説明

カテーテル

【課題】編組による補強構造を有するカテーテルにおいて、血管にかかる負担が少なく、スムーズな到達性が得られるとともに、手元側の剛性を高めて十分な押し込み性が得られるカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル10のシャフトは、先端部26側に向かって外径が縮小する。シャフト12に設けられた補強層34(編組35)は、螺旋方向が互いに異なる第1螺旋部38と第2螺旋部40を有する。第2螺旋部の巻き本数は、第1螺旋部の巻き本数よりも多い。第1螺旋部38及び第2螺旋部40のピッチP1、P2のピッチ比(P2/P1)は先端部26側ほど小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細線が折り合わされた編組により構成された補強層を有するカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、血管内や体腔内に挿入してカテーテル先端を目的部位まで到達させ、治療用の薬剤注入や診断用の造影剤注入を行うために使用される。このため、カテーテルシャフトは、体内の複雑に分岐した血管内や体腔内をあらかじめ導入されているガイドワイヤーに沿って選択的に進行させる必要があり、かつ、治療用の薬剤注入あるいは診断用の造影剤注入特性に優れている必要がある。
【0003】
例えば、肝臓ガンの治療において、正常領域を温存するために、ガン細胞へ栄養を送っている血管(栄養血管)のみにカテーテルを挿入し、薬剤を注入することが求められるが、カテーテルの先端外径が太いと、血管に入らない、もしくは血管を刺激しスパスムを起こしてしまうという懸念がある。一方、栄養血管を見定めるために鮮明な血管造影が必要となり単位時間当たり十分な量で造影剤を注入するため、あるいは治療においては非常に粘度の高い油性造影剤の注入をハンドインジェクションで行うために、カテーテルに大きな内腔が必要となる。このように、カテーテルには、外径は細く、内腔は大きくという相反する要求がある。
【0004】
カテーテルにはこのような特性が求められることから、手元側は剛性を高め押し込み性を十分に持たせつつ薬剤あるいは造影剤注入特性を確保し、かつ先端側は柔軟にすることで末梢血管への到達性やガイドワイヤーへの追従性を高める工夫がなされている。
【0005】
また、近年、医療事故を少なくするために、カテーテルの内腔保持及びカテーテル自体の破断強度を上げることを狙い、金属線等の線材を折り合わせてなる編組(ブレード)による補強構造をとるカテーテルの利用が増えている。このような補強構造をもつカテーテルは、例えば、下記特許文献1、2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−515778号公報
【特許文献2】特開2008−183226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、編組による補強構造を有するカテーテルは、編組の存在により、カテーテルの先端部分に十分な柔軟性を持たせることが難しいという問題がある。特に近年、診断装置の発達により、より末梢の小さなガンを発見することが可能となってきたことから、これまでよりも末梢の蛇行した血管にカテーテルを進めることが多くなり、血管に負担をかけないスムーズな到達性が求められる。従って、編組による補強構造を有するカテーテルにおいて、カテーテル先端部の柔軟性とともに、先端から手元にいくに従って硬くなるカテーテルが要望される。
【0008】
一般的に編組体を組み込むことで、カテーテルの軸方向の圧縮強さ、トルク伝達性などの性能が向上することが知られているが、屈曲した部位を進めていく上で必要となる柔軟性が損なわれるという課題があった。