カテーテル手術シミュレータ
【課題】血管等の体腔を再現した腔所部分の周囲領域にかかる応力状態を観察できるカテーテル手術シミュレータの提供。
【解決手段】カテーテル手術シミュレータ60は、光源61、一対の偏光板62及び63、1波長板68、立体モデル21、受光部70から大略構成される。第1の偏光板62及び63は相互に直交した偏光方向を有する。これにより、立体モデル21の内部応力に起因する光弾性効果を第2の偏光板63側において観察することができる。立体モデル21の腔所へカテーテルを挿入したとき、カテーテルと腔所の周壁とが干渉すると、当該腔所周壁に応力が生じそこに光弾性効果(干渉縞)が現れる。また、コイル塞栓時の動脈瘤の変形に伴う当該動脈瘤周囲領域の応力状態も光弾性効果からシミュレートすることができる。
【解決手段】カテーテル手術シミュレータ60は、光源61、一対の偏光板62及び63、1波長板68、立体モデル21、受光部70から大略構成される。第1の偏光板62及び63は相互に直交した偏光方向を有する。これにより、立体モデル21の内部応力に起因する光弾性効果を第2の偏光板63側において観察することができる。立体モデル21の腔所へカテーテルを挿入したとき、カテーテルと腔所の周壁とが干渉すると、当該腔所周壁に応力が生じそこに光弾性効果(干渉縞)が現れる。また、コイル塞栓時の動脈瘤の変形に伴う当該動脈瘤周囲領域の応力状態も光弾性効果からシミュレートすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はカテーテル手術シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、被検体の血管などの体腔を再現したブロック状の立体モデルを提案している(特許文献1、非特許文献1)。この立体モデルは被検体の断層像データに基づき血管などの体腔モデルを積層造形し、該体腔モデルの周囲を立体モデル成形材料で囲繞して該立体モデル成形材料を硬化させ、その後体腔モデルを除去することにより得られる。
立体モデル成形材料としてシリコーンゴムなどのエラストマー材料を採用することにより、立体モデルの腔所(血管などを再現したもの)へ液体を送り込んだり、またカテーテルを挿入したりしたときの当該腔所の動的変形を観察することができる。
また、膜状の立体モデル(非特許文献2)を提案している。
また、ゲル状の基材で構成した立体モデルを提案している(非特許文献3)
【0003】
【特許文献1】WO 03/096308
【非特許文献1】脳血管内腔を再現した手術試行用医療モデル、第20回ロボット学会学術講演会予稿集、2002
【非特許文献2】脳血管内手術を対象とした生体情報に基づく手術シミュレータに関する研究、ロボティクス・メカトロニクス講演会予稿集、2003
【非特許文献3】脳血管内腔を再現した手術シミュレーション用立体モデル 第12回日本コンピュータ外科学会大会予稿集,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のモデルによれば、カテーテルや液体の挿入シミュレーションに対して、体腔を再現した腔所部分の動的な変形を目視により観察することができるが、腔所部分の周囲領域の応力状態については何ら情報を得ることができない。
そこでこの発明は、立体モデルにおいて腔所部分の周囲領域の応力状態を観察できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、次のように構成される。
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
該偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、
前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とした、ことを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
【発明の効果】
【0006】
このように構成された立体モデルの応力観測装置によれば、カテーテルや液体の挿入シミュレーションにおいて立体モデルの腔所の周囲領域に応力がかかったとき、光弾性効果が生じてその応力状態を観察することができる。
また、例えば偏光光源を構成する第1の偏光フィルタと観察者側の第2の偏光フィルタとの間に位相シフトフィルタを配置させることにより、第1の偏光フィルタを透過した光の一部が第2の偏光フィルタを透過可能となる。このとき、立体モデル内にカテーテルが挿入されていた場合、カテーテルは光を透過させないので、カテーテルが影となって観察される。勿論、カテーテルにより応力変化の生じた立体モデルの周囲領域においては光弾性効果が観察される。なお、この位相シフトフィルタが存在しないと一対の偏光フィルタにより光源からの光は完全に遮断され、光弾性効果により変調された光のみが第2の偏光フィルタを透過して観察可能となる。この場合、カテーテル自体を観察することはできない。
【0007】
波長シフトフィルタとしてはいわゆる1波長板又は2波長板を用いることが好ましい。1波長板は鋭敏色板ともよばれて、光弾性効果の観察感度が上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明の各構成要素を詳細に説明する。
(立体モデル形成材料)
立体モデルの応力状態を光弾性により観察するには、立体モデルにおいて少なくとも応力状態の観察が必要な部位を等方性材料で形成する。立体モデルは透光性を有するものとする。
かかる光弾性を有する材料として、例えば、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)や熱硬化性のポリウレタンエラストマー等のエラストマーの他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を単独で、或いは複数組み合わせて使用することができる。
カテーテルや液体を立体モデルの腔所へ挿入したとき、当該腔所の周囲領域における応力状態が光弾性効果として観察されるためには、少なくとも当該周囲領域が弾性変形可能な材料で形成される必要がある。勿論、立体モデルを全体的に弾性変形可能な材料で形成することができる。
かかる立体モデルの形成材料として、カテーテル等の挿入にともなって変形しやすく(即ち、縦弾性係数が大きく)、かつ僅かな変形でも大きな光弾性効果の変化を観察できる(即ち、光弾性系係数が大きい)材料が好ましい。かかる材料としてゼラチン(動物性かんてん)を挙げることができる。また、植物性かんてんやカラギーナン、ローカストビーンガムのような多糖類のゲル化剤を採用することもできる。
【0009】
(立体モデルの形成方法)
立体モデルにおいて腔所は被検体の断層像データに基づき形成された血管などの体腔を再現したものとすることができる。
ここに、被検体は人体の全体若しくは一部を対象とするが、動物や植物を断層撮影の対象とすることができる。また、死体を除くものではない。
断層像データは積層造形を実行するための基礎となるデータをいう。一般的に、X線CT装置、MRI装置、超音波装置などによって得られた断層撮影データから三次元形状データを構築し、当該三次元形状データを二次元に分解して断層像データとする。
以下、断層像データ生成の一例を説明する。
【0010】
ここでは、体軸方向に平行移動しながら等間隔に撮影することによって得られた複数の二次元画像を入力データ(断層撮影データ)として使用する場合について説明するが、他の撮影方法によって得られた二次元画像、或いは三次元画像を入力画像とする場合でも同様な処理を行うことによって腔所の三次元形状データを得ることができる。入力された各二次元画像は、まず撮影時の撮影間隔に基づいて正確に積層される。次に、各二次元画像上に、画像濃度値に関しての閾値を指定することにより、体腔モデルの対象とする腔所領域のみを各二次元画像中より抽出し、一方で他の領域を積層された二次元画像中より削除する。これにより腔所領域に相当する部分の三次元形状が二次元画像を積層した形で与えられ、この各二次元画像の輪郭線を三次元的に補間し、三次元曲面として再構成することにより対象とする腔所の三次元形状データが生成される。尚、この場合は濃度値に関しての閾値を指定することによって、まず入力画像中より腔所領域の抽出を行ったが、この方法とは別に、腔所表面を与える特定濃度値を指定することによって入力画像中より腔所表面の抽出し、三次元補間することによって直接的に三次元曲面を生成することも可能である。また、閾値指定による領域抽出(或いは特定濃度値指定による表面抽出)を行った後に入力画像の積層を行ってもよい。また、三次元曲面の生成はポリゴン近似によって行ってもよい。
【0011】
尚、前記三次元形状データには、該三次元形状データの生成中、或いは生成後において、形状の修正や変更を施すことが可能である。例えば、断層撮影データ中には存在しない構造を付加することや、サポートと呼ばれる支持構造を付加することや、或いは断層撮影データ中の構造を一部除去することや、腔所の形状を変更することなどが可能であり、これによって、立体モデルの内部に形成される腔所の形状を自由に修正或いは変更することができる。さらには、腔所の内部に非積層造形領域を設けることも可能であり、後に説明する内部を中空の構造とし、非積層造形領域を設けた体腔モデルを作製する場合には、そのような非積層造形領域を腔所の内部に設けた三次元形状データを生成しておく。尚、これらの処理は、積層造形システム、或いは積層造形システムに対応したソフトウェアにおいて行ってもよい。
【0012】
次に、生成した腔所の三次元形状データを、必要に応じて体腔モデルの積層造形に使用する積層造形システムに対応した形式に変換し、使用する積層造形システム、或いは使用する積層造形システムに対応したソフトウェアへと送る。
積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)では、積層造形時の体腔モデルの配置や積層方向などの各種設定項目の設定を行うと同時に、積層造形中における形状保持などの目的で、サポート(支持構造)をサポートが必要な箇所に付加する(必要なければ付加する必要はない)。最後に、このようにして得られた造形用データを積層造形時の造形厚さに基づいてスライスすることによって、積層造形に直接利用されるスライスデータ(断層像データ)を生成する。尚、上記の手順とは逆に、スライスデータの生成を行った後にサポートの付加を行ってもよい。また、スライスデータが使用する積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)によって自動的に生成される場合には、この手順を省略することができる。但し、この場合でも積層造形厚さの設定を行っても良い。サポートの付加についても同様であり、積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)によってサポートが自動的に生成される場合には、手動で生成する必要はない(手動で生成してもよい)。
【0013】
上記の例では、断層撮影データから三次元形状データを構築しているが、データとして最初から三次元形状データが与えられた場合もこれを二次元に分解して次の積層造形工程に用いる断層像データを得ることができる。
【0014】
この発明では血管などの体腔を対象としており、ここに体腔とは諸器官(骨格、筋、循環器、呼吸器、消化器、泌尿生殖器、内分泌器、神経、感覚器など)に存在する腔所、並びに、これらの諸器官や体壁などの幾何学的配置によって構成される腔所を指す。したがって、心臓の内腔、胃の内腔、腸の内腔、子宮の内腔、血管の内腔、尿管の内腔などの諸器官の内腔や、口腔、鼻腔、口峡、中耳腔、体腔、関節腔、囲心腔などが「体腔」に含まれる。
【0015】
上記の断層像データから上記体腔モデルを形成する。
形成の方法は特に限定されるものではないが、積層造形が好ましい。ここに積層造詣とは、断層像データに基づき薄い層を形成し、これを順次繰り返すことにより所望の造形を得ることをいう。
積層造形された体腔モデルは後の工程で分解除去されなければならない。除去を容易にするため、積層造形に用いる材料を低い融点の材料とするか、若しくは溶剤に容易に溶解する材料とすることが好ましい。かかる材料としては低融点の熱硬化性樹脂若しくはワックス等を用いることができる。いわゆる光造形法(積層造形に含まれる)において汎用される光硬化性樹脂においてもその分解が容易であれば、これを用いることができる。
【0016】
前記体腔モデルは、次の工程において立体モデル成形材料で囲繞する際に外部から付加される圧力等の外力に耐え得る強度を有する範囲であれば、その内部を中空構造とし薄肉化することができる。これによって、積層造形に所要される時間や造形に伴うコストが低減されるだけでなく、後の溶出行程において体腔モデルの溶出を簡素化できる。
具体的な積層造形の方式として、例えば粉末焼結方式、溶融樹脂噴出方式、溶融樹脂押出方式等を挙げることができる。
【0017】
尚、積層造形によって作製された体腔モデルには、積層造形の後に、表面研磨や、表面コーティングの付加など各種の加工(除去加工及び付加加工)を加えることが可能であり、これによって体腔モデルの形状を修正或いは変更することが可能である。これらの加工の一環として、体腔モデルの作製にあたって、積層造形後の除去が必要なサポートを付加した場合には、サポートの除去を行っておく。
体腔モデルの表面を他の材料でコーティングすることにより、体腔モデルの材料の一部の成分又は全部の成分が立体モデル成形材料中に拡散することを防止することができる。その他、体腔モデルの表面を物理的に処理(熱処理、高周波処理等)、若しくは化学的に処理することにより、当該拡散を防止することもできる。
【0018】
表面処理することにより体腔モデルの表面の段差を円滑化することが好ましい。これにより、立体モデルの内腔表面が円滑になり、より実際の血管等の体腔内表面を再現できることとなる。表面処理の方法として、体腔モデルの表面を溶剤に接触させること、加熱して表面を溶融すること、コーティングすること及びこれらを併用することが挙げられる。
