説明

オートアライメント方法及びその装置

【課題】 コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡や移動鏡の位置のアライメントが容易に行えるオートアライメント方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コーナーキューブミラー型干渉計に対してアライメント補正の開始を指示するアライメント開始信号を入力する入力工程(S1)と、前記入力工程(S1)によりアライメント開始信号が入力されると、前記固定鏡または移動鏡を光軸と直交する平面において移行させながら、それらの頂点の座標値を光軸の座標値と一致させる探索工程(S2)と、前記探索工程(S2)により見出された最後の座標値で前記固定鏡や移動鏡を仮固定する一時固定工程(S3)と、を備えたことを特徴とするオートアライメント方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はオートアライメント方法及びその装置、特にコーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡および移動鏡のオートアライメント方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】干渉計は、その調整過程において波長オーダーで光の干渉の最適状態にするという点において非常に微妙な調整技術を要する。従来、調整過程の効率化および最適条件での測定(安定性の向上)を行う手段としてオートアライメントが望まれてきた。従来技術としては、初期のフーリエ変換型干渉計のうち商用に供されたものの殆どに平面鏡が使用されていた。初期の装置の不安定要因を排除するために取られた対策として大きく分けて2つの方式が採用された。
【0003】すなわち、平面鏡を使用したままオートアライメント機能などを搭載し、または、平面鏡をコーナーキューブミラーに置き換えて装置の安定性を向上させてきた。今日、装置性能が向上する中で、一般に高級機と呼ばれる機種については、一台の装置でカバーできる波数範囲を拡張する目的でビームスプリッタの交換可能な装置が望まれてくるようになってきた。平面鏡型、コーナーキューブミラー型を問わず、固定鏡からの反射光と、光路査を与える移動鏡からの反射光とで干渉光を形成する干渉計では、ビームスプリッタを交換すると、光軸に対する固定鏡や移動鏡の位置が狂う場合があった。また、さらなる安定性の向上という観点からもコーナーキューブミラー型干渉計のオートアライメントが望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のアライメント方法では、ユーザが固定鏡や移動鏡の位置のアライメントを行うことに対する対策は何ら為されているものではないため、ユーザが固定鏡や移動鏡の位置のアライメントを行うことは非常に困難であった。これに対し、固定鏡や移動鏡の位置は、前述のように主にビームスプリッタを交換する場合について、若干のアライメントエラーを伴う場合があった。また、装置性能の向上という観点から、製造工程における最適アライメントの容易な実現とその確認手段が望まれていた。
【0005】しかしながら、従来では、ユーザがアライメントを容易に行える技術が存在しなかった。そのため、この種の分野では、ユーザであっても、光軸に対する固定鏡や移動鏡の位置のアライメントが容易に行える技術の開発が強く望まれていた。さらに、製造工程でのアライメントを容易にしかも高効率に行う手段が望まれていた。本発明は前記従来技術の事情に鑑みなされたものであり、その目的はコーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡や移動鏡の位置のアライメントが容易に行えるオートアライメント方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために本発明にかかるオートアライメント方法は、入力工程と、探索工程と、一時固定工程とを備える。前記入力工程は、コーナーキューブミラー型干渉計に、アライメント補正の開始を指示するアライメント開始信号を入力する。前記探索工程は、前記入力工程により補正開始信号が入力されると、前記コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡または移動鏡を、光軸と直交する平面において移行させながら、それらの頂点の座標値を光軸の座標値と一致させる。前記一時固定工程は、前記探索工程により見出された最後の座標値で前記固定鏡または移動鏡を仮固定する。
