説明

オーディオ信号補間装置

【課題】
圧縮処理により高周波成分が失われたオーディオ信号に対して、基音部との相関性がよい高周波数成分を補間することができ、低音を強調してオーディオ信号を再生するとき、周辺への低周波騒音を低減することができるオーディオ信号補間装置を提供する。
【解決手段】
オーディオ信号に高周波帯域を補間する高域補間手段と、基本周波数の複数の倍音を付加しオーディオ信号の低周波帯域を強調する低域強調手段と、高域補間手段により高周波成分が補間され低域強調手段により低周波成分が強調されたオーディオ信号から予め定められた低周波成分を除去するフィルタ手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ信号に高周波成分および低周波成分を補間するオーディオ信号補間装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MP3等のオーディオデータは、圧縮処理をする際に高域(例えば、16kHz以上)の高周波数成分の信号がカットされている。このため、MP3等の圧縮処理されたオーディオデータは、圧縮処理される前のオーディオ信号と比べて音質が悪くなる。このようなオーディオデータを高音質にするために、例えば特許文献1に開示されているように、圧縮処理により失われた高周波成分をオーディオデータに補間する手段がある。
【0003】
また、人間のミッシング・ファンダメンタル(missing fundamental)と呼ばれる聴覚現象を利用して、実際には存在しない基本周波数に対応する音を人間に知覚させることができる。例えば、100Hz、150Hz、200Hzの音が出ていると、それらの基本周波数である50Hz周辺の音を知覚することができる。このようにミッシング・ファンダメンタル現象を利用することにより、MP3等の圧縮処理されたオーディオデータを再生するとき、または、低音域を再生することが難しい小型スピーカを使用しているとき、聴取者は低音が強調されたオーディオ信号を聴くことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−175092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている手段は、帯域制限されたオーディオ信号の高周波成分の一部を複写し、このオーディオ信号に複写した高周波成分を追加することにより、圧縮処理により失われた高周波数成分を補間する。このような補間の手段では、追加する高周波成分とオーディオ信号の基音部との相関性が薄く、聴取者にとって補間されたオーディオ信号が不自然に聴こえる虞がある。
【0006】
また、再生されたオーディオ信号を聴取する時、多くの場合において周囲への騒音の配慮がなされていない。そのため、周囲への音漏れを出来るだけ少なくすることが求められている。特に、低音域を強調する場合、音波は低周波になるほど、壁を通過しやすくなるため、低周波騒音の対策が必要となる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、圧縮処理により高周波成分が失われたオーディオ信号に対して、基音部との相関性がよい高周波数成分を補間することができるオーディオ信号補間装置を提供することを目的とする。また、低音を強調してオーディオ信号を再生するとき、周囲への低周波騒音を低減することができるオーディオ信号補間装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明におけるオーディオ信号補間装置は、オーディオ信号に高周波帯域を補間する高域補間手段と、基本周波数の複数の倍音を付加しオーディオ信号の低周波帯域を強調する低域強調手段と、前記高域補間手段により高周波成分が補間され前記低域強調手段により低周波成分が強調されたオーディオ信号から予め定められた低周波成分を除去するフィルタ手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記のオーディオ信号補間装置において、前記高域補間手段は、第1のオーディオ信号および第2のオーディオ信号を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された第1のオーディオ信号および第2のオーディ信号を遅延させる遅延手段と、前記入力手段から入力された第1のオーディオ信号と第2のオーディオ信号を同位相成分信号と差位相成分信号に分割する位相分割手