説明

カスタマイズされたバイオメトリック眼内レンズを設計および移植するためのシステムおよび方法

カスタマイズされた眼内レンズ(IOL)を設計および移植するためのシステムおよび方法を開示する。一実施形態において、システムは、患者の眼を分析して、眼に関するバイオメトリック情報を生成する、眼分析モジュールを含む。システムはまた、バイオメトリック情報および患者の選好を表す他の入力パラメータに基づいて、最適化したIOLを生成するように、眼のモデリングおよび最適化モジュールを含む。システムはさらに、最適化したIOLモデルに基づいて、カスタマイズされたIOLを製造するように構成される、製造モジュールを含む。加えて、システムは、IOLの適切な移植を支援するために、患者の眼に関するトポグラフィおよび収差測定情報を測定および表示するように構成される、術中リアルタイムアナライザを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/194,721号(名称「Customized Biometric Intraocular Lens」、2008年9月29日出願)の優先権を主張し、この出願の全内容は、本明細書に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヒトの眼の天然水晶体を、カスタマイズされたバイオメトリック眼内レンズと置換するためのシステムおよび方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施形態は、ヒトの眼の天然水晶体をカスタマイズしたバイオメトリック眼内レンズ(BIOL)と置換するための方法、デバイス、および管理システムに関する。一実施形態によるシステムは、眼の低次および高次の両方の収差を補正する、特注のBIOLを自動的に製造するための情報を受信および生成する。システムはまた、環境照明、被写体距離、および医療関係者または患者によって要求される標的結果等の特定の診断条件を考慮するように、BIOLの設計の基礎を置くことができる。
【0004】
一実施形態によれば、術前診断用デバイスは、後に患者の眼の機能モデルを構築するための、患者のバイオメトリックデータを得ることができる。例示的な術前診断用デバイスは、前眼部アナライザ(ASA)およびレンズ処方システム(LPS)を含む。
【0005】
ASAは、患者の前眼部の断面画像(例えば、経線)によって、患者のバイオメトリックデータを得ることができる。角膜および水晶体プロファイルに関する情報は、これらの画像ならびに定着および瞳孔位置から生成することができる。この情報に基づいて、被検査眼の幾何学モデルを構築することができる。次いで、この幾何学モデルを、以下の種々の種類のバイオメトリック情報を生成するために使用することができる。
・前房バイオメトリ 前房バイオメトリは、遠方/近方、および/または暗所/明所等の異なる視覚条件、距離(白色間、縁間、前房深さ、軸方向長さ等)、ならびに生成された眼モデルから計算される前房(AC)体積に関する情報を含むことができる。
・ケラトメトリ ケラトメトリ情報は、従来のケラトメトリデータと直接的に比較できる、角膜前面に由来する曲率情報のサブセットであることができる。前面/裏面角膜トポグラフィックマップはまた、計算された水晶体/表面のトポグラフィック、瞬間電力、軸電力、高さ値等を含むことができる。
・角膜厚測定マップ 角膜厚測定マップは、前面/裏面トポグラフィック高さマップに由来する示差マップであることができる。
・前/後水晶体トポグラフィマップ 前/後水晶体トポグラフィマップは、角膜トポグラフィに類似し得るが、水晶体表面の上である。
・調節プロファイル 調節プロファイルは、遠方/近方および/または暗所/明所等の異なる条件で、被検査眼を調節しながら水晶体のプロファイルを動的に報告することができる。
・瞳孔測定プロファイル 瞳孔測定プロファイルは、瞳孔調整に類似し得る。
【0006】
ASAはまた、選択的に、患者の眼の1つ以上の軸方向長さを測定するように構成される、軸方向長さ測定器を含むことができる。一実施形態において、軸方向長さ測定器は、ASAの本体に機能的に取り付けることができるプラグイン式モジュールである。
【0007】
一実施形態によれば、被検査眼を通して実施される波面分析および調節分析は、被検査眼の屈折誤差、ならびに定着および瞳孔位置に関する情報を生成するために使用することができる。種々の実施形態によれば、以下の情報を含むことができる。
・収差測定マップ 収差測定マップは、被検査眼の光路によって引き起こされる波面変形を報告するカラーコードマップであることができる。
・調節プロファイル 調節プロファイルは、遠方/近方および/または暗所/明所等の異なる条件で、被検査眼を調節しながら水晶体のプロファイルを動的に報告することができる。
・瞳孔測定プロファイル 瞳孔測定プロファイルは、瞳孔調整に類似し得る。
・定着安定性プロファイル 定着安定性プロファイルは、ビデオストリームを得ながら記録される定着安定性に類似し得る。
・BIOLおよびコンタクトレンズシミュレーションインプラント/適合
前述のように、術前診断用デバイスはまた、LPSを含むことができる。LPSは、眼の中の異なる深さで種々の波面マップを収集することによって、ならびに各眼組織表面の距離および位置を評価することによって、患者の眼のパラメータを読み出すことができる。これは、層配向波面収差測定器および軸方向長さ測定器を使用して達成することができる。LPSによって得られるデータは、被検査眼の機能モデルを構築し、以下を含む種々のバイオメトリック情報を生成することができる。
・眼のバイオメトリ−遠方/近方および/または暗所/明所等の異なる条件下で、情報は、距離(白色間、縁間、前房深さ、軸方向長さ等)、および生成された眼モデルから計算されるAC体積を含む。
・統合波面収差測定マップ−前述の種々の条件下で、眼の全体的な屈折誤差に関する情報を報告する、被検査眼の波面マップを提供する。
・示差波面収差測定マップ−前述の種々の条件下で、眼の中に設置される明確な組織層によって生成される相異なる波面マップを提供し、単層(角膜または水晶体)による屈折誤差の寄与を他のものから区別することを可能にする。
・瞳孔測定プロファイル−瞳孔調整と同じ。
・定着安定性プロファイル−ビデオストリームを得ながら記録される定着安定性と同じ。
【0008】
加えて、有効な視軸に関する診断検査条件(環境照明および被写体距離)に少なくとも部分的に基づいて、被検査眼の光学システムの種々の層に関する情報を生成することができ、これは、眼の水晶体嚢の中への適切なBIOLの配置のための正確な幾何学データを提供することができる。有効な視軸に配列されるが、診断用デバイスはまた、被検査眼の光学システムの収差測定に関する情報を得ることができ、これは、同じ、または類似した環境条件の範囲内の幾何学モデルの正確な機能データを提供することができる。
【0009】
本発明の実施形態は、眼の水晶体嚢内に適合する、BIOLの正確な設計を生成することができる。物理的BIOL設計は、被検査眼の2つの計算モデルを使用して得ることができる。第1の計算モデルは、無水晶体症の水晶体嚢の中へのBIOL光学部の最終的な変位を提供する、幾何学モデルであることができる。第2の計算モデルは、被検査眼を収差に関して説明し、また、天然水晶体の置換に関する解決策を提供することができる。第2の計算モデルはまた、眼の機能屈折挙動に少なくとも部分的に基づいて、レンズの光学板のための完全な、またはほぼ完全な光学設計を提供することができ、それによって、所定の環境条件での患者の予期される結果に合致する。
【0010】
本発明の一実施形態は、有限要素モデル(例えば、三角形要素を使用することによって)を使用する厚肉レンズ計算プロセス、および要求されるパラメータに合致するまで計算を反復する、裏面/前面光線追跡アプローチを利用する。別の実施形態では、最適なレンズ設計を生成するために、当技術分野において公知の異なるアルゴリズムを使用することができる。
【0011】
さらに、本発明の一実施形態は、患者の眼内のBIOLの適切な正しい位置決めを含む、BIOLの移植のための解決策を提供する。
【0012】
一実施形態において、外科用顕微鏡の中に同軸的に設置される診断用デバイスは、手術中のBIOLの適切な場所の決定を可能にする。診断用デバイスは、リアルタイムの術中トポグラファー/収差測定器であることができる。BIOLを移植する間のこのデバイスの適切な使用は、配置間違いを低減または排除し、したがって、それに伴って、移植されたBIOLが適切に機能することを妨げ得る屈折収差を低減または排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態による、バイオメトリック眼内レンズ(BIOL)設計および移植プロセスのフローチャートを示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態による、BIOL設計および移植システムの概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態による、BIOLの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態による、その中に移植されたBIOLを伴うヒトの眼の断面図である
【図5】図5は、本発明の一実施形態による、厚肉レンズ計算プロセスのフローチャートである。
