説明

オーディオ信号処理装置及びオーディオ信号処理方法

【課題】サンプリング周波数の異なるオーディオ信号をディジタルフィルタリングするFIRフィルタの回路規模を低減等することが可能なオーディオ信号処理装置を提供する。
【解決手段】サンプルレート変換器1が、オーディオ信号Xsを比βに基づいてダウンコンバートしてFIRフィルタ2a,2bに供給し、ディジタルフィリタリングさせる。FIRフィルタ2a,2bは、基準周波数fbaseと等しい動作周波数fa,fbの下で、基準周波数fbaseと等しいサンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号を所定の周波数帯域の範囲でディジタルフィルタリングする場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせてタップ数が決められたFIRフィルタで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング周波数の異なるオーディオ信号をディジタルフィルタによって処理するオーディオ信号処理装置及びオーディオ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
離散化されたオーディオ信号を扱うディジタルオーディオ機器では、FIR(Finite Impulse Response) フィルタを備えたオーディオFinite Impulse Response Filter信号処理装置によって、周波数帯域分割や音質調整(イコライジング)等のディジタル信号処理を行う構成となっている。
【0003】
図1(a)は、従来のオーディオ信号処理装置の構成例を示している。
このオーディオ信号処理装置には、4系統のFIRディジタルフィルタ(以下、「FIRフィルタ」と称する)F1,F2,F3,F4とDA変換器と音量調整用の増幅器とが形成されたディジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)が設けられている。各系統において、CDプレーヤ等の信号源から供給される所定サンプリング周波数fsでサンプリングされたオーディオ信号Xに対し、低域スピーカSLと低中域スピーカSLMと中高域スピーカSMHと高域スピーカSHとの各周波数帯域に合わせて、図1(b)の特性図に示す周波数帯域分割や音質調整等の処理を行う構成となっている。
【0004】
ここで、各々のFIRフィルタF1,F2,F3,F4は、次式(1a)の伝達関数H(z)で表され、サンプリング周期T(つまり、1/fs)毎の時刻nにおいて入力系列であるオーディオ信号X(n)が供給されると、その時刻nのオーディオ信号X(n)及び過去に供給されたオーディオ信号X(n-1),X(n-2),…,X(n-N)と、インパルス応答の継続時間に基づいて定められたタップ数(N+1)のフィルタ係数(タップ係数)h0,h1,h2,…,hNとを積和演算することで、次式(1b)の非再帰型の差分方程式で表される出力系列Y(n)を生成して出力する。
【0005】
つまり、各FIRフィルタF1,F2,F3,F4におけるフィルタ係数h0,h1,h2,…,hNが夫々特定の係数に設定されることで、FIRフィルタF1が低域通過フィルタ、FIRフィルタF2が低中域通過フィルタ、FIRフィルタF3が中高域通過フィルタ、FIRフィルタF4が高域通過フィルタとなっている。
【0006】
【数1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来のオーディオ信号処理装置は、CDプレーヤ等の信号源から供給される例えば44.1kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされたオーディオ信号Xだけを信号処理する構成となっている。
【0008】
しかし、CD(Compact Disc)のみならずMD(Mini Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の多様なメディアが開発され、また、マルチメディア化等の進展に伴って、44.1kHzのサンプリング周波数だけでなく、32kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz等のサンプリング周波数でサンプリングされたオーディオ信号を処理することが可能なコンパチビリティを有するオーディオ信号処理装置が必要とされている。
【0009】
ところが、サンプリング周波数fsが高くなると、一般に、各FIRフィルタF1,F2,F3,F3のタップ数を増やしてタップ長を長くしなければならず、上記式(1a)(1b)から明らかな通り、積和演算するための乗算器と遅延素子の数が増加し、また信号処理を行う際に必要となるバッファメモリの記憶容量が増大することから、回路規模が大きくなってしまい、更に、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)の処理量が増大し、処理の負担が大きくなる等の問題を生じる。
【0010】
例えば、上述した最も高いサンプリング周波数である192kHzに合わせて、全てのFIRフィルタF1,F2,F3,F4を設計しておけば、192kHzより低いサンプリング周波数である32kHz、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz等のオーディオ信号を信号処理することが理論的に可能となるが、各FIRフィルタF1,F2,F3,F4のタップ数が膨大となり、回路規模の増大、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)の処理負担が大きくなる等の問題を生じる。また、タップ長が長くなると、インパルス応答の収束速度が劣化する問題を生じる。
【0011】
