説明

オージオメータ用受話器及びオージオメータ

【課題】 オージオメータ用受話器をオージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力するオージオメータを提供する。
【解決手段】 気導受話器2と骨導受話器3とマスキング受話器4とオージオメータ本体1を備えたオージオメータにおいて、気導受話器2と骨導受話器3とマスキング受話器4には、夫々各受話器2,3,4の識別情報と校正情報を記憶したシリアルロム14,19,20を設け、オージオメータ本体1には、各受話器2,3,4の誤接続を検知する誤接続検知手段43と、各受話器2,3,4の校正経過期間を判定する校正期限判定手段44と、シリアルロム14,19,20に記憶された情報に基づいて音圧の補正量を算出する補正量算出手段42を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴力検査に用いられるオージオメータ用受話器及びオージオメータに関する。
【背景技術】
【0002】
オージオメータ用受話器には、特性のバラツキが存在するため、オージオメータに接続して使用する際には、校正をしなければならない。
従来の校正方法としては、オージオメータとオージオメータ用受話器を交換不可の一対一のペアとして製造番号を管理し、このペアにおける校正情報をオージオメータに設けたメモリに記憶させておく方法が知られている。オージオメータは、メモリに記憶された校正情報に基づいた駆動電圧を出力することにより、オージオメータ用受話器から校正された音圧を出力する。
【0003】
従って、オージオメータ用受話器が故障して、代用品または新品に交換する場合には、代用品または新品のオージオメータ用受話器をオージオメータ本体に接続し、オージオメータ本体を校正する。校正作業は、有資格者がオージオメータを設置している検査室などに校正用冶具を持ち込んで行うか、またはオージオメータをメーカの工場に搬入して行うようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、医療現場で校正作業を行うことは、時間や場所の確保が困難であるため、病院やメーカにとって負担となる。また、メーカの工場にオージオメータを引き上げて校正作業を行う場合には、その間検査ができないので、患者が検査日を変更したり、または病院が代用品の不慣れなオージオメータで検査したりするなど、患者や病院の負担となる。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オージオメータ用受話器をオージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力するオージオメータ用受話器及びそれを用いたオージオメータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、オージオメータ用受話器の校正情報を記憶した記憶手段を備えたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のオージオメータ用受話器において、前記記憶手段が、シリアルロムである。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載のオージオメータ用受話器を備えたオージオメータである。
【0009】
請求項4に係る発明は、オージオメータ用受話器とオージオメータ本体を備えたオージオメータにおいて、前記オージオメータ用受話器には、オージオメータ用受話器の識別情報と校正情報を記憶したシリアルロムを設け、前記オージオメータ本体には、オージオメータ用受話器の誤接続を検知する誤接続検知手段と、オージオメータ用受話器の校正期限を判定する校正期限判定手段と、前記シリアルロムに記憶された情報に基づいて音圧の補正量を算出する補正量算出手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、校正情報を記憶している記憶手段を備えているので、オージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力することができる。また、医療現場で校正する必要もなくなり、またオージオメータをメーカの工場へ送り返す必要もなくなるので、使い勝手がよくなる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、校正情報を記憶しているシリアルロムを備えているので、オージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、校正情報を記憶している記憶手段又はシリアルロムを備えたオージオメータ用受話器を用いるので、オージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力するため、オージオメータ用受話器の校正作業を不要とし、操作性が向上する。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、校正情報を記憶しているシリアルロムを備えたオージオメータ用受話器を用いるので、オージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力するため、オージオメータ用受話器の校正作業を不要とし、操作性が向上する。また、シリアルロムと誤接続検知手段と校正期限判定手段と補正量算出手段が相俟って、円滑にオージオメータ用受話器から校正音圧が出力される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係るオージオメータの概要斜視図、図2は本発明に係るオージオメータ用受話器のコネクタの構成図、図3はオージオメータのブロック構成図である。