【0019】
体腔モデルの一部又は全部を立体モデル成形材料で囲繞してこれを硬化する。体腔モデルを除去することにより立体モデルが形成される。
【0020】
(他の立体モデル)
立体モデルを多層構造とすることもできる。即ち、
血管などの体腔を再現した腔所をその内部に有する膜状モデルと、該膜状モデルを囲繞する基材から立体モデルを形成する。
このように構成された立体モデルでは、生体血管の有する膜状構造と血管周囲の軟組織の構造が物理特性も含めて個別に再現される。これにより、柔軟性を有する膜状構造の血管のモデルが、血管周囲組織の粘弾性特性を有する基材に埋設された状態となる。このため、医療器具や流体の挿入シミュレーションに際して、立体モデル内部の膜状構造の血管モデルが基材内で生体内における血管と同様に柔軟に変形することができ、生体血管の変形特性を再現するのに好適なものとなる。
ここに、膜状モデルは、既述の体腔モデルの表面へ膜状モデル成形材料を薄く積層し、これを硬化して得られる。
膜状モデルの成形材料は光弾性効果を示す等方性材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)や熱硬化性のポリウレタンエラストマー等のエラストマーの他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を単独で、或いは複数組み合わせて使用することができる。これらの材料を塗布、吹き付け、若しくはディッピング等の方法で体腔モデルの表面へ薄く積層し、その後周知の方法で加硫若しくは硬化させる。
膜状モデルの対象を脳血管モデルとするときには、透明でかつ生体組織に近い弾力性及び柔軟性を備える材料を採用することが好ましい。かかる材料としてシリコーンゴムを挙げることができる。また、シリコーンゴムは生体組織と同等の接触特性を有するので、カテーテル等の医療器具を挿入し手術の試行に適したものとなる。
膜状モデル形成材料を複数層から形成することができる。その厚みも任意に設定できる。
膜状モデルはその全体が実質的に均一な厚さに形成されることが、光弾性効果を観察する点から、好ましい。
【0021】
基材は生体組織に類似した物理特性を有する透光性材料とすることが好ましい。
ここに、生体組織とは膜状モデルが再現した血管等を囲繞する柔軟な組織である。かかる柔軟性(物理特性)を再現する材料として、実施例ではシリコーンゲル及びグリセリンゲルを用いた。ゼラチン、かんてん、多糖類のゲルなどを用いることもできる。なお、ケーシングに気密性を確保できれば高粘度の液体を基材として用いることもできる。
基材の材料としてゲルを用いた場合、物理特性の異なる複数の材料を用いて基材をより生体組織に近づけることができる。
膜状モデルの動的な挙動を観察するため、基材は透光性とすることが好ましい。膜状モデルと基材との境界を明確にするため、膜状モデル若しくは基材の少なくとも一方を着色することができる。また、膜状モデルの動的挙動をより正確に観察できるように、膜状モデルの材料の屈折率と基材の材料の屈折率とを実質的に等しくすることが好ましい。
膜状モデルの全部が当該基材内に埋設される必要はない。即ち、膜状モデル一部は空隙部内に位置していてもよい。また、膜状モデルの一部はソリッド基材(生体組織と非類似の物理特性を有する)内にあってもよい。
基材は弾性を有するものとする。好ましくは、縦弾性係数が2.0kPa〜100kPaの低弾性とする。更に好ましくは、基材は充分な伸びを有する。これにより、膜状モデルが大きく変形しても、膜状モデルから基材が剥離することがない。例えば、無負荷時を1として、膜状モデルに対する接着性を確保した状態で引っ張ったときに基材は無付加時の2〜15倍の伸び率を有することが好ましい。ここで伸び率とは、基材が元に戻ることの出来る最大変形量を指す。また、荷重を加えて変形させた基材から荷重を除去したときに基材が元に戻る速度は比較的緩やかであることが好ましい。例えば、粘弾性パラメータである損失係数tanδ(1Hz時)は0.2〜2.0とすることができる。
これにより、血管等の周囲に存在する組織と同等若しくは近い特性を基材が持ち、膜状モデルの変形がより実際に近い環境で行われることとなる。即ち、カテーテル等の挿入感をリアルに再現可能となる。
基材は膜状モデルに対して密着性を有するものとする。これにより、膜状モデルへカテーテル等を挿入して膜状モデルを変形させも基材と膜状モデルとの間にズレの生じることがない。両者の間にズレが生じると、膜状モデルにかかる応力に変化が生じるので、例えばカテーテルの挿入シミュレーションをする場合に支障をきたし、その挿入時に違和感を生じるおそれがある。
膜状モデルとして脳血管モデルを対象としたとき、基材と膜状モデルとの密着性(接着強度)は1kPa〜20kPaとすることが好ましい。
かかる基材として実施例ではシリコーンゲル及びグリセリンゲルを用いているが、その材質が特に限定されるものではない。なお、ケーシングに気密性を確保できれば高粘度の液体を基材として用いることもできる。これは特に、弾性を有さない生体組織に囲まれる血管を再現した膜状モデルに対する基材として好適である。これら複数種類の流動体を混合し、さらにはこれらへ接着性の薬剤を混合することにより、好適な基材を調製することもできる。
基材の材料としてゲルを用いた場合、物理特性の異なる複数の材料を用いて基材をより生体組織に近づけることができる。
膜状モデルの動的な挙動を観察するため、基材は透光性とすることが好ましい。膜状モデルと基材との境界を明確にするため、膜状モデル若しくは基材の少なくとも一方を着色することができる。また、膜状モデルの動的挙動をより正確に観察できるように、膜状モデルの材料の屈折率と基材の材料の屈折率とを実質的に等しくすることが好ましい。
膜状モデルの全部が当該基材内に埋設される必要はない。即ち、膜状モデル一部は空隙部内に位置していてもよい。また、膜状モデルの一部はソリッド基材(生体組織と非類似の物理特性を有する)内又は流体内にあってもよい。
【0022】
ケーシングは基材を収容するものであり任意の形状をとることができる。膜状モデルの動的挙動を観察できるように全体若しくはその一部が透光性材料で形成される。かかるケーシングは透光性の合成樹脂(アクリル板等)やガラス板で形成することができる。
ケーシングには膜状モデルの腔所に連通する穴が空けられている。この穴からカテーテルを挿入することができる。
立体モデルは全体として透光性であることが好ましい。カテーテルの挿入状態を観察する点からいえば、少なくともその膜状モデルの内部が視認できればよい。
ケーシングと膜状モデルとの間には充分な距離を設ける。これにより、弾性を有する基材に充分なマージン(厚さ)が確保され、カテーテル挿入等により膜状モデルへ外力がかけられたときその外力に応じて膜状モデルは自由に変形できることとなる。なお、このマージンは立体モデルの対象、用途等に応じて任意に選択できるものであるが、例えば膜状モデルの膜厚の10倍〜100倍以上とすることが好ましい。
【0023】
体腔モデルを膜状モデルで被覆した状態の中子をケーシング中にセットし、該ケーシングへ基材材料を注入し、ゲル化する。
その後、体腔モデルを除去すると膜状モデルが基材中に残された状態となる。
体腔モデルの除去の方法は体腔モデルの造形材料に応じて適宜選択され、立体モデルの他の材料に影響の出ない限り、特に限定されない。
体腔モデルを除去する方法として、(a) 加熱により溶融する加熱溶融法、(b) 溶剤により溶解する溶剤溶解法、(c) 加熱による溶融と溶剤による溶解とを併用するハイブリッド法等を採用することができる。これらの方法により体腔モデルを選択的に流動化し、立体モデルの外部へ溶出してこれを除去する。
【0024】
体腔モデルの材料の成分の一部が膜状モデルの内部へと拡散し、膜状モデルに曇りが生じて、その視認性が低下するおそれがある。この曇りを除去するため、体腔モデルを除去した後に試料を再度加熱することが好ましい。この加熱は体腔モデル除去の途中で実行することもできる。
【0025】
立体モデルは、また、次のようにして形成することもできる。
体腔モデルを中子としてゲル状の基材へ埋設し、当該体腔モデルを除去する。これにより、基材中に体腔を再現した腔所が形成される。その後、腔所の周壁へ膜状モデルの形成材料を付着させ重合若しくは加硫等により硬化する。膜状モデル形成材料を基材の腔所へ流すこと、若しくは基材を膜状モデル形成材料にディッピングすることにより、膜状モデル形成材料を基材の体腔周壁へ付着させることができる。
【0026】
また、当該腔所の周壁へ膜状モデル形成材料を付着する代わりに当該腔所の周壁を親水化処理することができる。これにより、立体モデルの腔所へ水若しくは水溶液を充填したとき周壁に水膜が形成され、カテーテルの挿入抵抗が緩和される。即ち、この水膜が膜状モデルに対応することとなる。
当該腔所の周壁を疎水化処理(親油化処理)した場合も同様に、腔所へ油を充填したとき周壁に油膜が形成され、カテーテルの挿入抵抗が緩和される。即ち、この油膜が膜状モデルに対応する。
【0027】
腔所の周壁は周知の方法で親水化若しくは疎水化される。例えば基材としてシリコーンゲルを採用した場合、界面活性剤等の極性基を有する膜を当該周壁に形成することによりその腔所の周壁を親水化することができる。同様に、オイルやワックス等の油性膜を腔所の周壁に形成することによりその腔所の周壁を疎水化することができる。
【0028】
体腔モデルの基体をシリコーンゴム等の透光性ゲル材料で形成し、体腔部の周壁を当該ゲル材料より光弾性係数の高い材料で全体的に若しくは部分的に被覆することができる。光弾性係数の高い材料を基材内へ埋設することもできる。高い光弾性係数を有する材料により光弾性効果が強調されることとなる。なお、光弾性係数の高い材料としてエポキシ樹脂などを挙げることができる。エポキシ樹脂の薄膜はカテーテルの挿入によって容易に変形するので、これを用いることにより光弾性効果を明確に観察することができる。
【0029】
ケーシングは基材を収容するものであり任意の形状をとることができる。膜状モデルの動的挙動を観察できるように全体若しくはその一部が透光性材料で形成される。かかるケーシングは透光性の合成樹脂(アクリル板等)やガラス板で形成することができる。
ケーシングには膜状モデルの腔所に連通する穴が空けられている。この穴からカテーテルを挿入することができる。
立体モデルは全体として透光性であることが好ましい。カテーテルの挿入状態を観察する点からいえば、少なくともその膜状モデルの内部が視認できればよい。
【0030】
(光弾性効果)
光弾性効果とは、透光性材料において内部応力が生じると、一時的に複屈折性をおび、最大主応力と最小主応力の方向で屈折率が異なるため、入射光が2つの平面偏光に分かれて進むことをいう。当該2つの波の位相差により干渉縞が生じ、この干渉縞を観察することにより透光性材料の内部応力の状態を知ることができる。
この光弾性効果を生じさせるには、図1に示すように、光源からの光を第1の偏光板(偏光フィルタ)に通して偏光させ、立体モデルにこの直線偏光を通す。立体モデルにおいて内部応力が生じていると内部応力に強さに応じて複屈折が生じ、最大主応力(acosφsinωt)と最小主応力(acosφsin(ωt−A))が生成する。これらの光は速度が異なるため位相差を生じ、第2の偏光板(偏光フィルタ)を通して観察すると、干渉縞が現れる。なお、この第2の偏光板の偏光方向は第1の偏光板の変更方向と実質的に直交している。
一対の偏光板に間に立体モデルを介在させ、立体モデルを透過する光に生じる光弾性効果を観察する方法として、直交ニコル法、平行ニコル法、鋭敏色法等が知られている。また、偏光板と立体モデルとの間に一対の1/4波長板(1/4波長フィルタ)を介在させることにより光弾性効果を検出する方法として、円偏光法やセナルモン法等が知られている。
【0031】
このように、光弾性効果を用いることのより、立体モデルの腔所へカテーテルを挿入したときの腔所の周囲領域の応力変化を観察することが可能となる。しかしながら、カテーテル自体は何ら光弾性効果を生じさせないので、周囲領域の応力変化にともなう光弾性効果とともにその位置及び状態を観察することができなかった。
そこでこの発明では、光源側の第1の偏光フィルタと観察者側の第2の変更フィルタとの中へ位相シフトフィルタを介在させることにより、カテーテル自体の位置及び状態を観察可能とした。即ち、位相シフトフィルタを存在させることにより、第1の偏光フィルタを透過した光の一部が第2の偏光フィルタを透過し、バックグランド光を構成する。ここに、立体モデル中にカテーテルが存在すると、それが影となって現れてその位置、状態及び動作が観察される。即ち、カテーテルとカテーテルにより生じた光弾性効果を同時に観察可能となる。
【0032】
位相シフトフィルタとしては、第1の偏光フィルタを透過した光を1波長若しくは2波長シフトさせるものを用いることができる。光弾性効果の感度が向上するからである。
この発明では、観察者側の第2の偏光フィルタからバックグランド光を取り出すことができれば、複数枚の波長シフトフィルタを用いてもよい。なお、円偏光法やセナルモン法等においては1/4波長板が用いられているが、これらの方法においてはバックグランド光を第2の変更フィルタから取り出すことができないので、カテーテルの観察は不可能である。
【0033】
本発明者らの検討により、観察側の第2の偏光フィルタと1/4波長フィルタとの間に位相シフトフィルタを配置し、更に当該位相シフトフィルタを当該1/4波長フィルタの光学軸に対してほぼ22.5度傾斜させることが好ましい。
かかる構成を図2に示す。図2において、符号201は白色光源、符号203及び204は偏光フィルタ、符号205及び206は1/4波長フィルタ、207は観察対象である立体モデル、209は位相シフトフィルタ(この例では2波長板)である。
