説明

カチオン性脂質

本発明は、カチオン性脂質に関する。より詳細には、本発明は、複数のカチオン性先端基および1または複数の脂肪親和性末端基を有する生分解性カチオン性脂質に関する。脂質は、種々の用途、特に、分子、特にDNAおよびRNAの細胞内へのトランスフェクションを可能にするのに有用なものである。そのようなものとして、脂質は、遺伝子治療の分野のみならず、医療または産業の用途における小さい分子の細胞内への送達、界面活性剤、および金属イオン錯体形成などの他の用途における特定の有用性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性のカチオン性脂質に関する。より詳細には、本発明は、複数のカチオン性の先端基及び1種又は複数の脂肪親和性の末端基を有するカチオン性脂質に関する。脂質は、様々な用途に、特に分子、詳細にはDNA及びRNAの細胞へのトランスフェクションを可能にするのに有用なものである。そのようなものとして、脂質は、遺伝子治療に加えて、医療又は産業用途における細胞への小さい分子の送達、洗剤、及び金属イオンの錯体形成などの他の用途の分野における特定の有用性を有する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学のツール又は可能性のある治療としてのウイルスの遺伝子の送達は、疑いもなく、現在までに見出されているDNA送達又はトランスフェクションの最も有効な方法である。しかしながら、ウイルスベクターは非ウイルスベクターより概して有効であるが、抗原性、製造コスト、カーゴの限られたサイズなどのウイルスベクターの不利益のために、非ウイルスベクターのシステムが、特にその比較的低いコスト及び手順の簡単さのために、非常に魅力的な代替手段である。しかしながら、多大な改良にもかかわらず、非ウイルス現在までに最も幅広く研究されている臨床及び研究の両方の目的においてのベクターの生体内(インビボ)での有効性が増大することが未だ必要である。
【0003】
多くの非ウイルスベクターの中でも、カチオン性脂質が、おそらく、現在までに最も幅広く研究されている化合物のクラスにある。詳細な概説について、非特許文献1を参照されたい。
【0004】
本技術分野において周知であり、よく理解されているように、カチオン性脂質は、3つの主要部分:正電荷を有する極性の先端基に連結部分を介して結合している脂肪親和性の成分を含む。正電荷を有する極性の先端基は、典型的には1種または複数のアミノ基のプロトン化の結果であるか、又は永久的な正電荷をもつ第4級アミンの提供によって生じる可能性のあるものである。
【0005】
カチオン性脂質をDNAもしくはRNA、又は他の分子と水溶液中で混合した際、静電気及び疎水性の相互作用によって、リポプレックスとして知られているリポソーム様の複合体への多段階のメカニズムによる自己集合及び自己組織化がもたらされることが知られている。多段階のプロセスの終わりに、DNA又はRNAが凝縮され、概して、カチオン性脂質がプラスミドを全体的に包み(周囲の環境中のヌクレアーゼから遮蔽する)、複合体の表面が、DNA又はRNAが適切にパッケージされていることを示唆する滑らかな外観を有する。過剰なカチオン性脂質の使用によって、リン脂質、又はヘパリン硫酸又は他のプロテオグリカンなどの負電荷を有する細胞表面構造体と相互作用した後の細胞の取り込み(非特異的なエンドサイトーシスによる)を仲介する正電荷を有する表面が提供される。
【0006】
最初に報告されたカチオン性脂質である、DOTMA(N‐(1‐(2,3‐ジオレイオキシ)プロピル)‐N,N,N‐トリメチル‐アンモニウムクロライド)が1987年に報告された。現在、莫大な範囲のカチオン性脂質が合成され(非特許文献1参照)、いくつかのものが市販されている。このようなものとしては、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)及びEffectene(登録商標)Transfection Reagent(Qiagen)がある。
【0007】
リポプレックスの製剤化は、多くの場合、混合物のトランスフェクションの能力を向上させると考えられているジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)などの中性界面活性剤の添加によって支援されている(非特許文献2)。その融合性の特性(非特許文献2、3および4)のために、このいわゆる「共脂質(co−lipid)」は、対イオンの放出を増加させることによって、リポプレックスの集合体を駆動する(層状の相から六角形の相への移行を促進する)と考えられているが、DOPE自身は、リポプレックスの集合を必要としない。DOPEの存在が、カチオン性脂質のDNAへの結合を緩め、リポプレックスの細胞質へのエンドソームの脱出を促進すると考えられ、このステップは、すべてのトランスフェクションのプロセスにおいておそらく最も重要である。
【0008】
典型的には、生理学的なpHにおいてプロトン化されており、生じた正電荷がDNA及びRNAのポリアニオンの骨格の結合を支援することから、カチオン性脂質で見られる先端基は窒素をベースとしたものである。概して、脂質部分は、2つの長鎖脂肪酸又はコレステロール・ベースの誘導体から構成されている。コレステロール・ベースのカチオン性脂質によるもの以外のカチオン性脂質の疎水性部分は、概して、12〜18個の炭素原子鎖の長さを有する不飽和又は飽和のアルキル鎖又はアシル鎖を含む。長い飽和の末端部は、比較的強い分子間相互作用並びに水和及びDOPEなどの中性の介助の脂質との混合の低い傾向を示す傾向がある。さらに、二重結合の付加によって、より密ではない結晶のパッキングがもたらされる。それ故に、炭化水素の末端部の長さ及び飽和は、リポプレックスの内部の動力学(intradynamics)及び最終的にはDNAのパッキング効率に影響を与える。カチオン性脂質の主要部分は2つの鎖を有するが、酸化による二量化が可能な単一の鎖の洗剤の使用に着目する継続中の研究がある。さらに、コレステロールが強固かつ生分解性であることから、コレステロール・ベースの末端部が、脂肪族鎖に代わるものとして使用されているが、コレステロールは、DOPEに代わる共脂質としても使用されている。単一の鎖にされた薬剤は、ミセルを形成することによってDNAを複合体化することが期待されるが、そのようなベクターは、多くの場合、その2つの末端を有する対応するものより、毒性を有し、効率的ではないと考えられている(非特許文献5参照)。特に、単一の末端を有する界面活性剤は、リポソームを形成する傾向がより低い(非特許文献6および7参照)。しかしながら、このことが正しいとは広く思われていない(非特許文献8および9参照)。
【0009】
カチオン性脂質のパッキングの性質は、DNAの最適の凝縮にとって重要である(非特許文献10参照)ことから、カチオン性脂質の構造は、効果的なDNAの結合とそれに続くリポプレックスの形成を可能にするように、概して、非常に注意深く設計されている。実際に、先行技術では、3つの主要部分(すなわち、脂肪親和性成分、連結モチーフ及び先端基)の改変によるカチオン性脂質の合理的な設計に関する研究の報告が多くなされており、該研究は、構造活性相関の解明を可能にした。たとえば、カチオン性(小さい)末端の断面の領域と大きい疎水性部分との間の不均衡が大きいほど、カチオン性脂質がより「円錐形」となることが要求されており、これは、生じた脂質の集合体の不安定性をより大きくすると考えられている。そのような不安定性によって、DNA又はRNAの細胞質への放出が向上した改良されたトランスフェクションがもたらされる。
【0010】
カチオン性脂質の疎水性及び親水性の部分は、概して、アミド、エーテル、エステル又はカルバメートの結合によって連結されているが、最適の結合がない。エーテル結合は、非常に安定であるが、エステル結合より毒性を有し、カルバメートが良好なバランスがあるものと見られている。連結する結合は、カチオン性の両親媒性の脂質の安定性を決定し、それによって、細胞の半減期におそらく関連している持続と毒性との間のバランスを制御すると考えられている。リンカーの設計の観点から、細胞内の加水分解によって、細胞内のリポプレックスの輸送の間の定められた段階における制御されたDNAの送達がもたらされる光に敏感な結合の使用及び環境に敏感な基の組み込みを含む多数の報告がある。
【0011】
しかしながら、すべての先行技術があるにもかかわらず、未だ、細胞の毒性の減少、分子、たとえば核酸のエンドソームの脱出の促進、及び、トランスフェクションされる分子がDNAである場合には該DNAの折りたたみの1又は複数の性質を提供する別のカチオン性脂質への要求がある。
【0012】
したがって、カチオン性脂質の分野において現在までに膨大な量の研究が行われているにもかかわらず、トランスフェクションのプロセスの生体内での有効性、毒性、コスト及び設計の簡単さの1又は複数の問題を改善するか、又は除去することが可能な更なるカチオン性脂質を開発することが、それでもなお望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】B. Martin et al., Curr. Pharm. Design, 2005, 11, 375-394
【非特許文献2】Farhood, H. et al., Biochim Biophys Acta, 1995, 1235, 289-295
【非特許文献3】Ellens, H. et al, Biochemistry, 1986, 25, 4141-7
【非特許文献4】Koltover, I. et al., Science, 1998, 281, 78-81
【非特許文献5】Lv, H. et al., J. Control. Release, 2006, 114, 100-109
【非特許文献6】Remy, J.-S. et al., Bioconjug. Chem., 1994, 5, 647-54
【非特許文献7】Jakubowski, H., Biochemistry Online, Ch 1, E
【非特許文献8】Tang, F. X., Hughes, J. A., J. Control. Release, 1999, 62, 345-358
【非特許文献9】Yingyongnarongkul, B.E. et al., Chem.-Eur. J., 2004, 10, 463-473
【非特許文献10】Bloomfield, V. A., Curr. Opin. Struct. Biol., 1996, 6, 334-341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
驚くべきことに、窒素含有結合を介して脂肪親和性ドメインに結合しているリンカー部分にエステル結合を介して連結されている複数のカチオン性部分又はカチオン性部分の前駆体を含むカチオン性脂質が、優れたトランスフェクションの能力を示すことを見出した。また、そのようなカチオン性脂質は、カチオン性の先端基、すなわちカチオン部分又は前駆体が含まれている基が、天然の代謝産物又はグリシン、β−アラニンもしくはGABAなどのアミノ酸によってもたらされ(以下に詳細に記載する)、脂肪親和性の末端部が典型的にはコレステロール誘導体又は脂肪酸、たとえば1種又は2種の脂肪酸の末端部であり、カチオン性脂質は、これら比較的毒性のない構成成分へのエステル結合及び窒素含有結合の存在の効力によって効率的に崩壊できることから、比較的毒性を有さない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、第1の態様において、本発明は、複数の先端基内の複数のカチオン性部分又はカチオン性前駆体と、脂肪親和性部分と、脂肪親和性部分と先端基との間に位置する連結部分とを含み、脂肪親和性部分が窒素含有結合を介して連結部分に連結されており、複数のカチオン性部分又は前駆体の各々がエステル部分を介して連結部分に連結されているカチオン性脂質を提供する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に従うカチオン性脂質を追加の脂質と共に含む組成物を提供する。
【0017】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1及び第2の態様に従うカチオン性脂質をポリヌクレオチドと共に含む組成物を提供する。
【0018】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様に従う組成物と細胞を接触させることを含む細胞にポリヌクレオチドをトランスフェクションする方法を提供する。
【0019】
第5の態様において、本発明は、本発明に従う組成物と、組成物のポリヌクレオチドをトランスフェクションする細胞とを含むキット・オブ・パーツ(kit of parts)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、生分解性化合物6a−nの合成スキームを示す図である。
【図2】図2は、中間体11の合成スキームを示す図である。
【図3】図3は、生分解性化合物13a、b及び15a、bの合成スキームを示す図である。
【図4】図4は、生分解性化合物21a、bの合成スキームをを示す図である。
【図5】図5は、GFP(緑色蛍光タンパク質)レポータープラスミドによるトランスフェクションから48時間後のHeLa細胞のフロー・サイトメトリー分析を示す図である。A)トランスフェクションしていない細胞コントロール;B)ペンタデカノイル誘導体6f、N/P 12、DOPEとの1:2モル混合物;C)Effectene(登録商標)Transfection Reagent;D)Lipofectamine(登録商標)2000。
【図6】図6は、GFP−レポータープラスミドによるトランスフェクションから48時間後のHeLa細胞のトランスフェクションした細胞のパーセンテージ(フロー・サイトメトリー分析によって計算したもの)を示す図である。本発明からの化合物6f、6i、6m、13b及び15aをアッセイし、Lipofectamine(登録商標)2000及びEffectene(登録商標)Transfection Reagentと比較した。
【図7】図7は、トランスフェクションから48時間後に行われた細胞の生存能研究の結果を示す図である。コントロール、本発明の5つのカチオン性脂質(6f、6i、6m、13b及び15a)、Lipofectamine(登録商標)2000及びEffectene(登録商標)Transfection Reagentについての結果を示す。
【図8】図8は、48時間後のGFP発現mES(マウス胚幹)細胞を用いたRNA iノックダウンアッセイのフロー・サイトメトリー分析を示す図である。A)トランスフェクションしていない細胞コントロール;B)Lipofectamine(登録商標)2000;C)ペンタデカノイル誘導体6f、N/P 12、DOPEとの1:2モル混合物。
【図9】図9は、トランスフェクションから72時間後の誘導体6i(N/P 12、DOPEとの1:2モル混合物)と複合体化した16μgのルシフェラーゼレポータープラスミド(pLux)(左のマウス)及びネイキッドプラスミド(右のマウス)を用いてトランスフェクションした麻酔下のマウスの非侵襲性の生体内の発光イメージング示す図である。麻酔下のマウスにおけるホタルルシフェリン(15mg/kg)の腹腔内投与から15分後のマウスを走査し、2分間隔で行った。
