に、前記回転軸56の上端部が連結されるようになっている。この駆動手段36は、フレーム38の上壁部90に下方から固定された前記ベース部材39の円筒リブ61に対して係合突部100を嵌合させると共に、該ベース部材39の上面に配設された支持ブラケット98に固定することで、フレーム38の上部に対し安定的に固定される。従って、前提例のオーガ式製氷機30は、オーガ34を回転する駆動手段36が製氷機構部32の上方に配設され、駆動手段36がオーガ34の上部に連結されて該オーガ34が懸吊された状態に配設され、よってオーガ34の上部から該オーガ34の内側へ生成された氷を放出落下することが可能となっている。ここで、図1の符号101はベアリングであり、符号102は半円弧状の2つの部材から構成されるスリーブであり、該スリーブ102を回転軸56に設けた嵌合溝に嵌合させることで、オーガ34を固定した回転軸56が下方へ脱落することを防止するよう機能する。なお、駆動手段36の形態はこれに限定されず、オーガ34を所定の回転速度で定速回転させることで、回転刃50による氷の剥離および氷収集部材35による氷の収集を適切に行ない得るようにするものであれば、様々な形態のものが実施可能である。
【0030】
前記各構成部材から構成された前提例のオーガ式製氷機30は、第1組付ボルトB1を、ベース部材39の各第1ボルト通孔62を介して冷凍ケーシング33の第1ボルト締結孔47に締結することで、ベース部材39に対して冷凍ケーシング33が組付けられる。そして、第2組付ボルトB2を、フレーム38の各第2ボルト通孔96を介して冷凍ケーシング33の各第2ボルト締結孔63へ締結することで、フレーム38の下面に対して冷凍ケーシング33が組付けられる。また、オーガ34に形成された支持ボス部52に対して回転軸56を固定した後、ベース部材39の貫通口60に該回転軸56を下方から挿通させることで、冷凍ケーシング33の内側にオーガ34が収容される。そして、オーガ34の回転軸56に駆動手段36の出力軸部を連結させたもとで、図示省略した適宜の固定手段等により、フレーム38の上面に対して駆動手段36を組付ける。最後に、第3組付ボルトB3を、フレーム38の各第3ボルト通孔99を介してリザーバタンク37の第3ボルト締結孔84へ締結することで、フレーム38の下面に対してリザーバタンク37を組付ける。なお、単位空間当たりの密度を高めた氷を生成する仕様の製氷機とする場合には、オーガ34をベース部材39に組付けるに先立ち、該オーガ34の上部開口部に前記氷収集部材35を装着しておく。但し、各構成部材の組付けは、ここに記載の順序に限定されるものではない。
【0031】
このようにして組立てられた前提例のオーガ式製氷機30は、図1に示すように、製氷機構部32の冷凍ケーシング33およびオーガ34が、製氷水を貯留するリザーバタンク37の外筒部80および内筒部81の間に臨み、該リザーバタンク37内に収容されている。そして、リザーバタンク37の内筒部81は、オーガ34の内側に臨んでいる。また、図1および図5に示すように、氷収集部材35の直径がオーガ34の筒体状本体と同一となっており、氷収集部材35の氷押圧案内片72,72による氷収集位置P2は、オーガ34の回転刃50による氷剥離位置P1より、該オーガ34の回転中心に近接している。更に、オーガ34に組付けた氷収集部材35の上面とベース部材39の下面とが所要間隔で対面している。
【0032】
そして、前提例のオーガ式製氷機30は、ウォータバルブ46を介して規定量の製氷水をリザーバタンク37内へ供給した際には、該リザーバタンク37に貯留された該製氷水に、冷凍ケーシング33および前記オーガ34が浸漬された状態となる。すなわち製氷機構部32は、該製氷機構部32内に供給される前の製氷水により、外周面(冷凍ケーシング33の外部壁面41)が包み込まれるよう構成されている。換言すると、前提例のオーガ式製氷機30の製氷機構部32は、リザーバタンク37内に収容されると共に製氷水に浸漬して外気に接触しないため、該製氷水が図10に示した従来のオーガ式製氷機10における断熱材23として機能し、製氷機構部32を低温状態に保温するための断熱材を不要とし得る構造となっている。また、冷凍回路により冷却された冷凍ケーシング33がリザーバタンク37内の製氷水に浸漬されるため、製氷機構部32内に供給される前の製氷水を該冷凍ケーシング33に接触させて適宜冷却し得るようになっている。