位相シフトフィルタ209の傾斜角度ψ=±5度〜±40度のとき、より好ましくはψ=±22.5度のとき、第2の偏光フィルタ204において観察される光弾性効果(光の色(波長))から、観察対象の応力とその方向を特定することができる。
これは、次の理由による。
図2の構成において、観察される光の強さIは下記式1で表現される。
【式1】
【0034】
ここに、θは応力の方向を示し、Reは光弾性効果により生じた位相シフトによる遅延(Retardation)を示す。なお、このReは応力強さに対応する。
ψ=22.5として、上記式1にRGBの各波長を代入したとき、観察される光の色(波長)は応力の方向と応力の強さとを反映している。換言すれば、観察された光の色から応力の方向と応力の強さが特定できる。観察された光と応力方向及び応力強さとの関係は図3のマップで表される。なお、紙面の都合上、図3は白黒表記となったが、実際には、図3の全領域に渡り色変化が認められ、図3の縦軸(応力方向)の任意の座標と横軸(応力強さ)の任意の座標とで指定される色(波長)は実質的に1つに特定される。このようなカラーマップはψ=±5度〜±40度のとき、より鮮明にはψ=±22.5度のとき得られる。
他方、ψ=0度あるいはψ=90度のときは、図4Aに示す通り、縦軸の90度を中心にして上下対称の色分布のなるので、観察された色から応力方向や応力強さを特定することは出来ない。またψ=±45のときは、図4Bに示す通り、前記位相シフトフィルタの効果を得ることができないため、カテーテルの影を観察することが困難である。
また、本発明者らの検討によれば、ψ=±22.5のとき、光源をG(緑色系)の光とすると、図3のマップにおいて、緑色の明るさ(強さ)が横軸に対応して分布していることがわかった。実際には横軸のほぼ中央で最も明るく、左右に移行するに従い明るさが低減する。立体モデルにかかる最高応力はほぼRe=265〜400程度であり、それを超えると破損するおそれが強い。従って、緑色の明るさに注目すれば、立体モデルにかかっている応力の強さを特定することができる。これにより、オペレータはカテーテル手術シミュレーションを行なうときの立体モデルの応力状態を、リアルタイムでかつ直感的に把握することができる。
【実施例】
【0035】
(第1実施例)
立体モデル化の対象とする脳血管及び患部である脳動脈の形状に関する三次元データを得るため、撮影領域の血管内部へ造影剤を投与しながら、患者の頭部に対して、0.35×0.35×0.5mmの空間分解能を持つヘリカルスキャン方式のX線CT装置により撮影を行った。撮影により得られた三次元データは、3次元CADソフトへの受け渡しのため、体軸方向に等間隔に配列された500枚の512×512の解像度をもつ256階調の二次元画像(断層撮影データ)に再構成した後、各二次元画像に対応する画像データを撮影方向に一致する順序で前記X線CT装置に内蔵されたドライブにより5.25インチ光磁気ディスクへ保存した。
【0036】
次に、パーソナルコンピュータに外部接続した5.25インチ光磁気ドライブによって、前記画像データをコンピュータ内部の記憶装置へ取り込み、この画像データから、市販の三次元CADソフトを利用して、積層造形に必要とされるSTL形式(三次元曲面を三角形パッチの集合体として表現する形式)の三次元形状データを生成した。この変換では、入力された二次元画像を撮影間隔に基づいて積層することによって、濃度値をスカラー量とする三次元のスカラー場を構築し、そのスカラー場上に血管内表面を与える特定の濃度値を指定することによって、アイソサーフェス(特定スカラー値の境界面)として血管内腔の三次元形状データを構築した後、構築されたアイソサーフェスに対して三角形ポリゴン近似のレンダリングが行われる。
なお、この段階で、三次元形状データに付加データを加え、体腔モデル12(図6参照)の端部からガイド部13を膨出させた(図5参照)。このガイド部13は中空柱状の部材である。中空部31を備えることにより、積層造形時間の短縮を図っている。このガイド部13の先端は拡径されており、この部分が立体モデル表面に表出して、大径な開口部25(図6参照)を形成することとなる。
【0037】
生成したSTL形式の三次元形状データを、次に溶融樹脂噴出方式の積層造形システムへと転送し、造形システム内でのモデルの配置や積層方向、積層厚さを決定すると同時にモデルに対してサポートを付加した。
このようにして生成された積層造形用のデータをコンピュータ上で所定の積層造形厚さ(13μm)にスライスして多数のスライスデータを生成した。そして、このようにして得られた各スライスデータに基づいて、p−トルエンスルホンアミドとp−エチルベンゼンスルホンアミドを主成分とした造形材料(融点:約100度、アセトンに容易に溶解)を加熱により溶融して噴出することにより、各スライスデータに一致する形状を有する指定厚さの樹脂硬化層を一面ずつ積層形成することよって積層造形を行った。最終層の形成の後にサポートを除去することによって、脳血管内腔領域の積層造形モデル(体腔モデル12)を作成した。
更に、この体腔モデル12の表面を処理して円滑にする。
【0038】
この体腔モデル12の全表面へシリコーンゴム層15をほぼ1mmの厚さに形成した(図6参照)。このシリコーンゴム層15は、体腔モデル12をシリコーンゴム槽へディッピングし取出した体腔モデルを回転させながら乾燥させることにより得られる。このシリコーンゴム層が膜状モデルとなる。
この実施例では、体腔モデル12の全表面をシリコーンゴム層15で被覆したが、体腔モデル12の所望の部分を部分的にシリコーンゴム層15で被覆することも可能である。
【0039】
体腔モデル12をシリコーンゴム層15からなる膜状モデルで被覆してなる中子11を直方体のケーシング24にセットする。このケーシング24は透明なアクリル板からなる。ケーシング内に基材22の材料を注入して、これをゲル化する。
基材22の材料として、2液混合型のシリコーンゲルを用いた。このシリコーンゲルは透明かつ弾性を有しており、かつ血管周囲の軟組織に極めて近い物理特性を有している。縮合重合型のシリコーンゲルを用いることもできる。このように基材は、透光性、弾性を備えるとともに、膜状モデルに対する密着性を備えるものとする。
【0040】
基材22の材料の物理特性は、膜状モデルの対象である血管等の周囲の組織の物理特性に適合するように、調整される。
なお、この実施例では針入度、流動性、粘着性、応力緩和性などを指標にして、最終的にはオペレータの手触り(カテーテルの挿入感覚)によりその物理特性を生体組織に近づけるようにしている。
シリコーンゲルの場合、そのポリマーの骨格を調製することはもとより、シリコーンオイルを配合することにより当該物理特性を調整することができる。
【0041】
シリコーンゲルの外に、グリセリンゲルを用いることもできる。このグリセリンゲルは次のようにして得られる。即ち、ゼラチンを水に浸漬して、これにグリセリンと石炭酸を加え、加熱溶解する。温度が高い間に濾過し、中子に影響の出ない温度になったらケーシング内に注入し、放冷する。
【0042】
その後、中子11内の体腔モデル12を除去する。除去の方法としてハイブリット法を採用した。即ち、試料を加熱して開口部25から体腔モデルの材料を外部へ流出させ、更に、空洞部へアセトンを注入して体腔モデルの材料を溶解除去する。
その後、試料を120℃に設定された恒温層内で約1時間加熱して、膜状モデル(シリコーンゴム層15)の曇りをとった。
【0043】
このようにして得られた立体モデル21は、図7及び図8に示すように、シリコーンゲルからなる基材22中に膜状モデル15が埋設された構成となる。シリコーンゲルが生体組織に近い物理特性を有するので、膜状モデル15は血管と同等の動的挙動を示こととなる。
【0044】
他の実施形態の立体モデルとして、上記立体モデル21から膜状モデル15を省略したものを挙げることができる。
この場合、基材として光弾性係数の高いゼラチンを用いることが好ましい。
【0045】
図9はこの発明の実施例のカテーテル手術シミュレータ60の構成を示す。
この実施例のカテーテル手術シミュレータ60は、光源61、一対の偏光板62及び63、1波長板68、図7に示した立体モデル21、受光部70から大略構成される。
光源61には白色光源を用いることが好ましい。太陽光を光源として用いることもできる。また、単色光源を用いることも可能である。第1の偏光板62及び63は相互に直交した偏光方向を有する。これにより、立体モデル21の内部応力に起因する光弾性効果を第2の偏光板63側において観察することができる。1対の偏光板62及び63の間に1波長板68を介在させることにより、波長530nm近傍の光がバックグランド光として第2の偏光板63を透過するカテーテルのような非透明部材が影として観察される。なお、1波長板68に代表される波長シフトフィルタは第1の偏光板62と立体モデル21との間に介在させてもよい。
立体モデル21の腔所へカテーテルを挿入したとき、カテーテルと腔所の周壁とが干渉すると、当該腔所周壁に応力が生じそこに光弾性効果(干渉縞)が現れる。また、コイル塞栓時の動脈瘤の変形に伴う当該動脈瘤周囲領域の応力状態も光弾性効果からシミュレートすることができる。
【0046】
この実施例では光源61、第1の偏光板62、立体モデル21及び第2の偏光板63を直線上に配置させたが、第2の偏光板63を偏移して(即ち、直線上からずらして)配置することができる。立体モデル21の腔所において光が乱反射するので、腔所の形状においては第2の偏光板63を偏移して配置したほうが、光弾性効果をより鮮明に観察できる場合があるからである。
【0047】
受光部70は、CCD等からなる撮像装置71と当該撮像装置71で撮像した光弾性効果の画像を処理する画像処理装置70、並びに画像処理部70の処理結果を出力するディスプレイ75及びプリンタ77を備えてなる。
画像処理装置73では次のような処理が行われる(図10参照)。
まず、立体モデル21へ何ら外力を加えていない初期状態の画像をバックグラウンド画像として取り込む(ステップ1)。立体モデル21が高い光弾性係数の材料で形成されている場合、自重で光弾性効果を生じる場合がある。従って、光源61から光を照射し、更に外力を加えたとき(例えばカテーテルを挿入したとき)の光弾性効果による干渉縞画像を取り込んだ後(ステップ3)、これからバックグランド画像を差分処理する(ステップ5)。
【0048】
立体モデル21が高い光弾性係数の材料で形成されている場合、内部応力の如何によっては細かい干渉縞が繰返しパターンで現れる。画像処理装置73は単位面積あたりの当該パターンの数をカウントすることにより、当該内部応力を数値化する(ステップ7)。そして、第2の偏光板63を介して得られる立体モデル21の形状に関する画像において、内部応力の生じた部分に当該数値に対応した色を与えて外部表示する(ステップ9)。
この実施例では受光部70により光弾性効果による干渉縞を画像処理しているが、当該干渉縞を観察者が直接若しくは撮像装置71を介して観察してもよい。
【0049】
図11に他の実施例のカテーテル手術シミュレータ80を示す。図12に示す要素と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施例では第1の偏光板62と立体モデル21との間に第1の1/4偏光板82を介在させ、立体モデル21と第2の偏光板63との間に第2の1/4偏光板83を介在させている。これにより、円偏光に基づき立体モデル21の光弾性効果を観察可能になる。円偏光に基づく光弾性効果の観察によれば、干渉縞に応力方向の影響が現れないので、立体モデルの姿勢制御が容易になる。
【0050】
上記の例では、第2の偏光板62に撮像装置71を対向させて観察を行っていたが、これを目視によりヒトが直接観察することもできる。
図12には目視観察に適した例が示されている。この例では、メガネ90が準備されている。このメガネ90のレンズ部分は2層構造とされており、図12(B)に示すように、観察者側に第2の偏光板63が配置され、その外側に1波長板68が配設されている。
このメガネ90を掛けずに光源61をオンの状態とすると、立体モデル21が第1の偏光板62を通過した光により照明されて、カテーテルの状態やその血管構造など目視による構造観察が可能になる。他方、メガネ90を掛けると、基本的に図9の構成が形成されるので、カテーテルの状態と当該カテーテルによる立体モデルの応力状態に対応した光弾性効果とが同時に観察可能となる。
この実施例ではメガネ90を採用したが、観察者側から第2の偏光板と位相シフトフィルタとを積層したプレートを準備すればよい。
また、1波長板に代表される位相シフトフィルタを第1の偏光板62と立体モデル21との間に配置したときには、メガネのレンズ部分を第2の偏光板のみから形成すればよい。
【0051】
図13はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータ160を示す。なお、図9と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図13においてディスプレイ175及びプリンタ177は膜状モデルの応力状態を出力する出力部を構成する。ランプ装置178及びスピーカ装置179はアラームを出力する出力部を構成する。一対の偏光板62,63及び位相シフトフィルタとしての1波長板により光弾性観察部が構成される。
次に、図13に示したカテーテル手術シミュレータ160の動作を図14のフローチャートに基づき説明をする。
立体モデル21に対向する第2の偏光板63の部分を撮像装置71で撮像し、膜状モデルの状態量を特定する特徴量としてピクセル毎の輝度を画像処理装置のメモリの所定の領域に保存する(ステップ11)。ステップ15では最も高い輝度のピクセルを抽出し(ステップ15)、予め準備されているテーブル若しくは関係式を参照して当該最高輝度に対応する応力を特定する(ステップ17)。次に、所定のルールに従い特定された応力のレベルを特定する(ステップ19)。例えば、応力の小さい方から、安全段階、注意段階、危険段階の3段階に応力をレベル分けすることができる。
