説明

オーディオ増幅器及びその出力調整方法

【課題】移動無線機のオーディオ増幅器のように、増幅器が電源電圧で飽和した状態で使用され、自動音量調整が困難な場合であっても自動的に音量調整が可能なオーディオ増幅器及び、その出力調整方法を提供する。
【解決手段】電源電圧の変動を監視し、その変動に対応して増幅回路への入力信号レベルの調整、又は、増幅回路の利得可変手段を調整するように構成し、又は制御することにより、電源電圧変動に伴う増幅器出力変動についても補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ増幅器及び、その出力調整方法に関し、特に、電源電圧変動による増幅器出力のレベル変化を自動調整する機能を備えたオーディオ増幅器及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ増幅器には、一般的にスピーカやイヤホンから出力する音量を調整するためのボリュームが付加され、ユーザが好みの音量に調整できるようになっているが、オーディオ増幅器の出力レベルは増幅器のゲイン(増幅利得)とダイナミックレンジに依存する。このうち、ダイナミックレンジはオーディオ増幅器に供給される電源電圧に直接依存するので、電源電圧の変動に伴ってスピーカからの出力音声レベルが変動する場合がある。
例えば車載用移動無線機では、通常、車両のバッテリィから電源供給し、可搬型や携帯型無線機では内蔵した充電式電池等から電源供給を受けるが、これらの電源電圧は比較的変動が大きいので、それに伴ってオーディオ増幅器出力レベルも変動する。特に、無線機では音質よりも明瞭度が優先され、しかも、比較的低い電源電圧で駆動する場合が多いので、音声出力への電源電圧変動の影響が大きい。
【0003】
図6は、移動無線機用オーディオ増幅器の概要構成図である。この図に示すように、オーディオアンプ(増幅器)の入力(INPUT)のレベルを変化させることによって出力(OUTPUT)が変化し、その結果スピーカ(SP)から発生する音声のレベルを調整するが、通常、無線機のオーディオ増幅器(アンプ)では、電圧安定化回路等を介することなく電源(+B)から直接供給する例が多いので、図7に示すように、電源電圧+B値が変動すると、スピーカ出力が変動する。図8は、この理由を説明するためのオーディオ増幅器の出力段の信号波形図であり、図8(a)は電源電圧値が基準電圧13.6Vのときの信号波形例であり、電源電圧のP−P(ピーク・ピーク間)において波形が飽和している状態を示している。移動無線機では、この図のように信号のピーク部が一部飽和して歪んだ状態で使用することが多いが、図8(b)に示すように電源電圧が11.6Vに低下すると、ダイナミックレンジが狭まることにより、P−Pの振幅値が小さくなり、飽和レベルが小さくなるので、図8(a)に比べてオーディオ増幅器の出力レベルが低下する。また、図8(c)に示すように電源電圧が15.6Vに上昇し、飽和しなくなった場合は、出力信号波形のダイナミックレンジが広がることにより、P−Pの振幅値が大きくなり、飽和レベルが大きくなるので出力レベルが大きくなる。このように、電源電圧が変動すると、それに伴ってオーディオ増幅器の出力レベルが変動し、スピーカから発生する音声信号レベルも変動することになる。
【0004】
従来、一般的なオーディオ増幅器の出力レベル調整手段としては、例えば、増幅器の出力の一部を整流することによって、出力レベルに対応した直流電圧を生成するとともに、それを基準電圧と比較し、その差分量に基づいて増幅器の入力レベルを調整するか、又は、増幅器の利得を調整して出力レベルを一定に保つ自動レベル調整手段が採用されている。増幅器の利得調整手段の具体的な例としては、特許文献1に幾つかの方法が開示されているので参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−93064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようにオーディオ増幅器に入力する信号レベルを調節する方法や増幅器の利得を調整する方法では、上述した電源電圧変動に伴う音声出力変動を効率的に補正することが不可能な場合があった。特に、上記図8に示したように、信号波形が飽和した状態にある場合は、入力信号レベルを自動的に増減しても飽和の程度が変化するのみで、出力レベルが効果的に希望するレベルに変化しない場合があった。即ち、従来の増幅器では増幅器の出力レベルを監視して、そのレベルを一定値に保つように自動的補正するものであり、電源電圧の変動に伴う出力変動を加味して補正するものではなかった。従って、電源電圧の変動に起因する増幅器出力の変動であって、出力レベルの変動として顕著に表れない場合には自動的に補正することができなかったので、電源電圧変動に伴う聴感的な変化を補正し得るものではなかった。
