説明

カテーテルおよび医療用バルーン

複合材料を含む壁を有する医療用バルーンおよび/またはカテーテルが開示される。複合材料は、ポリマー材料と、炭素の同素体を含有する粒子とを含む。いくつかの場合において、粒子の少なくとも一部がポリマー材料に共有結合している。このような医療用バルーンおよび/またはカテーテルを製造するための方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カテーテルおよび医療用バルーン、ならびにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、動脈、他の血管および他の体内の管腔などの様々な通路を含む。これらの通路は、ときには、例えば腫瘍によって閉塞され、またはプラークによって制限される。閉塞された体内管を広げるために、例えば血管形成術でバルーンカテーテルを使用することができる。
【0003】
バルーンカテーテルは、細長いカテーテル本体によって担持される膨張および収縮可能なバルーンを含むことができる。バルーンは、最初に、体内への挿入を容易にするためにバルーンカテーテルの径方向の形状を減少させるようにカテーテル本体のまわりに折り畳まれる。
【0004】
使用中、体内管内に配置されたガイドワイヤを介してバルーンカテーテルを通すことによって、折り畳まれたバルーンを体内管内の目標箇所、例えば、プラークによって閉塞された部分に送達することができる。次いで、例えば、バルーンの内部に流体を導入することによってバルーンが膨張される。バルーンを膨張させると、体内管が血液流量を増加させることができるように、体内管を径方向へ拡張させることができる。使用後、バルーンが収縮され、身体から引き抜かれる。
【0005】
別の技術において、バルーンカテーテルを使用して、閉塞された通路を開く、および/または補強するためのステントまたはステントグラフトなどの医療用デバイスを配置することもできる。例えば、ステントが目標部位へ搬送されているときに、ステントを圧縮または縮小した形で支持するバルーンカテーテルによって、ステントを体内に送達することができる。目標部位に到達すると、バルーンを膨張させて、拡張したステントを変形させ、管腔壁と接触する所定の位置に固定することができる。次いで、バルーンを収縮させ、カテーテルを引き抜くことができる。ステント送達については、ヒース(Heath)の特許文献1にさらに記載されている。
【0006】
1つの一般的なバルーンカテーテル設計は、内管が外管に囲まれた同軸配列を含む。内管は、典型的には、ガイドワイヤを介してデバイスを送達するのに使用できる管腔を含む。膨張流体は、内管と外管との間を流れる。この設計の例が、アルネイら(Arney et al.)の特許文献2に記載されている。
【0007】
他の一般的な設計において、カテーテルは、並列に配列されたガイドワイヤ管腔および膨張管腔を形成する本体を含む。この配列の例が、ワングら(Wang et al.)の特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,290,721号明細書
【特許文献2】米国特許第5,047,045号明細書
【特許文献3】米国特許第5,195,969号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、カテーテルおよび医療用バルーン、ならびにこれらの製造方法に関する。また、本開示は、複合材料を含む壁を有することにより、所定の用途に応じて特性を向上させた医療用バルーンおよび/またはカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本開示は、複合材料を含む壁を備える医療用バルーンおよび/またはカテーテルを特徴とする。複合材料は、第1のポリマー材料と、炭素の同素体を含有する第1の粒子とを含む。第1の粒子の少なくとも一部が、第1のポリマー材料に結合、例えば共有結合している。第1の粒子を第1のポリマー材料に結合、例えば、共有結合および/または水素結合させると、分散性を向上させることができ、複合材料のポリマー材料における第1の粒子の粒子凝集および/または相分離を低減することができる。
【0011】
実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を有することができる。第1のポリマー材料は、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン共重合体、ポリアミド、ポリエーテル−ポリアミド共重合体、ポリ尿素、ポリエーテル−ポリ尿素共重合体、ポリアミン、ポリエステル、ポリシロキサン、またはこれらの混合物を含む部分を含む。第1のポリマー材料は、熱可塑性材料を含む。第1のポリマー材料は、架橋材料を含む。複合材料は、第1のポリマー材料と異なる第2のポリマー材料をさらに含む。粒子は、形が繊維状である。粒子は、形が管状である。粒子は、コイル状をなす。炭素の同素体は、グラファイト、C60、C70、単層カーボンチューブ、多層カーボンチューブ、非晶質炭素、炭素コイル、炭素螺旋体、炭素ロープ、炭素繊維、またはこれらの混合物を含む。第1の粒子はそれぞれ、長さ直径比が5を超える。第1の粒子はそれぞれ、長さ直径比が25を超える。第1の粒子はそれぞれ、最大寸法が2000nmを超えない。第1の粒子はそれぞれ、最大寸法が1000nmを超えない。第1の粒子はそれぞれ、分離しており、複合材料全体にわたり間隔をおいて配置される。複合材料は、第1の粒子と異なる第2の粒子をさらに含む。第2の粒子を第1のポリマー材料に共有結合してもよく、しなくてもよい。第2の粒子は、金属、金属酸化物、メタロイド酸化物、クレイ(clay)、セラミック、またはこれらの混合物である。第1の粒子の全数の少なくとも約2.5パーセントが、第1のポリマー材料に共有結合している。第1の粒子の全数の少なくとも約25パーセントが、第1のポリマー材料に共有結合している。複合材料は、約5重量パーセントから約60重量パーセントの、炭素の同素体を含有する第1の粒子を含む。複合材料は、約15重量パーセントから約50重量パーセントの、炭素の同素体を含有する第1の粒子を含む。第1の粒子は、炭素の同素体の炭素原子と第1のポリマー材料とを連結する共有結合によって第1のポリマー材料に共有結合している。第1の粒子は、炭素の同素体に共有結合によって結合している求核成分と、第1のポリマー材料または初期の第1のポリマー材料に共有結合によって結合している相補的求電子成分との反応によって第1のポリマー材料に共有結合している。第1の粒子は、炭素の同素体に共有結合によって結合している求電子成分と、第1のポリマー材料または初期の第1のポリマー材料に共有結合によって結合している相補的求核成分との反応によって第1のポリマー材料に共有結合している。求核成分は、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、これらの共役塩基またはこれらの混合物から選択される求核試薬を含む。求電子成分は、カルボン酸基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ウレタン基、尿素基、またはこれらの混合物から選択される求電子試薬を含む。第1の粒子はそれぞれ、約2から約1000個の求核および/または求電子成分を有する。炭素の同素体を含む第1の粒子の少なくとも一部は、炭素の同素体に結合している基体をさらに含む。基体は、その表面および/または内部に炭素の同素体を形成する触媒を有するクレイを含む。クレイは、カオリナイト、モントモリロナイト−スメクタイト、イライト、緑泥石またはこれらの混合物を含む。クレイは、モントモリロナイトを含む。壁は、多層であるか、または多層を含む。複合材料は多層の各層内に存在し、各層はその隣の層と一体になっている。複合材料は単層内に存在し、単層は、複合材料と異なる材料で形成された第2の層と一体になっている。壁は、治療薬をその内部および/または表面に含む。
