説明

カッター機構、プリンター、及びカッター機構の制御方法

【課題】印刷中心位置とオートカット位置との間の長さの無駄を無くし、印刷及びカット後の連続紙を容易に排出するとともに、印刷開始位置への紙送りをスムースに実現することのできるカッター機構、それを備えたプリンター及びカッター機構の制御方法を提供する。
【解決手段】カッター機構は、ロール紙5を搬送するプラテンローラー9と、プラテンローラー9の搬送方向の上流側に配置した切断カッター刃22と受けカッター刃21を有するオートカッター20と、を備え、受けカッター刃21に形成された点線カット用溝部により、オートカッター20はロール紙5を点線カットし、プラテンローラー9は、オートカッターにより切断片側と連続紙側に点線カットされたロール紙5を、共に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続紙をカットするカッター機構、それを備えたプリンター、及びカッター機構の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターにおける連続紙をカットするオートカッターとしては以下のものが知られている(特許文献1参照)。図9に示すように、上記特許文献1に記載のインクジェット式のオートカッター付きロール紙プリンター1000は、長尺状の記録紙(連続紙)2000a(図においては太い一線鎖線で示してある。)をロール状に巻き取った構成のロール紙2000が収納されるロール紙収納部300を有している。ロール紙収納部300のロール紙2000から繰り出される長尺状の記録紙2000aは、斜め上方に引き出された後に湾曲状の紙送りガイド400によって湾曲させられた後に水平方向に延びている搬送路500(記録紙2000aを示す一線鎖線と同一の経路)に沿って搬送され、プリンターケース600に形成されている排出口700から排出される。
【0003】
水平方向に延びている搬送路500の部分はロール紙収納部300の真上に位置しており、当該搬送路部分には、インクジェットヘッド800およびプラテン900が一定のギャップで対向配置されており、プラテン900によってインクジェットヘッド800の印刷位置190が規定されている。インクジェットヘッド800はキャリッジ110に搭載されており、キャリッジ110はキャリッジガイド軸120に沿ってキャリッジモーター130によってプリンター幅方向に往復移動する。
【0004】
搬送路500におけるインクジェットヘッド800の上流側には上流側紙送りローラー140が配置されており、この上流側紙送りローラー140は紙送りモーター150によって回転駆動される。この上流側紙送りローラー140には押えローラー160が連れ回りするように押し付けられている。インクジェットヘッド800の下流側には、上流側紙送りローラー140と同期して回転する下流側紙送りローラー170が配置されており、この下流側紙送りローラー170には押えローラー180が連れ回りするように押し付けられている。
【0005】
排出口700の近傍にはオートカッター200が配置されており、印刷後の記録紙2000aの先端部分がオートカット位置200Aにおいて幅方向に切断されるようになっている。オートカッター200は、搬送路500の下側においてプリンター幅方向に上向き姿勢に配置されている固定刃210と、搬送路500の上側においてプリンター幅方向に下向き姿勢で配置されている可動刃220と、カッターモーター230を備えた可動刃駆動機構240とを有している。
【0006】
オートカッター200は鋏式のものであり、カッターモーター230の回転力によって、可動刃220はプリンター幅方向の一方の端を中心として上下方向に旋回移動する。可動刃220が移動すると、固定刃210の刃先との交差位置がプリンター幅方向の一方の端から他方の端に移動し、これらの間に位置する記録紙2000aの部位が幅方向に切断される。このオートカッター200よりも下流側にはマニュアルカット用の切断刃250がプリンター幅方向に下向き姿勢で水平に配置されている。この切断刃250に記録紙2000aを押し当て、この状態で記録紙2000aを斜め上方に引っ張ることにより、記録紙2000aを手切カット位置250Aにおいて幅方向に切断することが可能である。
【0007】
ここで、オートカッター200には紙押さえ部材260が配置されている。紙押さえ部材260は、搬送路500から上方に離れた退避位置260Aから、搬送路500の下側に配置したガイド270に押し付けられた想像線で示す紙押さえ位置260Bまでの間を上下方向に移動可能である。この紙押さえ部材260の移動は可動刃駆動機構240によって行われる。