【図6】図6A、6Bおよび6Cは、それぞれ、本発明の一実施形態による、第1のシャインプルークカメラによって撮影した眼の画像、瞳孔カメラによって撮影した瞳孔の画像、および第2のシャインプルークカメラによって撮影した眼の画像である。
【図7】図7Aおよび7Bは、それぞれ、本発明の一実施形態による、非コリメート光線およびコリメート光線を使用した前面光線追跡の図である。
【図8】図8Aは、本発明の一実施形態による、眼の前面および裏面光線追跡の図である。図8Bは、本発明の一実施形態による、焦点から放射する等角の光線を示す図である。
【図9】図9A−9Dは、本発明の種々の実施形態による、BIOLの特徴を示す図である。
【図10】図10A−10Cは、正弦波パターンの異なる場所に当たる基準光を示す図である。
【図11】図11Aおよび11Bは、正弦波パターンを通して結像された、瞳孔パターン全体と瞳孔パターンの一部分との比較を示す図である。
【図12】図12A−12Cは、ベクトルを使用して計算される、検出器に到達する光の量を示す図である。
【図13】図13A−13Dは、異なる正弦波パターン板の上に重ねた、基準視野を示す図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態による、人為的基準の適切な位置決めを示す図である。
【図15】図15は、本発明の一実施形態による、層配向技術を使用した、光の光学的共加算を示す概略図である。
【図16】図16Aおよび16Bは、本発明の一実施形態による、層配向技術を使用した、光の光学的共加算をさらに示す概略図である。
【図17】図17は、本発明の一実施形態による、レンズ処方(LPS)光学システムの概略図である。
【図18】図18は、本発明の一実施形態による、単一の板上に2つの正弦波パターンを有する、レンズ処方(LPS)光学システムの概略図である。
【図19】図19A−19Bは、本発明の一実施形態による、回転正弦波パターン板を有する、レンズ処方(LPS)光学システムの概略図である。
【図20】図20は、本発明の一実施形態による、2つの別個の正弦波パターン板を使用する、レンズ処方(LPS)光学システムの概略図である。
【図21A】図21Aは、本発明の一実施形態による、その中に挿入されるプラグイン式RTTモジュールを有する、外科用顕微鏡を示す図である。
【図21B】図21Bは、本発明の一実施形態による、外科用顕微鏡から取り外した図10AのRTTモジュールの斜視図である。
【図22】図22は、本発明の一実施形態による、RTTオーバーレイ表示を示す図である。
【図23】図23は、本発明の一実施形態による、RTTの第1の光学レイアウトを示す図である。
【図24】図24は、本発明の一実施形態による、RTTの第2の光学レイアウトを示す図である。
【図25】図25は、本発明の一実施形態による、RTTを使用して光学パラメータを計算するためのプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の発明を実施するための形態において、本明細書の一部を形成し、かつ本発明が実施され得る特定の実施形態を例示目的で示す添付図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられてもよく、また、構造的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による、BIOLを移植するための例示的なプロセス100を示すフローチャートである。ステップ102で、ASAまたはLPS等の術前眼分析デバイスは、眼用のBIOLに使用される幾何学的特徴およびバイオメトリックパラメータに関するデータを生成するように、被検査眼を分析する。これは、典型的な環境条件における、被検査眼の機能効率の測定値を含むことができる。ステップ104で、後の処理のために、データをコンピュータメモリの中に記憶する。
【0016】
ステップ106で、ステップ102中に得られたデータを使用して、トポグラフィックおよび/または波面収差測定(abberometric)マップを生成する。トポグラフィックおよび/または波面収差測定(aberroetric)マップは、曲率力を、または収差測定の場合は、多項式の波面で表すようにコード化される色を含むことができる。ステップ108で、被検査眼の幾何学および機能の両方の計算モデルを生成する。次に、ステップ110で、外科医または他の医療関係者は、患者に従って、術後の眼における予期されるレンズの機能性(例えば、所望の焦点距離、暗所もしくは明所環境、読書、運転、またはテレビの視聴等の目的)のためのパラメータを提供する。ステップ112で、以前に作成されたモデル眼(ステップ108)の幾何学形状に適合する、BIOL幾何学モデルを計算する。BIOL幾何学モデルは、偏心および水晶体嚢寸法を考慮する。
【0017】
次いで、ステップ114で、例えば厚肉レンズアルゴリズムを使用して、患者の眼の光学効率に寄与するレンズの光学表面を計算する。次いで、ステップ116で、幾何学および機能データならびに計算したレンズの最適化光学表面に基づいて、立体造形法(STL)コンピュータ支援設計(CAD)ファイルを生成して、ミリング、成形、または他の生産技術を通したBIOLの生産のための製造システムに送信する。一実施形態によれば、製造システムに送信される情報は、安全およびプライバシーを考慮して、送信される前に暗号化される。情報は、インターネット上を含む様々な通信方法を介して送信する、またはコンピュータ可読媒体上に記憶して製造システムへ輸送することができる。
【0018】
ステップ118および120で、BIOLを患者の眼に挿入する。この目的を達成するために、ステップ118で、その適切な位置に、その適切な配向でレンズを挿入するための位置および定着情報を提供するように、術中リアルタイムアナライザ(例えば、RTT)を使用する。ステップ120で、レンズの移植が完了する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態による、BIOLを設計および移植するためのシステム200の例示的な概略図である。システム200は、眼分析モジュール202と、眼モデリングモジュール204と、レンズ計算および最適化モジュール206と、製造モジュール208と、術中リアルタイムアナライザモジュール212とを備える。
【0020】
眼分析モジュール202は、バイオメトリックおよび機能情報(例えば、曲率プロファイル、トポグラフィ、角膜厚測定、収差測定、瞳孔測定、調節プロファイル、前房深さ、軸方向長さ等)を提供するように動作可能である。眼分析モジュール200はまた、医療関係者(例えば、医師)からの付加的な入力パラメータを受信するために使用することができる。パラメータは、所望の焦点距離、患者が典型的に暗所にいるのか、明所にいるのか、および患者が、読書、運転、またはテレビの視聴等の、何の目的でBIOLを使用するのか、を含むことができる。一実施形態によれば、単一デバイスは、眼分析モジュール202の機能性を組み込んでもよい。
【0021】
眼モデリングモジュール204は、製造するための最終的なレンズ設計を計算する。一実施形態によれば、眼モデリングモジュール204は、眼分析モジュール202から未処理データを受信して、2つの相異なる計算モデルである、幾何学眼モデルおよび機能眼モデルを生成する。幾何学眼モデルは、検査されている眼の前部分の幾何学形状を説明する。機能眼モデルは、眼の機能性を説明する。
【0022】
レンズモジュール206は、医療関係者の予期されるパラメータに適合するように、BIOLの光学表面を計算して、最適化する。前述のように、これらのパラメータは、眼分析モジュール202に入力した。一実施形態において、レンズモジュール206は、BIOLの光学表面を最適化するために、厚肉レンズアルゴリズムを使用する。
【0023】
製造モジュール208は、眼モデリングモジュール204および厚肉レンズ計算および最適化モジュール206から受信した情報に基づいて、STLファイルを生成する。STLファイルは、3次元製造システムを使用して最終的なBIOL210を生成するための、BIOLの仕様を説明する。
【0024】
リアルタイム術中アナライザ212は、適切な位置に、および適切な配向で患者の眼214の中にBIOL210を移植するために使用される。一実施形態において、リアルタイム術中アナライザは、後により詳細に論じられるRTTである。
【0025】
図3は、一実施形態による、例示的なBIOL300の斜視図である。図3は、BIOL300の幾何学的中心を通して延在していないが、その代わりに、BIOLが移植される眼に関する視軸と重なる、光軸302を示す。BIOL300は、光学円板304と、光学円板の外周から延在するパラメトリック触覚306aおよび306bとを含む。光学円板304は、特定の患者の高次収差を補正するようにカスタマイズすることができる。パラメトリック触覚306aおよび306bは、患者の眼内の事前に計算した位置に光学円板を位置するように設計することができる。図3の実施形態において、BIOLは、2つの触覚を含むが、他の実施形態では、ハプティックを含まない、1つのハプティック、3つのハプティック、4つのハプティックを含む等、異なる数のハプティックを使用することができる。
【0026】
