説明

カチオン性化工デンプンを含む吸収性製品

例えば、生理用パッド、パンティライナー、又はタンポンなどの女性用保護に用いる、カチオン性化工デンプンを含む吸収性製品。このデンプンは、アンモニア基を含むカチオン化剤によって改変され、このカチオン化剤の置換度は約0.070〜0.50未満である。本発明の一つの態様において、カチオン性化工デンプンは実質的に不溶性ではない。本発明の別の態様において、カチオン性化工デンプンは架橋剤によって架橋されており、この架橋剤は、デンプンの重量に対して約100ppm〜約4000ppmの濃度でデンプンと反応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生理用パッド、パンティライナー、又はタンポンなどの女性用保護に用いる、カチオン性化工デンプンを含む吸収性製品に関連する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン及びおむつなど、多くの市販されている使い捨て吸収性製品は、合成の超吸収性ポリマー(SAP)(典型的には、ポリアクリレート類)を含み、体液の吸収及び保持の特性を提供する。このような合成の吸収性材料は、脱イオン水に対しては優れた吸収能力を呈するが、経血のように電解質/塩を含む溶液に対する吸収能力は低くなる。電解質、タンパク質及び細胞(経血においては主に赤血球)の存在が、吸収性ゲル化材料の膨潤プロセスを阻害することが考えられている(参考文献、P.K.Chatterjee,B.S.Gupta,「Absorbent Technology」Elsevier 2002;pages 455〜457を参照)。
【0003】
合成の超吸収性ポリマーは、尿などの単純な液体を吸収するには非常に良くはたらくことが見出されているが、吸収される液体の少なくとも一部が月経液である女性用ケア製品用途においては、その良好な性能は消失する。これは、女性用ケア製品が月経液を効率的に吸収できないことにつながり、ついには漏れを起こしてユーザーの衣類を汚すことになり得る。
【0004】
米国特許第2004/0122390A1号は、低蒸発性吸収性製品を開示している。この低蒸発性吸収性製品は、吸収性製品の吸収性コアに処理剤を含んでおり、これが活性化されると、吸収性コア中にある膨潤した超吸収性製品をコーティングし、ここからの蒸発を低減する。いくつかの好適な処理剤が開示されており、これには、カチオンデンプン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、塩酸塩、及びトレハロースが挙げられる。
【0005】
英国特許第1,576,475号は、0.001〜0.02の架橋結合基の置換度を有し、これがエーテル連結によってデンプンに引き付けられるイオン基で置換される、吸収性架橋デンプン材料を開示している。この開示されているデンプン誘導体は、少なくとも90%の不溶性炭水化物を含み、実質的に非水溶性である。しかしながら、本発明者らは、これらの非水溶性デンプン誘導体は、固定化される液の少なくとも一部分に経血が含まれる女性用ケア製品用途には最適でないこと見出した。理論に束縛されるものではないが、英国特許第1,576,475号において教示されている、不溶性をもたらす比較的高量の架橋剤は、タンパク質及び赤血球などの経血に含まれる特定物質が化工デンプンと反応するのを妨げ得ると考えられている。
【0006】
米国特許第5,780,616号は、超吸収性特性を有するカチオン性多糖類を開示している。この多糖類は、少なくとも0.5の比較的高い置換度を有する、四級アンモニウム基で置換されている。この多糖類は、好ましくはセルロースである。この多糖類は、水中で不溶性であり続けるよう十分な度合で架橋している。
【0007】
国際公開特許第2006/029519A1号は、グアニジン酸化多糖類とその吸収材としての使用について開示している。デンプンは該当し得る多糖類として記述されているが、すべての実施例はキトサン系である。
【0008】
米国特許第6,887,564号(Procter & Gamble取得)は、キトサン材料及びアニオン性吸収性ゲル化材料を含む、使い捨て吸収性製品を開示している。ただし、これまでのところ、キトサン材料の高コスト性が、その商用利用を阻んでいる。
【0009】
上記の検討から、手頃な価格において経血を固定化する高い能力を有する材料のニーズが存在する。
【0010】
ここで驚くべきことに、特定のカチオン性化工デンプンは、女性用保護のための吸収性製品においてキトサン誘導体に匹敵する性能を提供することができる。本発明の化工デンプンは、これまでに提案されてきたものよりも高い水溶性を有し得る。この本発明の化工デンプンは、これまでに提案されてきたものよりも比較的低濃度の架橋剤を使用することによって合成し得る。更に、これまでに提案されてきたものよりも四級アンモニウム基の置換度が比較的に低い方が、女性用保護用途に適切であることが見出されている。
