説明

カチオン化澱粉の製造方法

【課題】高品質のカチオン化澱粉を反応効率よく簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】澱粉に、水、及びアルカリ金属水酸化物を平均添加速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)0.0001〜0.1で添加して、澱粉を含有する混合物を得る工程(1)、及び得られた混合物に、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を添加し、反応系中の水の含有量が、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し4〜35重量部の条件下で、該澱粉をカチオン化反応させる工程(2)を有するカチオン化澱粉の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン化澱粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉をカチオン化する方法としては、有機溶媒法、水媒法、乾式法等が知られている。
特許文献1には、アルカリ及び少量の水の存在下で澱粉をカチオン化剤と反応させ、カチオン澱粉を製造する方法において、澱粉にアルカリを加えると同時に又はそれ以前に、炭素数1〜10の脂肪族一価アルコールを加え、澱粉に対するアルコールと水の量が特定量の状態下で、澱粉をカチオン化剤と反応させる方法が記載されている。
特許文献2には、一定量以下の水と低級アルコールとの混合溶媒中で、澱粉をアルカリ剤で処理し、その後グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を加えて反応させ、澱粉を僅かに湿った状態でカチオン化する方法が記載されている。
しかしながら、これらの方法では、添加するアルカリ剤やグリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を一括添加しており、更に低級アルコールを使用するため、反応効率が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−36501号公報
【特許文献2】特開平6−100603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高品質のカチオン化澱粉を反応効率よく簡便に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、アルカリ剤を特定の速度で添加した後、水や溶媒を低減した条件下で澱粉をカチオン化することにより、カチオン化澱粉を反応効率よく製造しうることを見出した。
すなわち、本発明は、下記工程(1)及び(2)を有するカチオン化澱粉の製造方法を提供する。
工程(1):澱粉に、水、及びアルカリ金属水酸化物を平均添加速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)0.0001〜0.1で添加して、澱粉を含有する混合物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合物に、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を添加し、反応系中の水の含有量が、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し4〜35重量部の条件下で、該澱粉をカチオン化させ、カチオン化澱粉を得る工程
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、白色度の高い高品質のカチオン化澱粉を反応効率よく簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のカチオン化澱粉の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有することを特徴とする。
工程(1):澱粉に、水、及びアルカリ金属水酸化物を平均添加速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)0.0001〜0.1で添加して、澱粉を含有する混合物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合物に、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を添加し、反応系中の水の含有量が、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し4〜35重量部の条件下で、該澱粉をカチオン化させ、カチオン化澱粉を得る工程
以下、本発明で用いられる各成分、工程について説明する。
【0008】
(澱粉)
本発明で用いられる澱粉については特に制限はなく、穀類、塊茎、根、豆、草本類等の植物由来の澱粉等を適宜使用することができる。植物由来の澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ハイアミロース・コーンスターチ、ワキシー・コーンスターチ等のとうもろこし由来の澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらの加工澱粉や各種処理澱粉等が挙げられる。
加工澱粉としては、澱粉に官能基を導入したものが挙げられ、具体例としては、アセチル化澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシアルキル化澱粉(ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉等)、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉等が挙げられる。
各種処理澱粉としては、例えば、ドラムドライヤーやエクストルーダー処理した糊化澱粉、酸やアルカリで化学的に処理した澱粉、酵素処理して得られる糊化澱粉、デキストリン、オリゴ糖等の澱粉加水分解物等が挙げられる。
上記の澱粉の中では、とうもろこし由来の澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、及びサゴ澱粉から選ばれる1種以上が好ましい。
これらの澱粉は、微細な粉末として用いるのが好ましく、また精製して不純物をできるだけ除いて使用することが好ましい。
【0009】
(アルカリ金属水酸化物)
本発明に用いられるアルカリ金属水酸化物は、原料澱粉とグリシジル基を有する4級アンモニウム化合物とが反応するときに、触媒として働くものである。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0010】
(グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物)
本発明においては、カチオン化剤として、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物(以下、単に「4級アンモニウム化合物」ともいう)を用いる。この4級アンモニウム化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
一般式(1)中、Yは、炭素数が1〜8、好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルカンジイル基を示し、R1、R2及びR3は、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数6〜12、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す。アリール基の好適例はベンジル基であり、ハロゲン原子の好適例は塩素原子である。
一般式(1)で表される4級アンモニウム化合物は、通常、常温で固体であって、水によく溶解する性質を有する。この化合物の好適例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0013】
〔工程(1)〕
工程(1)は、澱粉に、水、及びアルカリ金属水酸化物を平均添加速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)0.0001〜0.1で添加して、澱粉を含有する混合物を得る工程である。
工程(1)においては、予め水に溶解したアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることが好ましく、原料澱粉に、前記水溶液を加えた後、これをよく攪拌することが好ましい。これにより、原料澱粉の水酸基がアルカリ処理されて、アルコラートを形成する。
【0014】
本発明は、水を低減下し、本質的に有機溶媒を用いない条件下、アルカリ金属水酸化物を添加するため、反応効率、白色度の観点から、アルカリ金属水酸化物の平均添加速度を下記のとおりに行う。
澱粉に対するアルカリ金属水酸化物の平均添加速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)は、0.0001〜0.1であり、好ましくは0.0002〜0.05、より好ましくは0.0005〜0.01、更に好ましくは0.0008〜0.008である。
アルカリ金属水酸化物の添加速度は必ずしも一定でなくてもよく、連続であっても間欠していてもよいが、平均の添加時間として上記の範囲とする。
アルカリ金属水酸化物の添加方法は特に制限はないが、連続滴下が好ましい。
また、アルカリ金属水酸化物の添加量は、触媒としての反応効率と得られる澱粉の白色度の観点から、(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数)の比で、好ましくは0.001〜0.3、より好ましく0.01〜0.1である。
【0015】
反応系中のアルカリ金属水酸化物の添加量は、原料澱粉100重量部(乾燥重量)に対し、好ましくは1〜8重量部、より好ましくは1〜6重量部である。この範囲内では、カチオン化反応が均一に進行すると共に、カチオン化反応生成物が部分的に糊化せず、良好な製品を得ることができ、また、反応終了後、アルカリ金属水酸化物を酸によって中和するとき多量の塩が生成し、製品品質に悪影響を与えない。
アルカリ金属水酸化物の添加時の温度は、アルコラートの生成を円滑に進行させる観点から、好ましくは0〜40℃、より好ましくは10〜35℃に保持する。この添加時の温度は、例えば、混合装置のジャケットに流す冷却媒体の温度及びその流量で制御することができる。
【0016】
〔工程(2)〕
工程(2)は、工程(1)で得られた混合物に、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を添加し、反応系中の水の含有量が、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し4〜35重量部の条件下で、該澱粉をカチオン化させ、カチオン化澱粉を得る工程である。
【0017】
水は、澱粉とアルカリ金属水酸化物とを反応させて、澱粉のアルコラートを均一に生成するために必要である。
グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物は、水に溶解して水溶液の形態で用いることが好ましい。グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物水溶液を添加した後も攪拌を続け、カチオン化反応を進行させることが好ましい。
この場合、水の量は、添加する水(アルカリ金属水酸化物水溶液やグリシジル基を有する4級アンモニウム化合物水溶液を用いた場合はそれらに含まれる水を含む)と澱粉に含まれている水分も含めて、原料の澱粉の乾燥重量100重量部に対して、4〜35重量部であり、好ましくは10〜30重量部である。この範囲内では、アルコラートの生成を容易にすると共に、反応生成物の糊化を抑制し、反応効率の低下や着色を抑制する。また、該4級アンモニウム化合物が加水分解して反応性の低下も抑制する。
水は、乾燥した澱粉中にも通常数%程度含まれているので、湿った澱粉を用いる場合には水を加えなくてもよい場合がある。
【0018】
グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物は、前記澱粉の水酸基がアルカリ処理されたアルコラートと反応し、カチオン化される。アルカリ金属は、触媒として再利用される。従って、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物の添加速度を下記のように調節することが好ましい。
澱粉に対するグリシジル基を有する4級アンモニウム化合物の平均添加速度(グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)は、反応効率、白色度の観点から、好ましくは0.0001〜0.3、より好ましくは0.0005〜0.05、更に好ましくは0.0005〜0.01である。
添加速度は必ずしも一定でなくてもよく、連続であっても間欠していてもよいが、平均の添加時間として上記の範囲とする。
【0019】
グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物の添加量は、反応効率と得られる澱粉のシャンプーとしてのコンディショニング性の観点等から、澱粉が有する水酸基のモル数に対する該4級アンモニウム化合物のモル数の比(グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数)として、好ましくは0.0001〜0.3、より好ましくは0.001〜0.2、更に好ましく0.01〜0.1である。
グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物の添加量は、上記と同様の観点から、澱粉の乾燥重量100重量部に対して、好ましくは5〜60重量部であり、より好ましくは10〜40重量部である。
また、(グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドのモル数/アルカリ金属水酸化物のモル数)の比は、反応効率の観点から、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5である。
反応効率の観点から、水溶性有機溶媒、特にアルコール系水溶性有機溶媒が実質的に存在しない条件下で行うことが好ましい。「実質的に存在しない」とは、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し、反応系中の水溶性有機溶媒の含有量が、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下であることを意味する。アルコール系水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5のアルコールであり、他の水溶性有機溶媒として、アセトン等が挙げられる。
【0020】
グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物の添加時の温度は、反応を円滑に進行させる観点から、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜75℃に保持する。すると4級アンモニウム化合物は澱粉のアルコラートと反応してカチオン化物を生成する。得られたカチオン化物は、アルカリ性であるため、酸、例えば酢酸を加えて中和し、減圧乾燥して水を除くことにより、目的とする高品質のカチオン化澱粉を得ることができる。
混合反応時の温度は、例えば、混合装置のジャケットに流す冷却媒体の温度及びその流量で制御することができる。
【0021】
(混合反応器)
本発明で用いられる混合反応器に特に制限はない。例えば、ニーダー、プラネタリーミキサー、バンバリーミキサー等の混合装置を用いることができる。市販品の具体例としては、ニーダー(株式会社入江商会製)、レーディゲミキサー(レーディゲ社製)、プロシェアミキサー(太平洋機工株式会社製)、アキシャルミキサー(杉山重工株式会社製)、ナウタミキサー(ホソカワミクロン株式会社製)、ハイスピードミキサー(深江バウテック株式会社製)、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)等が挙げられる。
これらの中では、剪断応力が強く、また操作条件の制御が容易という観点から、ニーダーが好ましい。
ニーダーとしては、化学工学協会編「化学工学便覧」改訂五版(丸善株式会社発行)、917〜919頁に記載されているように、回分式と連続式とがあり、前者としては双腕型ニーダー等、後者としてはセルフクリーニング型ニーダー等が挙げられる。これらの中では、品種切替、槽内洗浄等の点から双腕型ニーダーが好ましい。
【0022】
双腕型ニーダーは、代表的には、2本の回転軸に固定された回転翼を撹拌槽下半部の双胴部に平行に取り付け、回転翼と撹拌槽、回転翼と回転翼の間隙を小さくし、混練操作を行うものである。回転翼は同速度又は異なった速度で、互いに反対方向の回転をし、剪断・圧縮作用等を与える。双腕型ニーダーには、常圧式(開放型)と加圧式(密閉型)とがあるが、いずれを用いることもできる。
ニーダーの回転翼の種類に特に制限はない。具体的には、バンバリー型、シグマ型、ゼット型、スパイラル型(135°スパイラル型、180°スパイラル型)、フィッシュテイル型、鋸歯状型等の回転翼を用いることができる。これらの中では、バンバリー型、シグマ型の回転翼が好ましい。
【0023】
(カチオン化澱粉)
上記のようにして得られたカチオン化澱粉は、必要に応じて、常法により、中和、洗浄、減圧乾燥を行うことができる。
得られたカチオン化澱粉は、繊維工業におけるたて糸用糊剤、排水処理における沈殿剤、製紙工業における紙力増強剤、歩留向上剤、中性抄造剤、香粧品分野におけるシャンプー、ヘアコンディショナー、スタイリング剤のコンディショニング剤及びスタイリング補助剤等の幅広い用途で好適に使用することができる。
【実施例】
【0024】
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。また、澱粉の水分率、反応効率、カチオン化物の置換度、白色度の測定は、下記の方法により行った。
(1)澱粉の水分率
赤外線水分計を用いて測定した。
(2)反応効率は、下記式(グアーガムを用いた場合)より算出した。
反応効率(%)=[(得られたカチオン化澱粉の置換度)×(澱粉の仕込量(g)/162)/(グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの仕込量(g)/152)]×100
上記式中、「152」はグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドの分子量であり、「162」は無水単糖ユニットの分子量である。
【0025】
(3)置換度
CHN元素分析計(エレメンタール社製、商品名:VARIO ELIII)によって測定した、カチオン化澱粉の窒素含有量(N)重量%から下記の式より算出した。
置換度=162N/(1400−152N)
この置換度は、カチオン化の程度を示すものであり、澱粉の無水単糖ユニット当りに付加したカチオン基のモル数を示す値である。
(4)白色度(WH)
色差計(コニカミノルタホールディングス株式会社製、CR−200)を用いて、カチオン化澱粉の粉体サンプルを入れた50mlのスクリュー管の底部より測定し、L***表色系において、WH=100−〔[100−(L*)]2+(a*2+(b*20.5の式より求めた。
【0026】
実施例1
〔工程(1)〕
1Lのニーダー(株式会社入江商会、商品名:PNV−1型、回転翼:シグマ型)に馬鈴薯澱粉(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)193部(水分率17%)を仕込み、48重量%水酸化ナトリウム水溶液8.3部を30分間かけて室温(20℃)で滴下混合した。
〔工程(2)〕
さらに30分間攪拌混合した後、容器内の圧力が26.7kPaになるまで減圧脱気し、窒素で常圧までリークする窒素置換を2回行なった。
攪拌しながら70℃まで加熱し、80重量%グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(純度90重量%、商品名SY−GTA80;阪本薬品工業株式会社製)40部を1時間かけて滴下混合した。