【0052】
特定された応力のレベルはディスプレイ175に数値、文字、若しくは棒グラフの形態等で表示することができる(ステップ21)。勿論、ディスプレイ175には撮像装置71の撮像画面をリアルタイムで表示可能である。
特定された応力のレベルに応じ、スピーカ装置179を介してその段階を音声案内することができる。段階が変化したときに当該音声案内をすることが好ましい(ステップ23)。
また、特定されたレベルに応じてランプ装置178を点灯させることができる(ステップ25)。例えば、安全段階では緑色のランプを点灯し、注意段階では黄色のランプを点灯し、危険段階になったとき赤色のランプを点灯する。
このようにアラームを出力することにより、オペレータはカテーテルの挿入作業に集中することができる。
【0053】
上記において、ピクセル毎にその輝度から応力を特定し、所定の閾値を超えた応力をもつピクセルをカウントし、カウント結果に基づき応力レベルを特定することもできる。また、ピクセル毎に応力変化を演算して当該応力変化が所定の閾値を超えたものをカウントし、当該カウント結果に基づき応力レベルを特定することができる。
更には、撮像装置で撮影した画像内のピクセルについて一定の法則に基づいて輝度に重み係数を乗じ、画像の所定領域若しくは全領域につき当該輝度を足しあわせることにより得られる計算値を特徴量とすることもできる。
上記の説明では、輝度より応力を求めているが、輝度そのものを演算対象、即ち、輝度の大きさ、その変化率に基づき、何ら応力計算を経ることなく、レベルを決定してアラーム(音声案内やランプ)を動作させることもできる。
【0054】
更には、ピクセル毎に得られた輝度より応力を特定し、当該応力を時系列的に積算することもできる。これにより、膜状モデルにおいて当該ピクセルに対応する部分に蓄積した応力(応力履歴)が表示可能となる。また。応力の蓄積量に応じて(例えば応力の蓄積が所定の閾値をこえたとき)、アラーム出力を動作させることもできる。
上記のような画像処理が可能となったのは、1波長板を介在させることにより、感度が向上して画像処理を精度よく行えるようになったためである。
【0055】
図15は、カテーテル手術におけるロードマップ作成をシミュレートした実施例を示す。
ステップ31では、立体モデル21の血管部分(膜状モデル部分)に造影剤を流し込んで立体モデル21の画像を撮影する。このとき、偏光板62,63の少なくとも一方を外して、好ましくは、偏光板62,63及び1波長板68を外して、光源61からの光が立体モデル21を透過するものとする。造影剤が導入された立体モデルは血管部分が染色された状態で撮影され、その画像が保存される(ステップ31)。
その後、図13の状態で立体モデル、特に膜状モデルの光弾性効果を撮影装置71で撮影する(ステップ33)。
撮影された光弾性効果を示す画像を、造影剤導入画像を背景として、これに重ねて表示する(ステップ35)。これにより、カテーテル手術におけうロードマップ作成の信頼性を確認することができる。
【0056】
図16に他の実施例のシミュレータ300の構成を示す。なお、図11と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。
この実施例では、第2の1/4波長板83と第2の偏光板63との間に2波長板301を存在させている。この2波長板は、前記1/4波長板の光学軸に対して22.5度傾斜している。
かかる構成は、既述の図2の構成と対応している。光源色を白色光としたとき、撮像装置71で撮像される光の色(波長)を図3に示すカラーマップに対照することにより、立体モデルにおいて光弾性効果を生じた部分の応力の大きさとその向きが特定される。
実施例の装置300では、図3のカラーマップがメモリ303に保存されている。また、図3の横軸Reの値から応力を演算する演算式もメモリ303に保存されている。
符号305はマウス等のポインティングディバイスであって、撮像装置71の撮像画像を表示するディスプレイ75において、所望部分をカーソル310で指定することができる(図17参照)。
画像処理装置73はカーソル310で指定された部分の色を認識し、当該色をメモリ303に保存されているカラーマップ(図3参照)に対照させて、応力の方向とその大きさを特定する。なお、図3において特定される遅延Reをメモリ303に保存されている関係式に代入することにより応力を大きさを求めることができる。そして、図17に示すように、ポップアップウインドウ320を開いて、そこにカーソル310で指定した部分の応力の大きさを数値表示し、また方向を矢印で表す。
【0057】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は光弾性効果の説明図である。
【図2】図2はこの発明の1つの局面のシミュレータの概略構成図である。
【図3】図3は図2のシミュレータにより得られるψ=22.5度のときのカラーマップを示す。
【図4】図4は図2のシミュレータにより得られるψ=0度及びψ=90度のときのカラーマップを示す。
【図5】図5は実施例の中子11を示す斜視図である。
【図6】図6は図5のA−A線断面図であり、中子の構成を示す。
【図7】図7はこの発明の実施例の立体モデルを示す。
【図8】図8は図7のB−B線断面図であり、基材中に膜状モデルが埋設された状態を示す。
【図9】図9はこの発明の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図10】図10は実施例のカテーテル手術シミュレータの受光部の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図12】図12はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図13】図13はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図14】図14は同じくカテーテル手術シミュレータの動作を示すフローチャートである。
【図15】図15は同じくカテーテル手術シミュレータの他の動作を示すフローチャートである。
【図16】図16は他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図17】図17はディスプレイ75の表示態様を示す。
【符号の説明】
【0059】
11 中子
12 体腔モデル
15、55 シリコーンゴム層(膜状モデル)
21 立体モデル
22 基材
60、80、160、300 カテーテル手術シミュレータ
61 光源
62、63 偏光板
68 1波長板
70 受光部
82、83 1/4波長板
【技術分野】
【0001】
この発明はカテーテル手術シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、被検体の血管などの体腔を再現したブロック状の立体モデルを提案している(特許文献1、非特許文献1)。この立体モデルは被検体の断層像データに基づき血管などの体腔モデルを積層造形し、該体腔モデルの周囲を立体モデル成形材料で囲繞して該立体モデル成形材料を硬化させ、その後体腔モデルを除去することにより得られる。
立体モデル成形材料としてシリコーンゴムなどのエラストマー材料を採用することにより、立体モデルの腔所(血管などを再現したもの)へ液体を送り込んだり、またカテーテルを挿入したりしたときの当該腔所の動的変形を観察することができる。
また、膜状の立体モデル(非特許文献2)を提案している。
また、ゲル状の基材で構成した立体モデルを提案している(非特許文献3)
【0003】
【特許文献1】WO 03/096308
【非特許文献1】脳血管内腔を再現した手術試行用医療モデル、第20回ロボット学会学術講演会予稿集、2002
【非特許文献2】脳血管内手術を対象とした生体情報に基づく手術シミュレータに関する研究、ロボティクス・メカトロニクス講演会予稿集、2003
【非特許文献3】脳血管内腔を再現した手術シミュレーション用立体モデル 第12回日本コンピュータ外科学会大会予稿集,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のモデルによれば、カテーテルや液体の挿入シミュレーションに対して、体腔を再現した腔所部分の動的な変形を目視により観察することができるが、腔所部分の周囲領域の応力状態については何ら情報を得ることができない。
そこでこの発明は、立体モデルにおいて腔所部分の周囲領域の応力状態を観察できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、次のように構成される。
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
該偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、
前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とした、ことを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
【発明の効果】
【0006】
このように構成された立体モデルの応力観測装置によれば、カテーテルや液体の挿入シミュレーションにおいて立体モデルの腔所の周囲領域に応力がかかったとき、光弾性効果が生じてその応力状態を観察することができる。
また、例えば偏光光源を構成する第1の偏光フィルタと観察者側の第2の偏光フィルタとの間に位相シフトフィルタを配置させることにより、第1の偏光フィルタを透過した光の一部が第2の偏光フィルタを透過可能となる。このとき、立体モデル内にカテーテルが挿入されていた場合、カテーテルは光を透過させないので、カテーテルが影となって観察される。勿論、カテーテルにより応力変化の生じた立体モデルの周囲領域においては光弾性効果が観察される。なお、この位相シフトフィルタが存在しないと一対の偏光フィルタにより光源からの光は完全に遮断され、光弾性効果により変調された光のみが第2の偏光フィルタを透過して観察可能となる。この場合、カテーテル自体を観察することはできない。
【0007】
波長シフトフィルタとしてはいわゆる1波長板又は2波長板を用いることが好ましい。1波長板は鋭敏色板ともよばれて、光弾性効果の観察感度が上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明の各構成要素を詳細に説明する。
(立体モデル形成材料)
立体モデルの応力状態を光弾性により観察するには、立体モデルにおいて少なくとも応力状態の観察が必要な部位を等方性材料で形成する。立体モデルは透光性を有するものとする。
かかる光弾性を有する材料として、例えば、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)や熱硬化性のポリウレタンエラストマー等のエラストマーの他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を単独で、或いは複数組み合わせて使用することができる。
カテーテルや液体を立体モデルの腔所へ挿入したとき、当該腔所の周囲領域における応力状態が光弾性効果として観察されるためには、少なくとも当該周囲領域が弾性変形可能な材料で形成される必要がある。勿論、立体モデルを全体的に弾性変形可能な材料で形成することができる。
かかる立体モデルの形成材料として、カテーテル等の挿入にともなって変形しやすく(即ち、縦弾性係数が大きく)、かつ僅かな変形でも大きな光弾性効果の変化を観察できる(即ち、光弾性系係数が大きい)材料が好ましい。かかる材料としてゼラチン(動物性かんてん)を挙げることができる。また、植物性かんてんやカラギーナン、ローカストビーンガムのような多糖類のゲル化剤を採用することもできる。
【0009】
(立体モデルの形成方法)
立体モデルにおいて腔所は被検体の断層像データに基づき形成された血管などの体腔を再現したものとすることができる。
ここに、被検体は人体の全体若しくは一部を対象とするが、動物や植物を断層撮影の対象とすることができる。また、死体を除くものではない。
断層像データは積層造形を実行するための基礎となるデータをいう。一般的に、X線CT装置、MRI装置、超音波装置などによって得られた断層撮影データから三次元形状データを構築し、当該三次元形状データを二次元に分解して断層像データとする。
以下、断層像データ生成の一例を説明する。
【0010】
ここでは、体軸方向に平行移動しながら等間隔に撮影することによって得られた複数の二次元画像を入力データ(断層撮影データ)として使用する場合について説明するが、他の撮影方法によって得られた二次元画像、或いは三次元画像を入力画像とする場合でも同様な処理を行うことによって腔所の三次元形状データを得ることができる。入力された各二次元画像は、まず撮影時の撮影間隔に基づいて正確に積層される。次に、各二次元画像上に、画像濃度値に関しての閾値を指定することにより、体腔モデルの対象とする腔所領域のみを各二次元画像中より抽出し、一方で他の領域を積層された二次元画像中より削除する。これにより腔所領域に相当する部分の三次元形状が二次元画像を積層した形で与えられ、この各二次元画像の輪郭線を三次元的に補間し、三次元曲面として再構成することにより対象とする腔所の三次元形状データが生成される。尚、この場合は濃度値に関しての閾値を指定することによって、まず入力画像中より腔所領域の抽出を行ったが、この方法とは別に、腔所表面を与える特定濃度値を指定することによって入力画像中より腔所表面の抽出し、三次元補間することによって直接的に三次元曲面を生成することも可能である。また、閾値指定による領域抽出(或いは特定濃度値指定による表面抽出)を行った後に入力画像の積層を行ってもよい。また、三次元曲面の生成はポリゴン近似によって行ってもよい。