【0015】
本発明に係るオージオメータは、図1に示すように、オージオメータ本体1、気導受話器2、骨導受話器3、マスキング受話器4、応答スイッチ5からなる。各受話器2,3,4は、ヘッドバンド6に取り付けられており、検査時に被検者が装着する。
【0016】
気導受話器2は、図1及び図2に示すように、右受話器10と、左受話器11と、オージオメータ本体1に接続するためのコネクタ12と、右受話器10と左受話器11を夫々コネクタ12と接続する2本の同軸ケーブル13で構成される。更に、コネクタ12の内部には、シリアルロム14を実装したプリント基板15が設置されている。コネクタ12内の配線は、同軸ケーブル13の芯線13aとシールド線13bが各々端子ピン16a,16b,16c,16dに接続される。シリアルロム14は、信号端子15aとグランド端子15bが各々端子ピン16e,16fに接続される。信号端子15aをコネクタ12内に設置可能なアンテナに接続し、シリアルロム14はオージオメータ本体1と無線で通信してもよい。
【0017】
シリアルロム14に記憶されているデータは、例えばTEDS(Transducer Electronic Data Sheet)構造で構成される。最初の64ビットに基本TEDSを記録し、256ビット以降に最終校正日・校正情報を記録する。オージオメータは、一般に11種類の周波数分のデータがあれば十分であるので、1kビット程度の容量のシリアルロムでよい。
【0018】
また、図2に示すように、骨導受話器3も、受話器30と、オージオメータ本体1に接続するためのコネクタ17と、受話器30をコネクタ17と接続する1本の同軸ケーブル13で構成され、マスキング受話器4も、受話器31と、オージオメータ本体1に接続するためのコネクタ18と、受話器31をコネクタ18と接続する1本の同軸ケーブル13で構成されている。骨導受話器3のコネクタ17内部におけるシリアルロム19の実装状態や配線状況、マスキング受話器4のコネクタ18内部におけるシリアルロム20の実装状態や配線状況などは気導受話器2と同様の構成である。
【0019】
オージオメータ本体1は、図1及び図3に示すように、検査者が検査音やマスキング音の音圧を増減するなどの操作をする操作部21、検査の状況や結果などを表示する表示部22、全体の動作を制御する制御部23、信号を生成する発信部24、信号を増幅する増幅部25、発信部24で生成した信号を所定量だけ減衰する減衰部26、メインチャンネル27とサブチャンネル28の出力を切り換える出力切換部29から構成される。
【0020】
気導受話器2の右受話器10と左受話器11、骨導受話器3の受話器30、マスキング受話器4の受話器31は、夫々コネクタ12,17,18を介して出力切換部29に接続される。各受話器2,3,4のシリアルロム14,19,20は、制御部23に接続される。被検者が、検査音を聴取できた時に操作する応答スイッチ5も、制御部23に接続される。
【0021】
制御部23内には、制御手段40、不揮発性メモリ41、補正量算出手段42、誤接続検知手段43、校正期限判定手段44が設けられている。制御手段40は、不揮発性メモリ41とのデータの授受、補正量算出手段42へのデータ受け渡しと算出結果の受け取り、誤接続検知手段43へのデータ受け渡しと検知結果の受け取り、校正期限判定手段44へのデータ受け渡しと判定結果の受け取りなどを司る。不揮発性メモリ41には、シリアルロム14,19,20に記憶されている最終校正日や校正情報などのデータのコピーと、操作部21のアッテネータ操作ダイアル指示値の減衰量の関係を定めたテーブルが記憶されている。
【0022】
以上のように構成した本発明に係るオージオメータ用受話器及びオージオメータの動作について説明する。先ず、各受話器2,3,4は、オージオメータ本体1に接続され、オージオメータ本体1の校正がなされる。そして、気導受話器2のコネクタ12に設けられているシリアルロム14には、次に示す表1のデータが記憶され、また骨導受話器3のコネクタ17に設けられているシリアルロム19には、次に示す表2のデータが記憶され、更にマスキング受話器4のコネクタ18に設けられているシリアルロム20には、次に示す表3のデータが記憶される。表1〜表3のデータは、コード化されて記憶される。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
【表3】

【0026】
例えば、新品の気導受話器2をオージオメータ本体1に接続した後に、オージオメータ本体1の電源スイッチをオン状態にすると、シリアルロム14に記憶されているデータ(表1)が制御部23に読み込まれる。
制御部23では、先ず受話器名称から気導受話器2のコネクタ(プラグ)12が、オージオメータ本体1の正しいコネクタ(レセプタクル)に接続されているかどうかを誤接続検知手段43により確認する。気導受話器2のコネクタ(プラグ)12が接続するコネクタ(レセプタクル)を間違えている場合には、表示部22にエラーメッセージを表示する。
【0027】