【図10】図10は、図9と同じマウスを示す図である。トランスフェクションから120時間後の画像を撮影した。画像を、麻酔下のマウスにおけるホタルルシフェリン(15mg/kg)の腹腔内投与から15分後に記録し、2分間隔で行った。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、比較的毒性のない成分が得られるように生理学的条件下での分解の影響を受けやすい構造を有する新規なカチオン性脂質を提供する。分解は、弱酸性条件下での加水分解の影響を受けやすいエステル部分の存在によって細胞へのトランスフェクションの状況において特に促進される。これは、エンドソームにおいて生じるpHの自然落下、すなわち、エンドソームのpHは、最初は細胞外の培地のもの(約7.2〜7.4)であるが、pHがエンドソームの膜内のATP依存性プロトンポンプによって次第に約5.0に低下する結果としてエンドサイトーシス中にリポプレックスが細胞質へ入る間に生じる。さらに、エステル結合は、エンドサイトーシスが完了次第、細胞内のリパーゼによる加水分解の影響を受けやすい。
【0022】
独立して、窒素含有結合によって連結部分に結合している脂肪親和性成分は、この結合における分解による放出の影響を受けやすい。
【0023】
好都合なことに、本発明のカチオン性脂質中に存在し、カチオン性脂質を製造できる連結部分は、カチオン性脂質における窒素含有結合及びエステル部分をもたらすために他の分子と反応するのに適切な官能性を有する多官能性分子である。従って、連結部分は、たとえば、複数のカチオン性先端基を導入するために、それぞれ(i)複数のカルボン酸及びカチオン性の先端基含有分子又は(ii)複数のヒドロキシル及びカチオン性先端基含有分子と反応することが可能な複数の(i)ヒドロキシル基又は(ii)カルボン酸基(特にヒドロキシル基)を含むことが可能である。また、当然のことながら、この文脈において言及されるカルボン酸は、本技術分野において既知である塩化アシルなどのそれと等価なものを活性化することが可能であることが理解される。
【0024】
独立して、連結部分が由来する分子は、窒素含有結合が由来するアミン(又は他の)部分を含むことが可能である。
【0025】
好都合なことに、非常によく知られている分子である、トリスとして一般に知られ、本明細書において称される2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、およびセリノールとして一般に知られ、本明細書において称される2−アミノ−1,3−プロパンジオールが、本発明のカチオン性脂質を製造する2つの優れた構築ブロックであることを見出した。特に、窒素含有結合及びエステル部分の分解で露わになるトリス又はセリノールのコアは、可溶であり、かつ実質的に毒性のない部分である。トリス及びセリノールは、生体内で腎臓によって効率よく除去される。トリスにおける3つのヒドロキシル基の存在によって、3個の別個の先端基を含むカチオン性脂質を製造することが可能であり、該カチオン性脂質において、先端基が、これらのヒドロキシル基から形成された(部分的に)エステル基によって、トリス骨格に結合している。同等に、2つの別個の先端基を含むカチオン性脂質を製造することが可能であり、該カチオン性脂質において、先端基が、これらのヒドロキシル基から形成された(部分的に)エステル基によって、セリノール骨格に結合している。以下の議論の残りは、トリス及びセリノール由来のカチオン性脂質を概して中心とするが、当然のことながら、このことは、本発明を制限するものと見なすものではなく、単に、トリス及びセリノールの入手しやすさの結果としての本発明の特定の実施態様を示す好都合な方法と見なすものである。カチオン性脂質中に存在する連結部分が由来する他の適切な分子は当業者に明らかである。
【0026】
トリス由来カチオン性脂質において、3個のカチオン性先端基−これらの酸素原子由来のエステル分子によってトリス分子のヒドロキシルの酸素原子の各々に付いているもの、及びカチオン性先端基に付いた連結部分によって寄与されるケト基−の存在の結果として、3個のカチオン性先端基を有するそのような脂質及び他のものは、カチオン性先端基によって典型的に形成される平面が、脂質の末端である疎水性部分に垂直であるように脂質の残りの部分の方へ空間的に配置されている三脚様の構成を有する。この構成は、特に、詰め込まれる分子がDNA(又は他のポリヌクレオチド)である場合、両親媒性の脂質分子のパッキングの性質に寄与すると思われる。これは、脂質の正電荷を持つ先端基とポリヌクレオチドの負電荷を持つ基との間の増強された相互作用によって達成されると思われ、言い換えると、疎水性末端間の疎水性相互作用を促進するものである。生じた超分子のリポプレックス形成は、リポプレックスの形成を支援すると思われる。
【0027】
カチオン性部分は、典型的には、生理学的なpHにおいてプロトン化を受けることが可能ないずれの塩基性の窒素ベースの官能基に由来する。しかしながら、本技術分野において知られているように(例えば前記のMartin B. et al.参照)、ホスホニウム及びアルソニウムの部分などの他のカチオン性基も使用してもよい。確実にする議論が、カチオン性種としての窒素ベースの部分を中心とする一方で、本発明はそのように制限されるものではない。窒素ベースの基及び他の基のプロトン化への感受性が、本明細書においてカチオン性前駆体という用語を使用する理由であり、すなわち、カチオン性前駆体は、例えば、生理学的なpHでのプロトン化を受けることによって、又は4級化によって、カチオン性部分を提供することができる官能基である。カチオン性部分自体が大部分の用途に有用であることを考えれば、以下の議論は、主にこれらを中心とする。
【0028】
典型的には、先端基は、プロトン化されているアミンまたはグアニジン基であり、これらの基は、生理学的なpHでプロトン化されている。グアニジン基(−NH−C(=NH)NH)は、強い塩基性であり、それ故に、望ましいプロトン化グアニジウム部分の形成に対してpHの感受性がないために、カチオン性先端基が由来する部分として使用するのに魅力的である。グアニジン基は、例えば天然のカチオン性アミノ酸であるアルギニンにおいて見られる。
【0029】
もう1つの方法として、カチオン性部分は、第1級、第2級、第3級または第4級(すなわち、永久に荷電したもの)アミンなどのアミンに由来してもよい。典型的には、カチオン性部分は、プロトン化第1級アミンを構成するが、本技術分野において知られているように、第4級アミン、またはプロトン化第2級および第3級アミンも、カチオン性先端基としても使用してもよい。第2級、第1級でないアミンでは、アミンは、エステル結合によってトリスベースのカチオン性脂質に連結されている連結部分中に含まれていてもよい。第3級または第4級アミンでは、アミンは、典型的には、窒素原子に付いた1〜3の直鎖または分岐状アルキル基を有する。典型的には、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、ケト、エステル、アミドなどから選択される1または複数の置換基で任意選択的に置換されたC10アルキル基、例えばメチル、エチル、またはイソ−またはn−プロピルから選択される。
【0030】
同じまたは異なるカチオン性先端基が、エステル基によって連結部分に、例えば、エステル基によって、トリス、セリノールまたは他の分子の3つの酸素原子に結合している。エステル基およびカチオン性先端基を連結することは、更なる連結部分である。これは、典型的には、直鎖または分岐状炭化水素鎖(例えばC1−30、より典型的にはC1−5、アルキル鎖)であり、すなわちエステル基内のケト部分は連結部分の一部でないと考えられる。炭化水素鎖は、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択されるヘテロ原子を含有していないか、または1または複数含有し、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、チオ、スルホキシ、スルホニル、アミノ、カルボキシ、ケトおよびエステルからなる群より選択される1または複数のヘテロ原子または官能基、例えば1つまたは2つの官能基で内部または外部で置換されていなくてもよいか、または置換されていてもよい1または複数の直鎖、分岐状、または環状領域を含んでもよい。他の実施態様において、環状領域は、1,4−フェニレンまたは1,4−ジシクロヘキシレンを含んでもよい。
【0031】
好都合なことに、発明者等は、カチオン性先端基が、適切な場合保護されているトリスまたは他の連結部分と、望ましいカチオン性先端基を含有する分子または例えばプロトン化によって望ましいカチオン性先端基に容易に変換される第1級アミノなどの分子との間の反応によってトリスまたは他の連結部分に付いていてもよいことを見出した。そのような分子は容易に当業者に利用可能である。例えば、連結部分が由来する可能性があるトリス、セリノールまたは他の分子と反応してもよい分子としては、通常アミノ基(例えば末端のアミノ)が保護されているアミノ酸またはそのアミノアシル誘導体が挙げられる。適切な保護は、当業者に既知であるBoc保護;他の適切な保護基によって達成してもよい。それ故に、説明した通り、種々のアミノ含有分子およびカルボン酸含有分子を本発明に従って使用してもよい。これらには、γ−アミノ酪酸、γ−グアニジノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、6−グアニジノヘキサン酸およびグリシンなどの天然のアミノ酸(加えてすでに上述したアルギニン)および他のα−アミノ酸に加えてβ−アラニン、唯一の天然に存在するβ−アミノ酸が挙げられる。
【0032】
より一般的に、いずれのアミノアシル断片もトリスまたは他の分子の酸素原子に付いて、エステル基、例えばα−アミノアシル、β−アミノアシル、γ−アミノアシル、δ−アミノアシル、およびε−アミノアシル断片を形成してもよい。そのようなアミノアシル部分の具体的な例としては、グリシニル、β−アラニル、γ−アミノブチリル、5−アミノペンタノイル、6−アミノヘキサノイル、γ−グアニジノブチリル、6−グアニジノヘキサノイル、リジニルおよびアルギニルが挙げられる。グリシニル、β−アラニルおよびγ−アミノブチリルは、グリシン、β−アラニンおよびGABA(γ−アミノ酪酸)にそれぞれに由来する。
【0033】
本発明のカチオン性脂質は、典型的には、任意選択的に水媒体中の生理学的に許容されるまたは薬剤として許容されるアニオンの塩として提供される。プロトン化アミノまたはグアニジン部分に対するカウンターアニオンあるいは、使用する場合、第4級アミノカチオンは、特に限定されない。適切なアニオンとしては、アニオンフルオロ、ヨード、ブロモおよびクロロなどのハロゲン化物、アセテート、トリフルオロアセテート、重硫酸塩またはメチルスルフェートが挙げられる。
【0034】
もう1つの方法として、カチオン性脂質は、単に、その非プロトン化前駆体を、適切な場合水媒体と接触させることによって生成してもよい。生じたプロトン化物は、望ましいカチオン性脂質をもたらすように機能する。
【0035】
基本的に、定義によれば、疎水性の存在のために、脂肪親和性部分とも呼ばれる、本発明のカチオン性脂質を含む脂質は、水に可溶であると考えられない。それ故に、溶液というよりはむしろエマルジョンが、本発明のカチオン性脂質が水媒体と接触した際に生じる。本発明のカチオン性脂質は、実際に、典型的には、望ましい容積のエマルジョンを分割することによってリポプレックスまたは他の組成物の調製を可能にする水溶性のエマルジョンとして供給されるか、または調製される。
【0036】
本発明のカチオン性脂質がエマルジョンを形成する水媒体は水であってもよい。しかしながら、より典型的には、水媒体は、生理食塩水溶液(例えば100〜200mM NaClを含む;またはリン酸緩衝生理食塩水(PB)などの緩衝溶液)などの溶液である。PBは、典型的には、pH約7.0〜7.6(典型的には約7.4)で、接触させる媒体、例えば細胞懸濁液と等張の結果として生じた溶液を作製するのに適切な濃度のNaClと共に、二塩基性のおよび一塩基性のリン酸塩の混合物を含む。時には、本発明のカチオン性脂質と混合するのが望ましい他の水媒体としては、いずれの培養培地、典型的には無血清培養培地が挙げられる。そのような培養培地は、当業者に既知であり、調製するのが容易であり、市販されている。培養培地としては、DMEM(Dulbecco/Vogt modified Eagle’s minimal essential medium)およびRPMI(Rosswell Park Memorial Institutemedium)が挙げられる。
【0037】
前記脂肪親和性部分に関して、1つまたは2つのそのような部分が連結部分に、例えばここで記載されているような窒素含有結合によって付いていてもよい。
【0038】
それ故に、脂肪親和性部分は、概して、式(I):
(D−E)−A− (I)
(式中、nは、Aが存在しないか、または二価である場合1で、Aが三価である場合2であり;
Dは、1または複数の直鎖、分岐状、または環状領域を含む、1〜100個の炭素原子、より通常では10〜30個の炭素原子、例えば12〜24個の炭素原子を含む飽和または不飽和炭化水素部分であり、該部分は、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択されるヘテロ原子を含有していないか、または1または複数含有し、該部分は、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、チオ、スルホキシ、スルホニル、アミノ、カルボキシ、ケトおよびエステルからなる群より選択される1または複数の官能基、例えば1つまたは2つの官能基で内部または外部で置換されていなくてもよいか、または置換されていてもよく;Eは存在しないか、またはカルボニル、アミン、エーテル、チオエーテル、ホスファチジル、スルホニル、スルホキシド、エステル、カルバモイル、カルバメートおよびアミドからなる群より選択され;および
Aが存在しないか、または下記式:
−G−D−G−、(−D−G)−J−G−D−G−、−G−D(G−)−K−G−D−G−
または(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−、
特に−G−D−G−、(−D−G)−J−G−D−G−、−または(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−
(式中、各DおよびEは、独立して上記で定義される通りであり;
各Gは、独立して、カルボニル、アミン、エーテル、チオエーテル、ホスファチジル、スルホニル、スルホキシド、エステル、カルバモイル、カルバメート、アミドおよび尿素からなる群より選択され;
JはNまたはCHであり、
KはNHまたはCHである)の1つの二価または三価である)
の脂肪親和性モチーフであってもよい。
【0039】
例えば、上記脂肪親和性部分中に存在する部分Aは、上記で定義されている式:−G−D−G−、(−D−G)−J−G−D−G−または−G−D(G−)−K−G−D−G−;または
−G−D−G−または(−D−G)−J−G−D−G−であってもよい。
【0040】
式(I)の特定の実施態様において、Aが存在しない。
【0041】
式(I)の特定の実施態様において、Eが存在しない。そのようなおよび他の実施態様において、D−E−は、飽和または不飽和脂肪アルキル鎖を含む。例えば、D−は、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、9−オクタデセニル(オレイルとしても知られる)、エイコシルまたはテトラエイコシルであってもよいか、あるいは概して、CH(CH−(式中、pは、5〜100、より通常では10〜30、例えば12〜24である)で表してもよい。
【0042】