【0007】なお、前記探索工程は、前記固定鏡または移動鏡を、光軸と直交する平面においてステップ単位で移行することが好適である。また、前記入力工程によりアライメント開始信号が入力されると、干渉計が内蔵している光源の干渉強度をモニタする検出工程を備えており、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、前記検出工程によりモニタされた干渉強度が最大値を示す座標値を見出すことが好適である。
【0008】また、前記入力工程によりアライメント開始信号が入力されると、干渉計が内蔵している照射手段からの単色光の干渉強度をモニタする検出工程を備えており、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、前記検出工程により検出された単色光の干渉強度が最大値を示す座標値を見出すことが好適である。また、本出願の請求項5記載のオートアライメント方法は、アライメント開始時の光軸と、コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡または移動鏡との位置関係が不明確である場合、その探索工程のアルゴリズムとしてシンプレックス法を用いることを特徴とする。
【0009】また、本出願の請求項6記載のオートアライメント方法は、前記探索工程が、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、補正開始時の固定鏡または移動鏡位置近傍の干渉光出力のデータからエネルギ分布の最大傾斜方向を見出し、その方向における最大位置を見出し、しかるのち、この最大位置から前記最大傾斜方向と直交する方向において最大傾斜方向を見出し、この最大傾斜方向における干渉光出力の最大位置を見出すシーケンスを繰り返すことにより最大位置を見出すことを特徴とする。
【0010】また、本出願の請求項7記載のオートアライメント方法は、前記コーナーキューブミラー型固定鏡または移動鏡を光軸と直交する平面においてステップ単位で移行する場合、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、モニタする干渉光エネルギ分布の最大傾斜方向を決めるのに、開始点と隣接する8つの格子点へ前記固定鏡または移動鏡を移行させたときの干渉光の強度を測定し、そのうちの最大位置を見出すことを特徴とする。ここでいう開始点と隣接する8つの格子点とは、その格子の間隔が移行軸の1ステップ分であるものをいう。
【0011】また、本出願の請求項8記載のオートアライメント方法は、前記固定鏡または移動鏡を光軸と直交する平面においてステップ単位で移行する場合、前記探索工程が、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、予め定められた間隔で第1軸方向へ測定し、その干渉光の強度データを保管処理し、処理結果からこの軸上での最大値を示す位置を推定し、つぎに推定される第1軸上の最大位置を通る第2軸方向へ予め定められた間隔で測定し、この移行を繰り返す間に各移動量、第1軸移行、第2軸移行、第1軸移行の大きさを保持しておき、この移行間隔が予め定められた間隔よりも小さくなったところで、移行間隔を1ステップ毎とし、これ以後は1ステップ毎の第1軸移行および第2軸移行により干渉光の最大強度位置を見出すことを特徴とする。ここでいう第1軸と第2軸とは、光軸と直交する平面において交わる2つの軸をいう。
【0012】また、本出願の請求項9記載のオートアライメント装置は、移行手段を備えたことを特徴とする。前記移行手段は、前記コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡または移動鏡を、光軸と直行する平面において移行可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明にかかるオートアライメント方法は、前述のようにアライメント開始信号が入力されると、コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡または移動鏡を、光軸と直交する平面において移行させながら、その頂点の座標値を光軸の座標値と一致させ、見出された最後の座標値でその固定鏡または移動鏡を仮固定することとした。その結果、再度アライメントを行うに際し、その開始信号を入力するだけで、固定鏡や移動鏡の位置のアライメントをより容易に行うことが可能となる。
【0014】また、本発明者らは、アライメント開始時の光軸と固定鏡または移動鏡との位置関係が不明確である場合、その探索工程のアルゴリズムとしてシンプレックス法の原理を応用することとしたため、アライメント補正をより適正に行うことが可能となる。
【0015】まず、そのシンプレックス法の原理について説明する。シンプレックス(単体)とは、幾何学的にもっとも簡単な図形を示す言葉で、1次元的空間の場合では線分、2次元空間の場合は三角形、3次元空間では四面体、一般にn次元空間では(n+1)個の頂点をもつ図形が、“シンプレックス”(simplex)である。各頂点間の距離が等しいシンプレックスを、正規型(基準型)という。