また、上述したように、最も高いサンプリング周波数である192kHzに合わせて、全てのFIRフィルタF1,F2,F3,F4を設計した場合、低域や低中域のオーディオ信号を処理するFIRフィルタF1,F2では、無信号の期間(入力されるオーディオ信号がほぼ0レベルとなる期間)にエコー(誤差成分)が発生し、そのエコーが出力系列Yとなって出力されるため、低域スピーカSLと低中域スピーカSLMで再生される再生音の音質が劣化してしまう。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、サンプリング周波数の異なるオーディオ信号に対して、FIRフィルタによって周波数帯域分割や音質調整等の処理を施すオーディオ信号処理装置において、FIRフィルタの回路規模の低減や処理量の低減等を実現することが可能なオーディオ信号処理装置とオーディオ信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、信号源から出力される、異なるサンプリング周波数でサンプリングされている複数のオーディオ信号をディジタルフィルタリングするFIRフィルタを有するオーディオ信号処理装置であって、前記サンプリング周波数のうちの所定サンプリング周波数を基準周波数として、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数と前記基準周波数とを比較し、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数が前記基準周波数より高い周波数と判定すると、前記サンプリング周波数と前記基準周波数との比を再サンプリング比として演算する制御手段と、前記信号源から出力されるオーディオ信号を前記再サンプリング比に基づいてダウンコンバートして前記FIRフィルタに供給するサンプルレート変換手段とを具備し、前記FIRフィルタは、前記基準周波数と等しい動作周波数の下で、前記基準周波数と等しいサンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号を所定の周波数帯域の範囲でディジタルフィルタリングする場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせてタップ数が決められたFIRフィルタであること、を特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、信号源から出力される、異なるサンプリング周波数でサンプリングされている複数のオーディオ信号をディジタルフィルタリングするオーディオ信号処理方法であって、前記サンプリング周波数のうちの所定サンプリング周波数を基準周波数として、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数と前記基準周波数とを比較し、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数が前記基準周波数より高い周波数と判定すると、前記サンプリング周波数と前記基準周波数との比を再サンプリング比として演算する制御工程と、前記信号源から出力されるオーディオ信号を前記再サンプリング比に基づいてダウンコンバートするサンプルレート変換工程と、前記サンプルレート変換工程でダウンコンバートされたダウンコンバート後のオーディオ信号をディジタルフィルタリングするFIRフィルタ工程とを具備し、前記FIRフィルタ工程は、前記基準周波数と等しい動作周波数の下で、前記基準周波数と等しいサンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号を所定の周波数帯域の範囲でディジタルフィルタリングする場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせてタップ数が決められたFIRフィルタ工程であること、を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態について、図2、図3を参照して説明する。図2は本実施形態のオーディオ信号処理装置の構成を表したブロック図、図3(a)〜(d)はFIRフィルタの基本構成を表したブロック図である。
【0016】
なお、以下の説明では、便宜上、サンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号を「サンプリング周波数のオーディオ信号」、サンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号のそのサンプリング周波数を「オーディオ信号のサンプリング周波数」として説明することとする。
【0017】
図2において、本実施形態のオーディオ信号処理装置は、制御部20とディジタルシグナルプロセッサ30とを有し、ディジタルシグナルプロセッサ30によって、サンプルレート変換器1と、4系統のFIRフィルタ2a,2b,2c,2dとDA変換器3a,3b,3c,3d及び音量調整用の増幅器4a,4b,4c,4dが形成されている。
【0018】
そして、ディジタルシグナルプロセッサ30が、MDやCDやDVD等のメディアを再生するMDプレーヤやCDプレーヤやDVDプレーヤ、ディジタル放送を受信する受信機、インターネットを介してオーディオソースを受信するモデム等の信号源10から供給されるオーディオ信号Xsに対して、低域スピーカSLと低中域スピーカSLMと中高域スピーカSMHと高域スピーカSHとの各周波数帯域に合わせて、周波数帯域分割や音質調整等の処理を行う。
【0019】
また、詳細については後述するが、本実施形態のオーディオ信号処理装置は、CDやDVD等の規格で規定されている32kHz、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの何れのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsに対しても、周波数帯域分割や音質調整等の処理を行うコンパチビリティを発揮する構成となっている。
【0020】