式(I)の特定の実施態様において、Aが存在せず、Eが存在し、かつカルボニル、アミドまたはエステルである。これらの実施態様において、Eおよび窒素原子は、アミド、尿素またはカルバメート部分として窒素含有結合を形成してもよい。典型的には、これらのおよび本発明の他の実施態様のカチオン性脂質の窒素含有結合はアミド部分である。
【0043】
式(I)の特定の実施態様において、D−E−は、飽和または不飽和脂肪アシル鎖である。例えば、D−E−は、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、9−オクタデセノイル、エイコサノイルまたはテトラエイコサノイルであってもよいか;またはCH(CHC(=O)−(式中、qは、5〜100、より通常では10〜30、例えば12〜24である)で表わしてもよい。
【0044】
式(I)の特定の実施態様において、Dは、融合した環状領域を含んでもよく、それによって、多環式のヒドロカルビル部分を形成してもよい。そのようなD−を含むD−E−部分の例は、コレステリルオキシカルボニルである。他の実施態様において、環状領域は、1,4−フェニレンまたは1,4−ジシクロヘキシレン含んでもよい。
【0045】
Aが存在し、かつ式−G−D−G−の部分である式(I)の特定の実施態様において、各Gはカルボニルまたはアミドであってもよい。もう1つの方法として、各Gは、アミンであってもよい。これらのおよび他の実施態様において、Dは、式-(CH−(式中、rは1〜10、例えば1〜6である)のアルキレン部分であってもよい。好都合なことに、そのようなアルキレン部分は、GABA(γ−アミノ酪酸)またはAHX(6−アミノヘキサン酸)およびコハク酸などの容易に利用でき、実質的に毒性のない開始物質から得てもよい。これらのおよび他の実施態様において、D−E−は、飽和もしくは不飽和脂肪アシル鎖(GABAまたはAHXが存在する場合)または脂肪アルコール(コハク酸が存在する場合)であってもよい。例えば、D−E−は、デカノイルまたはデシルオキシ、ウンデカノイルまたはウンデシルオキシ、ドデカノイルまたはドデシルオキシ、トリデカノイルまたはトリデシルオキシ、テトラデカノイルまたはテトラデシルオキシ、ペンタデカノイルまたはペンタデシルオキシ、ヘキサデカノイルまたはヘキサデシルオキシ、オクタデカノイルまたはオクタデシルオキシ、9−オクタデセノイルまたは9−オクタデセニルオキシ、エイコサノイルまたはエイコシルオキシ、テトラエイコサノイルまたはテトラエイコシルオキシであってもよく;あるいはCH(CHC(=O)−またはCH(CHC−O−(式中、qは、5〜100、より通常では10〜30、例えば12〜24である)で表わしてもよい。
【0046】
式(I)の特定の実施態様において、Aが存在し、かつ式(−D−G)−J−G−D−G−部分である場合、(−D−G)−J−部分は、(−O−CH−CH−O−であってもよく、それ故に、グリセロールに由来してもよい。これらのおよび他の実施態様において、各Gは、カルボニルまたはアミドであってもよく、Dは、上記に定義される式−(CH−のアルキレン部分であってもよい。好都合なことに、そのような部分は、GABA(γ−アミノ酪酸)およびコハク酸などの容易に利用でき、実質的に毒性のない開始物質から得てもよい。
【0047】
式(I)の特定の実施態様において、Aが存在し、かつ式−G−D(G−)−K−G−D−G−の部分である場合、−G−D(G−)−K−部分は、グルタミン酸またはアスパラギン酸などのアミノ酸に由来する−O−C(=O)−(CH−CH(C(=O)(−O−))−NH−であってもよい。これらのおよび他の実施態様において、−G−D−G−部分中の各Gは、カルボニルまたはアミドであってもよく、Dは、上記に定義される式−(CH−のアルキレン部分であってもよい。それ故に、式−G−D(G−)−K−G−D−G−の部分を、グルタミン酸またはアスパラギン酸、およびコハク酸などの比較的毒性のない物質に分解してもよい。
【0048】
式(I)の特定の実施態様において、Aが存在し、かつ式(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−の部分である場合、(−G−D)−D(G−)−K−E−D−部分は、DOPEなどのホスファチジルエタノールアミンに由来する(−OCH)−CH(O−)−CH−O−P(=O)(−O)−O−(CH−NH−であってもよい。これらのおよび他の実施態様において、-G−D−G−部分中の各Gは、カルボニルまたはアミドであってもよく、Dは、上記に定義される式-(CH−アルキレン部分であってもよい。それ故に、式(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−の部分を、DOPE、およびγ−アミノ酪酸またはコハク酸などの比較的毒性のない物質に分解してもよい。
【0049】
本発明の化合物を、大きく見ると、必要とされる脂肪親和性末端およびカチオン性先端基を導入するように、カチオン性脂質の連結部分をもたらす分子、例えばトリスまたはセリノールを、他の分子と反応させることによって作製する。典型的には、トリスまたは他の分子を、最初に、上記の脂肪親和性末端またはいずれの連結モチーフを導入するように反応させる。これを行うために、好都合なことには、第1級アミンの選択的な官能化を可能にするようにヒドロキシル基を保護する。本発明者らは、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)保護基が適切であることを見出したが、他の基も当業者に明らかである。
【0050】
ヒドロキシル基の保護の後、窒素含有結合を導入することができる。これをどのようにして達成するかの例としては、連結部分がトリスに由来する場合、その第1級アミンを官能化する。本発明の特定の実施態様において、連結部分は、単一の脂肪親和性末端に付いており;上記のように、これは、典型的には10〜24個の炭素原子、より典型的には12〜18個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪酸に由来してもよく、塩化アシルなどの対応する活性化した脂肪酸との反応によって、またはDCC/DMAP活性化誘導体によって達成される。トリスのアミノ基に付いて、それによってアミド結合を形成することが可能な脂肪アシル鎖の例としては、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、9−オクタデセノイル、エイコサノイル、テトラエイコサノイル、またはコレステリルオキシカルボニルがある。本発明の1つの特定の実施態様において、脂肪アシル鎖は、オレイン酸に由来するオレイル(9−オクタデセノイル)である。もう1つの方法として、脂肪親和性末端を、当業者に既知である化学的な方法論を用いて連結部分をもたらすトリスまたは他の分子上に同様に導入することが可能である上記の他の可能性の一つに従って定義してもよい。
【0051】
上記の内容から分かるように、本発明のカチオン性脂質は、DNAおよびRNA、特にDNAおよびsiRNAなどのポリヌクレオチドの細胞へのトランスフェクションに特に使用されるものである。しかしながら、本発明のカチオン性脂質の有用性は、RNAおよびDNAの細胞内への送達のためのリポプレックスの調製への使用に制限されない。むしろ、本発明のカチオン性脂質を、細胞内への導入のためにタンパク質またはポリペプチドなどの他の高分子を包むか、または実際に、合成の薬剤、または錯体形成金属イオン、例えばFe(III)、Ga(III)、Ge(III)、もしくはCr(III);またはFe(III)、Gd(III)、Eu(III)、Ge(III)もしくはCr(III)などの診断造影剤に使用される三価金属イオンなどの小さい化合物を包むのに使用してもよい。それにもかかわらず、核酸などのポリアニオン性化合物を含むアニオン性化合物に対するカチオン性脂質の特定の親和性は、カチオン性脂質が最も適している用途であり、DNAおよびRNAを含むリポプレックスの調製における本発明のカチオン性脂質の有用性は、ここで着目されている用途である。
【0052】
本発明のカチオン性脂質を、共同して介助するもの(co−helper)である脂質の存在下、または非存在下で、トランスフェクションまたは他の目的に使用してもよい。それらを、乾燥した状態で、または前記の水溶性のエマルジョンとして供給してもよい。そのような共同して介助するものである脂質は、前記のように、典型的には、中性脂質であり、このような脂質としては、DOPE、1,2−ジオレオイル−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)およびコレステロールが挙げられる。
【0053】
存在する場合、共同して介助するものである脂質は、本発明のカチオン性脂質に対する幅広い範囲の比率で存在してもよく、例えば、約1:10〜10:1、より通常では約1:5〜5:1、例えば約3:1〜1:1の共同して介助するものである脂質:カチオン性脂質のモル比を使用してもよい。例えば、本発明者らは、使用するのに概して有用な比率である2モル当量のDOPE対本発明のカチオン性脂質を含む2:1の混合物を見出した。
【0054】
RNA(例えばsiRNA)またはDNAのトランスフェクションに使用する場合、カチオン性脂質は、典型的には、存在するRNAまたはDNAの量を超える過剰量で存在する。例えば、カチオン性脂質は、DNAまたはRNAの量に対する約2〜100:1、例えば約2〜50:1、典型的には約5:1〜25:1の過剰量で存在する。これらの比率は、正電荷対負電荷の比率に関係する。正電荷は、本発明のカチオン性脂質中に存在するカチオン性部分によってもたらされ、負電荷は、ポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNA中に存在するイオン化したリン酸塩基または他の負電荷によってもたらされる。それ故に、例えば、510リン酸塩基を含むDNAとのリポプレックスを形成するのが望ましい場合、3つのヒドロキシル部分の各々が、1つのカチオンを含むカチオン性先端基で誘導体化されている5倍の過剰量の本発明のトリス由来カチオン性脂質は、DNAにおけるものに一致する多くのカチオン(3x170)当量をもたらすのに170モル当量のそのようなカチオン性脂質を必要とし、850モル当量が5倍の過剰量もたらすのに必要である。ポリヌクレオチドによってもたらされる電荷に対するカチオン性脂質によってもたらされる電荷の比率を、本明細書ではN/P比と称す。本発明者らは、2/1〜60/1、例えば3/1〜50/1、例えば5/1〜30/1の範囲である、働くのに、例えばリポプレックスを形成するのに有用なN/P比を見出した。本明細書で報告される有用な比は6/1、12/1および24/1である。本明細書で言及されるN/P比を、本明細書、特に直前の段落に記載されている共同して介助するものである脂質の量を用いる場合にも、使用してもよい。
【0055】
本発明の方法を、細胞の生体外および生体内のトランスフェクション、特に、動物細胞、特に哺乳類細胞、特にヒト細胞に加えて、昆虫、植物、鳥類および魚類のものなどの他の細胞などの真核細胞または組織のトランスフェクションに適用してもよい。
【0056】
それ故に、本発明の方法を、DNAまたはRNA、特にDNAをトランスフェクトした結果としての有用な遺伝子産物を発現させることが可能であるのに加えて、バイオテクノロジーおよび医学研究の分野、生体内または生体外での遺伝子治療および他の治療の用途において有用性を有するトランスフェクトした細胞または組織を生じるのに使用できる。そのような治療の用途としては癌治療、および診断方法におけるものが挙げられる。
【0057】
本発明の化合物は、細胞へのRNAおよびDNAのトランスフェクションに特に使用されるものである。いずれのポリヌクレオチドの細胞へのトランスフェクションも好都合であるが、抗生物質の抵抗性をもたらすように任意選択的に改変したプラスミドDNAのトランスフェクションおよびsiRNA(低分子干渉RNA)の送達が、バイオテクノロジーの用途(例えば生体外遺伝子トランスフェクションまたは遺伝子サイレンシング)に関連して、および遺伝子治療において、特に有用なものである。
【0058】
生体外トランスフェクションベクターとしての本発明のカチオン性脂質の有用性を実証するために、下記の実験の部においてより詳細に説明するように、GFPをコードするプラスミドDNAのヒト腫瘍HeLa細胞へのトランスフェクション、およびGFP発現mES細胞からの安定なGFP−生合成のノックダウンを担うsiRNAを実証する。本発明者らの結果は、ポリヌクレオチドの有効なトランスフェクションおよびトランスフェクトしたHeLa細胞に対する満足な毒性データの両方を実証する。
【0059】
生体内トランスフェクションベクターとしての本発明のカチオン性脂質の有用性を実証するために、下記の実験の部においてより詳細に説明するように、マウス肺への注入によるルシフェラーゼをコードするプラスミドDNAのトランスフェクションを実証する。本発明者らの結果は、動物の健康への毒性の影響がまったく認められない、肺および他の器官の有効なトランスフェクションを実証する。
【0060】
本明細書に記載される組成物は、プラスミドDNA、ウイルスのDNA、染色体の断片、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、RNA分子およびリボザイム、またはそれらの組み合わせなどの種々のポリヌクレオチドをトランスフェクトするのに用いることができる。
【0061】
トランスフェクション方法を、生体外で行うことができ、例えば、トランスフェクション組成物を、培養中の細胞に加える。もう1つの方法として、該方法を、トランスフェクション組成物を生体内の細胞に加えることによって、生体内で行うことができる。
【0062】
本明細書で使用される、種々の形態の「トランスフェクト」(例えば、「トランスフェクトする」、「トランスフェクトした」)という用語は、細胞の外部の位置から内部へポリヌクレオチド分子を導入するプロセスを指すように意図される。
【0063】
本明細書で使用される、「ポリヌクレオチド分子」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)分子およびリボ核酸(RNA)分子を含む、2つまたは3つ以上の共有結合したヌクレオチド塩基からなる分子を包含するように意図される。ポリヌクレオチド分子を形成するヌクレオチドは、典型的には、ホスホジエステル結合によって互いに連結されているが、「ポリヌクレオチド分子」という用語は、ホスホロチオエート結合などの他の結合によって結合したヌクレオチドを包含するようにも意図される。ポリヌクレオチド分子の制限されない例としては、プラスミドDNA、ウイルスのDNA、染色体の断片、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、RNA分子(siRNA分子と読む)およびリボザイムが挙げられる。
【0064】
遺伝子治療のために、ポリヌクレオチドは、典型的には、治療上の利益をもたらすタンパク質をコードする発現ベクター(以下に更に詳細に説明する)である。トランスフェクション方法を、好ましくは、真核細胞、より好ましくは哺乳類細胞をトランスフェクトするのに用いる。トランスフェクション方法を、例えば、トランスフェクション組成物を培養中の細胞に加えることによって、生体外で実施できる。トランスフェクション組成物を培養中の細胞と接触させる期間は、標準の方法によって最適化できる。制限されない例としては、生体外でのトランスフェクション時間が48時間であり、続いて細胞を洗浄する(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水で)。もう1つの方法として、トランスフェクション方法は、トランスフェクション組成物を生体内の細胞に加えることによって、生体内で実施できる。生体内でのトランスフェクションの典型的な標的組織としては、例えば、胃、筋肉、肺、肝臓、上皮細胞、結腸、子宮、腸、心臓、腎臓、前立腺、皮膚、眼、脳、陰茎組織および鼻組織が挙げられる。