さらに、70℃で4時間混合した後、室温まで冷却し、酢酸で中和した。得られた中和物を85重量%の2−プロパノール水溶液で十分に洗浄し、未反応のグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド等を除去した後、乾燥して、カチオン化馬鈴薯澱粉を得た。
得られたカチオン化馬鈴薯澱粉の置換度は0.18、白色度は89であり、反応効率は95%という高い値であった。
【0027】
工程(1)、(2)における水酸化ナトリウム水溶液の平均滴下速度、4級アンモニウム化合物の平均滴下速度は、以下のとおりであった。
〔工程(1)〕
澱粉が有する水酸基のモル数は、
193×0.83×3(無水単糖当たりの水酸基の平均数)/162=2.97 である。
アルカリ金属水酸化物のモル数は、8.3×0.48/40=0.100 である。
従って、この場合の水酸化ナトリウム水溶液の平均滴下速度(水酸化ナトリウムのモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)は、
0.100/2.97/30=0.00112 であった。
〔工程(2)〕
グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドのモル数は、
40×0.8×0.9/152=0.189 である。
従って、この場合のグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液の平均滴下速度(グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)は、0.189/2.97/60=0.00106 であった。
【0028】
実施例2
実施例1で用いた馬鈴薯澱粉に換えて、とうもろこし澱粉(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、コーンスターチ)を用いた他は同様にして、カチオン化とうもろこし澱粉を得た。
得られたカチオン化とうもろこし澱粉の置換度は0.17、白色度は88であり、反応効率は89%という高い値であった。
【0029】
比較例1
〔工程(1)〕
1Lのニーダー(株式会社入江商会、商品名:PNV−1型、回転翼:シグマ型)に馬鈴薯澱粉(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製)150部(水分率17%)を加えた後、メタノール15部を加えて攪拌した。この混合物に固体状態の水酸化ナトリウム1.5部を2秒で加え、室温で2時間攪拌した。
〔工程(2)〕
80重量%グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液(純度90重量%、商品名SY−GTA80;阪本薬品工業株式会社製)60部、メタノール15部及びイソプロパノール15部との混合溶液を5秒で加えた。容器内の圧力が26.7kPaになるまで減圧脱気し、窒素で常圧までリークする窒素置換を2回行ない、60℃に加熱して5時間攪拌した。
その後、酢酸で中和し、85重量%の2−プロパノール水溶液で十分に洗浄し、乾燥して、カチオン化馬鈴薯澱粉を得た。
得られたカチオン化馬鈴薯澱粉の置換度は0.29、白色度は89であり、反応効率は78%という低い値であった。
【0030】
工程(1)、(2)における水酸化ナトリウム水溶液の平均滴下速度、4級アンモニウム化合物の平均滴下速度は、以下のとおりであった。
〔工程(1)〕
澱粉が有する水酸基のモル数は、
150×0.83×3(無水単糖当たりの水酸基の平均数)/162=2.3 である。
アルカリ金属水酸化物のモル数は、1.5/40=0.0375 である。
従って、この場合の水酸化ナトリウム水溶液の平均滴下速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)は、
0.0375/2.3/0.033=0.49 であった。
〔工程(2)〕
グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドのモル数は、
60×0.8×0.9/152=0.284 である。
従って、この場合のグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド水溶液の平均滴下速度(グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)は、
0.284/2.3/0.083=1.487 であった。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、澱粉を低含水量の反応系で反応させるため、攪拌が容易であり、大きな反応容器を必要とせず、かつ効率よくカチオン化反応を進行させることができる。また、得られたカチオン化澱粉は、高品質であり、化粧料、洗浄料、繊維処理剤等の原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2)を有するカチオン化澱粉の製造方法。
工程(1):澱粉に、水、及びアルカリ金属水酸化物を平均添加速度(アルカリ金属水酸化物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)0.0001〜0.1で添加して、澱粉を含有する混合物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合物に、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を添加し、反応系中の水の含有量が、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し4〜35重量部の条件下で、該澱粉をカチオン化させ、カチオン化澱粉を得る工程
【請求項2】
工程(1)において、反応系中のアルカリ金属水酸化物の添加量が、澱粉100重量部(乾燥重量)に対し1〜8重量部である、請求項1に記載のカチオン化澱粉の製造方法。
【請求項3】
工程(2)において、アルコール系水溶性有機溶媒が実質的に存在しない条件下でカチオン化させる、請求項1又は2に記載のカチオン化澱粉の製造方法。
【請求項4】
工程(2)において、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を、平均添加速度(グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物のモル数/澱粉が有する水酸基のモル数/分)0.0001〜0.3で添加する、請求項1〜3のいずれかに記載のカチオン化澱粉の製造方法。

【公開番号】特開2010−180320(P2010−180320A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24845(P2009−24845)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】