制御部20は、信号源10から出力される所定のコントロールデータを調べることで、信号源10から出力されるオーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsを検出し、検出したサンプリング周波数fsに応じて、サンプルレート変換器1にダウンサンプリングさせる際の再サンプリング比βを設定する制御信号(符号省略)を生成し、更に、検出したサンプリング周波数fsに応じて、FIRフィルタ2a〜2dとDA変換器3a〜2dと増幅器4a〜4dの動作周波数fa,fb,fc,fdを設定するための各クロック信号(符号省略)を発生する。
【0021】
なお、再サンプリング比βとは、サンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsを、それより低いサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvにダウンサンプリングする場合に、サンプリング周波数fvとfsとの比(fv/fs)として定義される。
【0022】
ここで、制御部20は、次の処理によって、再サンプリング比βを指定する制御信号と、動作周波数faを設定するためのクロック信号と、動作周波数fbを設定するためのクロック信号と、動作周波数fcを設定するためのクロック信号と、動作周波数fdを設定するためのクロック信号を生成する。
【0023】
まず、制御部20には、所定の基準周波数fbaseを示すデータが予め記憶されており、本実施形態では、基準周波数fbaseが、上述の規格で規定されている最も低いサンプリング周波数(32kHz)から最も高いサンプリング周波数(192kHz)までの範囲のうち、44.1kHzのサンプリング周波数fsと等しい周波数に決められている。
【0024】
そして、制御部20が、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsを検出して基準周波数fbaseと比較し、サンプリング周波数fsと基準周波数fbaseとの大小関係に応じて再サンプリング比βを設定する制御信号と、動作周波数fa,fb,fc,fdを設定するための各クロック信号を生成する。
【0025】
《fsとfbaseが等しいとき》
サンプリング周波数fsと基準周波数fbaseを比較し、両者の周波数が等しいとき(44.1kHzのとき)には、比(fbase/fs)を演算して再サンプリング比βを1にする。これにより、サンプルレート変換器1にダウンサンプリングをさせず、44.1kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsをそのまま、オーディオ信号Xvとして出力させる。更に、FIRフィルタ2a〜2dに供給するクロック信号の周波数(動作周波数)fa,fb,fc,fdを、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsと等しい44.1kHzに設定する。
【0026】
したがって、制御部20は、サンプリング周波数fsと基準周波数fbaseが等しいときには、次式(2a)(2b)(2c)で表される条件設定を行う。
【0027】
【数2】

【0028】
《fsがfbaseより低い周波数のとき》
サンプリング周波数fsが基準周波数fbaseより低い周波数のときには、再サンプリング比βを1にする。これにより、サンプルレート変換器1にダウンサンプリングをさせず、32kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsをそのまま、オーディオ信号Xvとして出力させる。更に、FIRフィルタ2a〜2dに供給するクロック信号の周波数(動作周波数)fa,fb,fc,fdを、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsと等しい32kHzに設定する。
【0029】
したがって、制御部20は、サンプリング周波数fsが基準周波数fbaseより低い周波数のときには、次式(3a)(3b)(3c)で表される条件設定を行う。
【0030】
【数3】

【0031】
《fsがfbaseより高い周波数のとき》
サンプリング周波数fsが基準周波数fbaseより高い周波数のときには、基準周波数fbaseとサンプリング周波数fsの比(fbase/fs)を演算し、再サンプリング比βとする。これにより、サンプルレート変換器1に再サンプリング比βでダウンサンプリングを行わせ、サンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsを、それより低いサンプリング周波数fvにサンプルレート変換させたオーディオ信号Xvを生成して出力させる。ここで、基準周波数fbaseは44.1kHzに決められているため、再サンプリング比βは、44.1kHz/fsとなる。そして、サンプルレート変換器1がこの再サンプリング比βに基づいてオーディオ信号Xsをダウンサンプリングすると、基準周波数fbaseと等しいサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvを生成して出力することとなる。
【0032】
更に、FIRフィルタ2a,2bに供給するクロック信号の周波数(動作周波数)fa,fbを、基準周波数fbaseと等しい44.1kHzに設定し、FIRフィルタ2c,2dに供給するクロック信号の周波数(動作周波数)fc,fdを、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsと等しい周波数に設定する。
【0033】
したがって、制御部20は、サンプリング周波数fsが基準周波数fbaseより高い周波数のとき、すなわちサンプリング周波数fsが、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの何れかのときには、次式(4a)(4b)(4c)で表される条件設定を行う。
【0034】
【数4】

【0035】
次に、サンプルレート変換器1は、ダウンサンプラで形成されており、制御部20で条件設定された再サンプリング比βでオーディオ信号Xsをダウンサンプリングし、次式(5)で表されるサンプリング周波数fvにサンプルレート変換させたオーディオ信号Xvを生成して出力する。
【0036】
【数5】

【0037】
