カニューレ・ファスナ・システム
【課題】骨に骨プレートを取付けることを含む整形外科用カニューレ・ファスナ・システムを提供する。
【解決手段】骨ファスナは、内側形状を有するカニューレを有する。1つ以上のスクリュウドライバには、ファスナ(ねじ)をスクリュウドライバに対して回転しないように固定するための、ファスナのカニューレに一致する形状をもつシャフトが設けられている。
また、スクリュウドライバは、骨ファスナ用の孔のドリリングを開始するカッティングブレードを有している。スクリュウドライバは、単一ファスナまたは保持スリーブ内に装填される多数のファスナのいずれにも使用でき、自動分配すなわち制御された分配を行うことができる。
【解決手段】骨ファスナは、内側形状を有するカニューレを有する。1つ以上のスクリュウドライバには、ファスナ(ねじ)をスクリュウドライバに対して回転しないように固定するための、ファスナのカニューレに一致する形状をもつシャフトが設けられている。
また、スクリュウドライバは、骨ファスナ用の孔のドリリングを開始するカッティングブレードを有している。スクリュウドライバは、単一ファスナまたは保持スリーブ内に装填される多数のファスナのいずれにも使用でき、自動分配すなわち制御された分配を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年11月26日付けの米国仮特許出願第60/524,880号についての米国特許法(35 U.S.C.)第119条第e項の利益を主張する。尚、前記米国仮特許出願の全開示は本願に援用する。
【0002】
本発明は、広くは整形外科手術に使用するカニューレねじシステム(cannulated screw system)に関し、より詳しくは、ねじの前方にねじ孔をドリリングすることおよびねじを回転させて骨内に挿入することにも使用されるブレードを挿入できるカニューレねじに関する。ブレードは単一ねじを保持するように構成でき、または多数のねじを連続的にドリリングしかつ挿入すべく多数のねじのスタッキングを可能にするようにも構成できる。いずれのブレード形態であっても、ツールには、カッティングブレードと、ねじのカニューレ部(cannulation)の少なくとも一部の形状に一致する多角形のシャフトセクションとが設けられており、ツールを用いてねじを回転することができる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、広くは整形外科手術に使用するカニューレねじシステムに関する。一般に、骨ねじは、ねじ孔が別途にドリリングされた後に設置される。そうではあるが、現在のシステムは、一般に、別々の孔ドリリング器具と、ねじをねじ込む器具とを必要とする。また、例えば顎顔面用に使用される骨ねじは、一般に小さくて設置中に操作することが困難である。従って、このような小さいねじを使用する場合には、手術中にねじを喪失する虞れがあること、または手術部位内に落下してしまう虞れがあることに関心がある。本発明は、外科医が、単一器具を用いて、同時に、ねじ孔をドリリングすることおよび骨ねじを設置することを可能にする。また、本発明は、外科医が、多数のねじをスクリュウドライバに予め装填すること(予装填)を可能にすることにより、外科医が、スクリュウドライバを切開領域から取出すことなく多数のねじを迅速に操作しかつ設置できるようにする。ねじの予装填は、顎顔面手術に使用される小さい骨ねじの場合に特に有利である。なぜならば、予装填によって、外科医が、個々のベースに基いて多くの小さいねじを操作する必要性を無くすことができ、従って、ねじと器具とをインターフェースさせるのに要する使用者の注意の大きさを低減できるからである。従って、ねじの設置手順をより速くかつより安全に遂行でき、外科医および患者の双方にとって利益が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、整形外科手術に使用されるカニューレねじシステムに関する。ねじは、骨内に挿入されるシャフトの外面にねじ部を有し、ねじのチップには多数の刃溝を設けるのが好ましい。ねじのヘッド領域には、主としてフランジからなるヘッドを設けることができる。ねじを骨内に挿入するねじ込みトルクをスクリュウドライバから受けることができるように、シャフトおよび任意によりヘッドの少なくとも一部の長さを通って多角形のカニューレ部が延びている。
【0005】
カニューレねじシステムには、単一ねじを保持するように構成されたスクリュウドライバ、および/または、ねじがスタックされかつ連続的に分配される構成の多ねじスクリュウドライバがある。全ての形態のスクリュウドライバには、ねじの係合を開始させるべく骨面に切込むための遠位側チップの平らなブレード部分と、ねじのカニューレ部の多角形部分に一致する、ブレード部分の後方の多角形部分とを設けることができる。全ての形態のスクリュウドライバには、ドライバと係合させるための多角形ソケットまたは多角形外面が近位端に設けられている。
【0006】
多ねじスクリュウドライバの一実施形態は、ねじが骨内に挿入されると、ねじをスプリングで押出す(前進させる)という特徴を有している。スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバにはスクリュウドライバシャフトを設けることができ、該シャフトは、多数のねじおよびコイルスプリングを保持する平らなブレード部分の後方の長い多角形シャフトセクションを備え、保持スリーブは透明にすることができる。保持スリーブはスクリュウドライバシャフトを包囲し、ねじはスクリュウドライバシャフトを包囲しかつスクリュウドライバシャフトと保持スリーブとの間の環状スペースを占拠する。コイルスプリングは、多角形シャフトと保持スリーブとの間の環状領域を占拠し、かつスクリュウドライバシャフトの肩部と、多角形シャフトセクション上でのねじのスタックの最近位側ねじのフランジとの間に載置される。保持スリーブの遠位端には、スロットにより分離された保持スリーブの遠位端の別々の部分に充分な力が加えられるまで、ねじを保持するリップを設けることができる。コイルスプリングは、1つのねじが保持スリーブの遠位端から分配されると、次のねじのシャフトが保持スリーブから突出するようにねじを押圧する。保持スリーブの遠位端のリップは、保持スリーブからねじを引出すのに充分な力を加えるべくねじが骨内に充分に挿入されるまで、次のねじのフランジが保持スリーブから出ることを防止する。
