説明

オーディオ・データを伝送するシステムおよび方法

本発明は、航空機内の複合客室管理システム内でオーディオ・データを伝送するシステムおよび方法に関し、いくつかの第1のオーディオ・データ源(3)に接続され、およびいくつかの第1のオーディオ再生装置(4)に接続された娯楽システム(1)を用いて、娯楽プログラムを再生し、および通信の可能性を提供するステップと、いくつかの第2のオーディオ・データ源(8)に接続され、およびいくつかの第2のオーディオ再生装置(9)に接続された制御システム(2)を用いて、客室パラメータを設定および表示するステップと、符号化装置(5)および復号化装置(7)をそれぞれ有するいくつかのオーディオ・チャンネル(6)を用いて、制御システム(2)と娯楽システム(1)の間でオーディオ・データを伝送するステップとを有する。できるだけ安い費用で市販の符号化チップを使用することによって、オーディオ・データおよび関連する情報の伝送を実施するために、符号化装置(5)をいくつかのオーディオ・データ源(3、8)に接続させるマルチプレクサ(12)によって、いくつかのオーディオ・データ源(3、8)からのオーディオ信号を連結して1つのデータ・ストリームにするステップと、復号化装置(7)をいくつかのオーディオ再生装置(4、9)に接続させるデマルチプレクサ(15)によって、データ・ストリームを非パケット化していくつかのオーディオ再生装置(4、9)に対するオーディオ信号にするステップとが提供され、オーディオ・データが、予め決められた分解能で、符号化装置(5)と復号化装置(7)の間で伝送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および請求項9のそれぞれのプリアンブルに記載の航空機内のオーディオ・データの伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
より新しい世代の航空機では、デジタル客室通信および管理(客室管理相互通信データ)システムが、基本システムとして設置されている。このCIDシステムは、航空機客室内の機能を制御し、乗客および乗員に対する客室パラメータを示す。これらには、とりわけ、客室照明、操縦室および客室アナウンス、ドア・ロック表示器、緊急信号、禁煙およびシート・ベルト標識、煙警報器、客室温度、水および廃棄物タンクなどが含まれる。CISシステムは、インターフェース(ディレクタ・インターフェース・ボード)に接続された中央コンピュータ(ディレクタ)、乗員用の1つまたは複数の表示および入力ユニット(客室乗務員パネル)、ならびにオーディオ・データの伝送用のデータ・ネットワーク上で実施される。CISシステムは、大きな手間をかけずにプログラムすることができ、したがって、航空会社の個々の要望を考慮することができる。
【0003】
さらに、乗客の娯楽のための独自のシステム、いわゆる機内娯楽(IFE)システムが存在する。IFEシステムは、乗客が航空機内で飛行中に利用可能なすべての娯楽媒体、すなわち座席での電子メール、インターネット接続、およびコンピュータ端末の可能性を含む。具体的にはこのシステムは、プログラム選択の有無にかかわらず、座席の上に、広帯域ネットワーク、オーディオ設備、および映像設備を備える。システムは、共通のメイン・バス(バックボーン)上に設置されるので、構成要素の組合せの可能性、スケーラビリティ、ならびに拡張性に関連して特に柔軟である。
【0004】
現在では、すべての広胴型の航空機内でIFEシステムが提供されている。より小さな飛行機だけが、一部、まだIFEシステムを装備しておらず、多くはオーディオ媒体に制限されている。構成要素のための保管空間の利用可能性およびその重量も関係する。
【0005】
航空機客室システムでは、CIDシステムとIFEシステムの間でオーディオ・データを伝送するためにオーディオ・チャンネルが提供されることが必要である。チャンネルは、音楽、更新されたアナウンス、および事前設定されたアナウンスを伝送する働きをする。チャンネルは、両方向に提供しなければならない。それによるチャンネルの最大数は、異なるオーディオ情報を提供すべき可能な客室区間の数に依存する。通常、CIDシステム内およびIFEシステム内のオーディオ・チャンネルのインターフェースは、各方向で同時に最高8チャンネルを伝送するように設計される。純粋なオーディオ情報は別として、さらに、チャンネルごとに、関連するチャンネルの起動および優先順位に関する情報が送られる。
【0006】
従来技術では、オーディオ・チャンネルは、個々のアナログ・インターフェースを用いて実施され、および追加情報は、離散的な接続部として設計された制御線(いわゆるキーライン)を介して伝達される。データの交換用の形式は、ARINC規格819で確立される。ARINC規格819は、民間航空機内のデジタル・ネットワークを介したオーディオ・データの符号化および伝達について記述する。これは、限られた数のオーディオ・インターフェースを航空機内で規格として提供することによって、特別なケーブル敷設の程度を低減させ、したがってシステム・コストおよび保守費用も低減させるという目的に基づく。さらに、ARINC規格819は、アナログ・バスをデジタル・バスに置き換えたAES−3プロトコルに従ってデジタル・オーディオ・インターフェースを使用することによって、オーディオ・チャンネルを分布させる改善された方法について記述する。