段と、前記同位相成分信号および前記差位相成分信号に高周波成分を補間する処理を施す補間処理手段と、前記補間処理手段により高周波成分が補間された同位相成分信号と差位相成分信号を合成し、第3のオーディオ信号と第4のオーディオ信号を出力する位相合成手段と、前記位相合成手段から出力された第3のオーディオ信号にハイパスフィルタ処理を施す第1のハイパスフィルタ手段と、前記位相合成手段から出力された第4のオーディオ信号にハイパスフィルタ処理を施す第2のハイパスフィルタ手段と、前記遅延手段により遅延された第1のオーディオ信号と前記第1のハイパスフィルタ手段から出力された信号を加算する第1の加算処理部と、前記遅延手段により遅延された第2のオーディオ信号と前記第2のハイパスフィルタ手段から出力された信号を加算する第2の加算処理部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記のオーディオ信号補間装置において、前記高域補間処理手段は、前記同位相成分信号および前記差位相成分信号のカットオフ周波数を検出するカットオフ周波数検出手段と、前記カットオフ周波数検出手段により検出された前記同位相成分信号のカットオフ周波数における包絡線情報を生成し、前記カットオフ周波数検出手段により検出された前記差位相成分信号のカットオフ周波数における包絡線情報を生成する包絡線生成手段と、前記同位相成分信号の包絡線情報に応じて前記同位相成分信号のカットオフ周波数より高周波成分を補間する周波数帯域を定め、当該周波数帯域を補間し前記差位相成分信号の包絡線情報に応じて前記差位相成分信号のカットオフ周波数から高周波成分を補間する周波数帯域を定め当該周波数帯域を補間する高周波成分補間手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記のオーディオ信号補間装置において、前記高周波成分補間手段が高周波成分を補間する周波数帯域は、所定のナイキスト周波数以下であることを特徴とする。
【0012】
また、上記のオーディオ信号補間装置において、前記低域強調手段は、基本周波数の倍音を中心周波数とする複数のバンドパスフィルタ手段と、前記バンドパスフィルタ手段から出力された各オーディオ信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された各オーディオ信号を加算する加算手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧縮処理により高周波成分が失われたオーディオ信号に対して、基音部との相関性がよい高周波数成分を補間することができるオーディオ信号補間装置を提供することができる。また、低音を強調してオーディオ信号を再生するとき、周囲への低周波騒音を低減することができるオーディオ信号補間装置を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例であるオーディオ信号補間装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施例のオーディオ信号補間装置10は、入力部20、高域補間部30、低域強調部40、ハイパスフィルタ50、出力部60を備える。本実施例のオーディオ信号補間装置は、AVアンプやMP3等の圧縮処理されたオーディオデータが再生可能なプレーヤに備えられる。
【0015】
本実施例のオーディオ信号補間装置10は、デジタル信号であるステレオオーディオ信号の左チャンネル(Lch)のオーディオ信号と右チャンネル(Rch)のオーディオ信号を入力部10から入力する。入力されたLchおよびRchのオーディオ信号は、高域補間部30により高周波成分が補間される。また、LchおよびRchのオーディオ信号は、低音強調部40により低周波成分が強調されるように補間される。高周波成分および低周波成分が補間されたオーディオ信号は、ハイパスフィルタ50により予め定められた低周波成分(例えば、50Hz以下)が除去され、出力部60から出力される。
【0016】
図2は、本実施例の高域補間部30の構成を示すブロック図である。図2に示すように、高域補間部30は、位相分割部31、補間処理部32、位相合成部33、フィルタ部34、加算処理部35、遅延部36、遅延部37を備える。
【0017】