【0011】
カチオン性化工デンプンは、豊富に入手できる原材料(デンプン)から得られ、キトサン塩に比べて潜在的に安価であるという利点を更に有し得る。
【0012】
本発明のカチオン性化工デンプンは、経血などのタンパク質性液の存在下で特に高い性能を発揮して流体処理効果をもたらし、これまでに記述された他のデンプン誘導体よりも血液系の液の粘度を高める能力に優れている可能性がある。理論に束縛されるものではないが、本発明のカチオン性化工デンプンは、経血の固定化を最適化するような独特の特性組み合わせを有すると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2004/0122390A1号
【特許文献2】英国特許第1,576,475号
【特許文献3】米国特許第5,780,616号
【特許文献4】国際公開特許第2006/029519A1号
【特許文献5】米国特許第6,887,564号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】P.K.Chatterjee,B.S.Gupta,「Absorbent Technology」Elsevier 2002;pages 455〜457を参照
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、カチオン性化工デンプンを含む女性用保護のための吸収性製品に用いるものであり、前記カチオン性化工デンプンは、アンモニウム基を含むカチオン化剤によって改変されたデンプンを含み、カチオン化剤の置換度は約0.070〜0.50未満である。本発明の一つの態様において、カチオン性化工デンプンは、実質的に非水溶性ではない。本発明の別の態様において、カチオン性化工デンプンは架橋剤によって架橋されており、この架橋剤はデンプンの重量に対して約100ppm〜約4000ppmの濃度で反応する。
【0016】
別の態様において、本発明は更に、次の工程:
−デンプンとアンモニウム基を含むカチオン化剤とを反応させることにより、約0.070〜0.50未満のカチオン化剤の置換度を有するカチオン性化工デンプンを得る工程と、
−同じ工程又は別の工程において、デンプンの重量に対して約100ppm〜約4000ppmの架橋剤の濃度でデンプンと架橋剤とを反応させる工程と、
−上記の工程で得られたカチオン性化工デンプンを、女性用保護のための吸収性製品の構成材(例えば、吸収性コア)に適用する工程と、
−上記の構成材を使用して、女性用保護のための吸収性製品を製造する工程と、を含む、女性用保護のための吸収性製品の製造方法のためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「女性用保護のための吸収性製品」とは、経血を吸収するために女性が通常使用する製品、及び軽度〜中程度の成人の失禁用製品を意味する。これらの製品は通常使い捨てであり、すなわち使用後に廃棄される。女性用保護のための通常の吸収性製品には、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン、及び陰唇間パッドなどの経血吸収性製品が挙げられるが、小児用おむつは含まれない。
【0018】
本明細書で使用される用語「カチオン性化工デンプン」は、デンプンと好適なカチオン化剤との間の反応生成物を指す。通常、カチオン性化工デンプンは、pH3〜10の範囲の水溶液、特にpH5〜9の間の水溶液中で、正味の正電荷を有し得る。
【0019】
本発明の女性用保護のための吸収性製品は、カチオン性化工デンプンを含む。カチオン化工前のデンプンの供給源は、塊茎類、豆科植物類、穀物、及び穀粒類を包含する任意の通常の供給源から選択することができる。このデンプン供給源の非限定的な例としては、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、もち性コーンスターチ、オート麦デンプン、キャッサバデンプン、もち性大麦、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
デンプン、特に天然のデンプンは、グルコース単位からなるポリマーを含む。二つの異なる種類のポリマーがある。ポリマーの種類の一方はアミロースであり、他方はアミロペクチンである。一つの実施形態において、本発明のカチオン性デンプンは、アミロペクチンを約90〜100重量%、より具体的には約95重量%の濃度で含むデンプンからなり得る。
【0021】