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、編組による補強構造を有するカテーテルにおいて、血管にかかる負担が少なく、スムーズな到達性が得られるとともに、手元側の剛性を高めて十分な押し込み性が得られるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、先端から基端まで連通する内腔が形成されたシャフトを有するカテーテルであって、前記シャフトは、軸方向に向かって外径が一定である基端部と、軸方向に向かって外径が一定でありかつ当該外径が前記基端部の外径よりも小さい先端部と、前記先端部の基端から前記基端部の先端までの部分を構成し、前記先端部側に向かって外径が縮小する中間部とを備え、前記シャフトには、前記基端部から前記先端部にわたって、細線が織り合わされた編組により構成された補強層が設けられ、前記編組は、第1の螺旋方向に巻回された1以上の線材からなる第1螺旋部と、前記第1の螺旋方向とは異なる第2の螺旋方向に巻回された1以上の線材からなる第2螺旋部とが交差して配置されることで構成されており、前記第2螺旋部を構成する線材の巻き本数は、前記第1螺旋部を構成する線材の巻き本数よりも多く、前記先端部における前記第1螺旋部のピッチは、前記基端部における前記第1螺旋部のピッチよりも小さく、前記中間部における前記第1螺旋部のピッチは、前記基端部における前記第1螺旋部のピッチよりも小さく、かつ前記先端部における前記第1螺旋部のピッチよりも大きく、前記先端部における前記第2螺旋部のピッチは、前記基端部における前記第2螺旋部のピッチよりも小さく、前記中間部における前記第2螺旋部は、前記基端部における前記第2螺旋部のピッチよりも小さく、かつ前記先端部における前記第2螺旋部のピッチよりも大きく、前記第1螺旋部のピッチをP1とし、前記第2螺旋部のピッチをP2とした場合、ピッチ比(P2/P1)は、前記基端部で最も大きく、前記先端部で最も小さく、前記中間部では前記基端部と前記先端部の間の大きさであることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、基端部から先端部に向かうに従って、内腔及び外径が小さくなるため、カテーテルの先端付近の内腔は細いが、カテーテルの根元側では十分な内腔を確保できる。このため、カテーテル先端の外径を細くすることが可能であり、かつ、粘度の高い造影剤(例えば、油性造影剤)も容易にハンドインジェクションで注入することが可能となる。また、第1螺旋部と第2螺旋部の線材の巻き本数が異なるため、巻き本数が同じである場合と比較して、カテーテル自体が曲がろうとする構造となり、編組による補強層を有することによる利点である内腔保持及び高破断強度はそのままに、先端部が非常に柔らかいカテーテルの提供が可能となる。さらに、カテーテルの先端から手元側に向かうに従いピッチが広くなる構造であるため、先端部には十分な柔軟性を確保でき、かつ、手元側は適度な硬さを確保できる。またさらに、ピッチ比(P2/P1)についても先端部側に向かって段階的に小さくする構成としたので、各部での剛性の設定をよりきめ細かくかつ容易に行うことができる。従って、本発明のカテーテルによれば、血管にかかる負担が少なく、スムーズな到達性が得られるとともに、手元側の剛性を高めて十分な押し込み性を持たせることが可能である。
【0012】
上記のカテーテルにおいて、前記基端部における前記第1螺旋部及び前記第2螺旋部の各ピッチは、前記先端部側に向かって段階的に小さくなるように設定されているとよい。
【0013】
上記の構成によれば、基端部において、手元側は剛性が高く、先端部側にいくほど柔らかくなり、段階的に剛性(硬さ)が変化する構造となるため、スムーズな到達性と十分な押し込み性を好適に確保することが可能となる。
【0014】
上記のカテーテルにおいて、前記基端部には、軸線方向に沿って5つの区間が設定され、前記第1螺旋部及び前記第2螺旋部のピッチは、前記区間ごとに設定され、先端部側の区間ほど前記ピッチが小さいとよい。
【0015】
上記の構成によれば、第1螺旋部及び第2螺旋部でそれぞれ5つのピッチが設定されており、先端部側の区間ほどピッチが小さいので、先端部側の柔軟性と手元側の剛性のバランスをよりきめ細かく設定することができ、スムーズな到達性と十分な押し込み性の両方を一層好適に高めることができる。
【0016】
上記のカテーテルにおいて、前記第2螺旋部に関する前記シャフトの前記先端部側に向かったピッチの減少率は、前記第1螺旋部のそれよりも大きいとよい。
【0017】
上記の構成によれば、先端部がより曲がりやすくなり、先端部の柔軟性を一層向上できる。このため、到達性の一層良好なカテーテルを実現できる。
【0018】
