説明

オーディオ機器の制振構造

【課題】電源用トランス等の振動を抑制して音声信号に対する影響を抑制する。
【解決手段】本願発明のオーディオ機器の制振構造は、駆動されることにより振動発生源となるメイントランス52が設けられるとともに、音声信号を処理するための信号処理基板55が取り付けられたメインシャーシ11が本体1外形の一部を構成するAVアンプであって、メインシャーシ11の内面に複数の締結部材を介して部分的に接触して固着されたサブシャーシ25と、サブシャーシ25の内面に複数の他の締結部材を介して部分的に接触して固着された部品搭載シャーシ45とを有し、メイントランス52は、部品搭載シャーシ45に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、オーディオ機器における制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば家庭内で複数のスピーカを用い臨場感のある音場を提供するホームシアターシステムが普及している。ホームシアターシステムでは、複数のスピーカに音声信号を出力する例えばAVアンプと呼称されるオーディオ機器が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−129147号公報
【0004】
AVアンプ等のオーディオ機器には、その内部に音声信号を処理するための信号処理基板や音声信号を増幅するためのアンプ回路基板が内装されている。また、AVアンプには、入力される電源電圧を降圧するための電源用トランスや内部の空気を排出するための排気用ファンが設けられている。なお、このAVアンプにチューナが搭載されたものを「AVレシーバ」と呼称する場合もある。
【0005】
図7は、従来のAVアンプの一例を示す斜視図である。なお、図7では、本体の上部から覆う上部カバーが省略されている。以下、図7の左下斜め方向を前面方向とし、図面の右上斜め方向を後面方向とし、前面方向からAVアンプを正面視して右側、左側ということにする。
【0006】
このAVアンプは、略直方体形状の本体81を有している。本体81は、主として下部シャーシ82と、前面パネル83と、後面パネル84と、左右一対の側面パネル85と、図示しない上部カバーとが組み合わされることにより、その概略外観が形成される。下部シャーシ82は、平板状の底板部86と、底板部86の左右端部から直交方向に延びた一対の側板部87とによって構成されている。
【0007】
本体81の内部には、コンデンサやチップ抵抗等の電子部品を実装した信号処理基板88やアンプ回路基板89が配設されている。また、本体81の内部には、電源用トランス(トロイダルトランス)90、排気用ファン91、及びヒートシンク92等が配設されている。より具体的には、信号処理基板88、アンプ回路基板89、電源用トランス90、排気用ファン91、及びヒートシンク92等は、上記した下部シャーシ82の底板部86の上面にそれぞれ直接的に固定されて配置されている。
【0008】
このAVアンプが用いられてホームシアターシステムが構築される場合、AVアンプには、例えばDVDプレーヤ、テレビジョン受像機、及び複数のスピーカ(いずれも図示せず)が接続される。AVアンプは、DVDプレーヤから映像信号及び音声信号が入力されると、DVDプレーヤからの音声信号を処理(デコード)した上でそれらを各スピーカに出力するとともに、DVDプレーヤからの映像信号を処理した上でそれをテレビジョン受像機に出力する。
【0009】
従来のAVアンプでは、上記したように、電源用トランス90等が直接的に下部シャーシ82の上面に固着されている。そのため、AVアンプに電源が投入されると、電源用トランス90や排気用ファン91が振動し、その振動が下部シャーシ82に伝達される。そうすると、下部シャーシ82の上面に固着されている信号処理基板88やアンプ回路基板89にもその振動が伝達されることになる。そのため、電源用トランス90等における振動は、信号処理基板88やアンプ回路基板89において処理されている音声信号に影響を及ぼす。すなわち、その音声信号に振動に起因するノイズが混入し、各スピーカから出力される音質に影響を及ぼすようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、電源用トランスや排気用ファンの振動を抑制して音声信号に対する影響を抑制した、オーディオ機器の制振構造を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0012】
