説明

カタランツス種子およびその製造方法

【課題】カタランツスF雑種の栽培品種の有効な商業用製造のために、F雑種種子を製造するためのより確実なシステムを提供し、カタランツス雑種の有効な商業用製造を可能にする。
【解決手段】雄性不稔のための対立DNA遺伝的因子を含むカタランツス種子、および第一親カタランツス植物と第二親カタランツス植物とを交雑し、接合したF雑種カタランツス種子の収穫を含む、F雑種カタランツス種子の製造方法であって、前記第一または第二親が、雄性不稔のための対立DNA遺伝的因子を含むカタランツス種子から得られたカタランツス植物である、F雑種カタランツス種子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄性不稔遺伝子を含むカタランツス(Catharanthus)(ツルニチニチソウとも言う)種子、カタランツス植物、カタランツス変種およびカタランツス雑種に関するものである。また、本発明はカタランツス(F)雑種種子および植物の製造方法に関するものである。
【従来の技術および課題】
【0002】
鑑賞植物を含む作物は、植物の受粉方法を利用した方法が改良され、生産されている。商業上現存する全てのカタランツス品種を含む自家受粉作物は、花が葯から柱頭まで有効花粉を移動し、種子を形成する能力に頼っている。仮に系統が、選択された所望の特性のための純の品種であり、自家受粉されるならば、均一栽培品種として販売することのできる同じ子孫が得られる。しかしながら、自殖および同系交配を繰返すと、結果として遺伝的に弱まり、同系交配抑制(自殖弱勢)として色々記載されている。雄性不稔は、雄配偶子を造る器官が存在するが、潜在的な雌生殖器官が残っている植物の状態である。遺伝的性質パターンに基づく、雄性不稔の2つの一般的タイプがあり、つまり1)遺伝子または核雄性不稔(GMS)および2)細胞質雄性不稔(CMS)である。雄性不稔突然変異体は、植物育種、遺伝学、生殖生物学および分子生物学における研究材料を提供する。自家受粉するカタランツス品種に代わるものは、F雑種である。F雑種品種の場合、同系交配する“雄”株からの花粉が同系交配の受粉に使用されるが、“雌”株は遺伝学的に異なるものである。得られたF雑種は、均一で生育力のある表現型である。この雑種の成長力に加え、雑種は病気および病害虫に耐性のある優性遺伝子の迅速かつ制御された展開の機会を提供する。雑種の一方の親にあたるホモ(同型)接合体優性遺伝子は、優性遺伝子表現型を発現する全てのF雑種を生じるであろう。観賞植物の場合では、ある花の色の表現型は、F雑種のヘテロ(異型)接合体において唯一達成され得る。多くの過程は、過去十数年以上の園芸および農耕作物の改良においてなされている。用いられている方法の中で優れたものは、F雑種種子製造物である。一般的にコーン、トマト、キュウリおよび野菜作物の主要なものすべては、F雑種種子から栽培する。ペチュニア、ゲラニウム(フクロソウ)、ホウセンカ、キンギョソウおよび他の多数を含む観賞植物は、F雑種として生育している。種子業界の中でF雑種は、優れた成長力、均一性および生産性のために秀でた役割を担っている。自家受精の有効的な予防は、F雑種種子製造で必須要件である。ペチュニアまたはカタランツスのような観賞植物の場合、均一性は非常に重要であり、なぜなら少量(1%のような)の自殖でさえもF種子作物の商業的価値を破壊することになる。種々の方法論が雌の自殖を防ぐために用いられている。開葯前におしべを手で取り除く除雄は、大豆、トマト、ペチュニアおよび多くの他作物における自殖予防の第一方法である。観賞植物における除雄作業は、管理的困難(一重咲きは見落としたり見逃したりできないため)であり、労働者のコスト面から不経済である。カタランツスのようないくつかの作物は、商業的な除雄が適当ではなく、なぜなら開葯前の花部は商業的レベルの手操作を行うには非常に小さいからである。自家不和合性(SI)は、雌の不慮の自殖を防止する方法として利用され続けている。不安定な環境(気候に依存する自家親和性に逆方向)の他に、同系交配株の製造の複雑さは、自家不和合性の使用の大きな欠点である。カタランツス群におけるSIの欠失は、F雑種種子製造における自家受精を防ぐための利用を排除する(Veyret Candollea 29:297−307;Levy et al.,Euphytica 32:557−564(1983)参照)。不慮の自殖を防止する他の方法は、花粉作用を抑制する交雑用化学薬品の適用を含んでおり(Chia and Ruminski, J. Agric Food Chem 39:2072−2076(1991)参照);それら薬品は、費用、不安定な環境、変わり易く不十分な有効性および温室職員に対する潜在的な毒性により花の種子製造において使用されていない。