説明

カップラー

【課題】 確実に連結できるカップラーと、これに加え1種類のソケットとプラグだけを識別して着脱することができるカップラーとを提供すること。
【解決手段】 ソケットS10とプラグP10との間に嵌合連結状態を保持する連結保持手段13として、複数のロックアーム15a,15bとロック爪部14cを備えたロック用溝14a、14bを設けるとともに、キー溝18a、18bとキー19a、19bを設けておき、これらを挿入後回動して1種類のソケットS10とプラグP10のみを確実かつ識別して嵌合連結可能としている。
これにより、仕様の合致した1種類のソケットS10とプラグP10だけを連結することができ、乗越え部14d,15dによって嵌合連結状態を確実に知ることができるようにしてある。
このカップラーをメタノール燃料電池に適用すれば、確実な連結ができ、しかも必要な濃度のメタノールのみを識別して供給したり、容器ごと取り替えることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はソケットとプラグとで構成され着脱可能に連結されるカップラーに関し、液体などを容器から簡単に本体側の容器などに移したり、容器ごと交換する場合に確実に連結することができるようにしたり、加えて1種類だけを識別して連結することができるようにするもので、特にメタノール燃料電池のカートリッジ容器と燃料電池本体との間に設けて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から機器の運転や使用にともなって減少する原料などの液体を補充する必要がある場合も多く、機器本体側に設けた容器にカートリッジ容器を連結して原料などの液体を移すことで供給したり、機器本体側の容器と別の容器を付け替えることで供給することが行われている。
【0003】
このような容器同士の連結や容器の付け替えを簡単にするため着脱可能な種々のカップラーが用いられている。
【0004】
例えば特許文献1には、図8に示すように、連結装置が開示されており、主流路と副流路とを備えたプラグPと、主流路と副流路とを備えプラグと嵌合可能であるとともに、嵌合した状態でプラグの主流路と副流路とを連通可能なソケットSとから構成されている。
【0005】
そして、この連結装置では、ソケットSは保持体1に固定された弁押体2の外周に形成された主流路2aと、さらに主流路2aの外側に形成された副流路2bと、それらの流路2a,2bを閉じるバルブ3a、3bを有し、各バルブ3a、3bはスプリング4a,4bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路2aおよび副流路2bを閉じることができる構成となっている。
【0006】
一方、プラグPは弁保持体5に摺動自在に保持された弁本体6の外周に形成された主流路6aと、さらに主流路6aの外側に形成された副流路6bと、それらの流路6a,6bを閉じるバルブ7a,7bを有し、各バルブ7a,7bはスプリング8a,8bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路6aおよび副流路6bを閉じることができる構成となっている。
【0007】
このようなソケットSとプラグPの接続がなされると、まず、ソケットSの副バルブ3bとプラグPの副バルブ7bが当接し、両者がそれぞれスプリング4b,8bの付勢力に抗して互いに離れる方向に移動し、副流路2b,6bが連通する。
【0008】
さらに、ソケットSとプラグPの接続がなされると、ソケットSの主バルブ3aがプラグPの内筒体の端面によって押され、スプリング4aに抗して後退して弁体が弁押体2の弁座から離れ、弁押体2との主流路2aを開くとともに、ソケットS側の弁押体の先端部平面とプラグP側の弁本体6に設けた弁部材の平面とが当接しプラグP側の弁本体6をスプリング8aの付勢力に抗して押圧し、弁本体を後退させてプラグP側の主バルブ7aを開き主流路6aと連通する。
【0009】
これにより、副流路が連通すると気体供給源から容器内に気体が供給され、その気体圧によって内袋を収縮させ、内袋内の液体がプラグ側の主流路からソケット側の主流路を介して液体を容器外に送出することができる。
【特許文献1】特開2003−172487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような連結装置を、例えばメタノール燃料電池の燃料の補給用のカップラーや容器ごとの取り替えによる補給用のカップラーとして利用する場合、確実に連結できるものが必要となるとともに、メタノール燃料電池の仕様により必要とされるメタノールの濃度(純度)が一定でなく、多種類の濃度のものが必要となっている。
【0011】
このため、確実に連結でき、しかもそれぞれのメタノール燃料電池の仕様に合致した濃度の燃料だけを供給でき、他の濃度のものを誤って供給することができないようにしたカップラーの開発が望まれている。
【0012】
