説明

カテーテル組立体

【課題】シャフトが回転した際、送受信部のカテーテル本体内でのその径方向への振動を防止または抑制することができるカテーテル組立体を提供すること。
【解決手段】カテーテル組立体1は、生体管腔内に挿入されるカテーテル本体21と、カテーテル本体21内に挿入され、その軸回りに回転する駆動シャフト4と、駆動シャフト4の先端側の部分に固定され、駆動シャフト4とともに回転しつつ、生体管腔内の画像を形成するための信号を取り込む送受信部52を有する撮像手段5と、駆動シャフト4の送受信部52よりも先端側に支持された先端部材7とを備える。先端部材7は、全体として円柱状をなし、その先端部71と基端部72との間の中間部73の外径φdが、先端部71の外径、基端部72の外径および駆動シャフト4の外径φdのいずれの外径よりも大きいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動脈硬化の診断や、バルーンカテーテルまたはステント等の高機能カテーテルによる血管内治療時の術前診断、あるいは、術後の結果確認のために、光干渉断層画像診断装置(OCT)や(例えば、特許文献1参照)、その改良型である、波長掃引を利用した光干渉断層画像診断装置(SS−OCT)が利用されている(以下、本明細書において、光干渉断層画像診断装置(OCT)と、波長掃引を利用した光干渉断層画像診断装置(SS−OCT)とを総称して、「光画像診断装置」と呼ぶこととする)。
【0003】
当該光画像診断装置では、光ファイバケーブルの先端に光学レンズまたは光学ミラー(以下、送受信部)が取り付けられ、光ファイバケーブルを内部に挿通したコイル状の駆動シャフトを備えたイメージングコアが内挿されたカテーテルを、血管内に挿入し、イメージングコアを回転させながら先端の送受信部から血管内に測定光を出射するとともに、生体組織からの反射光を受光することで血管内におけるラジアル走査を行う。そして、当該受光した反射光と参照光とを干渉させることで干渉光を生成した後、当該干渉光に基づいて、血管の断面画像を描出している。
【0004】
また、断層画像を取得する際には、ルーメン内、すなわち、前記カテーテル本体の内周面と、イメージングコアの外周面との間に形成された間隙に、例えば生理食塩水や造影剤等の液体を充填して、その作業を行なう。この間隙は、液体を充填する際に、その充填が容易かつ迅速に行える程度にある程度大きく確保されている。また、屈曲部等ではシャフトが基端部に移動するとルーメンが扁平するため、シャフトを先端方向に戻す際に光学レンズを保護するハウジングがルーメンに引っ掛かり、シャフトを先端まで戻せなくなる。これを避けるためにも間隙は大きく確保されている。
【0005】
しかしながら、上記したカテーテルでは、前記間隙が形成されている分、シャフトと回転させたときに、当該シャフトとともに送受信部がカテーテル本体の径方向にも振動してしまう、すなわち、送受信部がカテーテル本体の中心軸に対して偏心しつつ回転してしまう。光干渉断層診断装置においては、カテーテルに内蔵された光ファイバ56の長さが重要であり、個体差を補正するため、カテーテルを接続した専用装置での調整が必要となる。この調整にはルーメンの外周面及び内周面を使用するため、偏心していると最適な調整を行うことができず、得られた画像が正しくない(正しい血管径等の測定ができない)という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−268133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、シャフトが回転した際、送受信部のカテーテル本体内でのその径方向への振動を防止または抑制することができるカテーテル組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
(1) 生体管腔内に挿入され、可撓性を有し、チューブ状をなすカテーテル本体と、
前記カテーテル本体内に挿入して用いられ、長尺状をなし、その軸回りに回転するシャフトと、
前記シャフトの先端側の部分に固定され、該シャフトとともに回転しつつ、前記生体管腔内に臨んで、該生体管腔内の画像を形成するための信号を取り込む送受信部を有する撮像手段と、
前記シャフトの前記送受信部よりも先端側に支持された先端部材とを備え、
前記先端部材は、全体として柱状をなし、その先端部と基端部との間の中間部の外径が、前記先端部の外径、前記基端部の外径および前記シャフトの外径のいずれの外径よりも大きいものであることを特徴とするカテーテル組立体。
【0009】
(2) 前記先端部材は、前記シャフトが回転した際、該シャフトの前記カテーテル本体の径方向への振動を抑制または防止する機能を有する上記(1)に記載のカテーテル組立体。