【0012】
別の態様において、本開示は、第1のポリマー材料と、炭素の同素体を含有する第1の粒子とを含む複合材料を有する壁を形成することを含む医療用バルーンおよび/またはカテーテルの製造方法を特徴とする。
【0013】
実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を有することができる。壁は、基体を設け、複合材料を基体上に堆積することによって形成される。該方法は、基体を除去することをさらに含む。基体は、氷を含む。複合材料は、複合材料の溶液を基体上に噴霧することによって堆積される。該方法は、噴霧を繰り返すことをさらに含む。
【0014】
別の態様において、本開示は、ポリマー材料および粒子を有する複合材料を含む壁を備える医療用バルーンおよび/またはカテーテルを特徴とする。粒子は、クレイを含む材料を有する基体と、基体から伸びる炭素の同素体とを含む。
【0015】
実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を有することができる。クレイは、炭素の同素体を形成する触媒をその表面および/または内部に有する。クレイは、カオリナイト、モントモリロナイト−スメクタイト、イライト、緑泥石またはこれらの混合物を含む。クレイは、モントモリロナイトを含む。炭素の同素体を形成する触媒は、第8族または9族の元素を含む。炭素の同素体を形成する触媒は、鉄であるか、または鉄を含む。
【0016】
実施形態および/または態様は、以下の利点の1つまたは複数を含む。複合材料の粒子が、複合材料のポリマー材料全体にわたり均一に分散され、過度に凝集されていない複合材料で構成されたバルーンおよびカテーテルを提供することができる。これにより、均一で再現性のある特性を有するバルーンおよび/またはカテーテルを提供することができる。耐破壊性、耐引掻き性、破裂強度、引張強度、多孔性、薬物放出性、導電性および熱伝導性などの特性が所定の用途に応じて向上されたバルーンを提供することができる。バルーンおよび/またはカテーテルは、熱伝導性および/または導電性であり得る。複合材料は、高引張強度、例えば100MPaを超える、例えば、150MPa、250MPaを超える、またはさらに300MPaを超える引張強度を有することができ、薄肉および超薄肉バルーンおよび/またはカテーテルが可能になる。複合材料は、熱可塑性または熱硬化性を有することができる。複合材料のポリマー材料は、本質的に直鎖状、分枝状、高度に直鎖状、または樹枝状であることが可能であり、複合材料が、所定の用途に応じて調整される特性を有することが可能になる。カテーテルおよび/またはバルーンは、向上した生体適合性を有することができる。
【0017】
本明細書に挙げられているすべての文献、特許出願、特許およびすべての参考文献は、これらが含むすべてについて全体を本願明細書に援用する。
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴および利点は、説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】折り畳んだ状態のステントの送達を示す部分縦断面図。
【図1B】ステントの拡張を示す部分縦断面図。
【図1C】体の管腔におけるステントの展開を示す部分縦断面図。
【図2】ポリマー材料と、炭素の同素体を含む粒子とを含む複合材料を有する医療用バルーンおよび/またはカテーテルの大きく拡大された概略図。
【図3A】官能化粒子の概略図。
【図3B】カルボン酸基で官能化された粒子の概略図。
【図4A】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4B】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4C】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4D】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4E】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4F】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4G】様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図4H】基体、および基体から伸びる炭素コイルを含む粒子の概略図。
【図4I】コイルおよび基体上のカルボン酸基で官能化された図4Hの粒子の概略図。
【図5】カルボン酸基官能化炭素コイルを製造するためのいくつかの合成手法の概略図。
【図6A】カルボン酸基官能化炭素コイルから酸塩化物官能化炭素コイルを製造するための合成手法の概略図。
【図6B】カルボン酸基官能化炭素コイルの誘導体を製造するためのいくつかの合成法の概略図。
【図7】トルエン2,4−ジイソシアネートと反応するカルボン酸基官能化炭素コイルの概略図。
【図8】図7の反応生成物およびポリオールからのプレポリマーの調製の概略図。
【図9A】いくつかのポリオールの代表的な構造を示す図。
【図9B】いくつかのポリオールの代表的な構造を示す図。
【図9C】いくつかのポリオールの代表的な構造を示す図。
【図9D】いくつかのポリオールの代表的な構造を示す図。
【図10】高分子量のイソシアネート末端ポリマーの調製の概略図。
【図11】図10のポリマーおよびイソプロパノールからの高分子量の末端封鎖ポリマーの調製の概略図。
【図11A】図11に示されるポリマーにおける水素結合部位の概略図。
【図12】トリアルコキシ末端シランポリマーの調製の概略図。