この発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、確実に連結できるカップラーを提供しようとするものであり、これに加えて、1種類のものだけを識別して着脱することができるカップラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、これらソケットとプラグとの間に嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設け、この連結保持手段を、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にロックアームを設け、いずれか他方にこのロックアームが係止されるロック爪部を設けて構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、ソケットとプラグとの間に嵌合連結状態を保持する連結保持手段として、ソケットとプラグとのいずれか一方にロックアームを設け、いずれか他方にこのロックアームが係止されるロック爪部を設けて嵌合連結可能とすることで、ソケットとプラグだけを確実に連結することができるようになる。
これにより、メタノール燃料電池に容器内のメタノールを供給したり、容器ごと取り替えることが確実にできるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項2記載のカップラーは、請求項1記載の構成に加え、前記連結保持手段の前記ロック爪部を凹部に設け、前記ロックアームを前記凹部に挿入後回動して嵌合連結可能に構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロック爪部を凹部に設け、前記ロックアームを前記凹部に挿入後回動して嵌合連結可能に構成しており、挿入と回動の2つの動作によって連結することで、確実な操作によらなければ連結できず、一層確実に連結できるようにしている。
【0015】
また、この発明の請求項3記載のカップラーは、請求項1または2記載の構成に加え、前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを2個回動中心を挟む対角位置に設けて構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを2個回動中心を挟む対角位置に設けて構成しており、バランスよく連結状態を保持できるとともに、連結保持手段自体を薄く構成でき、設置スペースを小さくするようにしている。
【0016】
さらに、この発明の請求項4記載のカップラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを、それぞれの大きさ、幅、高さ、奥行きなどの形状を変えて1種類の前記ソケットおよび前記プラグのみを識別して嵌合連結可能に構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを、それぞれの大きさ、幅、高さ、奥行きなどの形状を変えて1種類の前記ソケットおよび前記プラグのみを識別して嵌合連結可能に構成しており、これらの大きさや幅、高さ、奥行きなどの形状を変えることで、必要な種類を簡単に識別して連結できるようになる。
【0017】
また、この発明の請求項5記載のカップラーは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記連結保持手段の前記ロックアームをプラグ側に設ける一方、前記ロック爪部を本体側に設けて構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロックアームをプラグ側に設ける一方、前記ロック爪部を本体側に設けて構成しており、本体側に突出させた部分を設けることなく、コンパクトに構成することができる。
【0018】
さらに、この発明の請求項6記載のカップラーは、前記請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記連結保持手段の前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方に、嵌合連結終端位置を感知し得る乗越え部を設けて構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方に、嵌合連結終端位置を感知し得る乗越え部を設けて構成しており、乗越え部を乗り越えることで、確実に連結されていることを感知できるようになる。
【0019】
また、この発明の請求項7記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にキーを、いずれか他方に前記キーが挿入されるキー溝を備え、これらキーおよびキー溝を、その形状、数、設置位置の少なくともいずれかを変えて識別連結可能な識別連結機構を構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、嵌合連結されるソケットとプラグとの一方にキーを他方にキー溝を設けて1種類のみを識別して連結できる識別連結機構を設けることで、仕様の合致した1種類のソケットとプラグだけを連結することができるようになる。
これにより、メタノール燃料電池として必要な濃度のメタノールのみを供給したり、容器ごと取り替えることができるようになる。