本願発明によって提供されるオーディオ機器の制振構造は、駆動されることにより振動発生源となる振動部品が設けられるとともに、音声信号を処理するための信号処理基板が取り付けられた第1シャーシが本体外形の一部を構成するオーディオ機器の制振構造であって、前記第1シャーシの内面に複数の締結部材を介して部分的に接触して固着された第2シャーシと、前記第2シャーシの内面に複数の他の締結部材を介して部分的に接触して固着された第3シャーシと、を有し、前記振動部品は、前記第3シャーシに固定されていることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
この構成によれば、第3シャーシに固定された振動部品は、駆動されて振動が発生しても、その振動は、第3シャーシに締結部材を介して部分的に接触して固着される第2シャーシ、その第2シャーシに締結部材を介して部分的に接触して固着される第1シャーシに至るにつれて減衰する。そのため、第1シャーシに取り付けられた信号処理基板には振動部品の振動による影響が及ぼさなくなり、信号処理基板において処理される音声信号にも振動による影響が及ぼされない。したがって、良好な音質の音声信号を出力することができるオーディオ機器を提供することができる。
【0014】
好ましい実施の形態によれば、前記第1シャーシは、略矩形状の第1底板部と、前記第1底板部の両端から直交方向にそれぞれ延びた第1側板部とによって構成されており、前記第2シャーシは、略矩形状の第2底板部と、前記第2底板部の両端から直交方向にそれぞれ延びた第2側板部とによって構成されており、前記第1シャーシの前記各第1側板部の内面に、前記各第2側板部がそれぞれ固着されているとともに、前記第1シャーシの前記第1底面部の内面に、前記第2底面部が固着されているとよい(請求項2)。
【0015】
好ましい実施の形態によれば、前記第3シャーシは、略矩形状の中央板状部と、前記中央板状部の両端から直交方向にそれぞれ延びた延設部と、前記各延設部の上端から前記中央板状部に沿って平行にそれぞれ延びた平行板状部とによって構成されており、前記第2シャーシの前記各第2側板部に、前記各平行板状部の先端がそれぞれ固着されているとよい(請求項3)。
【0016】
好ましい実施の形態によれば、前記振動部品は、電源用トランスであり、前記電源用トランスは、前記第3シャーシの前記中央板状部の上面に固着されて支持されているとよい(請求項4)。
【0017】
好ましい実施の形態によれば、前記振動部品は、排気用ファンであり、前記排気用ファンは、前記第3シャーシの前記平行板状部の下面から吊り下げられるようにして固着されて支持されているとよい(請求項5)。
【0018】
本願発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1は、本願発明に係るオーディオ機器としてのAVアンプの斜視図である。図2は、図1に示すAVアンプの分解斜視図である。図3は、図2に示すA−Aに沿う断面図である。なお、図2では、本体1の上方を覆う上部カバー16(後述)が省略されている。また、図3では、ヒートシンク31,32等(後述)が省略されている。以下では、図1において左下斜め方向を前面側といい、右上斜め方向を後面側といい、前面方向からAVアンプを正面視して右側、左側ということにする。
【0021】
ここで「AVアンプ」とは、ユーザの周囲に複数のスピーカを配置してユーザに臨場感のある音場を提供することのできるホームシアターシステム等に、組み込まれて用いられるオーディオ機器である。AVアンプには、例えばDVDプレーヤ、テレビジョン受像機、及び複数のスピーカ(いずれも図示せず)が接続される。AVアンプは、DVDプレーヤから映像信号及び音声信号が入力されると、DVDプレーヤからの音声信号を処理(デコード)した上でそれらを各スピーカに出力するとともに、DVDプレーヤからの映像信号を処理した上でそれをテレビジョン受像機に出力する。
【0022】
このAVアンプは、図1に示すように、略直方体形状に形成された本体1を有している。本体1の前面には、電源スイッチ2、各種の動作状態を表示するための表示部3、音量の大小を調整するための音量ツマミ4及び各種の動作状態を設定するための各種スイッチ5等が設けられている。
