説明

カップ容器のボトム部の構造

【課題】 ボトム部の耐圧強度を充分に高めることができるリブ付きボトム部をもつカップ容器を提供すること
【解決手段】 カップ容器1の中心線2周りの筒状の胴部3の下端を閉じるボトム部6であって、ボトム部6は外周縁で胴部3の中心線2方向の下端に連続する中心線2周りの環状の接地部7と、接地部7の内周縁に外周縁部11で接続して接地部7と同心状に位置していて接地部7の中心線2方向の位置よりも中心線2方向の容器内側に位置しているリブ付き底壁部8とを有し,リブつき底壁部8は、リブつき底壁部8の外周縁部11から中央部分15まで形成されていて中心線2方向の容器の内方に向かって反り返って張り出している反り返り壁部13と、リブつき底壁部8の外周縁部11近傍から中央部分15近傍まで反り返り壁部13の表面上から突出して反り返り壁部分と一体に形成されかつ放射状に形成され互いに中央部近傍で他のリブ14と連結している複数のリブ14とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は飲料などを収容するカップ容器の特にボトム部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カップ容器は一般に円筒状の胴部と胴部の下端を閉じるボトム部(底部)とを有し、内部に飲料等を内容物として充填し、胴部の上端に蓋材をヒートシール等によってシールし、包装して出荷され、店頭で販売される。このようなカップ容器は、例えばシート成形によって製造される。従来のカップ容器のボトム部形状は環状の接地部とその内側の底壁部とからなっている。この底壁部は平坦になっていることが多い(図7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平02−099713号公報
【特許文献2】特開2004−051109号公報
【特許文献3】特開2004−217266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに底壁部が平坦になっているカップ容器は内圧によってボトム部が外側に膨出変形し易いため、レトルト殺菌工程やウォーマーでの加温販売時等に図9に示すように熱膨張により変形を起こし、自立安定性が保てない場合があるという問題がある。そこでボトム部のこの変形を防ぐことが考えられた(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
特許文献1に記載されたカップ容器は、ボトム部の底壁部をドーム状に胴部の内方に凹ませて形成することによってボトム部の耐圧強度を高めるように構成されたものである(図8)。
しかるにこのように構成されたボトム部は、一時的に耐えうる圧力を超えてボトム部がバックリングにより反転して膨出した場合、その圧力が解消してもボトム部のバックリング状態が維持され、元の形状に復元しがたい問題がある。
特許文献2に記載されたカップ容器では、ボトム部をドーム状に胴部の内方に凹ませた上に、さらにリブを設けて耐圧強度を一層高める試みが行われているが、この文献に記載されたリブの構造では上述した復元性の課題は解決されない。
【0006】
なお、ボトム部をドーム状にしてリブを設ける構成は、PETボトルでは従来より様々な試みが行われている(例えば特許文献3)。ここでPETボトルはプリフォームから延伸ブロー成形法により成形され、強度の必要なボトム部を肉厚に残しつつ胴部は薄く延伸することが比較的容易である。
しかしながら、カップ容器においては一般に一定厚みのシートから成形されるため、肉厚の調整によりボトム部の強度を得るのは困難であり、技術的に全く事情が異なる。
【0007】
この発明は上記の如き事情に鑑みてなされたものであって、ボトム部の耐圧強度を充分に高めるとともに、一時的にバックリングが起こっても容易に元の形状に復元可能なカップ容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的に対応して、この発明のカップ容器は、カップ容器の筒状の胴部の下端を閉じるボトム部であって、前記ボトム部は前記胴部の下端に連続する環状の接地部と、前記接地部の内周縁に接続して前記接地部よりも容器内方に位置しているリブ付き底壁部とを有し、前記リブ付き底壁部は、前記容器内方に向かって反り返って張り出している反り返り壁部と、前記反り返り壁部の表面上から容器外方又は容器内方に突出してかつ放射状に形成された複数のリブとを有し、前記複数のリブは、前記リブ付き底壁部の中央部近傍で互いに他のリブと連結していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明では、カップ容器のボトム部がドーム状に反り返る反り返り壁部と放射状に配置されたリブを有するリブ付き底壁部で構成され、さらにリブがボトム部中央で互いに連結されているので、耐圧強度が大きいとともに、バックリングから容易に復元可能なボトム部を構成することができる。