図4は、その中に移植されたBIOL300を有する眼400の断面である。図4は、虹彩開口404を通って進入する光が、眼の網膜上の焦点406で適切に集束させられるように、BIOL300の光学円板302が眼の虹彩開口404と配列されるとともに、眼の水晶体嚢402の内部に位置しているBIOL300を示す。
【0027】
図5は、一実施形態による、厚肉レンズ計算プロセス500を示す、フローチャートである。厚肉レンズ計算プロセス500は、厚肉レンズ計算および図2の最適化モジュール206を使用して実施することができる。
【0028】
厚肉レンズ光学モデルは、モザイク状の三角形要素(図9A)とともに、境界有限要素モデルを使用して、BIOL表面計算によって画定することができる。
【0029】
一実施形態によれば、最適に合致する眼内レンズの移植は、被検査眼の網膜面に位置する最小の可能な焦点の中への入射光線束を形質転換することによって、被検査眼の角膜の一部または全ての収差を補償することができる(図7Aおよび7B)。コリメート光線(図7A)または平坦な球状波面(図7B)の非入射束は、検査された眼開口の中に投影される。三角測量に基づく細分スキーマは、厚肉レンズの前面および裏面の両方を説明するために使用され、各三角形法線は、勾配の画定に寄与する。近隣の全ての三角形はまた、全体の曲率を画定することができる。
【0030】
順方向光線追跡は、対象物または光源から開口を通して網膜焦点に向かって投影される。また、焦点から眼開口絞りに向かって生成され、等角間隔の光線によって特徴づけられる、逆方向光線追跡は、焦点zf±Δに隣接した均一な輝度プロファイルを提供する。
【0031】
このアプローチは、光線/表面の交差のための一意的な解決策を有さない場合があり、よって、滑らかで(少なくともC(1)またはC(2))、かつ凸状の(全体的に凸状の)表面を与える交差が見つからない場合がある。反復は、最小のエアリーの円盤に到達するまで継続してもよい。アルゴリズムは、選択的に、頑健性(最小の感度)のための解決策に重みをつけることができ、以下のパラメータに対して表面曲率を最適化する。レンズの偏心、レンズの軸方向変位、z軸の周りのレンズチルトおよび回転、開口絞りの幾何学形状、および被写体との距離(例えば、好都合なレンズの範囲)。
【0032】
図7Aおよび7Bは、一実施形態による、順方向光線追跡の代替の技術を示す。図7Aは、非コリメート光線を伴う順方向光線追跡を示し、図7Bは、コリメート光線を伴う順方向光線追跡を示す。
【0033】
図8Aは、一実施形態による、厚肉レンズ802の順方向および逆方向光線追跡を示す。順方向光線追跡は、非コリメート光線を使用し、逆方向光線追跡は、網膜焦点804に由来する等角間隔の光線を使用する。図8Bは、等角間隔の光線810a、810b、810cを示す。
【0034】
図9A−9Dは、種々の実施形態による、BIOLを示す。図9Aは、モザイク状の三角形要素902を示すように拡大した、BIOL900の一部を有する、BIOL900の斜視図である。モザイク状の三角形要素902は、BIOL900の光ディスク部分の勾配または全体の曲率を画定することを支援するために、BIOL900のモデリング中に使用することができる。一実施形態によれば、レンズの外面は、滑らかであるが、モザイク状の三角形要素によって画定されない。換言すれば、一実施形態において、モザイク状の三角形要素は、BIOLのモデリング中にだけ使用される。
【0035】
一実施形態によれば、BIOL900の設計は、レンズ部品をパラメトリックに寸法決定するために、眼分析モジュール202によって提供されるデータに基づく。これは、患者の眼の視軸の最良の中心(例えば、ASAの瞳孔測定試験によって報告される)上への、BIOLの光学板の光心の適切な位置決めを可能にする。
【0036】
図9Bは、BIOL構築軸の幾何学的中心から偏心した光ディスク912を有する例示的なパラメトリックBIOL910を示す。図に示されるように、光学円板の中心(ハッシュマーク914によって識別される)は、BIOLの幾何学的中心(ハッシュマーク916によって識別される)と異なる。偏心量は、BIOLの選択された挙動である、瞳孔測定試験中に得られる情報に基づくことができる。BIOL移植の結果を計画することは、老眼症状の可能な予測に基づくことができる。したがって、BIOL移植のための実用的な解は、視軸の中心に関して空間的に移行させられる距離焦点の近くから中間までに及び得る。
【0037】
一実施形態によれば、瞳孔測定試験は、異なる条件で異なる瞳孔中心を報告し、それによって、乱視を伴う患者が、老眼補正BIOLの選択を考慮すること、ならびに経験することが予期され得る眩輝および光輪の量を認識することに役立つ。
【0038】
水晶体嚢幾の何学的情報はまた、自動CADプロセスによって推進される、自動CADプロセスによって推進される、ハプティックの構築のための寸法(例えば、長さ、ループ、厚さ、数、形状等)および光学円板の変位をパラメトリックに設計するために使用することができ、よって、移植後に、光学円板は、所望の視軸に対して正確に配置される。
【0039】
有限要素法(FEM)解析を使用した反復プロセスは、BIOLが患者の眼の水晶体嚢の中に移植されるときに生じる力および移行を計算するために使用することができる。一実施形態によれば、特定の状況に対して最適なハプティックを提供するために、異なる状況に好適である異なる触覚設計のライブラリを使用することができる。
【0040】
図9Cおよび9Dに示されるように、第1の触覚904aおよび第2の触覚904bは、どちらも、より大きな力に耐え、かつより小さい曲げ角ならびに隙間を持つ、より滑らかな設計を有する。対照的に、第3の触覚904cは、下部周辺の耐押力を与えるように、より鋭くかつより細長い設計を有し、曲げおよび運動隙間のより大きい角度を可能にする。
【0041】
BIOL光学円板は、移植後に、わずかに回転、チルト、または転位してもよい。乱視または高次収差を補正するためのレンズが構築されるときには、光学円板の適切な配向が特に重要であり得る。回転、チルト、および転位の影響は、水晶体嚢の寸法および収縮を正確に予測することによって、ならびに残留調節がどのくらいであるかを予期することによって、最小化または回避することができる。この目的を達成するために、移植後の進度管理期間に、どのくらいの残留する毛様体の働きが予期されるのかを予測するために調節データを使用することができる。これは、後嚢表面の中に確実に押し戻すべきである(後嚢とBIOLの後表面との間の完全な付着を引き起こす)BIOLの後面の最終的な変位に関し得る。この力は、共通する毛様体の働きを補償するように、また、水晶体嚢を伸ばして適切な焦点面の中にレンズの裏面(例えば、調節および緩和の両方の状態にある天然水晶体の裏面)を配置するのに十分強い力であるように計算することができる。レンズ設計が生成されたときに、構成要素の強度を検証するために応力分析を行うことができ、レンズの転位イベントの可能性を防止または低減するために、シミュレートした寿命をシミュレートすることができる。
【0042】
前述のように、データを得る目的で患者の眼を分析して、BIOLを生成し、患者の眼の中へのBIOLの適切な移植のためのデータを提供するために、種々のデバイスを使用することができる。このような目的に使用することができる例示的なデバイスを以下にさらに詳細に論じる。
【0043】
(前眼部アナライザデバイス(ASA))
ASA術前診断アナライザは、複数の画像を捕捉して、眼の前部分の経線プロファイルを抽出する(図6Aおよび6B)、デュアルシャインプルークカメラシステムを備えることができる。術前診断用デバイスは、次いで、被検査眼の3次元幾何学モデルを再構築し、現在の視軸上に適切に配列された眼の正確な収差測定を生成することができ、波面収差測定(機能)データを幾何学モデルと真に関係させる。ASAは、画像を捕捉して、眼の前部分の経線プロファイルを抽出するデュアルシャインプルークカメラの実装に基づく。抽出された情報に基づいて、ASAは、次いで、被検査眼の3次元幾何学モデルを構築することが可能である。ASAはまた、現在の視軸上に適切に配列された眼の正確な収差測定マップを生成することが可能であり、波面収差測定(機能)データを幾何学モデルと真に関係させる。ASAデバイスは、2008年12月19日に出願のPCT特許出願第IB2008/003956号の、名称「Dual Scheimpflug System For Three−Dimensional Analysis of an Eye」にさらに詳細に説明されており、参照することによりその開示全体が組み込まれる。
【0044】
一実施形態によれば、ASAはまた、患者の眼の1つ以上の長さを測定するために、軸方向長さ測定器を含むことができる。このような軸方向長さ測定器は、LPSで使用される長さ計測器に類似し得、以下にさらに詳細に論じる。
【0045】
図6A、6B、および6Cは、一実施形態による、第1および第2のシャインプルークカメラおよび瞳孔カメラを使用した眼の画像である。この目的を達成するために、図6Aは、第1のシャインプルークカメラを使用した、眼のプロファイル画像を示し、図6Bは、瞳孔カメラを使用した眼の画像であり、図6Cは、第2のシャインプルークカメラを使用した眼のプロファイル画像である。図6A、6B、6Cの画像は、例えば、図2の術前アナライザ202によって捕捉することができる。厚肉レンズ計算プロセス500に関して上記により詳細に説明されるように、第1および第2のシャインプルークカメラによって生成されるプロファイル画像を高めるように、術前アナライザを使用してもよい。