【0007】
AES−3プロトコルは、1つの遮蔽して撚り合わせたケーブル上の2つのチャンネルを介した周期的に走査され均一に量子化されたオーディオ信号の直列デジタル伝送を調整する。伝送速度は、時間多重化中の走査期間内にオーディオ・データの走査値がチャンネルごとに1つずつ伝達されるように選択される。編集および他の目的で働くユーザおよびインターフェース関連データとパルス発生器データの両方を伝達することができる。
【0008】
さらに、時間多重化(時分割多重接続、TDMA)方式のいくつかのAES−3チャンネルを単一の物理媒体内に再現する方法が知られている。この一例は、多重チャンネル・オーディオ・デジタル・インターフェース(MADI)またはAES10規格である。このMADI規格では元々、28個のAES/EBUフレーム(56個のオーディオ・チャンネル)からなる直列伝送が、24ビットの分解能で調整され、サンプリング周波数は、それぞれ44.1kHzおよび48kHzであった。最新のMADI規格では、チャンネル数は、32個のAES/EBU信号(64個のオーディオ・チャンネル)まで引き上げられ、サンプリング速度は、それぞれ最高96kHzおよび192kHzである。伝送媒体は、最大長さ100m(75オーム)の同軸ケーブル、または最大長さ2000m(62.5/125μm)の光波導体/ガラス繊維である。
【0009】
すべての方法は、2つのチャンネル当たり1つのAES−3符号器を必要とする。1つの物理媒体上でMADI規格に従っていくつかのAES−3チャンネルを多重化するとき、いくつかのチャンネルの「トンネリング」を可能にするには、依然として、それに応じてさらなる費用が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、できるだけ安い費用で従来の符号化チップを使用することによって、オーディオ・データおよび関連する情報の伝送を実施できるシステムを提供し、またその方法を示すことである。言い換えれば、重量およびコストを節約するために、できる限り少ないハードウェア装置を使用するべきである。
【0011】
これは、請求項1および9のそれぞれに記載のシステムおよび方法によって実現される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0012】
本発明は、以下の考慮すべき点に基づく。いくつかのオーディオ・チャンネルが1つの物理媒体上で多重化されるが、従来技術とは異なり、多重化は、AES−3形式への符号化後に初めて行われるのではなく、AES−3形式への符号化前にすでに行われる。1つの物理媒体に対して、1伝送方向当たり1つのAES−3インターフェースがそれぞれ使用される。これにより、例としてMADI規格に従って1つの媒体上でいくつかのAES−3チャンネルを多重化するのに必要なはずの費用を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
航空機内の本発明による複合客室管理システムであって、
− オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第1のオーディオ・データ源に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第1のオーディオ再生装置に接続された、航空機内の乗客のために娯楽プログラムを再現し、および通信の可能性をもたらす娯楽システムと、
− オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第2のオーディオ・データ源に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第2のオーディオ再生装置に接続された、航空機内の乗員によって客室パラメータを設定および表示する制御システムと、
− 上流のオーディオ・データ伝送用の符号化装置および下流のオーディオ・データ受信用の復号化装置をそれぞれ有する制御システムと娯楽システムの間で、一連のデータ・パケットとしてオーディオ・データを伝送する両方向のいくつかのオーディオ・チャンネルとを有し、
− それぞれがそれぞれのオーディオ・チャンネルのチャンネル・パラメータを伝送する、オーディオ・チャンネルに属する情報チャンネルとを有するシステムにおいて、
− 符号化装置が、マルチプレクサによっていくつかのオーディオ・データ源に接続されて、いくつかのオーディオ・データ源からのオーディオ信号を連結して1つのデータ・ストリームにし、および