故に、ユーザ(操作者)がスピーカから発生する実際の音声を聞きながら所望レベルになるようにボリュームのツマミを操作する必要があったので、煩雑なボリューム操作が強いられていた。
本発明は、このような従来のオーディオ増幅器の出力調整に関する不具合を除去するためになされたものであって、例えば、移動無線機のオーディオ増幅器のように増幅器が電源電圧で飽和した状態で使用され、自動音量調整が困難な場合であっても自動的に音量調整が可能であるオーディオ増幅器及び、その出力調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載のオーディオ増幅器は、増幅回路と、その入力信号のレベルを変化させるデジタル制御型ボリューム手段と、上記増幅回路の電源電圧値を検出する電圧検出手段と、検出した電源電圧を基準電圧と比較する手段と、この比較結果に基づいて上記ボリューム手段を調整し、電源電圧の変動後の増幅回路出力値を所要の値に制御する出力制御手段とを備え、この出力制御手段はCPUとメモリを含み、調整前のボリューム値、ボリュームの変化幅、電源電圧の想定変化幅、電源電圧の基準電圧との差に基づいて、電源電圧変動前後の増幅回路出力値の差が小さくなるように制御する機能を備えたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のオーディオ増幅器において、上記出力制御手段は、調整前の電源電圧(Vt)と基準電源電圧(V0)との差(ΔV)、電源電圧の最大想定電圧Vmax、想定最低電圧Vmin、電源電圧変動比率ΔV/(Vmax−Vmin)、ボリューム手段の調整前のデジット値Dtと最大デジット値Dmaxとの比率Dt×(Dt/Dmax)、ボリューム手段の調整前のボリューム値VL、ボリューム幅VLmaxとの比(VLt/VLmax)とから補正デジット値を求めるように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は請求項1又は請求項2記載のオーディオ増幅器において、上記ボリューム手段の代わりに増幅回路がデジタル制御型の利得可変手段を備え、上記ボリューム手段の調整に代えて、この増幅回路の利得可変手段を制御するように構成したことを特徴とする。
請求項4記載の発明はオーディオ増幅器の出力調整方法に関するもので、増幅回路と、その入力信号のレベルを変化させるデジタル制御型ボリューム手段又は上記増幅回路の利得を変化させる手段と、上記増幅回路の電源電圧値を検出する電圧検出手段と、検出した電源電圧を基準電圧と比較する手段と、この比較結果に基づいて上記ボリューム手段又は上記増幅回路の利得を調整する手段とを備えたオーディオ増幅器のレベル調整方法において、調整前の電源電圧(Vt)と基準電源電圧(V0)との差(ΔV)を求めるステップと、電源電圧の最大想定電圧(Vmax)、想定最低電圧(Vmin)とから、電源電圧変動比率ΔV/(Vmax−Vmin)を求めるステップと、ボリューム手段又は増幅回路の利得可変手段の調整前のデジット値(Dt)と最大デジット値(Dmax)とから調整前のボリューム値の比率Dt*(Dt/Dmax)を求めるステップと、ボリューム手段又は増幅回路の利得可変手段の調整前のボリューム又は利得値(VLt)、ボリューム幅又は利得幅(VLmax)との比(VLt/VLmax)とから補正デジット値を求めるステップと、求めた補正デジット値を調整前のデジット値に加算又は減算して新たなデジット値に基づいて上記ボリューム手段又は増幅回路の利得可変手段を制御するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述したように、電源電圧の変動を監視し、その変動に対応して増幅回路への入力信号レベルの調整、又は、増幅回路の利得可変手段を調整するように構成し、又は制御するので、従来、出力レベルを監視して増幅回路の出力値を調整する場合に加味しなかった電源電圧変動に伴う増幅器出力変動についても補正することが可能となる。特に、調整時点(調整前)のボリューム値や利得調整手段の利得値の全調整範囲に対する相対値、電源電圧の変化量の全電源電圧想定変化範囲に対する変化率等に基づいて、補正すべき量を算出するので、単に、増幅回路の出力レベル変化に基づいて補正するものに比べて、聴感的な音声出力の変動を補正することが可能であり、操作者がボリュームを頻繁に調整する度合いを少なくすることができる。
また、電源電圧変動時に、操作者が頻繁にボリュームを操作しながら所望の音量に調整する必要が少なくなるので、無駄に大きな音量を発生することが無くなる分、省電力効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るオーディオ増幅器の構成例を示す概要ブロック図。