【0046】
(レンズ処方システム(LPS))
LPSは、特定の患者用の適切なBIOLを生成または選択する際に使用するための、眼の前房のパラメータを測定するために使用することができる。LPSの一実施形態は、概して、眼の内部体積のトポグラフィック層(したがって、角膜およびレンズ組織に関する情報を与える)、ならびに半コヒーレント光源を網膜上に投影することによる外部への波面を表すマップを生成するために使用されるデータを生成する層指向波面センサアナライザとして説明することができる。
【0047】
一実施形態によれば、LPSは、患者の眼との自動配列を可能にする、機械システム上に載置可能な光学ヘッドを含むことができる。LPSはまた、患者が正しい方向を見るのに役立つように、被検査眼の屈折誤差を補償することが可能な定着目標システムを含むことができる。
【0048】
LPSはまた、IOLを選択するか、特注のIOLを設計するか、または屈折誤差が生じる場所の位置を識別することに好適な、完全な一組の情報を測定するように相互に機能する示差収差測定器と、軸方向長さ測定器とを含むことができる。収差測定器は、多重共役波面システムに基づくことができ、眼の全ての光学副システムの収差の評価を送達し、また、軸方向長さ測定器に基づくことができ、角膜、レンズ、および網膜層等の眼の異なる層間の距離を測定する。合計収差、ならびに角膜およびレンズ収差を知ることで、外科医または他の医療関係者は、屈折誤差が位置する場所を識別することができ、軸方向長さデータと連動するデータに基づいて、手術を計画することができる。
【0049】
前述のように、LPSは、眼の層間の種々の軸方向距離を測定するために、軸方向長さ測定器を含むことができる。このようなデバイスは、レーザドップラー干渉分光法の原理を使用することができ、高レベルの空間分解能に到達する。異なる実施形態において、軸方向長さ測定器は、以下の図に示されるように、飛行時間レーザ測距器の原理に基づいて組み立てることができる。別の実施形態において、軸方向長さ測定器は、光低コヒーレンス干渉分光法を使用して実現することができる。さらに別の実施形態では、内側の基準経路上を動く波に対する、眼の内面から逆方向に反射される光の位相シフトのために、位相シフトレーザ測距器を使用することができる。
【0050】
以下、LPSの一実施形態を説明する。この実施形態において、LPSは、層指向センサとともに使用されるように設計される正弦波パターン板に基づく、波面センサを含む。層指向技術は、分析される眼のトポグラフィック表現を得るために使用される。LPSは、眼の内部構造に関する体積情報を提供するために、両方の概念を組み合わせる。
【0051】
図10A−10Cを参照して、正弦波板の概念を論じる。正弦波パターン板の概念は、1つの軸に沿って0%から100%の間で正弦的に変動する透過を伴う光学窓を、焦点面上に配置すること、ならびに波面の全体的および局所的なチルトを1つの方向に再構築する途中で、検出器を後続の瞳孔面上に配置すること伴う。図示するために、摂動の非存在下での、単一の基準点光源からの光を考慮する。正弦波パターンの存在下での、瞳孔の画像への影響(基準からの光がコリメートされるので、一様に照明される)を、図10A−10Cに示す。基準光が、パターンの透過が最小(0%)である所に集束する場合、瞳孔は、暗色になるが(図10A)、正弦波変調に直角な軸(図10A−10Cに矢印で示す)に沿ってパターンを移動させることで、基準画像が位置する所の正弦曲線の点の関数として、瞳孔の高度が一様に変動することが分かる(図10Bおよび10Cを参照されたい)。正弦波パターンの存在は、焦点面上の対象物の運動、または換言すれば、そのチルトに比例する信号の検出を可能にする。
【0052】
さらに例示するために、波面上の全体的なチルトを導入することができる。影響は、焦点面上の基準画像の運動であり、波面自体の一次導関数に比例する。よって、正弦波パターンが固定された場合、結果は、摂動の非存在下での移動に対する説明と同じである。所与のチルトについて、パターンの透過の導関数が最大である(すなわち、正弦曲線の位相がπ/4であり、透過が50%である)所に基準画像を形成する場合、基準光源のチルトに対応する検出信号も同様に最大である。正弦波パターンの直線部分の中にあることで、正弦期間が適切な方法で選択される場合は、基準のわずかな運動でさえも、瞳孔照明の著しい変化を引き起こすことができる。板の透過が最大または最小である所に基準画像を形成する場合、両方の場合において、チルトによる基準の焦点面の中のわずかな運動は、全く検出されないか、またはほとんど検出されず、瞳孔レベルでの照明の変化は、無視できるほど小さい、またはごくわずかである。
【0053】
両方の軸のチルトを得るために、基準に由来する光は、(例えばビームスプリッタを使用して)2つの部分に分割(dived)して、2つの直交する正弦波パターンの導入によって分析することができる。
【0054】
検出器が、瞳孔面の中に(または任意の特定の範囲で複合される、層配向様式で)配置されるときに、チップ−チルトを判定するように、単一の副開口から収集される光を集束させることができる。例示するために、瞳孔面全体と瞳孔面の一部との間の画像の比較を、それぞれ、図11Aおよび11Bに示す。この場合、図11Bのシステムの入射瞳上には、マスクが配置される。選択された副瞳孔は、以前の実施例(図10Aおよび10B)の瞳孔と同様に振舞い、よって、副瞳孔の中の波面の時間変動のチルトは、瞳孔全体に対して予測される強度の同じ、または類似した変調を生成する。したがって、波面の高次歪曲を検出するために、システムの入射瞳の多数の副開口上の基準光の強度を分析することができる。
【0055】
各副瞳孔から得ることができる信号は、波面の一次導関数と比例し、その副開口上の局所チルトである。別の方法で説明されるが、波面センサは、各副開口の局所チップ−チルトマップを提供する。瞳孔のサンプリングは、検出器のレベルで決定され、空間サンプリングを所望のものに調整するように、再ビニングのための許容量を与える。
【0056】
このような局所の、単一の副開口に特有のチップ−チルトは、瞳孔面上に配置される検出器上への光の変調に変換する。このような変調には、考慮される副開口の中の基準光の半分、さらに、基準光が倒れている正弦波パターンの位相に対応する量だけ回転させられた、同じく基準光の半分に長さが等しい、ベクトルの固定軸に沿った投影が現れる。1つの位置において、基準が、チップ−チルト運動による透過性の最大変動点の真上またはその近くにある場合、利得は、局所チップ−チルトを検出するのに十分であることができる。よって、単一の基準の場合、透過の最小と最大との間の中間点の基準を見つけて、出力信号を最大化するために、正弦波パターンを配置することができる。正弦波パターンのステップは、この情報のラップアラウンドを回避するように十分大きくし、かつ大き過ぎて信号が弱くならないようにすべきである。実際には、チップ−チルト変動のRMSは、1位相ラジアン程度であることができる。
【0057】
多数の基準を伴う時、これらの基準のそれぞれは、瞳孔画像の形成に寄与し、それぞれが、同じ様式で局所チップ−チルトによって変調される。パターンの正弦波透過性のため、検出器に到達する基準からの光の量は、2つのベクトルの合計であり、基準画像がある位置におけるパターンの同じ位相で、第1のベクトルは固定され、他のベクトルは自由に回転することができるとみなすことができる。図12A−12Cに示されるように、一組の基準全体の光の半分は、検出器に到達するが、他の半分は、概して、ランダムウォークの合計方法で累積される。
【0058】
検出器に到達する光の量は、ベクトル微積分法を使用することによって計算することができる。図12Aにおいて、単一の基準光は、パターンの透過率が50%である所にあり、2つのベクトルの合計であるとみなされ、そのモジュールは、焦点面上の基準強度の半分である。第1のベクトルの方向は固定され、一方で、第2のベクトルは、正弦波パターンの同じ位相で回転する。図12Bは、視野の中の3つの基準の寄与の合計を示す。「回転」成分から「固定」成分を分離する方法で合計されるベクトルの表現を図12Cに示す。正弦波パターンの期間は、3つの回転ベクトルの合力の全体の回転に対応する。
【0059】
多数の基準がランダムに位置して選択される場合、それらのうちのいくつかは、良好な信号を与え、それらのうちのいくつかは、弱い信号を与え、それらのうちのいくつかは、ゼロに近い信号を与えるが、これは、上記に説明され、図11Aおよび11Bに示されるように、各基準が焦点面のどこにあるか、および正弦波パターン板がどこに位置しているのかに依存する。図13Aにおいて、この状況が表されているが、多数の基準が考慮され、正弦波パターン板の形状が規則的なものである場合、当然、π/4の正弦曲線の位相および50%以下の光透過率に対応する、板上の位置に入る基準光の数を最大化するために、(図に示される場合において)板を左右に移動させることによって、瞳孔レベルで得られる信号を最大化することができる。
【0060】
基準が視野の中にランダムに配置されるとき、板は、光透過率が約50%である板上にある基準の数を最大化することを目的として、図13B−13Dに示されるように設計することができる。当然、基準位置の正確な知識、特注の板の設計、および板の慎重な位置決めも、同様に使用することができる。
