説明

オートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造

【課題】オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に取り付ける金属板の大型化や形状の複雑化を抑え、該金属板への溶接加工等も必要とすることなく、コントロールバルブのボディ外面に開口する排油口への異物の進入を防止する。
【解決手段】オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ10外面に金属板12が取り付けられると共に、該金属板12には、樹脂製の庇カバー16を着脱可能に嵌合させる連結部13が所定位置に突設され、前記金属板12の連結部13と前記庇カバー16との嵌合により、前記庇カバー16が前記ボディ10外面に開口する排油口11との間に所定のクリアランスLを保持しながら前記排油口11の外面側を遮蔽する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造に関し、詳しくは、オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に開口する排油口から磨耗金属粉等の異物がボディ内部に進入するのを防止するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のオートマチックトランスミッションは、遊星歯車等を用いた変速機構をコントロールバルブで油圧制御しており、該コントロールバルブは、油路溝が形成されたボディおよび該ボディに装着され油路の切り替えを行う各バルブから構成される[特開2003−194197号公報(特許文献1)]。
【0003】
コントロールバルブのボディ1の外面には、図5(A)、(B)に示すような金属板(配線盤)2をボルトBで固定し、該金属板2においてコントロールバルブの部品に接続する電線の支持や電線分岐点の固定、ROM等の電子部品の固定などを行っている。
一方、前記コントロールバルブのボディ1には油を排出するための排油口4を設けているが、磨耗金属粉等の異物を含んだ油が前記排油口4から流入すると、該異物がボディ1内のバルブ等に不具合を発生させるおそれがある。そこで、ボディ1の外面に開口する排油口4に対して矢印方向に飛散してくる異物を含んだ油の流入を防止するために、従来、前記金属板2を排油口4の外面側も遮蔽できるような形状に加工してボディ1外面に取り付けている。しかし、該構造では金属板2が大型化したり形状が複雑化したりすると共に、排油口4の位置によっては、プレス加工で一体的に形成された金属板2では遮蔽できない場合もあり、例えば図5(B)のように、排油口4の外面側を遮蔽する別体の金属板3を溶接等で金属板2に固定する必要が生じる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−194197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に取り付ける金属板の大型化や形状の複雑化を抑え、該金属板への溶接加工等も必要とすることなく、コントロールバルブのボディ外面に開口する排油口への異物の進入を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に金属板が取り付けられると共に、該金属板には、樹脂製の庇カバーを着脱可能に嵌合させる連結部が所定位置に突設され、
前記金属板の連結部と前記庇カバーとの嵌合により、前記庇カバーが前記ボディ外面に開口する排油口との間に所定のクリアランスを保持しながら前記排油口の外面側を遮蔽する構造としているオートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造を提供している。
【0007】
前記のように本発明では、オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に取り付ける金属板に連結部を突設し、該連結部に着脱可能に嵌合させる樹脂製の庇カバーで前記ボディ外面に開口する排油口の外面側を遮蔽する構成としている。よって、前記金属板には庇カバーを嵌合させる連結部のみ突設すればよいため、金属板の大型化や形状の複雑化が抑えられる。また、前記連結部に嵌合させる庇カバーは樹脂製であるため軽量で、かつ金属板からの連結部の突設位置をプレス加工等で突出させやすい位置に設定しても、庇カバーを前記連結部と遮蔽すべき排油口との位置関係に柔軟に対応した形状に加工することができる。よって、ボディ外面に取り付ける金属板の大型化や形状の複雑化、該金属板への溶接加工等を行わなくても、前記金属板の連結部に嵌合させた庇カバーが前記排油口の外面側を確実に遮蔽し、排油口の外方から飛散されてくる異物を含んだ油の流入を防止することができる。また、前記金属板の連結部に嵌合させた庇カバーと前記排油口との間に所定のクリアランスを持たせることで、異物を含んだ油の流入を防止しつつ、油の排出経路は確保することができる。
【0008】
前記ボディ外面に取り付ける金属板は、コントロールバルブの部品に接続する電線の支持や電線分岐点の固定、アース接続やROM等の電子部品の固定等に用いることができ、前記金属板はボルト締結によりボディ外面に取り付けられることが好ましい。金属板をコントロールバルブのボディ外面に取り付ける際には、金属板がコントロールバルブの各部品に公差を含めて干渉しないようにすることが重要である。
