説明

オープンショーケース

【課題】冷気エアカーテンの流れを阻害することなしに、商品陳列棚の前面をナイトカバーで覆うことができるオープンショーケースを提供する。
【解決手段】前面開放形ケース本体1の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚3を備えた冷気循環式のオープンショーケースで、その上部フロント側に設けたキャノピー11にナイトカバー13を装備したものにおいて、ナイトカバー13の下端側に掛け金13a,導風板13bおよび角度調節機構13cからなる導風手段を設けておき、巻き取り位置から繰出したナイトカバーの下端から内側に突き出した掛け金13aを商品陳列棚のタグフェンス3aに係止して該商品陳列棚の前面を覆うようにし、この状態で冷気吹出口7から吹き出してナイトカバー13の裏面側に流下する冷気流をナイトカバー13と商品陳列棚3のタグフェンス3aとの間に確保した導風間隙15を通じて庫内下方に放流し、この領域にエアカーテンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷気循環式のオープンショーケースに関し、詳しくその庫内に装備したナイトカバーに係わる。
【背景技術】
【0002】
周知のように、スーパーマーケットなどの店舗に据付けて使用する頭記のオープンショーケースは、省エネ対策としてケース本体の上部フロント側に設けたキャノピーに自動巻き取り式のナイトカバーを標準装備し、夜間,休日などの店舗の閉店時間帯に前記ナイトカバーを繰出してケース本体の前面開口部を覆い、外気熱が庫内に侵入するのを抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
次に、一般的な標準ケースに比べて背が低いショーケースを例に、そのショーケースの構成,およびナイトカバーの取付構造を図7に示す。図において、1は前面開放形のケース本体、1aは断熱壁で作られた舟底部、1bは断熱背面壁、1cは断熱天井壁、2はケースの庫内に配した内箱の背面パネル、3,4は上下段に並べて背面パネル2の支柱に架設した商品陳列棚、5は舟底部1aの上面に敷設したデッキパン、6はケース本体1の内側に沿って内箱との間に画成した冷気循環ダクト、7は冷気循環ダクト6の天井側前端部に開口した冷気吹出口、8は舟底部1aのフロント側に開口した冷気吸込口、9は舟底部1aの内部に配置した送風ファン、10は冷却器(冷凍機のエバポレータ)、11はケース本体1の天井部から前方に突き出して設けたキャノピー、12はキャノピー11の内側に設けた庫内照明灯(蛍光灯)、13はナイトカバー、13aはナイトカバー13の先端に取付けた把手兼用の掛け金である。ここで、ナイトカバー13はショーケースの間口に対応した横幅を有する遮熱性のシートであり、冷気吹出口7の外側に並べてキャノピー11の内側に設置したカバー巻取/繰出装置に巻き付け、ここから繰り出してケース本体1の前面開口部に引き下ろすように設置されている。
【0004】
上記の構成で、ショーケースの保冷運転時には図中の矢印Pで表すように冷気が循環し、ケース本体1の前面開口部には冷気吹出口7から冷気吸込口8に向けて冷気エアカーテンを吹き出し形成して外気の庫内侵入を防ぐとともに、庫内の商品陳列棚3,4,およびデッキパン5に陳列した商品(不図示)を保冷することは周知の通りである。
【0005】
ここで、前記ナイトカバー13は、通常店舗の営業中は巻取/繰出装置に巻き取ってキャノピー11の内側に格納しておき、夜間,休日などの店舗の閉店時には図中に鎖線で表すように繰出して引き下ろした上で、その先端の掛け金3aを舟底部1aの前端上部に設けたフロントキャップ14に引っ掛けてケース本体1の前面開口部を覆い、この状態で庫内と庫外との間を熱遮蔽して省エネ効果を発揮するようにしている。
【0006】
一方、前記したナイトカバー13とは別に、天井側の冷気吹出口7の内側(庫内側)にナイトカバー13と同様な自動巻き取り式のカバーを設けておき、店舗の営業間中にショーケースの庫内上段側に並ぶ商品陳列棚3、あるいは商品陳列棚3と4が空の状態となった場合、あるいは外部からショーケースに補充した常温状態の商品を一纏めにストックして予冷する場合に、前記カバーを繰出して一部の商品陳列棚の前面を覆うようにしたオープンショーケースも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−111651号公報(図4)