【0023】
本体1は、図1及び図2に示すように、メインシャーシ11(本発明の「第1シャーシ」に相当)と、前面パネル12と、右側面パネル13と、左側面パネル14と、後面パネル15と、上部カバー16(図2では図示せず)とによって構成され、これらが組み合わされて固着されることにより本体1の概略形状が形成される。これらのメインシャーシ11や前面パネル12等は、一般的に剛性の高い例えば硬質アルミニウムによって形成されている。なお、右側面パネル13、左側面パネル14及び上部カバーは、一体成形されていてもよい。
【0024】
前面パネル12の裏側には、前面ブラケット17が装着されている。前面ブラケット17には、前面パネル12側の面に前面用実装基板18が設けられており、前面用実装基板18には、電源スイッチ2、表示部3を構成する表示用LED、音量ツマミ4、及び各種スイッチ5(図2では図示せず)等がそれぞれ実装されている。
【0025】
後面パネル15の裏側には、後面ブラケット19が装着されている。後面ブラケット19には、後面パネル15側の面に後面用実装基板(図示略)が設けられており、この後面用実装基板には、複数の信号入出力用端子(図示略)が実装されている。
【0026】
右側面パネル13及び左側面パネル14のそれぞれの前面側には、後述する排気用ファン54によって排出される空気の排気孔13a,14aがそれぞれ形成されている。
【0027】
メインシャーシ11は、本体1内に設けられる各種電子部品や各種プリント基板等を支持するための支持部材となるものである。メインシャーシ11は、図2及び図3に示すように、略矩形状の底板部21と、底板部21の左右両端から直交方向に延びた右側板部22及び左側板部23とを有している。すなわち、メインシャーシ11は、正面断面視で略コの字が90度傾けられた形状に形成されている。右側板部22及び左側板部23には、上記した右側面パネル13及び左側面パネル14の各排気孔13a,14aと連通される排気孔22a,23aがそれぞれ形成されている。なお、メインシャーシ11の裏側角部には、所定高さを有する4つの脚部24(図1参照)が装着される。
【0028】
メインシャーシ11には、底板部21の前面側の領域にサブシャーシ25(本発明の「第2シャーシ」に相当)が取り付けられる。
【0029】
図4は、サブシャーシ25とそれに付随される部品とを後方側斜め上方から見た斜視図である。図5は、図4においてヒートシンク31,32やアンプ回路基板群35等(後述)を省略した場合の斜視図である。サブシャーシ25は、図3ないし図5に示すように、底板部26と、底板部26の前面側端から直交方向に延びた前板部27と、底板部26の後面側端から直交方向に延びた後板部28と、底板部26の左右両端から直交方向に延びた右側板部29及び左側板部30とによって構成されている。すなわち、サブシャーシ25は、上蓋のない略箱状に形成されている。
【0030】
サブシャーシ25は、複数箇所で締結部材によって固着されることによりメインシャーシ11に対して取り付けられている。より詳細には、サブシャーシ25は、図3に示すように、底板部26においてメインシャーシ11の底板部21とビス止めされている。また、右側板部29においてメインシャーシ11の右側板部22とビス止めされているとともに、左側板部30においてメインシャーシ11の左側板部23とビス止めされている。
【0031】
すなわち、サブシャーシ25は、メインシャーシ11に対して取り付けられる際、サブシャーシ25の外面がメインシャーシ11の内面に接触するようにして取り付けられるのではなく、複数の締結部材によってメインシャーシ11の内面に部分的に接触するようにして取り付けられる。つまり、サブシャーシ25は、その外面とメインシャーシ11の内面との間で所定の隙間を隔ててメインシャーシ11に取り付けられる。
【0032】
後板部28には、図4に示すように、ほぼ一面に広がるように開口28aが形成されている。後板部28の内側には、2つのヒートシンク31,32が取り付けられている。各ヒートシンク31,32は、それぞれ平板状の基部33と、その基部33から延びた複数の平板状の立設部34とを有している。各ヒートシンク31,32は、基部33の裏面が後板部28の開口28aから臨むようにして後板部28にそれぞれ取り付けられている。