【0016】最適化のためのシンプレックス法は、スペンドレイ(W.Spendley)らにより紹介された。これは、最適化する必要のある因子空間内に正規シンプレックスを設定して、各頂点に対応する実験点で実験し、最適なレスポンス値を与える方向へシンプレックスを移行させて逐次最適点を探索する方法で、正規シンプレックス法ともいわれている。
【0017】その後、ネルダー(J.A.Nelder)らによって、シンプレックスを移行する際、正規型をより最適な方向へ変形させて最適点への収束を早める方法が試みられた。これは、変則シンプレックス法ともいわれている。正規シンプレックス法は、2因子の時に正三角計の正規シンプレックスの頂点の実験点で実験して、レスポンス値が最悪となった頂点を選ぶ。この頂点の鏡像点のレスポンス値は、より望ましいことが期待できることから、この手続きを繰り返して最適点を求める方法である。鏡像点とは、ある面(線)に対象な点である。
【0018】正規シンプレックス法は、つぎの規則にしたがう。
規則1 シンプレックス法を構成する点の中でいちばん望ましくない点を定め、その点をその鏡像の点に置き換える。(n+1)個の実験点をもつn因子のシンプレックス法では、もしl点が捨てられるならば、任意の因子(A)の新しい実験点の座標は次式で与えられる。
【0019】
【数1】


規則2 鏡像点におけるレスポンス値が、この新しく求めたシンプレックスの他のどの点よりも望ましくない時、つぎに望ましくない点の鏡像点へ移行する。
規則3 レスポンスに誤差がある場合、誤差のために実際より異常に望ましいレスポンスを与え、その点を最適点とみなしてしまうことを防ぐため、引き続く(n+1)個のシンプレックスで、その点が規則1で棄却されない時、その点で実験をやりなおす。
【0020】図15に基づいて、シンプレックスの移行の仕方を2因子について例示する。適当な大きさのシンプレックス1を設定して実験を行う。規則1にしたがって、いちばん望ましくない実験点P1の鏡像点P4を求めてP4で実験する。P4におけるレスポンス値がP2,P3のレスポンス値よりも望ましくない場合、規則1だけでは前のシンプレックスに戻ってしまう。そこで規則2により、つぎに望ましくない点P2の鏡像点P5を求めて、シンプレックス3へと移行する。
【0021】シンプレックス法の計算手順を図16にしたがって説明する。
手順1 (n+1)個の実験点の座標と実験結果(実験順序はランダムで)を記入し、レスポンス値の最小点(xl)を発見する。
手順2 手順1で発見した最小行(l行)を除外して、各列の合計を求める。
手順3 手順2で求めた値に2/nを乗ずる。
手順4 手順3で求めた値から最小行(l行)の値を引いて、鏡像の実験点(Xr)と予想値を求める。
手順5 移行の効果を判断するための参考として、シンプレックスの平均値を求める。
手順6 手順4で求めた新しい実験点と、残りの実験点からなる新しいシンプレックスを作り、xrで実験する。
【0022】以上の計算手順を繰り返し、3つの規則にしたがって逐次探索結果実験をして最適点を発見する、すなわちコーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡や移動鏡の座標値を光軸の座標値と一致させることができる。以下、図面に基づき、本発明の好適な実施態様を説明する。図1には、本発明の実施態様1にかかるオートアライメント方法を用いたコーナーキューブミラー型干渉計の概略構成が示されている。また、図2〜図4には、実施態様1に用いた固定鏡および移動鏡の移行手段の拡大図が示されている。なお、実施態様1では、アライメント補正開始時の光軸と固定鏡および移動鏡との位置関係が明らかである場合を想定している。
【0023】同図に示すコーナーキューブミラー型干渉計10は、光束を照射する光源12と、光源12からの光束を2光束に分割し、光路差が与えられた2光束を再度重ね合わせるビームスプリッタ14と、ビームスプリッタ14からの第1分割光を再度ビームスプリッタ14へ返光する固定鏡16と、ビームスプリッタ14からの第1分割光を再度ビームスプリッタ14へ返光する移動鏡18とを備えている。
【0024】このコーナーキューブミラー干渉計10は、固定鏡16からの反射光と、光路差を与える移動鏡18からの反射光とで干渉光を形成している。そして、形成された干渉光の強度が検出器20により検出され、制御手段22に入力される。制御手段22は、検出器20からの干渉強度に基づき、例えば固定鏡16を光軸X1と直交する平面A1において、x、y方向へステップ単位で移行させてアライメントを行う。