− 復号化装置が、デマルチプレクサによっていくつかのオーディオ再生装置に接続されて、データ・ストリームを非パケット化していくつかのオーディオ再生装置に対するオーディオ信号にすることを特徴とし、
− オーディオ・データが、予め決められた分解能で、符号化装置と復号化装置の間で伝送される。
【0014】
より具体的には、2つのオーディオ・チャンネルをパケット化して1つのフレームにすることができるだけでなく、基本的に、AES−3形式に従ったこの方法では、3つ以上のオーディオ・チャンネルを伝送することもできる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、マルチプレクサは、毎回、1つのオーディオ・チャンネルをパケット化してサブフレームにし、このサブフレームを2つずつ符号化してそれぞれ1つのデータ・フレームにする。それによって、オーディオ・ソースから到達したデータを再フォーマットする必要はなく、欠落したビットは単に、0または1で充填される。
【0016】
本発明の好ましい代替実施形態では、マルチプレクサは、それぞれ2つのオーディオ・チャンネルを2つずつパケット化してサブフレームにし、このサブフレームを2つずつ符号化してそれぞれ1つのデータ・フレームにする。それによって、オーディオ・チャンネルの伝送速度を2倍にする。これは、サブフレーム内に埋め込まなければならない2つのオーディオ・ソースから到達したオーディオ・データを費やして行われ、単に一定値で充填するよりわずかに高い費用を必要とする。
【0017】
この代替実施形態では具体的に、奇数チャンネルはそれぞれ、マルチプレクサによってパケット化されてサブフレームの12個のLSBになり、また偶数チャンネルはそれぞれ、マルチプレクサによってパケット化されて12個のMSBになる。しかし、他の図式も考えうることが理解される。
【0018】
通常、マルチプレクサは、第1のチャンネルの符号化が毎回、192フレームのパケットの第1のフレームの符号化後に同期して行われるように(いわゆる、AES−3同期)、制御ユニットによって制御される。このようにすると、オーディオ・ソースとオーディオ再生ユニットの割当てを実施するのが非常に簡単である。
【0019】
個々のデータ源のオーディオ・データは毎回、常に同じデータ・シンクに割り当てられ、およびマルチプレクサおよびデマルチプレクサはそれぞれ、予め決められたスケジュールに従うことが好ましい。
【0020】
別法として、オーディオ・サブフレームの内容によって、すなわち、たとえばオーディオ・データ・ストリームのうちの普通なら使用されないビットの符号化によって、チャンネル識別を行うことができる。さらなる代替手段として、制御および同期データを、フレームの予め決められたサブフレーム内で伝送することができる。
【0021】
これにより、非常に柔軟なチャンネル割当てをもたらす。
【0022】
それに対応して、航空機内の複合客室管理システム内でオーディオ・データを伝送する本発明による方法であって、
− オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第1のオーディオ・データ源に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第1のオーディオ再生装置に接続された娯楽システムを用いて、航空機内の乗客のために娯楽プログラムを再生し、および通信の可能性を提供するステップと、
− オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第2のオーディオ・データ源に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第2のオーディオ再生装置に接続された制御システムを用いて、航空機内の乗員によって客室パラメータを設定および表示するステップと、
− 上流のオーディオ・データ伝送用の符号化装置および下流のオーディオ・データ受信用の復号化装置をそれぞれ有する両方向のいくつかのオーディオ・チャンネルを用いて、制御システムと娯楽システムの間で一連のデータ・パケットとしてオーディオ・データを伝送し、およびオーディオ・チャンネルに属する1つの情報チャンネルをそれぞれ有する各オーディオ・チャンネルのチャンネル・パラメータを伝送するステップとを有する方法において、
− 符号化装置をいくつかのオーディオ・データ源に接続させるマルチプレクサによって、いくつかのオーディオ・データ源からのオーディオ信号を連結して1つのデータ・ストリームにするステップと、
− 復号化装置をいくつかのオーディオ再生装置に接続させるデマルチプレクサによって、データ・ストリームを非パケット化していくつかのオーディオ再生装置に対するオーディオ信号にするステップとを特徴とし、
− オーディオ・データが、予め決められた分解能で、符号化装置と復号化装置の間で伝送される。
【0023】