図2に示すように、入力部20から入力されたLchのオーディオ信号は位相分割部31と遅延部36に入力され、入力部20からRchのオーディオ信号は位相分割部31と遅延部37に入力される。位相分割部31は、合成部311および合成部312を備え、入力部20から入力されたLchおよびRchのオーディオ信号を同位相成分|L+R|と差位相成分|L-R|の信号に分割する。同位相成分信号は、合成部311によりLchのオーディオ信号とRchのオーディオ信号を合成することにより得られる。差位相成分信号は、合成部312によりLchのオーディオ信号を反転させRchのオーディオ信号と合成することにより得られる。
【0018】
補間処理部32は、入力された同位相成分信号に高音域成分を補間する処理を施すために、カットオフ周波数検出部321、包絡線生成部322および補間部323を備える。カットオフ周波数検出部321は、高速フーリエ変換等を用いて補間処理部32に入力された同位相成分信号のカットオフ周波数fcを検出する。包絡線生成部322は、補間処理部32に入力された同位相成分信号に高速フーリエ変換処理を施し生成されたスペクトル分布からケプストラム分析をすることにより、カットオフ周波数検出部321が検出したカットオフ周波数fcにおける包絡線情報を生成する。補間部323は、生成された包絡線情報に応じて、検出したカットオフ周波数fcから高音域成分を補間する周波数帯域を定め、補間処理部32に入力された同位相成分信号の当該周波数帯域に高周波成分を補間する。
【0019】
また、補間処理部32は、入力された差位相成分信号に高音域成分を補間する処理を施すために、カットオフ周波数検出部324、包絡線生成部325および補間部326を備える。カットオフ周波数検出部324は、高速フーリエ変換等を用いて補間処理部32に入力された差位相成分信号のカットオフ周波数fcを検出する。包絡線生成部325は、補間処理部32に入力された差位相成分信号に高速フーリエ変換処理を施し生成されたスペクトル分布からケプストラム分析をすることにより、カットオフ周波数検出部324が検出したカットオフ周波数fcにおける包絡線情報を生成する。補間部326は、生成された包絡線情報に応じて、検出したカットオフ周波数fcから高音域成分を補間する周波数帯域を定め、補間処理部4に入力された差位相成分信号の当該周波数帯域に高周波成分を補間する。
【0020】
位相合成部33は、合成部331および合成部332を備え、補間処理部32から入力された同位相成分信号と差位相成分信号を合成し、Lchのオーディオ信号とRchのオーディオ信号を出力する。合成部331は、同位相成分信号と差位相成分信号を合成することにより得られるLchのオーディオ信号を出力する。合成部332は、反転させた同位相成分信号と差位相成分信号を合成することにより得られるRchのオーディオ信号を出力する。
【0021】
フィルタ部34は、ハイパスフィルタ341およびハイパスフィルタ342を備える。ハイパスフィルタ341は、カットオフ周波数検出部321が検出したカットオフ周波数fcで、合成部331から出力されたLchのオーディオ信号の低音域成分を除去する。ハイパスフィルタ342は、カットオフ周波数検出部324が検出したカットオフ周波数fcで、合成部332から出力されたRchのオーディオ信号の低音域成分を除去する。
【0022】
加算処理部35は、加算部351および加算部352を備える。加算部351は、ハイパスフィルタ341から出力された低音域成分が除去されたLchのオーディオ信号と遅延部36から出力されたLchのオーディオ信号を加算する。加算部352は、ハイパスフィルタ342から出力された低音域成分が除去されたRchのオーディオ信号と遅延部37から出力されたRchのオーディオ信号を加算する。
【0023】
遅延部36は、入力部20から入力されたLchのオーディオ信号を、位相分割部31、補間処理部32、位相合成部33およびフィルタ部34の処理により生じる位相遅れに相当する時間だけ遅延させる。遅延部37は、入力部20から入力されたRchのオーディオ信号を、位相分割部31、補間処理部32、位相合成部33およびフィルタ部35の処理により生じる位相遅れに相当する時間だけ遅延させる。
【0024】
次に、本実施例のオーディオ信号補間装置1における補間処理部32による補間処理について説明する。図3は、高周波成分の補間処理を説明する図である。
【0025】