【0065】
特定の実施態様において、ポリヌクレオチドは、治療上の利益のあるタンパク質をコードする発現ベクターの形態であってもよい。発現ベクターは、トランスフェクトした細胞でのポリヌクレオチドの発現に適した形態のポリヌクレオチドを含み、通常トランスフェクトした細胞のタイプに基づいて選択され、発現させるポリヌクレオチド動作可能なように連結している1または複数の制御配列を含む組換え発現ベクターを意味する。組換え発現ベクター内で、「動作可能なように連結した」とは、所定のポリヌクレオチドが、ポリヌクレオチドの発現(例えば、ベクターを宿主細胞に導入した際の宿主細胞における転写/翻訳)を可能にするように、制御配列に連結していることを意味するように意図される。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むように意図される。そのような制御配列は、本技術分野において周知であり、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。制御配列としては、多くのタイプの宿主細胞におけるポリヌクレオチドの恒常的発現を導くもの、および特定の宿主細胞のみにおけるポリヌクレオチドの発現を導くもの(例えば組織特異的な制御配列)が挙げられる。発現ベクターの設計が、形質転換する宿主細胞、望ましいタンパク質の発現レベルなどの選択として、そのような要因に依存してもよいことは当業者に明らかである。
【0066】
哺乳類発現ベクターの例としてはpMex−NeoI、pCDM8(Seed, B., (1987) Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al. (1987), EMBO J. 6:187-195)が挙げられる。哺乳類細胞で使用する場合、発現ベクターの制御機能は、多くの場合、ウイルスの制御エレメントによってもたらされる。例えば、一般に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40に由来する。もう1つの方法として、特定の細胞タイプにおいて優先的にポリヌクレオチドの発現を導くことが可能な哺乳類発現ベクターを用いることができ(すなわち、組織特異的な制御エレメントを含む発現ベクター)、該ベクターは本技術分野において周知である。
【0067】
本発明の化合物または組成物(上記のものなど)またはそれらの混合物を使用する本発明のトランスフェクションの方法は、細胞の生体外および生体内でのトランスフェクション、特に、動物細胞、ヒト細胞、昆虫細胞、植物細胞、鳥類細胞、魚類細胞、哺乳類細胞および同種のものを含めた真核細胞または組織のトランスフェクションに適用できる。
【0068】
本発明の方法を、有用な遺伝子産物を発現するトランスフェクトした細胞または組織を生じるのに用いることができる。本発明の方法を、遺伝子導入動物の生産におけるステップとしても使用できる。本発明の方法は、細胞または組織内へ核酸の導入を必要とするいずれの治療上の方法に有用である。特に、これらの方法は、癌治療、生体内および生体外での遺伝子治療、および診断方法に有用である。例えば、Felgnerらの米国特許第5,589,466号明細書およびJesseeらの1995年5月25日出願の米国特許出願第08,450,555号明細書を参照されたい。本発明のトランスフェクション化合物または組成物を、研究目的で行われる細胞または組織のいずれのトランスフェクションにおける研究試薬として使用できる。本発明の方法によってトランスフェクトすることができる核酸としては、天然の塩基または非天然の塩基を含むいずれの供給源由来のDNAおよびRNAが挙げられ、治療上のまたはそうでなければ有用であるタンパク質をコードし、細胞または組織において発現させることが可能なもの、細胞または組織において核酸の発現を阻害するもの、酵素活性または活性化する酵素を阻害するもの、反応(リボザイム)を触媒するもの、および診断のアッセイにおいて機能するものが挙げられる。
【0069】
本明細書に記載される化合物、組成物および方法を、他のものの中でも、ポリアミン、ポリアミン酸、ポリペプチド、タンパク質、ビオチン、および多糖を含めた生物活性のある高分子または核酸以外の物質を細胞内へ導入するように、本明細書における開示を考慮して、容易に適応させることもできる。他の有用な物質、例えば、治療薬、診断の物質および研究試薬を、本発明の方法によって細胞内へ導入することができる。好ましい態様において、いずれの核酸ベクターも、本発明によって、細胞へまたは細胞内へ送達してもよい。
【0070】
また、本発明は、本発明の化合物もしくは組成物もしくはそれらの混合物の1または複数を含むトランスフェクションキットも含む。特に、本発明は、本発明の化合物の1または複数と、細胞、細胞培養培地、核酸、トランスフェクションエンハンサーからなる群より選択される少なくとも1つの追加の成分と、細胞をトランスフェクトするための説明書を含むキットを提供する。
【0071】
本発明に用いられるポリヌクレオチド分子は、一重鎖または二重鎖であってもよく、直線または環状、例えば、プラスミドであってもよく、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。該ポリヌクレオチド分子は、わずか15塩基または塩基対を含んでもよいか、または2万塩基または塩基対(20kb)ほど多くのものを含んでもよい。運搬部分を、核酸組成物に添加した際に比例基準で使用することから、物理的な輸送を実際に検討することは、利用できる核酸組成物のサイズにおける上限を大きく支配する。
【0072】
これらの天然に存在する物質に加えて、本発明に用いられる核酸組成物は、合成の組成物、すなわち、核酸アナログも含むことができる。これらは、これらの細胞内の核酸の正常な、必須の機能を妨げるような一重鎖RNAまたは一重鎖DNAへの比較的短いオリゴヌクレオチドの相補的なハイブリダイゼーションであるアンチセンス方法に特に有用であることが見出されている。例えば、Cohen, Oligonucleotides: Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Press, Inc., Boca Raton, Fla. (1989)を参照されたい。
【0073】
標的細胞へ運搬する核酸組成物のサイズ、性質および特異的な配列は、意図される特定の用途に最適化でき、そのような最適化は、本技術分野における当業者の技量内である。
【0074】
ポリヌクレオチド分子は、1)予防的なおよび/または治療上の免疫化剤として機能するタンパク質についての遺伝子の鋳型;2)欠陥、欠損または機能しない遺伝子の置換コピー;3)治療上のタンパク質についての遺伝子の鋳型;4)アンチセンス分子についてのおよびアンチセンス分子自体としての遺伝子の鋳型;または5)リボザイムについての遺伝子の鋳型として機能してもよい。
【0075】
タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の場合、ポリヌクレオチド分子は、好ましくは、送達される個々の動物の標的細胞における転写および翻訳に必要な制御配列を含む。
【0076】
アンチセンス分子およびリボザイムについての鋳型として機能するポリヌクレオチド分子の場合、そのような核酸分子を、それぞれコードされるアンチセンスおよびリボザイム分子の充分なコピーの生産に必要な制御エレメントに連結してもよい。
【0077】
本発明は、望ましいペプチドもしくはタンパク質をコードするか、または機能的な核酸分子についての鋳型として機能するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子の標的細胞への運搬を可能にすることができる。望ましいタンパク質または機能的な核酸分子は、産業の、商業上のまたは科学的な関心のいずれの製品、例えば、ワクチンを含む治療薬;食品および栄養補給剤;除草剤および植物成長調節剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺鼠剤、および殺真菌薬などの農業の意義の化合物;抗線虫剤を含む殺寄生虫薬などの動物健康に有用な化合物等であってもよい。標的細胞は、典型的には、細菌および酵母などの微生物細胞を含む宿主細胞の培養物であるが、植物および哺乳類細胞も含んでもよい。細胞培養物は、望ましいタンパク質または機能的な核酸分子の生産を最大化し、既知の方法によって発酵産物を回収し、精製する本技術分野において周知の発酵技術に従って維持される。
【0078】
本発明は、更に、生体内様式での個体の細胞へのポリヌクレオチド分子組成物の運搬方法に関する。
【0079】
核酸分子を生体内または生体外基盤における前記個体の細胞に投与してもよく、すなわち、個体の細胞との接触が、最も典型的に使用する手順に従って個体の体内で発生してもよいか、または個体の細胞との接触が、種々の適している手段によって個体の体から処理するのが望ましい細胞を取り除き、続いて前記細胞を前記核酸分子と接触させ、次に、前記細胞を前記個体の体へ戻すことによって、個体の体外で発生してもよい。
【0080】
本発明によって提供される個体の細胞にポリヌクレオチド組成物を運搬する方法は、特に、病原体に対して個体を免疫化する方法を含む。この方法において、前記細胞に投与されたポリヌクレオチド組成物は、前記病原体上に抗原として示されるエピトープに同一の、または実質的に類似したエピトープを少なくとも含むペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、動作可能なように制御配列に連結されている。核酸分子は、当然、個体の細胞において発現することが可能でなければならない。
【0081】
本発明によって提供される個体の細胞にポリヌクレオチド組成物を運搬する方法は、更に、過剰増殖の疾患または自己免疫疾患に対して個体を免疫化する方法を含む。そのような方法において、個体の細胞に投与されるポリヌクレオチド組成物は、過剰増殖の疾患と関連したタンパク質または自己免疫疾患と関連したタンパク質上にそれぞれ示されるエピトープに同一のまたは実質的に類似したエピトープを少なくとも含むペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、前記ヌクレオチド配列は、動作可能なように制御配列に連結されている。ここで、再び、核酸分子は、個体の細胞において発現することが可能でなければならない。
【0082】
本発明の他の態様は、遺伝子治療に関する。これは、個体の細胞へポリヌクレオチド分子を導入する組成物および方法を伴い、該ポリヌクレオチド分子は、個体において欠陥、欠損、機能しないまたは部分的に機能する遺伝子に相当するか、または治療上のタンパク質、すなわち、個体における存在が個体における欠損をなくすか、かつ/または存在が個体への治療上の影響をもたらすタンパク質をコードする遺伝子の外来性のコピーである。それ故に、適しているそのようなタンパク質を送達する手段、および個体へのタンパク質の直接的な投与の好ましい代替物がもたらされる。本明細書で使用される「望ましいタンパク質」という用語は、免疫反応への標的タンパク質として、または遺伝子治療法における治療上のまたは補うタンパク質として作用する本発明に用いられる遺伝子コンストラクトによってコードされるペプチドおよびタンパク質を指すように意図される。
【0083】
本発明の方法および組成物を用いて、望ましいタンパク質をコードするDNAまたはRNAを、個体の細胞内へ導入し、該細胞において、該DNAまたはRNAを発現させ、それ故に、望ましいタンパク質を産生する。望ましいタンパク質をコードする核酸組成物、例えば、DNAまたはRNAは、概して、個体の細胞における発現に必要な制御エレメントに連結している。DNA発現のための制御エレメントとしては、プロモーターおよびポリアデニル化シグナルが挙げられる。さらに、コザック領域などの他のエレメントもポリヌクレオチド組成物に含まれてもよい。
【0084】
特にヒトのための遺伝子のワクチンの生産において、本発明に用いられる核酸組成物と共に有用なプロモーターの例としては、サルウイルス40(SV40)由来プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのHIV末端反復配列(LTR)プロモーター、モロニーウイルス、ALV、CMV最初期プロモーターなどのサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)に加えて、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
特にヒトのための遺伝子のワクチンの生産において、本発明に用いられる核酸組成物と共に有用なポリアデニル化シグナルの例としては、SV40ポリアデニル化シグナルおよびLTRポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。特に、SV40ポリアデニル化シグナルと称される、pCEP4プラスミド(Invitrogen,San Diego Calif.)内にあるSV40ポリアデニル化シグナルを使用してもよい。核酸分子の発現に必要とされる制御エレメントに加えて、他のエレメントも、DNA分子に含まれてもよい。そのような追加のエレメントとしてはエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、およびCMV、RSVおよびEBVのものなどのウイルスのエンハンサーを含む群から選択してもよいが、これらに限定されない。
【0086】
核酸組成物を、コンストラクトを染色体外で維持し、細胞においてコンストラクトの複数のコピーを生産するために、哺乳類の複製起点によってもたらすことができる。Invitrogen(San Diego,Calif.)由来のプラスミドpCEP4およびpREP4は、エプスタイン・バーウイルスの複製起点および組込みなしで高いコピーのエピソームの複製を生じる核抗原EBNA−1コード領域を含有する。遺伝子治療に関する本発明の態様において、活性化に必要な抗原を含む複製起点を有するコンストラクトが好ましい。
【0087】
アンチセンス分子およびリボザイムも、そのような活性物質のコピーについての鋳型として作用する核酸組成物の導入によって個体の細胞へ送達してもよい。これらの物質は、存在が望ましくないタンパク質をコードする遺伝子の発現を不活性化するか、または妨げる。アンチセンス分子をコードする配列を含有する核酸組成物を、細胞内でのタンパク質の生産を阻害するか、または妨げるのに用いることができる。それ故に、癌遺伝子産物などのタンパク質の生産を除くことができるか、または減少させることができる。同様に、リボザイムは、タンパク質に翻訳する前にメッセンジャーRNAを選択的に破壊することによって遺伝子発現を妨げることができる。いくつかの実施態様において、他の治療および手順の管理を伴う治療法の一部としてアンチセンスまたはリボザイムをコードする核酸組成物を用いて、本発明に従って、細胞を処理する。アンチセンス分子およびリボザイムをコードするポリヌクレオチド組成物はコード配列が、RNAのタンパク質への翻訳を開始する開始コドンを含有しないことを除いて、タンパク質生産が望ましい場合に使用されるものと同様のベクターを使用する。
【0088】
