説明

オーディオ再生装置

【課題】 個々のユーザの聴覚特性に合わせて聴感補正を行うことができるオーディオ再生装置を提供する。
【解決手段】 テストトーン発生回路4は、各々の周波数が異なり、時間経過に従って音量が変化する複数種類のテストトーン信号を順次出力する。制御回路3は、リモコン7が操作された時点における各テストトーン信号の音量を検出し、聴覚特性として記憶する。また、制御回路3は、この聴覚特性に基づき、聴感補正回路2により行われるダイナミックレンジ圧縮およびラウドネス補正のパラメータ設定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、聴感補正機能を備えたオーディオ再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に人間の聴覚は、音量が小さくなるほど低域と高域が聴き取りにくくなる特性を有している。小音量でのオーディオ再生において音に迫力がなくなって聞こえたり、会話音声が聞き取りにくくなるのは、そのためである。このような人間の聴覚特性を補正し、音を聞こえやすくするための手段としてラウドネス補正回路がある。このラウドネス補正回路は、低域あるいは高域のオーディオ信号をブーストし、低域あるいは高域の音を聞こえやすくする回路である。このラウドネス補正回路の他、人間の聴覚特性を補正するための手段としてダイナミックレンジ圧縮がある。これは、オーディオ再生装置の再生ボリュームの設定レベルが低いときに、小さなレベルのオーディオ信号の再生音が聞こえなくなるのを改善するために、小さなレベルの入力オーディオ信号を増幅するときの増幅率を引き上げ、再生音のダイナミックレンジを意図的に圧縮する技術である。このダイナミックレンジ圧縮を行うことにより、ボリュームが低いときでも、小さな音が聞き取りやすくなる。なお、ダイナミックレンジ圧縮を行う装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許3295440号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した従来の聴感補正のための装置は、ON/OFFスイッチによりその機能の有効/無効が切り換えられるようになっているが、有効時におけるラウドネス補正回路のブースト量やダイナミックレンジ圧縮回路の圧縮率は固定されている。しかし、人間の聴覚特性には個人差があるため、スイッチON時におけるラウドネス補正やダイナミックレンジ圧縮が、ある人の聴感補正には適しているが、他の人には適していない、ということがある。
【0004】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、個々のユーザの聴覚特性に合わせて聴感補正を行うことができるオーディオ再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、この発明は、各々周波数が異なり、時間経過に従って音量が変化する複数種類のテストトーン信号を順次出力するテストトーン信号発生手段と、操作部と、前記複数種類のテストトーン信号の各々について、前記操作部の操作が行われた時点におけるテストトーン信号の音量を検出するテストトーン音量検出手段と、再生対象であるオーディオ信号のダイナミックレンジ圧縮を行って出力するダイナミックレンジ圧縮手段と、相互に異なった通過帯域を各々有し、前記ダイナミックレンジ圧縮手段の出力信号における当該通過帯域内の周波数の信号を選択して出力する複数のフィルタと、前記複数のフィルタの出力信号を増幅する複数の可変利得増幅器と、前記テストトーン音量検出手段によって検出された各テストトーン信号の音量に基づいて、前記ダイナミックレンジ圧縮手段のダイナミックレンジ圧縮特性および前記複数の可変利得増幅器の増幅利得の設定を行う聴感補正手段とを具備することを特徴とするオーディオ再生装置を提供する。
また、この発明は、各々周波数が異なり、時間経過に従って音量が変化する複数種類のテストトーン信号を順次出力するテストトーン信号発生手段と、操作部と、前記複数種類のテストトーン信号の各々について、前記操作部の操作が行われた時点におけるテストトーン信号の音量を検出するテストトーン音量検出手段と、相互に異なった通過帯域を各々有し、再生対象であるオーディオ信号における当該通過帯域内の周波数の信号を選択して出力する複数のフィルタと、前記複数のフィルタの出力信号のダイナミックレンジ圧縮を各々行って出力する複数のダイナミックレンジ圧縮手段と、前記テストトーン音量検出手段によって検出された各テストトーン信号の音量に基づいて、前記複数のダイナミックレンジ圧縮手段のダイナミックレンジ圧縮特性の設定を行う聴感補正手段とを具備することを特徴とするオーディオ再生装置を提供する。