【0010】
(3) 前記先端部材の前記中間部は、前記カテーテル本体の内周面に対し点接触または線接触する上記(1)または(2)に記載のカテーテル組立体。
【0011】
(4) 前記先端部材は、弾性を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0012】
(5) 前記先端部材は、線材を螺旋状に巻回させたものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0013】
(6) 前記線材は、前記シャフトの回転方向と同方向に巻回している上記(5)に記載のカテーテル組立体。
【0014】
(7) 隣接する前記線材同士は、互いに離間している上記(5)または(6)に記載のカテーテル組立体。
【0015】
(8) 前記先端部材は、互いに回動可能に連結された一対のリンクを前記シャフトの中心軸回りに等角度間隔に少なくとも3組配置されたものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0016】
(9) 前記一対のリンクのなす角度は、カテーテル本体の内径の大きさに応じて可変である上記(8)に記載のカテーテル組立体。
【0017】
(10) 前記先端部材は、拡径/縮径自在である上記(4)ないし(9)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0018】
(11) 前記先端部材には、その先端側と基端側とを連通する連通部が設けられている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0019】
(12) 前記シャフトが回転した際、その回転力の前記先端部材への伝達を緩和する回転力緩和手段をさらに備える上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0020】
(13) 前記カテーテル本体は、その先端部に開口した開口部を有する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0021】
(14) 前記カテーテル本体の先端外周部には、ガイドワイヤが挿通可能な管状をなすガイドワイヤ挿通部が設置されている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0022】
(15) 前記シャフトを挿入した状態で、前記カテーテル本体内に液体を充填して用いられる上記(1)ないし(14)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【0023】
(16) 前記送受信部は、近赤外光の投受光を行う光学レンズ及び光学ミラーであり、
前記撮像手段は、前記近赤外光から得られる情報に基づいて、前記画像が形成されるよう構成されている上記(1)ないし(15)のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、先端部材の中間部でカテーテル本体の内周面にできる限り近接することができる。そして、この状態でシャフトが回転した際には、当該シャフトは、中間部でカテーテル本体の内周面に対し例えば線接触や点接触しつつ回転することができる。これにより、カテーテル本体内で、シャフトの先端側、特に、送受信部でのカテーテル本体の径方向への振動を抑制または防止することができる。よって、送受信部とカテーテル本体の内周面との距離がほぼ一定に保たれるため、最適な調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のカテーテル組立体の第1実施形態を示す部分縦断面側面図である。
【図2】本発明のカテーテル組立体の第1実施形態を示す部分縦断面側面図である。
【図3】図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大部分縦断面図である。
【図4】本発明のカテーテル組立体の第2実施形態を示す部分縦断面図である。
【図5】本発明のカテーテル組立体の第3実施形態を示す部分縦断面図である。
【図6】本発明のカテーテル組立体の第4実施形態を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のカテーテル組立体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
<第1実施形態>