また、前記連結部は、金属板をボディ外面に取り付けた状態で、遮蔽すべき排油口に近い位置から突出させることが庇カバーを小型化できる点で好ましいが、連結部に嵌合させた庇カバーが遮蔽すべき排油口の外面側を所定のクリアランスをあけて遮蔽できる形状を有していれば連結部の突設位置は特に限定されず、プレス加工等で突設しやすい位置に設けることができる。
【0009】
前記庇カバーには係止爪を突設する一方、前記金属板の連結部には庇カバーの係止爪を係止させる被係止穴を穿設すると共に前記庇カバーの係止爪を前記被係止穴へとガイドする傾斜状のガイド片を前記連結部の突出端から切り起こして形成していることが好ましい。
【0010】
前記のように、庇カバーには係止爪を、金属板の連結部には前記係止爪を係止させる被係止穴をそれぞれ設けることで、前記係止爪と被係止穴とのロック結合によって前記庇カバーを連結部に容易に嵌合させることができる。この際、前記のように、連結部の突出端から前記庇カバーの係止爪を被係止穴へとガイドする傾斜状のガイド片を切り起こして形成することによって、樹脂製の係止爪は金属製の連結部に当接して損傷することなく前記ガイド片に摺接しながらスムーズに被係止穴へ誘導される。よって、前記係止爪と被係止穴とのロック結合を一層容易に行うことができる。
【0011】
本発明は、前記庇カバーが、プレス加工で一体的に形成される前記金属板では遮蔽できない位置の前記排油口を遮蔽する場合に特に有効である。これにより、プレス加工で一体的に形成された金属板に、前記排油口を遮蔽する別部材の金属板を溶接等で取り付ける作業が不要となり、金属板の連結部と庇カバーとの簡単な嵌合作業だけで前記排油口の遮蔽構造が完成するため、作業性が大幅に改善される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に取り付ける金属板に連結部を突設し、該連結部に着脱可能に嵌合させる樹脂製の庇カバーで前記ボディ外面に開口する排油口の外面側を遮蔽する構成としている。よって、前記金属板には前記庇カバーを嵌合させる連結部のみ突設すればよいため、金属板の大型化や形状の複雑化が抑えられ、また、前記連結部に嵌合させる庇カバーは樹脂製であるため軽量で、かつ金属板からの連結部の突設位置をプレス加工等で突出させやすい位置に設定しても、該連結部と遮蔽すべき排油口との位置関係に柔軟に対応した形状に前記庇カバーを加工できる。したがって、ボディ外面に取り付ける金属板の大型化や形状の複雑化、該金属板への溶接加工等を行わなくても、前記金属板の連結部に嵌合させた庇カバーが前記排油口の外面側を確実に遮蔽し、排油口の外方から飛散されてくる異物を含んだ油の流入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるオートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造を示し、(A)は庇カバーを連結部に嵌合させていない状態の要部拡大斜視図、(B)は庇カバーを連結部に嵌合させた状態の要部拡大斜視図である。
【図2】(A)は連結部の平面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図3】(A)は庇カバーの外面側を示す斜視図であり、(B)は庇カバーの内面側を示す斜視図である。
【図4】排油口と庇カバーとの間のクリアランスを示す要部拡大斜視図である。
【図5】従来例を示し、(A)は排油口の遮蔽を行っていない状態の要部拡大斜視図、(B)は排油口の遮蔽を行っている状態の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は本発明の実施形態を示している。本実施形態におけるオートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ10は、アルミニウム合金等の鋳造品からなり、ボディ10の内部には、図示しないが、オートマチックトランスミッションを油圧制御するための油路溝を迷路状に設けていると共に、油路の切り替えを行う各バルブを装着する筒状のバルブ装着穴を複数設けている。また、ボディ10には油を排出するための排油口11を設けており、該排油口11をボディ10外面に開口させている。
【0015】
図1に示すように、コントロールバルブのボディ10の外面には、コントロールバルブの部品に接続する電線の支持や電線分岐点の固定、アース接続や電子部品の固定等に用いる金属板12をボルト締結(B)により取り付けている。金属板12をコントロールバルブのボディ10外面に取り付ける際には、金属板12がコントロールバルブの各部品に公差を含めて干渉しないようにしている。
また、本実施形態では、金属板12の端縁に連結部13を突設し[図1(A)]、該連結部13に樹脂製の庇カバー16を着脱可能に嵌合させて前記排油口11の外面側を遮蔽する構造[図1(B)]をとっている。金属板12は連結部13を含めてプレス加工で形成し、前記排油口11はプレス加工で形成した金属板12のみでは遮蔽できない位置に設けられている。
【0016】