カチオン性化工デンプンを製造するためのさまざまな方法が当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第2,813,093号及び同第4,281,109号に開示されているものを参照のこと。デンプンのカチオン性化工を含む、及び含まない、架橋デンプンのためのさまざまな方法も既知であり、例えば、米国特許第5,780,616号及び国際公開特許第92/19652号を参照のこと。本発明に使用されるカチオン性化工デンプンは、これら既知の化学反応を使用して当業者によって容易に製造することができる。本発明の化工デンプンの製造に使用されるカチオン化剤は、アンモニウム基を含む。
【0022】
アンモニウム基を含む好適なカチオン化剤には、例えば、米国特許第5,780,616号第4列第5行〜第5列第15行に記載の実施例が挙げられる。特に、下記の実施例:
−グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド
−下記の構造式を有する2,3−エポキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(Degussa A.G.より70%水溶液としてQUAB 151の名で市販、又はFlukaより固体純化合物として製品コード50045で市販):
【化1】

−下記の構造式を有する3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(CAS番号3327−22−8、Degussa A.G.より65%水溶液としてQUAB 188の名で市販):
【化2】

−下記の構造式を有する3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N−ジメチルエタノールアンモニウムクロリド(Degussa A.G.より65%水溶液としてQUAB 218の名で市販)、(「DEC」、CAS番号869−24−9):
【化3】

−1,3−ビス−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム)−N−プロパンジクロリド(Degussa A.G.より65%水溶液としてQUAB 388の名で市販)、
これらの中でも特に有利な第四級アンモニウム化合物は、2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、及びジエチルアミノエチルクロリド塩酸塩である。
【0023】
国際公開特許第2006/029519号に教示されているグアニジン系のカチオン化剤も使用することができるが、ただしこれらは、上記のカチオン化剤よりも高価であり、反応させるのがより困難であり得る。よって、本発明のカチオン性化工デンプンがグアニジン酸化デンプンでない方が有利であり得る。
【0024】
カチオン化剤による多糖類のカチオン化の度合は、カチオン化剤による多糖類の反応基の置換度(本明細書において「カチオン化剤の置換度」)を用いることによって表現することができる(これは当該技術分野において一般的であり、例えば、米国特許第5,780,616号、英国特許第1576475号、米国特許第7,135,451B1号を参照)。カチオン化剤の置換度は、従来の任意の方法で測定することができ、例えば、国際公開特許第92/19652号に開示されている方法、又は米国特許第7,135,451号第3列に開示されている方法、又は例えば、化工デンプンに結合した窒素の量を測定する元素分析に基づく方法(カチオン化剤がアンモニウム基系である場合)が挙げられる。これらの方法はすべて、当該技術分野において周知である。
【0025】
先行技術文書の少なくとも一部は、吸収材用途のために比較的高濃度のカチオン化剤を使用するよう教示しているが(例えば、米国特許第5,780,616号は、カチオン化剤の置換度を少なくとも0.5と教示している)、本発明者らは驚くべきことに、カチオン化剤のより低い置換度での化工デンプンが、経血を固定化することについて同程度又はむしろ良好な利益をもたらし得ることを見出した。本発明のカチオン性化工デンプンは、約0.070〜約0.50未満の範囲、特に約0.10〜約0.45の範囲、又は約0.15〜約0.40の範囲のカチオン化剤の置換度を有する。
【0026】
先行技術文書の少なくとも一部が不溶性化工デンプンを使用するよう教示している一方で、発明者らは、本発明の化工デンプンが比較的可溶性であり、かつ望ましい特性をもたらし得ることを見出した。よって、本発明の一つの態様において、本発明の化工デンプンは実質的に非水溶性ではない。「実質的に非水溶性ではない」という表現は、例えば、英国特許第1,576,475号に開示されている試験での測定で、非水溶性炭水化物を90重量%未満含むことを意味する。より具体的には、本発明の化工デンプンは非水溶性炭水化物を85%未満、又は80%未満、又は更には75%未満含み得る。一つの実施形態において、本発明の化工デンプンは完全に水溶性であり得る。溶解度データは、次のように測定することができる:
化工デンプン(1g)を蒸留水(100mL)中に入れ室温(21℃)で15分間攪拌してスラリーにする。このスラリーを8時間静置してから、濾過する。濾液中の溶解した炭水化物を、可溶性炭水化物測定用のフェノール/硫酸試験を利用した既知の比色分析法によって測定する。この測定において、試験溶液試料1mLにフェノール溶液(5w/v%)1mLを加え、次に濃硫酸5mLを加えて、この液を1分間手で混ぜる。1時間静置して冷ました後、可溶性炭水化物の濃度を、紫外線分光光度計(例えば、Unicam SP 800又は同様のもの)を使用して、グルコース標準を参照することにより483nmでのピークでの吸光度から測定する。
【0027】
化工デンプンの溶解度は通常、使用される架橋剤の量によって高められる。先行技術の少なくとも一部分(例えば、英国特許第1,576,475号)は、この化工デンプンを実質的に非水溶性にするために、高度の架橋を使用するよう教示しているが、発明者らは、比較的低濃度の架橋が、女性用ケア製品用途に有利であることを見出した。ただし、本発明の化工デンプンは、特に加工性を高め、かつ合成中の化工デンプンの回収率を高めるため、依然として有利なように架橋させることができるが、架橋の度合は、先行技術の少なくとも一部分に開示されているよりも有利なように低くすることができる。
【0028】
化工デンプンの架橋の度合、及びこれによる化工デンプンの溶解度は、合成中に当業者により制御することができ、特に反応混合物中の架橋剤の濃度を変えて、望ましい量の架橋を得ることができる。
【0029】
本発明の別の態様において、反応混合物中の約100ppm〜約4000ppm(百万分の一)の架橋剤の濃度は、望ましい量の架橋を得るのに有利であり得る。より具体的には、範囲は約150ppm〜3500ppm、及び約200ppm〜3000ppmである。「ppm」という表現は、架橋されるデンプン材料の重量当たりの重量単位で表現される架橋剤の相対的量を意味し、百万分の一単位として表わされる。
【0030】
架橋の量は、この架橋剤による化工デンプンの置換度を参照することによって表現することもでき(本明細書において「架橋剤の置換度」と記載される)、これは有利なように0.0010未満であり、例えば、約0.00005〜約0.00095であり、又は約0.00010〜約0.00080である。架橋剤の置換度は、文献中に時折使用されている(例えば、英国特許第1,576,475号及び米国特許第US3,622,562号を参照)。
【0031】
好適な架橋剤には、例えば次のものが挙げられる:
−ホルムアルデヒド
−メチロール化窒素化合物(例えば、ジメチロール尿素、ジメチロールエチレン尿素、及びジメチロールイミダゾリドンなど)
−ジカルボン酸(例えば、マレイン酸など)
−ジアルデヒド類(例えば、グリオキサールなど)
−ジエポキシド類(例えば、1,2:3,4−ジエポキシブタン及び1,2:5,6−ジエポキシヘキサンなど)
−ジイソシアネート類
−ジビニル化合物(例えば、ジビニルスルホンなど)
−ジハロゲン化合物(例えば、ジクロロアセトン、ジクロロ酢酸、1,3−ジクロロプロパン−2−オール、ジクロロエタン、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジクロロ−1−プロパノール、及び2,2−ジクロロエチルエーテルなど)
−ハロヒドリン類(例えば、エピクロロヒドリンなど)
−ビス(エポキシプロピル)エーテル
−ビニルシクロヘキセンジオキシド
−エチレングリコール−ビス(エポキシプロピル)エーテル
−1,3−ビス(β−ヒドロキシ−γ−クロロプロポキシ)−2−プロパノール
−1,3−ビス(β−ヒドロキシ−γ−クロロプロポキシ)エタン
−メチレンビス(アクリルアミド)
−N,N’−ジメチロール(メチレンビス(アクリルアミド))
−トリアクリロールヘキサヒドロトリアジン
−アクリルアミドメチレンクロロアセトアミド
−2,4,6−トリクロロピリミジン
−2,4,5,6−テトラクロロピリミジン
−塩化シアヌル
−トリアリルシアヌレート
−オキシ塩化リン
−ビス(アクリルアミド)酢酸。
【0032】
特に、エピクロロヒドリン(「EPI」)及びオキシ塩化リン(「POCl3」)は、この種の反応に一般的に使用されており、利点があると見なされ得る。
【0033】
上記のように、架橋あり又はなしで本発明のカチオン性化工デンプンを製造するための方法は、当該技術分野において周知である。
【0034】