【0007】
スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバには、ねじのカニューレ部内に嵌合される直径をもつチューブをドリリングチップ上で摺動させることにより、ねじを装填できる。次にねじは、コイルスプリングの力に抗してチューブ上および長い多角形シャフトセクション上に配置される。次に保持スリーブは、チューブ/シャフト/ねじ上に置かれかつスクリュウドライバシャフト上にねじ込まれるかスナップ嵌合されて、コイルスプリングの力を弱め、ねじをチューブからスクリュウドライバシャフト上に押しやる。次に、チューブがドリリングチップから取外される。
【0008】
多ねじスクリュウドライバの第二実施形態は、ねじをラチェット押出しすることに特徴を有している。ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバはスクリュウドライバシャフトを有し、該スクリュウドライバシャフトは、平ブレード部分の後方に、多数のねじ、プランジャ、保持スリーブおよびラチェットスライドを保持するための長い多角形シャフトセクションを備えている。スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバと同様に、ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバのねじは、長い多角形シャフトセクションとスリーブとの間の環状スペースを占拠する。保持スリーブの内面には、直角三角形の形状を有する、等間隔を隔てた一連の凹部が設けられており、これらの凹部には細長い矩形のスロットが直接対向している。ラチェットスライドは、保持スリーブの凹部と同じ形状および間隔を有する一連の凹部を有している。ラチェットスライドは保持スリーブの細長い溝内で摺動できるサイズを有し、その両側面には溝が設けられている。或いは、保持スリーブの細長スロットの両側に溝を設け、該溝内で、ラチェットスライドの側面が摺動するように構成することもできる。プランジャは、長い多角形シャフトセクションと装填されたねじの近位側のスリーブとの間の環状スペースを占拠するサイズを有するシリンダであり、該シリンダからは2つの対向脚が延び、各脚の端部には、保持スリーブおよびラチェットスライドの直角三角形の凹部と係合する形状を有する単一タブが設けられている。
【0009】
装填されたねじを進めることは、スリーブの細長い溝内で、ラチェットスライドを遠位側方向に摺動させることにより達成できる。ラチェットスライドの1つの凹部の直角側面は、1つのプランジャ脚のマッチングタブと係合して、ラチェットスライドによりプランジャを押しやる。しかしながら、対向する側方脚のタブは、係合面が鋭角であることによりスリーブの凹部から離脱して脚を保持スリーブの中心に向けて押しやり、プランジャが保持スリーブ内で摺動できるようにする。ラチェットスライドが細長いスロットの近位端に戻ると、プランジャの脚のタブと保持スリーブおよびラチェットスライドの凹部との間の相対移動が反転され、プランジャをスリーブ内で所定位置に留めておく。このラチェッティング運動によりプランジャが押され、プランジャと、該プランジャの下面と接触するねじのフランジ上側面との間に力が加えられてねじが進められる。
【0010】
ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバは、プランジャを、ねじが後に続く長い多角形シャフトセクション上に摺動させることにより装填される。次に、保持スリーブ(ラチェットが既に取付けられている)が、ねじおよびプランジャ(プランジャの脚およびタブが保持スリーブおよびラチェットスライドの三角形凹部と整合している)上で摺動され、所定位置にスナップ嵌合される。保持スリーブ、スクリュウドライバシャフトおよびプランジャの全てがキー留めされ、組立て時に、プランジャの脚が保持スリーブおよびラチェットスライドの凹部と整合することを確保する。
【0011】
スクリュウドライバのどの実施形態においても、1つ以上のねじが、スクリュウドライバのシャフト上に装填される。スクリュウドライバの平ブレード部分には、骨面に適用される尖点およびカッティングエッジ(切刃)を設けることができる。スクリュウドライバが回転されかつ軸線方向の圧力が加えられ得られると、平ブレード部分が骨面内に穿孔し、スクリュウドライバのブレード部分がひとたび充分な深さに到達すると、ねじのセルフタッピングねじ部がいよいよ骨と係合することになる。ねじが骨に入ると、ねじは最終的にスクリュウドライバのブレードから離れ、多ねじスクリュウドライバの場合には保持スリーブから離れる。これにより、次のねじが、多ねじスクリュウドライバ内で押出される。
【0012】
スクリュウドライバシャフトは、外科用スチールまたは骨のカッティングに適した同様な材料で作ることができる。コイルスプリングは、ばね鋼または他の任意の適当なばね材料で作ることができる。保持スリーブ、プランジャおよびラチェットスライドはポリマー材料で作ることができるが、他の材料を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】本発明の例示ねじを示す側面図である。