上記のカテーテルにおいて、前記第1螺旋部を構成する線材の本数N1と、前記第2螺旋部を構成する線材の本数N2の比(N1/N2)は、1/2であってもよい。また、第1螺旋部を構成する線材の本数は4本であり、前記第2螺旋部を構成する線材の本数は8本であってもよい。このように第1螺旋部と第2螺旋部の線材の巻き数を変えて構成することにより、柔軟な部分と剛直な部分とが交互に配置された構造をとることができ、その結果、カテーテルの編組の特長である軸方向の圧縮強さと、課題であった柔軟性を達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るカテーテルによれば、血管にかかる負担が少なく、スムーズな到達性が得られるとともに、手元側の剛性を高めて十分な押し込み性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルの一部省略全体構成図である。
【図2】カテーテルの一構成要素であるシャフトの一部省略概略図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】シャフトに設けられた補強層を構成する編組の構成を示す図である。
【図5】表1に従ったカテーテルの実施例について、第1螺旋部のピッチ及び第2螺旋部のピッチを区間ごとに計測した結果を示すものである。
【図6】表1に従ったカテーテルの実施例について、第1螺旋部と第2螺旋部のピッチ比(P2/P1)を区間ごとに計測した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るカテーテルについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るカテーテル10の一部省略全体構成図である。カテーテル10は、血管内や体腔内に挿入してカテーテル10先端を目的部位まで到達させ、治療用の薬剤注入や診断用の造影剤注入を行うために使用される。図1に示すように、カテーテル10は、細径で長尺なシャフト12と、シャフト12の基端に接続されたハブ14と、シャフト12のハブ14への接続部に設けられたストレインリリーフ16とを備える。
【0023】
なお、以下の説明において、シャフト12に関し、ハブ14側を基端側とも呼び、ハブ14が接続された側とは反対側を先端側とも呼び、他の各図においても同様とする。
【0024】
シャフト12は、先端から基端まで連通する内腔18(図2参照)が形成された可撓性を有するチューブ状の部材である。シャフト12の長さは、500mm〜2000mm程度、好ましくは、1000mm〜1500mm程度である。なお、シャフト12の内径及び外径については、後述する。
【0025】
シャフト12の最先端部の外周面には、X線不透過マーカ(造影マーカ)22が固着されている。X線不透過マーカ22は、金あるいは白金等からなるX線(放射線)不透過性を有する材質によって形成されることにより、生体内でカテーテル10の先端位置をX線造影下で視認するためのものである。X線不透過マーカ22は、外周面に露出させて設ける構成に限らず、シャフト12の管壁内に埋め込まれていてもよい。シャフト12の最先端部はテーパを有していてもよい。
【0026】
ハブ14は、その先端にてシャフト12の基端を保持するものであり、基端にはシリンジ等の他の器具が接続可能となっている。ストレインリリーフ16は、シャフト12のハブ14への接続部での屈曲(キンク)を防止するためのものであり、例えば先細りのチューブ状に形成された適度の可撓性及び剛性を有する樹脂製の部材である。
【0027】
図2は、シャフト12の一部省略概略図である。なお、図2では、シャフト12の概略形状を示すため、外径と長さの寸法比は、図1に示したシャフト12と必ずしも一致しない。図2に示すように、シャフト12は、基端側を構成する基端部24と、先端側を構成する先端部26と、基端部24と先端部26の間を構成する中間部28とを有する。
【0028】
基端部24は、シャフト12のうち図2に示した位置Cから位置H(シャフト12の最基端位置)までの区間を構成する部分であり、軸方向に向かって外径が一定である。先端部26は、シャフト12のうち位置A(シャフト12の最先端位置)から位置Bまでの区間を構成する部分であり、軸方向に向かって外径が一定でありかつ当該外径が基端部24の外径よりも小さい。
【0029】