【0011】
尚、前記三次元形状データには、該三次元形状データの生成中、或いは生成後において、形状の修正や変更を施すことが可能である。例えば、断層撮影データ中には存在しない構造を付加することや、サポートと呼ばれる支持構造を付加することや、或いは断層撮影データ中の構造を一部除去することや、腔所の形状を変更することなどが可能であり、これによって、立体モデルの内部に形成される腔所の形状を自由に修正或いは変更することができる。さらには、腔所の内部に非積層造形領域を設けることも可能であり、後に説明する内部を中空の構造とし、非積層造形領域を設けた体腔モデルを作製する場合には、そのような非積層造形領域を腔所の内部に設けた三次元形状データを生成しておく。尚、これらの処理は、積層造形システム、或いは積層造形システムに対応したソフトウェアにおいて行ってもよい。
【0012】
次に、生成した腔所の三次元形状データを、必要に応じて体腔モデルの積層造形に使用する積層造形システムに対応した形式に変換し、使用する積層造形システム、或いは使用する積層造形システムに対応したソフトウェアへと送る。
積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)では、積層造形時の体腔モデルの配置や積層方向などの各種設定項目の設定を行うと同時に、積層造形中における形状保持などの目的で、サポート(支持構造)をサポートが必要な箇所に付加する(必要なければ付加する必要はない)。最後に、このようにして得られた造形用データを積層造形時の造形厚さに基づいてスライスすることによって、積層造形に直接利用されるスライスデータ(断層像データ)を生成する。尚、上記の手順とは逆に、スライスデータの生成を行った後にサポートの付加を行ってもよい。また、スライスデータが使用する積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)によって自動的に生成される場合には、この手順を省略することができる。但し、この場合でも積層造形厚さの設定を行っても良い。サポートの付加についても同様であり、積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)によってサポートが自動的に生成される場合には、手動で生成する必要はない(手動で生成してもよい)。
【0013】
上記の例では、断層撮影データから三次元形状データを構築しているが、データとして最初から三次元形状データが与えられた場合もこれを二次元に分解して次の積層造形工程に用いる断層像データを得ることができる。
【0014】
この発明では血管などの体腔を対象としており、ここに体腔とは諸器官(骨格、筋、循環器、呼吸器、消化器、泌尿生殖器、内分泌器、神経、感覚器など)に存在する腔所、並びに、これらの諸器官や体壁などの幾何学的配置によって構成される腔所を指す。したがって、心臓の内腔、胃の内腔、腸の内腔、子宮の内腔、血管の内腔、尿管の内腔などの諸器官の内腔や、口腔、鼻腔、口峡、中耳腔、体腔、関節腔、囲心腔などが「体腔」に含まれる。
【0015】
上記の断層像データから上記体腔モデルを形成する。
形成の方法は特に限定されるものではないが、積層造形が好ましい。ここに積層造詣とは、断層像データに基づき薄い層を形成し、これを順次繰り返すことにより所望の造形を得ることをいう。
積層造形された体腔モデルは後の工程で分解除去されなければならない。除去を容易にするため、積層造形に用いる材料を低い融点の材料とするか、若しくは溶剤に容易に溶解する材料とすることが好ましい。かかる材料としては低融点の熱硬化性樹脂若しくはワックス等を用いることができる。いわゆる光造形法(積層造形に含まれる)において汎用される光硬化性樹脂においてもその分解が容易であれば、これを用いることができる。
【0016】
前記体腔モデルは、次の工程において立体モデル成形材料で囲繞する際に外部から付加される圧力等の外力に耐え得る強度を有する範囲であれば、その内部を中空構造とし薄肉化することができる。これによって、積層造形に所要される時間や造形に伴うコストが低減されるだけでなく、後の溶出行程において体腔モデルの溶出を簡素化できる。
具体的な積層造形の方式として、例えば粉末焼結方式、溶融樹脂噴出方式、溶融樹脂押出方式等を挙げることができる。
【0017】
尚、積層造形によって作製された体腔モデルには、積層造形の後に、表面研磨や、表面コーティングの付加など各種の加工(除去加工及び付加加工)を加えることが可能であり、これによって体腔モデルの形状を修正或いは変更することが可能である。これらの加工の一環として、体腔モデルの作製にあたって、積層造形後の除去が必要なサポートを付加した場合には、サポートの除去を行っておく。
体腔モデルの表面を他の材料でコーティングすることにより、体腔モデルの材料の一部の成分又は全部の成分が立体モデル成形材料中に拡散することを防止することができる。その他、体腔モデルの表面を物理的に処理(熱処理、高周波処理等)、若しくは化学的に処理することにより、当該拡散を防止することもできる。
【0018】
表面処理することにより体腔モデルの表面の段差を円滑化することが好ましい。これにより、立体モデルの内腔表面が円滑になり、より実際の血管等の体腔内表面を再現できることとなる。表面処理の方法として、体腔モデルの表面を溶剤に接触させること、加熱して表面を溶融すること、コーティングすること及びこれらを併用することが挙げられる。
【0019】
体腔モデルの一部又は全部を立体モデル成形材料で囲繞してこれを硬化する。体腔モデルを除去することにより立体モデルが形成される。
【0020】
(他の立体モデル)
立体モデルを多層構造とすることもできる。即ち、
血管などの体腔を再現した腔所をその内部に有する膜状モデルと、該膜状モデルを囲繞する基材から立体モデルを形成する。
このように構成された立体モデルでは、生体血管の有する膜状構造と血管周囲の軟組織の構造が物理特性も含めて個別に再現される。これにより、柔軟性を有する膜状構造の血管のモデルが、血管周囲組織の粘弾性特性を有する基材に埋設された状態となる。このため、医療器具や流体の挿入シミュレーションに際して、立体モデル内部の膜状構造の血管モデルが基材内で生体内における血管と同様に柔軟に変形することができ、生体血管の変形特性を再現するのに好適なものとなる。
ここに、膜状モデルは、既述の体腔モデルの表面へ膜状モデル成形材料を薄く積層し、これを硬化して得られる。
膜状モデルの成形材料は光弾性効果を示す等方性材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)や熱硬化性のポリウレタンエラストマー等のエラストマーの他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を単独で、或いは複数組み合わせて使用することができる。これらの材料を塗布、吹き付け、若しくはディッピング等の方法で体腔モデルの表面へ薄く積層し、その後周知の方法で加硫若しくは硬化させる。
膜状モデルの対象を脳血管モデルとするときには、透明でかつ生体組織に近い弾力性及び柔軟性を備える材料を採用することが好ましい。かかる材料としてシリコーンゴムを挙げることができる。また、シリコーンゴムは生体組織と同等の接触特性を有するので、カテーテル等の医療器具を挿入し手術の試行に適したものとなる。
膜状モデル形成材料を複数層から形成することができる。その厚みも任意に設定できる。
膜状モデルはその全体が実質的に均一な厚さに形成されることが、光弾性効果を観察する点から、好ましい。
【0021】
基材は生体組織に類似した物理特性を有する透光性材料とすることが好ましい。
ここに、生体組織とは膜状モデルが再現した血管等を囲繞する柔軟な組織である。かかる柔軟性(物理特性)を再現する材料として、実施例ではシリコーンゲル及びグリセリンゲルを用いた。ゼラチン、かんてん、多糖類のゲルなどを用いることもできる。なお、ケーシングに気密性を確保できれば高粘度の液体を基材として用いることもできる。
基材の材料としてゲルを用いた場合、物理特性の異なる複数の材料を用いて基材をより生体組織に近づけることができる。
膜状モデルの動的な挙動を観察するため、基材は透光性とすることが好ましい。膜状モデルと基材との境界を明確にするため、膜状モデル若しくは基材の少なくとも一方を着色することができる。また、膜状モデルの動的挙動をより正確に観察できるように、膜状モデルの材料の屈折率と基材の材料の屈折率とを実質的に等しくすることが好ましい。
膜状モデルの全部が当該基材内に埋設される必要はない。即ち、膜状モデル一部は空隙部内に位置していてもよい。また、膜状モデルの一部はソリッド基材(生体組織と非類似の物理特性を有する)内にあってもよい。
基材は弾性を有するものとする。好ましくは、縦弾性係数が2.0kPa〜100kPaの低弾性とする。更に好ましくは、基材は充分な伸びを有する。これにより、膜状モデルが大きく変形しても、膜状モデルから基材が剥離することがない。例えば、無負荷時を1として、膜状モデルに対する接着性を確保した状態で引っ張ったときに基材は無付加時の2〜15倍の伸び率を有することが好ましい。ここで伸び率とは、基材が元に戻ることの出来る最大変形量を指す。また、荷重を加えて変形させた基材から荷重を除去したときに基材が元に戻る速度は比較的緩やかであることが好ましい。例えば、粘弾性パラメータである損失係数tanδ(1Hz時)は0.2〜2.0とすることができる。
これにより、血管等の周囲に存在する組織と同等若しくは近い特性を基材が持ち、膜状モデルの変形がより実際に近い環境で行われることとなる。即ち、カテーテル等の挿入感をリアルに再現可能となる。
基材は膜状モデルに対して密着性を有するものとする。これにより、膜状モデルへカテーテル等を挿入して膜状モデルを変形させも基材と膜状モデルとの間にズレの生じることがない。両者の間にズレが生じると、膜状モデルにかかる応力に変化が生じるので、例えばカテーテルの挿入シミュレーションをする場合に支障をきたし、その挿入時に違和感を生じるおそれがある。
膜状モデルとして脳血管モデルを対象としたとき、基材と膜状モデルとの密着性(接着強度)は1kPa〜20kPaとすることが好ましい。
かかる基材として実施例ではシリコーンゲル及びグリセリンゲルを用いているが、その材質が特に限定されるものではない。なお、ケーシングに気密性を確保できれば高粘度の液体を基材として用いることもできる。これは特に、弾性を有さない生体組織に囲まれる血管を再現した膜状モデルに対する基材として好適である。これら複数種類の流動体を混合し、さらにはこれらへ接着性の薬剤を混合することにより、好適な基材を調製することもできる。
基材の材料としてゲルを用いた場合、物理特性の異なる複数の材料を用いて基材をより生体組織に近づけることができる。
膜状モデルの動的な挙動を観察するため、基材は透光性とすることが好ましい。膜状モデルと基材との境界を明確にするため、膜状モデル若しくは基材の少なくとも一方を着色することができる。また、膜状モデルの動的挙動をより正確に観察できるように、膜状モデルの材料の屈折率と基材の材料の屈折率とを実質的に等しくすることが好ましい。
膜状モデルの全部が当該基材内に埋設される必要はない。即ち、膜状モデル一部は空隙部内に位置していてもよい。また、膜状モデルの一部はソリッド基材(生体組織と非類似の物理特性を有する)内又は流体内にあってもよい。
【0022】
ケーシングは基材を収容するものであり任意の形状をとることができる。膜状モデルの動的挙動を観察できるように全体若しくはその一部が透光性材料で形成される。かかるケーシングは透光性の合成樹脂(アクリル板等)やガラス板で形成することができる。
ケーシングには膜状モデルの腔所に連通する穴が空けられている。この穴からカテーテルを挿入することができる。
立体モデルは全体として透光性であることが好ましい。カテーテルの挿入状態を観察する点からいえば、少なくともその膜状モデルの内部が視認できればよい。
ケーシングと膜状モデルとの間には充分な距離を設ける。これにより、弾性を有する基材に充分なマージン(厚さ)が確保され、カテーテル挿入等により膜状モデルへ外力がかけられたときその外力に応じて膜状モデルは自由に変形できることとなる。なお、このマージンは立体モデルの対象、用途等に応じて任意に選択できるものであるが、例えば膜状モデルの膜厚の10倍〜100倍以上とすることが好ましい。
【0023】
体腔モデルを膜状モデルで被覆した状態の中子をケーシング中にセットし、該ケーシングへ基材材料を注入し、ゲル化する。
その後、体腔モデルを除去すると膜状モデルが基材中に残された状態となる。
体腔モデルの除去の方法は体腔モデルの造形材料に応じて適宜選択され、立体モデルの他の材料に影響の出ない限り、特に限定されない。
体腔モデルを除去する方法として、(a) 加熱により溶融する加熱溶融法、(b) 溶剤により溶解する溶剤溶解法、(c) 加熱による溶融と溶剤による溶解とを併用するハイブリッド法等を採用することができる。これらの方法により体腔モデルを選択的に流動化し、立体モデルの外部へ溶出してこれを除去する。
【0024】
体腔モデルの材料の成分の一部が膜状モデルの内部へと拡散し、膜状モデルに曇りが生じて、その視認性が低下するおそれがある。この曇りを除去するため、体腔モデルを除去した後に試料を再度加熱することが好ましい。この加熱は体腔モデル除去の途中で実行することもできる。
【0025】
立体モデルは、また、次のようにして形成することもできる。
体腔モデルを中子としてゲル状の基材へ埋設し、当該体腔モデルを除去する。これにより、基材中に体腔を再現した腔所が形成される。その後、腔所の周壁へ膜状モデルの形成材料を付着させ重合若しくは加硫等により硬化する。膜状モデル形成材料を基材の腔所へ流すこと、若しくは基材を膜状モデル形成材料にディッピングすることにより、膜状モデル形成材料を基材の体腔周壁へ付着させることができる。
【0026】