図1および図2は、それぞれ、本発明のカテーテル組立体の第1実施形態を示す部分縦断面側面図、図3は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大部分縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図3中(図4〜図6についても同様)の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0028】
図1に示すカテーテル組立体1は、カテーテル2と、カテーテル2内に挿入されるイメージングコア3とを備えている。このカテーテル組立体1は、カテーテル2とイメージングコア3とを組み立てた組立状態で、生体管腔(以下では「血管」を代表的に扱う)内に挿入して用いられ、その内部画像である血管の断層画像を取得するものである。
【0029】
また、このカテーテル組立体1は、外部ユニット6に接続して用いられる。外部ユニット6は、モータ等の外部駆動源を内蔵するスキャナ装置61と、スキャナ装置61を把持しモータ等により水平方向(軸方向)へ移動させる軸方向移動装置62と、スキャナ装置61および軸方向移動装置62の作動を制御する機能を有する制御部63と、カテーテル組立体1によって得られた血管壁の画像を表示する表示部64とからなる。
【0030】
カテーテル組立体1各部の構成について説明する前に、外部ユニット6について説明する。
【0031】
スキャナ装置61には、カテーテル組立体1の基端部が接続される。そして、スキャナ装置61は、イメージングコア3をその軸回りに回転させることができるとともに、軸方向移動装置62によりカテーテル組立体1ごとその軸方向に沿って移動可能となっている。これにより、イメージングコア3の送受信部52を走査することができる。また、スキャナ装置61に内蔵されているスキャナで、イメージングコア3の送受信部52の反射波から得られる情報に基づいて、血管の断層画像を形成することができる。これにより、血管に対して任意の位置で、その周方向全周にわたって、超音波画像である血管内の横断面像が得られる。
【0032】
制御部63は、例えばCPU(Central Processing Unit)を内蔵したパーソナルコンピュータである。
表示部64は、例えば液晶表示装置である。
【0033】
次に、カテーテル組立体1について説明する。
前述したように、カテーテル組立体1は、カテーテル2とイメージングコア3とを備えている。
【0034】
カテーテル2は、チューブ状をなすカテーテル本体21と、カテーテル本体21の基端部に固定されたコネクタ部22とを有している。
【0035】
図3に示すように、カテーテル本体21は、その長手方向に沿ってルーメン211が形成されている。このルーメン211には、イメージングコア3が挿入される。そして、この挿入状態で、ルーメン211内に液体Qが充填される。なお、液体Qとしては、特に限定されないが、例えば、生理食塩水、造影剤等が挙げられる。
【0036】
また、ルーメン211は、カテーテル本体21の先端に開口した開口部212を有している。
【0037】
カテーテル本体21の先端外周部には、ガイドワイヤ200が挿通可能なガイドワイヤ挿通部23が設置されている。ガイドワイヤ挿通部23は、両端がそれぞれ開口した管状をなす部材で構成されている。カテーテル2は、ガイドワイヤ挿通部23にガイドワイヤ200を挿通した状態で血管内に挿入されるものであり、ガイドワイヤ200の抜き差しを迅速に行なうことができる、いわゆる「ラピッドエクスチェンジタイプ(ショートモノレールタイプ)」のカテーテルである。
【0038】
ガイドワイヤ挿通部23は、図1に示す構成ではカテーテル本体21の中心軸に対して傾斜して配置されているが、これに限定されず、例えば、カテーテル本体21の中心軸と平行に配置されていてもよい。
【0039】
また、ガイドワイヤ挿通部23の長手方向の途中には、コイル24が埋設されている。コイル24は、X線透視下でカテーテル2の先端部の位置を視認するための造影マーカとして機能するものである。コイル24は、X線不透過性を有する例えばプラチナのような金属材料で構成されている。
【0040】
カテーテル本体21およびガイドワイヤ挿通部23は、それぞれ、可撓性を有する材料で構成され、その材料としては、特に限定されず、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)を用いることができる。
【0041】
また、カテーテル本体21およびガイドワイヤ挿通部23は、それぞれ、その管壁が単層のものであってもよいし、複数の層が積層された積層体であってもよい。
【0042】
カテーテル本体21の基端部に固定されたコネクタ部22は、硬質の管体で構成されたものである。このコネクタ部22は、外部ユニット6のスキャナ装置61に接続される。
【0043】