雄性化学殺菌薬は、鑑賞植物用作物に使用する室温の為に一般に登録されてない。植物が雄または雌部(両方ではない)発生する数種の自然発生現象である雌雄異株は、有効的に自家受粉を防ぐ。しかし不運にも、わずかの種が実用的な雌雄異体である。雌雄異株は、カタランツス種では存在せず、またキョウチクトウ科の別の報告でも雌雄異株を有さない。自然発生および人工的同系交配の雄性不稔は、手動除雄とは別で、植物において自家受粉の防止を達成する他の方法である。雄性不稔(MS)システムの場合、通常の両性花における花粉の欠失は、花同士が受粉する可能性がない。花粉の接合がなければ、通常の種子発生にいたる雄および雌配偶子の性融合が起こらないだろう;つまり“自殖”種子(すなわち自家受粉から生ずる種子)が製造されない結果となる。高等植物の場合、主に2種の雄性不稔のタイプが、遺伝的抑制に従って区別され得る。遺伝子、遺伝学またはメンデル説の不稔性を示す核雄性不稔(NMS)は、細胞の核内部に運搬および発現する遺伝子により抑制される。典型的に、NMSの遺伝は、通常のメンデルの分離の法則に従っている。対照的に、細胞質雄性不稔(CMS)は、細胞質因子である主にミトコンドリアゲノムにより制御され;CMSの遺伝はメンデルの法則に従わず、代わりに世代から世代にミトコンドリア構成成分の母性遺伝に関係している。NMSまたはCMSが、カタランツス種で起こることは知られておらず、またキョウチクトウ科においても特性的に起こることも知られていない。カタランツス種は、自然種子製造のために自家受粉におおいに頼っている。いくつかのカタランツス種における自家不和合性、雌雄異体または雄性不稔の欠失は、自家受粉および自殖種子がツルニチニチソウ種の生殖生物学で重要であり、普遍的な要素であることを示している。カタランツスF雑種の栽培品種の有効な商業用製造のために、F雑種種子を製造するためのより確実なシステムが望ましい。カタランツスにおける確実な雄性不稔遺伝子の使用が、仮に利用できるならば、カタランツス雑種の有効な商業用製造が可能となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、カタランツス種子、カタランツス植物、カタランツス変種、カタランツス雑種およびカタランツス雑種種子の製造方法に関するものである。とくに、本発明の雄性不稔遺伝子を有するカタランツス植物に関するものである。さらに本発明は、雄性不稔システムを使用したカタランツス雑種種子の製造方法に関するものである。さらに本発明は、前記カタランツス種子が1.0%未満の自家受粉種子を含むカタランツスF雑種種子の製造方法に関するものである。また本発明は、本発明の雄性不稔植物と他のカタランツスを交配することによるカタランツス種子および植物の製造方法に関するものである。さらに本発明は、雄性稔性受粉植物と一緒の場内空間で雄性不稔単交雑したカタランツス種子を生育することによる種子製造方法に関するものである。また本発明は、他の遺伝学的環境に遺伝学的雄性不稔遺伝子を移すことに関するものである。
【0004】
請求項1の発明は、雄性不稔のための対立DNA遺伝的因子を含むカタランツス種子である。請求項2の発明は、前記雄性不稔のための対立DNA遺伝的因子が、msGSである請求項1に記載のカタランツス種子である。請求項3の発明は、前記種子が、雄性不稔のための劣性対立遺伝子を含む請求項1に記載のカタランツス種子である。請求項4の発明は、請求項1に記載のカタランツス種子により生ずるカタランツス植物である。請求項5の発明は、請求項4に記載のカタランツス植物の花粉である。請求項6の発明は、請求項4に記載のカタランツス植物の胚珠である。請求項7の発明は、請求項4に記載のカタランツス植物の再生細胞を含む組織培養物である。請求項8の発明は、請求項7に記載の組織培養物から再生したカタランツス植物である。請求項9の発明は、第一親カタランツス植物と第二親カタランツス植物とを交雑し、接合したF雑種カタランツス種子の収穫を含む、F雑種カタランツス種子の製造方法であって、前記第一または第二親が、請求項4に記載のカタランツス植物である、F雑種カタランツス種子の製造方法である。請求項10の発明は、請求項9に記載の方法により製造される雑種種子である。請求項11の発明は、請求項10に記載の前雑種種子を生育することにより製造される雑種植物またはその一部である。請求項12の発明は、請求項11に記載の前記雑種植物から製造される種子である。請求項13の発明は、製造された前記カタランツス種子が、1.0%未満の自家受粉した種子を含む、請求項9に記載の方法である。請求項14の発明は、製造された前記カタランツス種子が、約0.80%〜約0.99%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法である。