【0020】
さらに、この発明の請求項8記載のカップラーは、前記請求項1〜6のいずれかに記載のカップラーの連結保持手段に、前記請求項7記載のキーおよびキー溝による識別連結機構を組み合わせて構成してなることを特徴とするものである。
このカップラーによれば、前記請求項1〜6のいずれかに記載のカップラーの連結保持手段に、前記請求項7記載のキーおよびキー溝による識別連結機構を組み合わせて構成してあり、連結保持手段のロックアームおよびロック爪部と、識別連結機構のキーおよびキー溝とをそれぞれ組み合わせることで、識別できる種類を大幅に増大できるとともに、機構を簡素化してコンパクトに構成できるようになる。
【0021】
また、この発明の請求項9記載のカップラーは、請求項1〜8のいずれかに記載の構成に加え、前記ソケットおよび前記プラグに、それぞれ同色の識別部を設けて識別可能に構成したことを特徴とするものである。
このカップラーによれば、識別連結機構を、前記ソケットおよび前記プラグに、それぞれ同色の識別部を設けて識別連結可能に構成しており、識別部の色を変えて同色のものを識別して連結することで、確実に連結できるとともに、識別できる種類を増大したり、組み合わせで一層確実に識別できるようにしている。
【発明の効果】
【0022】
この発明の請求項1記載のカップラーによれば、ソケットとプラグとの間に嵌合連結状態を保持する連結保持手段として、ソケットとプラグとのいずれか一方にロックアームを設け、いずれか他方にこのロックアームが係止されるロック爪部を設けて嵌合連結可能としたので、ソケットとプラグだけを確実に連結することができる。
これにより、メタノール燃料電池に容器内のメタノールを供給したり、容器ごと取り替えることが確実にできるようになる。
【0023】
さらに、この発明の請求項2記載のカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロック爪部を凹部に設け、前記ロックアームを前記凹部に挿入後回動して嵌合連結可能に構成したので、挿入と回動の2つの動作によって連結することで、確実な操作によらなければ連結できず、一層確実に連結することができる。
【0024】
また、この発明の請求項3記載のカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを2個回動中心を挟む対角位置に設けて構成したので、バランスよく連結状態を保持することができるとともに、連結保持手段自体を薄く構成することができ、設置スペースを小さくすることができる。
【0025】
さらに、この発明の請求項4記載のカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを、それぞれの大きさ、幅、高さ、奥行きなどの形状を変えて1種類の前記ソケットおよび前記プラグのみを識別して嵌合連結可能に構成したので、これらの大きさや幅、高さ、奥行きなどの形状を変えることで、必要な種類を簡単に識別して連結することができる。
【0026】
また、この発明の請求項5記載のカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ロックアームをプラグ側に設ける一方、前記ロック爪部を本体側に設けて構成したので、本体側に突出させた部分を設けることなく、コンパクトに構成することができる。
【0027】
さらに、この発明の請求項6記載のカップラーによれば、前記連結保持手段の前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方に、嵌合連結終端位置を感知し得る乗越え部を設けて構成したので、乗越え部を乗り越えることで、確実に連結されていることを感知することができる。
【0028】
また、この発明の請求項7記載のカップラーによれば、嵌合連結されるソケットとプラグとの一方にキーを他方にキー溝を設けて1種類のみを識別して連結できる識別連結機構を設けたので、仕様の合致した1種類のソケットとプラグだけを連結することができる。
これにより、メタノール燃料電池として必要な濃度のメタノールのみを供給したり、容器ごと取り替えることができるようになる。
【0029】
さらに、この発明の請求項8記載のカップラーによれば、前記請求項1〜6のいずれかに記載のカップラーの連結保持手段に、前記請求項7記載のキーおよびキー溝による識別連結機構を組み合わせて構成したので、連結保持手段のロックアームおよびロック爪部と、識別連結機構のキーおよびキー溝とをそれぞれ組み合わせることで、識別できる種類を大幅に増大できるとともに、機構を簡素化してコンパクトに構成することができる。
【0030】
また、この発明の請求項9記載のカップラーによれば、識別連結機構を、前記ソケットおよび前記プラグに、それぞれ同色の識別部を設けて識別連結可能に構成したので、識別部の色を変えて同色のものを識別して連結することで、確実に連結することができるとともに、識別できる種類を増大したり、組み合わせで一層確実に識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0032】