【0025】すなわち、固定鏡16や移動鏡18の位置を光軸と直交する平面において移行させながら、検出器20で検出された干渉強度が最大値を示す座標値を見出し、その見出された最後の座標値で固定鏡16や移動鏡18の位置を仮固定する。また、このコーナーキューブミラー干渉計10は、固定鏡16や移動鏡18を光軸X1,X2と直交する平面において移行する移行手段として、図2〜図4に示すあり溝スライダ24,26を組み合わせたものを備えている。なお、図2はあり溝スライダの上面図、図3はその正面図、図4はそれらの組立図である。
【0026】移行手段は、図4に示すように、第1あり溝スライダ24の移動台34の上に第2あり溝スライダ26が設けられている。そして、例えば固定鏡16は、第2あり溝スライダ26の移動台28の上に設けられており、例えば光軸X1と直交する平面A1において、図中x、y軸方向へ移行するように設けられている。すなわち、固定鏡16をx軸方向へ移行する場合、第1あり溝スライダ24のモータ30を回転させると、送りネジ32により移動台34がx軸方向へ移動する。移動台34がx軸方向へ移動すると、移動台34の上に設けられた第2あり溝スライダ26もx軸方向へ移動するため、第2あり溝スライダ26の移動台28に設けられた固定鏡16は、x軸方向へ移行することとなる。
【0027】これに対し、固定鏡16をy軸方向へ移行する場合、第2あり溝スライダ26のモータ36を回転させると、送りネジ38により移動台28がy軸方向へ移動する。移動台28がy軸方向へ移動すると、移動台28の上に設けられた固定鏡16もy軸方向へ移行することとなる。
【0028】実施態様1にかかるオートアライメント方法を用いたコーナーキューブミラー型干渉計10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。まず、コーナーキューブミラー型干渉計10の電源を入れると、図17に示すように、アライメント補正の開始を指示するアライメント開始信号が制御手段22へ自動で入力されるように予めプログラムされている(ステップS1)。その結果、測定前には、必ずアライメント動作が行われることとなり、常に最適なアライメント状態を確保することができる。アライメント開始信号が入力されると、制御手段22は、探索工程を開始する(ステップ2)。
【0029】すなわち、制御手段22は、光軸と直交する平面において、固定鏡16または移動鏡18の頂点の座標値が、光軸の座標値と一致するように、固定鏡16または移動鏡18を2軸方向(例えばx軸、y軸方向)へステップ単位で移行する。具体的には、固定鏡16または移動鏡18の頂点の座標値が光軸X1,X2の座標値と一致したことを検知するため、光軸X1,X2と直交する平面において、固定鏡16または移動鏡18を2軸方向(例えばx軸、y軸方向)へステップ単位で移行しなから、干渉計10が内蔵している光源12の干渉強度を検出器20によりモニタし、モニタされた干渉強度が最大値を示す固定鏡16頂点または移動鏡18頂点の座標値を見出す。
【0030】このほか、固定鏡16または移動鏡18の頂点の座標値が光軸X1,X2の座標値と一致したことを検知するため、固定鏡16または移動鏡18を光軸X1,X2と直交する平面において、2軸方向(例えばx軸、y軸方向)へステップ単位で移行しなから、干渉計10が内蔵している照射手段40からの単色光(例えば参照用レーザ)の干渉強度を検出器20によりモニタし、モニタされた単色光(参照用レーザ)の干渉強度が最大値を示す固定鏡16頂点または移動鏡18頂点の座標値を見出すこともできる。
【0031】そして、前述のように探索工程(S2)により見出された最後の座標値で固定鏡16または移動鏡18を仮固定する(S3)。なお、図17に示すフローチャートでは、図示省略されているが、一時固定工程(S3)により固定鏡16または移動鏡18の何れかのアライメントが終了すると、つぎに他方について探索工程(S2)が自動に開始され、一時固定工程(S3)が終了すると、全てのアライメント動作を終了する。
【0032】以上のように実施態様1にかかるオートアライメント方法を用いたコーナーキューブミラー型干渉計10では、その電源を入れるとアライメント補正開始を指示するアライメント開始信号が制御手段22に自動に入力されることとした。その結果、測定前には必ずアライメント動作が行われることとなり、従来に比較してアライメント状態をより適正に保つことができる。
【0033】しかも、固定鏡16や移動鏡18を光軸X1,X2と直交する平面において移行させながら、その頂点の座標値を光軸の座標値と一致させ、見出された最後の座標値で固定鏡16または移動鏡18を仮固定することとした。その結果、再度のアライメントを行うに際し、その開始信号を再入力するだけで固定鏡16や移動鏡18の位置のアライメントをより容易に行うことができる。