中間部28は、位置B(先端部26の基端)から位置C(基端部24の先端)までの部分を構成する部分であり、先端部26側に向かって縮径する。中間部28は、先端部26側に向かって一定比率で縮径する図2に示す構成に限らず、先端部26側に向かって指数関数的に縮径する構成であってもよい。
【0030】
基端部24の長さ(位置Cから位置Hまでの長さ)は、例えば、200mm〜1800mm程度に設定され、好ましくは、400mm〜1300mm程度に設定される。基端部24の外径は、例えば、0.5mm〜3.0mm程度に設定され、好ましくは、0.7mm〜2.0mm程度に設定される。基端部24の内径(基端部24における内腔径)は、例えば、0.4mm〜2.0mm程度に設定され、好ましくは、0.5mm〜1.6mm程度に設定される。
【0031】
先端部26の長さ(位置Aから位置Bまでの長さ)は、例えば、3mm〜300mm程度に設定され、好ましくは、10mm〜150mm程度に設定される。先端部26の外径は、例えば、0.4mm〜2.0mm程度に設定され、好ましくは、0.6mm〜1.6mm程度に設定される。先端部26の内径(先端部26における内腔径)は、例えば、0.2mm〜1.5mm程度に設定され、好ましくは、0.4mm〜1.2mm程度に設定される。
【0032】
中間部28の長さ(位置Bから位置Cまでの長さ)は、例えば、5mm〜500mm程度に設定され、好ましくは、20mm〜100mm程度に設定される。中間部28の先端外径は、先端部26の外径と同一に設定され、中間部28の基端外径は、基端部24の外径と同一に設定される。中間部28の内径(中間部28における内腔径)は、先端側で先端部26の内径と一致し、基端側で基端部24の内径と一致し、その間は先端部26側に向かって縮径する。
【0033】
図3は、図2中のIII−III線に沿う断面図である。図3に示すように、シャフト12は、内腔18が形成された内層30と、内層30の半径方向外側に形成された外層32と、内層30の外周に沿って設けられた補強層34とを有する。
【0034】
内層30及び外層32は、適度な柔軟性を有する合成樹脂により構成することができる。内層30の構成材料としては、例えば、例えばPFA(テトラフロオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンの共重合体)が挙げられる。外層32の構成材料としては、例えば、ポリアミドエラストマが挙げられる。もちろん、内層30及び外層32は、他の材料により構成されてもよい。自然状態(外力が付加されていない状態)での内層30及び外層32の断面形状は、ほぼ円形である。
【0035】
図4は、シャフト12の部分拡大側面図であり、内層30の外周に沿って設けられた補強層34の構成の理解を容易化するために、外層を仮想線で示している。図4に示すように、補強層34は、細線が織り合わされたメッシュ状の編組35(ブレード)により構成されており、シャフト12の全長にわたって設けられている。編組35は、第1の螺旋方向に巻回された1以上の線材38aからなる第1螺旋部38と、第1の螺旋方向とは異なる第2の螺旋方向に巻回された1以上の線材40aからなる第2螺旋部40とが交差して配置されることで構成されている。
【0036】
編組35を構成する線材38a、40aの構成材料としては、金属、ポリマー、金属とポリマーの複合体、金属合金(例えば、ステンレス)またはそれらの組み合わせが挙げられる。第2螺旋部40を構成する線材40aの巻き本数(N2とする)は、第1螺旋部38を構成する線材38aの巻き本数(N1とする)よりも多い。図4に示す構成例では、N1とN2の比(N1/N2)=1/2である。もちろん、N1/N2は、カテーテル10の仕様等によっては、1/3、2/3等、他の割合でもよい。
【0037】
具体的には、第1螺旋部38を構成する線材38aの巻き本数N1は4本であり、第2螺旋部40を構成する線材40aの巻き本数N2は8本である。このように構成することにより、本発明のカテーテル10は所望の効果を達成する。もちろん、巻き本数N1、N2は、カテーテル10の仕様等によって、上述した本数に対して適宜増減が可能である。
【0038】
第2螺旋部40を構成する線材40aは、軸線方向に大きい間隔と小さい間隔が交互に繰り返すように配置されており、本発明では、小さい間隔を第2螺旋部40のピッチP2と定義する。図4に示すように、第1螺旋部38のピッチ(P1とする)は、第2螺旋部40のピッチP2よりも大きい。ピッチとはカテーテル10に巻かれた螺旋部の軸方向の距離のことをいう。