【0010】
請求項2に記載された発明では、カップ容器がシート成形容器であるので、柔軟な材料からなる容器において耐圧強度の大きいボトム部を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載された発明では、リブがボトム部の接地部よりも容器内方に退避して形成されているので、リブが接地部の機能の邪魔になることがなく、ボトム部は安定して自立することができる。
【0012】
請求項4に記載した発明では、リブ付き底壁部の反り返り壁部とリブとは異なった半径の円弧状に反っているので、両者が協働して高い復元能力を発揮する。
【0013】
請求項5に記載した発明では、反り返り壁部とリブとは弧長が相違するのでカップ胴部の中心線方向の荷重が作用した場合の変形挙動が相違するので、両者が協働して高い復元能力を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カップ容器の縦断面図
【図2】カップ容器の平面図
【図3】カップ容器の底面図
【図4】カップ容器の正面図
【図5】カップ容器の斜視図
【図6】カップ容器のボトム部の拡大部分説明図
【図7】従来のカップ容器を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は底面図
【図8】従来のカップ容器を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は底面図
【図9】従来のカップ容器のボトムの変形を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下この発明の詳細を実施の形態を示す図面について説明する。図1から図6において1はカップ容器である。
【0016】
カップ容器1は中心線2をもつ筒状の胴部3を有し、胴部3の上端は開口4をなし、その周縁部にシール用フランジ5を有する。胴部3の下端はボトム部6で閉じられている。
【0017】
カップ容器1はシート材を用いて圧空成形、真空成形、プラグ成形など公知の製造方法により製造することができる。シート材としては前述の製造方法に適するものであれば特に制限はなく、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂、バリア性樹脂、酸素吸収性樹脂などの機能性材料、およびこれらの積層材を好適に使用できる。ボトム部6は中心線2周りの環状の接地部7とその内側に配置されたリブ付き底壁部8とから成っている。接地部7は外周縁で胴部3の下端に接続しており、リブ付き底壁部8は外周縁部11で接地部7の内周縁部12に接続している。
【0018】
リブ付き底壁部8は接地部7の位置よりも中心線2方向の容器内側に位置している。リブ付き底壁部8は反り返り壁部13と複数のリブ14a〜hを備えている。リブ付き底壁部8は接地部7の内周縁に直接接続してもよいが、短い段差部を介して接続するようにしてもよい。図示した例ではリブ14は8本だが、3本以上あれば本発明の効果は発揮される。
【0019】
反り返り壁部13はリブ付き底壁部8の外周縁部11近傍から中心線2が通る中央部近傍まで形成されていて中心線2方向の容器の内方に向って反り返って張り出している。
【0020】
反り返り壁部13はリブ付き底壁部8の外周縁部11から中央部15まで所定の中心角で扇状に形成されて中心線2周りに所定の角度間隔で配置されて間をリブ14a〜hでつながれて構成される。
【0021】
リブ14a〜hはリブ付き底壁部8の外周縁部11近傍から中央部15近傍まで反り返り壁部13の表面上から突出して反り返り壁部13と一体に形成されかつ放射状に形成されている。複数のリブ14a〜hのそれぞれは中央部15近傍で他のリブ14a〜hと連結している。
【0022】
リブ14a〜hは図6に示すように反り返り壁部13の外表面から中心線2方向の容器外方に突出し、または反り返り壁部13の内表面から容器内方に突出して形成される。ただしリブ14a〜hは接地部7より容器外方に突出することはなく、接地部7より容器内方に位置する。すなわち、リブ14a〜hの稜線16は接地部7の中心線2方向の位置よりも容器内方に位置している。
【0023】
反り返り壁部13は半径rの仮想の部分球面に一致するように形成されている(図6)。この反り返り壁部13を表す仮想の部分球面の弧長(中心線2を含む断面において、一方の外周縁から中心線2との交点を通って他方の外周縁まで)はr・2θである。