請求項15の発明は、製造された前記カタランツス種子が、約0.60%〜約0.79%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法である。請求項16の発明は、製造された前記カタランツス種子が、約0.40%〜約0.59%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法である。請求項17の発明は、製造された前記カタランツス種子が、約0.20%〜約0.39%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法である。請求項18の発明は、製造された前記カタランツス種子が、約0.01%〜約0.19%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法である。請求項19の発明は、前記カタランツス植物が雌植物である請求項9に記載の方法である。請求項20の発明は、請求項10に記載の雑種カタランツス種子を生育することにより製造される第一世代(F)雑種カタランツス植物の植物細胞である。請求項21の発明は、1998年、9月1日において、ATCCに登録番号203176で寄託した種子から生育させた、生育力のあるカタランツス種子および植物、およびその後代世代であり、雄性不稔対立遺伝子が前記寄託種子から転換されたカタランツス種子および植物である。請求項22の発明は、a)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子を分離し;
b)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子とプロモーターを結合させ;および
c)形質転換技術を用いて他の種に遺伝学的雄性不稔遺伝子を導入することを含む、カタランツスから他のカタランツス種への遺伝学的雄性不稔遺伝子の転換方法である。請求項23の発明は、a)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子を分離し;
b)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子とプロモーターを結合させ;および
c)形質転換技術を用いて他の属に遺伝学的雄性不稔遺伝子を導入することを含む、カタランツスから異なる属への遺伝学的雄性不稔遺伝子の転換方法である。請求項24の発明は、a)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子を分離し;
b)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子とプロモーターを結合させ;および
c)形質転換技術を用いて他の系統群に遺伝学的雄性不稔遺伝子を導入することを含む、カタランツスから異なる系統群への遺伝学的雄性不稔遺伝子の転換方法である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
明細書および請求項で使用されているいくつかの用語の理解を提供するために、下記に定義を記す。
雑種−ここで用いられている“雑種”という用語は、2種の非同一親株の交配により作られた第一代目F後代を意味している。親株は変異した単交雑の生産物に関するものがよいが、関係なくてもよい。
同系交配株−ここで用いられている“同系交配株”は、同様な表現型および遺伝子型である同系交配により生殖した植物に関するグループまたは組のことである。
自家受粉種子−ここで用いられている“自家受粉種子”は、同一の植物により作られる雄および雌配偶子の融合から生じる種子を意味する。同系交配種子生産物の場合、自家受粉種子は、用いる“雄”親ではなく雌遺伝子型により生じる単一さく果の内部の種子部(1%未満)を言及する。遺伝子学試験では、本発明の新しい雄性不稔性、雌稔性カタランツス突然変異を行った。この突然変異体は、完全な雄性不稔性であり、“msGS”と指名された単一劣性遺伝子として遺伝した。
【0006】