【図2】本発明に係るオーディオ増幅器の制御例を説明するパラメータ図であり、(a)は補正前、(b)は補正後のパラメータを示す図。
【図3】本発明のオーディオ増幅器、調整方法の効果を示す出力特性図。
【図4】本発明のオーディオ増幅器の変形例を示す概要ブロック図。
【図5】本発明のオーディオ増幅器の他の変形例を示す概要ブロック図。
【図6】従来のオーディオ増幅器の一般的構成例を示す概要ブロック図。
【図7】従来のオーディオ増幅器の出力調整方法の例を説明するための概要ブロック図。
【図8】従来のオーディオ増幅器の電源電圧変動に伴う不具合を説明するための図で、(a)は基準電圧時、(b)は低電圧時、(c)は高電圧時の増幅回路内部の信号波形図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明に係るオーディオ増幅器の基本的な考え方を説明するための概要ブロック図である。この図に示すように本発明では、制御回路に含まれるCPU(中央処理ユニット)によって電源電圧(+B)の変化を監視するとともに、その変化に基づいて電子ボリューム(デジタル制御型ボリューム手段)を制御することによって、電源電圧変化に起因する出力レベルの変化を補って、操作者に対する聴感的な音量の違和感を極力小さくなるように調整するものである。具体的な調整方法は以下詳細に説明するが、電源電圧の変化量、その時点のボリューム位置、ボリュームの制御信号デジット(Digit)が、夫々の全変化量に対する比率に基づいて補正量を算出するので、増幅器内部で電源電圧により信号波形が飽和する場合であっても、効果的な出力補正が可能である。
【0012】
図2は、本発明に基づいて構成し、制御したオーディオ増幅器を実際に動作させた場合のパラメータの一例を説明するための図であり、(a)は補正前、(b)は補正後の値を示している。
即ち、図2(a)の第一列はデジタル制御型ボリュームの制御信号のデジットを示し、この例では最大値256の数となる場合を表わしている。第二列は、ボリューム位置(調整ステップ又は、回転角の目盛と考えても良い)であり、この例では0乃至31の32段階の調整ができる。同図(a)の第三列は電源電圧が基準電圧(13.6V)である場合の各ボリューム位置に対する、増幅回路の実際のオーディオ出力電力値(W:ワット)を示しており、ボリューム値を増加すると最大6.452(W)まで出力が増大する。
更に、同図(a)の第四列は、電源電圧値が想定変化範囲の最大値である15.6Vに変動した場合の(ボリューム位置はそのままの状態)増幅回路の出力電力値を示しており、第三列の値と比較すれば明らかなように、ボリューム値が小さい範囲では基準電圧の場合と大きな差はないが、ボリューム位置が大きくなると、両者の差が増大する。これは、上記図8を用いて説明したように、電源電圧によって信号が飽和する結果であり、電源電圧値が大きくなる程飽和レベルが大きくなるので、最大出力値も大きくなる。
この状態では、基準電圧において所望レベルになるようにボリュームを調整しても、電源電圧値が高い方に変動するとスピーカやイヤホンから出力される音量が増大するので、操作者はボリュームの調整が強いられることになる。
【0013】
本発明では、図2(b)に示すようにデジット値を補正し、電源電圧値が15.6Vに上昇しても、13.6Vにおけるデジット値とほぼ同一になるように補正することによって、電源電圧変動前の電圧(基準電源電圧)の出力値になるように調整している。このように調整すれば操作者はボリュームを操作する必要はない。
【0014】
本発明に係るオーディオ増幅器は、少なくとも、増幅回路と、その入力信号のレベルを変化させるデジタル制御型ボリューム手段と、増幅回路の電源電圧値を検出する電圧検出手段と、検出した電源電圧(Vt)を基準電圧(V0)と比較する手段と、この比較結果に基づいてボリューム手段を調整し、電源電圧の変動後の増幅回路出力値を所要の値に制御する出力制御手段とを備えている。
また、そのための出力制御手段は、CPUとメモリを含み、調整前のボリューム値(VLt)、ボリュームの最大値(VLmax)、電源電圧の最大値(Vmax)、電源電圧の最小値(Vmin)電源電圧の想定変化幅(Vmax−Vmin)、電源電圧の基準電圧(V0)との差(ΔV)に基づいて、電源電圧変動前後の増幅回路出力値の差が小さくなるように制御する機能を備えている。
【0015】
以下、そのように調整するための処理の一例を、処理ステップとして説明する。
<第一ステップ(電源電圧監視)>
調整前(調整時点)の電源電圧を監視するが、ここでは、図2に示したように電源電圧の想定変化範囲を、基準電圧13.6Vを中心に約±15%とし、最小電圧値(Vmin)が11.6V、最大電圧値が(Vmax)が15.6Vとする。