【0039】
第1螺旋部38及び第2螺旋部40を構成する線材の幅(太さ)Wは、例えば、5μm〜200μm程度に設定され、好ましくは、15μm〜100μm程度に設定される。本実施形態では、第1螺旋部38の線材38aの幅と、第2螺旋部40の線材40aの幅は、同一であるが、異なる幅であってもよい。線材38a、40aの断面形状は、円形、楕円形あるいは長方形であってもよい。
【0040】
基端部24における第1螺旋部38及び第2螺旋部40は、先端側に向かって段階的にピッチP1、P2が小さくなる。本実施形態では、基端部24には、軸線方向に沿って5つの区間(区間CD、区間DE、区間EF、区間FG、区間GH)が設定され、第1螺旋部38及び第2螺旋部40のピッチP1、P2は、区間ごとに設定され、先端部26側の区間ほどピッチP1、P2が小さい。
【0041】
また、先端部26における第1螺旋部38のピッチP1は、基端部24における第1螺旋部38のピッチP1よりも小さい。中間部28における第1螺旋部38のピッチP1は、基端部24における第1螺旋部38のピッチP1よりも小さく、かつ先端部26における第1螺旋部38のピッチP1よりも大きい。
【0042】
また、先端部26における第2螺旋部40のピッチP2は、基端部24における第2螺旋部40のピッチP2よりも小さく、中間部28における第2螺旋部40のピッチP2は、基端部24における第2螺旋部40のピッチP2よりも小さく、かつ先端部26における第2螺旋部40のピッチP2よりも大きい。
【0043】
本実施形態において、第2螺旋部40に関するシャフト12の先端部26側に向かったピッチP2の減少率は、第1螺旋部38のそれよりも大きい。
【0044】
具体的には、区間AB(先端部)における第1螺旋部38、第2螺旋部40のピッチP1、P2をそれぞれP1AB、P2ABとし、区間GHにおける第1螺旋部38、第2螺旋部40のピッチP1、P2をそれぞれP1GH、P2GHと区別したとき、P2AB/P2GHは、P1AB/P1GHよりも小さい。
【0045】
また、基端部24から中間部28へ移行する部分(区間CDから区間BC)のピッチの減少率についても、第2螺旋部40のほうが第1螺旋部38よりも大きい。同様に、中間部28から先端部26へ移行する部分(区間BCから区間AB)のピッチの減少率についても、第2螺旋部40のほうが第1螺旋部38よりも大きい。
【0046】
本実施形態において、ピッチ比(P2/P1)は、一定となっておらず、基端部24で最も大きく、先端部26で最も小さく、中間部28では基端部24と先端部26の間の大きさである。
【0047】
上記に従ってカテーテル10を構成する場合の、カテーテル10における区間ごとの内層外径、第1螺旋部38のピッチP1、第2螺旋部40のピッチP2及び長さの一設定例を下記表1に示す。もちろん、これらの寸法は、カテーテル10の仕様等によって適宜変更可能である。例えば、表1では、区間GHの長さは895mmであり、これはシャフト12の全長が130cm+α程度のカテーテル10の場合であるが、これに対してシャフト12の全長が増減したカテーテル10の場合には、その増減分だけ区間GHの長さを増減させ、他の区間については表1と同じでよい。
【0048】
【表1】

【0049】
図5は、表1に従ったカテーテル10の実施例について、第1螺旋部38のピッチP1及び第2螺旋部40のピッチP2を区間ごとに計測した結果を示すものである。図5から明らかなように、第1螺旋部38のピッチP1及び第2螺旋部40のピッチP2は、基端部24よりも中間部28が小さく、中間部28よりも先端部26のほうが小さい。また、基端部24においては、区間ごとにピッチP1、P2が異なっており、先端部26側に近いほどピッチP1、P2が小さい。
【0050】
図6は、表1に従ったカテーテル10の実施例について、第1螺旋部38と第2螺旋部40のピッチ比(P2/P1)を区間ごとに計測した結果を示すグラフである。図6から明らかなように、ピッチ比(P2/P1)は、基端部24よりも中間部28が小さく、中間部28よりも先端部26のほうが小さい。
【0051】