【0008】
次に、ロール紙プリンター1の駆動制御部3000は、不図示のコンピュータシステムなどの上位機器からの指令に基づき各部の駆動を制御する。印刷動作においては、紙送りモーター150を駆動して上流側紙送りローラー140および下流側紙送りローラー170を回転駆動して、記録紙2000aの搬送動作を行う。また、キャリッジモーター130を駆動してインクジェットヘッド800をプリンター幅方向に移動させながら当該インクジェットヘッド800を駆動して記録紙2000aの表面に印刷を施す。記録紙2000aの搬送と印刷動作が交互に行われる。
【0009】
印刷終了後においては、オートカッター200を駆動して記録紙2000aを切断する。これにより、排出口700からは、記録紙2000aを切断することによって得られる一定長さのレシート、チケットなどが発行されることになる。オートカッター200による切断を行わない動作モーターが選択されている場合には、ユーザーが、印刷終了後に排出口700から所定長さだけ排出されている記録紙2000aを掴み、マニュアルカット用の切断刃250に押し付ける方向に記録紙2000aを引くことにより、当該切断刃250によって記録紙2000aを切断して所定長さのレシートなどを得ることができる。
【0010】
特許文献1に記載のオートカッター200は、プラテン900と対向する印刷ヘッド800に対して、印刷後の連続紙の排出口側(紙送り下流側)に配置されている。このようにオートカッター200が印刷ヘッド800に対して下流側に形成されているプリンターにおける印刷処理について、図10を参照してより詳細に説明する。図10は、特許文献1のプリンターの搬送路500と異なり、搬送路が略鉛直方向に形成されている場合の搬送路の模式図である。
【0011】
図10に示すように、オートカッター20は、プラテンローラー9と対向する印刷ヘッド8に対して、紙送り方向の下流側に配置されている。オートカッター20の更に下流側にはマニュアルカッター25が配置され、オートカッター20による切断を行わない場合は、ユーザーが、印刷終了後に排出口から排出されているロール紙を掴み、マニュアルカッター25によって連続紙5を切断して所定長さのレシートなどを出力する。
【0012】
図10に示したオートカッターの配置では、印刷ヘッド8より下流側にオートカッター20が配置されているため、次回印刷時には、図11に示すように、印刷中心位置とオートカッタト位置との間の長さXだけ連続紙が無駄になる。即ち、ABCD・・・を印刷後に、オートカットするためには、少なくともロール紙5を長さXだけ紙送りする必要がある。紙送り後に、次のレシートの印刷を実行すると長さXだけ連続紙が無駄になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−101617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような課題を解決するためには、図1に示すように、オートカッター20をプラテンローラー9と対向する印刷ヘッド8に対して、紙送り方向の上流側に配置することが考えられる。プラテンローラー9と対向する位置であって印刷ヘッド8と干渉しない位置には不図示の従動ローラーが備えられ、駆動するプラテンローラー9と共にロール紙5を挟持して搬送する。図1のオートカッターの配置では、印刷後に紙送りをせずにオートカットを実行できるので、図2に示すように、印刷中心位置とオートカット位置との間の長さX分の連続紙の無駄をなくすことが可能になる。
【0015】
しかしながら、図1のオートカッターの配置では、印刷ヘッド8の上流側に紙送りローラーが存在しないので、印刷後のロール紙5を排出することができない。印刷ヘッド8の上流側に紙送りローラーを配置すると、切断した紙が紙送りローラーに挟持されていて取り出し難くなる他、装置が大きくなってしまう。また紙を完全に切断すると、連続紙側が切り離されてプラテンローラー9から離れてしまうので、次に印刷するロール紙5を印刷開始位置に紙送りすることができなくなってしまう。
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、印刷中心位置とオートカット位置との間の長さXの無駄を無くし、印刷及びカット後の連続紙を容易に排出するとともに、印刷開始位置への紙送りをスムースに実現することのできるカッター機構、それを備えたプリンター及びカッター機構の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決することのできる本発明のカッター機構は、連続紙を搬送するローラーと、前記ローラーの搬送方向の上流側に配置した可動刃と固定刃を有するカッターと、を備え、少なくとも前記可動刃と前記固定刃のいずれか一方に形成された切り欠き部により、前記カッターは前記連続紙を部分カットし、前記ローラーは、前記カッターにより切断片側と連続紙側に部分カットされた連続紙を、共に搬送することを特徴とする。