【図1b】本発明のねじのロッキングヘッド設計を示す側面図である。
【図2】図1のねじを示す端面図である。
【図3】単一ねじスクリュウドライバを示す斜視図である。
【図4】図3の単一ねじスクリュウドライバのチップを示す詳細図である。
【図5a】図4に示したチップの詳細を示す側面図である。
【図5b】図4に示したチップを示す端面図である。
【図6】図3の単一ねじスクリュウドライバに取付けられた図1のねじを示す斜視図である。
【図7】スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバを示す斜視図である。
【図8】図7のスプリング進め型の多ねじスクリュウドライバの遠位端を示す詳細図である。
【図9】ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバを示す斜視図である。
【図10】図9の多ねじスクリュウドライバを示す断面図である。
【図11】図9の多ねじスクリュウドライバのラチェットスライドを示す側面図である。
【図12】図9の多ねじスクリュウドライバのラチェットスライドを示す端面図である。
【図13】図9の多ねじスクリュウドライバのプランジャを示す詳細図である。
【図14】図9の多ねじスクリュウドライバの保持スリーブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい特徴は、添付図面に開示されている。
図1aおよび図2を参照すると、ここには例示の骨ねじ100が示されている。この形式の骨ねじは、種々の整形外科用途に使用され、骨プレートを、顎または顔の破損した骨セグメントに取付けて、治癒の間に骨セグメントを所望相対位置に保持する。顎顔面に適用される場合には、骨プレートおよびねじは、治癒過程で患者の容貌に与えるあらゆる美的インパクトを最小にするため、「小さいプロファイル」をもつように設計される。
【0015】
骨ねじ100は、シャフト120の外径に設けられたねじ部110と、チップ130と、ヘッド領域150とを有している。チップ130には、骨内に切込むのに適した1つ以上の刃溝140を設けることができる。ヘッド領域150には更に、骨上または骨プレート面上にねじ100を座合させるためのフランジ152を設けることができる。フランジ152は、上側面156および下側面154を有している。上側面156は実質的に平らで、シャフト120の長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面を形成している。フランジ152の下側面154も同様に実質的に平ら(すなわち、上側面156の平面に対して平行)にすることができ、或いはねじシャフトの軸線に対して垂直でなくかつ上側面156の平面に対して平行でないように構成できる。或いは、下側面154は、関連する骨プレートに形成された球状骨ねじ孔に一致するように球状にすることができる。一実施形態では、厚さ「t」は、約0.2mm〜約6.0mmにすることができる。傾斜した下側面154をもつねじの実施形態では、ヘッドフランジ152の厚さ「t」は変化させることができる(すなわち、フランジの外周部近くで厚くかつシャフト120近くで薄くすることができる)。また、ねじ100には、円錐状のねじ部セクションを備えたロッキングヘッドを設けることができる。
【0016】
図1bには、ねじ500が、ねじ部付骨ねじ孔を備えた骨プレートに関連して使用される他の実施形態が示されている。この実施形態のねじ500は、ねじを骨プレートにロックするため、骨プレート孔内に設けられたねじ部と係合するように構成されたねじ部を有している。図示の実施形態では、骨プレートの対応する円錐状ねじ部と係合するように構成された円錐状ねじ部を備えたロッキングヘッドを有している。この実施形態のねじ500には、骨プレートの対応する球状ねじ部と係合するように構成された球状ねじ部付ヘッドセクションを設けることができる。ねじ部付ヘッド領域を備えたねじが設けられるときは、このねじ部のピッチは、ねじ本体のねじ部のピッチに一致し、このため、プレート内にねじが係合する前進速度は、骨内へのねじ本体の前進速度と同じになる。
【0017】
多角形カニューレ部160はシャフト120の長さの少なくとも一部に亘って延びており、ねじ100を骨内にねじ込むための駆動トルクを伝達するツールを挿入できるようになっている。図示の実施形態では、カニューレ部160は六角形断面を有するが、任意の適当な多角形カニューレ部を設けることができる。同様に、非多角形カニューレ部を設けることができ、或いは、駆動要素に対してねじを回転的に固定できる駆動要素の対応する表面形状と係合するのに適した隆起部、溝、ノッチ等の種々の形状を有するカニューレ部を設けることができる。ねじ100は更に、長さ「L」(約2mm〜約60mmの範囲内で選択される)と、ねじの外径「d」(約1.5mm〜約5.0mmの範囲内で選択される)と、フランジの直径「D」(約2.0mm〜約6.0mmの範囲内で選択される)とを有している。
【0018】
ねじ100は複数の刃溝140を備えたチップ130を有し、各刃溝140は、ねじの長手方向軸線に対して角度αで配向されたトレーリングエッジ132を備えている。一実施形態では、角度αは、約35〜70°の範囲内で選択される。例示の実施形態では、αは約50°である。トレーリングエッジ132の角度αを上記範囲内に選択することの長所は、ねじから過大のねじ面を除去することなく合理的なサイズの刃溝が得られることにある(過大のねじ面が除去されてしまうと、骨からのねじの引出し強度が低下してしまう)。ねじ部110は、約0.15mm〜約2.0mmの範囲内で選択されるピッチを有する。他の実施形態では、ねじ部の高さは、約0.1mm〜約0.75mmの範囲内で選択される。当業者ならば明らかであろうが、本明細書で明示したものとは異なるねじ部角度、ねじ部ピッチおよびねじ部高さを有するねじを設けることができる。