また、表1において、区間GHにおける第1螺旋部38のピッチP1が360μmであり、区間ABにおける第1螺旋部38のピッチP1が120μmであるため、その変化の割合は、約0.33(=120/360)である。これに対し、区間GHにおける第2螺旋部40のピッチが170μmであり、区間ABにおける第2螺旋部40のピッチが40μmであるため、その変化の割合は、約0.26(=40/170)である。従って、上述したように、第2螺旋部40に関するシャフト12の先端部26側に向かったピッチの減少率は、第1螺旋部38のそれよりも大きい。
【0052】
また、表1において、基端部24から中間部28へ移行する部分(区間CDから区間BC)の変化の割合を見ると、第1螺旋部38が約0.94(=160/170)、第2螺旋部40が約0.86(=60/70)であり、第2螺旋部40のほうが第1螺旋部38よりもピッチの減少率が大きい。
【0053】
同様に、表1において、中間部28から先端部26へ移行する部分(区間BCから区間AB)の変化の割合を見ると、第1螺旋部38が約0.75(=120/160)、第2螺旋部40が約0.67(=40/60)であり、第2螺旋部40のほうが第1螺旋部38よりもピッチの減少率が大きい。
【0054】
本発明の一実施形態に係るカテーテル10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0055】
上記のように構成されたカテーテル10は、基端部24から先端部26に向かうに従って、内腔18及び外径が小さくなるため、カテーテル10の先端付近の内腔18は細いが、カテーテル10の根元側では十分な内腔18を確保できる。このため、カテーテル10先端の外径を細することが可能であり、かつ、粘度の高い造影剤(例えば、油性造影剤)も容易にハンドインジェクションで注入することが可能となる。
【0056】
また、第1螺旋部38と第2螺旋部40の線材の巻き本数が異なるため、巻き本数が同じである場合と比較して、カテーテル10自体が曲がろうとする構造となり、編組35による補強層34を有することによる利点である内腔保持及び高破断強度はそのままに、先端部26が非常に柔らかいカテーテル10の提供が可能となる。
【0057】
さらに、カテーテル10の先端から手元側に向かうに従いピッチP1、P2が広くなる構造であるため、先端部26には十分な柔軟性を確保でき、かつ、手元側は適度な硬さを確保できる。
【0058】
またさらに、基端部24でのピッチ比(P2/P1)よりも中間部28でのピッチ比(P2/P1)の方が小さく、中間部28でのピッチ比(P2/P1)よりも先端部26でのピッチ比(P2/P1)の方が小さい構成とし、各ピッチP1、P2だけでなく、ピッチ比(P2/P1)についても先端部側に向かって段階的に小さくする構成としたので、各部での剛性の設定をよりきめ細かくかつ容易に行うことができる。従って、先端部の十分な柔軟性をより好適に得やすいカテーテルを実現できる。
【0059】
従って、本発明のカテーテル10によれば、血管にかかる負担が少なく、スムーズな到達性が得られるとともに、手元側の剛性を高めて十分な押し込み性を持たせることが可能である。
【0060】
また、第2螺旋部40に関するシャフト12の先端部26側に向かったピッチP2の減少率は、第1螺旋部38のそれよりも大きいので、先端部26がより曲がりやすくなり、先端部26の柔軟性を一層向上できる。このため、到達性の一層良好なカテーテル10を実現できる。
【0061】
本実施形態に係るカテーテル10では、基端部24における第1螺旋部38及び第2螺旋部40の各ピッチは、先端部26側に向かって段階的に小さくなるように設定されているので、基端部24において、手元側は剛性が高く、先端部26側にいくほど柔らかくなり、段階的に剛性(硬さ)が変化する構造となる。このため、スムーズな到達性と十分な押し込み性を好適に確保することが可能となる。
【0062】
特に、本実施形態に係るカテーテル10では、第1螺旋部38及び第2螺旋部40でそれぞれ5つのピッチが設定されており、先端部26側の区間ほどピッチが小さいので、先端部26側の柔軟性と手元側の剛性のバランスをよりきめ細かく設定することができ、スムーズな到達性と十分な押し込み性の両方を一層好適に高めることができる。
【0063】
[実施例]