【0034】なお、本発明のオートアライメント方法としては、前記各構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。すなわち、前記各構成では、アライメント開始時の光軸X1,X2と、固定鏡16または移動鏡18との位置関係が明確である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの位置関係が不明確の場合、本発明にかかるオートアライメント方法の探索工程(S2)のアルゴリズムとして、前記図15〜図16に示すシンプレックス法の原理を応用することが好適である。
【0035】この場合、シンプレックス法に用いる2因子として、例えば光軸X1と直交する平面A1上のx座標値、y座標値を想定することができる。このほか、オートアライメント開始時の光軸X1,X2と、固定鏡16や移動鏡18との位置関係が不明確である場合、前記図15〜図16に示すシンプレックス法に代わって、図5に示すように、制御手段22は、探索工程(S2)において、例えば固定鏡16頂点の座標値が例えば光軸X1の座標値と一致したことを検知するため、コー例えば固定鏡16を光軸X1と直交する平面A1において、2軸方向(例えばx,y方向)へステップ単位で移行させながら、オートアライメント開始時の固定鏡16位置近傍の干渉光出力のデータからエネルギ分布の最大傾斜方向を見出し、その方向における最大位置を見出す。
【0036】しかるのち、この最大位置から前記最大傾斜方向と直交する方向において最大傾斜方向を見出し、この最大傾斜方向における干渉光出力の最大位置を見出す。このシーケンスを制御手段22により繰り返すことにより最大位置を見出し、探索工程(S2)を終了する。探索工程(S2)を終了すると、制御手段22は、一時固定工程(S3)において、探索工程(S2)により見出された最後の最大位置で例えば固定鏡16を仮固定する。
【0037】また、例えば固定鏡16を光軸X1と直交する平面A1においてステップ単位で移行する場合、制御手段22は、探索工程(S2)において、例えば固定鏡16頂点の座標値が光軸X1の座標値と一致したことを検知するため、モニタする干渉光エネルギ分布の最大傾斜方向を決めるのに、図6に示すように開始点と隣接する8つの格子点(格子の間隔は移動軸の1ステップ分)へ固定鏡16を移動させたときのモニタ干渉光の強度を検出器20によって測定させ、そのうちの最大位置を求める。同図では、×2および×3の位置が同値で最大である場合を示している。
【0038】図7は、×2および×3の位置により斜線で示す最大傾斜方向があると予測される領域を計算し、この領域内で×2および×3と隣り合う点で、×2および×3の延長上の位置を除く点を測定したことを示している。同図ではその位置が×9となっている。×2、×3および×9の位置でのモニタ干渉光の強度を比較し、その強度が9であったことを示している。
【0039】図8〜図10は、前記図7の場合と同様に、これまでの最大傾斜方向が存在すると考えられる予測領域内で最後に測定した最大位置と隣り合う位置を測定する方法を繰り返す。予め最初の例えば固定鏡16位置から何ステップまでを測定するかを決めておき、図11に示すようにこの決められた間隔まで測定したところの最大位置と、例えば固定鏡16の開始位置から最初の最大傾斜方向および測定間隔(a,b)を決定する。
【0040】この段階で決まった最大傾斜方向および測定間隔(a,b)により、図12に示すように最大傾斜方向の延長線上にこの間隔で測定していき、延長線上での最大値を示す位置を求める。この最大値の位置を仮に1とする。図13に示すようにx軸方向およびy軸方向の最大位置を示す方向に測定を延長し、最終的に光軸と直交する平面の作動領域内における最大位置を見出し、探索工程(S2)を終了する。
【0041】探索工程(S2)を終了すると、制御手段22は、一時固定工程(S3)において、この位置で例えば固定鏡16を仮固定する。このほか、制御手段22は、探索工程(S2)において、例えば固定鏡16を光軸X1と直交する平面においてステップ単位で移行する場合、図14に示すように、予め定められた間隔で第1軸方向(例えばx軸方向)へ測定し、その干渉光の強度データを記憶手段(図示省略)に保管処理し、記憶手段に記憶された処理結果からこの軸上での最大値を示す位置を推定する。
【0042】つぎに推定される第1軸(例えばx軸)上の最大位置を通る第2軸方向(例えばy軸方向)へ予め定められた間隔で測定する。この移動を繰り返す間に各移動量、第1軸(例えばx軸)移行(最初はa)、第2軸(例えばy軸)移行、(2番面はb)、第1軸(例えばx軸)移行(3番目はc)の大きさを保持しておき、この移動間隔が予め決められた間隔よりも小さくなったところで、移動間隔を1ステップ毎とし、これ以後は1ステップ毎の第1軸(例えばx軸)移動および第2軸(例えばy軸)移行により干渉光の最大強度位置を見出し、探索工程(S2)を終了する。探索工程(S2)を終了すると、制御手段22は、一時固定工程(S3)において、探索工程(S2)により見出された最後の最大強度位置で例えば固定鏡16を仮固定する。