【特許文献2】特開平11−37637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、先記した特許文献2のようにナイトカバーと別個に庫内側(冷気吹出口の内側)に指定した商品陳列棚の前面を覆うカバーを設けた従来構造では次記のような課題が残る。すなわち、
(1)2組の自動巻き取り式カバーを用意してケース本体の内部に組み付けるために、ショーケースの部品点数,組立工数が増してコスト高となる。
(2)しかも,冷気吹出口の内側(庫内側)に配置したカバーは、このカバーを繰出した位置にセットしても、冷気吹出口からケース本体の前面開口部に吹き出すエアカーテンの冷気流はカバーの外側を流れて庫外側の外気に接触する。このために、カバーを引き下ろしてもエアカーテンから侵入する外気熱の熱負荷が減少することはなく、店舗の営業中に繰り出したカバーによる高い省エネ効果は期待できない。
【0009】
この発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は標準装備のナイトカバーを利用し、ケース本体の前面開口部に向けて冷気吹出口から吹き出した冷気エアカーテンの流れを阻害することなしに、庫内の上下段に並ぶ商品陳列棚の前面をナイトカバーで覆うことができ、併せてエアカーテンから侵入する外気熱を低減して省エネ効果の向上が図れるように改良したオープンショーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためにこの発明によれば、前面開放形ケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を備えた冷気循環式のオープンショーケースで、そのケース本体の上部フロント側に設けたキャノピーにナイトカバーを装備し、該ナイトカバーを巻取位置からに繰出してケース本体の前面開口部を覆うようにしたものにおいて、
巻き取り位置から繰出した前記ナイトカバーの下端を商品陳列棚の前縁に係止して該商品陳列棚の前面を覆うようにし、かつこの状態で庫内上部の冷気吹出口から吹き出した冷気流をナイトカバーの裏面側に沿って庫内下方に放流する導風手段を備えるものとし(請求項1)、その導風手段は具体的に次記のような態様で構成することができる。
(1)導風手段として、ナイトカバーの下端側に商品陳列棚に向けて庫内側に突き出す掛け金を備える(請求項2)。
(2)前項(1)において、ナイトカバーの下端に該カバーと同幅な衝立状の導風板を設けるとともに、該導風板の下端に角度調節機構を介して掛け金を連結する(請求項3)。
(3)前項(2)において、導風板の板面に導風穴を開口する(請求項4)。
(4)導風手段として、商品陳列棚の板面前部に棚幅方向に沿ってスリット状の導風穴を開口する(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、庫内の上下段に並ぶ商品陳列棚を選択してその棚の前縁に巻取り位置から繰出したナイトカバーの掛け金を係止した状態では、冷気循環ダクトの冷気吹出口から庫内前面の開口部に向けて斜め下方に吹き出した冷気流がナイトカバーの裏面側に沿って流下した後、ナイトカバーの掛け金を介して商品陳列棚との間に確保した間隙、あるいは商品陳列棚の前部側に開口した導風穴を通じて庫内下方に流下して冷気吸込口に吸い込まれる。これにより、ナイトカバーの繰出し位置より下方の庫内前面にエアカーテンを形成しつつ指定した商品陳列棚の前面をナイトカバーで覆うことができる。
【0012】
しかも、この場合にナイトカバーの繰出し範囲では、カバーの裏面側に沿って流れる冷気流は庫外側の外気と直接触れることがなく、かつ庫内前面がナイトカバーで覆われるため、エアカーテンを通して庫内に侵入する外気熱の熱負荷を低く抑えてトータル的なショーケースの省エネ効果向上が図れる。
【0013】
また、ナイトカバーの先端側に角度調節機構を介して掛け金を設けたことにより、繰り出したナイトカバーの先端から掛け金が庫内側に突き出すように角度にセットして商品陳列棚の前縁に係止することで、ナイトカバーと商品陳列棚の前縁との間に冷気流の導風間隙を確保できる。また、店舗の閉店時にナイトカバーを舟底部のフロントキャップに係止してケース本体の開口部全面を覆う場合には、掛け金をナイトカバーの延長線上に沿って延ばすように角度調整することで、フロントキャップとの間に不要な隙間を残さずにナイトカバーを係止保持できる。
【0014】
さらに、ナイトカバーの下端側に衝立状の導風板を設けてその先端に掛け金を取付けた構造により、掛け金を商品陳列棚の前端に係止した状態では商品陳列棚,陳列商品との干渉を避けて導風板との間に導風間隙を確保し、上方から流下する冷気流を庫内の下方に向けて円滑に導風することができ、またこの導風板の板面に導風穴を開口しておくことで、この導風穴を通じてナイトカバーの裏面側から庫内下方に向けて冷気流を斜め前方の方向に導風できる。