第1螺旋部38と第2螺旋部40の線材38a、40aの本数を変えてカテーテル10を製作した。製作したカテーテル10について、軸方向の圧縮強さ、軸方向に対する柔軟性、血管モデルにおける末梢到達性を評価した。その結果を下記の表2に示す。表2において、マルの記号は「良い」を、三角の記号は「普通」を示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2から明らかなように、第2螺旋部40と第1螺旋部38の線材40a、38aの本数をそれぞれ8本、4本にしたカテーテル10はいずれの評価でも好成績をあげることができた。
【0066】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10…カテーテル 12…シャフト
18…内腔 24…基端部
26…先端部 28…中間部
34…補強層 35…編組
38…第1螺旋部 38a、40a…線材
40…第2螺旋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から基端まで連通する内腔が形成されたシャフトを有するカテーテルであって、
前記シャフトは、
軸方向に向かって外径が一定である基端部と、
軸方向に向かって外径が一定でありかつ当該外径が前記基端部の外径よりも小さい先端部と、
前記先端部の基端から前記基端部の先端までの部分を構成し、前記先端部側に向かって外径が縮小する中間部とを備え、
前記シャフトには、前記基端部から前記先端部にわたって、細線が織り合わされた編組により構成された補強層が設けられ、
前記編組は、第1の螺旋方向に巻回された1以上の線材からなる第1螺旋部と、前記第1の螺旋方向とは異なる第2の螺旋方向に巻回された1以上の線材からなる第2螺旋部とが交差して配置されることで構成されており、
前記第2螺旋部を構成する線材の巻き本数は、前記第1螺旋部を構成する線材の巻き本数よりも多く、
前記先端部における前記第1螺旋部のピッチは、前記基端部における前記第1螺旋部のピッチよりも小さく、
前記中間部における前記第1螺旋部のピッチは、前記基端部における前記第1螺旋部のピッチよりも小さく、かつ前記先端部における前記第1螺旋部のピッチよりも大きく、
前記先端部における前記第2螺旋部のピッチは、前記基端部における前記第2螺旋部のピッチよりも小さく、
前記中間部における前記第2螺旋部は、前記基端部における前記第2螺旋部のピッチよりも小さく、かつ前記先端部における前記第2螺旋部のピッチよりも大きく、
前記第1螺旋部のピッチをP1とし、前記第2螺旋部のピッチをP2とした場合、ピッチ比(P2/P1)は、前記基端部で最も大きく、前記先端部で最も小さく、前記中間部では前記基端部と前記先端部の間の大きさである、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルにおいて、
前記基端部における前記第1螺旋部及び前記第2螺旋部の各ピッチは、前記先端部側に向かって段階的に小さくなるように設定されている、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項3】
請求項2記載のカテーテルにおいて、
前記基端部には、軸線方向に沿って5つの区間が設定され、
前記第1螺旋部及び前記第2螺旋部のピッチは、前記区間ごとに設定され、先端部側の区間ほど前記ピッチが小さい、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカテーテルにおいて、
前記第2螺旋部に関する前記シャフトの前記先端部側に向かったピッチの減少率は、前記第1螺旋部のそれよりも大きい、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカテーテルにおいて、
前記第1螺旋部を構成する線材の本数N1と、前記第2螺旋部を構成する線材の本数N2の比(N1/N2)は、1/2である、
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のカテーテルにおいて、
前記第1螺旋部を構成する線材の本数は4本であり、前記第2螺旋部を構成する線材の本数は8本である、
ことを特徴とするカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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