【0043】以上のように、実施態様2〜4にかかるオートアライメント方法によれば、前記実施態様1と同様、手軽にアライメントが行える。したがって、頻繁なアライメントが可能となり、例えばビームスプリッタ交換時には若干のアライメントエラーを伴うことが多いが、このような場合のアライメントが手軽に行える。
【0044】しかも、前記実施態様1と同様、時間経過や温度変化によるミスアライメントの補正も行うことが可能であるから、測定を行う前に必ずアライメント動作を入れることにより、常に最適なアライメント状態を確保することができる。このほか、実施態様2〜4にかかるオートアライメント方法では、アライメント開始時の光軸と固定鏡または移動鏡との位置関係が不明確である場合、その探索工程(S2)のアルゴリズムとしてシンプレックス法の原理を応用することとしたため、このような場合、実施態様1に比較してアライメントをより適正に行うことができる。
【0045】また、前記各構成では、コーナーキューブミラー型干渉計10の電源を入れると、アライメント開始を指示するアライメント開始信号が自動に入力される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ユーザがキーボード、マウス等の手動入力手段によって、アライメント開始信号を手動入力することが可能である。また、前記各構成では、干渉計が内蔵している光源の干渉強度に基づき、アライメント補正する場合について説明したが、図2に示すように照射手段40からの単色光(参照用レーザ)の干渉強度を用いることが可能である。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかるオートアライメント方法によれば、コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡や移動鏡を、光軸と直交する平面においてを移行させながら、それらの頂点の座標値を光軸の座標値と一致させ、最終的に見出された座標値でその固定鏡または移動鏡を仮固定することとした。その結果、再度のアライメントを行うに際し、その開始信号を入力するだけで、固定鏡や移動鏡の位置のアライメントをより容易に行うことができる。しかも、アライメント開始時の光軸と固定鏡または移動鏡との位置関係が不明確である場合、その探索工程のアルゴリズムとして、シンプレックス法の原理を応用することとしたため、このような場合であっても、アライメントをより適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるオートアライメント方法を用いたコーナーキューブミラー型干渉計の概略構成の説明図
【図2】前記図1に示すコーナーキューブミラー型干渉計に用いた移行手段の説明図
【図3】前記図1に示すコーナーキューブミラー型干渉計に用いた移行手段の説明図
【図4】前記図1に示すコーナーキューブミラー型干渉計に用いた移行手段の説明図
【図5】実施態様2にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図6】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図7】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図8】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図9】実施形態3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図10】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図11】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図12】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図13】実施態様3にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図14】実施態様4にかかるオートアライメント方法の作用を示す説明図
【図15】シンプレックスの動きの説明図
【図16】正規シンプレックス法の計算シート例
【図17】本発明にかかるオートアライメント方法の処理内容を示すフローチャート
【符号の説明】
10 コーナーキューブミラー型干渉計
12 光源
14 ビームスプリッタ
16 固定鏡
18 移動鏡
20 検出手段
22 制御手段
24 第1あり溝スライダ(移行手段)