これにより、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsが上述の基準周波数fbaseより低い周波数のとき(32kHzのとき)、または、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsが基準周波数fbaseと等しいとき(44.1kHzのとき)には、上記式(2a)(3a)(5)の関係に基づいて、オーディオ信号Xsをそのままオーディオ信号Xvとして出力し、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsが基準周波数fbaseより高い周波数のとき(48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの何れかのとき)には、上記式(4a)(5)の関係に基づいて、サンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsを基準周波数fbaseと等しいサンプリング周波数fv(つまり、44.1kHz)のオーディオ信号Xvにサンプルレート変換して出力する。
【0038】
次に、第1の系統に属するFIRフィルタ2aは、図3(a)に示すタップ数TpがP+1に決められたFIRフィルタで形成され、遅延時間τaで示されているP個の遅延素子から成るシフトレジスタと、各遅延素子の入力又は出力に対してタップ係数a0,a1,a2,…,aP-1,aPを乗算するP+1個の乗算器と、全ての乗算器の出力を加算する加算器ADaとを備えた基本構成を有している。
【0039】
ここで、タップ数Tpは、P個の各遅延素子の遅延時間τaを上述の基準周波数fbaseの逆数(すなわち、サンプリング周期1/fbase)に設定して、基準周波数fbaseと等しい44.1kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号を低域スピーカSLの周波数帯域の範囲でローパスフィルタリングした場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせて、設計されている。つまり、タップ長がインパルス応答の継続時間以上で同程度となるようにタップ数Tpを決めることで、FIRフィルタ2aが不必要に大型とならないように設計されている。
【0040】
そして、FIRフィルタ2aは、次式(6a)に示すz変換表記の伝達関数Ha(z)を発揮し、サンプルレート変換器1から出力されるオーディオ信号Xvを入力し、サンプリング周期Tv(つまり、1/fv)毎の時刻mにおいて入力系列であるオーディオ信号Xv(m)が供給されると、その時刻mのオーディオ信号Xv(m)及び過去に供給されたオーディオ信号Xv(m-1),Xv(m-2),…,Xv(m-P)と、タップ数Tpのフィルタ係数(タップ係数)a0,a1,a2,…,aPとを積和演算することで、次式(6b)で表される出力系列Ya(m)を生成して出力する。そして、出力系列Ya(m)をDA変換器3aでディジタルアナログ変換させ、更に増幅器4aで音量調整させて、高域スピーカSL側へ出力させる。また、DA変換器3aと増幅器4aも、動作周波数faのクロック信号に同期してディジタルアナログ変換の処理と増幅処理を行う構成となっている。
【0041】
【数6】

【0042】
更に、上記式(6a)(6b)は、サンプルレート変換器1における再サンプリング比βが1に設定され、32kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsがそのまま32kHzのサンプリング周波数fvでサンプリングされているオーディオ信号Xvとして供給される場合(以下、「第1の場合」)と、サンプルレート変換器1における再サンプリング比βが1に設定され、44.1kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsがそのまま44.1kHzのサンプリング周波数fvでサンプリングされているオーディオ信号Xvとして供給される場合(以下、「第2の場合」)と、サンプルレート変換器1における再サンプリング比βが比(fbase/fs)に設定され、44.1kHzより高い周波数のサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsが44.1kHzのサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvにダウンコンバートされて供給される場合(以下、「第3の場合」)とを総括して示しているが、「第2の場合」と「第3の場合」では、同じフィルタ係数a0,a1,a2,…,aPによって所定の周波数特性の得られるローパフィルタリングが行われ、「第1の場合」には、フィルタ係数a0,a1,a2,…,aPが調整されて、「第2の場合」と「第3の場合」の上記所定の周波数特性と同じ周波数特性の得られるローパフィルタリングが行われるようになっている。なお、図示していないが、フィルタ係数a0,a1,a2,…,aPを、データベースに記憶されているデータに基づいて調整する調整手段が制御部20内に形成されている。
【0043】
次に、第2の系統に属するFIRフィルタ2bは、図3(b)に示すタップ数TqがQ+1に決められたFIRフィルタで形成され、遅延時間τbで示されているQ個の遅延素子から成るシフトレジスタと、各遅延素子の入力又は出力に対してタップ係数b0,b1,b2,…,bQ-1,bQを乗算するQ+1個の乗算器と、全ての乗算器の出力を加算する加算器ADbとを備えた基本構成を有している。
【0044】
ここで、タップ数Tqは、Q個の各遅延素子の遅延時間τbを上述の基準周波数fbaseの逆数(すなわち、サンプリング周期1/fbase)に設定して、基準周波数fbaseと等しい44.1kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号を低中域スピーカSLMの周波数帯域の範囲でバンドパスフィルタリングした場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせて、設計されている。つまり、タップ長がインパルス応答の継続時間以上で同程度となるようにタップ数Tqを決めることで、FIRフィルタ2bが不必要に大型とならないように設計されている。