本発明によれば、個々のユーザの聴覚特性に合わせて聴感補正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態であるオーディオ再生装置100の構成を示すブロック図である。このオーディオ再生装置100において、前処理回路1は、CDやDVDなどのソースからオーディオ符号化データを読み取り、復号処理などの前処理を行い、PCMオーディオ信号を生成する回路である。聴感補正回路2は、前処理回路1から出力されるPCMオーディオ信号にラウドネス補正やダイナミックレンジ圧縮などの聴感補正を施す回路である。なお、この聴感補正回路2の具体的構成については後述する。制御回路3は、メモリを内蔵しており、ユーザ8の聴覚特性を取得してメモリに格納する機能と、この取得した聴覚特性に従って聴感補正回路2の聴感補正を制御する機能を備えている。テストトーン発生回路4は、制御回路3による制御の下、ユーザ8の聴覚特性を測定するためのテストトーン信号を発生する回路である。このテストトーン発生回路4は、制御回路3によって指定された周波数で発振する発振器と、この発振器の出力信号を増幅する可変利得増幅器と、この可変利得増幅器のゲインを時間経過に伴って連続的に変化させる回路とにより構成されている。セレクタ5は、制御回路3からの指示に従い、聴感補正回路2の出力信号またはテストトーン信号を選択して出力する回路である。このセレクタ5の出力信号は、オーディオ出力部6から音として出力される。このオーディオ出力部6は、例えばスピーカやヘッドホンである。リモコン7は、ユーザ8からの操作を受け付け、これに応じて、オーディオ再生装置100の制御回路3に各種の指令を送信する装置である。なお、ユーザ8は、このリモコン7の操作による他、オーディオ再生装置100に設けられた操作パネル(図示略)を操作することによってもオーディオ再生装置100の制御回路3に各種の指令を与えることができる。
【0007】
図2は、聴感補正回路2の構成例を示すものである。この聴感補正回路2は、ダイナミックレンジ圧縮回路10とラウドネス補正回路20とにより構成されている。
【0008】
ダイナミックレンジ圧縮回路10は、ゲインの制御が可能な増幅器としての乗算器11と、レベル検出部12と、ゲインテーブル部13とを有している。なお、本実施形態ではデジタル形式のオーディオ信号を取り扱うため、ゲインの制御が可能な増幅器として乗算器を用いたが、アナログオーディオ信号を取り扱う場合には、アナログ回路により構成された可変利得増幅器を用いてもよい。レベル検出部12は、前処理回路1から出力されるPCMオーディオ信号の音量レベルを検出し、検出した音量レベルを表す音量レベル信号をゲインテーブル部13に出力する。レベル検出部12の構成に関しては、各種の態様が考えられる。好ましい態様において、レベル検出部12は、連続的に入力されるPCMオーディオ信号からオーディオ信号波形の絶対値を順次検出し、絶対値の波形の瞬時ピーク値が描くエンベロープ波形を求め、このエンベロープ波形を持った音量レベル信号をゲインテーブル部13に出力する。別の好ましい態様において、レベル検出部12は、順次入力されるPCMオーディオ信号(PCMサンプル)を各々一定期間だけバッファに蓄積し、バッファ内の各サンプルが示す音量レベルの平均値(すなわち、オーディオ信号の音量レベルの移動平均値)を示す音量レベル信号をゲインテーブル部13に出力する。
【0009】
ゲインテーブル部13は、乗算器11にダイナミックレンジ圧縮を行わせる際に参照されるゲインテーブルを複数種類記憶している。このゲインテーブルは、レベル検出部12によって検出されるPCMオーディオ信号の音量レベルと乗算器11に適用するゲインとを対応付けたテーブルである。ゲインテーブル部13は、制御回路3からの指令に従い、1つのゲインテーブルを選択し、そのゲインテーブルに従ってゲインを決定し、そのゲインを乗算器11に与える。乗算器11は、このゲインを前処理回路1から出力されるPCMオーディオ信号に乗じることによりPCMオーディオ信号のダイナミックレンジ圧縮を行う。
【0010】
図3は、あるゲインテーブルに従って行われるダイナミックレンジ圧縮の例を示すものである。図3において、横軸は乗算器11に入力されるPCMオーディオ信号の音量レベル(以下、入力音量レベル)、縦軸は乗算器11から出力されるPCMオーディオ信号の音量レベル(以下、出力音量レベル)である。図3において、破線は、乗算器11のゲインを標準値に固定した場合における入力音量レベルと出力音量レベルとの関係を示している。図3に示す例において、乗算器11のゲインは、出力音量レベルが閾値Th以上となる領域では標準値とされ、出力音量レベルが閾値Th以下である領域では入力音量レベルが小さくなるに従って増加する。従って、後者の領域において、PCMオーディオ信号のダイナミックレンジが圧縮され、小音量のPCMオーディオ信号の出力音量レベルが持ち上げられる。