26 第2あり溝スライダ(移行手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 コーナーキューブミラー型干渉計に対してアライメント補正の開始を指示するアライメント開始信号を入力する入力工程と、前記入力工程によりアライメント開始信号が入力されると、前記コーナーキューブミラー型干渉計の固定鏡または移動鏡を、光軸と直交する平面において移行させながら、それらの頂点の座標値を光軸の座標値と一致させる探索工程と、前記探索工程により見出された最後の座標値で前記固定鏡または移動鏡を仮固定する一時固定工程と、を備えたことを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項2】 請求項1記載のオートアライメント方法において、前記探索工程は、前記固定鏡または移動鏡を、光軸と直交する平面においてステップ単位で移行することを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項3】 請求項1記載のオートアライメント方法において、前記入力工程によりアライメント開始信号が入力されると、干渉計が内蔵している光源の干渉強度をモニタする検出工程を備えており、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、前記検出工程によりモニタされた干渉強度が最大値を示す座標値を見出すことを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項4】 請求項1記載のオートアライメント方法において、前記入力工程によりアライメント開始信号が入力されると、干渉計が内蔵している照射手段からの単色光の干渉強度をモニタする検出工程を備えており、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、前記検出工程によりモニタされた単色光の干渉強度が最大値を示す座標値を見出すことを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項5】 請求項1ないし4の何れかに記載のオートアライメント方法において、アライメント開始時の光軸と、固定鏡または移動鏡との位置関係が不明確である場合、その探索工程のアルゴリズムとしてシンプレックス法を用いることを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項6】 請求項5記載のオートアライメント方法において、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、アライメント開始時の前記固定鏡または移動鏡位置近傍の干渉光出力のデータからエネルギ分布の最大傾斜方向を見出し、その方向における最大位置を見出し、しかるのち、この最大位置から前記最大傾斜方向と直交する方向において最大傾斜方向を見出し、この最大傾斜方向における干渉光出力の最大位置を見出すシーケンスを繰り返すことにより最大位置を見出すことを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項7】 請求項5記載のオートアライメント方法において、前記固定鏡または移動鏡を光軸と直交する平面においてステップ単位で移行させる場合、前記探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、モニタする干渉光エネルギ分布の最大傾斜方向を決めるのに、開始点と隣接する8つの格子点へ前記固定鏡または移動鏡を移行させたときの干渉光強度を測定し、そのうちの最大位置を見出すことを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項8】 請求項5記載のオートアライメント方法において、前記固定鏡または移動鏡を光軸と直交する平面においてステップ単位で移行させる場合、探索工程は、前記固定鏡頂点または移動鏡頂点の座標値が光軸の座標値と一致したことを検知するため、予め定められた間隔で第1軸方向へ測定し、その干渉光の強度データを保管処理し、処理結果からこの軸上での最大値を示す位置を推定し、つぎに推定される第1軸上の最大位置を通る第2軸方向へ予め定められた間隔で測定し、この移行を繰り返す間に各移動量、第1軸移行、第2軸移行、第1軸移行の大きさを保持しておき、この移行間隔が予め決められた間隔よりも小さくなったところで、移行間隔を1ステップ毎とし、これ以後は1ステップ毎の第1軸移行および第2軸移行により干渉光の最大強度位置を見出すことを特徴とするオートアライメント方法。
【請求項9】 前記固定鏡または移動鏡を光軸と直行する平面において移行可能な移行手段を備えたことを特徴とするオートアライメント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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