上記構成によれば、カッターはローラーの上流側に配置されているので、このローラーを印刷ヘッドと対向配置するプラテンローラーとして使用した場合には、上述したように印刷中心位置とカッター刃との間の長さXの無駄を無くすことができる。また、連続紙は、カッターに形成された切り欠き部によって部分カットされ、完全に切断されることがない。このため、ローラーによって容易に排出できるとともに、次の印刷のための印刷位置への紙送りをスムースに実現することが可能である。
【0018】
また、上記カッター機構において、前記可動刃は、前記固定刃に対し、前記切り欠き部の深さに至る前まで移動することが好ましい。
上記構成によれば、可動刃を切り欠き部の深さに至る前まで移動させることによって、切り欠き部分に位置する連続紙の一部分を切断することなく、切り残すことができるので、部分カットを実現することができる。また、複数の切り欠き部を設けることによって、点線カットを実現することができる。
【0019】
また、上記カッター機構において、前記可動刃は丸刃であり、前記切り欠き部は前記丸刃に形成されたスリットであり、前記丸刃は、前記連続紙の搬送方向と直交する方向へ移動しながら前記連続紙を部分カットすることが好ましい。
上記構成によれば、回転しながら移動する丸刃に形成されたスリットによって点線カットを実現することができる。
【0020】
また、上記カッター機構において、前記ローラーの搬送方向の下流側に、前記連続紙を完全に切断する別のカッターを備えることが好ましい。
上記構成によれば、部分カットするカッターとは別に、完全に切断する別のカッターも備えているので、2つのカッターを用途に応じて、使い分けることができる。例えば、レシートの次にクーポンを印刷するようなケースであれば、レシート印刷後に部分カットを行い、続けて、クーポン印刷後に完全カットすれば、レシートとクーポンがセットになった状態で出力させることができる。
【0021】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、上記何れかのカッター機構を備えたプリンターであって、前記連続紙に印刷する印刷ヘッドを備え、前記ローラーはプラテンローラーであり、前記印刷ヘッドは前記プラテンローラーと対向する位置にあるサーマルヘッドであり、前記プラテンローラーは、前記サーマルヘッドと前記連続紙を挟持して搬送することを特徴とする。
上記構成によれば、カッターがプラテンローラーの上流側に配置されているカッター機構を備えているので、サーマルヘッドによる印刷中心位置とカッター刃との間の長さXの無駄を無くすことができる。また、連続紙は、カッターに形成された切り欠き部によって部分カットされ、完全に切断されることがない。このため、サーマルヘッドとプラテンローラーとによって連続紙を狭持して搬送することで容易に排出できるとともに、次の印刷のための印刷位置への紙送りをスムースに実現するプリンターを提供することができる。
【0022】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、連続紙を搬送するローラーと、前記ローラーの搬送方向の上流側に配置したもので、少なくとも可動刃と固定刃のいずれか一方に切り欠き部を有するカッターと、を備えたカッター機構の制御方法であって、前記ローラーが、前記連続紙を搬送方向とは逆方向に搬送して弛ませるステップと、前記カッターが、前記可動刃を前記固定刃側へ移動させ、前記連続紙を切断片側と連続紙側に部分カットするステップと、前記ローラーが、前記カッターにより切断片側と連続紙側に部分カットされた連続紙を、共に搬送するステップを、含むことを特徴とする。
上記構成によれば、連続紙を逆方向に搬送させて弛ませることで、固定刃に対して可動刃を移動させた際に、可動刃によって連続紙が切り欠き部に押し込まれるようになる。これにより、可動刃によって連続紙が押し切られてしまうほどのテンションがかかることや、テンションによって連続紙が押し込まれる際に連続紙がずれてしまうことを防止することができ、部分カットを実現するカッター機構の制御方法を提供することができる。
【0023】