リボザイムは、自己切断または他のRNA分子の切断が可能である触媒的なRNAである。ハンマーヘッド型、ヘアピン、テトラヒメナグループIイントロン、ヘッド、およびRNase Pなどのいくつかの異なるタイプのリボザイムが本技術分野において既知であり;S. Edgington, Biotechnology (1992) 10, 256-262を参照されたい。ハンマーヘッド型リボザイムは、40以下のヌクレオチドのコアにマップされる触媒部位を有する。植物ウイロイドおよびサテライトRNAにおけるいくつかのリボザイムは、共通の二次構造および特定の保存されたヌクレオチドを共有する。これらのリボザイムは自然にそれ自身の基質として機能するが、酵素ドメインを、保存された切断部位に隣接する配列との塩基対形成によって、他のRNA基質への標的とすることができる。リボザイムのカスタム設計のこのような能力によって、リボサイムを配列特異的なRNA切断に使用することが可能となり;G. Paolella et al., EMBO (1992), 1913-1919を参照されたい。従って、ハンマーヘッド型触媒配列などの種々のタイプのリボザイム由来の異なる触媒配列を使用すること、および本明細書に記載されているようにそれらを設計することは本技術分野における当業者の技量内である。リボザイムを、病原体ヌクレオチド配列および癌遺伝子の配列を含む種々の標的に対して設計できる。好ましい実施態様は、切断反応の効率を維持する一方でabl−bcr融合転写物を特異的に標的とするのに充分な相補性を有する。
【0089】
また、本発明は、ポリヌクレオチド組成物を含む容器と本発明のトランスフェクション物質を含む容器とを含む薬剤のキットも提供する。任意選択的に、そのようなキットには、薬剤組成物に適し、当業者に既知である賦形剤、担体、保存料および媒体が含まれる。また、薬剤キットという用語は、本発明の方法で使用される複数の接種材料を含むことも意図される。そのようなキットは、異なる接種材料およびトランスフェクション物質を含む別々の容器を含む。本発明に従う薬剤キットは、上記の免疫化する方法および/または治療上の方法で使用される接種材料を含むことも意図される。
【0090】
本発明を実施例で説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されない。
【0091】
1.概論
TLCをシリカプレート上で記述するような様々なシステムを用いて行った。プレートを、54nmのUVランプの下で、またはニンヒドリン試験によって可視化した。
【0092】
H、13CおよびDEPT NMRスペクトルを、Hおよび13Cについては250MHzで、DEPTについては62.5MHzで、298Kで動作するBruker AC300スペクトルメーターで記録した。サンプルを、記述するように、CDClまたはDMSO−dまたはメタノール-dに溶解した。化学シフトを、溶媒ピークに対するパーツ・パー・ミリオンで示す。多重度についての略語は、s,シングレット、d,ダブレット、t,トリプレット、q,クアドルプレットおよびm,マルチレットである。すべての結合定数をHzで測定した。
【0093】
エレクトロスプレー質量分析スペクトルを、Agilent 1100 series VG platform Quadruple Electrospray Ionisation mass spectrometer model G1946Bを用いて記録した。超音波処理を、Hilsonic water bathを用いて、フロー・サイトメトリーをBD FACS Aria flow cytometerを用いて行った。
【0094】
発光の生体内イメージングを、IVIS SPECTRUM Imaging システム(Caliper)を用いて実施した。
【0095】
有機溶媒はFisher Scientificによって、実験用試薬はSigma−Aldrichによって供給された。
【0096】
2.生分解性化合物の合成
2.1.一般的な構造を有する化合物:
【化1】

詳細には、化合物はこの一般的な構造を有し、
R−C(=O)−はデカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、9−オクタデセノイル(オレイル)、エイコサノイル、またはテトラエイコサノイルなどの脂肪アシル鎖である。
n=1、2、3、4または5
m=2または3
C=−NHまたは−NH−C(=NH)NH
X=CF−C(=O)OHまたはHCl
本発明のカチオン性脂質6a−nのライブラリーの合成は、図1に示すスキームで概説し、選択された例の詳細と共に以下に説明する以下の合成戦略によって達成される。各化合物について、R−C(=O)−基は、以下の通りである:6a デカノイル、6b ウンデカノイル、6c ドデカノイル、6d トリデカノイル、6e テトラデカノイル、6f ペンタデカノイル、6g ヘキサデカノイル、6h オクタデカノイル、6i 9−オクタデセノイル、6j エイコサノイル、6k テトラエイコサノイル、6l コレステリルオキシカルボニル、6m ペンタデカノイル、6n 9−オクタデセノイル。
【0097】
A)トリス−(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)アミノメタン、2の合成
塩化ブチルジメチルシリル(6.7g、44.6mmol)およびイミダゾール(6.3g、92.9mmol)をDMF(5mL)に溶解した。トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、1(1.5g、12.4mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。生成物をHOで洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧下で除去して白色粉末を得た(5.6g、12.1mmol、98%):H NMR(CDCl) δ:3.4(s,6H),0.85(s,27H),0.0(s,18H)。13C NMR(CDCl) δ:64.5,57.1,26.3,17.9.LRMS(ES+)m/z 464.5[100,(M+H)].
【0098】
B)脂肪誘導体3a−lの合成
方法A.塩化デカノイルまたはコレステリルクロロホルメートを、DCM中の化合物2の溶液(1当量)、ピリジン(1.1当量)およびジメチルアミノピリジン(DMAP、0.1当量)に液滴で添加し、2時間撹拌した。続いて、溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCMに再溶解した(3回)。生成物をHOで洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧下で除去して生成物を得た。
【0099】
方法B.対応する脂肪酸(1.1当量)およびN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(1.1当量)をDCMに溶解し、30分間撹拌した。続いて、DMAP(0.1当量)および化合物2(1当量)を連続的に添加し、生じた混合物を2時間撹拌した。溶液を、ろ過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCMに再溶解した(3回)。生成物をHOで洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧下で除去して生成物を得た。
【0100】
N−[トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)メチル]ドデカミド,3c(83%):H NMR(CDCl)δ:5.5(s,1H),3.8(s,6H),2.1−0.9(m,23H),0.85(s,27H),0.0(s,18H)。13C NMR(CDCl)δ:171.9,61.0,29.6,29.7,26.2,23.1,18.6,14.5.LRMS(ES+)646.7[100,(M+H)].
【0101】
N−[トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)メチル]ペンタデカミド,3f(93%):H NMR(CDCl)δ:5.5(s,1H),3.8(s,6H),2.1−1.0(m,29H),0.85(s,27H),0.0(s,18H).13C NMR(CDCl)δ:171.9,59.6,30.9,28.4,28.2,24.8,23.7,21.7,17.2,13.1.LRMS(ES+)674.8[100,(M+H)].
【0102】
N−[トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)メチル]オクタデカミド,3h(92%):H NMR(CDCl)δ:5.5(s,1H),3.8(s,6H),0.9−2.1(m,35H),0.85(s,27H),0.0(s,18H).13C NMR(CDCl)δ:171.7,59.6,47.7,32.9,28.7,28.4,28.1,25.4,24.8,24.7,23.9,21.5,17.2,13.1.LRMS(ES+)730.8[100,(M+H)].
【0103】
N−[トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)メチル]−9−オクタデセンアミド,3i(85%):H NMR(CDCl)δ:5.5(s,1H),5.3(t,J=5.5,2H),3.8(s,6H),2.1−0.9(m,31H),0.85(s,27H),0.0(s,18H)。13C NMR(CDCl)δ:171.7,59.7,36.7,32.9,30.9,28.7,28.5,28.1,26.2,24.8,23.9.21.6,17.2,13.1.LRMS(ES+)728.8[100,(M+H)].
【0104】
C)脱保護されている誘導体4a−lの合成
一般的なTDMBS脱保護手順:THF中のフッ化テトラブチルアンモニウム(1.5eq)を、化合物に添加し、混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、水を添加した。懸濁液を1時間超音波処理し、一晩静置して、沈殿させた。生成物をジエチルエーテルで洗浄する真空ろ過によって回収し、純粋な化合物を白色固体として得た(収率=55〜90%)。
【0105】
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]ドデカミド,4c(69%収率):H NMR(DMSO)δ:7.3(s,1H),5.0(br s,3H),3.5(s,6H),2.2−1.5(m,20H),1.1(t,J=6.5,3H).13C NMR(DMSO)δ:174.2,62.5,61.2,36.2,31.7,31.1,29.4,29.0,25.7,22.4,14.3.
【0106】
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]ペンタデカミド,4f(81%収率):H NMR(DMSO)δ:7.5(s,1H),5.3(br s,3H),3.5(s,6H),2.2−1.3(m,26H),1.1(t,J=6.0,3H).13C NMR(DMSO)δ:174.2,62.6,61.2,36.2,31.7,29.4,29.0,25.7,22.4,14.3.
【0107】
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]オクタデカミド,4h(86%収率):H NMR(DMSO)δ:7.3(s,1H),5.0(br s,3H),3.5(s,6H),2.2−1.5(m,32H),1.1(t,J=6.0,3H).13C NMR(DMSO)δ:174.2,62.5,61.2,36.2,31.7,31.1,29.4,29.0,25.7,22.4,14.3.
【0108】
N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−9−オクタデセンアミド,4i(55%収率):H NMR(DMSO)δ:7.3(s,1H),5.3(t,2H),5.0(br s,3H),3.5(s,6H),0.9−2.1(m,28H),1.1(t,J=6.6,3H).13C NMRδ:(DMSO)174.2,57.8,47.9,33.7,25.7,24.8,23.4,19.5,13.8.
【0109】
D)保護されている化合物5a−nの合成
Boc−保護されているアミノ酸との一般的なカップリング:カップリング化合物(3.43mmol,3.3eq)をDCM(40mL)およびDMF(5mL)に溶解し、DCC(702mg、3.43mmol、3.3eq)を添加し、混合物を室温で30分間撹拌した。4a−lのうちの1つの溶液(400mg、1.04mmol)をDMF(5mL)との混合物にゆっくりと添加し、10分間撹拌した。次に、DMAP(13.0mg、0.1mmol、0.1eq)を添加し、混合物を室温で一晩中撹拌した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカ上で溶解し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。純粋な生成物画分を混合し、溶媒を減圧下で蒸発させ、真空下で結晶化した無色のオイルを得た(収率40〜60%)。
【0110】
N−トリス([4−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]オキシメチル)ドデカミド,5c(60%):H NMR(CDCl)δ:6.7(s,1H),5.0(br t,3H),4.3(s,6H),3.0(m,6H),2.3(t,J=7.5,6H),2.0(t,2H,J=7.5),1.7(m,6H),1.6−1.1(m,45H),0.8(t,3H,J=6.6).13C NMR(CDCl)δ:173.8,172.2,155.9,78.8,62.0,57.7,39.4,36.6,36.2,31.6,31.1,30.9,29.4,29.3,29.1,29.0,28.9,28.1,25.3,25.0,22.4,13.8.LRMS(ES+)m/z 873.6[100,(M+H)].
【0111】
N−トリス([4−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]オキシメチル)ペンタデカミド,5e(55%):H NMR(CDCl)δ:6.5(s,1H),4.9(br t,3H),4.4(s,6H),3.0(m,6H),2.3(t,J=7.0,6H),2.1(t,2H,J=7.5),1.7(m,6H),1.6−1.1(m,51H),0.8(t,3H,J=6.6).13C NMR(CDCl)δ:173.8,172.3,155.9,79.1,62.1,57.9,39.5,36.7,36.2,31.7,31.0,29.5,29.3,29.1,29.0,28.9,28.1,25.3,25.1,22.5,13.9.LRMS(ES+)m/z 915.6[100,(M+H)].
【0112】
N−トリス([4−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]オキシメチル)−9−オクタデカミド,5i(40%):H NMR(CDCl)δ:6.4(s,1H),4.7(br t,3H),4.4(s,6H),3.1(m,6H),2.3(t,J=7.5,6H),2.1(t,2H,J=7.5),1.7(m,6H),1.6−1.1(m,57H),0.8(t,3H,J=6.6).13C NMR(CDCl)δ:172.9,171.5,155.0,78.3,61.3,59.3,57.0,38.7,35.9,30.1,29.8,29.0,28.7,27.4,24.5,24.3,21.3,20.0,13.1.(ES+)m/z 941.6[100,(M+H)].