【0061】
したがって、図13A−13Dは、正弦波パターン板の上に重ねた過密な基準視野を示す。図13Aにおいて、パターンは、直線で規則的である。信号強度は、小さく、パターン内部の基準の位置にわずかに依存する。図13Bから始まり、図13Dに進むと、歪曲の調整を増大させることは、信号をより強くするが、さらに正確な基準との配列を必要とすることを示している。
【0062】
図14は、人為的基準の適切な位置決めを示す。源は、正弦波パターンの透過率がほぼ50%である所に位置し、したがって、パターンの運動、または「波面のチルト」上の最大値を与える。50%透過率の場所は、基準に対する最適な位置であり得る。
【0063】
層指向(LO)技術は、一定数の基準を同時に見る波面センサを有するものとして説明することができ、検出器のレベルで、全ての基準に由来する光を光学的に重ね、システムの入射瞳の画像が作成される。この動作を実施するために、瞳孔面波面センサは、ピラミッド状、正弦波パターン板、または湾曲したパターン板等を使用することができる。
【0064】
これは、各基準について1つの波面センサ(WFS)を有する代わりに、従来の多重共役適応光学(MCAO)システムと類似し、LOアプローチにおいて、システムで使用されるWFSの数が、同時に調査される乱流層の数に依存することを意味する。走査される体積およびこの体積内部の収差が静的である場合、この体積内部の異なる深さは、検出器の面を焦点運動に沿って移動させることによって共役することができる。
【0065】
図15では、3つの基準1501、1502、および1503から受容された光は、重ねられ、層1504および1506を有する体積を通過し、そして、光学システム(例えば、レンズ(図示せず))から焦点面1508上に収集される。屈折ピラミッド状センサ1510a、1510b、および1510cが、各集束スポットに配置される場合、各ピラミット状センサは、4つのビームを作成することができ、これらは、コリメータ(図示せず)を使用して、検出器1512上に再結像することができる。
【0066】
この時点で、検出器1512が瞳孔面の中に位置している場合、波面センサによって測定された変形は、主に、第1の層1506(図15の例示的な事例において、システムの入射瞳に非常に近い)に由来するものである。現実には、センサが、第1の層1506に関する他の層に対してどのくらい高感度であるのかは、これらの層が第1の層からどのくらい離れているのか、および特に、波面センサの視野(FoV)に関するその焦点深度に依存する。FoVが大きくなるにつれて(基準が、相互にある距離を置くことを意味する)、その焦点深度が小さくなる。要約すると、図15の実施例について、薄層の変形に対して非常に高感度であることが必要である場合、基準の選択は、WFSに対して大きいFoVを有して行われる。一方では、検査下の体積のより深い部分に対して高感度であることが必要である場合、より近い基準が選択される。
【0067】
この体積の異なる部分に対するWFSの共役は、検出器に集束させることを伴う。例えば、図15を考慮すると、第2の層1504は、その収差を見るように共役されることを前提とする。検出器1512は、焦点面1508の方向に(異なる距離に集束させることが所望される時は、写真レンズで行われるものに類似する)移動させられる(当然、その正確な量は、光学システムに依存する)。当然、この場合、図16Aおよび16Bに示されるように、検出器上の瞳孔の形状は、変化して、センサによって使用される基準の位置を反射する。
【0068】
図16Aおよび16Bは、LO技術の光の光学的共加算を示す。図16Aにおいて、波面センサは、システムの入射瞳に共役され、本質的に光の重ね合せがある。図16Bにおいて、センサは、異なる距離に共役され、光は、完全に重ねられず、瞳孔は、規則的でなく、通常、「メタ瞳孔」と称される。
【0069】
次に、上述の段落で概説した概念(正弦波波面センサおよび層指向アプローチ)に基づく光学レイアウトを、図17を参照して説明する。最初に、検査下にある眼に関してセンサの高い感度に到達するために、関心の領域の中に小さい焦点深度を伴う光学システム(または、別の言い方をすれば、光ビームが大きい角度で眼の瞳孔上に当たることを可能にするシステム)を使用することができる。この光学効果は、高い視野角度を提供する短い焦点距離を伴う接眼レンズ1702によって得ることができる。
接眼レンズの入射瞳は、分析される眼の瞳孔であることができる。
【0070】
次いで、網膜1704上に基準ビーコンを作成するために、接眼レンズ1702の中間画像面(IIP)1708上の、一定数のスーパールミネセントダイオード(SLD)またはレーザダイオード(LD)光源を結像するのに十分である。次いで、接眼レンズは、コリメーティングレンズとして作用し、レーザ源は、網膜1704上の異なる位置1710a、1710b、および1710cに集束させられる。これらの点1710a、1710bおよび1710cから反射された光は、波面センサが分析する基準ビーコンを提供する。接眼レンズをコリメーティングレンズとして使用する別の利点は、コンパクトな多重源光学システムを提供することである。網膜上に投影される各ビーコンは、光学リレーレンズシステムによって正弦波パターン板に共役することができる。正弦波板の後ろに配置される別のリレーレンズは、光学システムの瞳孔を検出器上に投影する。
【0071】
図17の実施例において、光源1706に由来している光は、ビームスプリッタ1701を介して分割され、中間画像面1708上に集束させられ、次いで、接眼レンズ1702を介して、眼の網膜1704上に集束させられる。結果として生じる網膜ビーコンは、図17の実施例において、ユニット拡大レンズシステムおよびビームスプリッタによって、2つの垂直に位置している正弦波パターン板1712aおよび1712b上に投影される。次いで、各正弦波パターン板上の光学レイアウトの瞳孔は、各経路について1つである、2つのCCD検出器1714aおよび1714b上にリレーされる。
【0072】
一実施形態によれば、各正弦波パターンは、(正弦パターン方向に直角である)ただ1つの単一の波面の一次導関数と比例する。しかし、波面パターンはまた、両方の方向(xおよびy)の導関数を使用して構築することができる。これは異なる方法で達成されてもよく、以下を含む。
a)図18に示されるように、2つの隣接する正弦波パターン板1812aおよび1812bは、直交方向(図18の矢印1818によって示される)に移行させることができる。基準ビーコンは、2つの板を保持する板ホルダ1820を移動させることによって、最初に、第1の板1812a上に投影され、次いで、第2の板1812b上に投影される。
b)図19参照すると、単一の正弦波パターン板1912によって、類似した結果を達成することができる。この場合、2つの画像を2つの導関数に対応して記録することができる。最初に板1912は第1の位置(図19A)にあるが、その後に、板が90°回転させられ(図19B)、よって、第1の位置にある板1912上のパターンは、第2の位置にあるパターンに垂直である。
c)図20は、図17に示される配設に類似した配設を示す。この場合、基準ビーコンの投影画像は、ビームスプリッタ2020によって、2つのビームに分割することができる。次いで、各ビームは、相異なる正弦波板2012aおよび2012b上に集束させられ、そのパターンは、相互に対して垂直である。
【0073】
眼の体積の異なる層を検査する場合は、検出器(CCD)を対応する位置へ移動させる。例えば、検出器は、検査される新しい層に共役されるような方法で、瞳孔リレーレンズからさらに離れて、またはより近くに移動させることができる。
【0074】
一実施形態によれば、複数のビーコンに由来する光は、波面変形を生成する特定の層を感知している、単一の検出器上に光学的に重なる。このように、ただ1つ(または両方向の一次導関数が考慮される場合は2つ)の単一の正弦波パターンおよびCCD検出器しか必要とせず、各ビーコンから戻って来る光をより効率的に使用することができ、単一のCCDによって収集される。
【0075】
使用の際に、患者は、定着目標に注目し、一方で、デバイスは、自己配列するか、または外科医が被検査眼に配列させる。配列プロセスが完了すると、取得を開始して、軸方向長さ測定器を使用して、眼の層の波面成分、ならびに角膜およびレンズ表面のそれぞれのバイオメトリックデータの両方を収集する。眼の全体の軸方向長さの測定値はまた、このステップ中に収集することができる。
【0076】
デバイスは、従来の波面アナライザとして、または示差波面アナライザとして使用されてもよい。いずれの場合においても、収差マップを生成することができる。第1の使用では、合計収差に関し、第2の使用では、所望の眼部分の収差に関する。
【0077】
獲得したデータはまた、後の処理のために、局所または遠隔データベースに記憶することができる。
【0078】
(リアルタイム術中試験器(RTT))
RTTは、BIOLを適切に配列および配向させるために、および移植後にBIOLを機能について試験するために、BIOLの移植プロセス中、外科医を支援するために使用することができる。図21Aは、外科用顕微鏡1000の一部に挿入されるRTTモジュール1002を伴う外科用顕微鏡1000を示す。図21Bは、外科用顕微鏡1000から除去されたRTTモジュール1002を示す。一実施形態によれば、RTTモジュール1002は、顕微鏡1000等の外科用顕微鏡用のプラグイン式デバイスである。