現在、本発明以外にはカタランツスにおける雄性不稔遺伝子が知られていない。本発明における対立遺伝子突然変異体は、雌植物に仕掛けた種子で可能である。遺伝学的データは、本発明の雄性不稔カタランツス(“ms”)が遺伝子の雄性不稔であり、単一劣性対立遺伝子により単性遺伝子的に抑制されることを示している。本発明における雄性不稔システムは、カタランツス雑種の商業的製造を可能にする。その方法は、指定した雌植物中で1%未満に自家受粉を減少することが肝要である。雌における自殖の減少は、用いた雌株に本発明の雄性不稔(MS)遺伝子の導入によって達成された。次世代のMS遺伝子の分離は、花粉機能の存在/欠失によって追跡された。自家受粉植物から誘発された後代は、MS分離の存在と鑑賞用に価値のある園芸特性を共に獲得した。結果として、適当な雌植物は、MSがあることと園芸に適用できることである。雄または“花粉”株にはMS遺伝子を運ばない。これらの株は、当業界で知られている方法により評価されるような、高い生育力の花粉を多量に製造するためにとくに選択される。雄株は、これに限定しないが花の色、植物の高さおよび植物の習性を含む所望の園芸特性に応じて選択される。雄からの花粉は、当業界で知られている共通の方法を用いて収集される。試験的なF雑種種子は、(msGSを有する)雌株と雄株からの花粉との受粉により製造される。F種子は苗床業界に共通に知られている方法を用いて発芽させ、成熟させる。生じたF世代は、均一性表現型、生育力および園芸適性が評価される。知られている劣性遺伝的特性の遺伝が雌に伝わること(とくに花の色)、また雄親から優性対立遺伝子の発現によりF世代においてそれらの遺伝現象が見られないことを観察することによって、雌における自殖の欠失が確認された。次世代におけるMSの分離は、MSシステムの遺伝学的性質を明らかにする。園芸に適当な雌−雄の組合せが見出された後、相当する雄および雌株は、大量に繁殖させることが可能で、商業的なF種子製造がなされる。カタランツスは栄養を止めることで直ちに繁殖するが、両親の種子の繁殖もまた、雑種種子製造において使用される慣習的な共通の方法を用いることで可能である。雄性不稔を誘発させる突然変異体の方法は、カタランツスにおける雄性不稔を作成するために用いられている(Dawsonらによる1993年、Can.J.Bol.71:629−638 Reynaertsらによる1993年、Scientia Hort.55L125−139)。雄性不稔を確認した後、MS現象の遺伝学的抑制を確かめるための多数の遺伝的試験は、本発明で生じた特性が、劣性対立遺伝子により抑制されることを明らかにした。カタランツスにおける本発明の雄性不稔対立遺伝子の有効な利用は、商業的なF雑種種子製造を可能にし、この方法ではないと、大きさの小さい花により生じる手動の除雄の制限や、カタランツスの自殖する性質により達成不可能である。本発明の方法を用いることにより、カタランツスのF雑種は、十分な生育力長所を獲得しただけでなく、独特の色、習性およびヘテロ接合体にだけ達成可能な他の興味ある園芸的特性の商業的製造の機会を提供している。ホモ接合体の雌と遺伝子が異なるがホモ接合体の雄との受粉により、結果として生じた後代は、いくつか得られる遺伝子座のためにヘテロ接合体であるだろう。親の品種開発の場合、雄および雌の遺伝学的環境は隔離が保たれ、遺伝学的相違により意図的に選択される。F世代における最終的な接合時に、多数の遺伝子座に対するヘテロ接合体は、雑種おいて発現する優性対立遺伝子の抑制された展開とともに雑種生育力を付与する。
【実施例】
【0007】
下記の実施例は、本発明をさらに例示するために提供され、添付の請求項および補正で明らかにされた限定を超えて本発明を制限するものではない。
実施例1
雑種の開発方法の概要
カタランツスにおけるF雑種種子の製造は、雌または“種子”親で発現するMSを利用している。本発明のMSを提供することによって、雌は自家受粉できないので、つまり自殖種子が製造されない。雌の品種開発の場合、園芸に望ましい形質が、当業界で知られている方法を用いた雌株に集められた。雌株は繰返して同系交配または同胞交雑される。育種工程における後段階で、MSを有する雌は花粉機能の欠失を確認し、それは商業的な種子製造で使用するのに適当であると思われる。雄または花粉親は、当業界で知られている方法を使用する園芸に好ましい質のために同様に育種される。雌とは違い、花粉の質と量は、雄の育種開発工程において重要な選択成分である。適当な雄および雌株が構築された場合、当業界で知られている方法を用いて雄植物から花粉を取り除き、そして花粉を雌の柱頭受容部に移動することで、受粉が行われる。これら受粉の次に、通常の種子の生育過程は雌植物で起こり、最後に結果として種子形成となる。多くの試験用雄および雌の組合せ体が試みられ、多くの試験的F雑種後代を得た。各後代は、次に園芸に適当と思われる特性を持つか検査する。遺伝学的特性(色が異なるような)は、雌から自殖種子の完全な欠失を確かめるために使用できる。結果として、さまざまな雄/雌組合せ体の検査は、商業的なF雑種種子製造に用いることができる適当な組合せ体を見出すことができる。
【0008】
実施例2
MS遺伝子の形成