【0033】
後板部28の後面外側には、アンプ回路基板群35が取り付けられている。アンプ回路基板群35は、各スピーカ(図示略)に出力するための音声信号をそれぞれ増幅するための複数の回路基板からなる。より詳細には、アンプ回路基板群35は、ヒートシンク31,32に沿って配設された2枚の第1基板36,37と、第1基板36,37の下方端部から略水平方向に沿って配設された第2基板38と、第2基板38の表面に対して立設するように配設された複数(例えば7枚)の第3基板39とからなる。
【0034】
各第1基板36,37は、複数の電界効果トランジスタ(FET)41を備えている。各電界効果トランジスタ41は、その本体部から延びた複数の端子が第1回路基板36,37に接続されている一方、本体部の表面がヒートシンク31,32と直接的に接している。
【0035】
右側板部29及び左側板部30は、それらの表面に排気孔29a,30aがそれぞれ形成されている。これら排気孔29a,30aは、上記したメインシャーシ11の側板部22,23の排気孔22a,23aと連通されるものである。すなわち、サブシャーシ25内の空気は、後述する排気用ファン54が駆動されると、サブシャーシ25の側板部29,30の排気孔29a,30a、メインシャーシ11の側板部22,23の排気孔22a,23a、及び本体1の側面パネル13,14の排気孔13a,14aを通じて外部に放出される。
【0036】
右側板部29及び左側板部30は、それらの表面に支持用開口29b,30bがそれぞれ形成されている。これらの支持用開口29b,30bは、このAVアンプのメンテナンス時に用いられるものである。すなわち、サブシャーシ25は、図4に示すように、部品搭載用シャーシ45、アンプ回路基板群35及びヒートシンク31,32等が一体的にユニット化されて装着された状態でメインシャーシ11に対して取り付け自在とされている。
【0037】
より具体的には、例えば作業者がサブシャーシ25を取り外すためにメインシャーシ11におけるビス止めを外して、支持用開口29b,30bに手を添えてサブシャーシ25を引き上げると、サブシャーシ25は、ユニット化された状態(図4に示す状態)のまま、メインシャーシ11から取り外される。そのため、サブシャーシ25に付随する部品を交換又は修理するときには、上記したようにしてメインシャーシ11からサブシャーシ25を取り外すことにより、所望の部品を交換又は修理することができ、ほぼ全ての部品を取り外さなければ所望の部品を交換又は修理することができない場合に比べて、メンテナンス性が向上されたものとなっている。
【0038】
サブシャーシ25には、その内方に部品搭載用シャーシ45(本発明の「第3シャーシ」に相当)が取り付けられている。
【0039】
図6は、部品搭載用シャーシ45とそれに装着される部品とを示す斜視図であり、図5に対してサブシャーシ25を省略した場合の斜視図である。部品搭載用シャーシ45は、略台座状に形成されており、中央に設けられた中央平板部46と、中央平板部46の左右両端から直交方向にそれぞれ延びた右延設部47及び左延設部48と、右延設部47の上端から水平方向に延びた右平板部49と、左延設部48の上端から水平方向に延びた左平板部50とによって構成されている。
【0040】
部品搭載用シャーシ45は、複数箇所で締結部材によって固着されることによりサブシャーシ25に対して取り付けられる。より詳細には、部品搭載用シャーシ45は、図3に示すように、右平板部49(図6では左側に配置)の先端に形成されたフランジ49aにおいて、サブシャーシ25の右側板部29とビス止めされているとともに、左平板部50(図6では右側に配置)の先端に形成されたフランジ50aにおいて、サブシャーシ25の左側板部30とビス止めされている。また、部品搭載用シャーシ45は、中央平板部46においてサブシャーシ25の底板部26とビス止めされている。
【0041】
すなわち、部品搭載用シャーシ45は、サブシャーシ25に対して取り付けられる際、部品搭載用シャーシ45の外面の全てがサブシャーシ25の内面に接触するようにして取り付けられるのではなく、複数の締結部材によってサブシャーシ25の内面に部分的に接触するようにして取り付けられる。
【0042】