【0079】
RTTモジュール1002は、波面アナライザと、トポグラファーと、眼の眼構造間の屈折率の変動を検出してそれらの位置を決定するプルキンエ像アナライザとを備えることができる。RTTモジュール1002は、リアルタイムで患者の眼を分析するために使用することができる。図22に関してさらに詳細に説明されるように、RTTモジュール1002は、眼内部のIOLの位置決めを報告する数値データとともに、顕微鏡接眼レンズを通して、および/または別個のディスプレイ上に、計算マップ(トポグラフィックおよび波面の両方)のオーバーレイビューを提供することができる。RTTモジュール1002はまた、手術下の眼から有意かつ正確な波面応答を捕捉するために、外科医が顕微鏡対物レンズを適切に設置することに役立つ配列インジケータを提供することができる。
【0080】
図22は、外科用顕微鏡1000の接眼レンズを通して見たときの、RTTモジュール1002を使用したオーバーレイディスプレイ1100の例示的な視界である。ディスプレイ1100は、X/Y配列インジケータ1102と、焦点s/Z配列インジケータ1104とを含む。図22は、トポグラフィまたは波面マップ1108によって部分的にオーバーレイされた移植された眼内レンズ(IOL)1106を示す。一実施形態において、トポグラフィマップまたは波面マップは、ユーザ選好に依存して選択されてもよい。配列値1110はまた、ディスプレイ1100の1つのコーナ部に示される。一実施形態によれば、インジケータまたは値が、適切に配列されているか、または所定の範囲内に入っていると判定されるときには第1の色で、また、インジケータまたは値が、配列されていないか、または所定の範囲から外れているときには第2または第3の色(例えば、赤色または黄色)で、インジケータまたは値を表示することができる。
【0081】
RTTの一実施形態は、IOL移植手術中の外科医が、xまたはy回転のいずれかにおいてIOLを正しく設置する、および最終的な屈折誤差を推定することに役立つことができる。さらに、手術の直後に、RTTは、IOLの位置決めを確認する、任意の角膜乱視を推定する、および任意の残留屈折誤差を推定するために使用することができる。RTTの一実施形態は、また、角膜移植中に角膜曲率を推定するために使用されることができ、外科医が、例えば縫合ワイヤの張力に作用する不要な角膜形状を補正することを可能にする。
【0082】
前述のように、RTTの実施形態は、外科医とリアルタイムで協働するように設計された機器であり、移植中のIOLの位置決めに関する情報、および置換したレンズの機能性を補正する際のIOLの曲率の有効性に関する、完全な組の情報を提供する。移植の正しい位置に対するIOLの任意の配列不良およびチップ−チルトに関する両方の情報、ならびに全体としての、IOLを伴う眼の収差の評価をリアルタイムで提供するために、2つの異なる経路が同じデバイスの中に統合される。
【0083】
一実施形態によれば、移植中にRTTによって提供される一連の情報は、第1には、移植IOLの実際の位置に関する情報であり、より具体的には、IOLの正しい移植位置に対するあらゆる偏心およびチップ−チルトに関する情報である。第2に、IOLによって導入される光学補正のレベルを評価するための情報、より具体的には、患者の除去したレンズの屈折誤差を補償するために、IOLの湾曲表面がどのようにIOLの材料の屈折率と協働するかに関する情報である。このように、RTTは、2つの光学レイアウトを有することができ、各光学レイアウトは、上記に論じた情報を収集するように構成される。
【0084】
RTTの第1の光学レイアウト2300を図23に示す。光学レイアウト2300は、コリメーションレンズ2304の焦点、またはその近傍において表面を照射するように、光ファイバと連結されるLED源を含むことができる照明デバイス2302を含む。次いで、コリメーションレンズ2304は、患者の眼2308の中へのビームの少なくとも一部を、瞳孔2310、IOL2312を通して、網膜2314上へと方向転換するビームスプリッタ2306を通る光ビームを検出する。眼2308から反射された光は、次いで、ビームスプリッタ2306を通って進行し、光学アセンブリ2224の中に戻る。アセンブリ2224は、ピラミッド状波面センサとして構成される。しかしながら、他の実施形態において、アセンブリは、シャック−ハルトマンまたはトールボット−モアレセンサ等の、異なる種類の波面センサとして構成することができる。
【0085】
光学アセンブリ2224は、瞳孔波面センサであり、ピラミッド状のレンズ2318の頂点上に位置している点の中に入力ビーム光を集束させるように構成されるコンデンサーレンズ2316を含むことができる。光学アセンブリ2224はまた、ピラミッド状のレンズ2318によって生成される4つの光ビームを水平に方向転換する、視野レンズ2320を含む。
【0086】
検出器2322(例えば、CCD検出器)は、レイアウト2300によって検出器上に投影される、瞳孔2310の4つの画像を検出するための、レイアウト2300の光路の終端に位置付けることができる。次いで、これらの4つの画像は、ピラミッドを使用した従来の波面感知で公知のように、波面情報を得るために処理することができる。
【0087】
検出器2322の2つの直交軸に沿った強度の合計の増分比率(R1、R2)を使用して、全体としての眼およびIOLの総合力を計算することができる。眼およびIOLの総合力は、以下の式を使用して計算することができ、式中、A、B、C、およびDは、それぞれ、検出器2322上に投影される4つの画像のそれぞれの検出強度である。
【0088】
【数1】

加えて、インプラントの光学収差を計算することができる。例えば、乱視は、当業者によって公知の技術を使用して、ゼルニケ多項式を使用して計算することができる。
【0089】
RTTの第2の光学レイアウト2400を図24に示す。光学レイアウト2400は、検査されている眼2406の光軸2404に対してチルトした光線を放射するLED環状照明リング2402を含む。環状リング2402から放射される光線は、それらが眼2406を通って進行する各界面において、反射および屈折成分に分割される。例えば、界面は、角膜2408の表面および裏面と、移植されたIOL2410の表面および裏面とを含むことができる。これらの光線の反射成分は、プルキンエ像と称される。図24の実施例において、プルキンエ像は、それぞれ、角膜2408およびIOLの内面および外面から反射された画像に対応する、P1、P2、P3、P4として示される。
【0090】
さらに図24において、プルキンエP1、P2、P3、P4は、結像対物レンズ2414を使用して、検出器2412(例えば、CCD検出器)上に集束させられる。図24の実施例において、プルキンエ像P1およびP2は、領域2416において検出器2412上で重なり、像P2は、領域2418において検出器上に結像され、像P3は、領域2420において検出器上に結像される。次いで、検出器2412から得られた情報は、回転角γ、IOLのチルト角α、およびIOLの偏心値δを含む、移植IOLに関する種々のパラメータを計算するために使用することができる。
【0091】
一実施形態によれば、第1の光学レイアウトで使用される類似の構成要素は、また、第2の光学レイアウトで使用することができる。したがって、例えば、第1の光学レイアウトの検出器2322は、また、第2の光学レイアウトの検出器2412として使用することができる。
【0092】
瞳孔中心に参照されるプルキンエ像P1、P3、P4の場所は、第2の光学レイアウトを使用して推定されることができる。P1は、前面角膜表面からの光源(光軸から距離dに配置される)の反射によって得られるプルキンエ像であり、一方、P3およびP4は、前面レンズおよび裏面レンズ表面から反射される像である。従来技術において公知のように、プルキンエ像(P1,P3,P4)の各組は、そのパラメータを光線追跡シミュレーションによって得ることができる線形関係(マトリクスA)によって、眼の回転角(γ)、ならびにレンズのチルトおよび偏心(それぞれ、αおよびβ)に関連付けることができる。回転角、チルト、および偏心の値、ならびに測定したプルキンエ(P1、P3、P4)を使用することにより、逆マトリクスAによって(すなわち、V=A−1P)未知のパラメータを決定することができる。
【0093】
しかしながら、マトリクスAは、近似であり、近似のV値をもたらす。より良好な近似は、マトリクスAが、また、Vパラメータ自体の関数であると想定することによって得ることができる。換言すれば、各異なる眼構成(全体的な回転角、レンズのチルト、およびレンズの偏心)について異なるマトリクスAを計算することで、より良好な近似を得ることができる。
【0094】
これは、マトリクスAがV値によって計算される、反復手順をもたらす。各連続する反復において、逆マトリクスA(ずなわち、V=A−1P)がV値に対するより近い近似を得る。近さは、本明細書においては、εスターナンバーと称されるものによって制御される。εスターの値が小さくなるにつれて、マトリクスAの近似、および結果的に、Vの未知の値により近くなる。
【0095】