なお、コネクタ部22のカテーテル本体21に対する固定方法としては、特に限定されず、例えば、接着(接着剤や溶媒による接着)による方法、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)による方法等が挙げられる。
【0044】
コネクタ部22の長手方向の途中には、その部分から分岐した液体注入ポート221が突出形成されている。例えばシリンジを用いて液体注入ポート221から液体Qを注入することができる。そして、注入された液体Qは、カテーテル本体21のルーメン211に充填されることとなる。
【0045】
コネクタ部22の基端部には、イメージングコア3を回動可能に支持する回動支持部222が設けられている。
【0046】
また、コネクタ部22の基端部には、回動支持部222よりも先端側に、シール部材25が設置されている。シール部材25は、形状がリング状をなす弾性体で構成されている。これにより、シール部材25がコネクタ部22の内周部とイメージングコア3の外周部との間に間隙が生じるのを防止することができ、すなわち、液密性が保持され、よって、液体Qが基端方向に向かって漏出するのを防止することができる。
【0047】
コネクタ部22の先端側には、内管312を介して接続されるユニットコネクタ32と、外管331を介してユニットコネクタ32に接続されるとともにカテーテル本体21を接続する中継コネクタ33とを有する。
【0048】
コネクタ部22は、駆動シャフト4および内管312を保持する。内管312がユニットコネクタ32および外管331に押し込まれ、または引き出されることによって、駆動シャフト4が連動してカテーテル本体21内を軸方向にスライドする。
【0049】
内管312を最も押し込んだときには、図1に示すように、内管312は、カテーテル本体21側の端部が外管331のカテーテル本体21側端部付近、すなわち、中継コネクタ33付近まで到達する。そして、この状態では、送受信部52は、カテーテル2のカテーテル本体21の先端付近に位置する。
【0050】
また、内管312を最も引き出したときには、図2に示すように、内管312は、先端に形成されたストッパ313がユニットコネクタ32の内壁に引っかかり、引っかかった先端付近以外が露出する。そして、この状態では、送受信部52は、カテーテル2を残したままその内部を引き戻されている。送受信部52が回転しながら移動することによって、血管および脈管などの断層画像を作成することができる。
【0051】
コネクタ部22の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。
【0052】
コネクタ部22は、図1に示す構成では3つの管体を長手方向に沿って連結したものであるが、これに限定されず、例えば、1つの管体で構成されたものであってもよい。
【0053】
図3に示すように、カテーテル2には、イメージングコア3が挿入される。そして、この挿入状態のイメージングコア3は、その中心軸回りにスキャナ装置61の作動によって回転する。なお、イメージングコア3の回転数は、特に限定されないが、例えば、500〜10000rpmであるのが好ましく、1800〜9600rpmであるのがより好ましい。
【0054】
イメージングコア3は、その本体となる長尺状の駆動シャフト4と、駆動シャフト4の先端部に固定されたハウジング51と、ハウジング51内に収納された送受信部52と、駆動シャフト4の基端部に固定されたコネクタ部53と、先端部材7とを有している。また、イメージングコア3では、ハウジング51、送受信部52、コネクタ部53が、血管壁の画像を撮像する撮像手段5を構成している。
【0055】
駆動シャフト4は、スキャナ装置61の作動による回転力を送受信部52まで確実に伝達可能なトルク伝達性を有するものである。この駆動シャフト4は、例えば、ステンレス鋼等のような金属線を密巻きにコイル状に巻回して形成されている(図3参照)。なお、この金属線は、多重に巻回されていてもよい。
【0056】
この駆動シャフト4の外径φdは、カテーテル本体21の内径φdよりも小さい。これにより、駆動シャフト4の外周面41とカテーテル本体21の内周面214との間には、間隙213が形成される。カテーテル2の液体注入ポート221から注入された液体Qは、間隙213を流下して、開口部212から排出される。
【0057】
なお、間隙213の大きさ、すなわち、(内径φd−外径φd)は、液体Qの種類にもよるが、当該液体Qの流下が迅速かつ確実に行なわれる程度であり、例えば、0.05〜0.25mmであるのが好ましい。
【0058】