本発明による方法は、前述の利点に加えて、以下に挙げる利点を有する。この方法は、デジタルからアナログへまたアナログからデジタルへのチャンネルごとの二重変換を回避する。さらに、1伝送方向当たり1つのAES−3符号器および復号器だけが使用され、それにより媒体の伝送帯域幅をより良く利用することができる。さらに、AES−3規格で提供される最大ビットレートが、実際に利用される。
【0024】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明の実施形態についての以下の説明から明らかであろう。以下の説明では、添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の従来技術によるAESプロトコルに従った2つのシステム間のオーディオ・データの伝送に対する回路ブロック図である。
【図2】第2の従来技術によるAESプロトコルに従った2つのシステム間のオーディオ・データの伝送に対する回路ブロック図である。
【図3】本発明によるAESプロトコルに従った2つのシステム間のオーディオ・データの伝送に対する回路ブロック図である。
【図4】本発明による方法の第1の実施形態の場合のデータ・パケットおよびデータ・シーケンスの時系列を示す図である。
【図5】本発明による方法の第2の実施形態の場合のデータ・パケットおよびデータ・シーケンスの時系列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の例では、AES−3プロトコルに従って、チャンネルを介したデータの伝送が行われる。AES−3プロトコルに従って、それぞれ192個のフレームを含むオーディオ・ブロックが、伝送経路を介して伝送される。各フレームは、2つのサブフレームからなる。サブフレームごとに、プリアンブルpreに加えてオーディオ・サンプルが伝送され、このオーディオ・サンプルは、16ビット、20ビット、または最大24ビットのダイナミックを有し、また4つの情報ビットv(妥当性)、u(ユーザ)、c(チャンネル状態)、p(パリティ)を有する。原則として、2つのサブフレームを有する1フレーム当たり1つのステレオ・チャンネルが伝送される。オーディオ信号の通常の走査周波数は、32kHz、44.1kHz、48kHz、96kHz、および192kHzである。
【0027】
図1は、このAES規格に従ったデータ線を介したデータの伝送の一例を示す。第1のシステム1は、予め決められた分解能を有するオーディオ・データ源3を備える。これらのオーディオ・データ源3をQで示す。したがって具体的には、システム1は、乗客のための娯楽および通信装置を有するIFEシステムである。これらのソースQのオーディオ・データは、別々のより長い接続ケーブル6を介して伝送するために、AES符号器5内で準備される。反対側では、データは、第2のシステム2によって受け入れられる。したがって、システム2は、航空機のパラメータの設定がオーディオ信号の高品質の再現に比べて卓越する前述のCIDシステムなどの制御システムとすることができる。データはまず、AES復号器7内で適切な形に戻される。次いでデータは、オーディオ再生装置9へ送られ、オーディオ再生装置9から、たとえば音に変換される。図1の例では、システム1は、3つのオーディオ・ソースを備え、またシステム2も同様に、3つのオーディオ再生装置9を備えるものとする。これは、見やすいようにこのように示すが、ソースおよび再生装置の数を変更できることは自明である。
【0028】
オーディオ・データの伝送は、システム1からシステム2という方向に制限されない。明らかに、予め決められた分解能で、システム2からシステム1という逆方向にデータを伝送することもできる。CIDシステム2内の対応するオーディオ・ソース8は、AES符号器5によって準備され、次いで伝送ケーブル6を介してIFEシステム1へ伝送される。そこでAES復号器7によって受け取られ、IFEシステム1内の再生ユニット4による再生のために準備される。
【0029】
AES−3で固定されたビット・ストリームは、他のインターフェース・プロトコルでもトンネリングすることができ、すなわち、AES−3信号はもう一度パケット化され、また場合によっては他のプロトコル内でさらに繰り返して多重化される。この例は、MADI、IEEE1394、AES50である。
【0030】
図2は、トンネリングによる伝送を示す。IFEシステム1内のデータは、特定の分解能を有する。データは、従来技術からの上記の例の場合のように、最初はAES符号器5内でMADIプロトコルを用いて準備される。次いで、いくつかのAES符号器5からのAESフレームが、MADI制御装置10を通じて連結され、状況次第でははるかに高い帯域幅で、MADI接続部11を介してCIDシステム2へ伝送される。そこでこれらのAESフレームは、対応するMADI制御装置10によって受け取られ、このMADI制御装置10は、個々のAESフレームを選択して、関連するAES復号器7へ送る。AES復号器7は、再びオーディオ・データを復元して、関連する再生ユニット9へ送る。しかしこの場合も、このデータを伝送するために、最高値を有するビットだけが考慮される。