【0113】
N−トリス([4−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル]オキシメチル)ペンタデカミド,5m(85%):H NMR(CDCl)δ:6.0(s,1H),4.6(br t,3H),4.4(s,6H),3.0(q,J=6.5Hz,6H),2.3(t,J=7.5Hz,6H),2.1(t,J=6.0Hz,2H),1.6−1.1(m,69H),0.8(t,3H,J=7.0);LRMS(ES+)m/z 1007.6[100,(M+Na)].
【0114】
N−トリス([4−(N−tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサノイル]オキシメチル)−9−オクタデカミド,5n(70%):H NMR(CDCl)δ:5.9(s,1H),5.3(m,2H),4.6(br t,3H),4.3(s,6H),3.0(q,J=7.0Hz,6H),2.2(t,J=7.0Hz,6H),2.0(t,J=6.0Hz,2H),1.9(br q,4H),1.6−1.1(m,67H),0.8(t,3H,J=7.0);LRMS(ES+)m/z 1047.6[100,(M+Na)].
【0115】
E)最終化合物6a−nの合成
一般的な脱保護プロトコール:トリフルオロ酢酸(99%)およびDCM(1:1,10mL)を5a−l(0.1mmol)に添加した、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物をDCMに再溶解し、溶媒を減圧下で蒸発させて(3回)、最終化合物6a−nを粘性白色固体または無色のオイルとして得た(定量的収率)。
【0116】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]デカミド、トリフルオロ酢酸塩,6a.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.52(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.65−1.12(m,14H),0.90(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.1,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.5(CH),30.3(CH)27.0(CH),23.8(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 531.5[100,(M+H)].
【0117】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]ウンデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6b.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.67−1.09(m,16H),0.90(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.2,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.7(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.3(CH)27.0(CH),23.7(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 545.6[100,(M+H)].
【0118】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]ドデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6c.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.68−1.06(m,18H),0.90(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.2,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.7(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.3(CH)27.0(CH),23.7(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 559.6[100,(M+H)].
【0119】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]トリデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6d.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.66−1.00(m,20H),0.89(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.2,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.5(CH),30.8(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.3(CH)27.0(CH),23.7(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 545.6[100,(M+H)].
【0120】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]テトラデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6e.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.67−1.02(m,22時間),0.90(t,J=6.5Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.1,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.8(CH),30.7(CH),30.5(CH),30.3(CH),27.0(CH),23.8(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 587.7[100,(M+H)].
【0121】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]ペンタデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6f.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.69−1.06(m,24H),0.90(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.2,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.9(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.3(CH)27.0(CH),23.7(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 601.7[100,(M+H)].
【0122】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]ヘキサデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6g.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.70−1.03(m,26H),0.90(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.1,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.8(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.3(CH)27.0(CH),23.8(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 615.7[100,(M+H)].
【0123】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]オクタデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6h.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.67−1.01(m,30H),0.90(t,J=6.0Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.1,40.0(CH),37.4(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.8(CH),30.7(CH),30.5(CH)30.3(CH)27.0(CH),23.7(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 643.7[100,(M+H)].
【0124】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]−9−オクタデセンアミド,トリフルオロ酢酸塩,6i.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ5.41−5.28(m,2H)4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.0Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.71−0.92(m,26H),0.90(t,J=6.5Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,130.9,(CH),130.8,(CH),63.1(CH),59.2,40.0(CH),37.4(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.9(CH),30.6(CH),30.4(CH)30.4(CH)30.4(CH)30.3(CH),28.2(CH)27.0(CH),23.7(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 641.7[100,(M+H)].
【0125】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]エイコサンアミド,トリフルオロ酢酸塩,6j.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.0Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.65−0.99(m,34H),0.90(t,J=6.5Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.4,63.1(CH),59.2,40.0(CH),37.5(CH),33.1(CH),31.4(CH),30.8(CH),30.5(CH),30.3(CH),27.0(CH),23.8(CH),23.7(CH),14.5(CH);LRMS(ES+)m/z 671.8[100,(M+H)].
【0126】
N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]テトラエイコサンアミド,トリフルオロ酢酸塩,6k.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),2.19(t,J=7.5Hz,2H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.69−1.06(m,42時間),0.90(t,J=6.5Hz,3H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ177.0,173.8,63.5(CH),59.5,40.4(CH),37.9(CH),33.5(CH),31.8(CH),31.2(CH),30.9(CH),30.7(CH),27.4(CH),24.2(CH),24.1(CH),14.9(CH);LRMS(ES+)m/z 727.7[100,(M+H)].
【0127】
O−(コレスト−5−エン−3−イル)−N−[トリス−(4−アミノブチリルオキシメチル)メチル]カルバメート,トリフルオロ酢酸塩,6l.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ5.47(s,1H),4.44(s,6H),2.99(t,J=7.5Hz,6H),2.51(t,J=7.5Hz,6H),1.95(q,J=7.5Hz,6H),1.70−0.69(m,45H);13C NMR(62.5MHz,クロロホルム−d)δ173.4,157.0,141.1,123.6(CH),63.3(CH),58.4,58.2,57.6,54.8,51.6,43.5(CH),41.1,40.8,40.7,40.2,40.1,40.0,40.0,38.3,37.8(CH),37.4,37.1,33.2(CH),33.1,31.4(CH),29.3,29.2(CH),25.3,25.0,23.6,23.3,23.0,22.2,19.8,19.3,12.4;LRMS(ES+)m/z 789.8[100,(M+H)].
【0128】
N−[トリス−(4−アミノヘキサノイルオキシメチル)メチル]ペンタデカミド,トリフルオロ酢酸塩,6m.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.40(s,6H),2.93(t,J=7.5Hz,6H),2.39(t,J=7.5Hz,6H),2.18(t,J=6.0Hz,2H),1.77−1.17(m,42H),0.90(t,J=7.0Hz,3H);LRMS(ES+)m/z 685.6[100,(M+H)].
【0129】
N−[トリス−(4−アミノヘキサノイルオキシメチル)メチル]−9−オクタデセンアミド,トリフルオロ酢酸塩,6n.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ5.22(m,2H),4.42(s,6H),2.96(t,J=7.5Hz,6H),2.75(m,6H),2.18(t,J=6.5Hz,2H),1.95(br q,4H),1.79−1.18(m,40H),0.90(t,J=7.0Hz,3H);LRMS(ES+)m/z 725.6[100,(M+H)].
【0130】
2.2.一般的な構造を有する化合物:
【化2】

詳細には、化合物はこのような一般的な構造を有し、
R−O−は、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、9−オクタデセニルオキシ(オレイルオキシ)、エイコシルオキシ、またはテトラエイコシルオキシなどの脂肪アルキルオキシ鎖である。
r=2,3、または4
n=1,2、3,4または5
m=2または3
C=−NHまたは−NH−C(=NH)NH
X=CF−C(=O)OHまたはHCl
そして、
【化3】

詳細には、化合物はこのような一般的な構造を有し、
R−O−は、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、9−オクタデセニルオキシ、エイコシルオキシ、またはテトラエイコシルオキシなどの脂肪アルキルオキシ鎖である。
q=1または2
r=2,3、または4
n=1,2、3,4または5
m=2または3
C=−NHまたは−NH−C(=NH)NH
X=CF−C(=O)OHまたはHCl
【0131】
2.2.1中間体11の合成
本発明の中間体11の合成は、図2に示すスキームで概説される以下の合成戦略によって達成される。
【0132】
A)[トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸、7の合成
トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)アミノメタン2(5.75g、12.4mmol)および無水コハク酸(1.86g、18.60mmol)をDCM(10ml)に溶解した。次に、DMAP(0.15g、1.24mmol、0.1eq)を添加し、混合物を室温で一晩中撹拌した。生成物を5%NaHCO溶液を用いて抽出し、次に、2NHClで酸性にし、DCMで抽出した。有機相を無水MgSO上で乾燥し、ろ過した。溶媒を真空中で除去して、無色のオイルを得た(7.00g、12.4mmol、定量的収率)。H NMR(CDCl)δ:7.2(s,1H),5.8(s,1H),3.8(s,6H),2.6(t,J=6.0Hz,2H),2.4(t,J=6.0Hz,2H),0.8(s,27H),0.0(s,18H);LRMS(ES+)m/z 565.3[100,(M+H)].
【0133】
B)ベンジル[トリス(tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸塩、8の合成
化合物7(7.00g、12.4mmol)、DCC(3.84g、18.6mmol)およびDMAP(0.15g、1.24mmol)をDCM(20mL)に溶解した。次に、ベンジルアルコール(1.48g、13.6mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。溶液をろ過し(DCCを除去するために)、溶媒を真空中で除去した。粗生成物をDCMに再溶解し、水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥した。溶媒を真空中で除去して無色のオイルを得た(7.00g、10.7mmol、86%)。H NMR(CDCl3)δ7.3(m,5H),5.6(s,1H),5.1(s,2H),3.8(s,6H),2.6(t,J=6.0Hz,2H),2.4(t,J=6.0Hz,2H),0.8(s,27H),0.0(s,18H);LRMS(ES+)m/z 654.4[100,(M+H)].
【0134】
C)ベンジルトリス(ヒドロキシメチル)アミドコハク酸塩、9の合成
化合物8をCHCOOH:THF:HO(3:5:1)溶液に添加し、混合物を室温で一晩中撹拌した。溶媒を減圧下で除去して粘性の白色固体を得た。H NMR(CDCl)δ7.3(m,5H),7.1(s,1H),5.0(s,2H),3.6(s,6H),2.6(t,J=6.0Hz,2H),2.4(t,J=6.0Hz,2H);LRMS(ES+)m/z 334.0[100,(M+Na)].
【0135】
D)ベンジル[トリス(4−[N−tert−ブトキシカルボニルアミノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸塩、10の合成
N−Boc−GABA(431.1mg、2.12mmol)、DMAP(8.4mg、0.06mmol)、EDC(407mg、2.12mmol)および化合物9(200mg、0.64mmol)をDCM:DMF(1:1,2mL)に溶解し、20分間60°Cでマイクロ波照射した。生成物を水で洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、透明な、無色のオイルを得た(443mg、0.51mmol、80%)。H NMR(CDCl)δ7.3(m,5H),6.8(s,1H),5.0(s,2H),4.7(br s,3H)4.4(s,6H),3.1(m,6H),2.6(t,J=6.0Hz,2H),2.4(t,J=6.0Hz,2H),2.3(m,2H),1.6(m,6H),1.4(s,27H);LRMS(ES+)m/z 889.3[100,(M+Na)].
【0136】
E)[トリス(4−[N−tert−ブトキシカルボニルアミノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸,11の合成
化合物10(443.5mg、0.51mmol)をエタノール(20mL)に溶解し、Pd−C(45mg)を添加し、システムを閉鎖した。次に、Hバルーンをシステムに連結し、混合物を室温で2時間撹拌した。生成物をセライトでろ過し、溶媒を真空中で除去して、無色のオイルを得た(350mg、0.45mmol、90%)。H NMR(CDCl)δ7.9(s,1H),6.8(s,1H),4.7(br s,3H),4.4(s,6H),3.1(m,6H),2.6(t,J=6.0Hz,2H),2.4−2.1(m,8H),1.6(m,6H),1.4(s,27H);LRMS(ES+)m/z 799.2[100,(M+Na)].
【0137】
2.2.1 化合物13a、bおよび15a、b
本発明の13a、bおよび15a、bの合成は、図3に示すスキームで概説される以下の合成戦略によって達成される。各化合物について、R−O−基は、以下の通りである:13a ペンタデシルオキシ、13b 9−オクタデセニルオキシ、15a ペンタデシルオキシ、15b 9−オクタデセニルオキシ。
【0138】
A)Boc−保護されている誘導体12a、bの合成
対応する脂肪アルコール(1.1当量)およびDCC(1.1当量)をDCMに溶解し、30分間撹拌した。次に、DMAP(0.1当量)を、溶液に添加し、続いて、化合物11(1当量)を添加し、生じた混合物を2時間撹拌した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCMに再溶解した(3回)。生成物をHOで洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物を無色のオイルとして得た。
【0139】
ペンタデシル[トリス(4−[N−tert−ブトキシカルボニルアミノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸塩、12a(76%).H NMR(250MHz,メタノール−d)δ6.62(br s,1H),4.75(br t,3H),4.37(s,6H),3.98(t,J=7.0Hz,2H),3.09(q,J=7.0Hz,6H),2.54(t,J=6.0Hz,2H),2.40(t,J=6.0Hz,2H),2.32(t,J=7.0Hz,6H),1.73(m,6H),1.61−1.03(m,53H),0.81(t,J=7.0Hz,3H);LRMS(ES+)m/z 1009.6[100,(M+Na)].
【0140】
9−オクタデセニル[トリス(4−[N−tert−ブトキシカルボニルアミノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸塩,12b(82%).H NMR(250MHz,メタノール−d)δ6.60(br s,1H),5.27(m,2H),4.74(br t,3H),4.37(s,6H),3.98(t,J=7.0Hz,2H),3.09(br q,J=6.5Hz,6H),2.54(t,J=6.0Hz,2H),2.40(t,J=6.0Hz,2H),2.31(t,J=7.0Hz,6H),1.95(m,4H),1.73(m,6H),1.61−1.03(m,53H),0.81(t,J=6.5Hz,3H);LRMS(ES+)m/z 1009.6[100,(M+Na)].