雄性不稔が、いくつかのカタランツス生殖質において起こることは知られていない。ゴーマン(Gorman)およびマックコーミック(McCormick)による論文としてトマトで見出されたように(1997年、Critical Reviews in Plant Sciences 16:31−53)、全ての有効なカタランツス生殖質を、自然発生的な雄性不稔の可能性の存在を調べた。レーヴィー(Levy)ら(1983年、Euphytica 32:557−564)は、カタランツスロセウス(Catharanthus roseus)における雄性不稔の欠失を確認している。1992年の初期は、突然変異を誘発させ雄性不稔とする試みがなされた。EMS(メタンスルホン酸エチルエステル。これに限定されない)を含む、化学的突然変異原、抗生物質(マイトマイシンC(Mitomycin C)、ストレプトマイシン(Streptomycin))が使用された。Crop Science 28:792−795、JanおよびRutgerは、ストレプトマイシンがヒマワリにおけるCMSの誘発に使用できることを報告した。JanおよびRutger(Loc cit.)の処理方法にしたがってカタランツス ロセウス種子はストレプトマイシンで処理され、次に成熟花に生育させた。約400の誘発された幼植物から選択された、2種の植物は、正常花粉の欠失成熟植物を確認した。これらの植物(13861−1、13861−2)は、2年間生育され、気候の変更や成熟期下におけるいくつかの自殖種子の存在について厳密な検査をした。最初の雄性不稔である13861−2植物は、条件的または部分的雄性不稔だけを示す少数の自殖種子を最終的に製造した。部分的雄性不稔は、(米国特許第3,861,079号、米国特許第4,654,465号)に共に報告され、雄性不稔を目的とする人為突然変異実験(1975年、JanおよびRutger, Loc. Cit.; Singh,I. S., Ann. Amelior. Plantes 285:303−319)についてたびたび見出された。13861−1植物は、続けて自殖種子を欠失させ、雌性稔性を証明するためにさらに研究された。
【0009】
実施例3
カタランツスにおけるMSに対する遺伝学的基礎
13861−1植物は、花粉ドナーである様々なカタランツス品種(表1)との交雑における雌株として使用された。これらの交雑で受粉した花は、13861−1植物における雌性稔性を証明する果実および種子を作った。これらの種子は、苗ほ業界で知られている標準方法を用いて発芽させ、生育させた。結果として生じた後代は、生育可能な花粉の存在/欠失と園芸的性質の遺伝(例えば花の色、習性)を共に獲得した。F後代における優性遺伝子標識の存在は、後代が本当の雑種で、アポミクト(無性生殖)でないことを明確に証明した。表1に示した全てのF雑種後代は、花粉稔性であり、観察はコーン(Patterson、米国特許第3,861,079号)で報告されたような抑制劣性対立遺伝子がダイアレル(総当たり)で一貫したものである。F後代の自殖(表1参照)は、初めの雄性不稔植物(13861−1)におけるMSが劣性対立遺伝子に抑制されていることをさらに確認する。最後に、表2に示したように交雑試験は、MS表現型が劣性対立遺伝子により抑制されることを証明している。
【0010】
【表1】

【0011】
実施例4
カタランツスmsGSの展開
次にmsGS遺伝子を誘発および獲得するために、現存しているカタランツス品種およびMSバックグラウンドの間で交雑させた多数株は、表2に示したように作成された。これらの交雑から成長した世代(F、Fなど)は、全ての例において、カタランツス中のMSが劣性核(遺伝子)抑制で一致する正常型を遺伝した。さらに、このF種子は、雌機能(胚珠および種子成形能力)が、MS株に影響を与えない完全なものを作成した。F種子の収量は、故意に自殖したカタランツス花と少なくとも同量であり、MS遺伝子は、総合的な稔性の外観ではなく、とくに雄機能に作用することを示唆した。
【0012】
【表2】

【0013】
実施例5
MS遺伝子の作用形態
MSを有するカタランツス植物における他の顕微鏡検査は、完全な花粉機能の欠失を示している。正常に見える早期の花粉母細胞および花粒粉が減数分裂異常型を示すことは、観察されたMSに対して好ましくない説明である。雄性不稔突然変異体(1993年、Dawsonら、Can.J. Bot.71:629−638;1995年、Loukidesら、 Am J. Bot.82:1017−1023)は、タペータムセル(じゅうたん細胞)の異常な生育に関係していた。ツチヤら(1995年、Plant cell Physiol. 36:487−497)は、花粉四分子段階の初期に異常型カロース沈積が観察されたMSに説明できることを示している。カタランツスにおいて観察された分裂花粉の生育は、結果として部分的(13861−2)または全てのMS(13861−1)が分裂したカロース活性のモデルと一致し、結果としてMSとなった。
【0014】
実施例6
カタランツスにおけるMSの多面発現効果