図1〜図3はこの発明のカップラーの弁体およびその付勢手段を省略して示す一実施の形態にかかり、図1はソケットのA−A断面図、B−B断面図、底面図、図2はプラグの平面図、縦断面図、図3は連結状態および保持状態の横断面図、連結状態および保持状態の縦断面図である。
【0033】
このカップラー10は、ソケットS10と、このソケットS10と嵌合連結されるプラグP10とで構成され、例えばメタノール燃料電池の本体側FにソケットS10が設けられ、メタノール容器としてのカートリッジ側にプラグP10が設けられ、互いを連通させて本体側に燃料を補充したり、カートリッジごと交換するのに用いられ、主要部は、非金属材料、例えばポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどの合成樹脂で作られる。
【0034】
以下の説明では、図面上での上下を基準に説明するが、実際の容器本体への装着方向を何ら制限するものでなく、どのような方向で実施しても良い。
【0035】
このカップラー10のソケットS10は、燃料電池の本体Fに一体もしくは別体として取り付けられる部材に形成された装着孔11の先端部(図中、下端部)内周に装着される略円筒状のソケット本体12を備え、中間部外周のフランジ部12aを介して位置決めされている。
【0036】
このソケット本体12には、中心部に流路12bが形成され、この流路12bの基端部(図中、上端部)には、図示しない弁体およびこれを閉方向に付勢する金属製コイルばねと、この金属製コイルばねをメタノールと接触しないように覆う弾性体ハウジングとが設けてあり、弁体と一体の操作部をプラグPとの連結にともなって操作することで、自動的に弁体が開閉されるようになっている。
【0037】
そして、このカップラー10のソケットS10では、燃料電池の本体Fの装着孔11の先端部にプラグP10との嵌合連結状態を保持する連結保持手段13が設けられ、一方側14の溝などと相手側15のアームなどとで連結保持するようにする。
【0038】
この連結保持手段13の一方側14として2つのロック用溝14a、14bが形成され、底面図に示すように、例えば円弧状の溝が中心軸を挟んで対向して30度程度の範囲に設けて構成してあり、これらのロック用溝14a、14bの対角位置の略半分にそれぞれ段差部14cを形成することで、相手側15となる後述するプラグP側のロックアームが係止されるロック爪部を構成するようにしてある。
【0039】
これにより、この連結保持手段13では、相手側15の後述するプラグP側のロックアームを一方側14のロック用溝14a、14bに挿入後、回動させて操作することで、段差部で構成したロック爪部14cにロックアームを係止して連結状態を保持でき、段差部で構成したロック爪部14cのない部分で解放して着脱できるようになっている。
【0040】
この連結保持手段13では、保持状態になったことを確実に知ることができるようにするため、段差部で構成したロック爪部14cの外側のロックアームを回動してロック状態とする回動終端手前を知るため、ここでは、回動終端手前に突起状の乗越え部14dが形成してある。
【0041】
これにより、乗越え部14dをロックアームが乗越えることで、クリック感が生じ、確実に保持状態を知ることができる。
【0042】
また、この連結保持手段13では、例えばメタノール燃料電池で使用すべき燃料であるメタノールの濃度の異なるプラグPを嵌合連結できないようにするための識別手段16のひとつとして、2つのロック用溝14a、14bの円周方向の大きさ(幅)が変えてあり、相手側15の後述するプラグP側のロックアームも対応して大きさ(幅)が変えてあり、ロックアームをロック用溝14a、14bに挿入する場合に、180度反転すると挿入できないようにしてある。
【0043】
これにより、少なくとも2種類のプラグPを識別することが可能となる。
【0044】
さらに、このカップラー10には、例えばメタノール燃料電池で使用すべき燃料であるメタノールの濃度の異なるプラグPを嵌合連結できないようにするための他の識別手段17として、一方側にキー溝18を、他方側にキー19を設けて構成してあり、例えばソケットS10にキー溝18が設けられる。
【0045】
このキー溝18は、連結保持手段13の一方側14のロック用溝14a,14bの内側のソケット本体12の先端部のプラグP10を挿入するプラグ挿入孔12cの内周部に形成され、ソケットS10に嵌合連結されるプラグP10を挿入後、回動してロック状態とするための回動範囲、ここでは、例えばプラグP10の30度の回動範囲に対応して回動方向に移動可能な円弧状の長溝として形成してある。
【0046】
この他の識別手段17を構成する一方側のキー溝18は、例えば2つのキー溝18a,18bの互いのなす角度を変えて形成することで、識別できる組み合わせ数を増大できるようにしており、例えば図1中に示すように、メタノールのある1つの濃度では、例えば2つのキー溝18a,18bの互いのなす角度を90度に配置する。
【0047】
次に、このようなソケットS10に嵌合連結されるプラグP10について説明する。
このカップラー10のプラグP10は、例えばソケットS10と同様に主要部は、非金属材料、例えばポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどの合成樹脂で作られる。