反り返り壁部13の外表面から容器外方に突出するリブリブ14a〜hの稜線16は、rよりも大きい半径rの仮想の部分球面に一致し(r<r)、反り返り壁部13を表す仮想の部分球面と反り返り壁部13の外周縁で交わるように形成されている。稜線16の長さ2本分(図6のr・2θに相当)は、反り返り壁部13を表す仮想の部分球面の弧長より小さい。
リブ14a〜hは反り返り壁部13の内表面から容器内方に突出するように形成してもよく、その場合の稜線16Bは、rよりも小さい半径rの仮想の部分球面に一致するように形成される(r>r)。また稜線16Bの長さ2本分(図6のr・2θに相当)は、反り返り壁部13を表す仮想の部分球面の弧長より大きい。
図示した例では、反り返り壁部13、リブ14a〜hの稜線16(16B)はそれぞれ仮想の部分球面と全体が一致しているが、部分的に一致するようにしてもよい。すなわち中心線2を含む断面で見て、いくつかの半径の異なる円弧、あるいは短い直線を滑らかにつないで構成されるようにしてもよい。
このような場合、それぞれの最も長い区間で一致する仮想の部分球面同士が上記の関係を満たせばよい。
【0024】
上記以外の形態としては、例えば反り返り壁部13を表す仮想の部分球面をそのまま下方(または上方)にずらした仮想の部分球面と一致するようにリブ14a〜hの稜線16(16B)を形成することもできる(r=r(r=r))。この場合、リブ14の稜線16(16B)の外周縁は適宜の曲面で反り返り壁部13の外周縁と滑らかにつなぐようにする。
【0025】
このように構成されたカップ容器のボトム部においては、リブ付き底壁部8を構成する反り返り壁部13とリブ14a〜hとは形状及び構成が相違していて、中心線2方向の内圧に対する梁としての作用が相違し、内圧によってリブ14a〜hを容器外側に変形させる力が作用した場合、リブ14a〜hは中央部15で押し合って支えるので、大きな耐圧強度が得られるとともに、一時的にバックリングが生じても容易に元の形状に復元しようとする力が生じる。
【0026】
以上の説明から明らかなとおり、この発明によれば、ボトム部の耐圧強度を充分に高めるとともに、一時的にバックリングが起こっても容易に元の形状に復元可能なカップ容器を得ることができる。
【0027】
さらにこの発明では従来のカップ容器の製造工程においてボトム部の金型交換だけで対応可能なので大幅な金型設備費用の投資が必要なく実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 カップ容器
2 中心線
3 胴部
4 開口
5 シール用フランジ
6 ボトム部
7 接地部
8 リブ付き底壁部
11 外周縁部
12 内周縁部
13 反り返り壁部
14a〜h リブ
15 中央部
16、16B 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ容器の筒状の胴部の下端を閉じるボトム部であって、前記ボトム部は前記胴部の下端に連続する環状の接地部と、前記接地部の内周縁に接続して前記接地部よりも容器内方に位置しているリブ付き底壁部とを有し、前記リブ付き底壁部は、前記容器内方に向かって反り返って張り出している反り返り壁部と、前記反り返り壁部の表面上から容器外方又は容器内方に突出してかつ放射状に形成された複数のリブとを有し、前記複数のリブは、前記リブ付き底壁部の中央部近傍で互いに他のリブと連結していることを特徴とするカップ容器のボトム部構造。
【請求項2】
前記カップ容器はシート成形容器であることを特徴とする請求項1記載のカップ容器のボトム部構造。
【請求項3】
前記複数のリブは、前記反り返り壁部の外表面から容器外方に突出していて、かつ前記接地部よりも容器内方に位置していることを特徴とする請求項1記載のカップ容器のボトム部構造。
【請求項4】
前記反り返り壁部は、所定半径の仮想の部分球面に一致する部分を有し、前記リブの稜線は、前記反り返り壁部の外表面から容器外方に突出していて、前記所定半径よりも大きい半径の仮想の部分球面に一致する部分を有し、または前記反り返り壁部の内表面から容器内方に突出していて、前記所定半径よりも小さい半径の仮想の部分球面に一致する部分を有することを特徴とする請求項1記載のカップ容器のボトム部構造。
【請求項5】
容器の中心線と前記リブの稜線とを含む断面において、前記リブの稜線の長さの2本分の合計は、前記反り返り壁部を表す仮想の部分球面の弧長よりも小さいまたは大きい
ことを特徴とする請求項1記載のカップ容器のボトム部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−16543(P2011−16543A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161386(P2009−161386)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】