図3(a)に示す同位相成分信号のスペクトルを表すグラフにおいて、fcはカットオフ周波数検出部321が検出した同位相成分信号のカットオフ周波数であり、fnはナイキスト周波数である。図3(b)に示す差位相成分信号のスペクトルを表すグラフにおいて、fcはカットオフ周波数検出部324が検出した差位相成分信号のカットオフ周波数であり、fnはナイキスト周波数である。オーディオ信号補間装置1に入力されるオーディオ信号はステレオ信号であるため、図3(a)に示すカットオフ周波数fcと図3(b)に示すカットオフ周波数fcは、実質的に同じ周波数であり、図3(a)に示すナイキスト周波数fnと図3(b)に示すナイキスト周波数も、実質的に同じ周波数となる。ステレオオーディオ信号がMP3等の圧縮処理されたオーディオデータである場合、カットオフ周波数fcは16kHzとなる。また、ナイキスト周波数fnは、例えば22.05kHzである。
【0026】
図3(a)に示す包絡線は、包絡線生成部322により生成されたカットオフ周波数fcにおける包絡線であり、その傾きをCOMMと表す。図3(b)に示す包絡線は、包絡線生成部45により生成されたカットオフ周波数fcにおける包絡線であり、その傾きをDIFFと表す。本実施例において、同位相成分信号の包絡線の傾きCOMMは、差位相成分信号の包絡線の傾きDIFFより急峻である。これは、一般的にステレオオーディオ信号では、エコー成分、残響成分やリバーブ成分などの高調波成分は、差位相成分信号の高音域まで多く含まれている。また、ボーカル音や楽器の基音などの高調波成分は、同位相成分信号に含まれていることが多く、高音域になるにつれて減衰するためである。
【0027】
通常、オーディオ信号は、高音域になるにつれてスペクトラム成分が減少する。このため、上述したように、同位相成分信号と差位相成分信号も高音域になるにつれてスペクトラム成分が減少するが、その減少の仕方に違いが生じる。本実施例では、このスペクトラム成分の減少の違いを利用して、同位相成分信号と差位相成分信号のカットオフ周波数fcにおける包絡線上に沿って高周波成分を補間することにより、より原音に近い信号になるように補間することが可能になる。
【0028】
補間処理部32において、補間部323は、入力された同位相成分信号を高速フーリエ変換解析し周波数シフト処理等を施すことにより、カットオフ周波数fcから傾きCOMMの包絡線に沿ってナイキスト周波数まで間の周波数帯域に高周波成分を補間する。図3(a)に示すように、包絡線と周波数軸の交点の周波数fがナイキスト周波数fnより低い場合(すなわち、fc<f<fnの場合)、補間部323は、カットオフ周波数fcからその交点の周波数fまでの周波数帯域に高周波成分を補間する。このようにして、補間部323により同位相成分信号に補間された高周波成分は、図3(a)に示す斜線部の領域となる。
【0029】
また、補間部326は、入力された差位相成分信号を高速フーリエ変換解析し周波数シフト処理等を施すことにより、カットオフ周波数fcから傾きDIFFの包絡線に沿ってナイキスト周波数まで間の周波数帯域に高周波成分を補間する。図3(b)に示すように、包絡線と周波数軸の交点の周波数fはナイキスト周波数fnより高くなるため、補間部326は、カットオフ周波数fcからナイキスト周波数fnまでの周波数帯域に高周波成分を補間する。このようにして、補間部326により差位相成分信号に補間された高周波成分は、図3(b)に示す斜線部の領域となる。
【0030】
図3に示すように高周波成分が補間された同位相成分信号および差位相成分信号は、位相合成部33により合成されLchのオーディオ信号およびRchのオーディオ信号となる。このLchおよびRchのオーディオ信号は、フィルタ部34によりカットオフ周波数fcにおいて低音域成分が除去され、補間処理部32により補間されたLchおよびRchの高周波成分が抽出される。
【0031】
フィルタ部34により抽出されたLchおよびRchの高周波成分は、加算処理部35によりそれぞれ遅延部36および遅延部37から出力されたLchおよびRchのオーディオ信号に加算される。ここで、加算処理部35に入力されるLchおよびRchオーディオ信号は、補間処理部32により補間処理されるオーディオ信号と同一のオーディオ信号となるように、遅延部36および遅延部37によって遅延されたものである。
【0032】
以上のように、本実施例の高域補間部30は、圧縮処理により高周波成分が失われたオーディオ信号に対して、基音部との相関性がよい高周波数成分を補間することができる。これにより、聴取者にとって、高周波成分が補間されたオーディオ信号が不自然に聴こえるようなことがなくなる。
【0033】