【0048】
このカップラー10のプラグP10は、図2に示すように、図示しない燃料電池の燃料であるメタノールがいれられる容器のノズルの先端部外周に装着される略円筒状のプラグ本体21を備えており、プラグ本体21の基端部(図中、下端部)内周の係止リング部21aに図示しない容器のノズルが連結保持されるようになっている。
【0049】
このプラグ本体21には、中心部に流路21bを備えた小径円筒部21cが突き出して形成され、この流路21bの基端部(図中、下端部)には、ソケットS10と同様に、図示しない弁体およびこれを閉方向に付勢する金属製コイルばねと、この金属製コイルばねをメタノールと接触しないように覆う弾性体ハウジングとが設けてあり、弁体と一体の操作部をソケットSとの連結にともなって操作することで自動的に弁体が開閉され、プラグP10の流路21bとソケットS10の流路12bとが連通されるようになる。
【0050】
そして、このカップラー10のプラグP10には、プラグ本体21の先端部に、ソケットS10との嵌合連結状態を保持する連結保持手段13の相手側15として、ソケットS10の2つのロック用溝14a,14bに対応して2本のロックアーム15a、15bが前方に突き出して形成してある。
【0051】
これら2本のロックアーム15a,15bは、図2中の平面図に示すように、例えば外側面が円弧状とされ、先端部内側に突出した係止部15cがそれぞれに形成され、互いが中心軸を挟んで対向するよう配置してあり、それぞれの円周方向の幅がロック用溝14a、14bの円周方向の溝長さの半分以下としてある。
【0052】
したがって、連結保持機構13の一方側14のソケットS10のロック用溝14a,14bに他方側15のロックアーム15a、15bを挿入後、回動することで、一方側14の段差部で構成されるロック爪部14cに相手側15の2本のロックアーム15a,15bの先端部内側の係止部15cを係止することができ、連結状態を保持することができる。
【0053】
この連結保持手段13の他方側15でも、保持状態になったことを確実に知ることができるようにするため、2本のロックアーム15a,15bの先端部の係止部15cに、一方側14のロック爪部14cの外側の突起状の乗越え部14dに対応して、ロックアームを回動してロック状態とする回動終端手前に、突起状の乗越え部15dが形成してある。なお、乗越え部14d、15dの位置は、回動終端手前が感知できる位置であれば、どの位置であっても良い。
【0054】
また、この連結保持機構13の他方側15でも、例えばメタノール燃料電池で使用する燃料であるメタノールの濃度の異なるソケットS10を嵌合連結できないようにするための識別手段16に対応して、一方側14のロック用溝14a、14bの異なる大きさ(幅)に合わせて相手側15のロックアーム15a、15bの大きさ(幅)が変えてあり、すでに説明したように、180度反転した状態では、プラグP10とソケットS10とを嵌合連結することができないようにしてある。
【0055】
したがって、このカップラー10では、識別機構16を構成する一方側14のロック用溝14a、14bと相手側15のロックアーム15a,15bとの回動方向の大きさ(幅)を変えることで、2種類に識別することができる。
【0056】
さらに、このカップラー10のプラグP10には、例えばメタノール燃料電池で使用すべき燃料であるメタノールの濃度の異なるソケットS10を嵌合連結できないようにするための識別連結機構を構成する他の識別手段17の他方側を構成するキー19が設けてある。
【0057】
このキー19は、プラグ本体21の中心部に突き出した小径円筒部21cの外周に突き出して形成され、例えば横断面形状が略4角形状に形成してある。
【0058】
この他の識別手段17を構成する相手側のキー19は、すでに説明した一方側18の例えば2つのキー溝18a,18bに対応して2つのキー19a、19bを設けるようにし、互いのなす角度を変えて形成することで、識別できる組み合わせ数を増大できるようにしており、例えば図2中に示すように、すでに説明したソケットS10と嵌合連結可能とするメタノールのある1つの濃度では、例えば2つのキー19a,19bの互いのなす角度を90度に配置する。
【0059】
このカップラー10では、識別機構16を構成する一方側14のロック用溝14a、14bと相手側15のロックアーム15a,15bとの回動方向の大きさ(幅)を変えることで、2種類に識別することができ、さらに、もう1つの識別手段17の一方側の2つのキー溝18a、18bと相手側の2つのキー19a、19bのそれぞれのなす角度を90度に配置したことを組み合わせることで、完全に1つのソケットS10とプラグP10とだけが嵌合連結でき、他のものと識別することができる。
【0060】
このように構成したカップラー10では、図3に示すように、例えばメタノール燃料電池の本体側に設けたソケットS10のソケット本体12のプラグ挿入孔12cに、プラグP10のプラグ本体21にシールリング22を装着した小径円筒部21cを挿入するようにし、これと同時に、ソケットS10のロック用溝14a、14bにプラグP10のロックアーム15a,15bが挿入され、さらにソケットS10のキー溝18a、18bにプラグP10のキー19a,19bが挿入されるようにする。