庇カバー16は、図3(A)、(B)に示すように、側面側の開口17aから連結部13を挿入してロック結合する凹状の嵌合部17と、該嵌合部17に隣接して延在し排油口11の外面側を遮蔽する平板状の遮蔽部19とから構成している。前記凹状の嵌合部17の内面には、連結部13の被係止穴14に係止させる係止爪18を突設している一方、遮蔽部19の内面には略十字状の補強部20を設けている。
【0017】
一方、金属板12に突設する連結部13には、図2(A)、(B)に示すように、前記庇カバー16の係止爪18を係止させる被係止穴14を穿設していると共に、突出端の中央部から、係止爪18を被係止穴14にガイドする傾斜状のガイド片15を切り起こして形成している。
【0018】
庇カバー16の嵌合部17内の係止爪18と連結部13の被係止穴14とをロック結合させて庇カバー16を連結部13に嵌合させる。この嵌合状態において、図4に示すように、ボディ10外面に開口する排油口11と庇カバー16の遮蔽部19との間に所定のクリアランスL(本実施形態ではL=3mm)が得られるように、連結部13の突出位置を定めている。前記のように排油口11と庇カバー16の遮蔽部19との間に所定のクリアランスLを設けることで油の排出経路を確保している。
また、本実施形態では、ボディ10の外面に金属板12をボルト固定した後、連結部13に庇カバー16を嵌合させているが、連結部13に庇カバー16を予め嵌合させた金属板12をボディ10外面にボルト固定してもよい。
【0019】
前記のように、本実施形態では、オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ10外面に取り付ける金属板12に連結部13を突設し、該連結部13に着脱可能に嵌合させる樹脂製の庇カバー16でボディ10外面に開口する排油口11の外面側を遮蔽する構成としている。よって、金属板12には庇カバー16を嵌合させる連結部13のみ突設すればよいため、金属板12の大型化や形状の複雑化が抑えられる。また、連結部13に嵌合させる庇カバー16は樹脂製であるため軽量で、かつ金属板12からの連結部13の突設位置をプレス加工で突出させやすい位置に設定しても、庇カバー16を連結部13と排油口11との位置関係に柔軟に対応した形状に加工できる。したがって、ボディ10外面に取り付ける金属板12の大型化や形状の複雑化、図5(B)に示すような金属板12への溶接加工等を行わなくても、連結部13に嵌合させた庇カバー16が排油口11の外面側を確実に遮蔽し、排油口11の外方から矢印方向に飛散されてくる摩耗金属粉等の異物を含んだ油の流入を防止することができる。
【0020】
また、前記のように、庇カバー16には係止爪18を、金属板12の連結部13には係止爪18を係止させる被係止穴14をそれぞれ設けることで、係止爪18と被係止穴14とのロック結合によって庇カバー16を連結部13に容易に嵌合させることができる。特に、連結部13の突出端から庇カバー16の係止爪18を被係止穴14へとガイドする傾斜状のガイド片15を切り起こして形成しているため、樹脂製の係止爪18は金属製の連結部13に当接して損傷することなくガイド片15に摺接しながらスムーズに被係止穴14へ誘導される。よって、係止爪18と被係止穴14とのロック結合を一層容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
10 (オートマチックトランスミッション用コントロールバルブの)ボディ
11 排油口
12 金属板
13 連結部
14 被係止穴
15 ガイド片
16 庇カバー
18 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートマチックトランスミッション用コントロールバルブのボディ外面に金属板が取り付けられると共に、該金属板には、樹脂製の庇カバーを着脱可能に嵌合させる連結部が所定位置に突設され、
前記金属板の連結部と前記庇カバーとの嵌合により、前記庇カバーが前記ボディ外面に開口する排油口との間に所定のクリアランスを保持しながら前記排油口の外面側を遮蔽する構造としているオートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造。
【請求項2】
前記庇カバーには係止爪を突設する一方、前記金属板の連結部には庇カバーの係止爪を係止させる被係止穴を穿設すると共に前記庇カバーの係止爪を前記被係止穴へとガイドする傾斜状のガイド片を前記連結部の突出端から切り起こして形成している請求項1に記載のオートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造。
【請求項3】
前記庇カバーは、プレス加工で一体的に形成される前記金属板では遮蔽できない位置の前記排油口を遮蔽している請求項1または請求項2に記載のオートマチックトランスミッション用コントロールバルブの排油口遮蔽構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233556(P2012−233556A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104430(P2011−104430)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】