【0033】
更に、前提例のオーガ式製氷機30は、図1に示すように、垂直移動する氷を中心方向へ変向させる固定刃64および氷収集部材35が、オーガ34を回転させる駆動手段36に近接した位置に配設されている。すなわち、氷を収集するに際しては、オーガ34の円筒状本体および冷凍ケーシング33に、氷を収集するためのスラスト荷重等が殆ど発生しないため、これらオーガ34および冷凍ケーシング33を頑強な構成とする必要がなく、製氷機構部32の軽量化およびコンパクト化が図られている。また、氷収集部材35による氷収集位置P2が、オーガ34の回転中心に近接しているため、該氷収集部材35による氷の収集に際して駆動手段36に対するトルク負荷が軽減され得る。
【0034】
更にまた、前提例のオーガ式製氷機30は、図1に示すように、製氷機構部32がリザーバタンク37内に収容された状態に配設され、該製氷機構部32がリザーバタンク37の底壁部82から下方に貫通する構造となっていない。このため、製氷機構部32からの製氷水の漏水が発生することはなく、また製氷機構部32とリザーバタンク37との境界部分にメカニカルシール等を施す必要がないため、長期の使用にあっても漏水トラブルが発生し難くなっている。一方、リザーバタンク37は、単一部材として構成されると共に他の構成部材が装着されていないので、第3組付ボルトB3の締付けまたは弛み外し操作だけでフレーム38に対する着脱が可能となっている。
【0035】
次に、前述のように構成された前提例のオーガ式製氷機30の作用につき説明する。なお、ここでは、氷収集部材35を装備して単位空間当たりの密度が高められた氷を生成するオーガ式製氷機30の作用について説明する。
【0036】
ウォータバルブ46を介してリザーバタンク37内に規定量の製氷水を供給すると、図1に示すように、製氷機構部32における冷凍ケーシング33およびオーガ34が、リザーバタンク37内に貯留された製氷水に浸漬され、製氷機構部32内(冷凍ケーシング33とオーガ34との間)にも通水口55を介して製氷水が流入する。この状態で、図示省略した冷凍回路を作動させて冷却パイプ42に冷媒を供給すると、冷凍ケーシング33全体が冷却されて製氷面となる内部壁面40および外部壁面41の両方が冷却される。従って、冷凍ケーシング33の内部壁面40に氷が生成される一方、外部壁面41に接触する(製氷機構部32内に流入する前の製氷水)も適宜冷却される。なお、製氷機構部32に供給される前の製氷水は冷凍ケーシング33に接触しながら適宜冷却されるが、製氷の進行に伴い、ウォータバルブ46を介して常温の製氷水がリザーバタンク37内の水位を一定に維持するように追加供給されるので、該冷凍ケーシング33の外部壁面41に生成される氷は僅かであり、場合によっては氷が殆ど生成されない。ここで、供給される製氷水の温度が低くて、冷凍ケーシング33の外部壁面41における氷の生成が促進され、徐々に成長した氷がリザーバタンク37に接触するおそれがある場合には、冷凍ケーシング33の外部壁面41を少量の断熱材で覆うようにして、該外部壁面41における氷の生成を抑制するようにしてもよい。この場合の断熱材としては、製氷水に浸漬しても問題のない材質のものが採用される。
【0037】
冷凍ケーシング33の内部壁面40に氷が生成され始めると、内部壁面40に生成された氷は、駆動手段36により定速回転するオーガ34の各回転刃50により氷剥離位置P1において順次剥離されると共に、内部壁面40に沿って垂直上方へ搬送される。そして、オーガ34の上端部に到達した氷は、ベース部材39に設けた各固定刃64およびガイド面67により水平方向へ搬送方向が変向され、該オーガ34の回転中心方向に向けて移動するようになる。なお、各回転刃50により上方へ搬送された氷が各固定刃64に接触するに際し、含有されている未氷結の製氷水の一部を氷と分離させる。