また、上記カッター機構の制御方法であって、前記カッターが部分カットするステップでは、前記可動刃が前記切り欠き部の深さに至る前まで移動して、部分カットすることが好ましい。
上記構成によれば、可動刃を切り欠き部の深さに至る前まで移動させることによって、切り欠き部分に位置する連続紙の一部分を切断することなく、切り残すことができるので、部分カットを実現することができる。
【0024】
また、上記カッター機構の制御方法であって、前記ローラーが搬送方向と逆方向へ前記連続紙を搬送するステップでは、前記逆方向への搬送量が、前記可動刃の移動量のほぼ2倍であることが好ましい。
上記構成によれば、可動刃の移動量のほぼ2倍に相当する搬送量だけ逆方向へ連続紙を搬送することによって、可動刃を固定刃に移動させた際に、連続紙を切り欠き部に押し込むために十分な弛みを持たせることができる。また、可動刃は切り欠き部の深さに至る前まで移動させるので、連続紙の弛みに必要な搬送量である、この移動量のほぼ2倍の搬送量だけ連続紙を逆方向に搬送すれば、切り欠き部分に位置する連続紙の一部分を切断することなく、切り残すことができるので、部分カットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のサーマルプリンターの搬送路におけるサーマルヘッドとオートカッターの配置関係を示す模式図である。
【図2】ロール紙の印刷結果における印刷中心位置とオートカット位置の関係を示す模式図である。
【図3】オートカッターによってロール紙を点線カットする過程を示した図である。
【図4】ロール紙の点線カット処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】オートカット位置に弛みが形成された状態を示す模式図である。
【図6】サーマルヘッドと2つのオートカッターとの配置関係を示す模式図である。
【図7】点線カットとフルカットの切り替え動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートにしたがって印刷された印刷物の一例を示す図である。
【図9】従来のオートカッター付きロール紙プリンターの概略構成を示す図である。
【図10】従来のオートカッター付きプリンターの搬送路におけるサーマルヘッドとオートカッターの配置関係を示す模式図である。
【図11】従来の印刷物における印刷中心位置とオートカット位置との間の長さXの関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態のカッター機構、それを備えたプリンター及びカッター機構の制御方法の実施形態について説明する。以下では、サーマルプリンターを例示して説明する。
【0027】
図1に示したように、本実施形態のサーマルプリンターの用紙搬送路には、ロール紙5をサーマルヘッド8と狭持しながら搬送するプラテンローラー9と、このプラテンローラー9の搬送方向(矢印A)の上流側に配置されたオートカッター20と、を有するカッター機構を備えている。
【0028】
また、サーマルプリンターは、プラテンローラー9と対向する位置に配置されたサーマルヘッド8を備えている。さらに、サーマルヘッド8の下流側には、マニュアルカッター25が配置されている。オートカッター20による切断を行わない動作モードが選択されている場合には、ユーザーが、印刷終了後に排出口から排出されたロール紙5を掴み、マニュアルカッター25によってロール紙5を切断して所定長さのロール紙片を得ることができる。
【0029】
本実施形態のオートカッター20は、受けカッター刃(固定刃)及び切断カッター刃(可動刃)のいずれか一方の刃に複数の溝(切り欠き部)が形成されている。
【0030】
図3に示すように、本実施形態のサーマルプリンターに搭載されているオートカッター20は、受けカッター刃21に複数の溝21aが形成されて、切断カッター刃22は直線状の刃を備えている。なお、複数の溝21aが形成される刃は、上記と逆で切断カッター刃22に形成しても良い。
【0031】
図3(a)(b)(c)は、ロール紙5の点線カット(部分カット)の過程を示す図である。図3(a)(b)(c)において、回転ギア22bを図示しない駆動原であるモーターによって回転させると、プリンター本体に固定された接続点22dが接続点移動用溝22c内を摺動することで、切断カッター刃22は支点22aを中心として回動する。切断カッター刃22が回転して受けカッター刃21側に移動すると、2つの刃が噛み合わされてロール紙5を点線カットする。
【0032】