次に、本実施例のオーディオ信号補正装置10が備える低域強調部40の構成について説明する。図4は、本実施例の低域強調部40の構成を示すブロック図である。図4に示すように、低域強調部40は、加算部41、バンドパスフィルタ42a、バンドパスフィルタ42b、バンドパスフィルタ42c、増幅部43a、増幅部43b、増幅部43c、加算部44、加算部45、加算部46を備える。
【0034】
高域補間部30により高周波成分が補間されたLchおよびRchのオーディオ信号は、加算部41に入力される。加算部41により加算されたLchおよびRchのオーディオ信号は、バンドパスフィルタ42a、バンドパスフィルタ42bおよびバンドパスフィルタ42cに入力される。バンドパスフィルタ42a、バンドパスフィルタ42bおよびバンドパスフィルタ42cは、基本周波数を50Hzとし、この50Hzの倍音となる周波数が中心周波数となるように設定されている。本実施例において、バンドパスフィルタ42aは中心周波数が100Hzに設定され、バンドパスフィルタ42bは中心周波数が150Hzに設定され、バンドパスフィルタ42cは中心周波数が200Hzに設定されている。
【0035】
増幅部43aは、バンドパスフィルタ42aから入力した中心周波数が100Hzである信号を所定レベルに増幅する。増幅部43bは、バンドパスフィルタ42bから入力した中心周波数が150Hzである信号を所定レベルに増幅する。増幅部43cは、バンドパスフィルタ42cから入力した中心周波数が200Hzである信号を所定レベルに増幅する。加算部44は、増幅部43a、増幅部43bおよび増幅部43cから出力された信号を加算する。加算部44から出力された信号は、加算部45により高周波成分が補間されたLchのオーディオ信号に加算されると共に、加算部46により高周波成分が補間されたRchのオーディオ信号に加算される。
【0036】
以上のように、本実施例の低域強調部40は、基本周波数50Hzの倍音となる100Hz帯域、150Hz帯域および200Hz帯域の信号をLchおよびRchのオーディオ信号に加算する。このため、聴取者には、ミッシング・ファンダメンタル現象により、基本周波数である50Hz周辺の低音が強調されたように聴こえる。このように、本実施例において、ミッシング・ファンダメンタル現象を利用して低音を強調させるようにしているため、高域補間部30により補間された高周波成分と同様に、聴取者にとって、強調された低音が不自然に聴こえるようなことがない。
【0037】
高域補間部30低域強調部40により高周波成分および低周波成分が補間されたオーディオ信号は、ハイパスフィルタ50により予め定められた低周波成分(例えば、50Hz以下)が除去され、出力部60から出力される。本実施例のオーディオ信号補間装置10がAVアンプに備えられている場合、出力部60から出力されたオーディオ信号は、DAコンバータによりアナログオーディオ信号に変換された後、増幅部により増幅される。そして、AVアンプと接続されたLchおよびRchのスピーカから出力される。
【0038】
したがって、聴取者は、圧縮処理の際に高周波成分がカットされたオーディオデータを再生しても、違和感なく高周波成分が補間されたオーディオ信号を聴くことができ、かつ、低音が強調されたオーディオ信号を聴くことができる。また、圧縮処理の際に低周波成分もカットされたオーディオデータを再生しても、低音を強調すること、すなわち、低周波成分を補間することができる。さらに、50Hz以下のオーディオ信号は、ハイパスフィルタ50により除去されているため、低音が強調されていても、周囲への低周波騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施例のオーディオ信号補間装置の構成を示すブロック図。
【図2】本実施例の高域補間部30の構成を示すブロック図。
【図3】高周波成分の補間処理を説明する図。
【図4】本実施例の低域強調部40の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0040】
10…オーディオ信号補間装置、20…入力部、30…高域補間部、40…低域強調部、50…ハイパスフィルタ、60…出力部、31…位相分割部、32…補間処理部、33…位相合成部、34…フィルタ部、35…加算処理部、36…遅延部、37…遅延部、311…合成部、312…合成部、321…カットオフ周波数検出部、322…包絡線生成部、323…補間部、324…カットオフ周波数検出部、325…包絡線生成部、326…補間部、331…合成部、332…合成部、341…ハイパスフィルタ部、342…ハイパスフィルタ部、351…合成部、352…合成部、41…加算部、42a…バンドパスフィルタ、42b…バンドパスフィルタ、42c…バンドパスフィルタ、43a…増幅部、43b…増幅部、43c…増幅部、44…加算部、45…加算部、46…加算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号に高周波帯域を補間する高域補間手段と、