【0011】
本実施形態におけるゲインテーブル部13は、小音量のPCMオーディオ信号の出力音量レベルを持ち上げる度合い、具体的には図3に示すブースト量Bの異なった複数種類のゲインテーブルを記憶している。いずれのゲインテーブルをダイナミックレンジ圧縮に使用するかは、制御回路3がユーザ8の聴覚特性に基づいて決定する。
【0012】
次に、ラウドネス補正回路20について説明する。本実施形態では、可聴周波数帯域を低域、中域、高域に3分割し、これらの各帯域毎にゲインを調整してラウドネス補正を行う。LPF21、BPF22およびHPF23は、乗算器11から出力されるPCMオーディオ信号の中から低域、中域および高域の各信号を各々選択し、乗算器24、25および26に各々供給する。制御回路3は、ユーザ8の聴覚特性に基づいて、乗算器24、25および26に与えるゲインを決定する。乗算器24、25および26の各出力信号は加算器27によって加算され、バッファ28を介した後、D/A変換され、図1におけるオーディオ出力部6から音として出力される。
【0013】
次に、本実施形態の動作について説明する。ユーザ8は、リモコン7を操作することにより聴覚特性の測定要求を制御回路3に送ることができる。この測定要求を受け取ると、制御回路3は、図示しない表示部に例えば「あなたの聴覚を測定します。音が聞こえたらリモコンの○○キーを押して下さい。」というメッセージを表示させる。そして、制御回路3は、聴覚特性測定処理を開始する。
【0014】
本実施形態では、ユーザ8の聴覚特性を測定するために、可聴周波数帯の下限から上限までの10種類の周波数f0〜f9を有するテストトーン信号をテストトーン発生回路4により発生する。図4は、LPF21、BPF22およびHPF23の各々の通過帯域と、テストトーン信号の周波数f0〜f9との関係を例示している。この例では、テストトーン信号の周波数f0〜f2はLPF21の通過帯域内に、周波数f3〜f6はBPF22の通過帯域内に、周波数f7〜f9はHPF23の通過帯域内にある。
【0015】
聴覚特性測定処理において、制御回路3は、まず、テストトーン発生回路4の出力信号を選択するべき旨の指令をセレクタ5に送る。その後、制御回路3は、周波数f0〜f9を順次選択し、選択した周波数を指定する情報とテストトーン生成指示をテストトーン発生回路4に送る。好ましい態様において、制御回路3は、テストトーン生成指示をテストトーン発生回路4に送る都度、図示しない表示部に例えば「音が出ます。聞こえますか?」といったメッセージを表示させる。この態様によれば、ユーザ8は、テストトーンが発生することを予め知ることができるので、その聞き取りに集中することができる。
【0016】
テストトーン発生回路4は、周波数を指定する情報およびテストトーン生成指示を受け取ると、指定された周波数のテストトーン信号の生成を開始し、このテストトーン信号のレベルをスイープし、小音量から大音量に連続的に変化させる。このテストトーン信号はセレクタ5を介してオーディオ出力部6に送られ、オーディオ出力部6からテストトーンが出力される。
【0017】
ユーザ8は、テストトーンが聞こえた時点でリモコン7における指示されたキーを押下する。制御回路3は、このキー押下に伴うリモコン信号を受信すると、テストトーン発生回路4に現在のテストトーン信号のレベルを問い合わせ、テストトーン発生回路4から報告されるレベルをテストトーン信号の周波数に対応付けてメモリに格納する。以上のような処理を予め決定された複数種類の周波数について各々実行されることにより、ユーザ8の聴覚特性測定結果がメモリ内に得られる。
【0018】
図5は、以上の処理により制御回路3のメモリ内に格納された聴覚特性測定結果の例を示すものである。この聴覚特性測定結果は、f0〜f9までの10種類の周波数のテストトーンについて、各々を聞き取ることができたユーザ8の可聴レベルを示している。
【0019】
聴覚特性測定結果が得られると、制御回路3は、これに基づいて聴感補正回路2のパラメータ設定処理を行う。以下、図6を参照し、この処理について説明する。まず、制御回路3は、LPF21の通過帯域内にある周波数f0〜f2における可聴レベルの平均値(以下、低域可聴レベルという)と、BPF22の通過帯域内にある周波数f3〜f6における可聴レベルの平均値(以下、中域可聴レベルという)と、HPF23の通過帯域内にある周波数f7〜f9における可聴レベルの平均値(以下、高域可聴レベルという)とを求める。
【0020】