【0019】
ねじ部110はセルフタッピングとして形成でき、他の実施形態では、ねじ100もセルフドリリングとして形成できる。カニューレねじ(cannulated screw)100は、ステンレス鋼、チタン、ポリマーまたは生吸収性材料等の種々の材料で形成できる。また、本発明はカニューレねじに限定されるものではなく、骨タック、リベット等の他の適当なカニューレ骨ファスナ(カニューレ骨緊締具)をも包含するものである。骨タック、リベットまたは他の骨ファスナが使用される場合には、これらは、金属(例えば、ステンレス鋼またはチタン)、ポリマーまたは生吸収性材料等の種々の材料で作ることができる。
【0020】
ヘッド領域152は非常に小さい厚さ「t」にすることができる。なぜならば、スクリュウドライバからの大部分のトルクは、シャフトのカニューレ部160を介してねじ100に伝達されるからである。これは、スクリュウドライバ係合面の殆ど全部がファスナのヘッド内に設けられており、従ってこれに応じた高強度を得るための大きいヘッド厚さを必要とする一般的な骨ファスナとは異なる点である。本発明のカニューレシャフト構造はこのような大きいヘッドの必要性をなくし、従って、ヘッド領域150のフランジ152は非常に小さいプロファイルを有している。このような小さいプロファイルのファスナは、例えば、骨プレートが、しばしば顔面の目立つ領域において皮下に取付けられる顎顔面適用のように、ねじおよび/または骨プレートと患者の皮膚との間に筋肉その他の組織が殆ど存在しない箇所に適用されるときに特に有利である。通常のヘッドプロファイルをもつ骨ねじは、関連する骨プレートの頂部から大きく突出し、従って、皮膚に目立つ隆起または不連続部を生じさせる。しかしながら、本発明のねじ100の薄いヘッドプロファイルは、骨プレートの頂面から全く突出しないか、突出しても極く僅かであり、従って、患者の顔面に大きい付加的不連続部を生じさせることはない。それどころか、小さいヘッドプロファイルは本発明の成功にとって重要なことではなく、装着する外科医の希望に従って、当業界で知られた任意のヘッドプロファイルをもつねじを使用することができる。
【0021】
本発明は顎顔面用に使用するねじに限定されるものではなく、他の整形外科用に使用される、任意の適当なねじまたは他のファスナをもカバーするものであることに留意されたい。このようなねじまたはファスナは、本明細書で特に開示するものより大きい寸法を有している。
【0022】
図3に示すように、単一ねじスクリュウドライバ200は、近位端210と、遠位端220と、シャフト部分202とを有している。近位端210には、ハンドドライバまたは動力ドライバ等の外的駆動ツールを雌型カップリングにより連結するためのツール係合部分212を設けることができる。或いは、ツール係合部分212は、駆動ツールの雄型端部を受入れるソケットで構成することもできる。ツール係合部分212に隣接して、シャフト部分202には、一般的な駆動ツールに設けられている標準型ボールデテント機構に適合するドライバ保持溝214を設けることができる。
【0023】
遠位端220には、長さ「L1」の多角形シャフト222およびドリリングチップ224が設けられている。ドリリングチップ224は、ねじ100の遠位端から約0.5mm〜約10.0mmの距離だけ突出させることができる。長さL1は、約2mm〜約60mmの範囲内で選択される。一実施形態では、長さL1は、約30mmである。ドリリングチップ224は、骨内への切込み(カッティング)を容易にするため、尖端部225を備えた平坦面で形成されている。多角形シャフト222は、ねじ100のカニューレ部160に一致するように構成された形状を有している。多角形シャフト222は、前述のように他の多角形を使用できるが、ねじ100のカニューレ部と同様に、六角形断面をもつものが示されている。図4および図5には、単一ねじスクリュウドライバ200の遠位端220の詳細が示されている。
【0024】
図示の実施形態では、ドリリングチップ224は、側方から見たときに開先角度βを形成する切削面を備えた2つの対向ブレード部分226、228を有している。開先角度βは、約90°〜約160°の範囲内で選択される。例示の一実施形態では、βは約130°である。ブレード部分226、228はまた、頂部(図5bに示す)から見たときに、リーディングエッジ246、248に対して角度γで傾斜した面236、238を有している。一実施形態では、γは約5°〜約30°の範囲内で選択される。例示の一実施形態では、角度γは約10°である。当業者には明らかなように、ドリリングチップには、本明細書に開示する角度とは異なった角度βおよびγを設けることができる。骨内への所望の切込みを行うには、当業界で知られた任意の適当なドリリングチップを使用できることも留意すべきである。
【0025】
他の一実施形態では、スクリュウドライバにはドリリングチップを設けないでおき、ねじをスクリュウドライバ上に取付けたときに、スクリュウドライバの遠位端がねじのチップから突出しないように構成できる。このような場合には、従来技術の方法(例えば、オール(awl:錐)、タップ等)を用いてパイロット孔を骨内ドリリングし、カニューレねじを備えたスクリュウドライバを使用してねじを骨にねじ込むことができる。このような構造は、大きいサイズのねじを使用する場合に有利である。
【0026】
