説明

オープンカーの格納式幌装置

【課題】幌格納状態から幌展開状態にするときの操作性を向上させて、ドライバが座席からも操作が容易に行えるようにしたオープンカーの格納式幌装置を提供する。
【解決手段】本発明は、幌を折り畳んでシートの後部に格納するように構成されたオープンカーの格納式幌装置4であって、幌フレーム10とこの幌フレームの外側に取り付けられた幌布9を備えた幌3と、幌格納状態で幌を所定位置にロックするロック機構40と、幌格納状態で幌フレームの前部左右側方位置に対応して車体側に上下方向に可動で且つ上方へ付勢された状態で設けられたストッパー50と、を有し、ストッパーが、ロック機構を解除した時に付勢力により上昇して幌フレームの前部を所定量(Y)だけ持ち上げるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンカーの格納式幌装置に係わり、特に、幌を折り畳んでシートの後部に格納するように構成されたオープンカーの格納式幌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンカーの格納式幌装置は、特許文献1に示されているように、車体に対して展開・格納自在に構成された幌フレームと、この幌フレームの外側を覆う幌布を備えている。また、幌フレームは、前部で車幅方向に延びるトップフレームと、このトップフレームの左右両側に前後方向に延びる一対のサイドフレームと、このサイドフレームを構成するフロントフレームとリヤフレームの折り曲げ動作を操作するコントロールリンクと、車幅方向に延びる複数の幌骨等から構成されている。
【0003】
この特許文献1のオープンカーの格納式幌装置においては、サイドフレームを構成するフロントフレームとリヤフレームの折曲部に捩じりコイルスプリングを設け、幌格納状態から幌展開状態へ移行操作とき、コイルスプリングの付勢力により、幌が展開し易くなり、操作性が向上するようになっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2006−232045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたものにおいては、幌格納状態から幌展開状態に移行操作とき、幌の折畳め方や、季節における温度変化により、フロントフレームとリヤフレームの折曲部の摺動抵抗が変化し、幌の展開にばらつきが生じ、さらには、幌が展開しない場合もあった。
【0006】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、幌格納状態から幌展開状態にするときの操作性を向上させて、ドライバが座席からも操作が容易に行えるようにしたオープンカーの格納式幌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、幌を折り畳んでシートの後部に格納するように構成されたオープンカーの格納式幌装置であって、幌フレームとこの幌フレームの外側に取り付けられた幌布を備えた幌と、幌格納状態で幌を所定位置にロックするロック機構と、幌格納状態で幌フレームの前部左右側方位置に対応して車体側に上下方向に可動で且つ上方へ付勢された状態で設けられたストッパーと、を有し、ストッパーが、ロック機構を解除した時に付勢力により上昇して幌フレームの前部を所定量持ち上げるように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、幌格納状態で幌を所定位置にロックするロック機構を解除した時に、ストッパーが付勢力により上昇して幌フレームの前部を所定量持ち上げるので、幌格納状態から幌展開状態への移行が円滑となり操作性が向上する。また、座席からの操作も容易に行うことができる。
【0008】
本発明は、好ましくは、ストッパーは、ロック機構が幌格納状態で幌を所定位置にロックしたとき、その上下方向可動範囲の下限位置よりも上方位置で幌フレームの前部を支持するように構成されている。
このように構成された本発明においては、幌格納状態において、ストッパーが下方への移動を許容した状態で幌を支持しているので、幌の上下方向の振動に対するストッパーの耐久性を確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、ストッパーは、幌格納状態で、幌の左右方向の動きを吸収できるように構成されている。