【0031】
それに対応して、CIDシステム2内のオーディオ・ソースからのデータは最初に、AES符号器5によって再び復元されてから、MADI制御装置10内で多重化されて、予め決められた分解能で、接続部11を介してIFEシステム1へ送られる。次いで、このデータは、システム2内の再生ユニット4へ送られる。
【0032】
図1による従来技術では、提供すべき接続部に関して高い費用を負担しなければならないが、図2による従来技術では、接続部に高い帯域幅が必要とされる。第1の場合、接続部の数は、高い機械支出、および重量の望ましくない増大を意味し、特に乗物の場合、またさらにより具体的には航空機の場合、大きな欠点になる。第2の場合、帯域幅に関する接続部への要求が非常に高く、またそれに対応してインターフェースを複雑にしなければならない。
【0033】
本発明による提案では、従来技術による上記2つの方法の欠点が克服される。これについて、図3を参照して以下に説明する。それによって、伝送は、各方向に少なくとも8つのチャンネル、ならびに将来適用するための複数の予約チャンネル(「予備」)によって実施されるものとする。見やすいように、システム1と2の両方で、3つのオーディオ・ソースA1からA3および3つの再生ユニットB1からB3だけを示す。オーディオ・ソース3のオーディオ・データは、すでにデジタルの形で存在する。走査レートは、1チャンネル当たり32kSa/s、すなわち1チャンネルおよび1秒当たり32.000走査値に達する。分解能は、両側の各オーディオ・チャンネルで12ビットに達する。
【0034】
本発明によれば、オーディオ・データ源3とAES−3符号化装置5の間でデジタル・マルチプレクサ12が使用され、ならびにAES−3復号化装置7とオーディオ再生装置9の間でオーディオ・データ・シンクとしてデジタル・デマルチプレクサ15が使用される。旅客航空機で必要とされるような完全なシステムは、両方向のオーディオ伝送を可能にするために2つのそれぞれ相互に構成されたユニットを備え、したがって、図1および2に示すものと同様に構築される。
【0035】
マルチプレクサは、その出力端で、AES符号器の入力信号に適合した信号を生成する。マルチプレクサの入力端は、オーディオ・ソースのデジタルオーディオ・データに隣接し、走査レートは32kHzであり、分解能は1チャンネル当たり12ビットである。
【0036】
本発明による複合客室管理システムはさらに、特定の制御ビットでマルチプレクサ12およびデマチプレクサ15ならびにこれらの同期を制御するさらに2つの制御装置C1およびC2を備える。マルチプレクサ12は、第1のチャンネルのデータがAES−3ユーザ・ビット・データ・チャンネルの第1のビットU1と厳密に同期するように、制御ユニットC1 13によって制御される。これについて以下、より詳細に論じる。ユーザ・ビットU1は、ユーザ・ビット・ユニット14内で生成される。このユーザ・ビットU1を参照することによって、オーディオ・チャンネルは、受信器で確実に正確に割り当てられる。これについて、図4を参照して以下にさらに説明する。
【0037】
同様に、受信器側2のデマルチプレクサ15は、制御装置16によって制御される。それに応じて、反対側のシステムによる復号が進行する。デマルチプレクサDEMUXは、その入力端で、AES−3復号器の信号を受け取り、この信号は、前述の工程を逆にした工程に従って準備され、したがってオーディオ・データは、個々のデータ源のオーディオ・データがそれぞれ常に同じデータ・シンクに割り当てられるように、たとえばB1=A1、B2=A2などになるように、データ・シンクB1、B2、B3に割り当てられて送られる。このため、制御ユニットC2は、AES−3復号器によって生成された、ユーザ・データ・ストリームの第1のビットのフレーム開始に対応する同期信号を受け取る。
【0038】
データを伝送するときの時間経路について、図4および図5を参照して以下に説明する。図4に示すように、マルチプレクサは、毎回連続して、オーディオ・チャンネルを2つずつ符号化してAES−3データ・フレームにする。オーディオ・ソースが、たとえば12ビットのより低い分解能を有するとき、それぞれ1つのオーディオ・チャンネルの12ビットは、AES−3サブフレーム18の長さ24ビットのオーディオ・フィールドの一部と見なされる。2つのサブフレーム18を組み合わせて(AES−3プロトコルに従って)1つのフレーム22にし、また12個のフレーム22を組み合わせて1つの「スーパーフレーム」23にする。そのうち16個が、1つのオーディオ・ブロックを形成する。それによって、サブフレーム18は通常、図4および5で「pre」と示すプリアンブル19から構成される。このプリアンブル19には、24ビットの分解能を有する実際のオーディオ・データ(audio data)20が続く。最後に、「vucp」と示す4つの制御ビット21が伝送される。これらの制御ビット21は情報チャンネルであり、この情報チャンネルを通って、関連するオーディオ・チャンネルのチャンネル・パラメータが伝送される。