【0015】
また、導風手段として、商品陳列棚の棚面に導風穴を形成しておくことにより、ナイトカバーの下端を商品陳列棚の前縁に直接係止して保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施例1によるナイトカバーを商品陳列棚の前端に係止する取付構造を表す図であって、(a)はショーケース上部の側視断面図、(b)はナイトカバーの先端部分の斜視図である。
【図2】巻取り位置から繰り出したナイトカバーで庫内上段側の商品陳列棚の前面を覆った状態での庫内の冷気循環経路を表したショーケース全体の側視断面図である。
【図3】巻取り位置から繰り出したナイトカバーで上下二段の商品陳列棚の前面を覆った状態での庫内の冷気循環経路を表したショーケース全体の側視断面図である。
【図4】巻取り位置から繰り出したナイトカバーでケース本体の前面開口部を覆った状態での庫内の冷気循環経路を表したショーケース全体の側視断面図である。
【図5】図1(b)に示した導風板に対応する異なる実施例2の斜視図である。
【図6】この発明の実施例3による商品陳列棚へのナイトカバーの取付構造図であって、(a)は繰り出したナイトカバーを商品陳列棚に係止保持した状態の側視断面図、(b)は(a)における商品陳列棚の前部構造を表す斜視図である。
【図7】ナイトカバーを装備したこの発明の実施対象となる冷気循環式ショーケースの構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図1〜図6に示す実施例に基づいて説明する。なお、各実施例の図中で図7に対応する部材には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0018】
まず、この発明の請求項1〜3に係わる実施例1の構造,並びにナイトカバーの使用状態を図1〜4で説明する。
すなわち、この実施例においては、ナイトカバー13の先端に該カバーと同じ横幅の導風板(例えば樹脂板)13bを結合した上で、その導風板13bの下端中央部位に角度調節機構13cを介して把手を兼ねた掛け金13aが取付けられている。ここで、角度調節機構13cは、例えば蝶番式継手でその開き角度を段階的に調整セットできるようにした構造である。また、掛け金13aの突出し長さL(図1(b)参照)は、後記のように商品陳列棚に引っ掛けた状態でナイトカバー13と商品陳列棚の前端との間に所要の導風間隙15を確保できるように設定しておく。なお、商品陳列棚3の前端にはタグフェンス3a,およびその下端側にナイトカバー13を掛け止めするフック部3bを備えている。
【0019】
次に、上記ナイトカバー13の異なる使用状態を図2〜図4に示す。まず、店舗の営業時間中に巻取り位置から繰出したナイトカバー13を庫内の上段位置に並ぶ商品陳列棚3に係止して該棚の前面を覆う場合には、図2で示すように先記の掛け金13aを庫内側に向けて導風板13bと直角方向に突き出すようにセットした上で、ナイトカバー13を繰出して下方に引き下ろし、この位置で掛け金13aを商品陳列棚3の前端に設けたフック3bに引っ掛けて係止する。これにより、掛け金13aを介してナイトカバー13の導風板13bと商品陳列棚3のタグフェンス3aとの間に導風間隙15が確保される。
【0020】
この状態では、図示矢印Pで表すように冷気吹出口7から吹き出した冷気流はナイトカバー13の裏面側に沿って下方に流れた後、ナイトカバー13の導風板13bと商品陳列棚3のタグフェンス3aとの間の導風間隙15を通じて庫内の下方に放流し、その前面域にエアカーテンを形成する。しかもナイトカバー13の繰出し範囲では、カバーの裏面側を通る冷気流は外気に接触することがないために、この範囲では冷気流への外気熱の侵入はなく、これによりトータル的にエアカーテンより侵入する外気熱の熱負荷が低減し、特許文献2の従来方式と比べて省エネ効果が向上する。
【0021】
図3はナイトカバー13の掛け金13aを庫内の下段側に並ぶ商品陳列棚4に引っ掛けて商品陳列棚3,4の前面を覆った使用状態を表しており、図2で述べたと同様に冷気吹出口7から吹き出した冷気流Pはナイトカバー13の裏面側に沿って流下した後、デッキパン5の前面域に放流してエアカーテンを形成する。この状態では、ナイトカバー13の繰出し長さが増えた分だけエアカーテンより侵入する外気熱は図2の状態よりもさらに減少して省エネ効果が高くなる。
【0022】