このように構成された本発明においては、幌格納状態において、ストッパーが左右方向への移動を許容した状態で幌を支持できるので、幌の左右方向の振動に対するストッパーの耐久性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオープンカーの格納式幌装置によれば、幌を格納状態から展開状態にするときの操作性を向上させて、ドライバが座席からも操作が容易に行えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図1乃至図8を参照して説明する。
先ず、図1は本発明の実施形態による格納式幌装置が展開状態となっているオープンカーを示す全体斜視図であり、図2は図1の格納式幌装置が収納状態となっているオープンカーを示す部分斜視図であり、図3は本発明の実施形態による幌展開状態の格納式幌装置を示す側面図であり、図4は本発明の実施形態による格納状態の格納式幌装置を示す側面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、オープンカーの車体1は、車室開口部2を有し、展開・格納可能な幌3を備えた格納式幌装置4が装着されている。この格納式幌装置4は、幌3が図1に示す展開状態(車室開口部クローズ状態)と幌3が図2に示す格納状態(車室開口部オープン状態)を取り得るようになっている。
幌3は、幌フレーム10とこの幌フレーム10の外側に取り付けられる幌布9を備えている。
【0013】
図2乃至図4に示すように、幌フレーム10は、前部の車幅方向に延びるトップフレーム11と、このトップフレーム11の左右両側に固定された左右一対のサイドフレーム12と、このサイドフレーム12を構成するフロントフレーム13とリヤフレーム14の折れ曲げ動作を制御するコントロールリンク18と、左右のサイドフレーム12間に跨って車幅方向に延びる三本の幌骨15,16,17とを備えている。なお、コントロールリンク18は、その一端がフロントフレーム13の後端に、他端がリンクバー19に、それぞれ連結されている。
【0014】
リヤフレーム14は、その前端部14aにはアッパブラケット22を、後端部14bにはロアブラケット21を、それぞれ備えている。リヤフレーム14は、ロアブラケット21をピン25により車体側のベースブラケット23に回転可能に連結する一方、アッパブラケット22をピン26によりフロントフレーム13の後端部に回転可能に連結している。ここで、幌3を格納状態から展開状態に変更するとき、幌3の展開を容易にするため、ピン25にはアシストスプリング27が、ピン26にはアシストスプリング32が設けられている。これらのアシストスプリング27,32は、捻りコイルスプリングである。
【0015】
上述したフロントフレーム13とリヤフレーム14から構成される幌フレーム10は、その幌展開状態においては、図3に示すように、リヤフレーム14がアッパブラケット22側を車体前方へ向けた状態でピン25側から立ち上がるとともに、フロントフレーム13がリヤフレーム14の先端から前方へさらに延出することでドアガラス用開口の周縁形状に沿う湾曲形体とされる。なお、この幌展開状態においては、幌3の後述するロック機構40のロック用爪40aがフロントガラスの上方にあるフロントロック機構(図示せず)に係合し、幌展開状態が保持されるようになっている。
【0016】
次に、幌フレーム10が幌展開状態から幌格納状態へ移行される場合、サイドフレーム12においては、リヤフレーム14がその下端のピン25を中心として車体後方側へ傾動されるとともに、リヤフレーム14の傾動に伴ってフロントフレーム13はコントロールリンク18のコントロール機能によってピン26部分において折曲され、次第に車体後方側へほぼ並行移動される。そして、最終的に、幌格納状態において、図4に示すように、車体後方側へ倒伏されたリヤフレーム14の上側にフロントフレーム13がほぼ水平状態で位置した姿勢となる。
【0017】
図5は、本発明の実施形態による格納状態における格納式幌装置のロック機構を示す側面図である。この図5に示すように、格納式幌装置4は、幌3を格納するためのロック機構40を備えている。このロック機構40は、幌3の前部に固定されたロック用爪40aと、車体側フレーム42に取り付けられたベース部材40bと、このベース部材40bに取り付けられたロック用レバー40c、ロック部材40d及びロック部材40dをロック方向(図中右方向)に付勢するスプリング40eから構成されている。
【0018】