次いで、シリアルロム14に記憶されているデータと、不揮発性メモリ41に記憶されているデータを比較して、製造番号と校正年月日から前回使った気導受話器と同じものかを確認する。製造番号または校正年月日が異なる場合には、不揮発性メモリ41に記憶されているデータを新たなデータ(各周波数の補正値など)に書き換える。また、校正期限判定手段44が、不揮発性メモリ41に記憶されている校正年月日から1年経過していると判定した場合には、表示部22に警告メッセージを表示する。骨導受話器3及びマスキング受話器4についても、同様の動作をする。そして、補正量算出手段42で補正量を算出し、不揮発性メモリ41内のテーブルの減衰量に補正量を再作成する。そして、補正量算出手段42で補正量を算出し、この補正量を基に不揮発性メモリ41内のテーブルを再作成する。
【0028】
オージオメータ本体1への受話器2,3,4の設定が終了したら、被検者に各受話器2,3,4を装着させ検査を開始する。検査者は操作部21を操作し、受話器2,3,4から出力される音の周波数と音圧を変化させる。被検者は、音が聴こえた時に応答スイッチ5を押す。応答スイッチ5の状態は、表示部22に表示され、検査者は被検者の応答の仕方を確認しながら周波数と音圧を変化させ、被検者の聴力閾値を測定する。
【0029】
例えば、操作部21で気導受話器2の右受話器10から1kHzで60dBの音を出力するように設定する場合、減衰部26の設定が0dBの時に1kHzで減衰部26の出力が130dBであるとすると、制御部23は不揮発性メモリ41内のテーブルを参照し、減衰部26の設定を−70dBにして減衰部26の出力が60dBになるようにすればよい。ところが、右受話器10のテーブルが補正されていないと周波数特性が考慮されてないので、右受話器10から1kHzで60dBの音が出力されているかどうか分からない。
【0030】
そこで、補正量算出手段42が、不揮発性メモリ41に記憶されている右受話器10のコード化されていた補正値から、操作部21のアッテネータ操作ダイアルの指示値に対応する校正された音圧を出力するためのテーブルを算出し、不揮発性メモリ41に記憶されているテーブルは書き換えられる。右受話器10の1kHzの補正値は、表1から−0.5dBであるから、補正量算出手段42はテーブルの設定を−70.5dBと算出する。制御部23がテーブルを参照して減衰部26の減衰値を−70.5dBに設定すると、右受話器10から出力される1kHzで60dBの音は校正されたものとなる。
【0031】
同様に、減衰部26の設定が0dBの時に2kHzで減衰部26の出力が130dBであるとすると、右受話器10から2kHzで60dBの音を出力するようにするには、減衰部26の設定を−70.5dBとすればよい。左受話器11、骨導受話器3の受話器30、マスキング受話器4の受話器31についても、同様に減衰部26の減衰量を設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、校正情報を記憶しているシリアルロムを備えたオージオメータ用受話器を用いることにより、オージオメータ用受話器をオージオメータ本体に接続するだけで校正された音圧を出力することができるので、オージオメータ用受話器の校正作業を不要とし、操作性を向上させたオージオメータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るオージオメータの概要斜視図
【図2】本発明に係るオージオメータ用受話器のコネクタの構成図
【図3】オージオメータのブロック構成図
【符号の説明】
【0034】
1…オージオメータ本体、2…気導受話器、3…骨導受話器、4…マスキング受話器、5…応答スイッチ、10…右受話器、11…左受話器、12,17,18…コネクタ、14,19,20…シリアルロム、21…操作部、22…表示部、23…制御部、24…発信部、25…増幅部、26…減衰部、29…出力切換部、40…制御手段、41…不揮発性メモリ、42…補正量算出手段、43…誤接続検知手段、44…校正期限判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オージオメータ用受話器の校正情報を記憶した記憶手段を備えたことを特徴とするオージオメータ用受話器。
【請求項2】
前記記憶手段が、シリアルロムである請求項1記載のオージオメータ用受話器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のオージオメータ用受話器を備えたことを特徴とするオージオメータ。
【請求項4】
オージオメータ用受話器とオージオメータ本体を備えたオージオメータにおいて、前記オージオメータ用受話器には、オージオメータ用受話器の識別情報と校正情報を記憶したシリアルロムを設け、前記オージオメータ本体には、オージオメータ用受話器の誤接続を検知する誤接続検知手段と、オージオメータ用受話器の校正期限を判定する校正期限判定手段と、前記シリアルロムに記憶された情報に基づいて音圧の補正量を算出する補正量算出手段を設けたことを特徴とするオージオメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−301158(P2007−301158A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132700(P2006−132700)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【Fターム(参考)】