次に、カテーテル2の先端部の構成について図3を用いて説明する。図3に示すように、カテーテル本体21の管腔内部には、測定光を送信し、反射光を受信する送受信部52が配されたハウジング51と、それを回転させるための回転駆動力を伝送する駆動シャフト4とを備えるイメージングコア3がほぼ全長にわたって挿通されており、カテーテル2を形成している。
【0059】
送受信部52では、生体管腔内組織に向けて測定光を送信するとともに、生体管腔内組織からの反射光を受信する。
駆動シャフト4はコイル状に形成され、その内部には光ファイバ56が配されている。
【0060】
ハウジング51は、短い円筒状の金属パイプの一部に切り欠き部511を有した形状をしており、金属塊からの削りだしやMIM(金属粉末射出成形)等により成形される。ハウジング51は、内部に送受信部52を有し、基端側は駆動シャフト4と接続されている。
【0061】
駆動シャフト4は、カテーテル本体に対して送受信部52を回転動作及び軸方向動作させることが可能であり、柔軟で、かつ回転をよく伝送できる特性をもつ、例えば、ステンレス等の金属線からなる多重多層密着コイル等により構成されている。
【0062】
また、図1に示すように、ハウジング51内には、側方照射型のボールレンズ(送受信部52)がマーカ54により固定され、駆動シャフト4内には、クラッド部とコア部とから構成される光ファイバ56が配されている。なお、送受信部52から送信された測定光は、カテーテル本体21を通って、血管内の生体組織に照射される。
【0063】
また、送受信部52からは、光ファイバ56が駆動シャフト4内を挿通し、コネクタ部53と光学的に接続されている。
【0064】
コネクタ部53は、スキャナ装置61に接続され、当該スキャナ装置61からの回転力を直接的に受けることができる。このコネクタ部53は、光コネクタで構成されている。これにより、コネクタ部53をスキャナ装置61と光学的に接続することもでき、送受信部52からの信号をスキャナ装置61を介して、表示部64に送信することで、血管壁の画像が表示部64に表示される。
【0065】
先端部材7は、全体として(外形の全体形状が)円柱状をなす部材である。そして、先端部材7の先端部71と基端部72との間の中間部73の外径φdは、先端部71の外径(平均)よりも大きく、基端部72の外径(平均)よりも大きい。さらに、外径φdは、駆動シャフト4の外径φdよりも大きい。その結果、中間部73の外径φdは、カテーテル本体21の内径φdと同じかまたはそれよりも若干小さくなる。
【0066】
また、先端部71の外周部は、その外径が先端方向に向かって漸減するテーパ状をなし、基端部72の外周部も、その外径が基端方向に向かって漸減するテーパ状をなす。
【0067】
なお、先端部材7には、特に中間部73付近に、長手方向に沿って溝が形成されている。この溝は、先端部材7の先端側と基端側とを連通する連通部となり、液体Qが中間部73を越える際に通過するバイパスとして機能する。
【0068】
このような形状の先端部材7を備えるイメージングコア3は、カテーテル本体21との間では、中間部73でカテーテル本体21の内周面214にできる限り近接し、それ以外の部分では、前述したように液体Qが容易に通過可能な程度の間隙213が保たれる。そして、この状態でイメージングコア3が回転した際には、イメージングコア3は、中間部73でカテーテル本体の内周面214に対し線接触しつつ回転する。これにより、イメージングコア3(駆動シャフト4)の先端側の部分でのカテーテル本体21の径方向への振動を抑制または防止することができる。その結果、送受信部52は、できる限りカテーテル本体21と同心的に、すなわち、カテーテル本体21の中心線上で回転するように位置が規制される。このように先端部材7は、センタリング機能を有する。この機能により、回転する送受信部52とカテーテル本体21の内周面214との距離がほぼ一定に保たれる。
【0069】
前述したように、光干渉断層診断については送受信部52とカテーテル本体21との距離がほぼ一定に保たれることは、個体差を調整する上で極めて有効である。
【0070】
先端部材7は、弾性を有する材料で構成され、その材料としては、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。このような弾性材料で構成されていることにより、先端部材7は、弾性変形することができ、例えば、回転した際にカテーテル本体21の内周面214を傷つけるのを防止することができる。
【0071】
<第2実施形態>
図4は、本発明のカテーテル組立体の第2実施形態を示す部分縦断面図である。
【0072】
以下、この図を参照して本発明のカテーテル組立体の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、先端部材の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0073】