【0045】
そして、FIRフィルタ2bは、次式(7a)に示すz変換表記の伝達関数Hb(z)を発揮し、サンプルレート変換器1から出力されるオーディオ信号Xvを入力し、サンプリング周期Tv(つまり、1/fv)毎の時刻mにおいて入力系列であるオーディオ信号Xv(m)が供給されると、その時刻mのオーディオ信号Xv(m)及び過去に供給されたオーディオ信号Xv(m-1),Xv(m-2),…,Xv(m-Q)と、タップ数Tqのフィルタ係数(タップ係数)b0,b1,b2,…,bQとを積和演算することで、次式(7b)で表される出力系列Yb(m)を生成して出力する。そして、出力系列Yb(m)をDA変換器3bでディジタルアナログ変換させ、更に増幅器4bで音量調整させて、高域スピーカSLM側へ出力させる。また、DA変換器3bと増幅器4bも、動作周波数fbのクロック信号に同期してディジタルアナログ変換の処理と増幅処理を行う構成となっている。
【0046】
【数7】

【0047】
更に、上記式(7a)(7b)は、サンプルレート変換器1における再サンプリング比βが1に設定され、32kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsがそのまま32kHzのサンプリング周波数fvでサンプリングされているオーディオ信号Xvとして供給される場合(以下、「第4の場合」)と、サンプルレート変換器1における再サンプリング比βが1に設定され、44.1kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsがそのまま44.1kHzのサンプリング周波数fvでサンプリングされているオーディオ信号Xvとして供給される場合(以下、「第5の場合」)と、サンプルレート変換器1における再サンプリング比βが比(fv/fs)に設定され、44.1kHzより高い周波数のサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsが44.1kHzのサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvにダウンコンバートされて供給される場合(以下、「第6の場合」)とを総括して示しているが、「第5の場合」と「第6の場合」では、同じフィルタ係数b0,b1,b2,…,bQによって所定の周波数特性の得られるローパフィルタリングが行われ、「第4の場合」には、フィルタ係数b0,b1,b2,…,bQが調整されて、「第5の場合」と「第6の場合」の上記所定の周波数特性と同じ周波数特性の得られるローパフィルタリングが行われるようになっている。なお、図示していないが、フィルタ係数b0,b1,b2,…,bQを、データベースに記憶されているデータに基づいて調整する調整手段が制御部20内に形成されている。
【0048】
次に、第3の系統に属するFIRフィルタ2cは、図3(c)に示すタップ数TrがR+1に決められたFIRフィルタで形成され、遅延時間τcで示されているR個の遅延素子から成るシフトレジスタと、各遅延素子の入力又は出力に対してタップ係数c0,c1,c2,…,cR-1,cRを乗算するR+1個の乗算器と、全ての乗算器の出力を加算する加算器ADcとを備えた基本構成を有している。
【0049】
ここで、タップ数Trは、R個の各遅延素子の遅延時間τcを上述の規格で規定されている最も高いサンプリング周波数(192kHz)の逆数(すなわち、サンプリング周期1/192kHz)に設定して、192kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号を中高域スピーカSMHの周波数帯域の範囲でバンドパスフィルタリングした場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせて、設計されている。つまり、タップ長がインパルス応答の継続時間以上で同程度となるようにタップ数Trを決めることで、FIRフィルタ2cが不必要に大型とならないように設計されている。
【0050】
そして、FIRフィルタ2cは、次式(8a)に示すz変換表記の伝達関数Hc(z)を発揮し、信号源10から出力されるオーディオ信号Xsを入力し、サンプリング周期Ts(つまり、1/fs)毎の時刻nにおいて入力系列であるオーディオ信号Xs(n)が供給されると、その時刻nのオーディオ信号Xs(n)及び過去に供給されたオーディオ信号Xs(n-1),Xs(n-2),…,Xs(n-R)と、タップ数Trのフィルタ係数(タップ係数)c0,c1,c2,…,cRとを積和演算することで、次式(8b)で表される出力系列Yc(n)を生成して出力する。そして、出力系列Yc(n)をDA変換器3cでディジタルアナログ変換させ、更に増幅器4cで音量調整させて、高域スピーカSMH側へ出力させる。また、DA変換器3cと増幅器4cも、動作周波数fcのクロック信号に同期してディジタルアナログ変換の処理と増幅処理を行う構成となっている。
【0051】
【数8】

【0052】
更に、上記式(8a)(8b)は、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの何れかのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsが供給される場合について総括して示しているが、何れのサンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsに対して同じ周波数特性でバンドパスフィルタリングを行うように、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの各サンプリング周波数fs毎にフィルタ係数c0,c1,c2,…,cRが調整されようになっている。なお、図示していないが、フィルタ係数c0,c1,c2,…,cRを、データベースに記憶されているデータに基づいて調整する調整手段が制御部20内に形成されている。
【0053】