スクリュウドライバ200のシャフト部分202には、直径の異なる少なくとも2つのセクションが設けられており、最小直径セクション260は。手術作業スペースの視認性を高めるため遠位端に隣接して設けられている。大きい方の直径セクション250は、約3.15mmの直径および約27mmの長さを有し、一方、小さい方の直径セクション260は、約1.2mm〜約2.5mmの範囲内で選択された直径を有し、かつ約10mmの長さを有している。再び断っておくと、これらの寸法は単なる例示に過ぎず、本発明にとって重要なものではないと考えるべきである。また、手術作業スペースの視認性が高いことは利益であるが、選択すべき小さい直径は、スクリュウドライバの構造的一体性および剛性を損なうほど小さくすべきではない。
【0027】
図6には、単一ねじスクリュウドライバ200の遠位端220に装着されたねじ100が示されている。多角形シャフト222(ねじにより隠れている)はカニューレ部160と係合し、かくして、スクリュウドライバ200およびねじ100を一緒に回転させることができる。多角形シャフト222の近位端223には、スクリュウドライバ200上にねじ100を維持すべくねじ100のヘッドフランジ152およびカニューレ部160と相互作用するフレア部分227を設けることができる。かくして、ねじ100のカニューレ部160がフレア部分227に対してクサビ作用して、両表面間に干渉を引起こし、両者を暫定的に軸線方向に一体にロックする。ひとたびねじ100がスクリュウドライバ200に装着されると、ねじ100の端部から遠位側に突出するスクリュウドライバ200の先端部225は、目標とした骨の表面に適用されて、回転される。軸線方向の力を加えつつ骨に対してブレード部分226、228を回転させると、ねじ100と一緒のスクリュウドライバ200の骨内への軸線方向前進により、骨が切削される。骨内の孔が、ねじ100が骨と係合するのに充分な深さに到達すると、ねじ100の刃溝150が骨面と係合して骨内の孔の直径が拡大される。
【0028】
次にセルフタッピングねじ部110が骨と係合し、骨ねじ100の回転につれて骨ねじ100が前進を続ける。ねじ部のセルフタッピングの性質により、スクリュウドライバの更なる軸線方向移動にかかわらずこの前進が続けられ、これにより、ねじが回転されると、ねじ自体がドリル孔内に切込まれていくことに留意すべきである。かくして、ねじの完全座合は、スクリュウドライバが回転するときにスクリュウドライバを軸線方向に固定された状態に保持して、ねじが骨内にトンネル掘削の態様で進むときに、ねじが六角表面に沿って直線移動できるようにすることにより達成される。骨ねじ100が所望深さまで骨内にねじ込まれたならば、スクリュウドライバ200は、該スクリュウドライバ200を骨ねじ100の多角形カニューレ部160から軸線方向に引抜くにより取出される。その後、次のドリリングおよび挿入を行うため、他のねじがスクリュウドライバ200の遠位端220に取付けられる。
【0029】
図7および図8には、スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ(spring-advance multiple screw screwdriver) 300が示されており、このスクリュウドライバ300では、多数のねじがスクリュウドライバ内に予め装填され、かつ手術部位での連続的挿入のためにスクリュウドライバに沿って自動的に押出される。スクリュウドライバ300は、スタック型スクリュウドライバシャフト302と、スプリング要素330と、スタック型スクリュウドライバシャフト302を受入れることができるように構成された近位端341を備えた透明なねじ保持スリーブ340とを有している。保持スリーブ340は、スクリュウドライバシャフト302の近位側セクションから遠位端320の近くまで延びており、これにより、シャフト部分、スプリング、および、ねじを覆っている。保持スリーブ340の遠位端342は、一列に配置された第一ねじ100と暫定的に係合するように構成されており、かくして、スタック状態のねじ100がスクリュウドライバシャフト302の端部から早期に離脱することを防止する。ねじ保持スリーブ340は、スクリュウドライバ300内に装填されるねじ100の数を使用者が決定できるように透明であるものが示されているが、ねじ保持スリーブ340は必ずしも透明にする必要はない。非透明保持スリーブ340が設けられる場合には、シャフトに残っているねじの数を使用者が決定できるように、他の形態のスリーブ340を設けることができる。このような他の形態として、ねじを異なる色に着色したカラーリングシステムが考えられる(色は、残っているねじの数を表示する)。或いは、各ねじの一部を使用者が見ることができるように、保持スリーブ340の長さに沿うスロットを設けることができる。当業者には明らかなように、他の同様なスタック視覚化を同様に考えることができる。
【0030】
保持スリーブ340はポリマーで作ることができ、かつスナップ嵌合または螺合を用いて、スタックされたスクリュウドライバブレード302上に保持できる。或いは、スリーブは、半部構成、または、当業界で良く知られた任意数の他の保持構成をなすスクリュウドライバシャフト上に溶着できる。
【0031】
スクリュウドライバシャフトは、外科用スチールまたは骨の切削に適した同様な金属で作ることができる。コイルスプリングは、ばね鋼、または、スプリングの形成に適した他の金属で作ることができる。多ねじスクリュウドライバは、一回の限定使用(すなわち、使い捨て可能)ツールとして提供するか、再使用可能(すなわち、殺菌可能および/または再装填可能)ツールとして提供することができる。一回の限定使用のスクリュウドライバとして提供するとき、保持スリーブは半部構成として形成し、ねじがスクリュウドライバシャフト上に装填された後に、スリーブの半部が、スクリュウドライバシャフトの周囲に一体に溶着される。保持スリーブには、該保持スリーブが半部内に装着されると、スクリュウドライバシャフトの外面に形成された溝と係合するように構成されたフランジを設けることができる。このアセンブリ手段はまた、ラチェットスライドを溶着前に半部間に配置できるようにして、スリーブ内でのスライドの取付けを容易にする。