【図13】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図13A】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図13B】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図13C】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図13D】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図13E】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図13F】様々なポリアミン材料と反応するカルボン酸基官能化炭素コイル/図8のトルエン−2,4−ジイソシアネート反応性生物の概略図。
【図14】トリアルコキシ末端シランポリマーの調製およびその架橋の概略図。
【図15】ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応によるイソシアネート末端プレポリマーの調製の概略図。
【図16】ポリオールと反応して、エステル基を有するプレポリマーを生成する酸塩化物官能化炭素コイルの概略図。
【図17】図1Aのバルーンを製造するための方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
複合材料を含む壁を備える医療用バルーンおよび/またはカテーテルが開示される。複合材料は、ポリマー材料と、炭素の同素体を含有する粒子とを含む。場合によっては、粒子の少なくとも一部が、ポリマー材料に結合、例えば、共有結合または水素結合している。この医療用バルーンおよびカテーテルを製造するための方法も開示される。
【0020】
図1A〜1Cを参照すると、未拡張のステント10が、カテーテル14の先端部付近に担持されたバルーン12の上に配置され、バルーンおよびステントを担持する部分が閉塞18の領域に到達するまで、管腔16、例えば、冠状動脈などの血管を通じて導かれる(図1A)。次いで、ステントは、バルーン12を膨張させることによって径方向に拡張され、管壁に押しつけられる結果、閉塞18が圧縮され、それを囲む管壁が径方向に拡張する(図1B)。次いで、バルーンから圧力が解除され、血管からカテーテルが引き抜かれて、管腔中に拡張したステント10が残る(図1C)。
【0021】
次に図2を参照すると、カテーテル14および/またはバルーン12は、それぞれ、第1のポリマー材料32および第1の粒子34を含む複合材料30で構成された壁21または壁20を有する。第1の粒子34は、炭素の同素体、例えば、炭素コイルおよび炭素螺旋体を含み、第1のポリマー材料32内に均一に分散される。第1の粒子34の少なくとも一部が、第1のポリマー材料32に共有結合している。次に図3Aおよび3Bを参照すると、官能成分(f)、例えば、求核または求電子成分を有する粒子36を使用することによって、第1の粒子34を第1のポリマー材料34、または第1のポリマー材料の一部になる材料に共有結合させることができる。例えば、以下にさらに詳細に記載されるように、ポリマーマトリックスまたはプレポリマーマトリックス材料の一部である相補的成分、例えば、1つまたは複数のイソシアネート基を含む成分との反応によって、複数のカルボン酸基39を有する粒子38をポリマーマトリックス上にグラフトすることができる。
【0022】
実施形態において、第1のポリマー材料は、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン共重合体、ポリアミド、ポリエーテル−ポリアミド共重合体(例えば、PEBAX(登録商標)ブランドのポリエーテル−ブロック−ポリアミド)、ポリ尿素、ポリエーテル−ポリ尿素共重合体、ポリアミン、ポリエステル(例えばPET)、ポリシロキサン、またはこれらのいずれかの混合物であるポリマー部を含む。
【0023】
実施形態において、第1のポリマー材料は、熱可塑材加工装置、例えば、押出装置、射出成形装置、ブロー成形装置またはロト成形装置を使用して複合材料を加工することを可能にする熱可塑性材料である。複合材料が熱可塑性材料であるときは、それを溶媒に溶解させ、基体、例えば、別のポリマー材料から製造された基体上にキャスティングまたはコーティングすることができる。
【0024】
他の実施形態において、第1のポリマー材料は、架橋材料である。
さらに他の場合において、第1のポリマー材料は、最初は熱可塑剤であり、壁が形成された後に、ガンマ放射線などのイオン化放射線で処理することによって第1のポリマーが架橋される。
【0025】
望まれる場合は、複合材料は、第1のポリマー材料と異なる第2、第3、第4または第5のポリマー材料をさらに含むことができる。
実施形態において、粒子は、形が繊維状または形が管状である。他の実施形態において、粒子は、形がコイル状である。
【0026】
第1の粒子はそれぞれ、5を超える、例えば、10を超える、25を超える、50を超える、100を超える、またはさらに250を超える長さ直径比を有することができる。
第1の粒子はそれぞれ、6000nmを超えない、例えば、5000nmを超えない、2500nmを超えない、2000nmを超えない、1500nmを超えない、1000nmを超えない、750nmを超えない、または500nmを超えない最大寸法を有することができる。実施形態において、各第1の粒子の最大寸法は、250nm未満、例えば、200nm未満、150nm未満、またはさらに100nm未満である。
【0027】
実施形態において、炭素の同素体は、本質的に熱伝導性および/または導電性である。実施形態において、炭素の同素体は、例えば、1つまたは複数の金属がドープされるため、導電性および/または熱伝導性になる。そのような場合において、複合材料、ならびに複合材料から形成されたバルーンおよび/またはカテーテルを導電性および/または熱伝導性にすることができる。
【0028】
炭素の同素体は、例えば、グラファイト、C60、C70、単層カーボンチューブ、多層カーボンチューブ、非晶質炭素、炭素コイル、炭素螺旋体(例えば、キラル右旋または左旋螺旋体)、炭素ロープ、炭素繊維、またはこれらの混合物であり得る。望まれる場合は、カーボンナノチューブは、金属などの炭素以外の原子を組み入れることができる。いくつかの実施形態において、炭素の同素体は、90重量パーセントを超える、例えば、91、93、95、97重量パーセントを超える、さらに99重量パーセントを超える炭素を含む。実施形態において、炭素の同素体は、実質的に炭素から形成され、境界に結合水素のみを有する。
【0029】