BarおよびFrankel(1993年、Euphytica69:149−154)は、F雑種トマトの市場性生産高における7つの劣性MS対立遺伝子の影響を研究した。研究者らはいくつかのMS対立遺伝子が雌株の一般組合せ能力に影響すると結論を出した。本発明のカタランツスmsGS遺伝子は、表3に示す有効な品種生殖質中で交雑させた。重要な非組合せ能力は、育種家が体験するような品種間交雑における繁殖力の変化を予想以上にもたらすことはなかった。本発明におけるmsGS遺伝子および他の重要な園芸特性(例えば花、色、植物の大きさ、習性等)の間にはつながりがないことが観察されている。
【0015】
実施例7
多くの遺伝的環境におけるmsGS対立遺伝子の伝達
表3に示した、本発明のmsGS対立遺伝子は多種多様なカタランツス品種と交雑させた。それぞれの環境において、msGS対立遺伝子が予想された単一劣性対立遺伝子として分裂した。
【0016】
表3
予想される分離雄性不稔のmsGSと交雑させたカタランツス品種
リトルピンキー(Little Pinkie)
リトルブライトアイ(Little Bright Eye)
リトルブランチェ(Little Blanche)
リトルデリケイト(Little Delicate)
プリティー−イン−ピンク(Pretty in Pink)
プリティー−イン−ホワイト(Pretty in White)
プリティー−イン−ローズ(Pretty in Rose)
トロピカナローズ(Tropicana Rose)
トロピカナブライトアイ(Tropicana Bright Eye)
トリピカナピンク(Tropicana Pink)
トロピカナブラッシュ(Tropicana Blush)
ペパーミントクーラー(Peppermint Cooler)
グレープクーラー(Grape Cooler)
モーニングミスト(Morning Mist)
パシフィカレッド(Pacifica Red)
パシフィカホワイト(Pacifica White)
パシフィカピンク(Pacifica Pink)
パシフィカブラッシュ(Pacifica blush)
アプリコットデライト(Apricot Delight)
【0017】
実施例8
msGS遺伝子の分離および特徴化
本発明の雄性不稔遺伝子は、観察された雄性不稔表現型をコードするDNA配列である。DeCarolisおよびDeLuca(1994年、Plant Cell Tissue Culture38:281−287)の方法を用いることにより、msGS遺伝子が分離および特徴付けがされ、ここに引用される。Kaiら(1997年、Soil Sci. Plant Nutr.43:227−235)は、カタランツス ロセウス(Catharanthusroseus)からcDNAの分離および特徴付けのために用いられる方法論を記載し、ここに引用される。Kaiらの方法を使用したmsGS遺伝子はカタランツス組織から分離され、精製し、DNA配列の分析に基づいて構造の特徴付けが行われた。
【0018】
実施例9
カタランツスからのmsGS雄性不稔遺伝子を用いた形質転換
msGS雄性不稔遺伝子の分離および特徴付けの次に、当業界でよく知られた現存の形質転換プロトコルを、他の植物種中に遺伝子を挿入するために用いることができる。ここで引用されるHallardら(1997年、Plant Cell Reports17:50−54)は、当業界でよく知られた標準的な形質転換手順を使用したタバコ細胞および組織中に適当なプロモーターおよび挿入片との遺伝子組合せにしたがって、(外来遺伝子背景におけるツルニチニチソウ遺伝子の活性が記載された)カタランツス ロセウスから抽出された遺伝子をNicotiana tabacumに形質転換させた。実施例8に記載されたmsGS雄性不稔遺伝子に対する分離した遺伝子配列を用いることにより、雄性不稔遺伝子をプロモーターと組合せ、タバコのような他の植物種に形質転換させる。msGS遺伝子を宿主種に挿入させた後に、本発明の雄性不稔遺伝子はその宿主種で発現する。
【0019】
寄託情報
本発明の雄性不稔種子を用いた雑種カタランツス19238は、アメリカンタイプ カルチャー コレクション(ATCC)寄託機関に1998年、9月1日に寄託されており、寄託登録番号203176番である。本発明は、明瞭性および理解を得るために説明および実施例により詳細に記述されたが、変化および変更は本発明の範囲内で行えることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄性不稔のための対立DNA遺伝的因子を含むカタランツス種子。
【請求項2】
前記雄性不稔のための対立DNA遺伝的因子が、msGSである請求項1に記載のカタランツス種子。
【請求項3】
前記種子が、雄性不稔のための劣性対立遺伝子を含む請求項1に記載のカタランツス種子。