【0061】
この後、ソケットS10に挿入したプラグP10を、例えば30度回動する。
すると、連結保持機構13の一方側14のソケットS10のロック用溝14a、14bの段差部で構成されるロック爪部14cに他方側15のロックアーム15a、15bの先端部内側の係止部15cが回動が進むにしたがって係止され、回動終端手前で互いの乗越え部14d、15d同士が乗越えてクリック感を生じさせた後、さらに回動することで、連結状態が保持される。
【0062】
これにより、ソケットS10とプラグP10の連結にともなってそれぞれの弁体と一体の操作部同士が操作されることで自動的に弁体が開閉され、プラグP10の流路21bとソケットS10の流路12bとが連通した状態となる。
【0063】
このソケットS10とプラグP10の連結の際、識別手段16を構成する一方側14のロック用溝14a、14bと相手側15のロックアーム15a,15bとの回動方向の大きさ(幅)を変えることおよび識別連結機構を構成するもう1つの識別手段17の一方側の2つのキー溝18a、18bと相手側の2つのキー19a、19bのそれぞれのなす角度を90度に配置してあるので、完全に1つのソケットS10とプラグP10とだけを嵌合連結することができ、他のものと識別することができる。
【0064】
そこで、このようなロック用溝14a、14bおよびロックアーム15a,15bの大きさを変えることと、2つのキー溝18a、18bおよび2つのキー19a、19bのなす角度を変えることを組み合わせることで、多くの識別が可能となる。
【0065】
すなわち、例えば図4に示すように、2つのキー溝18a、18bおよび2つのキー19a、19bのなす角度を45度ずつ変えて互いを45度、90度、135度、180度、225度、270度および315度の7種類とし、ロック用溝14a、14bおよびロックアーム15a,15bの大きさを変えることにより反転して連結できない2種類とすれば、合計27パターンの識別が可能となる。
【0066】
なお、識別パターンをさらに増大する必要がある場合には,互いのなす角度を小さな角度として種類を増大すれば良い。
【0067】
このように識別できるパターンが多くなると、キーやキー溝の配置を外観上見分けることが難しくなるが、たとえば、嵌合連結可能なカップラー10のソケットSとプラグP10とを同一色で色分けすることを、組み合わせることで、一層簡単に識別することができる。
【0068】
また、識別手段13のロック用溝14a、14bおよびロックアーム15a,15bの大きさを変えることにより反転して連結できないようにすることと組み合わせるもう1つの識別手段17のキー溝とキーを1つのキー溝と1つのキーだけで構成することもでき、この場合に、例えば図5に示すように、1つのキー溝18および1つのキー19のなす角度を45度ずつ変えて互いを0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度および315度の8種類とすれば、この角度の8種類分だけ識別することが可能となる。
この場合にも同一色で色分けすれば、一層容易に識別することができる。
【0069】
なお、上記実施の形態では、識別手段13のロック用溝14a、14bおよびロックアーム15a,15bの大きさを変えることにより反転して連結できないようにするため、円周方向の大きさ(幅)を変えるようにしたが、図6に示すように、放射方向の大きさ(高さ)を変えて反転して連結できないようにしても良く、さらに、形状として、奥行きなどを変えるようにしても良い。
【0070】
また、2つのロックアームの配置を対角位置とせず、角度を変えるようにしても良く、対角位置とする場合が、連結保持する場合の連結部に加わる力のバランスが良く、カップラー自体の厚さを薄く構成することができ、設置スペースを最小にすることかできる。
【0071】
さらに、識別手段のキーの横断面形状を略4角形としたもので説明したが、これに限らず他の形状であっても良く、特に樹脂成形上、割り型とする必要がある場合には、図7に示すように、キー19の横断面形状を先端が細い台形状とすれば、成形も容易となる。
【0072】
また、上記実施の形態では、嵌合連結可能なソケットとプラグの識別を2つの識別手段を組み合わせて行うように構成したが、これを単独で設けて識別するようにしても良く、この場合には、識別すべき種類ごとにキーやロックアームの大きさや設置位置などを変えるようにすれば良い。
【0073】
さらに、ロック用溝とロックアームをソケットとプラグとで互いに入れ替えて設けるようにしたり、キー溝とキーを互いに入れ替えて設けるようにしても良い。
また、ロックアームを挿入回動式として嵌合連結するようにしたが、ロックアームを開閉式として嵌合連結は挿入だけとし、ロックアームの基端部を操作して開閉することで、開放するようにしても良く、他の嵌合連結方式を採用して嵌合連結と開放を行うようにすることもできる。
【0074】