図4に示すカテーテル組立体1では、先端部材7Aは、テンレス鋼等のような弾性を有する金属製の線材75で構成されている。そして、先端部材7Aは、この線材75を螺旋状に巻回させたものであり、全体的に紡錘形となっている、すなわち、中間部73で最も外径が大きくなっている。
【0074】
また、先端部材7Aでは、隣接する線材75同士が互いに離間している。これにより、先端部材7Aには、その先端側と基端側とを連通する連通部751が形成されることとなる。そして、連通部751は、液体Qが先端部材7Aを越える際に通過するバイパスとして機能する。
【0075】
このような構成の先端部材7Aは、外力が付与されていない図4(a)に示す自然状態と、イメージングコア3が回転した図4(b)に示す回転状態とでは、形状が異なる。先端部材7Aは、回転状態では遠心力が作用して、自然状態よりもわずかに拡径する。このとき、イメージングコア3は、先端部材7Aの中間部73でカテーテル本体21の内周面214に当接する。これにより、イメージングコア3の先端側の部分、特に、送受信部52でのカテーテル本体21の径方向への振動を抑制または防止することができ、よって、当該送受信部52とカテーテル本体21の内周面214との距離をほぼ一定に保つことができる。これにより、適切な調整が可能となる。また、イメージングコア3の回転が停止すると、先端部材7Aは、自然状態となり、前記遠心力が解消されて縮径することとなる。
【0076】
また、先端部材7Aは、弾性を有している。これにより、先端部材7Aは、その長手方向の途中で湾曲変形することができる。例えばカテーテル本体21が血管の湾曲した部分を通過する際、カテーテル本体21も血管の湾曲形状に従って湾曲変形する。そして、先端部材7Aは、湾曲変形することができるため、カテーテル本体21の前記湾曲変形した部分を通過する際、その通過が容易かつ円滑に行なわれる。
【0077】
先端部材7Aを構成する線材75は、イメージングコア3の回転方向と同方向に巻回しているのが好ましい。これにより、イメージングコア3が回転中には先端部材7Aは拡径し、イメージングコア3が回転しつつ前進する際には、先端部材7Aでその先進を補助する(ネジのような効果を有する)ことができる。
【0078】
また、線材75の横断面形状は、特に限定されないが、円形または楕円形であるのがこのましい。これにより、先端部材7Aの中間部73でのカテーテル本体21の内周面214との接触面積を抑制することができる。
【0079】
<第3実施形態>
図5は、本発明のカテーテル組立体の第3実施形態を示す部分縦断面図である。
【0080】
以下、この図を参照して本発明のカテーテル組立体の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、先端部材の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0081】
図5に示すカテーテル組立体1では、先端部材7Bは、互いに回動可能に連結された一対の板片状のリンク76a、76bを4組有するものとなっている。なお、リンク76a、76b同士の連結には、例えば、ワイヤを用いることができる。
【0082】
そして、4組のリンク76a、76bは、駆動シャフト4の中心軸回りに等角度間隔に配置されている。4本のリンク76aの先端部同士は、回動可能に連結されている。一方、4本のリンク76bの基端部は、それぞれ、ハウジング51に回動可能に支持されている。このような先端部材7Bは、全体的に紡錘形となっている、すなわち、中間部73で最も外径が大きくなっている。また、各中間部73では、それぞれ、カテーテル本体21の内周面214に対し点接触する。これにより、先端部材7Bとカテーテル本体21の内周面214との接触面積を抑制することができる。
【0083】
このような先端部材7Bにより、イメージングコア3は、各中間部73でそれぞれカテーテル本体21の内周面214に当接することができる。これにより、イメージングコア3の先端側の部分、特に、送受信部52でのカテーテル本体21の径方向への振動を抑制または防止することができ、よって、送受信部52とカテーテル本体21の内周面214との距離をほぼ一定に保つことができる。これにより、前述したように適切な調整が可能となる。
【0084】
なお、リンク76aとリンク76bとは、それらがなす角度θが大となる方向に向かって付勢されているのが好ましい。
【0085】
また、リンク76aとリンク76bとは、回動可能に連結されているため、角度θは、カテーテル本体21の内径φdの大きさに応じて可変である。
【0086】