図25は、RTTを使用して、回転角γ、IOLチルト角α、およびIOL偏心値δを計算するためのプロセス2500を示すフローチャートである。ステップ2502において、光源の距離dの値を決定する。図24に示されるように、距離dは、環状光リング2402から光軸2404までの距離であることができる。次に、ステップ2504において、ベクトルPを、検出器上の第1の測定した谷P(0)に設定する。ベクトルP=(P1,P2,P3,P4)であり、検出器の面(x,y)に沿った成分は、Px=(P1x,P2x,P3x,P4x)およびPy=(P1y,P2y,P3y,P4y)である。図24の実施例において、P1およびP2は、それらの近接性のため重なっていることに留意されたい。そのような場合、3つのプルキンエ像(PI)だけしか検出する必要がなく、P1およびP2は、接近し過ぎていて区別することができない。ステップ2506において、前進整数nをゼロに設定する。故に、ステップ2508において、ベクトルV(n)をゼロに設定し、ここで、V(0)=0である。次いでステップ2510において、プロセス2500は、ソフトウェアシミュレータを使用して眼およびIOLを光線追跡する。このステップにおいては、距離d、ベクトルP、およびベクトルV(n)値は、既知のパラメータである。
【0096】
ステップ2512において、光線追跡アルゴリズムの出力として局所マトリクスA(d,V(n−1))を使用して、数値的な評価を実施する。一実施形態において、マトリクスは3×3スカラー要素のマトリクスであり、マトリクスの要素は、アルゴリズムの出発点において未知である。
【0097】
次いで、以下の逆式を使用して、ステップ2514において、ベクトルV(n)の過渡値を計算する。V(n)=V(n−1)+A−1(P−m d)、式中、(n)は、繰り返しの前進整数であり、mは、倍率のベクトルである。ステップ2500で、(V(n)−V(n−1))が、スターナンバーε未満であるか否かを判定し、スターナンバーは、0.001等の1未満の何らかの所定の数である。「いいえ」の場合は、次いで、ステップ2517において、nの値を1つの整数だけ増加させ、プロセス2500は、ステップ2510へ戻る。しかしながら、ステップ2516において、(V(n)−V(n−1))が、スターナンバーε未満であると判定された場合、プロセスは、ステップ2518で終了する。
【0098】
したがって、プロセス2500は、最終的な解決策に収束する、反復プロセスである。V(n)は、変数γ、α、およびδによって構成され、これらの変数は、全ての繰り返しで、アルゴリズムのための入力として使用される。変数はまた、アルゴリズムの出力である。多数の繰り返しの後、V(n−1)ベクトル値と新しい計算されたV(n)ベクトル値との間の差は、スターナンバー未満となり、交軸点がアルゴリズムに到達したことを示す。次いで、ベクトルV(n)の全ての成分の最終値は、γ、α、およびδのための値である。
【0099】
本明細書で説明されるプロセスの1つ以上のステップは、コンピュータのメモリの中に存在する、コンピュータ可読の形態の命令によって実施することができる。コンピュータベースシステム、プロセッサ含有システム、あるいは命令実行システム、装置、またはデバイスからの命令を取り出し、命令を実行することができる他のシステム等、命令実行システム、装置、またはデバイスによる使用のための、またはそれらに関連する任意のコンピュータ可読媒体上に、命令を記憶および伝送することができることに留意されたい。本文との関連で、「コンピュータ可読媒体」は、命令実行システム、装置、またはデバイスによる使用のための、またはそれらに関連するプログラムを含有、記憶、通信、伝播、または伝送することができる任意の媒体であってもよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、または半導体システム、装置、デバイス、または伝播媒体であってもよいが、これに限定されない。コンピュータ可読媒体のより具体的な実施例(限定的なリスト)としては以下が挙げられる。1つ以上のワイヤを有する電気的接続(電子)、ポータブルコンピュータディスケット(磁気)、ランダムアクセスメモリ(RAM)(磁気)、読み取り専用メモリ(ROM)(磁気)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)(磁気)、光ファイバ(光学)、CD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、もしくはDVD−RW等のポータブル光ディスク、またはコンパクトフラッシュ(登録商標)カード、セキュアデジタルカード、USBメモリデバイス、メモリスティック等のフラッシュメモリ等。プログラムテキストは、紙または他の媒体の光学スキャニングを介して電子的に収集し、次いで必要に応じて、コンパイルするか、解釈するか、または別様に好適な方法で処理し、次いでコンピュータメモリ内に記憶することができるため、コンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙または別の好適な媒体でさえあってもよいことに留意されたい。
【0100】
本明細書で使用する(user)場合、「モジュール」という用語は、所望の機能を実施するように設計および構成されたソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせを組み込んだ、あらゆるユニットまたはユニットの組み合わせを指す。加えて、「モジュール」という用語は、モジュールの一部として記載または請求される構成要素または機能性が、全て共通のパッケージ内に構成されることを意味していない。実際には、制御論理構成要素であるか、または他の構成要素であるかにかかわらず、モジュールの種々の構成要素のいずれかまたは全ては、単一パッケージ内で組み合わせるか、別々に維持することができ、複数の位置にわたってさらに分布することができる。
【0101】
本発明をいくつかの好ましい実施形態の観点から説明してきたが、本発明の範囲内に含まれる代替物、置換物、および同等物がある。「コンピュータ」という用語は、任意の特定の種類のデバイス、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの組み合わせを必ずしも意味するとは限らず、また多目的あるいは専用デバイスのいずれかに限定されると考慮されるべきではない。
【0102】
本発明を、添付図面を参照しながらその実施形態に関連して完全に説明してきたが、当業者には、種々の変形例および修正例が明らかになるであろう。このような変形例および修正例は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の患者に対してカスタマイズされた眼内レンズ(IOL)を生成するプロセスであって、
(a)患者の眼に関するバイオメトリック情報を生成するために該患者の眼の特徴を測定することであって、該情報は、曲率プロファイル、トポグラフィプロファイル、角膜厚測定プロファイル、収差測定プロファイル、瞳孔測定プロファイル、眼の軸方向長さ、前房深さ、および調節プロファイルのうちの少なくとも1つを含む、ことと、
(b)該バイオメトリック情報をコンピュータメモリに記憶することと、
(c)該バイオメトリック情報に基づいて、該患者の眼の計算モデルを生成することと、
(d)予期される術後のIOLの使用に関する入力を受信することと、
(e)該計算モデルおよびステップ(d)において受信された該入力に基づいて、IOLの幾何学モデルを生成することと、
(f)レンズ最適化アルゴリズムを使用して、最適化レンズ表面を計算することと、
(g)幾何学データおよび計算された最適化光学表面に基づいてCADファイルを生成することと、
(h)該CADファイルに基づいて、IOLレンズを製造することと
を含む、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスを実行するように構成されるシステムであって、
(a)患者の眼を分析して、前記バイオメトリック情報を生成するように動作可能である眼分析モジュールであって、該眼分析モジュールは、また、前記IOLが使用されるであろう1つ以上の条件に関する入力パラメータを受信するように構成され、該パラメータのうちの少なくとも1つは、暗所環境、明所環境、読書環境、運転環境、およびテレビ視聴環境から成る群から選択される、眼分析モジュールと、
(b)製造に対するIOL設計を計算するように構成される眼モデリングモジュールであって、該眼モデリングモジュールは、該眼分析モジュールから受信された該バイオメトリック情報に基づいて、幾何学眼モデルおよび機能モデルを生成するように構成され、該眼モデリングモジュールは、該幾何学モデルおよび該機能モデルに基づいて、最終的なIOL設計を計算するように構成される、眼モデリングモジュールと、
(c)該眼分析モジュールに入力された該パラメータに基づいて、該IOLの最適化光学表面を生成するように構成されるレンズ計算および最適化モジュールと、
(d)CADファイルを生成するように構成される製造モジュールであって、該CADファイルは、該眼モデリングモジュールから受信された該IOL設計、および該レンズ計算および最適化モジュールから受信された該最適化光学表面に基づいて、該カスタマイズされたIOLの特徴を記述する、製造モジュールと
を備える、システム。
【請求項3】
前記眼分析モジュールは、デュアルシャインプルークカメラシステムを備え、該デュアルシャインプルークカメラシステムは、患者の眼の前部の経線プロファイル、該患者の眼の軸方向長さ、および眼の収差測定を撮像するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記眼分析モジュールは、