基本周波数の複数の倍音を付加しオーディオ信号の低周波帯域を強調する低域強調手段と、
前記高域補間手段により高周波成分が補間され前記低域強調手段により低周波成分が強調されたオーディオ信号から予め定められた低周波成分を除去するフィルタ手段とを備えることを特徴とするオーディオ信号補間装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオーディオ信号補間装置において、
前記高域補間手段は、
第1のオーディオ信号および第2のオーディオ信号を入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された第1のオーディオ信号および第2のオーディ信号を遅延させる遅延手段と、
前記入力手段から入力された第1のオーディオ信号と第2のオーディオ信号を同位相成分信号と差位相成分信号に分割する位相分割手段と、
前記同位相成分信号および前記差位相成分信号に高周波成分を補間する処理を施す補間処理手段と、
前記補間処理手段により高周波成分が補間された同位相成分信号と差位相成分信号を合成し、第3のオーディオ信号と第4のオーディオ信号を出力する位相合成手段と、
前記位相合成手段から出力された第3のオーディオ信号にハイパスフィルタ処理を施す第1のハイパスフィルタ手段と、
前記位相合成手段から出力された第4のオーディオ信号にハイパスフィルタ処理を施す第2のハイパスフィルタ手段と、
前記遅延手段により遅延された第1のオーディオ信号と前記第1のハイパスフィルタ手段から出力された信号を加算する第1の加算処理部と、
前記遅延手段により遅延された第2のオーディオ信号と前記第2のハイパスフィルタ手段から出力された信号を加算する第2の加算処理部とを備えることを特徴とするオーディオ信号補間装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のオーディオ信号補間装置において、
前記高域補間処理手段は、
前記同位相成分信号および前記差位相成分信号のカットオフ周波数を検出するカットオフ周波数検出手段と、
前記カットオフ周波数検出手段により検出された前記同位相成分信号のカットオフ周波数における包絡線情報を生成し、前記カットオフ周波数検出手段により検出された前記差位相成分信号のカットオフ周波数における包絡線情報を生成する包絡線生成手段と、
前記同位相成分信号の包絡線情報に応じて前記同位相成分信号のカットオフ周波数より高周波成分を補間する周波数帯域を定め、当該周波数帯域を補間し前記差位相成分信号の包絡線情報に応じて前記差位相成分信号のカットオフ周波数から高周波成分を補間する周波数帯域を定め当該周波数帯域を補間する高周波成分補間手段とを備えることを特徴とするオーディオ信号補間装置。
【請求項4】
請求項3に記載のオーディオ信号補間装置において、
前記高周波成分補間手段が高周波成分を補間する周波数帯域は、所定のナイキスト周波数以下であることを特徴とするオーディオ信号補間装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のオーディオ信号補間装置において、
前記低域強調手段は、
基本周波数の倍音を中心周波数とする複数のバンドパスフィルタ手段と、
前記バンドパスフィルタ手段から出力された各オーディオ信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段により増幅された各オーディオ信号を加算する加算手段と
を備えることを特徴とするオーディオ信号補間装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−237048(P2009−237048A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80214(P2008−80214)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(303009467)株式会社ディーアンドエムホールディングス (274)