図4A〜4Gは、様々な炭素コイルの走査型電子顕微鏡写真である。特に、図4A〜4Dは、巻線の間に空間が存在するように比較的間隔をおいて配置された炭素コイルを示し、図4E〜4Gは、コイルの巻線が隣接する巻線に接触する比較的密な構造を有する炭素コイルを示す。図4Cは、炭素コイルが、中央コイル52から他のコイル51が発生する分岐点50を有し得ることを示す。実施形態において、炭素コイルにおける巻線の間の間隔(S)は、約10nmから約250nm、例えば約20nmから約100nm、または約25nmから約75nmの範囲であり得る。実施形態において、コイルを形成する棒の厚さ(T)は、約20nmから約100nm、約25nmから約80nm、または約30nmから約75nmである。非官能化炭素コイルの製造方法が、ナカヤマら(Nakayama et al.)の米国特許第7,014,830号、同第6,558,645号および同第6,583,085号;デックら(Deck et al.)、Carbon 44(2006)、267−275;およびヤンら(Yang et al.)、Carbon 43(2005)、916−922に記載されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブが利用される。様々なカーボンナノチューブ、およびこれらの特性のいくつかが、モウルトンら(Moulton et al.)、Carbon、43、1879−1884(2005);ジアングら(Jiang et al.)、Electrochemistry Communications、7、597−601(2005);およびシムら(Shim et al.)、Langmuir、21(21)、9381−9385(2005)に記載されている。
【0031】
図4Hを参照すると、実施形態において、第1の粒子の少なくとも一部が、クレイ材料を含む基体62から伸びるコイル60の形の炭素の同素体を含む。このような実施形態において、クレイは、カオリンクレイ、モントモリロナイトースメクタイト、イライトクレイ、緑泥石クレイ、またはこれらのクレイの混合物であり得る。基体62は、例えば、炭素の同素体を形成する触媒をその表面および/または内部に含むクレイを含むことができる。次に図4Iを参照すると、官能成分(f)、例えば、炭素の同素体および/または基体に共有結合するカルボン酸基を有する粒子70を使用することによって、第1のポリマー材料、または第1のポリマー材料の一部になる材料にこの粒子を共有結合させることができる。プレポリマーマトリックス材料のポリマーマトリックスの一部である相補的成分、例えば、1つ以上のイソシアネート基を含む成分の反応によって、カルボン酸基をポリマーマトリックス上にグラフトすることができる。そこから伸びる炭素の同素体を有するクレイ基体を含む様々な粒子の製造方法が、ルーら(Lu et al.)、Composites Scirnce and Technology 66(2006)、450−458およびCarbon 44(2006)、381−392に記載されている。
【0032】
実施形態において、第1の粒子の全数の少なくとも約2.5パーセントが第1のポリマー材料に共有結合され、例えば、第1の粒子の少なくとも約15パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも約50パーセント、少なくとも約75パーセント、少なくとも約90パーセントが第1のポリマー材料に共有結合している。
【0033】
複合材料は、約15重量パーセントから約75重量パーセント、例えば、約15重量パーセントから約50重量パーセント、または約25重量パーセントから約45重量パーセントの第1の粒子を含むことができる。
【0034】
実施形態において、第1の粒子はそれぞれ、炭素の同素体の炭素原子と第1のポリマー材料とを連結する共有結合によって、第1のポリマー材料に共有結合している。
実施形態において、第1の粒子は、炭素の同素体に共有結合によって結合している求核成分と、第1のポリマー材料、または第1のポリマー材料の一部になる材料(例えばプレポリマー)に共有結合によって結合している相補的求電子成分との反応によって、第1のポリマー材料に共有結合している。他の実施形態において、第1の粒子は、炭素の同素体に共有結合によって結合している求電子成分と、第1のポリマー材料、または第1のポリマー材料の一部になる材料(例えばプレポリマー)に共有結合によって結合している相補的求核成分との反応によって、第1のポリマー材料に共有結合している。
【0035】
例えば、求核成分は、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボン酸基、これらのいずれかの共役塩基またはこれらのいずれかの混合物などの求核試薬を含むことができる。例えば、求電子成分は、カルボン酸基、イソシアネート基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ウレタン基、尿素基、またはこれらのいずれかの混合物などの求電子試薬を含むことができる。
【0036】
実施形態において、第1の粒子はそれぞれ、約2から約1000個、例えば、約10から約500個または約25から約250個の求核成分または求電子成分を有する。
実施形態において、複合材料は、第1の粒子と異なる第2、第3、第4または第5の粒子をさらに含む。いくつかの場合において、他の粒子は、第1のポリマー材料に共有結合していない。例えば、他の粒子は、金属、金属酸化物(例えば二酸化チタン)、メタロイド酸化物(例えば二酸化ケイ素)、クレイ(例えばカオリン)、セラミック(例えば炭化ケイ素もしくは窒化チタン)、または第1のポリマー材料と異なる架橋ポリマー材料の粒子であり得る。特定の実施形態において、他の粒子は、それぞれ、クレイ材料であるか、またはクレイ材料を含む基体から伸びる炭素の同素体の形態をなす。クレイ含有粒子は、より容易に分散することができ、凝集する傾向が低減され得るため、このような粒子は有益であり得る。この粒子は、また、マトリックス内に機械的連動を与えて、向上した機械特性を複合材料に付与することができる。加えて、クレイは、複合材料の生体適合性を向上させることができ、そのイオン交換能力を増大させることができる。
【0037】
図5〜7は、炭素コイルなどの炭素の同素体を官能化するための技術を示す。図5は、特に、(A)40℃で3時間超音波処理しながら炭素コイル80と硫酸/硝酸の3:1混合物とを反応させることによって、または(B)マイクロ波を照射しながら炭素コイル80と濃硝酸を反応させることによって、炭素コイル80を、カルボン酸基で官能化された炭素コイル84に変換できることを示す。図6Aは、炭素コイル84を塩化チオニル(SOCl)で処理することによって、炭素コイル84を、酸塩化物基92で官能化された炭素コイル90に変換できることを示す。図6Bは、40℃で4時間超音波処理しながら炭素コイル84とエチレンジアミンおよびN−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5,6]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート N−オキシド(HATU)とを反応させることによって、炭素コイル84を、一級アミノ−アミド基102で官能化された炭素コイル100に変換できることを示す。図6Bは、炭素コイル84を、室温で2時間超音波処理しながらTHF中水素化アルミニウムリチウムの存在下で、一級アルコール成分112で官能化された対応する炭素コイル110に還元できることをも示す。加えて、図6Aは、炭素コイル110を超音波処理しながらTHF中フタルイミドおよびアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)で処理することによって、環式アミド成分122で官能化された炭素コイル120に変換できること、および炭素コイル120を、2時間超音波処理しながらトリフルオロ酢酸で加水分解して、一級アミノ基132で官能化された炭素コイル130にすることができることを示す。図7は、特に、カルボン酸基で官能化された炭素コイル84が、トルエン2,4−ジ−イソシアネートと反応して、アミドイソシアネート官能142を有する炭素コイル140を生成するときに、求核試薬として反応することができることを示す。いくつかの具体的な例を用いて以下にさらに記載するように、上記官能化炭素コイルのすべてを、炭素コイルをポリマーマトリックスに組み込むための基礎として使用することができる。