【0038】
そして、オーガ34の上端部に到達して各固定刃64およびガイド面67により水平方向へ搬送方向が変向された氷は、図6に示すように、氷収集部材35とベース部材39とにより形成された氷収集部S内を移動し、氷収集部材35の上面に設けた氷押圧案内片72,72およびベース部材39の下面に設けた各突条片65により、オーガ34の回転中心に向けて氷収集部材35の上面を移動する。そして、氷収集部材35の上面を移動する氷は、オーガ34の回転中心に向けて移動する過程で氷収集位置P2において徐々に押し付けられ、単位空間当たりの密度が高められた氷となる。すなわち、氷収集部Sにおいて氷収集部材35の上面に移動した氷は、各突条片65および放出案内面66によりオーガ34の回転に伴う周方向への回転が規制され、この回転規制状態のもとで各氷押圧案内片72,72により側方から押圧されて徐々に収集され、オーガ34の回転中心に向けて移動する過程で単位空間当たりの密度が高められた氷となる。そして、氷放出口71,71に到達して単位空間当たりの密度が高められた氷は、前記放出案内面66により下方向に搬送方向が変更されて氷放出口71,71に向けて押され、該氷放出口71,71からオーガ34の各氷通過口53に向け落下する。なお、各氷放出口71に押し出された氷は、オーガ34の回転軸56、支持ボス部52またはスポーク部51等に接触して折れて落下する。オーガ34の回転中心に隣接した部位から各氷通過口53に落下した氷は、リザーバタンク37の内筒部81内を通過して貯氷室105内へ落下放出する。
【0039】
一方、オーガ34の上部開口部に氷収集部材35を装備せずに氷を生成するオーガ式製氷機30においては、次のように作用する。オーガ34の上方開口部に移動した氷は、図7に示すように、固定刃64の傾斜案内面64Aおよびガイド面67により変向された後、該オーガ34の上部開口部に前記氷収集部材35が配設されていないので(前記氷収集部Sが形成されないので)、オーガ34の内周面に隣接した部位から各氷通過口53に向け自由落下する。従って、オーガ34の内周面に隣接した部位(回転中心から離間した部位)から各氷通過口53に落下した氷は、密度が殆ど高くならない状態で、リザーバタンク37の内筒部81内を通過して貯氷室105内へ落下放出する。
【0040】
従って、前提例のオーガ式製氷機30によれば、次のような作用効果を奏する。先ず、冷凍ケーシング33およびオーガ34から構成される製氷機構部32がリザーバタンク37内に配設されるので、該リザーバタンク37内に貯留した製氷水に冷凍ケーシング33およびオーガ34が浸漬される。従って、リザーバタンク37内に貯留されている製氷水は、冷却されている冷凍ケーシング33の外部壁面41に接触するので、製氷機構部32へ供給される前に適宜冷却され得る。また、リザーバタンク37と製氷機構部32内とが、オーガ34に形成した通水口55により連通されている。これにより、貯留中に適宜冷却された製氷水が製氷機構部32に供給されるので、冷凍ケーシング33の内部壁面40(製氷面)における氷の生成が促進されて製氷効率の向上が図られる。
【0041】
そして、製氷機構部32がリザーバタンク37により被覆されると共に、リザーバタンク37に貯留された製氷水により該製氷機構部32が全体的に包み込まれるので、これらリザーバタンク37および製氷水が断熱材としての機能を発現するようになり、製氷機構部32を低温状態に保温するための断熱材が不要となる。また、冷凍ケーシング33の外部壁面41に、氷の生成を抑制するために断熱材を装着するとしても、これに使用される断熱材は少量でよい。従って、断熱材が不要もしくは少量となるので、断熱材の材料費および成形費用が削減されて製氷機の製造コストを抑え得る利点がある。しかも、断熱材23が不要もしくは少量となるので製氷機構部32の小型化が図られると共に、リザーバタンク37が製氷機構部32の周囲に配設されるので、製氷機自体の小型化も図られる。更に、リザーバタンク37内の製氷水は、オーガ34に設けた通水口55を介して製氷機構部32内へ直接流入する構造であるから、この通水口55に空気等が留まることはなく、リザーバタンク37から製氷機構部32への製氷水の安定的な供給が図られる。