このロック機構40は、図5に示す幌3の格納状態では、ロック部材40dがスプリング40eによりロック用爪40aの方向(図中右方向)へ付勢され、ロック部材40dとロック用爪40aが係合し、幌3がロックされ格納状態が維持されるようになっている。一方、幌3を格納状態から展開状態に変更操作する場合には、ドライバは、ロック用レバー40cを矢印Aの方向である上方に引き上げ、これにより、ロック部材40dがスプリング40eの付勢力に抗してロック用爪40aから離れる方向(図中左方向)に移動し、ロック用爪40aとロック部材40dの係合が解除され、展開状態に移行する。
【0019】
図6乃至図8により、ストッパー機構について説明する。図6は本発明の実施形態による格納状態における格納式幌装置のストッパー機構を示す側面図であり、図7は図6に示すストッパー機構のみを取り出して示した斜視図であり、図8は図7のB−B線に沿って見た断面図である。
格納式幌装置4は、ストッパー機構50を備えており、このストッパー機構50は、図2に示すように、車体側フレーム42の格納状態での幌3のトップフレーム11の左右側方位置に対応した位置に設けられている。
【0020】
図6乃至図8に示すように、ストッパー機構50は、ストッパー本体50aと、このストッパー本体50aを上下動可能に保持するストッパー収納部材50bと、ストッパー本体50aを上方に付勢するスプリング50cと、ストッパー収納部材50bを車体側フレーム42に取り付けるためのフランジ50dを備えている。ここで、ストッパー本体50aは、水平方向に延びる2本のピン50eを備え、また、ストッパー収納部材50bには、ピン50eが挿入され上下移動可能となる長孔50fが形成されている。
【0021】
図8に示すように、ストッパー本体50aの上下方向可動範囲Xは、上限位置a1から下限位置a3までであり、また、幌3の格納状態では、ストッパー本体50aは、上下方向可動範囲Xの下限位置a3よりも上方の位置a2で、幌3のトップフレーム11を支持するように設定されている。
【0022】
次に、上述した本発明の実施形態によるオープンカーの格納式幌装置におけるストッパー機構50による作用を説明する。
先ず、幌展開状態から幌格納状態に移行するとき、ドライバは、フロントロック機構(図示せず)を解除し、幌3のトップフレーム11を後方に押し、次に下方に押し下げる。このとき、ロック機構40のロック部材40dは、スプリング40eによりロック用爪40aの方向(図中右方向)へ付勢されているが、ロック用爪40aは、ドライバがトップフレーム11を押し下げることにより、ロック部材40dを乗り越えて、ロック部材40dとロック用爪40aが係合し、幌格納状態となる。
【0023】
また、ドライバがトップフレーム11を押し下げるとき、幌3のトップフレーム11がストッパー機構50のストッパー本体50aに当接するので、幌3はこのストッパー本体50aにより必要以上に下方に下がらないようになっている。
さらに、幌格納状態となった後は、ストッパー機構50のストッパー本体50aは、上下方向可動範囲Xの下限位置a3よりも上方の位置a2で、幌3のトップフレーム11を支持するようになっている、即ち、ストッパー本体50aが下方への移動を許容した状態(位置a2から位置a3までの距離Zで移動可能)で幌3のトップフレーム11を支持している。これにより、幌3の上下方向の振動に対するストッパー機構50の耐久性を確保することができる。
【0024】
次に、幌格納状態から幌展開状態に移行するとき、ドライバは、上述したように、ロック用レバー40cを矢印Aの方向である上方に引き上げ、これにより、ロック部材40dがスプリング40eの付勢力に抗してロック用爪40aから離れる方向(図中左方向)に移動し、ロック用爪40aとロック部材40dの係合が解除され、展開状態に移行する。このロック機構40が解除された時、ストッパー機構50のストッパー本体50aが、図8において破線で示すように、スプリング50cの付勢力により、位置a1から位置a2までの距離Yだけ上方へ移動してトップフレーム11を持ち上げ、それにより、幌3が距離Yだけ持ち上がる。
【0025】
このように、本実施形態においては、幌格納状態から幌展開状態に移行するとき、ロック機構40が解除された時に、ストッパー本体50aがスプリング50cの付勢力により上昇して幌3を距離Yだけ持ち上げるので、幌格納状態から幌展開状態への移行が円滑となり操作性が向上する。また、ドライバが座席からの操作も容易に行うことができる。
【0026】
次に、図9乃至図10により、本実施形態による格納式装置のストッパー機構の変形例を説明する。