この例では、図2の場合を想定して調整前(調整時点、又は、補正前とも云う)の電源電圧が基準電圧V0=13.6V、ボリューム値(位置)が図2(a)の第二列の「30」、その時の出力電力は6.200(W)であり、電源電圧値が最大のVt=15.6Vに変化した場合を考える。
ここで、電源電圧監視の結果、電源電圧の変化ΔVは、
ΔV=13.6(V)−15.6(V)=−2.0(V)・・・(式1)
<第二ステップ(電圧変化の電源電圧変化範囲に対する変動比率計算)>
このときの電源電圧変化量ΔVの、電源電圧想定変化範囲に対する変動比率ΔV/(Vmax−Vmin)は、
ΔV/(Vmax−Vmin)=−2/(15.6−11.6)=−0.5・・・(式2)となる。
【0016】
<第三ステップ(ボリュームの補正デジット値を算出)>
(1)補正前(調整前)のボリューム値が30であるので図2(a)から、デジット値は185である。全デジット値(256)に対する調整前(補正前)のデジット比率を求める、
デジット比率=185×(185/256)≒134・・・(式3)
(2)式2で求めた電源電圧変動範囲に対する電源電圧の変動比率を乗算する
134×(−0.5)=−67・・・(式4)
(3)全ボリューム(最大値)に対する調整前のボリューム値の比率を式4で求めた値に乗算する
−67×(30/31)≒−65・・・(式5)
<第三ステップ(デジット値の補正値算出)>
補正前(調整前)のデジット値に、式5で求めた補正デジット値を加算
補正デジット値=185+(−65)=120・・・(式6)
【0017】
<第四ステップ(補正後のデジット値でボリューム制御を更新)>
式6により求めた補正後のデジット値でボリュームを制御する。この処理により、ボリュームのデジット値が120になるので、図2(b)に示すように補正後のデジット値120により、オーディオ増幅器の出力電力が6.174(W)となり、この値は、補正前の電源電圧値が上昇する前の電力値6.200(W)にほぼ等しい値となる。従って、操作者には殆ど出力電力の増加を感じないので、ボリューム調整を強いられることなく無線機操作を続けることができる。
以上の例では電源電圧が上昇した場合を説明したが、逆に、電源電圧値が減少した場合において、同様の処理を行うことによって、電圧変動前の出力に近似した値に調整することができる。また、電源電圧の変化量は、最大値、最小値に限らず、その中間の値においても同様に補正が可能であることは云うまでもない。
本発明では上述したように、調整前のボリューム値、電源電圧の変化量の全電圧変化範囲に対する割合、調整前のボリューム制御デジット値の全デジット幅に対する割合等を加味して補正値を算出したので、単に、出力レベルを監視する場合と異なり、電源電圧変動に起因する出力変化を含めて補正することが可能である。
【0018】
図3は、本発明の効果を説明するためのボリューム値(ボリュームステップ)とオーディオ増幅器の出力レベルの変化を示す特性図であり、上記図2をグラフ化したものである。この図からも明らかなように電源電圧が上昇したとき、ボリュームの値が17以上において大きく出力が上昇するが、本発明によれば正確に補正されて、電源電圧変動前の出力レベルとほぼ一致していることが分かる。
本発明は上記実施例に限らず、種々変形が可能である。
例えば、図4に示すように電子ボリュームを削除し、代わりにオーディオ増幅器として、その増幅利得(ゲイン)を変更可能なものを使用し、上述した場合と同様に増幅回路の利得を補正することもできる。このような利得可変型の増幅回路は、オーディオ集積回路(オーディオIC)として市販されているので、それを利用することも可能であろう。また、オーディオICの中にボリューム機能を有する回路や素子が含まれる場合は、それを利用して本発明を実施することも可能である。
【0019】
図5は、更に、本発明の変形実施例を示すオーディオ増幅器の概要ブロック図である。本発明に基づいて、電源電圧が低下した際に増幅回路の出力を補正すると、低下した出力値を増大させるように補正するので、消費電力が増加することになる。そこで、省電力を指向する場合に便利なように、自動補正を行うか省電力のために増幅回路の制御補正を行うことなく出力が低下した状態で使用するかを、操作者が選択できるように構成したものである。
即ち、この例に示すオーディオ増幅器は、表示手段(Display)を備え、電源電圧変化のうち、電源電圧が所定値以下に低下した場合、その旨をCPUが検出すると、表示手段(Display)に「自動レベル補正」機能をオンするか、オフするかの選択を促す表示を行う。その結果、操作者が(図示を省略した)操作部を介して、又は、表示手段がタッチパネル機能を有する場合は、それを介して「自動レベル補正」をオンする旨の操作がなされた場合は、定格電圧の場合と同じようなレベルに自動調整処理を行うが、操作者が省電力を希望して、「自動レベル補正」機能をオフした場合は、レベル補正を実行しないように構成したものである。