【0141】
B)Boc−保護されている誘導体14a、bの合成
O、O’−ジアルキルグルタミン酸塩(Obata et al.Bioconjugate Chem., 19, 1055-1063, 2008に記載されている通りに得られたもの)(1.1当量)およびDCC(1.1当量)をDCMに溶解し、30分間撹拌した。続いて、化合物11(1当量)を添加し、生じた混合物を2時間撹拌した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCMに再溶解した(3回)。生成物をHOで洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物を無色のオイル(56〜81%)として得た。
【0142】
1,3−ビス(ペンタデシルオキシカルボニル)−プロピル[トリス(4−[N−tert−ブトキシカルボニルアミノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸アミド、14a(66%).H NMR(250MHz,メタノール−d)δ6.81(br s,1H),4.83(br t,3H),4.52−4.25(m,9H),4.05−3.95(m,6H),3.08(br q,J=6.5Hz,6H),2.31(m,10H),1.73(m,6H),1.60−1.01(m,79H),0.81(t,J=6.5Hz,6H);LRMS(ES+)m/z 1349.0[100,(M+Na)].
【0143】
1,3−ビス(9−オクタデセニルオキシカルボニル)−プロピル[トリス(4−[N−tert−ブトキシカルボニルアミノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸アミド,14b(72%).H NMR(250MHz,メタノール−d)δ6.82(br s,1H),5.26(m,4H),4.82(br t,3H),4.54−4.25(m,9H),4.05−3.92(m,6H),3.08(br q,J=6.5Hz,6H),2.31(m,10H),1.98(m,8H),1.72(m,6H),1.61−1.01(m,79H),0.81(t,J=6.5Hz,6H);LRMS(ES+)m/z 1429.0[100,(M+Na)].
【0144】
C)最終化合物13a、bおよび15a、bの合成
一般的な脱保護プロトコール:トリフルオロ酢酸(99%)およびDCM(1:1,10mL)12a、bまたは14a、b(0.1mmol)に添加し、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物をDCMに再溶解し、溶媒を減圧下で蒸発させて(3回)、最終化合物を無色のオイルとして得た(定量的収率)。
【0145】
ペンタデシル[トリス(4−アミノブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸塩、トリフルオロ酢酸塩、13a.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.45(s,6H),4.08(t,J=6.5Hz,2H),3.06(br t,J=7.0Hz,6H),2.54(m,10H),1.98(m,6H),1.67(m,2H),1.48−1.20(m,26H),0.91(t,J=7.0Hz,3H);LRMS(ES+)m/z 687.6[100,(M+H)].
【0146】
9−オクタデセニル[トリス(4−アミノブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸塩,トリフルオロ酢酸塩,13b.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ5.38(m,2H),4.46(s,6H),4.09(t,J=6.5Hz,2H),3.03(br t,J=7.5Hz,6H),2.56(m,10H),2.11−1.92(m,10H),1.66(m,2H),1.45−1.22(m,24H),0.93(t,J=7.0Hz,3H);LRMS(ES+)m/z 727.6[100,(M+H)].
【0147】
1,3−ビス(ペンタデシルオキシカルボニル)−プロピル[トリス(4−アミノブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸アミド,トリフルオロ酢酸塩,15a.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ4.45(s,6H),4.21−4.03(m,4H),3.01(t,J=7.0Hz,6H),2.59−2.42(m,10H),1.98(m,6H),1.65(m,4H),1.50−1.11(m,48H),0.91(t,J=7.0Hz,6H);LRMS(ES+)m/z 1027.0[100,(M+H)].
【0148】
1,3−ビス(9−オクタデセニルオキシカルボニル)−プロピル[4−アミノブタノイルオキシメチル)メチル]アミドコハク酸アミド,トリフルオロ酢酸塩,15b.H NMR(250MHz,メタノール−d)δ5.31(m,4H),4.45(s,6H),4.21−4.03(m,4H),3.01(t,J=7.0Hz,6H),2.59−2.42(m,10H),2.08−1.88(m,14H),1.65(m,4H),1.50−1.11(m,48H),0.91(t,J=7.0Hz,6H);LRMS(ES+)m/z 1027.0[100,(M+H)].
【0149】
2.3.一般的な構造を有する化合物:
【化4】

詳細には、化合物はこのような一般的な構造を有し、
R−C(=O)−は、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、9−オクタデセノイル(オレイル)、エイコサノイル、またはテトラエイコサノイルなどの脂肪アシル鎖である。
r=1,2、3,4または5
n=1,2、3,4または5
m=2または3
C=−NHまたは−NH−C(=NH)NH
X=CF−C(=O)OHまたはHCl
【0150】
2.3.1化合物21a、bの合成
本発明のカチオン性脂質21a、bの合成は、図4に示すスキームで概説される以下の合成戦略によって達成される。これらの化合物について、R−C(=O)−基は、以下の通りである:21a ペンタデシルオキシ、21b 9−オクタデセニルオキシ。
【0151】
A)N−[ビス(ヒドロキシメチル)メチル]−6−[N’−(フルオレニル−9−メトキシカルボニル)−アミノ]ヘキサnアミド、17の合成
Fmoc−アミノヘキサン酸(12.4mmol)およびDCC(13mmol)をDCMに溶解し(20mL)、30分間撹拌した。続いて、セリノール16(13.6mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。溶液をろ過し(DCUを除去するために)、溶媒を真空中で除去した。粗生成物をDCMに再溶解し、水で洗浄し、無水MgSO上で乾燥し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色固体を得た(86%)。LRMS(ES+)m/z 427.2[100,(M+H)].
【0152】
B)N−[bis(4−[N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]−6−[N’’−(フルオレニル−9−メトキシカルボニル)−アミノ]ヘキサンアミド、18の合成
4−(N,N’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ)酪酸(2.2mmol)、DMAP(0.06mmol)、EDC(2.2mmol)および化合物17(1mmol)をDCM:DMF(1:1,2mL)に溶解し、20分間、60℃でマイクロ波照射した。生成物を水で洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、無色のオイルを得た(80%)。LRMS(ES+)m/z 1103.6[100,(M+Na)].
【0153】
C)N−[bis(4−[N’,N’’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]−6−アミノヘキサンアミド、19の合成
化合物18(1mmol)をDMF(10mL)中の20%ピペリジンに溶解し、室温で1時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物をエチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、白色固体(80%)を得た。LRMS(ES+)m/z 859.5[100,(M+H)].
【0154】
D)Boc−保護されている誘導体20a、bの合成
対応する脂肪酸(1.1当量)およびDCC(1.1当量)をDCMに溶解し、30分間撹拌した。続いて、化合物19(1当量)を添加し、生じた混合物を2時間撹拌した。溶液をろ過し、溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をDCMに再溶解した(3回)。生成物をHOで洗浄し、DCMで抽出し、無水MgSO上で乾燥し、エチルアセテート/ヘキサン混合物を用いるフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物を無色のオイルとして得た。
【0155】
N−[bis(4−[N’,N’’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]−6−[N’’’−(ペンタデカノイル)アミノ]ヘキサンアミド,20a.LRMS(ES+)m/z 1105.7[100,(M+Na)].
【0156】
N−[bis(4−[N’,N’’−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ]ブタノイルオキシメチル)メチル]−6−[N’’’−(9−オクタデセノイル)アミノ]ヘキサンアミド、20b.LRMS(ES+)m/z 1145.8[100,(M+Na)].
【0157】
E)最終化合物21a、bの合成
一般的な脱保護プロトコール:トリフルオロ酢酸(99%)およびDCM(1:1,10mL)を20a、b(0.1mmol)に添加し、室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物をDCMに再溶解し、溶媒を減圧下で蒸発させて(3回)、最終化合物を無色のオイルとして得た(定量的収率)。
【0158】
N−[bis(4−アミノブタノイルオキシメチル)メチル]−6−[N’−(ペンタデカノイル)アミノ]ヘキサンアミド、トリフルオロ酢酸塩,21a.LRMS(ES+)m/z 683.5[100,(M+H)].
【0159】
N−[bis(4−アミノブタノイルオキシメチル)メチル]−6−[N’−(9−オクタデセノイル)アミノ]ヘキサンアミド、トリフルオロ酢酸塩,21b.LRMS(ES+)m/z 723.6[100,(M+H)].
【0160】
3.トランスフェクションの性質の評価
一般的なリポプレックス調製プロトコール
対応するカチオン性脂質6a−l(メタノール中1mM)をDOPE(メタノール中1mM)と異なる比率で混合するか、またはDOPEと混合せず、有機溶媒をオーブン(37℃)で一晩中蒸発させることによって除去した。次に、生じた薄いフィルムをPBSで水和させた。溶液をボルテックスし(10〜20秒)、室温で30分間インキュベートした。続いて、プラスミドDNAまたはsiRNA溶液(PBSまたは他の等張の溶液中0.04mg/mL)を添加し、溶液をボルテックスした(10〜20秒)。使用する前に、リポプレックスを室温で30分間インキュベートした。
【0161】
pEGFP−C1のHeLa細胞株へのトランスフェクション
ヒトHeLa細胞を、4mMグルタミン、10%FCSおよび100ユニット/mlペニシリン/ストレプトマイシン(RPMI−CM)を追加したRPMIで80%コンフルエンスまで培養した。次に、細胞を、トリプシン/EDTAを用いて懸濁し、計数した。ウェル当たり150μLのRPMI−CM中の2x10細胞を96ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。後日、異なるリポプレックスの形態を添加した。各実験を、ポジティブコントロールとしてEffectene(登録商標)Transfection Reagent(Qiagen)、Lipofectamine(商標) 2000(Invitrogen)、ネガティブコントロールとして非処理の細胞を用いて4連で行った。
【0162】
37℃および5%COで2日間のインキュベーション後(トランスフェクション後の培地の交換は必要なし)、pEGFP−C1をトランスフェクトした結果である緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を、蛍光顕微鏡(Leica)を用いて明らかにし、フロー・サイトメトリーによって測定した。フロー・サイトメトリー分析のために、細胞を2回PBSで洗浄し、トリプシン/EDTAで切り離し、PBS中2%ウシ胎児血清(FBS)で回収し、遠心し、PBS中2%FBSで再懸濁し、BD FACSaria flow cytometerを用いて分析した。トランスフェクション効率を、トランスフェクトした細胞および総平均蛍光のパーセンテージとして測定した。図5に示すように、ペンタデカノイル誘導体6f(N/P比12,1:2mol DOPEとの混合物)は、2つのポジティブコントロール(Lip2000およびEffectene(登録商標)Transfection Reagent)よりはるかに良好にHeLa細胞をトランスフェクトした。図5は、レポータープラスミドによるトランスフェクションから48時間後のHeLa細胞のフロー・サイトメトリー分析を示し:(A)は、トランスフェクトしていない細胞コントロール由来のデータを示し;B)は、N/P 12,1:2mol DOPEとの混合物の本発明の化合物6f由来のデータを示し;(C)は、Effectene(登録商標)Transfection Reagentで得られたデータを示し;および(D)は、Lipofectamine(商標)2000で得られたデータを示す。サンプル当たりの分析した細胞の数は10,000であった。グラフの第1欄は、y軸において細胞サイズ、x軸において蛍光強度を示す。各ポイントは、細胞を表わす。グラフの第2欄は、y軸において細胞数、x軸において蛍光強度を表わす。すべてのグラフを、トランスフェクション分析の参照を得るために、蛍光強度に伴い細胞の2つの集団に分け、すなわち、トランスフェクトしていない細胞コントロールにおいて、P1は分析した細胞の総数の95%を含み;細胞を化合物6fでトランスフェクトした場合、P1は、分析した細胞の総数の19.1%を含み;Effectene(登録商標)Transfection Reagentでトランスフェクトした細胞において、P1は分析した細胞の総数の35.8%を含み;細胞をLipofectamine(商標)2000でトランスフェクトした場合、P1は、分析した細胞の総数の49.8%を含む。FITC−A平均は、各集団について計算した平均蛍光(任意のユニット)である。化合物6fでトランスフェクトした細胞のP2について計算した平均蛍光は120,059であり、(A)〜(D)のうち、はるかに最も良い結果である。
【0163】
図6は、GFP−レポータープラスミドによるトランスフェクションから48時間後のHeLa細胞のトランスフェクトした細胞のパーセンテージ(先に説明した通りに細胞蛍光のフロー・サイトメトリー分析によって計算したもの)を示す。本発明の化合物6f、6i、6m、13b、および15aをアッセイし、Lipofectamine(商標)2000およびEffectene(登録商標)Transfection Reagentと比較した。図6は、本発明の化合物が50%を超えるGFP発現細胞集団を得、Lipofectamine(商標)2000よりも高いトランスフェクションが得られたことを示す。具体的には、6fおよび6iは80%を超える蛍光細胞のパーセンテージを生じ、13bは79%を得た。
【0164】
pEGFP−C1のHEK293TおよびB16F10細胞株へのトランスフェクション
化合物6fおよび6iを、ヒト胚性腎臓(HEK)293T細胞株(それぞれフロー・サイトメトリーによって計算した62%および54%のGFP発現細胞)およびB16F10マウスメラノーマ細胞(それぞれ43%および61%)へのpEGFP−C1のトランスフェクションについてアッセイするのに成功し、Lipofectamine(商標)2000(HEK293Tにおいて68%およびB16F10において44%)に匹敵するまたはより高いトランスフェクションを得た。
【0165】
トランスフェクトしたHeLa細胞の細胞生存アッセイ
トランスフェクション物質の添加から24時間後、HeLa細胞の生存率を、製造業者の説明書に従って行ったMTT細胞増殖アッセイ(LGC Promochem、 Middlesex、 UK)を用いて測定した。吸光度を570nmで読みとった。
【0166】