【0039】
本発明によれば、データを特徴づけるために、制御ビット21内でユーザ・ビットが使用される。一実施形態では、マルチプレクサMUXは、第1のチャンネルのデータがAES−3ユーザ・ビット・データ・チャンネルの第1のビットU1と精密に同期するように、制御ユニットC1によって制御される。したがって、オーディオ・チャンネルは、受信器で確実に正確に割り当てられる。
【0040】
図4の実施形態の代替手段として、一実施形態を図5に示す。この実施形態では、マルチプレクサが、それぞれ2つの12ビットのチャンネルを2つずつ組み合わせて、24ビットのデータ語のAES−3サブフレーム24にし、それによってここでは、奇数チャンネルをそれぞれ符号化して12個の最低値ビット(最下位ビット、LSB)にし、また偶数チャンネルを符号化して12個の最高値(最上位ビット、MSB)にする。残りのフィールドは、図4のものと同じであり、ここではさらに詳細に説明しない。チャンネル数の割当てをここでは例示のみを目的として示すこと、そして任意の他の割当ても等しく可能であることが、当業者には明らかである。
【0041】
2つのサブフレーム24を再び組み合わせて、ここでは4つのソースを伝送する1つのフレーム22にする。例として、これらは、第1のフレーム内でソースA1、A2、A3、A4である。第2のフレームでは、これらは、ソースA5、A6、A7、A8である。図5による実施形態では、2倍の伝送速度が実現される。言い換えれば、この実施形態では、必要なデータ速度が係数2だけ低減され、すなわち最大データ処理能力がより高くなる。しかしここでは、サンプル分解能をその後増大させること(12ビット以上)はできない。
【0042】
これは、例として、オーディオ・ソースの分解能が12ビットではなく8ビットにしか達しない場合に一般化することができる。このとき、3つのソースを組み合わせて1つのAES−3サブフレームにすることができ、また最高6つのソースが1つのフレーム内で多重化される。
【0043】
どちらの場合も、すなわち図4による方法ならびに図5による方法では、毎回4つの予約チャンネルを伝送することができる。伝送される時間スロットの数は、12,288個に達し、これは第1の方法では、1秒当たり12.288メガビットという伝送チャンネルのビットレートに対応する。それによって、符号器は、AES−3規格で提供される最大オーディオ走査レートで動作する。第2の方法では、ビットレートは、1秒当たり6.144メガビットに達する。
【0044】
それに応じて、反対側のシステムによる復号が進行する。デマルチプレクサDEMUXは、その入力端で、AES−3復号器の信号を受け取り、この信号は、前述の工程を逆にした工程に従って準備され、したがってオーディオ・データは、個々のデータ源のオーディオ・データが毎回常に同じデータ・シンクに割り当てられるように、たとえばB1=A1、B2=A2などになるように、データ・シンクB1、B2、B3に割り当てられて送られる。このため、制御ユニットC2は、AES−3復号器によって生成された、ユーザ・データ・ストリームの第1のビットのフレーム開始に対応する同期信号を受け取る。
【0045】
本発明が前述の実施形態に限定されないことは、当業者には明らかである。とりわけ、以下の変形形態が考えられる。所望の伝送能力に対応して、オーディオ・チャンネルの数を選択することができる。同様に、AES−3チャンネルの最適の利用を提供するように、1AES−3チャンネル当たりのチャンネルの数を選択することができる。基本的に、ユーザ・ビット・データ・ストリームによるチャンネル識別は、絶対的に必要なわけではなく、したがって、オーディオLSB内の制御情報の伝送によってチャンネル識別を行うこともできる。
【0046】
さらに、チャンネル割当てを外部で割り当てる可能性が存在する。このため、図3による実施形態では、外部同期リード線25が提供され、リード線25を介して、第1の制御ユニット13と第2の制御ユニット16の間でデータを交換することができる。したがって、同期信号は、AES−3インターフェースの外側へ伝送される。
【符号の説明】
【0047】
1 第1のオーディオ・システム
2 第2のオーディオ・システム
3 第1のシステムのオーディオ源
4 第1のシステムのそれぞれオーディオ再生装置およびオーディオ・データ・シンク
5 AES符号器
6 伝送チャンネル
7 第2のシステムのオーディオ源
8 第2のシステムのそれぞれオーディオ再生装置およびオーディオ・データ・シンク
9 MADI制御装置
10 MADI伝送チャンネル
11 マルチプレクサ
12 第1の制御ユニット
13 第1のユーザ・ビット・ユニット
14 デマルチプレクサ
15 第2の制御ユニット
16 第2のユーザ・ビット・ユニット