【請求項4】
請求項1に記載のカタランツス種子により生ずるカタランツス植物。
【請求項5】
請求項4に記載のカタランツス植物の花粉。
【請求項6】
請求項4に記載のカタランツス植物の胚珠。
【請求項7】
請求項4に記載のカタランツス植物の再生細胞を含む組織培養物。
【請求項8】
請求項7に記載の組織培養物から再生したカタランツス植物。
【請求項9】
第一親カタランツス植物と第二親カタランツス植物とを交雑し、接合したF雑種カタランツス種子の収穫を含む、F雑種カタランツス種子の製造方法であって、前記第一または第二親が、請求項4に記載のカタランツス植物である、F雑種カタランツス種子の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により製造される雑種種子。
【請求項11】
請求項10に記載の前記雑種種子を生育することにより製造される雑種植物またはその一部。
【請求項12】
請求項11に記載の前記雑種植物から製造される種子。
【請求項13】
製造された前記カタランツス種子が、1.0%未満の自家受粉した種子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
製造された前記カタランツス種子が、約0.80%〜約0.99%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
製造された前記カタランツス種子が、約0.60%〜約0.79%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
製造された前記カタランツス種子が、約0.40%〜約0.59%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
製造された前記カタランツス種子が、約0.20%〜約0.39%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
製造された前記カタランツス種子が、約0.01%〜約0.19%の自家受粉した種子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記カタランツス植物が雌植物である請求項9に記載の方法。
【請求項20】
請求項10に記載の雑種カタランツス種子を生育することにより製造される第一世代(F)雑種カタランツス植物の植物細胞。
【請求項21】
1998年、9月1日において、ATCCに登録番号203176で寄託した種子から生育させた、生育力のあるカタランツス種子および植物、およびその後代世代であり、雄性不稔対立遺伝子が前記寄託種子から転換されたカタランツス種子および植物。
【請求項22】
a)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子を分離し;
b)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子とプロモーターを結合させ;および
c)形質転換技術を用いて他の種に遺伝学的雄性不稔遺伝子を導入する
ことを含む、カタランツスから他のカタランツス種への遺伝学的雄性不稔遺伝子の転換方法。
【請求項23】
a)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子を分離し;
b)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子とプロモーターを結合させ;および
c)形質転換技術を用いて他の属に遺伝学的雄性不稔遺伝子を導入する
ことを含む、カタランツスから異なる属への遺伝学的雄性不稔遺伝子の転換方法。
【請求項24】
a)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子を分離し;
b)前記遺伝学的雄性不稔遺伝子とプロモーターを結合させ;および
c)形質転換技術を用いて他の系統群に遺伝学的雄性不稔遺伝子を導入する
ことを含む、カタランツスから異なる系統群への遺伝学的雄性不稔遺伝子の転換方法。

【公開番号】特開2009−77739(P2009−77739A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12540(P2009−12540)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【分割の表示】特願平11−300931の分割
【原出願日】平成11年10月22日(1999.10.22)
【出願人】(505400060)ゴールドスミス・シーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】