結果は、トランスフェクションに使用する濃度(N/P比6/1,12/1および24/1)において化合物のどれも毒性がないことを示した。本発明の脂質6f、6i、6m、13b、および15a、Lipofectamine(商標)2000およびEffectene(登録商標)Transfection Reagentで得られた比較データを図7に示す。
【0167】
siRNAのGFP発現マウス幹細胞へのトランスフェクション
mES細胞を、抗生物質の非存在下で4mMグルタミンおよび10%FBSを追加したGMEMで80%コンフルエンスまで培養した。次に、細胞をトリプシン/EDTAを用いて懸濁し、計数した。ウェル当たり150μLのGMEM−CM中の2x10細胞を96−ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。後日、異なるリポプレックス形態を添加した。各実験を、ポジティブコントロールとしてLipofectamine(商標)2000(Invitrogen)を、ネガティブコントロールとして非処理の細胞を用いて4連で行った。
【0168】
2日間、37ーCおよび5%COでインキュベーション後(トランスフェクション後の培地の交換は必要ない)、緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現の減少を、フロー・サイトメトリーによって測定した。フロー・サイトメトリー分析のために、細胞を2回PBSで洗浄し、トリプシン/EDTAで切り離し、PBS中2%FBSで回収し、遠心し、PBS中2%FBSで再懸濁し、BD FACSaria flow cytometerを用いて分析した。図8に示すように、siRNAをトランスフェクトするためにペンタデカノイル誘導体6fを用いる予備アッセイは、GFPで形質転換したマウス幹細胞GFP発現の40%ノックダウンをもたらす結果となった(Lipofectamine(商標)2000よりも良好)。したがって、図8は、48時間後のGFP発現mES細胞のフロー・サイトメトリー分析を示す。(A)トランスフェクトしていない細胞コントロール;(B)Lipofectamine(商標)2000;および(C)ペンタデカノイル誘導体6f、N/P 12,1:2mol DOPEとの混合物を用いた。
【0169】
生体内トランスフェクションおよび生きているマウスからの非侵襲性の発光イメージング
マウスを標準のプロトコールに従い麻酔し、挿管した。先に記載されているプロトコールに従って、16μgのルシフェラーゼ−レポータープラスミド(pLux、PBSまたは他の等張の緩衝液中4〜6mg/mL)をオレイル誘導体6i(N/P 12、1:2mol DOPEとの混合物)と複合体形成した。次に、リポプレックスの形態(総容積=50μL)およびネイキッドプラスミド(50μLのPBS中の16μgのプラスミド)を経口的な挿管を介する直接的な気管内注入によって肺に投与した。マウスを毎日追跡し、分析し、それらのすべてが研究の間に健康に行動した。
【0170】
ホタルルシフェリン(15mg/kg)を、麻酔したマウスに、発光についてスキャンする30分前に腹腔内投与した。次に、マウスを、IVIS SPECTRUM imaging deviceを用いて2分ごとに撮像した。図9および10は、注入からそれぞれ72および120時間後の誘導体6i(左のマウス)と複合体形成した16μgのルシフェラーゼ−レポータープラスミド(pLux)およびネイキッドプラスミド(右のマウス)でトランスフェクトした麻酔したマウスの非侵襲性の生体内発光イメージングを示す。図9および10の両方にて示すように、ポジティブの発光を、誘導体6iでトランスフェクトしたマウス(左のマウス)から検出し、ネイキッドプラスミドでトランスフェクトしたマウス(右のマウス)から発光をまったく検出しなかった。左のマウスにおいて、ポジティブの発光を肺からのみならず口、内臓(胃腸管への注入の部分的な溢流によるものである)および他の体器官からも検出したことは注目すべきであり、誘導体6iの生体内でトランスフェクトする能力を強調するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の先端基内の複数のカチオン性部分またはカチオン性前駆体と、脂肪親和性部分と、脂肪親和性部分と先端基との間に位置する連結部分とを含むカチオン性脂質であって、脂肪親和性部分が窒素含有結合を介して連結部分に連結されており、先端基の各々がエステル部分を介して連結部分に連結されているカチオン性脂質。
【請求項2】
複数の先端基が同じである請求項1記載のカチオン性脂質。
【請求項3】
複数のカチオン性部分またはカチオン性前駆体が同じである請求項1記載のカチオン性脂質。
【請求項4】
2つまたは3つの先端基を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項5】
連結部分が、3つのヒドロキシル基およびアミン基、または2つのヒドロキシル基およびアミン基を有する化合物に基づく請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項6】
連結分子が、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、または2−アミノ−1,3−プロパンジオールに基づく請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項7】
先端基がアミンまたはグアニジン基を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項8】
先端基が第1級、第2級、第3級または第4級アミンを含む請求項7記載のカチオン性脂質。
【請求項9】
先端基がアミン含有アシル部分である請求項7または8記載のカチオン性脂質。
【請求項10】
アシル部分がアミノ酸に由来する請求項9記載のカチオン性脂質。
【請求項11】
アミノ酸が、α−アミノアシル、β−アミノアシル、γ−アミノアシル、δ−アミノアシル、またはε−アミノアシル部分をもたらす請求項10記載のカチオン性脂質。
【請求項12】
アミノアシル部分が、グリシニル、β−アラニル、γ−アミノブチリル、5−アミノペンタノイル、6−アミノヘキサノイル、リジニルまたはアルギニルである請求項10または11記載のカチオン性脂質。
【請求項13】
アミノアシル部分がグリシニル、β−アラニルまたはγ−アミノブチリルである請求項10または11記載のカチオン性脂質。
【請求項14】
アシル部分がグアニジノ含有カルボン酸に由来する請求項9記載のカチオン性脂質。
【請求項15】
アミノ酸が、α−グアニジノアシル、β−グアニジノアシル、γ−グアニジノアシル、δ−グアニジノアシル、またはε−グアニジノアシル部分をもたらす請求項14記載のカチオン性脂質。
【請求項16】
グアニジノアシル部分が、グアニジノアセチル、β−グアニジノプロピオニル、γ−グアニジノブチリル、5−グアニジノペンタノイル、6−グアニジノヘキサノイルである請求項14または15記載のカチオン性脂質。
【請求項17】
脂肪親和性部分が、式(I):
(D−E)−A− (I)
(式中、nは、Aが存在しないか、または二価である場合1で、Aが三価である場合2であり;
Dは、1または複数の直鎖、分岐状、または環状領域を含む、1〜100個の炭素原子、より通常では10〜30個の炭素原子、例えば12〜24個の炭素原子を含む飽和または不飽和炭化水素部分であり、該部分は、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択されるヘテロ原子を含有していないか、または1または複数含有し、該部分は、ヒドロキシル、オキソ、メルカプト、チオ、スルホキシ、スルホニル、アミノ、カルボキシ、ケトおよびエステルからなる群より選択される1または複数の官能基、例えば1つまたは2つの官能基で内部または外部で置換されていなくてもよいか、または置換されていてもよく;Eは存在しないか、またはカルボニル、アミン、エーテル、チオエーテル、ホスファチジル、スルホニル、スルホキシド、エステル、カルバモイル、カルバメートおよびアミドからなる群より選択され;および
Aが存在しないか、または下記式:
−G−D−G−、(−D−G)−J−G−D−G−、−G−D(G−)−K−G−D−G−
または(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−、
特に−G−D−G−、(−D−G)−J−G−D−G−、−または(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−
(式中、各DおよびEは、独立して上記で定義される通りであり;
各Gは、独立して、カルボニル、アミン、エーテル、チオエーテル、ホスファチジル、スルホニル、スルホキシド、エステル、カルバモイル、カルバメート、アミドおよび尿素からなる群より選択され;
JはNまたはCH;であり、および
KはNHまたはCHである)の1つの二価または三価である)
の脂肪親和性モチーフを含む請求項1〜16のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項18】
Aが存在せず、Eが存在し、かつカルボニル、アミドまたはエステルである請求項17記載のカチオン性脂質。
【請求項19】
窒素含有結合がEを含む請求項18記載のカチオン性脂質。
【請求項20】
Aが存在しない請求項17記載のカチオン性脂質。
【請求項21】
Aが存在し、かつ式−G−D−G−の部分である請求項17記載のカチオン性脂質。
【請求項22】
Aが存在し、かつ式(−D−G)−J−G−D−G−の部分であり、例えば(−D−G)−J−部分が(−O−CH−CH−O−である請求項17記載のカチオン性脂質。
【請求項23】
Aが存在し、かつ式(−G−D)−D(G−)−K−E−D−G−D−G−の部分である請求項17記載のカチオン性脂質。
【請求項24】
(−G−D)−D(G−)−K−E−D−が、式(−OCH)−CH(O−)−CH−O−P(=O)(−O)−O−(CH−N(H)−のものである請求項23記載のカチオン性脂質。
【請求項25】
Aが存在し、かつ式−G−D(G−)−K−G−D−G−の部分である請求項17記載のカチオン性脂質。
【請求項26】
−G−D(G−)−K−が、式−O−C(=O)−(CH−CH(C(=O)(−O−))−NH−(式中、rが1〜10、例えば1〜6である)のものである請求項25記載のカチオン性脂質。
【請求項27】
各Gが、カルボニルまたはアミドである請求項18〜26のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項28】
−G−D−G−中のDが、式-(CH−(式中、rが1〜10、例えば2〜6である)のアルキレン部分である請求項18〜27のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項29】
−G−D−G−中のDが、γ−アミノ酪酸またはコハク酸に由来する請求項28記載のカチオン性脂質。
【請求項30】
D−E−が、飽和または不飽和脂肪アルキル鎖を含む請求項17〜29のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項31】
D−がデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、7−オクタデセニル、エイコシルまたはテトラエイコシルであるか、またはCH(CH−(式中、pは5〜100、より通常では10〜30、例えば12〜24である)で表される請求項30記載のカチオン性脂質。
【請求項32】
D−E−が、飽和または不飽和脂肪アシル鎖である請求項17〜31のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項33】
D−E−が、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、7−オクタデセノイル、エイコサノイルまたはテトラエイコサノイルであるか、またはCH(CHC(=O)−(式中、qは5〜100、より通常では10〜30、例えば12〜24である)で表される請求項32記載のカチオン性脂質。
【請求項34】
D−E−が、飽和または不飽和脂肪アルキルオキシ鎖である請求項17〜31のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項35】
D−E−が、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、9−オクタデセニルオキシ(オレイルオキシ)、エイコシルオキシ、またはテトラエイコシルオキシであるか、またはCH(CHC−O−(式中、qは、5〜100、より通常では10〜30、例えば12〜24である)で表される請求項34記載のカチオン性脂質。
【請求項36】
Eが存在しない請求項20〜31のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項37】
D−E−部分がコレステリルオキシカルボニルを含む請求項17〜29のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項38】
窒素結合が、アミド、尿素またはカルバメートの結合である請求項1〜37のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項39】
窒素含有結合がアミド結合である請求項1〜38のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項40】
カチオン性脂質が、カチオン性部分を含み、フルオロ、ヨード、ブロモおよびクロロなどのハロゲン化物アニオン、アセテート、トリフルオロアセテート、重硫酸塩またはメチルスルフェートからなる群より選択されるアニオンと結合している請求項1〜39のいずれか1項に記載のカチオン性脂質。
【請求項41】
請求項1〜40のいずれか1項に記載のカチオン性脂質を追加の脂質と共に含む組成物。
【請求項42】
追加の脂質が、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、1,2−ジオレイル−グリセロ−3−ホスホコリンおよびコレステロールからなる群より選択される中性脂質である請求項41記載の組成物。
【請求項43】
追加の脂質が、約1:10〜10:1、より通常では約1:5〜5:1、例えば約3:1〜1:1の追加の脂質:カチオン性脂質のモル比率で存在する請求項41または42記載の組成物。
【請求項44】
請求項1〜39のいずれか1項に記載のカチオン性脂質をポリヌクレオチド分子などの生物活性のある分子と共に含む組成物。
【請求項45】
水溶性のエマルジョンである請求項44記載の組成物。
【請求項46】
培養培地を含む請求項45記載の組成物。
【請求項47】
更に、請求項41〜43のいずれか1項に記載の追加の脂質を含む請求項44〜46のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
ポリヌクレオチドがDNAまたはRNA、例えばsiRNAである請求項44〜47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
カチオン性脂質によってもたらされる正電荷対ポリヌクレオチドによってもたらされる負電荷の比率が約2〜100:1、例えば約2〜50:1、典型的には約5:1〜25:1である請求項44〜48のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
請求項44〜49のいずれか1項に記載の組成物と細胞を接触させることを含むポリヌクレオチドを細胞内へトランスフェクトする方法。
【請求項51】
動物細胞または組織、特に哺乳類細胞または組織、特にヒト細胞または組織などの細胞、特に真核細胞または組織をトランスフェクトする生体外または生体内での方法である請求項50記載の方法。
【請求項52】
請求項44〜49のいずれか1項に記載の組成物を薬剤の製造に使用する方法。
【請求項53】
請求項1〜40のいずれか1項に記載のカチオン性脂質もしくは請求項41〜49のいずれか1項に記載の組成物の1または複数と、細胞、細胞培養培地、核酸、トランスフェクションエンハンサーおよび細胞をトランスフェクトするための説明書からなる群より選択される少なくとも1つの追加の成分とを含むキット・オブ・パーツ(kit of parts)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−500656(P2011−500656A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529450(P2010−529450)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003527
【国際公開番号】WO2009/050483
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510055323)ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニバーシティ オブ エディンバラ (6)
【Fターム(参考)】