このカチオン性化工デンプンは、数多くの方法で吸収性製品に適用することができる。例えば、このカチオン性化工デンプンの水溶液又は溶媒溶液を適用することができる。また、乾燥粉末形態のカチオン性化工デンプンを適用することも可能である。カチオン性化工デンプンは、吸収性製品の一つの構成材に適用してから、この構成材を製品の製造に使用することができる。例えば、生理用ナプキン又はパンティライナーなどの吸収性製品については、通常は、液体透過性トップシートと、バックシートと、バックシートとトップシートの中間にある吸収性コアとが含まれているが、このカチオン性化工デンプンをこれらの任意の構成材に適用することができる。有利なように、カチオン性化工デンプンは、コアに適用することができる。その場合、カチオン性化工デンプンは、吸収性コアの表面の片方又は両方(例えば、コアの身体側に向く面、コアの衣類側に向く面、又はコアの両方の面)に、部分的又は全面的に適用することができる。カチオン性化工デンプンは更に、表面コアの一つの中央部分に適用することができ、又はコアの二つの側辺に沿って縞状に適用することができる。また、吸収性製品の構成材の一つの中に、カチオン性化工デンプンを適用するよう考えることもできる。例えば、いくつかの層の積層体として製造されたコアについて、それらの層のうち、コアの外側表面でないある表面に、カチオン性化工デンプンを適用することができる。カチオン性化工デンプンは更に、この製品の他の構成材、存在するなら、例えばバックシート又はトップシートに、適用することもできる。
【0035】
カチオン性化工デンプンの水溶液をスプレーするとき、この水溶液は典型的に、溶液の重量に対して約3重量%〜約6重量%の濃度のカチオン性デンプンを含み得る。溶媒溶液については、より高い濃度を使用できると考えられ、例えば、溶液の重量に対して約6重量%〜約60重量%が使用できる。
【0036】
カチオン性化工デンプンは、吸収性製品の個々の構成材に有利なように適用してから、その構成材を他の構成材と共に組み合わせて製品を形成することができ、あるいは最終製品に適用することもできる、ということが考えられる。よって本発明は更に、次の工程:
−デンプンとアンモニウム基を含むカチオン化剤とを反応させることにより、約0.070〜0.50未満のカチオン化剤の置換度を有するカチオン性化工デンプンを得る工程と、
−同じ工程又は別の工程において、デンプンの重量に対して約100ppm〜約4000ppmの架橋剤の濃度でデンプンと架橋剤とを反応させる工程と、
−上記の工程で得られたカチオン性化工デンプンを、女性用保護のための吸収性製品の構成材に適用する工程と、
−構成材を使用して、女性用保護のための吸収性製品を製造する工程と、を含む、女性用保護のための吸収性製品の製造方法のためのものである。
【0037】
このカチオン性化工デンプンは、構成材を使用して吸収性製品を製造する前に、又は製造後に、その構成材に適用することができる。有利なように、このカチオン性化工デンプンを適用する工程は、構成材を使用して女性用保護のための吸収性製品を製造する工程より前に行うことができる。例えば、このカチオン性化工デンプンを、吸収性コアに適用してから、その吸収性コアを使用して吸収性製品を製造することができる。
【0038】
吸収性コアを本発明の製品に使用する場合、任意のタイプの吸収性コアを使用することができる。標準的コアは通常、セルロースパルプの毛羽基質、又はセルロースパルプと合成繊維の混合物を含む。コアには更に、例えば、ポリアクリレート系ゲル化材料などの標準的な合成超吸収性材料も含まれ得る。例えば、欧州特許第1447067号に開示されているような薄いコアも使用することができる。
【0039】
本発明の吸収性製品は、例えば吸収材コアの中に、アニオン性吸収性ゲル化材料を更に含むことができる。
【0040】
経血を固定化することについての本発明のカチオン性化工デンプンの利点は、下記の実施例によって説明される。
【0041】
実験
カチオン性化工デンプンの実施例
四級の化工デンプンのいくつかの実施例を、下記のように調製した。
【0042】
コードID:01−8、13−1、13−2a、13−3を有するカチオン性化工デンプンは、T.Heinze,V.Haack and S.Rensing,「Starchs Derivatives of High Degree of Functionalization:Preparation of Cationic 2−hydroxypropyltrimethylammonium chloride Starches」,Starch/Starke 56(2004),pp.288〜296に従って、全般に合成された。研究者らは、イソプロパノールの代わりにここでエタノールを溶媒として使用した。コードID:10−1、14−1、14−2、14−3、01−2、及び01−7を有するカチオン性化工デンプン(四級アンモニウム誘導体)は、米国特許第2,813,093A号(National Starch取得)に従って全般に合成された。デンプン系材料は、もち性のものであった。カチオン化剤は、2,3−エポキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(QUAB 151として市販)であった。