図3(a)は、部分カット前の状態を示している。図3(b)は、点線カット中の状態であり、ロール紙5は受けカッター刃21に設けられた複数の溝部21aではカットされず、溝部以外の部分ではカットされて受けカッター刃21の溝21aに切断カッター刃22によって押し込まれた状態を示している。このとき、切断カッター刃22は、受けカッター刃21に対し、溝21aの深さに至る前まで移動する。切断カッター刃22を溝21aの深さ以上の位置まで移動させると、ロール紙5が完全に切断されてしまう。
【0033】
図3(c)は、点線カット後の状態であり、回転ギア22bによって切断カッター刃22が受けカッター刃21との噛み合わせ状態から解除された状態である。ロール紙5はカットされていない接続部5aとカットされた切断部5bとが交互に形成され点線状にカットされ、すなわち、ロール紙5は切断片側と連続紙片側に部分カットされる。
【0034】
ロール紙5をカットされていない接続部5aとカットされた切断部5bとが交互に形成される点線カットを実行するのは、サーマルヘッド8で印刷した直後にオートカッター20を動作させた場合でも、次の印刷のためにプラテンローラー9によってロール紙5を印刷開始位置へ紙送りするためである。すなわち、完全に切断するのではなく点線カットすることによって、印刷後のロール紙5と、次の印刷物となる未印刷のロール紙5を共に搬送できる張力を保持することができ、オートカッター20によって点線カットされた印刷後のロール紙5と、次の印刷物となる未印刷のロール紙5と、を共に搬送することが可能になる。
【0035】
サーマルプリンターは、図示しないCPUと、不揮発性の記憶部と、CPUが直接アクセスすることができる主記憶部と、を備えた制御部を有している。不揮発性の記憶部には、サーマルプリンターの各種動作を制御するための制御プログラム、サーマルプリンターの各種設定値等が記憶されている。
【0036】
CPUは、不揮発性の記憶部に記憶された制御プログラム等を実行して、サーマルプリンターの動作を統括制御し、制御部に接続された各部から入力される各種データを演算するとともに、演算結果を各部に出力する。以下では、制御部からの指示に応じて実行される印刷処理、ロール紙の点線カット処理、ロール紙の搬送処理を含む一連の処理について図4及び図5を参照して説明する。
【0037】
まず、制御部からの指示に応じてサーマルヘッド8でロール紙5に対して、例えばレシート1枚分の印刷を実行する。(ステップS1)。次に、図5に示すようにプラテンローラー9を通常の紙送り方向とは逆の方向(矢印B)に回転させて、オートカット位置50でロール紙5に若干の弛み5cを形成する。(ステップS2)。
【0038】
このとき、プラテンローラー9の逆回転によるロール紙5の搬送量は、切断カッター刃22の移動量のほぼ2倍となるように設定されている。これにより、切断カッター刃22を受けカッター刃21に移動させた際に、ロール紙5を点線カット用溝21aに押し込むために十分な弛み5cを持たせることができる。また、切断カッター刃22は溝21aの深さに至る前まで移動させるので、この移動量のほぼ2倍の搬送量だけロール紙5を逆方向に搬送すれば、溝21aに位置するロール紙5の一部分を切断することなく、切り残しておくことができるので、点線カットを実現することができる。ロール紙5を点線カット用溝21aに押し込む際に、テンションが掛かっていないので、位置がずれることもない。
【0039】
図5に示すように弛み5cが形成された後、オートカッター20の切断カッター刃22を動作させ、ロール紙5を最終印刷行の直後で点線カットする。(ステップS3)。次に、プラテンローラー9を正回転(矢印C)させて、次の印刷に備えるためロール紙5をサーマルヘッド8の印刷開始位置60にくるよう搬送する。(ステップS4)。
【0040】
次に、本実施形態のサーマルプリンターの変形例について説明する。変形例におけるサーマルプリンターは、搬送路上に2つのオートカッターを備えている。
図6に示すように、サーマルプリンターの用紙搬送路には、ロール紙5をサーマルヘッド8と狭持しながら搬送するプラテンローラー9と、このプラテンローラー9の搬送方向(矢印A)の上流側に配置された第1のオートカッター20と、を有するカッター機構を備えている。
【0041】
また、サーマルプリンターは、プラテンローラー9と対向する位置に配置されたサーマルヘッド8を備えている。さらに、サーマルヘッド8の下流側には、第2のオートカッター30が配置され、第2のオートカッター30より更に下流側には、マニュアルカッター25が配置されている。オートカッター20及び30による切断を行わない動作モードが選択されている場合には、ユーザーが、印刷終了後に排出口から排出されたロール紙5を掴み、マニュアルカッター25によってロール紙5を切断して所定長さのロール紙片を得ることができる。