【0038】
炭素の同素体を官能化するための様々な技術が、ワングら(Wang et al.)、Carbon 43(2005)、1015−1−20;ラマナタンら(Ramanathan et al.)、Chem.Mater.(2005)、17、1290−1295;ザオら(Zhao et al.)、Journal of Solid State Chemistry(2004)、177、4394−4398;およびユングら(Jung et al.)、Materials Science and Engineering(2004)、C24、117−121に記載されている。
【0039】
次に図8を参照すると、アミド−イソシアネート官能を有する炭素コイル140は、例えば、2つ以上のヒドロキシル基、例えば3〜10個のヒドロキシル基を有するポリオール150と反応して、ウレタン結合162および末端ヒドロキシル基164を有するプレポリマー160を生成することができる。
【0040】
図9A〜9Dは、様々なポリオールを示す。特に、図9A〜9Dは、硬質ポリアミド(PA)部および軟質/柔軟ポリエーテル(PE)部を有するポリエーテルアミド(170、図9A);ジヒドロキシル末端PEG(174、図9B);ジヒドロキシル末端ポリプロピレングリコール(176、図9C);およびジヒドロキシル末端ポリテトラメチレングリコール(180、図9D)の図を示す。
【0041】
次に図10を参照すると、プレポリマー160と、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのモノマーイソシアネート、ならびに1つまたは複数のポリオールとをさらに反応させて、反応性イソシアネート基を末端とするより高分子量のポリマー180を生成することができる。高ポリマー180は、イソシアネートを末端とするため、反応性(しばしば「活動的」と呼ばれる)であり、例えば、求核部分を含む他のモノマーおよびポリマーと反応することができる。
【0042】
末端イソシアネート基をキャップで失活させる(quenching)ことによって、反応性ポリマー180をより反応性の低いものとすることができる。特に、図11は、ポリマー180を、イソプロパノールとの反応によって、より反応性の低いポリマー190に変換できることを示す。反応性イソシアネート末端基をイソプロパノールで失活させる方法は、イルゴルら(Yilgor et al.)、Polymer(2004)、45、5829−5836に記載されている。
【0043】
図11Aを参照することにより、高ポリマー190は、水素結合受容体/供与体部位として作用できるウレタンおよびアミド結合を含むことに留意されたい。この官能性により、ポリマー190などのポリマーは、それ自体、または水素結合受容体/供与体部分を有する他のポリマーと相互に作用することができる。例えば、ポリマー190などのポリマーを水素結合によってそれ自体、あるいは1つまたは複数の他のポリマーと可逆的に「架橋」させることができる。これによって、得られた複合材料の特性、すなわち引張強度および曲げ弾性率を向上させることができる。
【0044】
図12を参照すると、反応性ポリマー180をさらなるポリオールと反応させた後、3−イソシアナト−プロピル−トリエトキシシランなどのイソシアネート末端トリアルコキシシランと反応させて、トリアルコキシシラン末端基201を有する高ポリマー200を生成することができる。当該ポリマーを、例えば、水で処理することによって、末端トリアルコキシシラン基を介して架橋することができる。末端トリアルコキシシラン基を有するポリマーの架橋は、ホンマら(Honma et al.)、Journal of Membrane Science(2001)、185、83−94に記載されている。
【0045】
次に図13を参照すると、アミド−イソシアネート官能を有する炭素コイル140とポリアミンを反応させて、尿素結合211および末端アミノ基212を有する高分子量ポリマー210を生成することができる。ポリアミンは、2つ以上のアミノ基、例えば、3〜10個のアミノ基を有することができる。例えば、ポリアミンは、ポリマー、例えば、符号221(図13A)もしくは223(図13B)などのα,ω−ジアミノポリエーテル、または符号215(図13C)、217(図13D)もしくは219(図13E)などの、一級アミノ基を末端とするモノマーであり得る。様々なポリアミンが、Tetrahedron Letters(2005)、46、2653−2657に記載されている。
【0046】
ポリマー210は、さらなるモノマーイソシアネートと反応した後、符号231(図13F)などのアミノ末端トリアルコキシシランと反応して、トリアルコキシシラン末端基を有する高ポリマーを生成することができる。実施形態において、符号231のRは、例えば、H、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルであり、符号231のR〜Rは、それぞれ、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルである。このようなポリマーを、例えば、水で処理することによって、末端トリアルコキシシラン基を介して架橋することができる。
【0047】
図14を参照すると、一級アミノ基官能化ポリマー210と、3−イソシアナト−プロピル−トリエトキシシランなどのイソシアネート末端トリアルコキシシランとを反応させて、トリアルコキシシラン末端基を有する高ポリマー240を生成することができ、それを、例えば、水で処理することによって末端トリアルコキシシラン基を介して架橋して、架橋ハイブリッドポリマー250を生成することができる。
【0048】
次に図15を参照すると、特定の実施形態において、1モルのα,ω−ポリオール253と、2モルのヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させて、末端イソシアネート基を有する反応性プレポリマー260を生成する。当該プレポリマーと、ポリオールまたはポリアミンなどの他のポリマーとを反応させて、高ポリマーを生成することができる。
【0049】