【0043】
粘弾性的分析
経血を固定化することにおいての化工デンプンの効果を比較する一つの代表的な方法は、例えば下記に示すような、粘弾性的分析によって行うことができる。
【0044】
試料調製:カチオン性化工デンプンの5重量%水溶液を調製し、カチオン性デンプン粉末0.25gを12×12cmのペトリ皿に計り取る。次に蒸留水4.75gを加え、ペトリ皿内に均質なゲルが形成されるまでこの混合物をかき混ぜる。
【0045】
ゲル化後、ペトリ皿を、温度設定45℃の換気された炉内に8時間置き、完全に乾燥させる。
【0046】
ペトリ皿を乾燥させると、乾燥したカチオン性化工デンプンの粉末層が生じる。ペトリ皿を炉から取り出し、1時間室温に置いて均衡化させる。
【0047】
乾燥したカチオン性ポリマー層に、ゆっくりとAMF(人工月経液、後述)4.75gを加え、表面全体を濡らす。加えた後、この材料を更に5分間スパチュラで混合し、均質なゲルを得る。
【0048】
粘弾性特性の評価:粘弾性パラメータ(G’)を、隙間2mmで配置した40mmの平行プレート形状を用い、40Hz、37℃で測定した。この装置は、Reologica Instruments Inc(231 Crosswicks road Bordentown,NJ 08505 USA)から供給されたstress tech HRであった。この装置を、隙間2mmで配置した40mmの平行プレート形状を使用して操作した。使用したソフトウェアは、RheoExplorerバージョン5.0.40.38であった。
【0049】
G’は弾性率であり、40Hzで測定した値が、カチオン性化工デンプンが人工月経液を濃化する能力を表わすと考えられる。
【0050】
AMF(人工月経液)の調製
人工月経液(AMF)は、ヒツジの変性血液を基本にしており、これは、粘度、導電性、表面張力、及び外観の点でヒトの月経液に確実に酷似するように、変性されたものである。
【0051】
試薬:
フィブリン除去したヒツジの血液が、Unipath S.p.A.(イタリア・ガルバニャーテミラネーゼ)から入手できる。
乳酸、J.T.Baker Hollandから入手、試薬グレード(85〜95w/w)。
水酸化カリウム(KOH)、Sigma Chemical Co.USAから入手、試薬グレード。
リン酸緩衝生理食塩水錠剤、Sigma Chemical Co.USAから入手、試薬グレード。
塩化ナトリウム、Sigma Chemical Co.USAから入手、試薬グレード。
胃ムチン、Sigma Chemical Co.USAから入手、タイプIII(CAS 84082−64−4)。
蒸留水。
【0052】
工程1:乳酸粉末及び蒸留水の溶解により、9±1%の乳酸溶液を調製する。
工程2:KOH粉末を蒸留水に溶かすことにより、10%水酸化カリウム溶液を調製する。
工程3:錠剤を指示に従い1Lの蒸留水に溶かすことにより、pH=7.2に緩衝化したリン酸緩衝溶液を調製する。
工程4:リン酸緩衝溶液460±5mL、KOH溶液7.5±0.5mLの組成物の溶液を調製し、45±5℃までゆっくり加熱する。
工程5:工程4で調製した予熱した(45±5℃)溶液中に、約30グラムの胃ムチンをゆっくりと溶かすことにより(一定の速度で攪拌して)、粘液状溶液を調製する。溶けたら、溶液温度を50〜80℃まで上げ、混合液に覆いをして約15分間置く。加熱を弱め、40〜50℃の比較的一定温度を保持し、2.5時間攪拌し続ける。
工程6:溶液をホットプレートから外し、溶液(工程5)を冷まして40℃未満にする。10%乳酸溶液2.0mLを加え、2分間よくかき混ぜる。
工程7:この溶液をオートクレーブに入れ、温度121℃で15分間加熱する。
工程8:この溶液を室温まで冷まし、フィブリン除去したヒツジの血液を1対1の割合で希釈する。
【0053】
AMFを調製した後、その粘度、pH、及び導電率を測定し、その血液特性が通常の経血に近い範囲であることを確認する(参照文献、H.J.Bussing 「Zur Biochemie de Menstrualblutes」Zbl Gynaec,179,456(1957)を参照)。粘度は、7〜8の範囲にあるべきである(単位cStK)。pHは6.9〜7.5の範囲、導電率は10.5〜13(単位mmho)の範囲にあるべきである。粘度が上記に指定された範囲にない場合は、これを使用すべきではなく、新しいAMFバッチを調製する必要がある。AMF溶液は常に攪拌し続け、その構成材が使用前に分離しないようにしなければならない。溶液は、調製から4時間以内に限り使用すべきである。
【0054】
結果
【表1】

【0055】