次に、第4の系統に属するFIRフィルタ2dは、図3(d)に示すタップ数TuがU+1に決められたFIRフィルタで形成され、遅延時間τdで示されているU個の遅延素子から成るシフトレジスタと、各遅延素子の入力又は出力に対してタップ係数d0,d1,d2,…,dU-1,dUを乗算するU+1個の乗算器と、全ての乗算器の出力を加算する加算器ADdとを備えた基本構成を有している。
【0054】
ここで、タップ数Tuは、U個の各遅延素子の遅延時間τdを上述の規格で規定されている最も高いサンプリング周波数(192kHz)の逆数(すなわち、サンプリング周期1/192kHz)に設定して、192kHzのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号を高域スピーカSHの周波数帯域の範囲でハイパスフィルタリングした場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせて、設計されている。つまり、タップ長がインパルス応答の継続時間以上で同程度となるようにタップ数Tuを決めることで、FIRフィルタ2dが不必要に大型とならないように設計されている。
【0055】
そして、FIRフィルタ2dは、次式(9a)に示すz変換表記の伝達関数Hd(z)を発揮し、信号源10から出力されるオーディオ信号Xsを入力し、サンプリング周期Ts(つまり、1/fs)毎の時刻nにおいて入力系列であるオーディオ信号Xs(n)が供給されると、その時刻nのオーディオ信号Xs(n)及び過去に供給されたオーディオ信号Xs(n-1),Xs(n-2),…,Xs(n-U)と、タップ数Trのフィルタ係数(タップ係数)d0,d1,d2,…,dUとを積和演算することで、次式(9b)で表される出力系列Yd(n)を生成して出力する。そして、出力系列Yd(n)をDA変換器3dでディジタルアナログ変換させ、更に増幅器4dで音量調整させて、高域スピーカSH側へ出力させる。また、DA変換器3dと増幅器4dも、動作周波数fdのクロック信号に同期してディジタルアナログ変換の処理と増幅処理を行う構成となっている。
【0056】
【数9】

【0057】
更に、上記式(9a)(9b)は、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの何れかのサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsが供給される場合について総括して示しているが、何れのサンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsに対して同じ周波数特性でバンドパスフィルタリングを行うように、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの各サンプリング周波数fs毎にフィルタ係数d0,d1,d2,…,dUが調整されようになっている。なお、図示していないが、フィルタ係数d0,d1,d2,…,dUを、データベースに記憶されているデータに基づいて調整する調整手段が制御部20内に形成されている。
【0058】
次に、本実施形態のオーディオ信号処理装置の動作について、図2を参照して説明する。
【0059】
信号源10から、基準周波数fbaseと等しい44.1kHzのオーディオ信号Xsが出力されると、制御部20は信号源10から出力される所定のコントロールデータを調べて、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsが44.1kHzであると判定する。そして、再サンプリング比βを1に設定し、更に動作周波数fa,fb,fc,fdを基準周波数fbaseと等しい(別言すれば、サンプリング周波数fsと等しい)44.1kHzに設定する。
【0060】
これにより、サンプルレート変換器1が、サンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsをダウンコンバートすることなく、サンプリング周波数fsと等しいサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvとして出力する。
【0061】
更に、FIRフィルタ2a,2bが、基準周波数fbase及びサンプリング周波数fsと等しい動作周波数fa,fbで、オーディオ信号Xvをディジタルフィルタリングすることで出力系列Ya,Ybを生成し、DA変換器3a,3bと増幅器4a,4bを介して、スピーカSL,SLMに供給し、FIRフィルタ2c,2dも同様に、基準周波数fbase及びサンプリング周波数fsと等しい動作周波数fc,fdで、オーディオ信号Xsをディジタルフィルタリングすることで出力系列Yc,Ydを生成し、DA変換器3c,3dと増幅器4c,4dを介して、スピーカSMH,SHに供給する。
【0062】
次に、信号源10から、基準周波数fbaseより低いサンプリング周波数fs(32kHz)のオーディオ信号Xsが出力された場合には、制御部20は信号源10から出力される所定のコントロールデータを調べて、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsが32kHzであると判定する。そして、再サンプリング比βを1に設定し、更に動作周波数fa,fb,fc,fdをサンプリング周波数fsと等しい32kHzに設定する。
【0063】
これにより、サンプルレート変換器1が、サンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsをダウンコンバートすることなく、サンプリング周波数fsと等しいサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvとして出力する。
【0064】
更に、FIRフィルタ2a,2bが、サンプリング周波数fsと等しい動作周波数fa,fbで、オーディオ信号Xvをディジタルフィルタリングすることで出力系列Ya,Ybを生成し、DA変換器3a,3bと増幅器4a,4bを介して、スピーカSL,SLMに供給し、FIRフィルタ2c,2dも同様に、サンプリング周波数fsと等しい動作周波数fc,fdで、オーディオ信号Xsをディジタルフィルタリングすることで出力系列Yc,Ydを生成し、DA変換器3c,3dと増幅器4c,4dを介して、スピーカSMH,SHに供給する。