【0042】
第1のオートカッター20は、上記実施形態で説明したものと同じ構成を有している。すなわち、図3に示したように受けカッター刃21に複数の溝21aが形成されており、切断カッター刃22は直線状の刃を備えており、ロール紙5をオートカット位置70において点線カットする。
【0043】
一方、第2のオートカッター30は受けカッター刃31及び切断カッター刃32は共に直線状の刃を備えていて、ロール紙5をオートカット位置90において完全に切断、つまりフルカットする。
【0044】
このように、変形例におけるサーマルプリンターは、2つのオートカッター20,30を備えているため、ロール紙5を点線カットするか、あるいはフルカットするかを選択的に実行することができる。
【0045】
点線カット及びフルカットの選択は、サーマルプリンターに備えられているディップスイッチ、メモリスイッチ等によってユーザーが任意に設定することができる。また、プログラムによるコマンドで、印刷用途に応じて点線カット及びフルカットを選択することもできる。
【0046】
なお、変形例におけるサーマルプリンターも、上記実施形態と同様に、CPUと、不揮発性の記憶部と、CPUが直接アクセスすることができる主記憶部と、を備えた制御部を有している。
【0047】
次に、図7のフローチャートにしたがって、2つのオートカッターを選択的に動作させる処理について説明する。
【0048】
まず、CPUは、受信バッファからデータを取り出し(ステップS11)、取り出した受信データがカットコマンドであるか否かを判定する。(ステップS12)。カットコマンドであると判定すると(ステップS12:Yes)、不揮発性の記憶部に予め記憶されているカット動作の設定を読み出す。(ステップS13)。
【0049】
読み出したカット動作の設定が点線カットであるか否かを判定し(ステップS14)、点線カットであると判定した場合は(ステップS14:Yes)、オートカット位置70(サーマルヘッド8の上流側)で点線カットを実行する(ステップS15)。一方、カット動作の設定が点線カットではないと判定した場合は(ステップS14:No)、図8に示すようにサーマルヘッド8における印刷開始位置80からオートカット位置90までの距離Yだけ紙送りする(ステップS16)。紙送り後、オートカット位置90(サーマルヘッド8の下流側)でのフルカットを実行する。(ステップS17)。
【0050】
ところで、ステップS12において、受信データがカットコマンドではなかった場合は(ステップS12:No)、受信データがカット動作を設定するための設定コマンドや動作設定値であるか否かを判定する(ステップS18)。カット動作を設定するデータである場合は(ステップS18:Yes)、カット動作の設定を不揮発性の記憶部へ保存する(ステップS19)。一方、カット動作を設定するデータではない場合は(ステップS18:No)、受信データが印刷データであると判定して受信データに基づき印刷処理を実行する(ステップS20)。
【0051】
CPUは、ステップS15、ステップS17及びステップS20の処理の後に、受信バッファにデータが存在するか否かの判断をする(ステップS21)。受信バッファにデータがある場合は(ステップS21:Yes)、上記の手順をステップS21の判断がNoになるまで繰り返し実行し、受信バッファにデータがない場合は(ステップS21:No)、処理を終了する。
【0052】
図7のフローチャートにしたがって、印刷された印刷物の一例を図8に示す。図8の印刷物では、印刷面Aの最終印刷行の下で点線カットが実行され、印刷面Bの最終印刷行の下でフルカットが実行される。このような形態は、例えばレシートに繋げてクーポンを印刷する場合に特に有効である。
【0053】
なお、上記実施形態及び変形例では、オートカッター20の受けカッター刃21に複数の溝21aを形成し、切断カッター刃22は直線状の刃を備えた構成について説明した。しかしながら、点線カットを実現するのはこのような実施形態に限定されない。具体的には、可動刃である切断カッター刃として、複数のスリットが形成された丸刃を採用し、この丸刃をロール紙5の搬送方向と直交する方向へ移動させることで、ロール紙5を点線カットすることもできる。この場合、固定刃である受けカッター刃には、直線状の受け刃を利用すればよい。
【0054】