【0042】
更に、前提例のオーガ式製氷機30では、オーガ34を回転する駆動手段36を製氷機構部32の上方に配設し、該駆動手段36をオーガ34の上部に連結して該オーガ34を懸吊する構成としたので、オーガ34の回転刃50により冷凍ケーシング33から剥離した氷を、オーガ34の上方開口部(氷通過口53)から該オーガ34内へ落下放出させることが可能である。従って、図10に示した従来のオーガ式製氷機10のように、生成された氷を、氷放出口を介して氷放出シュート25に押し出す必要がなく、氷の搬送効率の向上が図られる。また、製氷機構部32の上方に配設される氷放出シュートが不要となるので、製氷機の製造コスト低減が期待できると共に、製氷機自体の小型化も期待できる。更に、駆動手段36が氷収集部材35に近接した位置に配設されていて、生成された氷の収集に際してオーガ34および冷凍ケーシング33に作用する応力が大幅に低減されるので、製氷機構部32の小型化および軽量化が期待できる。更にまた、製氷機構部32がリザーバタンク37の底壁部82を貫通した構造となっていないため、製氷機構部32における漏水のトラブルが発生することはなく、また漏水防止のためのメカニカルシール等を施す必要もない。更にまた、リザーバタンク37は単体に構成されると共に、該リザーバタンク37に対して付属の構成部品が装着されていないので、フレーム38に対するリザーバタンク37の着脱作業が簡単であり、製氷機の分解掃除やメンテナンス作業等を行ない易い。
【実施例】
【0043】
図8は、本発明の実施例に係るオーガ式製氷機140を一部破断して示した概略構成図である。実施例のオーガ式製氷機140は、前述した前提例のオーガ式製氷機30と同様に、製氷機構部32の上方に配設した駆動手段36をオーガ34の上部に連結して該オーガ34を懸吊した構成とし、かつオーガ34は同一としたもとで、冷凍ケーシング33の形状を変更したものである。前記冷凍ケーシング33は、オーガ34の内径サイズより小径の筒部142Aと、この筒部142Aの下端部から径方向外方へ延出して当該冷凍ケーシング33の外径と同一外径に形成された底部142Bとからなる円筒状部材142を、該底部142Bの外端縁部を該冷凍ケーシング33の下端部に整合した状態で固定し、製氷水を貯留し得る製氷水貯留部144を当該冷凍ケーシング33に設けた構成となっている。すなわち、オーガ34が製氷水貯留部144内に臨んだ状態で冷凍ケーシング33の内側に位置し、円筒状部材142の筒部142Aが該オーガ34の内側に位置しており、冷凍ケーシング33の製氷水貯留部144に所定量の製氷水を貯留させた際には、該製氷水にオーガ34が浸漬された状態に配設される。なお、冷凍ケーシング33と円筒状部材142は、成形上の制約がない場合には一体的に構成してもよい。
【0044】
従って、実施例のオーガ式製氷機140では、製氷機構部32のオーガ34が冷凍ケーシング33に設けた製氷水貯留部144内に配設され、該製氷水貯留部144に貯留された製氷水により該オーガ34が全体的に包み込まれる。従って、冷凍ケーシング33が冷却されることで円筒状部材142も冷却されるので、製氷水貯留部144に貯留された製氷水が適宜冷却された状態で製氷のために供給されるようになり、冷凍ケーシング33の製氷面における氷の生成が促進されて製氷効率の向上が図られる。また、冷凍ケーシング33に製氷水貯留部144を設けたので、オーガ式製氷機140全体の小型化が図られる。なお、前記フレーム38を四方に縦壁を有する箱状として製氷機構部32を被覆するようにすれば、該フレーム38内の空気の温度が製氷機構部32により冷却されるため、フレーム28と連結する貯氷室105を冷却することもできる。
【0045】