【0065】
次に、信号源10から、基準周波数fbaseより高いサンプリング周波数fs(48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHzの何れかのサンプリング周波数)のオーディオ信号Xsが出力された場合には、制御部20は信号源10から出力される所定のコントロールデータを調べて、オーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsを判定する。そして、再サンプリング比βを比(fbase/fs)に設定し、更に動作周波数fa,fbを基準周波数fbaseと等しい44.1kHzに設定し、動作周波数fc,fdをサンプリング周波数fsと等しい周波数に設定する。
【0066】
これにより、サンプルレート変換器1が、サンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsを再サンプリング比βでダウンコンバートし、基準周波数fbaseと等しい44.1kHzのサンプリング周波数fvにサンプルレート変換したオーディオ信号Xvを出力する。
【0067】
更に、FIRフィルタ2a,2bが、基準周波数fbase及びサンプリング周波数fvと等しい動作周波数fa,fbで、オーディオ信号Xvをディジタルフィルタリングすることで出力系列Ya,Ybを生成し、DA変換器3a,3bと増幅器4a,4bを介して、スピーカSL,SLMに供給し、FIRフィルタ2c,2dが、サンプリング周波数fsと等しい動作周波数fc,fdで、オーディオ信号Xsをディジタルフィルタリングすることで出力系列Yc,Ydを生成し、DA変換器3c,3dと増幅器4c,4dを介して、スピーカSMH,SHに供給する。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態のオーディオ信号処理装置によれば、次に述べる効果が得られる。
【0069】
まず、複数のサンプリング周波数fsのうちの特定のサンプリング周波数(44.1kHz)を基準周波数fbaseと決め、低域と低中域のディジタルフィルタリングを行うFIRフィルタ2a,2bが、基準周波数fbaseと等しい動作周波数fa,fbで動作する所定のタップ数Tp,TqのFIRフィルタで予め形成されている。そして、信号源10から出力されるオーディオ信号Xsのサンプリング周波数fsが基準周波数fbaseより高い周波数のときには、制御部20の制御下でサンプルレート変換器1がオーディオ信号Xsをダウンサンプリングして、基準周波数fbaseと等しいサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvを生成し、そのサンプリング周波数fvのオーディオ信号Xvを、FIRフィルタ2a,2bが基準周波数fbaseと等しい動作周波数fa,fbでディジタルフィルタリングする。
【0070】
このため、複数のサンプリング周波数fsのうちの最も高いサンプリング周波数(192kHz)でサンプリングされているオーディオ信号Xsを処理すべくタップ長の長い(タップ数の多い)FIRフィルタでFIRフィルタ2a,2bを予め形成しておく必要が無く、オーディオ信号処理装置の回路規模の低減や処理量の低減等を実現することが可能となっている。
【0071】
また、低域と低中域のディジタルフィルタリングを行うFIRフィルタ2a,2bが、基準周波数fbase(44.1kHz)と等しい動作周波数fa,fbで動作する所定のタップ数Tp,TqのFIRフィルタで予め形成されていることから、基準周波数fbaseより低いサンプリング周波数fs(32kHz)のオーディオ信号Xsが信号源10から出力された場合、十分なタップ長を確保して、その低いサンプリング周波数fsのオーディオ信号Xsがサンプルレート変換されなくとも、ディジタルフィルタリングすることが可能である。
【0072】
なお、以上に説明した実施形態では、基準周波数fbaseを44.1kHzとしているが、基準周波数fbaseを、最も低いサンプリング周波数(32kHz)から最も高いサンプリング周波数(192kHz)の範囲内の他のサンプリング周波数(例えば、48kHz、88.2kHz、96kHzの何れか)に決めて、FIRフィルタ2a,2bをその基準周波数fbaseで動作するように予め形成しておき、制御部20に、その基準周波数fbaseを基準として再サンプリング比βと動作周波数fa,fb,fc,fdの設定を行わせる構成としてもよい。
【0073】
ただし、最も使用頻度の高いサンプリング周波数を基準周波数fbaseに決めて、FIRフィルタ2a,2bをその基準周波数fbaseで動作するように予め形成しておき、制御部20に、その基準周波数fbaseを基準として再サンプリング比βと動作周波数fa,fb,fc,fdの設定を行わせる構成とすることが、オーディオ信号処理装置を効率良く動作させる上で、好ましい。
【0074】
また、以上に説明した本実施形態のオーディオ信号処理装置では、図2に示したように、4個のスピーカSL,SLM,SMH,SHに合わせて、4系統のFIRフィルタ2a,2b,2c,2dを備える構成となっているが、本実施形態のオーディオ信号処理装置は、1又は複数の各スピーカの周波数特性に合わせて、周波数分割や音質調整等を行う1又は複数系統の各FIRフィルタを備えるオーディオ信号処理装置にも応用することが可能である。
【0075】