部品搭載用シャーシ45の中央平板部46の上面には、トランス取付金具51を介してメイントランス(トロイダルトランス)52が設けられている。メイントランス52は、入力される電源電圧(例えばAC100Vの商用電源電圧)を降圧し、かつ絶縁するためのものである。このメイントランス52は、電源が投入されることにより比較的過大な電流が流れ、主として振動の原因となる。
【0043】
部品搭載用シャーシ45の右平板部49及び左平板部50の上面には、直接的にサブトランス53がそれぞれ設けられている。サブトランス53は、メイントランス52によって降圧された電圧をさらに所定の電圧に降圧し、かつ絶縁するためのものである。このサブトランス53は、電源が投入されることにより電流が流れ、振動の原因となる。
【0044】
部品搭載用シャーシ45の右平板部49及び左平板部50の下面には、排気用のファン54が吊り下げられるようにしてそれぞれ設けられている。排気用ファン54は、図示しないファン駆動回路によって駆動されることにより、本体1内部の空気を外部に放出するためのものである。この排気用ファン54も、電源が投入されることにより駆動され、振動の原因となる。
【0045】
メインシャーシ11の後方側であって底板部21の上面には、後方側端部に沿うように複数の信号処理基板55(図2参照)が配設されている。信号処理基板55は、略矩形平板状に形成されたプリント基板によって構成されており、IC、コンデンサ及び抵抗等のチップ部品等を実装するものである。
【0046】
次に、このAVアンプの制振構造の作用について説明する。上記構成において、このAVアンプに電源が投入されると、メイントランス52及びサブトランス53に電圧が印加されて電流が流れる。メイントランス52及びサブトランス53に電流が流れると、これらは微小に振動する。また、排気用ファン54は、図示しない駆動回路によって回転駆動されると、微小に振動する。これらメイントランス52、サブトランス53及び排気用ファン54が微小に振動すると、これらの振動は、これらが搭載された部品搭載用シャーシ45に伝達される。
【0047】
部品搭載用シャーシ45は、サブシャーシ25に対して複数の締結部材によって部分的に接触して固着されて取り付けられているため、部品搭載用シャーシ45に伝わった振動は、サブシャーシ25には減衰されて伝達される。また、サブシャーシ25は、メインシャーシ11に対して複数の締結部材によって部分的に接触して固着されて取り付けられているため、サブシャーシ25における振動は、メインシャーシ11にはさらに減衰されて伝達される。
【0048】
すなわち、本実施形態に係るAVアンプでは、振動発生源となるメイントランス52、サブトランス53及び排気用ファン54をそれぞれ部品搭載用シャーシ45に複数点で固定し、各振動部材から発生する振動を各固定点を経由して部品搭載用シャーシ45に伝達させている。さらに、部品搭載用シャーシ45とメインシャーシ11との間にサブシャーシ25を介在させ、部品搭載用シャーシ45とサブシャーシ25との間及びサブシャーシ25とメインシャーシ11との間もそれぞれ複数点で固定し、部品搭載用シャーシ45に伝達された振動を各固定点を経由してサブシャーシ25に伝達させるとともに、サブシャーシ25に伝達された振動を各固定点を経由してメインシャーシ11に伝達させている。
【0049】
したがって、メイントランス52、サブトランス53及び排気用ファン54でそれぞれ発生した振動は、上記の伝達経路を通る間に減衰され、メインシャーシ11には十分に減衰された状態で伝達され、メインシャーシ11に搭載された信号処理基板55において処理される音声信号への悪影響を十分に抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る制振構造によれば、本体1は楽器における周波数成分を混合する共鳴用空洞と類似の役目を果たすとも考えられるところ、メイントランス52、サブトランス53及び排気用ファン54でそれぞれ発生した振動のメインシャーシ11に搭載された信号処理基板55への伝達経路として複数の立体的構造からなるシャーシを重複させ、各シャーシ11,25,45を複数点で結合する構成を採用しているので、音声信号に必要な周波数成分の減衰は抑え、振動に起因する周波数成分のみを好適に減衰させることができるので、良好な音質の音声信号を出力することができるAVアンプを提供することができる。