次に、制御回路3は、低域可聴レベルおよび高域可聴レベルが中域可聴レベルに対してどれくらい大きいかあるいは小さいかの相対レベルを求め、その結果に基づき、乗算器24〜26に与えるゲインを決定する。図6に示す例では、低域可聴レベルが中域可聴レベルよりも10dBだけ高く、高域可聴レベルが中域可聴レベルよりも8dBだけ高いので、例えば乗算器24のゲインが乗算器25のゲインよりも10dBだけ高く、かつ、乗算器26のゲインが乗算器25のゲインよりも8dBだけ高くなるように各乗算器のゲインを設定する。乗算器のゲインの設定方法に関しては別の態様も考えられる。例えば低域可聴レベル、中域可聴レベル、高域可聴レベルの組み合わせを各種想定し、これらの各組み合わせに対応付けて乗算器24〜26に与えるべきゲインをメモリに予め記憶しておき、聴覚測定結果が示す組み合わせに対応したゲインの組をメモリから読み出して各乗算器に設定するようにしてもよい。
【0021】
聴覚特性測定結果が可聴周波数帯域全域に亙って可聴レベルが高い(すなわち、大きな音でないと聞き取れない)ことを示している場合、制御回路3は、これに対処するためのパラメータ設定をダイナミックレンジ圧縮回路10に対して行う。より具体的には次の通りである。まず、制御回路3は、周波数f0〜f9における各可聴レベルの最低レベルMINを求め、予め記憶している平均的最小可聴レベルAVEと比較する。そして、最低レベルMINが平均的最小可聴レベルAVEよりも低い場合、制御回路3は、ダイナミックレンジ圧縮を行わない旨の指令をゲインテーブル部13に送る。この場合、ゲインテーブル部13は、音量レベル信号の大きさ如何に拘わらず、標準値のゲインを乗算器11に供給する。一方、最低レベルMINが平均的最小可聴レベルAVEよりも高い場合、制御回路3は、両者の差分を求め、その差分に基づき、選択すべきゲインテーブルをゲインテーブル部13に指示する。すなわち、差分が小さい場合には、図3に示すブースト量Bの小さなゲインテーブルの使用を、差分が大きい場合にはブースト量Bの大きなゲインテーブルの使用を、ゲインテーブル部13に指示するのである。
【0022】
以上のようにして聴感補正回路2のパラメータ設定が終了すると、制御回路3は、聴感補正回路2の出力信号を選択すべき旨の指令をセレクタ5に送る。ユーザ8がリモコン7の操作により音楽の再生を指示すると、図示しないソースからオーディオ符号化データが前処理回路1に供給され、前処理回路1からPCMオーディオ信号が出力される。聴感補正回路2は、ユーザ8の聴覚特性測定結果に基づいて既にパラメータ設定がなされており、聴覚特性測定結果を反映した聴感補正をPCMオーディオ信号に施し、セレクタ5を介してオーディオ出力部6に出力する。このように、PCMオーディオ信号を出力するに際して、ユーザ8の聴覚特性に応じた聴感補正が施されるので、聴覚特性の個人差を吸収し、多くの人にとって聞きやすい音楽等を提供することができる。
【0023】
<第2実施形態>
本実施形態は、図2に示す聴感補正回路2を図7に示す聴感補正回路2Aに置き換えたものである。この聴感補正回路2Aは、図2におけるラウドネス補正回路20と同様なLPF31、BPF32、HPF33、加算器37およびバッファ38を有している。ラウドネス補正回路20と実質的に異なるのは、乗算器24、25および26がダイナミックレンジ圧縮回路34、35および36に置き換えられている点である。
【0024】
本実施形態において、制御回路3は、聴覚特性測定により低域可聴レベル、中域可聴レベルおよび高域可聴レベルが得られると、これらを、予め記憶した平均的最小可聴レベルAVEと比較する。そして、低域可聴レベル、中域可聴レベルおよび高域可聴レベルの中に平均的最小可聴レベルAVEよりも大きなものがある場合には、それと平均的最小可聴レベルAVEとの差分に応じたブースト量Bでダイナミックレンジ圧縮が行われるよう該当するダイナミックレンジ圧縮回路の制御を行うのである。
本実施形態によれば、帯域別に、適切なダイナミックレンジ圧縮が行われるという利点がある。
【0025】
<変形例>
上記実施形態には、次のような変形例が考えられる。
(1)上記第2実施形態において、図7におけるダイナミックレンジ圧縮回路34、35および36の後段に、乗算器を各々設けて、これらの乗算器のゲインの制御を行うことにより、ラウドネス補正を行うようにしてもよい。この場合のラウドネス補正の態様は、上記第1実施形態において説明したものと同様である。
(2)リモコンや操作パネルの操作に応じて、聴覚特性測定結果に基づいてパラメータ設定されたダイナミックレンジ圧縮およびラウドネス補正を有効化したり、無効化したり、切り換えうるように構成してもよい。切り換えの態様として次のものが考えられる。
a.ダイナミックレンジ圧縮もラウドネス補正も行う。
b.ダイナミックレンジ圧縮は行うがラウドネス補正は行わない。
c.ダイナミックレンジ圧縮は行わないがラウドネス補正は行う。
d.ダイナミックレンジ圧縮もラウドネス補正も行わない。