図4は店舗の閉店時にナイトカバー13を舟底部1aのフロントキャップ14に引っ掛けてケース本体1の前面開口部の全域を覆った使用状態である。この場合には、あらかじめナイトカバー13の掛け金13aをカバーの延長線上に並ぶように開いた状態に角度を調整しておく。これにより、ナイトカバー13の下端とケース本体1のフロントキャップ14との間に不要な隙間を残さずに掛け止めすることができる。
【0023】
なお、ナイトカバー13の掛け金13aを商品陳列棚3,4の前端に固定する手段として、図示例のフック掛けに代えて、磁石を利用して吸着保持させるようにしてもよい。
【実施例2】
【0024】
次に、この発明の請求項4に係わる実施例の構造を図5に示す。この実施例では、先記した導風板13bの横幅全域に亙り、その板面に導風穴13b−1を開口しておく。これにより、ナイトカバー13を庫内の商品陳列棚3あるいは4に係止した状態でナイトカバー13の裏面側に沿って流れてきた冷気流は、図示のように導風穴13b−1を通じて斜め前方に流下する。
【0025】
これにより、図7に示したラウンド形ショーケースのように、庫内における上段側の商品陳列棚3と下段側の商品陳列棚4との間に奥行き方向の大きな段差があり、かつナイトカバー13の巻取り/繰出し装置を備えたキャノピー11が舟底部1aのフロント側より奥に引っ込んでいる場合でも、冷気吹出口7から冷気吸込口8に向けて吹き出す冷気流の流れの方向を途中で大きく変化させることなく導風することが可能となる。
【実施例3】
【0026】
次に、この発明の請求項5に係わる実施例の構造を図6(a),(b)に示す。この実施例では、繰出したナイトカバー13を商品陳列棚3に掛け止めした状態で、カバーと棚の間に冷気流の導風間隙を確保する手段として、図示のように商品陳列棚3の前端部側に横幅方向にスリット状の導風穴3cを開口しておく。なお、3dは導風穴3cの内側に起立形成した陳列商品の落下防止用フェンスである。
【0027】
これにより、先記の実施例1で述べたようにナイトカバー13の掛け金13aに角度調節機構13cを設ける必要なく、図6(a)のように掛け金13aを商品陳列棚3のタグフェンス3aに引っ掛けるだけで、ナイトカバー13の裏面側に沿って上方から流れて来た冷気流Pを、前記導風穴3cを経由して庫内の下方側に導風させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1:ケース本体
1a:舟底部
2:内箱背面パネル
3:上段側の商品陳列棚
4:下段側の商品陳列棚
5:デッキパン
6:冷気循環ダクト
7:冷気吹出口
8:冷気吸込口
11:キャノピー
13:ナイトカバー
13a:掛け金
13b:導風板
13c:角度調節機構
14:フロントキャップ
15:導風間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開放形ケース本体の庫内に上下段に並ぶ商品陳列棚を備えた冷気循環式のオープンショーケースであり、そのケース本体の上部フロント側に設けたキャノピーにナイトカバーを装備し、該ナイトカバーを巻取位置からに繰出してケース本体の前面開口部を覆うようにしたものにおいて、
巻き取り位置から繰出した前記ナイトカバーの下端を商品陳列棚の前縁に係止して該商品陳列棚の前面を覆うようにし、かつこの状態で庫内上部の冷気吹出口から吹き出した冷気流をナイトカバーの裏面側に沿って庫内下方に放流する導風手段を備えたことを特徴とするオープンショーケース。
【請求項2】
請求項1に記載のオープンショーケースにおいて、導風手段として、ナイトカバーの下端側に商品陳列棚に向けて庫内側に突き出す掛け金を備えたことを特徴とするオープンショーケース。
【請求項3】
請求項2に記載のオープンショーケースにおいて、ナイトカバーの下端に該カバーと同幅な衝立状の導風板を設けるとともに、該導風板の下端に角度調節機構を介して掛け金を連結したことを特徴とするオープンショーケース。
【請求項4】
請求項3に記載のオープンショーケースにおいて、導風板の板面に導風穴を開口したことを特徴とするオープンショーケース。
【請求項5】
請求項1に記載のオープンショーケースにおいて、導風手段として、商品陳列棚の板面前部に棚幅方向に沿ってスリット状の導風穴を開口したことを特徴とするオープンショーケース。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−104081(P2011−104081A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261776(P2009−261776)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】