なお、カップラーの用途としてメタノール燃料電池のメタノールの容器と本体との連結の場合を例に説明したが、これに限らず他の用途でも良く、特に多種類を識別する必要がある場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明のカップラーの弁体およびその付勢手段を省略して示す一実施の形態にかかるソケットのA−A断面図、B−B断面図、底面図である。
【図2】この発明のカップラーの弁体およびその付勢手段を省略して示す一実施の形態にかかるプラグの平面図、縦断面図である。
【図3】この発明のカップラーの弁体およびその付勢手段を省略して示す一実施の形態にかかる連結状態および保持状態の横断面図、連結状態および保持状態の縦断面図である。
【図4】この発明のカップラーの一実施の形態にかかる識別パターンの説明図である。
【図5】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかる識別パターンの説明図である。
【図6】この発明のカップラーの弁体およびその付勢手段を省略して示す他の一実施の形態にかかるプラグの平面図、縦断面図である。
【図7】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかる識別パターンの説明図である。
【図8】従来の連結装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 カップラー
S10 ソケット
P10 プラグ
F メタノール燃料電池の本体側
11 装着孔
12 ソケット本体
12a フランジ部
12b 流路
12c プラグ挿入孔
13 連結保持手段
14 一方側
14a ロック用溝
14b ロック用溝
14c 段差部(ロック爪部)
14d 乗越え部
15 相手側
15a ロックアーム
15b ロックアーム
15c 係止部
15d 乗越え部
16 識別手段
17 識別手段(識別連結機構)
18 一方側のキー溝
18a キー溝
18b キー溝
19 他方のキー
19a キー
19b キー
21 プラグ本体
21a 係止リング
21b 流路
21c 小径円筒部
22 シールリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
これらソケットとプラグとの間に嵌合連結状態を保持する連結保持手段を設け、この連結保持手段を、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にロックアームを設け、いずれか他方にこのロックアームが係止されるロック爪部を設けて構成したことを特徴とするカップラー。
【請求項2】
前記連結保持手段の前記ロック爪部を凹部に設け、前記ロックアームを前記凹部に挿入後回動して嵌合連結可能に構成したことを特徴とする請求項1記載のカップラー。
【請求項3】
前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを2個回動中心を挟む対角位置に設けて構成したことを特徴とする請求項1または2記載のカップラー。
【請求項4】
前記連結保持手段の前記ロックアームと前記ロック爪部とを、それぞれの大きさ、幅、高さ、奥行きなどの形状を変えて1種類の前記ソケットおよび前記プラグのみを識別して嵌合連結可能に構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカップラー。
【請求項5】
前記連結保持手段の前記ロックアームをプラグ側に設ける一方、前記ロック爪部を本体側に設けて構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカップラー。
【請求項6】
前記連結保持手段の前記ソケットと前記プラグとの少なくともいずれか一方に、嵌合連結終端位置を感知し得る乗越え部を設けて構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカップラー。
【請求項7】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にキーを、いずれか他方に前記キーが挿入されるキー溝を備え、これらキーおよびキー溝を、その形状、数、設置位置の少なくともいずれかを変えて識別連結可能な識別連結機構を構成したことを特徴とするカップラー。
【請求項8】
前記請求項1〜6のいずれかに記載のカップラーの連結保持手段に、前記請求項7記載のキーおよびキー溝による識別連結機構を組み合わせて構成してなることを特徴とするカップラー。
【請求項9】
前記ソケットおよび前記プラグに、それぞれ同色の識別部を設けて識別可能に構成したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のカップラー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−22569(P2007−22569A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204835(P2005−204835)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】