図9は、冷凍ケーシングに製氷水貯留部を設けて、オーガを製氷水貯留部に貯留された製氷水に浸漬する実施例で説明したタイプの別例を示す側断面図である。なお、実施例の別例に係る製氷機構部において、実施例のオーガ式製氷機と同様の構成には同一の符号を用いて説明を省略する。製氷機構部170は、製氷水貯留部171を画成する後述する貯留部材172に組み付けられた軸受部152により、オーガ34が回転自在に保持されている。軸受部152は、円筒形の軸部153と、この軸部153の下端に半径方向外側に延出するよう形成された載置部154とを備えている。製氷機構部170は、冷凍ケーシング33における円周面をなす製氷面40に対応して円筒形に形成されたオーガ34の内側に軸部153を内挿すると共に、オーガ34を載置部154に載置するようになっている。すなわち、オーガ34は、回転刃50が設けられる外周面(第1の周面)と反対側の内周面(第2の周面)を軸部153で支持し、該軸部153により該オーガ34の半径方向の移動が規制される。またオーガ34は、下端面が載置部154で支持されて、該載置部154により下方移動が規制されるようになっている。
【0046】
このように、製氷機構部170は、オーガ34が軸受部152に対して摺動するすべり軸受構造になっている。すなわち、オーガ34は、製氷運転に際して、冷凍ケーシング33の製氷面に氷結した氷を剥離する回転刃50からオーガ34に対して半径方向内側に向けて負荷されるラジアル荷重が、オーガ34の内周面に摺接している軸部153で支持される。ここで、軸部153は、オーガ34の内周面の上下に亘って延在するよう構成され、オーガ34の外周面側の回転刃50から負荷されるラジアル荷重が、該ラジアル荷重の入力方向と交差して延在している軸部153で適切に受止められる。すなわち、製氷運転に際して、オーガ34が変形することなく、回転刃50により製氷面40の氷を好適に剥離し得る。また、オーガ34自体に要求される剛性を小さくすることができる。更に、オーガ34と軸受部152とが面で摺接し、互いの接触面積を大きくすることができるので、面圧を下げて互いの摩耗を抑制することができる。従って、オーガ34を合成樹脂で形成しても、十分に使用に耐え得る。そして、オーガ34は、オーガ34自体の自重、および製氷機構部170の製氷運転に際して、オーガ34の外周面と冷凍ケーシング33の製氷面40との間に画成される空間を介して回転刃50により氷を上方に押し上げるときに軸方向に負荷されるスラスト荷重が、載置部154で適切に支持される。しかも、別例の製氷機構部170の如く軸受部152を設けることで、支持部材や回転軸を保持するベアリング等の別の軸受を簡略化できたり、または省略することが可能となる。
【0047】
実施例の別例に係る製氷水貯留部171は、冷凍ケーシング33に対向するよう延在して該製氷水貯留部171の側面をなす壁部173およびこの壁部173の下部から半径方向に延出して該製氷水貯留部171の底面をなす底部174とを備えた貯留部材172と、貯留部材172の底部174に載置される冷凍ケーシング33とから構成される。製氷水貯留部171は、貯留部材172の底部174が壁部173に連設する端縁と反対側の端縁を該底部174に載置した冷凍ケーシング33の外側方に延出させて、該冷凍ケーシング33を伝って流下する結露水を受けるドレン部175が設けられている。ドレン部175は、外周縁に堰壁175aが立設する皿状に形成され、堰壁175aに設けられた排出部175bに接続した図示しない排水管を介して外部に結露水を排出し得るようになっている。このように、製氷水貯留部171がドレンパンとしても機能するので、製氷機構部170から流下する結露水の流出を防止することができ、結露水に起因する電気部品の故障や貯氷室の氷の融解等を回避し得る。なお、貯留部材172の底部174には、図示しない給水手段に連通する給水部174aが設けられ、該給水部174aを介して製氷水貯留部171の内部に製氷水が導入される。
【0048】