(3)上記実施形態では、聴覚特性を測定するために、10種類の周波数のテストトーン信号を用いたが、これはあくまでも一例である。何種類のテストトーン信号を用いるかは、必要とされる聴覚特性の測定精度に応じて決定すればよい。
(4)LPF21、BPF22およびHPF23として通過帯域の制御が可能なものを使用し、リモコンや操作パネルの操作により、各々の通過帯域を調整し得るように構成してもよい。
(5)聴覚特性の測定結果の再利用を可能にする変形例も考えられる。この変形例において、ユーザ8は、聴覚特性の測定を指示する際、リモコンや操作パネルの操作により自分のIDを入力する。制御回路3は、聴覚特性測定結果が得られると、それをユーザ8のIDともにメモリに格納する。その後、ユーザ8がオーディオ再生装置を使用するとき、再度、聴覚特性の測定を指示する必要はなく、自分のIDをリモコンなどにより制御回路3に指示すればよい。この場合、制御回路3は、指示されたIDに対応付けられた聴覚特性測定結果をメモリから読み出し、これに基づいて聴感補正回路2のパラメータ設定を行う。なお、聴覚特性測定結果の代わりに、これに基づいて決定される聴感補正回路2のパラメータ(ダイナミックレンジ圧縮の使用するゲインテーブルを特定する情報やラウドネス補正のための乗算器のゲイン)をユーザのIDに対応付けてメモリに格納し、再利用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1実施形態であるオーディオ再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における聴感補正回路の構成例を示すブロック図である。
【図3】同実施形態におけるダイナミックレンジ圧縮の一例を示す図である。
【図4】同実施形態におけるテストトーン信号の周波数とフィルタの通過帯域との関係を示す図である。
【図5】同実施形態における聴覚特性測定結果の一例を示す図である。
【図6】同実施形態における聴感補正のためのパラメータ設定を説明する図である。
【図7】この発明の第2実施形態における聴感補正回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
2……聴感補正回路、3……制御回路、4……テストトーン発生回路、7……リモコン、10……ダイナミックレンジ圧縮回路、20……ラウドネス補正回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々周波数が異なり、時間経過に従って音量が変化する複数種類のテストトーン信号を順次出力するテストトーン信号発生手段と、
操作部と、
前記複数種類のテストトーン信号の各々について、前記操作部の操作が行われた時点におけるテストトーン信号の音量を検出するテストトーン音量検出手段と、
再生対象であるオーディオ信号のダイナミックレンジ圧縮を行って出力するダイナミックレンジ圧縮手段と、
相互に異なった通過帯域を各々有し、前記ダイナミックレンジ圧縮手段の出力信号における当該通過帯域内の周波数の信号を選択して出力する複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの出力信号を増幅する複数の可変利得増幅器と、
前記テストトーン音量検出手段によって検出された各テストトーン信号の音量に基づいて、前記ダイナミックレンジ圧縮手段のダイナミックレンジ圧縮特性および前記複数の可変利得増幅器の増幅利得の設定を行う聴感補正手段と
を具備することを特徴とするオーディオ再生装置。
【請求項2】
各々周波数が異なり、時間経過に従って音量が変化する複数種類のテストトーン信号を順次出力するテストトーン信号発生手段と、
操作部と、
前記複数種類のテストトーン信号の各々について、前記操作部の操作が行われた時点におけるテストトーン信号の音量を検出するテストトーン音量検出手段と、
相互に異なった通過帯域を各々有し、再生対象であるオーディオ信号における当該通過帯域内の周波数の信号を選択して出力する複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの出力信号のダイナミックレンジ圧縮を各々行って出力する複数のダイナミックレンジ圧縮手段と、
前記テストトーン音量検出手段によって検出された各テストトーン信号の音量に基づいて、前記複数のダイナミックレンジ圧縮手段のダイナミックレンジ圧縮特性の設定を行う聴感補正手段と
を具備することを特徴とするオーディオ再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−20231(P2006−20231A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198271(P2004−198271)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】