また、当該腔所の周壁へ膜状モデル形成材料を付着する代わりに当該腔所の周壁を親水化処理することができる。これにより、立体モデルの腔所へ水若しくは水溶液を充填したとき周壁に水膜が形成され、カテーテルの挿入抵抗が緩和される。即ち、この水膜が膜状モデルに対応することとなる。
当該腔所の周壁を疎水化処理(親油化処理)した場合も同様に、腔所へ油を充填したとき周壁に油膜が形成され、カテーテルの挿入抵抗が緩和される。即ち、この油膜が膜状モデルに対応する。
【0027】
腔所の周壁は周知の方法で親水化若しくは疎水化される。例えば基材としてシリコーンゲルを採用した場合、界面活性剤等の極性基を有する膜を当該周壁に形成することによりその腔所の周壁を親水化することができる。同様に、オイルやワックス等の油性膜を腔所の周壁に形成することによりその腔所の周壁を疎水化することができる。
【0028】
体腔モデルの基体をシリコーンゴム等の透光性ゲル材料で形成し、体腔部の周壁を当該ゲル材料より光弾性係数の高い材料で全体的に若しくは部分的に被覆することができる。光弾性係数の高い材料を基材内へ埋設することもできる。高い光弾性係数を有する材料により光弾性効果が強調されることとなる。なお、光弾性係数の高い材料としてエポキシ樹脂などを挙げることができる。エポキシ樹脂の薄膜はカテーテルの挿入によって容易に変形するので、これを用いることにより光弾性効果を明確に観察することができる。
【0029】
ケーシングは基材を収容するものであり任意の形状をとることができる。膜状モデルの動的挙動を観察できるように全体若しくはその一部が透光性材料で形成される。かかるケーシングは透光性の合成樹脂(アクリル板等)やガラス板で形成することができる。
ケーシングには膜状モデルの腔所に連通する穴が空けられている。この穴からカテーテルを挿入することができる。
立体モデルは全体として透光性であることが好ましい。カテーテルの挿入状態を観察する点からいえば、少なくともその膜状モデルの内部が視認できればよい。
【0030】
(光弾性効果)
光弾性効果とは、透光性材料において内部応力が生じると、一時的に複屈折性をおび、最大主応力と最小主応力の方向で屈折率が異なるため、入射光が2つの平面偏光に分かれて進むことをいう。当該2つの波の位相差により干渉縞が生じ、この干渉縞を観察することにより透光性材料の内部応力の状態を知ることができる。
この光弾性効果を生じさせるには、図1に示すように、光源からの光を第1の偏光板(偏光フィルタ)に通して偏光させ、立体モデルにこの直線偏光を通す。立体モデルにおいて内部応力が生じていると内部応力に強さに応じて複屈折が生じ、最大主応力(acosφsinωt)と最小主応力(acosφsin(ωt−A))が生成する。これらの光は速度が異なるため位相差を生じ、第2の偏光板(偏光フィルタ)を通して観察すると、干渉縞が現れる。なお、この第2の偏光板の偏光方向は第1の偏光板の変更方向と実質的に直交している。
一対の偏光板に間に立体モデルを介在させ、立体モデルを透過する光に生じる光弾性効果を観察する方法として、直交ニコル法、平行ニコル法、鋭敏色法等が知られている。また、偏光板と立体モデルとの間に一対の1/4波長板(1/4波長フィルタ)を介在させることにより光弾性効果を検出する方法として、円偏光法やセナルモン法等が知られている。
【0031】
このように、光弾性効果を用いることのより、立体モデルの腔所へカテーテルを挿入したときの腔所の周囲領域の応力変化を観察することが可能となる。しかしながら、カテーテル自体は何ら光弾性効果を生じさせないので、周囲領域の応力変化にともなう光弾性効果とともにその位置及び状態を観察することができなかった。
そこでこの発明では、光源側の第1の偏光フィルタと観察者側の第2の変更フィルタとの中へ位相シフトフィルタを介在させることにより、カテーテル自体の位置及び状態を観察可能とした。即ち、位相シフトフィルタを存在させることにより、第1の偏光フィルタを透過した光の一部が第2の偏光フィルタを透過し、バックグランド光を構成する。ここに、立体モデル中にカテーテルが存在すると、それが影となって現れてその位置、状態及び動作が観察される。即ち、カテーテルとカテーテルにより生じた光弾性効果を同時に観察可能となる。
【0032】
位相シフトフィルタとしては、第1の偏光フィルタを透過した光を1波長若しくは2波長シフトさせるものを用いることができる。光弾性効果の感度が向上するからである。
この発明では、観察者側の第2の偏光フィルタからバックグランド光を取り出すことができれば、複数枚の波長シフトフィルタを用いてもよい。なお、円偏光法やセナルモン法等においては1/4波長板が用いられているが、これらの方法においてはバックグランド光を第2の変更フィルタから取り出すことができないので、カテーテルの観察は不可能である。
【0033】
本発明者らの検討により、観察側の第2の偏光フィルタと1/4波長フィルタとの間に位相シフトフィルタを配置し、更に当該位相シフトフィルタを当該1/4波長フィルタの光学軸に対してほぼ22.5度傾斜させることが好ましい。
かかる構成を図2に示す。図2において、符号201は白色光源、符号203及び204は偏光フィルタ、符号205及び206は1/4波長フィルタ、207は観察対象である立体モデル、209は位相シフトフィルタ(この例では2波長板)である。
位相シフトフィルタ209の傾斜角度ψ=±5度〜±40度のとき、より好ましくはψ=±22.5度のとき、第2の偏光フィルタ204において観察される光弾性効果(光の色(波長))から、観察対象の応力とその方向を特定することができる。
これは、次の理由による。
図2の構成において、観察される光の強さIは下記式1で表現される。
【式1】
【0034】
ここに、θは応力の方向を示し、Reは光弾性効果により生じた位相シフトによる遅延(Retardation)を示す。なお、このReは応力強さに対応する。
ψ=22.5として、上記式1にRGBの各波長を代入したとき、観察される光の色(波長)は応力の方向と応力の強さとを反映している。換言すれば、観察された光の色から応力の方向と応力の強さが特定できる。観察された光と応力方向及び応力強さとの関係は図3のマップで表される。なお、紙面の都合上、図3は白黒表記となったが、実際には、図3の全領域に渡り色変化が認められ、図3の縦軸(応力方向)の任意の座標と横軸(応力強さ)の任意の座標とで指定される色(波長)は実質的に1つに特定される。このようなカラーマップはψ=±5度〜±40度のとき、より鮮明にはψ=±22.5度のとき得られる。
他方、ψ=0度あるいはψ=90度のときは、図4Aに示す通り、縦軸の90度を中心にして上下対称の色分布のなるので、観察された色から応力方向や応力強さを特定することは出来ない。またψ=±45のときは、図4Bに示す通り、前記位相シフトフィルタの効果を得ることができないため、カテーテルの影を観察することが困難である。
また、本発明者らの検討によれば、ψ=±22.5のとき、光源をG(緑色系)の光とすると、図3のマップにおいて、緑色の明るさ(強さ)が横軸に対応して分布していることがわかった。実際には横軸のほぼ中央で最も明るく、左右に移行するに従い明るさが低減する。立体モデルにかかる最高応力はほぼRe=265〜400程度であり、それを超えると破損するおそれが強い。従って、緑色の明るさに注目すれば、立体モデルにかかっている応力の強さを特定することができる。これにより、オペレータはカテーテル手術シミュレーションを行なうときの立体モデルの応力状態を、リアルタイムでかつ直感的に把握することができる。
【実施例】
【0035】
(第1実施例)
立体モデル化の対象とする脳血管及び患部である脳動脈の形状に関する三次元データを得るため、撮影領域の血管内部へ造影剤を投与しながら、患者の頭部に対して、0.35×0.35×0.5mmの空間分解能を持つヘリカルスキャン方式のX線CT装置により撮影を行った。撮影により得られた三次元データは、3次元CADソフトへの受け渡しのため、体軸方向に等間隔に配列された500枚の512×512の解像度をもつ256階調の二次元画像(断層撮影データ)に再構成した後、各二次元画像に対応する画像データを撮影方向に一致する順序で前記X線CT装置に内蔵されたドライブにより5.25インチ光磁気ディスクへ保存した。
【0036】
次に、パーソナルコンピュータに外部接続した5.25インチ光磁気ドライブによって、前記画像データをコンピュータ内部の記憶装置へ取り込み、この画像データから、市販の三次元CADソフトを利用して、積層造形に必要とされるSTL形式(三次元曲面を三角形パッチの集合体として表現する形式)の三次元形状データを生成した。この変換では、入力された二次元画像を撮影間隔に基づいて積層することによって、濃度値をスカラー量とする三次元のスカラー場を構築し、そのスカラー場上に血管内表面を与える特定の濃度値を指定することによって、アイソサーフェス(特定スカラー値の境界面)として血管内腔の三次元形状データを構築した後、構築されたアイソサーフェスに対して三角形ポリゴン近似のレンダリングが行われる。
なお、この段階で、三次元形状データに付加データを加え、体腔モデル12(図6参照)の端部からガイド部13を膨出させた(図5参照)。このガイド部13は中空柱状の部材である。中空部31を備えることにより、積層造形時間の短縮を図っている。このガイド部13の先端は拡径されており、この部分が立体モデル表面に表出して、大径な開口部25(図6参照)を形成することとなる。
【0037】
生成したSTL形式の三次元形状データを、次に溶融樹脂噴出方式の積層造形システムへと転送し、造形システム内でのモデルの配置や積層方向、積層厚さを決定すると同時にモデルに対してサポートを付加した。
このようにして生成された積層造形用のデータをコンピュータ上で所定の積層造形厚さ(13μm)にスライスして多数のスライスデータを生成した。そして、このようにして得られた各スライスデータに基づいて、p−トルエンスルホンアミドとp−エチルベンゼンスルホンアミドを主成分とした造形材料(融点:約100度、アセトンに容易に溶解)を加熱により溶融して噴出することにより、各スライスデータに一致する形状を有する指定厚さの樹脂硬化層を一面ずつ積層形成することよって積層造形を行った。最終層の形成の後にサポートを除去することによって、脳血管内腔領域の積層造形モデル(体腔モデル12)を作成した。
更に、この体腔モデル12の表面を処理して円滑にする。
【0038】
この体腔モデル12の全表面へシリコーンゴム層15をほぼ1mmの厚さに形成した(図6参照)。このシリコーンゴム層15は、体腔モデル12をシリコーンゴム槽へディッピングし取出した体腔モデルを回転させながら乾燥させることにより得られる。このシリコーンゴム層が膜状モデルとなる。
この実施例では、体腔モデル12の全表面をシリコーンゴム層15で被覆したが、体腔モデル12の所望の部分を部分的にシリコーンゴム層15で被覆することも可能である。
【0039】
体腔モデル12をシリコーンゴム層15からなる膜状モデルで被覆してなる中子11を直方体のケーシング24にセットする。このケーシング24は透明なアクリル板からなる。ケーシング内に基材22の材料を注入して、これをゲル化する。
基材22の材料として、2液混合型のシリコーンゲルを用いた。このシリコーンゲルは透明かつ弾性を有しており、かつ血管周囲の軟組織に極めて近い物理特性を有している。縮合重合型のシリコーンゲルを用いることもできる。このように基材は、透光性、弾性を備えるとともに、膜状モデルに対する密着性を備えるものとする。
【0040】
基材22の材料の物理特性は、膜状モデルの対象である血管等の周囲の組織の物理特性に適合するように、調整される。
なお、この実施例では針入度、流動性、粘着性、応力緩和性などを指標にして、最終的にはオペレータの手触り(カテーテルの挿入感覚)によりその物理特性を生体組織に近づけるようにしている。
シリコーンゲルの場合、そのポリマーの骨格を調製することはもとより、シリコーンオイルを配合することにより当該物理特性を調整することができる。
【0041】
シリコーンゲルの外に、グリセリンゲルを用いることもできる。このグリセリンゲルは次のようにして得られる。即ち、ゼラチンを水に浸漬して、これにグリセリンと石炭酸を加え、加熱溶解する。温度が高い間に濾過し、中子に影響の出ない温度になったらケーシング内に注入し、放冷する。
【0042】
その後、中子11内の体腔モデル12を除去する。除去の方法としてハイブリット法を採用した。即ち、試料を加熱して開口部25から体腔モデルの材料を外部へ流出させ、更に、空洞部へアセトンを注入して体腔モデルの材料を溶解除去する。
その後、試料を120℃に設定された恒温層内で約1時間加熱して、膜状モデル(シリコーンゴム層15)の曇りをとった。
【0043】
このようにして得られた立体モデル21は、図7及び図8に示すように、シリコーンゲルからなる基材22中に膜状モデル15が埋設された構成となる。シリコーンゲルが生体組織に近い物理特性を有するので、膜状モデル15は血管と同等の動的挙動を示こととなる。
【0044】
他の実施形態の立体モデルとして、上記立体モデル21から膜状モデル15を省略したものを挙げることができる。
この場合、基材として光弾性係数の高いゼラチンを用いることが好ましい。
【0045】
図9はこの発明の実施例のカテーテル手術シミュレータ60の構成を示す。
この実施例のカテーテル手術シミュレータ60は、光源61、一対の偏光板62及び63、1波長板68、図7に示した立体モデル21、受光部70から大略構成される。
光源61には白色光源を用いることが好ましい。太陽光を光源として用いることもできる。また、単色光源を用いることも可能である。第1の偏光板62及び63は相互に直交した偏光方向を有する。これにより、立体モデル21の内部応力に起因する光弾性効果を第2の偏光板63側において観察することができる。1対の偏光板62及び63の間に1波長板68を介在させることにより、波長530nm近傍の光がバックグランド光として第2の偏光板63を透過するカテーテルのような非透明部材が影として観察される。なお、1波長板68に代表される波長シフトフィルタは第1の偏光板62と立体モデル21との間に介在させてもよい。