前記製氷水貯留部171は、軸部153を挟んでオーガ34の内周面と対向する壁部173が、軸部153から隙間をあけて延在するよう設けられ、軸部153の上端においてオーガ34と軸部153との間から前記隙間に連通するよう構成される。また、軸受部152には、オーガ34の下部に設けられた通水口(孔部)55に連通して通孔152aが設けられ、オーガ34と冷凍ケーシング33の製氷面40との間の空間に通孔152aおよび通水口55を介して製氷水が供給されるようになっている。すなわち、製氷機構部170では、軸部153の内外に製氷水が存在することになり、オーガ34と軸受部152との摺動面に製氷水が存在することで、この製氷水が潤滑剤として機能して摺動面の摩耗を抑制し得る。壁部173は、オーガ34および軸部153から離間すると共に、壁部173と軸部153との隙間に製氷水が存在しているので、壁部173が冷凍ケーシング33に冷却されるオーガ34との間で断熱が図られると共に、氷通過口53との間でも断熱される。また、軸部153の上端においてオーガ34と軸部153との間から前記隙間に連通する構成であるので、軸受部152の内側から排出された製氷水およびオーガ34に搬送される氷に付着している水が外部に漏出することはなく、再び製氷水として製氷水貯留部171に戻すことができる。この際、摺動面間の異物をスムーズに排出することができる。更に、製氷水は、オーガ34と冷凍ケーシング33の製氷面40との間に対して、冷却される冷凍ケーシング33側ではなくオーガ34側から供給する構成であるので、製氷水の凍結による供給不良を回避し得る。
【0049】
前記製氷水貯留部171は、該製氷水貯留部171の底面をなす底部174が金属製の冷凍ケーシング33と比較して熱伝導性が低くなるよう、例えば合成樹脂から形成されている。そして、製氷水貯留部171は、底部174を製氷機本体に組み付けられる取付架台176に載置して、該底部174に載置した冷凍ケーシング33と取付架台176とが底部174を挟んで固定されている。すなわち、製氷水貯留部171の底部174が断熱部材として機能するので、冷凍ケーシング33と外部との熱交換を抑制でき、また取付架台176の結露を抑制することができる。ここで、冷凍ケーシング33は、取付架台176の下方から底部174を介して下端面に対してネジ固定しているので、組み付けが容易になされる。
【0050】
(変更例)
本発明は、実施例の構成に限定されず、以下の如く変更することも可能である。
【0051】
前提例に示した冷凍ケーシング33は、冷却パイプ42を埋設した中実円筒状に構成されているが、冷凍ケーシング33は中空円筒状に構成してもよい。すなわち、内部壁面40および外部壁面41を所要厚に構成した中空円筒状として、これら内部壁面40および外部壁面41の内側面(裏側面)に接触するように前記冷却パイプ42を内部空間に配設した構成であってもよい。
【0052】
実施例では、オーガ34を回転する駆動手段36を製氷機構部32の上方に配設した構成を例示したが、製氷機構部32の下方に駆動手段36を配設する構成であってもよい。すなわち、製氷機構部32の下方において駆動手段36をフレーム38に固定し、オーガ34の上部に連結した回転軸56を下方に延長させ、該回転軸56の下端部を駆動手段36に連結すればよい。
【0053】
実施例では内部壁面40のみを製氷面としたオーガ式製氷機を例示したが、本願発明は、内部壁面40および外部壁面41の両面を製氷面としたオーガ式製氷機にも適用可能である。
【0054】
別例で説明した軸受部は、軸部の下部にオーガのスラスト荷重を支持する載置部を設けたが、軸部の中間部や上端部に載置部を設けて、この載置部に対応してオーガに形成された段部を載置部に載置するよう構成してもよい。このように、載置部でオーガのスラスト荷重を支持する構成とすることで、オーガの下端面と軸受部との間に、冷凍ケーシングの製氷面とオーガにおける第1の周面との間に連通する空間を設けることができ、製氷面への給水がより行ない易くなる。
【符号の説明】
【0055】
32,170 製氷機構部,33 冷凍ケーシング,34 オーガ,
34a 第1の周面,34b 第2の周面,40 内部壁面(製氷面),
41 外部壁面(製氷面),50 回転刃,55 通水口(孔部),
142A 筒部(壁部),142B 底部,144,171 製氷水貯留部,
152 軸受部,153 軸部,154 載置部,