上記のように、G’値が高いほど、化工デンプンが吸収性製品中で経血をより良く固定化することができると考えられる。この表は、本発明によるカチオン性化工デンプンが、経血固定化の利点をもたらすことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性化工デンプンを含む女性用保護のための吸収性製品であって、前記カチオン性化工デンプンが、アンモニウム基を含むカチオン化剤によって改変されたデンプンを含み、前記カチオン化剤の置換度が0.070〜0.50未満であり、好ましくは0.10〜0.45であり、前記カチオン性化工デンプンが実質的に不溶性ではないことを特徴とする、女性用保護のための吸収性製品。
【請求項2】
前記カチオン性化工デンプンが架橋剤によって架橋されている、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記架橋剤が、前記デンプンの重量に対して100ppm〜4000ppm、好ましくは400ppm〜3000ppmの架橋剤の濃度で前記デンプンと反応する、請求項2に記載の吸収性製品。
【請求項4】
カチオン性化工デンプンを含む女性用保護のための吸収性製品であって、前記デンプンが、アンモニウム基を含むカチオン化剤によって改変され、前記カチオン性化工デンプンが架橋剤によって架橋され、前記架橋剤の置換度が0.070〜0.50未満であり、前記架橋剤が、デンプンの重量に対して100ppm〜4000ppmの架橋剤の濃度で前記デンプンと反応することを特徴とする、女性用保護のための吸収性製品。
【請求項5】
前記製品が、生理用ナプキン、パンティライナー、タンポン、及び陰唇間パッドからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性製品。
【請求項6】
前記製品が、液体透過性トップシートと、バックシートと、前記バックシートと前記トップシートの中間にある吸収性コアとを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性製品。
【請求項7】
前記カチオン性化工デンプンが、前記吸収性コアの表面のうち少なくとも一つの少なくとも一部に適用される、請求項6に記載の吸収性製品。
【請求項8】
前記カチオン性化工デンプンが、適用領域の平方メートル当たりの前記カチオン性化工デンプンの重量で、0.5g/m〜500g/mの濃度、好ましくは1〜50g/mの濃度で、前記表面に適用される、請求項7に記載の吸収性製品。
【請求項9】
前記架橋剤がエピクロロヒドリン又はPOClである、請求項2〜9のいずれか一項に記載の吸収性製品。
【請求項10】
アニオン性吸収性ゲル化材料を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性製品。
【請求項11】
デンプンとアンモニウム基を含むカチオン化剤とを反応させることにより、0.070〜0.50未満のカチオン化剤の置換度を有するカチオン性化工デンプンを得る工程と、
同じ工程又は別の工程において、デンプンの重量に対して100ppm〜4000ppmの架橋剤の濃度で前記デンプンと架橋剤とを反応させる工程と、
上記の工程で得られた前記カチオン性化工デンプンを、女性用保護のための吸収性製品の構成材に適用する工程と、
前記構成材を使用して、女性用保護のための吸収性製品を製造する工程と、
を含む、女性用保護のための吸収性製品の製造方法。
【請求項12】
前記カチオン性化工デンプンを適用する前記工程が、前記構成材を使用して女性用保護のための吸収性製品を製造する前記工程よりも前に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カチオン性化工デンプンが適用された前記構成材が、吸収性コアである、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記カチオン性化工デンプンが、前記構成材の表面のうち少なくとも一つの少なくとも一部に、好ましくは水溶液又は溶媒溶液をスプレーすることによって適用される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記カチオン性化工デンプンが、適用領域の平方メートル当たりの前記カチオン性化工デンプンの重量で、0.5g/m〜500g/mの濃度、好ましくは1〜50g/mの濃度で適用される、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2011−520532(P2011−520532A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509801(P2011−509801)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/044472
【国際公開番号】WO2009/143119
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】