先ず、図9に示すように、第1変形例によるストッパー機構50は、ストッパー本体50aとストッパー収納部材50bとの間に所定距離だけ円環形状の空間Sを形成するようにしたものである。この第1変形例によれば、水平方向、特に、幌3の左右方向(車幅方向)において、ストッパー本体50aが移動可能な状態となっている。その結果、第1変形例によれば、幌格納状態において、ストッパー本体60aが水平方向、特に、左右方向への移動を許容した状態で幌3を支持できるので、幌3の水平方位、特に、左右方向の振動に対するストッパーの耐久性を確保できる。なお、この空間Sを形成するために、ストッパー本体50aを円形形状とすると共にストッパー収納部材50bを車幅方向(左右方向)を長軸とした楕円形状としても良い。
【0027】
次に、図10に示すように、第2変形例によるストッパー機構50は、ストッパー本体50aとストッパー収納部材50bとの間に比較的柔らかい樹脂51を挿入したものである。この第2変形例によれば、水平方向、特に、幌3の左右方向(車幅方向)において、樹脂51が容易に変形してストッパー本体50aが移動可能となっている。その結果、第2変形例では、幌格納状態において、ストッパー本体50aが水平方向、特に、左右方向への移動を許容した状態で幌3を支持できるので、幌3の水平方位、特に、左右方向の振動に対するストッパーの耐久性を確保できる。
なお、左右方向のみではなく水平方向の全ての方向への移動を許容するように樹脂51を設定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態による格納式幌装置が展開状態となっているオープンカーを示す全体斜視図である。
【図2】図1の格納式幌装置が収納状態となっているオープンカーを示す部分斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による幌展開状態の格納式幌装置を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態による格納状態の格納式幌装置を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態による格納状態における格納式幌装置のロック機構を示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態による格納状態における格納式幌装置のストッパー機構を示す側面図である。
【図7】図6に示すストッパー機構のみを取り出して示した斜視図である。
【図8】図7のB−B線に沿って見た断面図である。
【図9】本発明の実施形態におけるストッパー機構の第1変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態におけるストッパー機構の第2変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
3 幌
4 格納式幌装置
9 幌布
10 幌フレーム
11 トップフレーム
12 サイドフレーム
13 フロントフレーム
14 リヤフレーム
40 ロック機構
42 車体側フレーム
50 ストッパー機構
50a ストッパー本体
50b ストッパー収納部材
50c スプリング
50d フランジ
50e ピン
50f 長孔
51 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幌を折り畳んでシートの後部に格納するように構成されたオープンカーの格納式幌装置であって、
幌フレームとこの幌フレームの外側に取り付けられた幌布を備えた幌と、
幌格納状態で幌を所定位置にロックするロック機構と、
幌格納状態で上記幌フレームの前部左右側方位置に対応して車体側に上下方向に可動で且つ上方へ付勢された状態で設けられたストッパーと、を有し、
上記ストッパーが、上記ロック機構を解除した時に付勢力により上昇して幌フレームの前部を所定量持ち上げるように構成されていることを特徴とするオープンカーの格納式幌装置。
【請求項2】
上記ストッパーは、上記ロック機構が幌格納状態で幌を所定位置にロックしたとき、その上下方向可動範囲の下限位置よりも上方位置で幌フレームの前部を支持するように構成されている請求項1記載のオープンカーの格納式幌装置。
【請求項3】
上記ストッパーは、幌格納状態で、幌の左右方向の動きを吸収できるように構成されている請求項1又は請求項2に記載のオープンカーの格納式幌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−241695(P2009−241695A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89318(P2008−89318)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)