173 壁部,174 底部,175 ドレン部,176 取付架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍回路により冷却される製氷面(40)を有する冷凍ケーシング(33)および該製氷面(40)に臨む回転刃(50)を有するオーガ(34)からなる製氷機構部(32,170)を備え、前記製氷機構部(32,170)内に製氷水を供給して前記製氷面(40)に氷を生成させ、回転駆動する前記オーガ(34)の回転刃(50)により前記氷を剥離して搬送するオーガ式製氷機において、
前記冷凍ケーシング(33)に、前記製氷機構部(32,170)に供給される前記製氷水を貯留する製氷水貯留部(144,171)を設け、
前記製氷水貯留部(144,171)の内部に、円筒形の前記オーガ(34)が内外の両周面を製氷水に浸漬するよう配設された
ことを特徴とするオーガ式製氷機。
【請求項2】
前記製氷水貯留部(144,171)は、前記冷凍ケーシング(33)に対向するよう延在して該製氷水貯留部(144,171)の側面をなす壁部(142A,173)と、この壁部(142A,173)の下部から半径方向に延出して該製氷水貯留部(144,171)の底面をなす底部(142B,174)と、この底部(142B,174)に載置される前記冷凍ケーシング(33)とから構成され、該製氷水貯留部(144,171)にリザーバタンクを介さず製氷水が直接供給される請求項1記載のオーガ式製氷機。
【請求項3】
前記オーガ(34)は、前記冷凍ケーシング(33)における円周面をなす製氷面(40,41)に対応して円筒形に形成され、
前記オーガ(34)は、前記回転刃(50)が設けられる第1の周面(34a)と反対側の第2の周面(34b)を、該オーガ(34)の半径方向の移動を規制するよう軸部(153)で支持する軸受部(152)により、軸線を上下方向に延在させて回転自在に保持される請求項1または2記載のオーガ式製氷機。
【請求項4】
前記製氷水貯留部(144,171)は、前記軸部(153)を挟んで前記オーガ(34)の周面と対向する壁部(173)が、該軸部(153)から隙間をあけて延在するよう設けられ、前記軸部(153)の上端において前記オーガ(34)と軸部(153)との間から前記隙間に連通するよう構成される請求項3記載のオーガ式製氷機。
【請求項5】
前記底部(174)は、前記壁部(173)に連設する端縁と反対側の端縁を該底部(174)に載置した前記冷凍ケーシング(33)の側方に延出させて、該冷凍ケーシング(33)を伝う結露水を受けるドレン部(175)が設けられる請求項2記載のオーガ式製氷機。
【請求項6】
前記製氷水貯留部(171)は、該製氷水貯留部(171)の底面をなす底部(174)が前記冷凍ケーシング(33)と比較して熱伝導性が低くなるよう設定され、
前記製氷水貯留部(171)は、前記底部(174)を取付架台(176)に載置して、該底部(174)に載置した冷凍ケーシング(33)と該取付架台(176)とが底部(174)を挟んで固定される請求項1〜5の何れか一項に記載のオーガ式製氷機。
【請求項7】
前記冷凍ケーシング(33)は、前記取付架台(176)の下方から前記底部(174)を介して下端面に対してネジ固定される請求項6記載のオーガ式製氷機。
【請求項8】
前記オーガ(34)は、前記冷凍ケーシング(33)の製氷面(40)との間に製氷水を導く孔部(55)を備えている請求項1〜7の何れか一項に記載のオーガ式製氷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−193954(P2012−193954A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153855(P2012−153855)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2008−211011(P2008−211011)の分割
【原出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)