次に図16を参照すると、酸ハロゲン化物官能化コイル90とポリオール253を反応させて、エステル結合を含むポリマー275を生成することができる。
本明細書に記載の方法のいずれかによって形成された複合材料は、高い引張強度を有することができ、例えば、引張強度は、約40MPaを超え得る、例えば、約50MPa、75MPa、100MPaを超え得る、またはさらに約150MPaを超え得る。加えて、複合材料は、約50S/cmを超える、例えば、約60S/cm、75S/cm、100S/cm、150S/cm、200S/cmを超える、またはさらに約300S/cmを超える高い導電性を有することができる。
【0050】
次に図17を参照すると、複合材料を含む溶液を基体310上に堆積させることによって、例えば基体上に噴霧することによって複合材料で形成された壁302を含むバルーン300を製造することができる。基体310は、例えば氷から作製することができる。複合材料を堆積させると、溶媒を堆積した溶液から除去して、基体310のまわりに層312を形成することができる。溶媒を除去し、複合材料を硬化させた後に、基体を除去することができる。基体が氷である場合は、溶融または凍結乾燥によって基体を除去することができる。基体を除去した後に、バルーン300が設けられる。望まれる場合は、バルーンにさらなる複合材料、または他の材料をコーティングして、同一または異なる材料の多層を形成することができる。
【0051】
未反応のイソシアネート基を含む複合材料を水で処理することによって、多孔性バルーンおよび/またはカテーテルを製造することができる。望まれる場合は、複合材料は、相互に接続された間隙を有することができる。間隙は、500nmを超える、例えば、750nm、1000nm、1500nmを超える、またはさらに2500nmを超える最大寸法を有することができる。間隙は、水銀間隙測定法で測定された場合に、75パーセントを超える、例えば、80パーセント、85パーセント、90パーセントを超える、またはさらに95パーセントを超える多孔性を与えうる。
【0052】
上記実施形態のいずれかにおいて、壁は、治療薬をその内部および/または表面に含むことができる。いくつかの望ましい実施態様において、壁は、多孔性であり、医療用デバイスの展開時に薬剤をバルーンから送達できるように治療薬が充填される。
【0053】
電気穿孔法およびイオン泳動を用いて、治療薬の送達を支援することができる。例えば、治療薬が導電性複合材料に利用されるときは、例えば、約5V/cmから約2.5kV/cm、約25V/cmから約1.5kV/cm、または約50kV/cmから約1kV/cmの電場を導電性複合材料に印加することによって、治療薬の送達を支援することができる。いくつかの実施形態において、電場は、律動的に印加される。例えば、パルス長は、約50μsから約30ms、約100μsから約25ms、または約150μsから約20msである。一般に、電気穿孔法は、ダバロスら(Davalos et al.)、Microscale Thermophysical Engineering、4:147−159(2000)に記載されている。電気穿孔法のためのパルス電力の電源は、グレニエル(Grenier)、「Design of a MOSFET−Based Pulsed Power Supply for Electroporation」(2006)という表題の文献におけるウォータルー大学(University of Waterloo)、オンタリオ(Ontario)、カナダに提出された論文に記載されている。
【0054】
一部の実施態様において、帯電した二官能性成分が、バルーンの多孔性外層内に配置され、該成分をバルーンから導出させるために電場が利用される。他の一部の実施態様において、外層がイオン交換膜であり、内層が本明細書に記載の材料のいずれかである二重層バルーンが利用される。これら2つの層の間には、帯電した治療成分、例えば分子を含む電解質溶液が存在する。電場を利用して、治療成分を周囲の組織に送り込むことができる。
【0055】
概して、治療薬は、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬または細胞であり得る。治療薬を単独で、または組み合わせて使用することができる。治療薬は、例えば、ノニオン性であるか、または本質的にアニオン性および/またはカチオン性であり得る。いくつかの実施形態の好適な治療薬は、再狭窄を阻害する治療薬である。再狭窄を阻害するような治療薬の具体例は、パクリタキセルまたはその誘導体、例えばドセタキセルである。
【0056】
【化1】

パクリタキセルの2’ヒドロキシル基から隔てて−COCHCHCONHCHCH(OCHOCH(nは、例えば、1から約100以上である)などの可溶化成分を結合させることによって、可溶性パクリタキセル誘導体を製造することができる。リーら(Li et al.)、米国特許第6,730,699号には、パクリタキセルのさらなる水溶性誘導体が記載されている。
【0057】
代表的な非遺伝子治療薬としては、(a)ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)およびチロシンなどの抗血栓薬;(b)デキサメタソン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジンおよびメサラミンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む抗炎症薬;(c)パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、ラパマイシン(スロリムス)、ビオリムス、タクロリムス、エベロリムス、平滑筋細胞増殖を阻止することが可能なモノクロナル抗体、およびチミジンキナーゼ阻害薬などの抗悪性腫瘍薬/抗増殖薬/抗有糸分裂薬;(d)リドカイン、ブピバカインおよびロピバカインなどの麻酔薬;(e)D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗血栓化合物、血小板レセプター拮抗薬、抗血栓抗体、抗血小板レセプター抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬およびマダニ抗血小板ペプチドなどの抗凝血薬;(f)成長因子、転写活性薬および翻訳促進薬などの血管細胞成長促進薬;(g)成長因子阻害薬、成長因子レセプター拮抗薬、転写抑制体、翻訳抑制体、複製阻害薬、阻害性抗体、成長因子に対する抗体、成長因子および細胞毒からなる二官能性分子、抗体および細胞毒からなる二官能性分子などの血管細胞成長阻害薬;(h)タンパク質キナーゼおよびチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、トリホスチン、ゲニステイン、キノキサリン);(i)プロスタサイリン類似体;(j)コレステロール低下薬;(k)アンギオポイエチン;(l)トリクロサン、セファロプポリン、アミノグリコシドおよびニトロフラントインなどの抗菌薬;(m)細胞毒、細胞静止薬および細胞増殖抑制薬;(n)血管拡張薬;(o)内因性の血管作動機構に干渉する薬剤;(p)モノクロナル抗体などの白血球補充阻害薬;(q)サイトカイン、(r)ホルモン;ならびに(s)アリベンドール、アムブセタミド、アミノプロマジン、アポアトロピン、メチル硫酸ベボニウム、ビエタミベリン、ブタベリン、臭化ブトロピウム、臭化n−ブチルスコポルアンモニウム、カロベリン、臭化シメトロピウム、シナメドリン、クレボプリド、臭化水素コニイン、塩酸コニイン、ヨウ化シクロニウム、ジフェメリン、ジイソプロミン、酪酸ジオキサフェチル、臭化ジポニウム、ドロフェニン、臭化エメプロニウム、エタベリン、フェクレミン、フェナルアミド、フェノベリン、フェンピプラン、臭化フェンピベリニウム、臭化フェントニウム、フラボキセート、フロプロピオン、グルコン酸、グアイアクタミン、ヒドラミトラジン、ヒメクロモン、レイオピロール、メベベリン、モキサベリン、ナフィベリン、オクタミラミン、オクタベリン、塩化オキシブチニン、ペンタピペリド、塩酸フェナマシド、フロログルシノール、臭化ピナベリウム、ピペリレート、塩酸ピポキソラン、プラミベリン、臭化プリフィニウム、プロペリジン、プロビバン、プロピロマジン、プロザピン、ラセフェミン、ロシベリン、スパスモリトール、ヨウ化スチロニウム、スルトロポニウム、ヨウ化チエモニウム、臭化チキジニウム、チロピラミド、トレピブトン、トリクロミル、トリホリウム、トリメブチン、トロペンジル、塩化トロスピウム、臭化キセニトロピウム、ケトロラクおよびこれらの医薬として許容し得る塩などの抗痙攣薬が挙げられる。
【0058】
代表的な遺伝子治療薬としては、アンチセンスDNAおよびRNA、ならびに(a)アンチセンスRNA、(b)欠陥または欠損内因性分子に取って代わるtRNAまたはrRNA、(c)酸性および塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、形質転換成長因子αおよびβ、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子およびインスリン様成長因子などの成長因子を含む血管新生因子、(d)CD阻害薬を含む細胞周期阻害薬、ならびに(e)チミジンキナーゼ(「TK」)、および細胞増殖に干渉するのに有用な他の薬剤に対するDNAコーディングが挙げられる。BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15およびBMP−16を含む骨形態形成タンパク質(「BMP」)のファミリーをコードするDNAも重要である。現在好適なBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびBMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質をホモ二量体、ヘテロ二量体またはこれらの組合せとして単独で、または他の分子と併せて提供することができる。代替的に、または追加的に、BMPの上流または下流効果を誘発することが可能な分子を提供することができる。そのような分子としては、「ヘッジホッグ」タンパク質の任意のもの、またはこれらをコードするDNAが挙げられる。
【0059】
遺伝子治療薬の送達のためのベクターとしては、アデノウイルス、腸(gutted)アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス(セムリキ森林、シンドビス等)、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、複製可能型ウイルス(例えばONYX−015)およびハイブリッドベクターなどのウイルスベクター;ならびにタンパク質導入ドメイン(PTD)などの標的配列を有する、および有さない、人工染色体およびミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えばpCOR)、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフト共重合体(例えば、ポリエーテル−PEIおよび酸化ポリエチレン−PEI)、中性ポリマーPVP、SP1017(SUPRATEK)、カチオン性脂質などの脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子またはマイクロ粒子などの非ウイルスベクターが挙げられる。
(他の実施形態)
いくつかの実施形態について説明を行った。しかしながら、本開示の主旨および範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。
【0060】
バルーンおよび/またはカテーテルは、2つ以上の層を含む壁を有することができる。例えば、壁は、2、3、4、5、7、9、11、13または15個以上の層、例えば21個の層を有することができる。
【0061】
バルーンの壁などの壁全体が複合材料で形成された実施形態を示したが、いくつかの実施形態において、壁の一部のみが複合材料で構成される。さらに他の実施形態が添付の請求項に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー材料と、炭素の同素体からなり、少なくとも一部が該第1のポリマー材料に共有結合している第1の粒子とからなる複合材料を含む壁を備える、医療用バルーンまたはカテーテル。
【請求項2】
前記第1のポリマー材料が、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエーテル−ポリウレタン共重合体、ポリアミド、ポリエーテル−ポリアミド共重合体、ポリ尿素、ポリエーテル−ポリ尿素共重合体、ポリアミン、ポリエステル、ポリシロキサンおよびこれらの混合物からなる群から選択された部分からなる、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項3】
前記第1のポリマー材料が熱可塑性材料である、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項4】
前記複合材料が、前記第1のポリマー材料と異なる第2のポリマー材料をさらに含む、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項5】
前記第1の粒子がコイルの形状をなす、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項6】
前記炭素の同素体が、グラファイト、C60、C70、単層カーボンチューブ、多層カーボンチューブ、非晶質炭素、炭素コイル、炭素螺旋体、炭素ロープ、炭素繊維およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項7】
第1の粒子がそれぞれ、5を超える長さ直径比を有する、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項8】