例えば図5(b)に示すように、カテーテル本体21が屈曲してくびれてしまい、当該カテーテル本体21の内径φdが図5(a)に示す外力を付与しない自然状態でのカテーテル本体21の内径φdよりも縮径している場合、そのくびれ部215を先端部材7Bが通過しようとする際に、角度θが可変となっていれば、先端部材7Bも縮径するように変形することができ、その通過が容易に行なわれる。
【0087】
一対のリンク76a、76bの設置数は、本実施形態では4組であるが、これに限定されず、例えば、3組または5組以上であってもよい。
【0088】
<第4実施形態>
図6は、本発明のカテーテル組立体の第4実施形態を示す部分縦断面図である。
【0089】
以下、この図を参照して本発明のカテーテル組立体の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0090】
本実施形態は、カテーテル組立体が回転力緩和手段をさらに備えること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0091】
図6に示すカテーテル組立体1のイメージングコア3では、先端部材7Aとハウジング51との間に、回転力緩和手段としてのベアリング8が配置されている。このベアリング8により、駆動シャフト4が回転した際、その回転力が先端部材7Aに伝達するのが緩和される。ここで、「緩和」には、回転力が先端部材7Aに全く伝達されない状態、回転力の一部が先端部材7Aに伝達される状態のいずれの状態も含む。
【0092】
例えばカテーテル本体21が屈曲してくびれてしまい、そのくびれ部に先端部材7Aが位置している場合、駆動シャフト4が回転しても、前記緩和により先端部材7Aが強制的に回転するのが防止される。これにより、駆動シャフト4の回転が阻害されるのを防止することができるとともに、先端部材7Aとカテーテル本体21との摩擦でそれらのうちの少なくとも一方が破損するのも防止することができる。
【0093】
回転力緩和手段としては、ベアリング8に限定されず、例えば、クラッチであってもよい。
【0094】
また、カテーテル組立体で得られる画像としては、光画像に限定されず、超音波を利用して生体管腔の生体組織を画像化する血管内超音波診断装置(IVUS:Intra Vascular Ultra Sound)を利用することも出来る。IVUSは超音波を送受信するための振動子ユニットおよびこの振動子ユニットを回転させる駆動シャフトを備えるイメージングコアと、このイメージングコアを被覆するとともに生体管腔内に挿入されるカテーテル本体とを有している。イメージングコアは、カテーテル本体内を軸方向に移動可能である。カテーテル本体には、振動子ユニットからの超音波を透過可能な音響窓部が形成されている。
【0095】
超音波カテーテルを使用する際には、最初に、イメージングコアをカテーテル本体内において予め一番先端側に配置するとともにカテーテル本体を患部より深部に運び、次に、カテーテル本体を残したままイメージングコアのみをシース先端から音響窓部に沿って後退させていき患部を通過させる。イメージングコアのみを後退させることにより、振動子ユニットが深部から患部を通過して移動するので、患部の前後に渡って連続的に超音波観察したり、血管および脈管などの形状の断層画像を作成したりすることができる。なお、光画像診断装置と超音波診断装置を総称して「画像診断装置」あるいは「生体管腔内画像診断装置」と呼ぶ。
【0096】
以上、本発明のカテーテル組立体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、カテーテル組立体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0097】
また、本発明のカテーテル組立体は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0098】
また、カテーテル本体は、液体の排出口として、その先端に開口する先端開口部を有するものに限定されず、例えば、先端部の側壁を貫通する側孔を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 カテーテル組立体
2 カテーテル
21 カテーテル本体
211 ルーメン
212 開口部
213 間隙
214 内周面
215 くびれ部
22 コネクタ部
221 液体注入ポート
222 回動支持部
23 ガイドワイヤ挿通部
24 コイル
25 シール部材
3 イメージングコア
312 内管
313 ストッパ
32 ユニットコネクタ
331 外管
33 中継コネクタ
4 駆動シャフト
41 外周面
5 撮像手段
51 ハウジング
511 切り欠き部
52 送受信部
53 コネクタ部