例えば、変形例として、オーディオ帯域全体を周波数帯域とする1個のスピーカ(フルレンジスピーカ)に供給するオーディオ信号をディジタルフィルタリングする場合、例えば図2に示したFIRフィルタ2bを備える第2の系統だけでディジタルフィルタリングすることとし、そのFIRフィルタ2bのタップ数を、所定の基準周波数fbaseと等しいサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号をオーディオ帯域全体の範囲でバンドパスフィルタリングした場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせて設計する。そして、その基準周波数fbaseより高いサンプリング周波数fsでサンプリングされているオーディオ信号Xsが信号源10から出力されるときには、サンプルレート変換器1でそのオーディオ信号Xsをその基準周波数fbaseのオーディオ信号Xvにダウンコンバートし、そのFIRフィルタ2bがその基準周波数fbaseと等しい動作周波数fbでオーディオ信号Xvをディジタルフィルタリングする構成とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】従来のオーディオ信号処理装置の構成を表したブロック図である。
【図2】実施形態に係るオーディオ信号処理装置の構成を表したブロック図である。
【図3】図2に示したFIRフィルタの基本構成を表したブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
10…信号源
20…制御部
1…サンプルレート変換器
2a,2b…FIRフィルタ
SL,SLM…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号源から出力される、異なるサンプリング周波数でサンプリングされている複数のオーディオ信号をディジタルフィルタリングするFIRフィルタを有するオーディオ信号処理装置であって、
前記サンプリング周波数のうちの所定サンプリング周波数を基準周波数として、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数と前記基準周波数とを比較し、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数が前記基準周波数より高い周波数と判定すると、前記サンプリング周波数と前記基準周波数との比を再サンプリング比として演算する制御手段と、
前記信号源から出力されるオーディオ信号を前記再サンプリング比に基づいてダウンコンバートして前記FIRフィルタに供給するサンプルレート変換手段とを具備し、
前記FIRフィルタは、前記基準周波数と等しい動作周波数の下で、前記基準周波数と等しいサンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号を所定の周波数帯域の範囲でディジタルフィルタリングする場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせてタップ数が決められたFIRフィルタであること、
を特徴とするオーディオ信号処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数が前記基準周波数と等しいと判定すると、前記再サンプリング比を1に設定して前記サンプルレート変換手段に前記ダウンコバートさせず、前記信号源から出力されるオーディオ信号をそのまま前記FIRフィルタへ供給させること、
を特徴とする請求項1に記載のオーディオ信号処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数が前記基準周波数より低い周波数と判定すると、前記再サンプリング比を1に設定して前記サンプルレート変換手段に前記ダウンコバートさせず、前記信号源から出力されるオーディオ信号をそのまま前記FIRフィルタへ供給させ、更に前記FIRフィルタの動作周波数を前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数と等しい周波数に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のオーディオ信号処理装置。
【請求項4】
前記所定の周波数帯域は、前記FIRフィルタでディジタルフィルタリングしたオーディオ信号を供給するスピーカの周波数帯域であること、
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のオーディオ信号処理装置。
【請求項5】
更に、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数と等しい動作周波数で、前記前記信号源から出力されるオーディオ信号をディジタルフィルタリングする他のFIRフィルタを具備すること、
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のオーディオ信号処理装置。
【請求項6】
信号源から出力される、異なるサンプリング周波数でサンプリングされている複数のオーディオ信号をディジタルフィルタリングするオーディオ信号処理方法であって、
前記サンプリング周波数のうちの所定サンプリング周波数を基準周波数として、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数と前記基準周波数とを比較し、前記信号源から出力されるオーディオ信号のサンプリング周波数が前記基準周波数より高い周波数と判定すると、前記サンプリング周波数と前記基準周波数との比を再サンプリング比として演算する制御工程と、
前記信号源から出力されるオーディオ信号を前記再サンプリング比に基づいてダウンコンバートするサンプルレート変換工程と、
前記サンプルレート変換工程でダウンコンバートされたダウンコンバート後のオーディオ信号をディジタルフィルタリングするFIRフィルタ工程とを具備し、
前記FIRフィルタ工程は、前記基準周波数と等しい動作周波数の下で、前記基準周波数と等しいサンプリング周波数でサンプリングされているオーディオ信号を所定の周波数帯域の範囲でディジタルフィルタリングする場合に生じるインパルス応答の継続時間に合わせてタップ数が決められたFIRフィルタ工程であること、
を特徴とするオーディオ信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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