【0032】
スクリュウドライバシャフト302は、長さ「L2」の長い多角形シャフト322(ねじにより見え難くなっている)を備えた遠位端部分320を有し、多角形シャフト322はドリリングチップ324を備えている。ドリリングチップ324は、多角形シャフト322の長さL2が、多数のねじの装填に適合するように図3の多角形シャフト222の長さより長い点を除いて、前述の単一ねじスクリュウドライバ200の多角形シャフト222およびドリリングチップ224と同じである。一実施形態では、長さL2は約15mm〜約75mmの範囲内で選択される。スクリュウドライバシャフト302の近位端310および多角形近位側セクション312も、前述のように、駆動ツールを受入れることができるように、前述の単一ねじスクリュウドライバ200(図2および図3)の近位端210および多角形セクション212と同様に構成できる。
【0033】
図8に示すように、透明スリーブ340の遠位端342はテーパ状をなしており、複数のスロット344を有している。スロット344は複数のセグメント346を形成しており、各セグメント346は軸線方向にかつ内方に延びたリップ要素348に終端している。これらのリップ要素348は、スタックの最も遠位側のねじ100のフランジ152の下面154と係合し、従ってコイルスプリング330の押圧力(付勢力)に抗してスクリュウドライバシャフト302上でねじ100を軸線方向に保持する(後述する)。
【0034】
コイルスプリング330は長い多角形シャフト322の一部に亘って配置されかつスクリュウドライバブレード内の第一ねじが手術部位に挿入されたときに、ねじをブレードに沿って前進させる押圧力(付勢力)を、装填されたねじスタックに付与するのに使用される。スプリング要素330の近位端332はスクリュウドライバシャフト302の肩領域314に当接し、スプリング要素330の遠位端334はスタックされたねじ100のうちの最近位のねじのヘッド150に当接する。かくして、ねじが多角形シャフト322上に装填されると、スプリング要素330が、ねじスタックと肩領域314との間で圧縮され、ねじスタックをスクリュウドライバシャフト302の遠位端に向けて軸線方向に押圧する。ねじはヘッドからチップへとスタックされているので、スプリングの押圧力(付勢力)は、スタックされたねじのうちの1つのねじ100のチップ130から次のねじ100のヘッド150へと伝達される。前述のリップ348は、コイルスプリング330の軸線方向の押圧力(付勢力)に抗して、ねじ100を透明スリーブ340内に暫定的に保持する。かくして、各ねじのドリリングおよび挿入前は、ねじのスタックは、リップ348によって保持スリーブ内に保持される。
【0035】
別の実施形態では、図8に関連して上述したセグメント346の代わりに、保持スリーブ340が、該スリーブの遠位端342に2つの幅が狭い脚を有している。これらの脚はスクリュウドライバ300の遠位端にねじ100を保持するように構成され、従って、セグメント346およびリップ348と同様に作動するが、これらの脚がねじスタックを包囲することはない。それどころか、これらの脚は、ねじスタックを大きな視認性が得られるように脚間に充分なスペースを有し、このことは、どれほどの数のねじ100がスタックに残っているかを判断するのに有利である。
【0036】
操作に際し、スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300のドリリングチップが骨面に対して回転されると、骨内に孔がドリリングされ、ねじ100が、単一ねじスクリュウドライバ200に関連して説明したようにして前進される。ねじ100が骨内に前進されると、フランジ152の下面154が保持スリーブ340のリップ348に対して軸線方向の力を加える。下面154は傾斜しているので、この下面154によりリップ348に加えられる軸線方向の力が僅かな横方向成分を有し、この横方向成分の力により、リップ348および関連するセグメント346を、ねじのヘッドから半径方向外方に離れるように押し、ねじおよびねじヘッドがリップ348を通って保持スリーブ340から出ることができるようにする。ひとたびこのねじが保持スリーブ340を出ると、連続する次のねじ100が、スプリング要素330の押圧力によって多角形シャフト上で最遠位位置に前進され、スプリング要素330は、次のねじ100を、そのフランジ152の下面154が保持スリーブ340のリップ348に当接するまでシャフトに沿って遠位側に移動させる。これにより、器具は、次のねじを適用する準備が整ったことになる。
【0037】
スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300への個々のねじの装填は、ドリリングチップ324上で一時的管状要素を摺動させることにより行われる。この管状要素はまた、ねじ100のカニューレ部160内に嵌合するサイズにすることができる。ねじ100は、次に、コイルスプリング330の力に抗して、チューブ上およびスクリュウドライバの長い多角形シャフトセクション上で個々に装填される。次に保持スリーブ340が、チューブ/シャフト/ねじ上に置かれ、スクリュウドライバシャフト上にねじ締め、または、スナップ留めされ、ねじ100をチューブから長い多角形シャフトセクション上に押しやり、かつ同時にコイルスプリングを押し下げる。
【0038】