第1の粒子がそれぞれ、1000nmを超えない最大寸法を有する、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項9】
前記第1の粒子が分離しており、前記複合材料全体にわたって間隔をおいて配置される、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項10】
前記複合材料が、前記第1の粒子と異なる第2の粒子をさらに含み、該第2の粒子が前記第1のポリマー材料に共有結合していない、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項11】
前記第2の粒子が、金属、金属酸化物、メタロイド酸化物、クレイ、セラミックおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項12】
前記第1の粒子の全数の少なくとも約2.5パーセントが、前記第1のポリマー材料に共有結合している、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項13】
前記複合材料が、約5重量パーセントから約60重量パーセントの、前記炭素の同素体からなる第1の粒子を含む、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項14】
前記第1の粒子が、前記炭素の同素体の炭素原子と前記第1のポリマー材料とを連結する共有結合によって、前記第1のポリマー材料に共有結合している、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項15】
前記第1の粒子が、前記炭素の同素体に共有結合によって結合している求核成分と、前記第1のポリマー材料または初期の第1のポリマー材料に共有結合によって結合している相補的求電子成分との反応によって、前記第1のポリマー材料に共有結合している、請求項14に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項16】
前記求核成分が、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、これらの共役塩基およびこれらの混合物からなる群から選択された求核試薬からなる、請求項15に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項17】
第1の粒子がそれぞれ約2から約1000個の求核成分を有する、請求項15に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項18】
前記炭素の同素体からなる第1の粒子の少なくとも一部が、前記炭素の同素体に結合している基体をさらに含む、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項19】
前記基体が、炭素の同素体を形成する触媒をその表面および/または内部に有するクレイを含む、請求項18に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項20】
前記クレイが、カオリナイト、モントモリロナイト−スメクタイト、イライト、緑泥石およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項21】
前記壁が多層からなる、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項22】
前記複合材料が前記多層の各層に存在し、各層がその隣の層と一体になっている、請求項21に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項23】
前記複合材料が単層に存在し、該単層が、前記複合材料と異なる材料で形成された第2の層と一体になっている、請求項21に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項24】
前記壁が治療薬をその内部および/または表面に含む、請求項1に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項25】
第1のポリマー材料と、炭素の同素体からなり、少なくとも一部が該第1のポリマー材料に共有結合している第1の粒子とからなる複合材料を含む壁を形成することからなる、医療用バルーンまたはカテーテルの製造方法。
【請求項26】
前記壁が、基体を設けることと、前記複合材料を該基体上に堆積させることとによって形成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記基体を除去することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複合材料が、前記複合材料の溶液を前記基体上に噴霧することによって堆積される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
ポリマー材料と粒子とを含む複合材料からなる壁を備え、該粒子が、クレイを含む材料からなる基体と、該基体から伸びる炭素の同素体とからなる、医療用バルーンまたはカテーテル。
【請求項30】
前記クレイが、炭素の同素体を形成する触媒をその表面および/または内部に有する、請求項29に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項31】
前記クレイが、カオリナイト、モントモリロナイト−スメクタイト、イライト、緑泥石およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項29に記載のバルーンまたはカテーテル。
【請求項32】
前記炭素の同素体を形成する触媒が、第8族または第9族の元素からなる、請求項30に記載のバルーンまたはカテーテル。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図11A】
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【図12】
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【図13】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−517628(P2010−517628A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548387(P2009−548387)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/052294
【国際公開番号】WO2008/094897
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】