立体モデル21の腔所へカテーテルを挿入したとき、カテーテルと腔所の周壁とが干渉すると、当該腔所周壁に応力が生じそこに光弾性効果(干渉縞)が現れる。また、コイル塞栓時の動脈瘤の変形に伴う当該動脈瘤周囲領域の応力状態も光弾性効果からシミュレートすることができる。
【0046】
この実施例では光源61、第1の偏光板62、立体モデル21及び第2の偏光板63を直線上に配置させたが、第2の偏光板63を偏移して(即ち、直線上からずらして)配置することができる。立体モデル21の腔所において光が乱反射するので、腔所の形状においては第2の偏光板63を偏移して配置したほうが、光弾性効果をより鮮明に観察できる場合があるからである。
【0047】
受光部70は、CCD等からなる撮像装置71と当該撮像装置71で撮像した光弾性効果の画像を処理する画像処理装置70、並びに画像処理部70の処理結果を出力するディスプレイ75及びプリンタ77を備えてなる。
画像処理装置73では次のような処理が行われる(図10参照)。
まず、立体モデル21へ何ら外力を加えていない初期状態の画像をバックグラウンド画像として取り込む(ステップ1)。立体モデル21が高い光弾性係数の材料で形成されている場合、自重で光弾性効果を生じる場合がある。従って、光源61から光を照射し、更に外力を加えたとき(例えばカテーテルを挿入したとき)の光弾性効果による干渉縞画像を取り込んだ後(ステップ3)、これからバックグランド画像を差分処理する(ステップ5)。
【0048】
立体モデル21が高い光弾性係数の材料で形成されている場合、内部応力の如何によっては細かい干渉縞が繰返しパターンで現れる。画像処理装置73は単位面積あたりの当該パターンの数をカウントすることにより、当該内部応力を数値化する(ステップ7)。そして、第2の偏光板63を介して得られる立体モデル21の形状に関する画像において、内部応力の生じた部分に当該数値に対応した色を与えて外部表示する(ステップ9)。
この実施例では受光部70により光弾性効果による干渉縞を画像処理しているが、当該干渉縞を観察者が直接若しくは撮像装置71を介して観察してもよい。
【0049】
図11に他の実施例のカテーテル手術シミュレータ80を示す。図12に示す要素と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
この実施例では第1の偏光板62と立体モデル21との間に第1の1/4偏光板82を介在させ、立体モデル21と第2の偏光板63との間に第2の1/4偏光板83を介在させている。これにより、円偏光に基づき立体モデル21の光弾性効果を観察可能になる。円偏光に基づく光弾性効果の観察によれば、干渉縞に応力方向の影響が現れないので、立体モデルの姿勢制御が容易になる。
【0050】
上記の例では、第2の偏光板62に撮像装置71を対向させて観察を行っていたが、これを目視によりヒトが直接観察することもできる。
図12には目視観察に適した例が示されている。この例では、メガネ90が準備されている。このメガネ90のレンズ部分は2層構造とされており、図12(B)に示すように、観察者側に第2の偏光板63が配置され、その外側に1波長板68が配設されている。
このメガネ90を掛けずに光源61をオンの状態とすると、立体モデル21が第1の偏光板62を通過した光により照明されて、カテーテルの状態やその血管構造など目視による構造観察が可能になる。他方、メガネ90を掛けると、基本的に図9の構成が形成されるので、カテーテルの状態と当該カテーテルによる立体モデルの応力状態に対応した光弾性効果とが同時に観察可能となる。
この実施例ではメガネ90を採用したが、観察者側から第2の偏光板と位相シフトフィルタとを積層したプレートを準備すればよい。
また、1波長板に代表される位相シフトフィルタを第1の偏光板62と立体モデル21との間に配置したときには、メガネのレンズ部分を第2の偏光板のみから形成すればよい。
【0051】
図13はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータ160を示す。なお、図9と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図13においてディスプレイ175及びプリンタ177は膜状モデルの応力状態を出力する出力部を構成する。ランプ装置178及びスピーカ装置179はアラームを出力する出力部を構成する。一対の偏光板62,63及び位相シフトフィルタとしての1波長板により光弾性観察部が構成される。
次に、図13に示したカテーテル手術シミュレータ160の動作を図14のフローチャートに基づき説明をする。
立体モデル21に対向する第2の偏光板63の部分を撮像装置71で撮像し、膜状モデルの状態量を特定する特徴量としてピクセル毎の輝度を画像処理装置のメモリの所定の領域に保存する(ステップ11)。ステップ15では最も高い輝度のピクセルを抽出し(ステップ15)、予め準備されているテーブル若しくは関係式を参照して当該最高輝度に対応する応力を特定する(ステップ17)。次に、所定のルールに従い特定された応力のレベルを特定する(ステップ19)。例えば、応力の小さい方から、安全段階、注意段階、危険段階の3段階に応力をレベル分けすることができる。
【0052】
特定された応力のレベルはディスプレイ175に数値、文字、若しくは棒グラフの形態等で表示することができる(ステップ21)。勿論、ディスプレイ175には撮像装置71の撮像画面をリアルタイムで表示可能である。
特定された応力のレベルに応じ、スピーカ装置179を介してその段階を音声案内することができる。段階が変化したときに当該音声案内をすることが好ましい(ステップ23)。
また、特定されたレベルに応じてランプ装置178を点灯させることができる(ステップ25)。例えば、安全段階では緑色のランプを点灯し、注意段階では黄色のランプを点灯し、危険段階になったとき赤色のランプを点灯する。
このようにアラームを出力することにより、オペレータはカテーテルの挿入作業に集中することができる。
【0053】
上記において、ピクセル毎にその輝度から応力を特定し、所定の閾値を超えた応力をもつピクセルをカウントし、カウント結果に基づき応力レベルを特定することもできる。また、ピクセル毎に応力変化を演算して当該応力変化が所定の閾値を超えたものをカウントし、当該カウント結果に基づき応力レベルを特定することができる。
更には、撮像装置で撮影した画像内のピクセルについて一定の法則に基づいて輝度に重み係数を乗じ、画像の所定領域若しくは全領域につき当該輝度を足しあわせることにより得られる計算値を特徴量とすることもできる。
上記の説明では、輝度より応力を求めているが、輝度そのものを演算対象、即ち、輝度の大きさ、その変化率に基づき、何ら応力計算を経ることなく、レベルを決定してアラーム(音声案内やランプ)を動作させることもできる。
【0054】
更には、ピクセル毎に得られた輝度より応力を特定し、当該応力を時系列的に積算することもできる。これにより、膜状モデルにおいて当該ピクセルに対応する部分に蓄積した応力(応力履歴)が表示可能となる。また。応力の蓄積量に応じて(例えば応力の蓄積が所定の閾値をこえたとき)、アラーム出力を動作させることもできる。
上記のような画像処理が可能となったのは、1波長板を介在させることにより、感度が向上して画像処理を精度よく行えるようになったためである。
【0055】
図15は、カテーテル手術におけるロードマップ作成をシミュレートした実施例を示す。
ステップ31では、立体モデル21の血管部分(膜状モデル部分)に造影剤を流し込んで立体モデル21の画像を撮影する。このとき、偏光板62,63の少なくとも一方を外して、好ましくは、偏光板62,63及び1波長板68を外して、光源61からの光が立体モデル21を透過するものとする。造影剤が導入された立体モデルは血管部分が染色された状態で撮影され、その画像が保存される(ステップ31)。
その後、図13の状態で立体モデル、特に膜状モデルの光弾性効果を撮影装置71で撮影する(ステップ33)。
撮影された光弾性効果を示す画像を、造影剤導入画像を背景として、これに重ねて表示する(ステップ35)。これにより、カテーテル手術におけうロードマップ作成の信頼性を確認することができる。
【0056】
図16に他の実施例のシミュレータ300の構成を示す。なお、図11と同一の要素には同一の符号を付してその説明を部分的に省略する。
この実施例では、第2の1/4波長板83と第2の偏光板63との間に2波長板301を存在させている。この2波長板は、前記1/4波長板の光学軸に対して22.5度傾斜している。
かかる構成は、既述の図2の構成と対応している。光源色を白色光としたとき、撮像装置71で撮像される光の色(波長)を図3に示すカラーマップに対照することにより、立体モデルにおいて光弾性効果を生じた部分の応力の大きさとその向きが特定される。
実施例の装置300では、図3のカラーマップがメモリ303に保存されている。また、図3の横軸Reの値から応力を演算する演算式もメモリ303に保存されている。
符号305はマウス等のポインティングディバイスであって、撮像装置71の撮像画像を表示するディスプレイ75において、所望部分をカーソル310で指定することができる(図17参照)。
画像処理装置73はカーソル310で指定された部分の色を認識し、当該色をメモリ303に保存されているカラーマップ(図3参照)に対照させて、応力の方向とその大きさを特定する。なお、図3において特定される遅延Reをメモリ303に保存されている関係式に代入することにより応力を大きさを求めることができる。そして、図17に示すように、ポップアップウインドウ320を開いて、そこにカーソル310で指定した部分の応力の大きさを数値表示し、また方向を矢印で表す。
【0057】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は光弾性効果の説明図である。
【図2】図2はこの発明の1つの局面のシミュレータの概略構成図である。
【図3】図3は図2のシミュレータにより得られるψ=22.5度のときのカラーマップを示す。
【図4】図4は図2のシミュレータにより得られるψ=0度及びψ=90度のときのカラーマップを示す。
【図5】図5は実施例の中子11を示す斜視図である。
【図6】図6は図5のA−A線断面図であり、中子の構成を示す。
【図7】図7はこの発明の実施例の立体モデルを示す。
【図8】図8は図7のB−B線断面図であり、基材中に膜状モデルが埋設された状態を示す。
【図9】図9はこの発明の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図10】図10は実施例のカテーテル手術シミュレータの受光部の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図12】図12はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図13】図13はこの発明の他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図14】図14は同じくカテーテル手術シミュレータの動作を示すフローチャートである。
【図15】図15は同じくカテーテル手術シミュレータの他の動作を示すフローチャートである。
【図16】図16は他の実施例のカテーテル手術シミュレータの構成を示す模式図である。
【図17】図17はディスプレイ75の表示態様を示す。
【符号の説明】
【0059】
11 中子
12 体腔モデル
15、55 シリコーンゴム層(膜状モデル)
21 立体モデル
22 基材
60、80、160、300 カテーテル手術シミュレータ
61 光源
62、63 偏光板
68 1波長板
70 受光部
82、83 1/4波長板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
該偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、
前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とした、ことを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
【請求項2】
前記偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に、円偏向法観察が実現されるように一対の1/4波長フィルタが配置され、前記位相シフトフィルタは前記偏光フィルタとそれに近い前記1/4波長フィルタとの間か、あるいは前記偏光光源とそれに近い前記1/4波長フィルタとの間に配置されて、当該1/4波長フィルタの光学軸に対して±5度〜±40度傾斜されている、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項3】
前記偏光光源は光源と偏光フィルタからなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項4】
前記位相シフトフィルタは1波長板又は2波長板からなる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項5】
第1の偏光方向の光によりカテーテルを挿入可能な立体モデルの光弾性効果を観察するためのメガネであって、観察者側に偏光フィルタが配置され、その外側に位相シフトフィルタが配置されて、前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを観察可能とするメガネ。
【請求項6】
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成された透光性の立体モデルへカテーテルを挿入し、
偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの間に前記立体モデルを配置して、前記カテーテルにより前記周囲領域に生じた応力に対応する光弾性効果を生じさせ、
偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの間に位相シフトフィルタを介在させることにより、前記光弾性効果とともに前記立体モデルへ挿入されたカテーテルの影を観察可能とする、ことを特徴とする立体モデルの応力観測方法。
【請求項7】
血管を再現した弾性材料製の膜状モデルの光弾性効果を観察可能とする光弾性観察部であって、偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタと、該偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、前記膜状モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とする光弾性観察部と、
光弾性観察部の光弾性効果を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された画像を処理して、前記膜状モデルの状態を特定する特徴量を生成する画像処理部と、
該画像処理装置で生成された特徴量を出力する、又は該特徴量に基づきアラームを出力する出力部と、
を備えてなるカテーテル手術シミュレータ。
【請求項8】
前記特徴量は、応力値であることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項9】
前記特徴量は、画素の輝度、あるいは当該画素の輝度に一定の法則に基づいて重み係数を乗じ、それらをある領域内の画素について足し合わせることにより得られる計算値であることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項10】
前記画像処理装置で特定された特徴量を積算する手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項7〜9に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項11】
血管を再現した弾性材料製の膜状モデルの光弾性効果を観察可能とする光弾性観察部であって、偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタと、該偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、前記膜状モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とする光弾性観察部と、
該光弾性観察部の光弾性効果を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された画像を処理してアラーム信号を出力する画像処理部と、
該アラーム信号に基づきアラームを出力する出力部と、
を備えてなるカテーテル手術シミュレータ。
【請求項12】
前記膜状モデルと比較して光弾性効果をほとんど生じさせないゲルからなりかつ前記膜状モデルに対して密着性のある基材で前記膜状モデルが囲繞されている、ことを特徴する請求項7〜11のいずれかに記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項13】
前記基材を収納する透光性のケーシングであって、該ケーシングと前記膜状モデルとの間において、前記基材は前記膜状モデルの自由変形を許容するマージンを有するケーシングが更に備えられる、ことを特徴とする請求項12に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項14】
前記膜状モデルはウレタン樹脂若しくはウレタンエラストマーからなり、前記基材はシリコーンゲルからなる、ことを特徴とする請求項12に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項15】
前記膜状モデルへ造影剤を導入した状態の画像を保存する手段が更に備えられ、
前記出力部は前記画像の上に重ねて前記撮像部が撮像した光弾性効果を表示する、ことを特徴とする請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項16】
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
前記偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される一対の1/4波長フィルタと、
前記偏光フィルタとそれに近い1/4波長フィルタとの間か、あるいは前記偏光光源とそれに近い前記1/4波長フィルタとの間に配置されて、当該1/4波長フィルタの光学軸に対してほぼ22.5度傾斜されている1波長板若しくは2波長板と、を備えることを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
【請求項17】
前記偏光光源からは緑色系の光が放出される、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項18】
検出した光弾性効果に基づき応力の方向及び/又は応力の大きさを特定する手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項16又は17に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項1】
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
該偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、
前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とした、ことを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
【請求項2】
前記偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に、円偏向法観察が実現されるように一対の1/4波長フィルタが配置され、前記位相シフトフィルタは前記偏光フィルタとそれに近い前記1/4波長フィルタとの間か、あるいは前記偏光光源とそれに近い前記1/4波長フィルタとの間に配置されて、当該1/4波長フィルタの光学軸に対して±5度〜±40度傾斜されている、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項3】
前記偏光光源は光源と偏光フィルタからなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項4】
前記位相シフトフィルタは1波長板又は2波長板からなる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項5】
第1の偏光方向の光によりカテーテルを挿入可能な立体モデルの光弾性効果を観察するためのメガネであって、観察者側に偏光フィルタが配置され、その外側に位相シフトフィルタが配置されて、前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを観察可能とするメガネ。
【請求項6】
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成された透光性の立体モデルへカテーテルを挿入し、
偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの間に前記立体モデルを配置して、前記カテーテルにより前記周囲領域に生じた応力に対応する光弾性効果を生じさせ、
偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの間に位相シフトフィルタを介在させることにより、前記光弾性効果とともに前記立体モデルへ挿入されたカテーテルの影を観察可能とする、ことを特徴とする立体モデルの応力観測方法。
【請求項7】
血管を再現した弾性材料製の膜状モデルの光弾性効果を観察可能とする光弾性観察部であって、偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタと、該偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、前記膜状モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とする光弾性観察部と、
光弾性観察部の光弾性効果を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された画像を処理して、前記膜状モデルの状態を特定する特徴量を生成する画像処理部と、
該画像処理装置で生成された特徴量を出力する、又は該特徴量に基づきアラームを出力する出力部と、
を備えてなるカテーテル手術シミュレータ。
【請求項8】
前記特徴量は、応力値であることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項9】
前記特徴量は、画素の輝度、あるいは当該画素の輝度に一定の法則に基づいて重み係数を乗じ、それらをある領域内の画素について足し合わせることにより得られる計算値であることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項10】
前記画像処理装置で特定された特徴量を積算する手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項7〜9に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項11】
血管を再現した弾性材料製の膜状モデルの光弾性効果を観察可能とする光弾性観察部であって、偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタと、該偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、前記膜状モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とする光弾性観察部と、
該光弾性観察部の光弾性効果を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された画像を処理してアラーム信号を出力する画像処理部と、
該アラーム信号に基づきアラームを出力する出力部と、
を備えてなるカテーテル手術シミュレータ。
【請求項12】
前記膜状モデルと比較して光弾性効果をほとんど生じさせないゲルからなりかつ前記膜状モデルに対して密着性のある基材で前記膜状モデルが囲繞されている、ことを特徴する請求項7〜11のいずれかに記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項13】
前記基材を収納する透光性のケーシングであって、該ケーシングと前記膜状モデルとの間において、前記基材は前記膜状モデルの自由変形を許容するマージンを有するケーシングが更に備えられる、ことを特徴とする請求項12に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項14】
前記膜状モデルはウレタン樹脂若しくはウレタンエラストマーからなり、前記基材はシリコーンゲルからなる、ことを特徴とする請求項12に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項15】
前記膜状モデルへ造影剤を導入した状態の画像を保存する手段が更に備えられ、
前記出力部は前記画像の上に重ねて前記撮像部が撮像した光弾性効果を表示する、ことを特徴とする請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項16】
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
前記偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される一対の1/4波長フィルタと、
前記偏光フィルタとそれに近い1/4波長フィルタとの間か、あるいは前記偏光光源とそれに近い前記1/4波長フィルタとの間に配置されて、当該1/4波長フィルタの光学軸に対してほぼ22.5度傾斜されている1波長板若しくは2波長板と、を備えることを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
【請求項17】
前記偏光光源からは緑色系の光が放出される、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【請求項18】
検出した光弾性効果に基づき応力の方向及び/又は応力の大きさを特定する手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項16又は17に記載のカテーテル手術シミュレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−17929(P2007−17929A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315832(P2005−315832)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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