17 1つの源からの24ビット・オーディオ・データを有するサブフレーム
18 プリアンブル
19 オーディオ・データ
20 情報フィールド
21 フレーム
22 スーパーフレーム
23 2つの源からの24ビット・オーディオ・データを有するサブフレーム
24 外部同期リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機内の複合客室管理システムであって、
オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第1のオーディオ・データ源(3)に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第1のオーディオ再生装置(4)に接続された、前記航空機内の乗客のために娯楽プログラムを再生し、および通信の可能性を提供する娯楽システム(1)と、
オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第2のオーディオ・データ源(8)に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第2のオーディオ再生装置(9)に接続された、前記航空機内の乗員によって客室パラメータを設定および表示する制御システム(2)と、
上流のオーディオ・データ伝送用の符号化装置(5)および下流のオーディオ・データ受信用の復号化装置(7)をそれぞれ有する前記制御システム(2)と前記娯楽システム(1)の間で、一連のデータ・パケットとしてオーディオ・データを伝達する両方向のいくつかのオーディオ・チャンネル(6)とを有し、
それぞれが前記関連するオーディオ・チャンネルのチャンネル・パラメータを伝送する、オーディオ・チャンネルに属する情報チャンネルを有するシステムにおいて、
前記符号化装置(5)が、マルチプレクサ(12)によっていくつかのオーディオ・データ源(3、8)に接続されて、いくつかのオーディオ・データ源(3、8)からのオーディオ信号を連結して1つのデータ・ストリームにし、および
前記復号化装置(7)が、デマルチプレクサ(15)によっていくつかのオーディオ再生装置(4、9)に接続されて、前記データ・ストリームを非パケット化して前記いくつかのオーディオ再生装置(4、9)に対するオーディオ信号にするものであり、
前記オーディオ・データが、予め決められた分解能で、前記符号化装置(5)と前記復号化装置(7)の間で伝送されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記マルチプレクサ(12)が、1つのオーディオ・チャンネルをそれぞれパケット化してサブフレーム(18)にし、前記サブフレーム(18)を2つずつ符号化してそれぞれ1つのデータ・フレームにする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マルチプレクサ(12)が、それぞれ2つのオーディオ・チャンネルを2つずつパケット化してサブフレーム(24)にし、前記サブフレーム(24)を2つずつ符号化してそれぞれ1つのデータ・フレームにする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記マルチプレクサ(12)が、奇数チャンネルをパケット化してそれぞれ前記サブフレーム(24)の12個のLSBにし、および偶数チャンネルをパケット化してそれぞれ12個のMSBにする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記マルチプレクサ(12)が、前記伝送されたチャンネルがそれぞれ各データ・パケット内の予め決められたビットで開始するように、制御ユニット(13、16)によって制御される、前記請求項の一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記デマルチプレクサ(15)が、その入力端で、前記復号器(7)の信号を受け取り、前記信号により、前記個々のデータ源(3、8)の前記オーディオ・データがそれぞれ常に前記同じデータ・シンク(4、9)に割り当てられるように、前記受け取ったオーディオ・チャンネルを宛先チャンネルへ明白に割り当てることができる、前記請求項の一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記サブフレーム(24)の前記12個のLSB内の関連するオーディオ・チャンネルに対する識別の詳細を伝送することによって、チャンネル識別が行われる、請求項4から6の一項に記載のシステム。
【請求項8】
AES−3インターフェースの外側へさらなる同期信号を伝送することによって、チャンネル識別が行われる、前記請求項の一項に記載のシステム。
【請求項9】
航空機内の複合客室管理システム内でオーディオ・データを伝達する方法であって、
オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第1のオーディオ・データ源(3)に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第1のオーディオ再生装置(4)に接続された娯楽システム(1)を用いて、前記航空機内の乗客のために娯楽プログラムを再生し、および通信の可能性を提供するステップと、
オーディオ・データを格納および/または記録するいくつかの第2のオーディオ・データ源(8)に接続され、およびオーディオ・データを再生するいくつかの第2のオーディオ再生装置(9)に接続された制御システム(2)を用いて、前記航空機内の乗員によって客室パラメータを設定および表示するステップと、
上流のオーディオ・データ伝送用の符号化装置(5)および下流のオーディオ・データ受信用の復号化装置(7)をそれぞれ有する両方向のいくつかのオーディオ・チャンネル(6)を用いて、前記制御システム(2)と前記娯楽システム(1)の間で一連のデータ・パケットとしてオーディオ・データを伝達するステップと、
オーディオ・チャンネルに属する1つの情報チャンネルをそれぞれ有する各それぞれのオーディオ・チャンネルのチャンネル・パラメータを伝送するステップとを有する方法において、
前記符号化装置(5)をいくつかのオーディオ・データ源(3、8)に接続させるマルチプレクサ(12)によって、前記いくつかのオーディオ・データ源(3、8)からのオーディオ信号を連結して1つのデータ・ストリームにするステップと、
前記復号化装置(7)をいくつかのオーディオ再生装置(4、9)に接続させるデマルチプレクサ(15)によって、前記データ・ストリームを非パケット化して前記いくつかのオーディオ再生装置(4、9)に対するオーディオ信号にするステップとを有し、
前記オーディオ・データが、予め決められた分解能で、前記符号化装置(5)と前記復号化装置(7)の間で伝送されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記マルチプレクサ(12)が、それぞれ1つのオーディオ・チャンネルをパケット化してサブフレーム(18)にし、前記サブフレーム(18)を2つずつ符号化してそれぞれ1つのデータ・フレームにする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記マルチプレクサ(12)が、それぞれ2つのオーディオ・チャンネルを2つずつパケット化して1つのフレーム(24)にし、前記サブフレーム(24)を2つずつ符号化してそれぞれ1つのデータ・フレームにする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチプレクサ(12)によって、奇数チャンネルがそれぞれパケット化されて前記サブフレーム(24)の12個のLSBになり、また偶数チャンネルがそれぞれパケット化されて12個のMSBになる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチプレクサ(12)が、前記伝送されたチャンネルがそれぞれ各データ・パケット内の予め決められたビットで開始するように、制御ユニット(13、16)によって制御される、請求項9から12の一項に記載の方法。
【請求項14】
前記デマルチプレクサ(15)が、その入力端で、前記復号器(7)の信号を受け取り、前記信号により、前記個々のデータ源(3、8)の前記オーディオ・データがそれぞれ常に前記同じデータ・シンク(4、9)に割り当てられるように、前記受け取ったオーディオ・チャンネルを宛先チャンネルへ明白に割り当てることができる、請求項9から13の一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サブフレーム(24)の前記12個のLSB内のそれぞれ関連するオーディオ・チャンネルに対する識別の詳細を伝送することによって、チャンネル識別が行われる、請求項11から13の一項に記載の方法。
【請求項16】
AES−3インターフェースの外側へさらなる同期信号を伝送することによって、チャンネル識別が行われる、請求項9から15の一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−532606(P2010−532606A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513812(P2010−513812)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055884
【国際公開番号】WO2009/003753
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(504467484)エアバス・オペレーションズ・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】