54 マーカ
56 光ファイバ
6 外部ユニット
61 スキャナ装置
62 軸方向移動装置
63 制御部
64 表示部
7、7A、7B 先端部材
71 先端部
72 基端部
73 中間部
75 線材
751 連通部
76a、76b リンク
8 ベアリング
200 ガイドワイヤ
Q 液体
φd、φd 外径
φd 内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に挿入され、可撓性を有し、チューブ状をなすカテーテル本体と、
前記カテーテル本体内に挿入して用いられ、長尺状をなし、その軸回りに回転するシャフトと、
前記シャフトの先端側の部分に固定され、該シャフトとともに回転しつつ、前記生体管腔内に臨んで、該生体管腔内の画像を形成するための信号を取り込む送受信部を有する撮像手段と、
前記シャフトの前記送受信部よりも先端側に支持された先端部材とを備え、
前記先端部材は、全体として柱状をなし、その先端部と基端部との間の中間部の外径が、前記先端部の外径、前記基端部の外径および前記シャフトの外径のいずれの外径よりも大きいものであることを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
前記先端部材は、前記シャフトが回転した際、該シャフトの前記カテーテル本体の径方向への振動を抑制または防止する機能を有する請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項3】
前記先端部材の前記中間部は、前記カテーテル本体の内周面に対し点接触または線接触する請求項1または2に記載のカテーテル組立体。
【請求項4】
前記先端部材は、弾性を有する請求項1ないし3のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項5】
前記先端部材は、線材を螺旋状に巻回させたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項6】
前記線材は、前記シャフトの回転方向と同方向に巻回している請求項5に記載のカテーテル組立体。
【請求項7】
隣接する前記線材同士は、互いに離間している請求項5または6に記載のカテーテル組立体。
【請求項8】
前記先端部材は、互いに回動可能に連結された一対のリンクを前記シャフトの中心軸回りに等角度間隔に少なくとも3組配置されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項9】
前記一対のリンクのなす角度は、カテーテル本体の内径の大きさに応じて可変である請求項8に記載のカテーテル組立体。
【請求項10】
前記先端部材は、拡径/縮径自在である請求項4ないし9のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項11】
前記先端部材には、その先端側と基端側とを連通する連通部が設けられている請求項1ないし10のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項12】
前記シャフトが回転した際、その回転力の前記先端部材への伝達を緩和する回転力緩和手段をさらに備える請求項1ないし11のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項13】
前記カテーテル本体は、その先端部に開口した開口部を有する請求項1ないし12のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項14】
前記カテーテル本体の先端外周部には、ガイドワイヤが挿通可能な管状をなすガイドワイヤ挿通部が設置されている請求項1ないし13のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項15】
前記シャフトを挿入した状態で、前記カテーテル本体内に液体を充填して用いられる請求項1ないし14のいずれかに記載のカテーテル組立体。
【請求項16】
前記送受信部は、近赤外光の投受光を行う光学レンズ及び光学ミラーであり、
前記撮像手段は、前記近赤外光から得られる情報に基づいて、前記画像が形成されるよう構成されている請求項1ないし15のいずれかに記載のカテーテル組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−205661(P2012−205661A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72188(P2011−72188)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】