上記実施形態によれば、オートカッター20はプラテンローラー9の上流側に配置されているので、図11に示した印刷中心位置とオートカット位置との間の長さXの無駄を無くすことができる。また、ロール紙5は、オートカッター20に形成された溝21aによって点線カットされ、完全に切断されることがない。このため、プラテンローラー9によって排出口へ容易に排出できるとともに、次の印刷のための印刷開始位置への紙送りをスムースに実現することが可能である。
【0055】
また、切断カッター刃22を溝21aの深さに至る前まで移動させることによって、溝21aに位置するロール紙の一部分を切断することなく、切り残しておくことができるので、点線カットを実現することができる。また、複数の溝21aを設けることによって、ユーザーが手で切り易い点線カットを実現することができる。
【0056】
また、上記変形例によれば、点線カットする第1のオートカッター20とは別に、フルカットする第2のオートカッター30も備えているので、2つのオートカッター20,30を、用途に応じて使い分けることができる。図8に示したように、印刷面Aにレシート印刷を実行した後に点線カットを行い、続けて、印刷面Bにクーポン印刷を実行した後にフルカットすれば、レシートとクーポンがセットになった状態で出力することができる。
【符号の説明】
【0057】
5:ロール紙(連続紙)、5a:接続部、5b:切断部、5c:弛み、8:サーマルヘッド、9:プラテンローラー、20:(第1の)オートカッター、21:受けカッター刃(固定刃)、21a:点線カット用溝、22:切断カッター刃(可動刃)、25:マニュアルカッター、30:第2のオートカッター、50,70,90:オートカット位置、60,80:印刷開始位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙を搬送するローラーと、
前記ローラーの搬送方向の上流側に配置した可動刃と固定刃を有するカッターと、を備え、
少なくとも前記可動刃と前記固定刃のいずれか一方に形成された切り欠き部により、前記カッターは前記連続紙を部分カットし、
前記ローラーは、前記カッターにより切断片側と連続紙側に部分カットされた連続紙を、共に搬送することを特徴とするカッター機構。
【請求項2】
前記可動刃は、前記固定刃に対し、前記切り欠き部の深さに至る前まで移動することを特徴とする請求項1に記載のカッター機構。
【請求項3】
前記可動刃は丸刃であり、前記切り欠き部は前記丸刃に形成されたスリットであり、
前記丸刃は、前記連続紙の搬送方向と直交する方向へ移動しながら前記連続紙を部分カットすることを特徴とする請求項1に記載のカッター機構。
【請求項4】
前記ローラーの搬送方向の下流側に、前記連続紙を完全に切断する別のカッターを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカッター機構。
【請求項5】
前記連続紙に印刷する印刷ヘッドを備え、
前記ローラーはプラテンローラーであり、前記印刷ヘッドは前記プラテンローラーと対向する位置にあるサーマルヘッドであり、
前記プラテンローラーは、前記サーマルヘッドと前記連続紙を挟持して搬送することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカッター機構を備えるプリンター。
【請求項6】
連続紙を搬送するローラーと、
前記ローラーの搬送方向の上流側に配置したもので、少なくとも可動刃と固定刃のいずれか一方に切り欠き部を有するカッターと、を備えたカッター機構の制御方法であって、
前記ローラーが、前記連続紙を搬送方向とは逆方向に搬送して弛ませるステップと、
前記カッターが、前記可動刃を前記固定刃側へ移動させ、前記連続紙を切断片側と連続紙側に部分カットするステップと、
前記ローラーが、前記カッターにより切断片側と連続紙側に部分カットされた連続紙を、共に搬送するステップを、
含むことを特徴とするカッター機構の制御方法。
【請求項7】
前記カッターが部分カットするステップでは、前記可動刃が前記切り欠き部の深さに至る前まで移動して、部分カットすることを特徴とする請求項6に記載のカッター機構の制御方法。
【請求項8】
前記ローラーが搬送方向と逆方向へ前記連続紙を搬送するステップでは、前記逆方向への搬送量が、前記可動刃の移動量のほぼ2倍であることを特徴とする請求項6または7に記載のカッター機構の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−148248(P2011−148248A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12887(P2010−12887)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】