なお、操作者の負荷を軽減するために、一定時間選択操作が行われない場合は、オン又はオフの予め設定した何れか一方の操作が自動的に選択されたものとして処理を行うように構成することも可能であろうし、更に、省電力化の程度を表示することもできる。
【0020】
また、本発明の変形例として、上述した計算式のうち幾つかを省略して補正値を求めることも可能であろう。あるいは、その都度式に基づく計算を行う代わりに、予め計算した換算表をデータとして記憶しておき、該当するパラメータに対応した値を表から読み出すように構成することによって、CPUの処理負荷を軽減することもできよう。
更に、僅かな電圧変動に対してそのデジット補正値の計算を繰返すと消費電流の増加に繋がるので、一定値以上の電源電圧変化が認められた場合にのみ補正処理を行うように構成することもできる。
なお更に、本発明のオーディオ増幅器調整方法をコンピュータが処理可能なプログラムとして構築すれば、CPUやDSP、メモリを備えたオーディオ増幅器や無線機にこれらのプログラムやデータをインストールすることによって、本発明を実施することも可能であろう。
【符号の説明】
【0021】
DAC 電子ボリューム(デジタル制御型ボリューム手段)、CPU 制御手段に含まれる中央処理ユニット、AMP 増幅回路、+B 電源(電源電圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅回路と、その入力信号のレベルを変化させるデジタル制御型ボリューム手段と、前記増幅回路の電源電圧値を検出する電圧検出手段と、検出した電源電圧を基準電圧と比較する手段と、この比較結果に基づいて前記ボリューム手段を調整し、電源電圧の変動後の増幅回路出力値を所要の値に制御する出力制御手段とを備え、当該出力制御手段はCPUとメモリを含み、調整前のボリューム値、ボリュームの変化幅、電源電圧の想定変化幅、電源電圧の基準電圧との差に基づいて、電源電圧変動前後の増幅回路出力値の差が小さくなるように制御する機能を備えたことを特徴とするオーディオ増幅器。
【請求項2】
請求項1記載のオーディオ増幅器において、前記出力制御手段は、調整前の電源電圧(Vt)と基準電源電圧(V0)との差(ΔV)、電源電圧の最大想定電圧Vmax、想定最低電圧Vmin、電源電圧変動比率ΔV/(Vmax−Vmin)、ボリューム手段の調整前のデジット値Dtと最大デジット値Dmaxとの比率Dt×(Dt/Dmax)、ボリューム手段の調整前のボリューム値VL、ボリューム幅VLmaxとの比(VLt/VLmax)とから補正デジット値を求めるように構成したことを特徴とするオーディオ増幅器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のオーディオ増幅器において、前記ボリューム手段の代わりに前記増幅回路がデジタル制御型の利得可変手段を備え、前記ボリューム手段の調整に代えて、当該増幅回路の利得可変手段を制御するように構成したことを特徴とするオーディオ増幅器。
【請求項4】
増幅回路と、その入力信号のレベルを変化させるデジタル制御型ボリューム手段又は前記増幅回路の利得を変化させる手段と、前記増幅回路の電源電圧値を検出する電圧検出手段と、検出した電源電圧を基準電圧と比較する手段と、この比較結果に基づいて前記ボリューム手段又は前記増幅回路の利得を調整する手段とを備えたオーディオ増幅器のレベル調整方法において、調整前の電源電圧(Vt)と基準電源電圧(V0)との差(ΔV)を求めるステップと、電源電圧の最大想定電圧(Vmax)、想定最低電圧(Vmin)とから、電源電圧変動比率ΔV/(Vmax−Vmin)を求めるステップと、ボリューム手段又は増幅回路の利得可変手段の調整前のデジット値(Dt)と最大デジット値(Dmax)とから調整前のボリューム値の比率Dt*(Dt/Dmax)を求めるステップと、ボリューム手段又は増幅回路の利得可変手段の調整前のボリューム又は利得値(VLt)、ボリューム幅又は利得幅(VLmax)との比(VLt/VLmax)とから補正デジット値を求めるステップと、求めた補正デジット値を調整前のデジット値に加算又は減算して新たなデジット値に基づいて前記ボリューム手段又は増幅回路の利得可変手段を制御するステップを含むことを特徴とするオーディオ増幅器の出力調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−61708(P2011−61708A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212018(P2009−212018)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】