被検査眼の軸方向長さを測定するように構成される軸方向長さ測定器と、
被検査眼の光学収差を検出するように構成される層配向波面収差測定器と
を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
トポグラフィ収差測定および移植されたIOLの位置情報を測定および表示するように構成される術中リアルタイムアナライザをさらに備え、該術中リアルタイムアナライザは、外科用顕微鏡の中へ同軸的に設置されるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
(a)患者の眼の少なくとも1つの光学収差を補正するように構成される光学円板と、
(b)該光学円板の外周から延在する1つ以上のパラメトリックなハプティックであって、患者の眼内の事前計算された位置に前記IOLを維持するように構成されるハプティックと
を備える、カスタマイズされたIOL。
【請求項7】
前記IOLが、前記光学円板の光軸が前記眼の虹彩開口と配列されるとともに、患者の眼の水晶体嚢の内部に位置するように構成されることにより、該虹彩開口を通って進入する光は、該眼の網膜上の焦点に集束させられる、請求項6に記載のカスタマイズされたIOL。
【請求項8】
前記光学円板の視中心は、前記IOLの幾何学的中心から偏心している、請求項6に記載のカスタマイズされたIOL。
【請求項9】
複数のハプティックを備える、請求項6に記載のカスタマイズされたIOL。
【請求項10】
前記複数のハプティックのうちの少なくとも1つは、その他の複数のハプティックのうちの少なくとも1つとは異なる形状を有する、請求項9に記載のカスタマイズされたIOL。
【請求項11】
前記複数のハプティックのうちの少なくとも1つは、その他の複数のハプティックのうちの1つとは異なる長さを有する、請求項9に記載のカスタマイズされたIOL。
【請求項12】
光学円板と、該光学円板から延在する1つ以上のハプティックとを有するカスタマイズされたIOLを設計する方法であって、
(a)患者の眼のパラメータに基づいて、該光学円板のレンズモデルを生成することであって、該光学円板のレンズモデルは、該円板の少なくとも1つの表面上に複数のモザイク状の三角形要素を備える、ことと、
(b)事前設定されたパラメータが満たされるまで光線追跡アルゴリズムを反復することによって該レンズモデルを最適化することと、
(c)該IOLのモデルを生成することであって、該IOLのモデルは、該1つ以上のハプティックの設計およびステップ(b)において生成された該最適化されたレンズモデルに関する情報を含む、ことと
を含む、方法。
【請求項13】
ステップ(c)において生成された前記モデルに基づいて、IOLを製造することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)患者の眼の中の光学収差を測定するように構成される層配向波面収差測定器と、
(b)患者の眼の層間の1つ以上の距離を測定するように構成される軸方向長さ測定器と
を備える、診断用眼検査デバイス。
【請求項15】
前記層配向収差測定器は、
(i)複数の光源と、
(ii)該光源からの光を患者の眼の中へと方向付け、該患者の眼から反射された光を収集するように構成される第1の光学システムと、
(iii)該第1の光学システムから収集された該光を受容し、該受容された光のうちの少なくともいくらかを第1の検出器上に投影するように構成される第2の光学システムであって、該第2の光学システムは、正弦波パターンを有する第1の板を含み、該受容された光は、該検出器上に投影される前に該第1の板を透過させられる、第2の光学システムと
を備える、請求項14に記載の診断用眼検査デバイス。
【請求項16】
前記第2の光学システムは、ビームスプリッタと、第2の正弦波板とをさらに備え、該ビームスプリッタは、前記受容された光の一部を、該第2の正弦波パターン板を通して第2の検出器上に反射し、該第2の正弦波板のパターンは、前記第1の板のパターンに垂直である、請求項15に記載の診断用眼検査デバイス。
【請求項17】
前記診断用デバイスは、前記層配向収差測定器および前記軸方向長さ測定器によって得られた測定値に基づいて、患者の眼の機能モデルを生成するように構成される、請求項14に記載の診断用デバイス。
【請求項18】
前記診断用デバイスは、統合収差測定マップ、示差収差測定マップ、瞳孔測定プロファイル、および定着安定性プロファイルから成る群より選択されるバイオメトリックデータのうちの少なくとも1つを生成するように構成される、請求項14に記載の診断用デバイス。
【請求項19】
屈折誤差を補償し、患者が正しい方向を見ることを支援するように構成される定着標的化装置をさらに備える、請求項14に記載の診断用デバイス。
【請求項20】
患者の眼の中に移植されたIOLを検査するために使用される術中デバイスであって、
(a)第1の光学レイアウトであって、
(a1)発光するように構成される照明システムと、
(a2)該照明システムからの光を患者の眼の中へと反射し、該患者の眼から反射された光を透過するように構成されるビームスプリッタと、
(a3)波面センサとして構成される光学アセンブリであって、該ビームスプリッタを透過した光を受容するように構成される光学アセンブリと、
(a4)該光学アセンブリから出力された光を受容するように位置している第1の光学レイアウト検出器と
を有する、第1の光学レイアウトと、
(b)患者の眼の光軸に沿って位置している第2の光学レイアウトであって、
(b1)該光軸に対してチルトした光線を放射する発光ダイオード(LED)環状照明リングと、
(b2)該光軸に沿って位置している結像光学システムと、
(b3)該光軸に沿って位置している第2の光学レイアウト検出器と
を備える、第2の光学レイアウトと
を備え、該結像光学システムは、該患者の眼から反射されるプルキンエ像を該第2の検出器上に結像するように構成される、デバイス。
【請求項21】
前記第1の光学レイアウト検出器および前記第2の光学レイアウト検出器は、同じ検出器である、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、外科用顕微鏡の断面の中に挿入されるように構成されるプラグイン式デバイスである、請求項20に記載のデバイス。
【請求項23】
(c)前記第1および第2の検出器によって生成されたデータに基づいて、トポグラフィックマップおよび波面マップを生成するように構成されるコンピュータと、
(d)患者の眼の画像上に、該波面マップおよび該トポグラフィックマップのうちの少なくとも1つを表示するように構成されるディスプレイと
をさらに備える、請求項20に記載のデバイス。
【請求項24】
前記コンピュータは、計算された正しい配列位置に対して、患者の眼の中に移植されたIOLの配列を決定するようにさらに構成され、前記ディスプレイは、該計算された正しい配列に対する該IOLの配列を示すインジケータを含む、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
請求項20に記載のデバイスを使用して光学パラメータを決定するプロセスであって、
前記LED環状リングと前記光軸との間の距離dを決定することと、
ベクトルPを前記第2の検出器上の第1の測定された谷P(0)に設定することであって、ベクトルP=(P1,P2,P3,P4)であり、該第2の検出器の平面(x,y)に沿う成分であるP1、P2、P3、およびP4の成分は、Px=(P1x,P2x,P3x,P4x)およびPy=(P1y,P2y,P3y,P4y)である、ことと、
前進整数nをゼロに設定することと、
ベクトルV(n)をゼロに設定することであって、V(0)=0である、ことと、
ソフトウェアシミュレータを使用して、前記移植されたIOLを有する前記患者の眼のモデルの光線追跡を実行することと、
光線追跡アルゴリズムの出力として局所マトリクスA(d,(V(n−1))を使用して、数値評価を実行することと、
該ベクトルV(n)の過渡値を計算することであって、V(n)=V(n−1)+A−1(P−m d)であり、nは、繰り返しの前進整数であり、mは、倍率のベクトルである、ことと、
(V(n)−V(n−1))が、スターナンバーε未満であるか否かを決定することであって、該スターナンバーは、1未満の何らかの事前設定された数である、ことと、
(V(n)−V(n−1))が該スターナンバーε未満であると決定された場合に、該Vの値に基づいて、全体的な回転角、IOLのチルト角、およびIOL偏心値を決定する、ことと
を含む、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−504010(P2012−504010A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528452(P2011−528452)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007130
【国際公開番号】WO2010/035139
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(510172527)
【Fターム(参考)】