【0051】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、メインシャーシ11、サブシャーシ25及び部品搭載シャーシ45の形状は、上記実施形態で説明した形状に限るものではない。また、振動発生源から信号処理基板55までに介在されるシャーシの数は、上記実施形態に限るものではない。また、振動発生源としては、上記したようにメイントランス52、サブトランス53及び排気用ファン54に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本願発明に係るオーディオ機器としてのAVアンプの斜視図である。
【図2】図1に示すAVアンプの分解斜視図である。
【図3】図2に示すA−Aに沿う断面図である。
【図4】サブシャーシとそれに付随される部品とを後方側斜め上方から見た斜視図である。
【図5】図4においてサブシャーシに付随される部品を省略した場合の斜視図である。
【図6】部品搭載用シャーシとそれに装着される部品とを示す斜視図である。
【図7】従来のAVアンプの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 本体
11 メインシャーシ
21 底板部(メインシャーシの)
22 右側板部(メインシャーシの)
23 左側板部(メインシャーシの)
25 サブシャーシ
26 底板部(サブシャーシの)
27 前板部
28 後板部
29 右側板部(サブシャーシの)
30 左側板部(サブシャーシの)
35 アンプ回路基板群
45 部品搭載シャーシ
46 中央平板部
47 右延設部
48 左延設部
49 右平板部
50 左平板部
52 メイントランス
53 サブトランス
54 排気用ファン
55 信号処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動されることにより振動発生源となる振動部品が設けられるとともに、音声信号を処理するための信号処理基板が取り付けられた第1シャーシが本体外形の一部を構成するオーディオ機器の制振構造であって、
前記第1シャーシの内面に複数の締結部材を介して部分的に接触して固着された第2シャーシと、
前記第2シャーシの内面に複数の他の締結部材を介して部分的に接触して固着された第3シャーシと、を有し、
前記振動部品は、前記第3シャーシに固定されていることを特徴とするオーディオ機器の制振構造。
【請求項2】
前記第1シャーシは、略矩形状の第1底板部と、前記第1底板部の両端から直交方向にそれぞれ延びた第1側板部とによって構成されており、
前記第2シャーシは、略矩形状の第2底板部と、前記第2底板部の両端から直交方向にそれぞれ延びた第2側板部とによって構成されており、前記第1シャーシの前記各第1側板部の内面に、前記各第2側板部がそれぞれ固着されているとともに、前記第1シャーシの前記第1底面部の内面に、前記第2底面部が固着されている、請求項1に記載のオーディオ機器の制振構造。
【請求項3】
前記第3シャーシは、
略矩形状の中央板状部と、前記中央板状部の両端から直交方向にそれぞれ延びた延設部と、前記各延設部の上端から前記中央板状部に沿って平行にそれぞれ延びた平行板状部とによって構成されており、前記第2シャーシの前記各第2側板部に、前記各平行板状部の先端がそれぞれ固着されている、請求項2に記載のオーディオ機器の制振構造。
【請求項4】
前記振動部品は、電源用トランスであり、
前記電源用トランスは、前記第3シャーシの前記中央板状部の上面に固着されて支持されている、請求項3に記載のオーディオ機器の制振構造。
【請求項5】
前記振動部品は、排気用ファンであり、
前記排気用ファンは、前記第3シャーシの前記平行板状部の下面から吊り下げられるようにして固着されて支持されている、請求項3又は4に記載のオーディオ機器の制振構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−159877(P2008−159877A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347501(P2006−347501)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【特許番号】特許第4052347号(P4052347)
【特許公報発行日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】