図9から図14には、本発明による多ねじ装填型スクリュウドライバの他の実施形態が示されており、この実施形態では、前述の実施形態のスプリングではなくラチェット機構を使用して、骨内に挿入するカニューレねじ100のスタックを前進させるのに使用される。ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ400は、スタック型スクリュウドライバブレード402と、プランジャ450と、ねじ保持スリーブ460と、ラチェットスライド470とを有している。この実施形態では、指操作型ラチェット機構がプランジャ450に関連して作用し、使用者が、予め装填されたねじ100のスタックを手動で前進させ、ねじ100を所望通りに前記させることができるようにする。ねじ保持スリーブ460には、スクリュウドライバブレード402の遠位端からの早期離脱を防止するための、多ねじスクリュウドライバ300のスプリング付勢型の実施形態に関連して説明したのと同様な機構を設けることができる。
【0039】
スタック型スクリュウドライバブレード402自体は、スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300のスタック型スクリュウドライバブレード302に関連して説明したブレードと正確に同じであり、従って、ブレード402には、長さ「L3」の長い多角形シャフト422およびドリリングチップ424を設けることができる。多角形シャフト422およびドリリングチップ424は、単一ねじスクリュウドライバ200(図2および図3)の多角形シャフト222およびドリリングチップ224に関連して説明したシャフトおよびチップと同じ構成にすることができる。しかしながら、多角形シャフト422の長さL3は、図3のシャフト222より長くして、多数のねじの装填に適合させることができる。いずれにせよ、長さL3は、約15mm〜約75mmの範囲内で選択できる。スクリュウドライバシャフト402の近位端410および多角形近位側セクション412も、前述のようにして駆動ツールを受入れることができるように、単一ねじスクリュウドライバ200(図2および図3)の近位端210および多角形セクション212と同様に構成できる。
【0040】
図13に示すように、プランジャ450は、カニューレ円筒状部分452と、軸線方向に延びている2つの脚454、456とを有している。各脚454、456は更に、それぞれの脚454、456の近位端から半径方向に突出する三角形のラチェットタブ455、457を有している。プランジャ450の円筒状部分452は、保持スリーブ460とスクリュウドライバブレード402の多角形セクション422との間に形成された管状領域480内で摺動するサイズを有している。プランジャ450の円筒状部分452は更に、第一直径をもつ大きい方の直径の近位側セクション458と、第二直径をもつ遠位側セクション459とを有している。第一直径は第二直径より大きく、第一直径セクション458は保持スリーブ460内で摺動できるサイズを有し、第二直径セクション459は、スタックの最近位側のねじ100のヘッド部分と軸線方向に係合できるサイズを有している。
【0041】
図11および図12には、ラチェットスライド470の細部が示されている。ラチェットスライド470は、該スライド470の両側に設けられた1対の長手方向溝472、474と、スライド470の底面に等間隔を隔てて設けられた複数の凹部476と、スライド470の頂部に軸線方向力を加えるべくスライド470をグリップするのに適した、スライドの頂面に設けられたギザギザ状隆起面478とを有している。長手方向溝472、474は、保持スリーブ460に設けられた長手方向ラチェットスライドスロット461内で摺動できるサイズを有しかつ構成されている。ラチェットスライドスロット461は、保持スリーブ460の長さの大きい部分に沿って延びており、かくして、使用者は、ラチェットスライド470を、スリーブ460の大きい部分に沿って軸線方向に移動させることができる。同様に、ラチェットスライドスロット461は、ラチェットスライドスロット461の側部が溝472、474と係合し、同時に、ラチェットスライド470がスリーブ460のスロット461内で容易に摺動するように構成されている。他の実施形態では、ラチェットスライドスロット461の側面に溝472、474を設け、ラチェットスライド470の側面が摺動可能にこれらの溝に受入れられるように構成できる。
【0042】
図11に示すように、各ラチェット凹部476は、側方から見て直角三角形を形成し、凹部476はこれらの近位側端部に実質的に垂直な面477を有している。ラチェット凹部476は、器具が組立てられたときに、プランジャ450(図13)の三角形ラチェット455、457の1つを受入れるように構成されている。凹部476はスライド470の底面に沿って規則的間隔で設けられており、凹部476間の距離は単一ねじ100の長さにほぼ等しい。或いは、凹部476間の距離は、スタック内に配置された異なる直径のねじに適合するように変えることができる。
【0043】
図10に示すように、保持スリーブ460の内周面には、ラチェットスライドスロット461から約180°の位置において、同様に等間隔に配置された一連の直角三角形が設けられている。各ラチェット凹部463は、該凹部463の近位端に設けられた実質的に垂直な面467を有し、凹部463は、器具が組立てられたときにプランジャ450のタブ455、457の1つを受入れるように構成されている。凹部463は、保持スリーブ460の内面に沿って規則的な間隔で設けられており、凹部463間の距離は、スライド470の凹部476間の距離より小さく、または大きく、或いはほぼ等しくすることができる。
【0044】
スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300と同様に、ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ400のねじ100は、長い多角形シャフトセクション422(ねじにより見え難くなっている)と保持スリーブ460との間の環状スペースを占拠する。装填されたねじ100は、使用するため、ギザギザ状の隆起面478を掴み、保持スリーブ460のラチェットスライドスロット461内でラチェットスライドを遠位側方向に摺動させることにより前進される。
【0045】
ラチェットスライドスロット461およびラチェットスライド470の長さは、ラチェットスライド470が1つのねじ100の長さにほぼ等しい長さだけ摺動できる長さである。かくして、器具を操作するには、ラチェットスライド470をスロット461内で遠位側に移動させ、1つのねじの長さだけ、ねじスタックを前進させることにより、新しいねじをスクリュウドライバの遠位端に位置決めする。次にスライド470を近位側方向に移動させれば、スライドが、その元の非作動位置に戻される。次に、スタックの全てのねじが使用されてしまうまで、この移動が反復される。凹部およびタブは三角形として図示しかつ説明したが、部品の往復移動にラチェット作用を生じさせる任意の形状を考えることができる。例えば、タブおよび凹部は相互に対応する湾曲面または当業者に明白な他の適当な面にすることができる。
【0046】
図10には、ラチェットスライド470、プランジャ450、保持スリーブ460およびねじ100の初期位置が示されている。前述のように、ねじは、ギザギザ状の隆起面478をグリップし、ラチェットスライド470を遠位側方向に向かって軸線方向に移動させることにより、スクリュウドライバの遠位端に向かって前進される。ラチェットスライド470の凹部の1つの直角側面(垂直面)477はプランジャ脚454のマッチングタブ455の同様な垂直面と係合し、かくしてプランジャ450を、ラチェットスライド470と一緒に軸線方向に押しやる。この軸線方向の移動により、脚456のラチェットタブ457が、保持スリーブ460の凹部463から離脱する。タブ457および凹部463の係合面がそれぞれ鋭角であるため、脚456が半径方向内方に撓み、プランジャ450が保持スリーブ460内で遠位側方向に向かって軸線方向に摺動する。
【0047】
次に、ラチェットスライド470をラチェットスライドスロット461の近位端に戻すと、プランジャ450の脚454、456のタブ455、457と、保持スリーブ460の凹部463およびラチェットスライド470の凹部476との間の相対移動が反転される(すなわち、プランジャ脚457および凹部463のそれぞれの垂直面が係合し、タブ455およびラチェット凹部476の係合面のそれぞれの鋭角により脚454が外方に撓まされる)。これにより、プランジャ450が、保持スリーブ460内で所定位置に保持される。ラチェットスライドの各遠位側へのラチェット移動(すなわち操作)により、プランジャ450の小径セクション459が、最近位側の装填ねじのフランジ上側面156に軸線方向の力を加え、かくして、スプリング装填型の実施形態に関連して説明したようにスタック全体を移動させる。かくして、プランジャ450の大径セクション458は、保持スリーブ460の内面内にぴったり滑り嵌めされ、一方、小径セクション459は、セグメント466(図14)を引離すことなく、かつ最後のねじ100がスクリュウドライバ400から早期離脱されないようにして、プランジャ450が最後のねじ100を押出すことができるサイズを有する。
【0048】
ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ400は、ねじ100が後に続く長い多角形シャフトセクション422上でプランジャ450を摺動させることにより装填される。次に、プランジャ450の脚454、456およびラチェットタブ455、457を保持スリーブ460のラチェット凹部463およびラチェットスライド470のラチェット凹部476とを整合させて、保持スリーブ460がねじ100およびプランジャ450上で摺動され(ラチェットスライド470は既に取付けられている)、所定位置にスナップ嵌合される。保持スリーブ460のフランジ465はスクリュウドライバシャフト402の溝404と係合される。保持スリーブ460をスクリュウドライバシャフト402に取付ける他の手段は、留めねじ、または、当業界で良く知られた他の任意の取付け手段として使用できることに留意すべきである。
【0049】
また、また、スクリュウドライバシャフト402、プランジャ450および保持スリーブ460の全部に対応キー面を設けて、コンポーネンツが適正方向に組立てられるように(すなわち、凹部463、476が脚454、456とが整合するように)構成することもできる。ラチェットスライド470は、保持スリーブ460および/またはラチェットスライド470を構成する材料の可撓性により、ラチェットスライドスロット461内の所定位置にスナップ嵌合される。或いは保持スリーブ460は、2つの部品から作り、ラチェットスライド470が開端型ラチェットスライドスロット461内に滑り込ませた後に組立てることができる。
【0050】
使用に際し、スクリュウドライバのシャフトに予め装填された1つ以上のねじ100を備えたスクリュウドライバが用意される。次に、スクリュウドライバの平らなブレード部分の尖端部が、骨面上の目標部位に適用される。スクリュウドライバが回転されかつ平ブレード部分が骨面内に孔を穿けるにつれて、スクリュウドライバが骨内に前進される。次に、ねじ100の刃溝も骨内への切込みを開始する。ひとたびブレードおよびねじが、ねじ部と骨との係合を引起こすのに充分な距離だけ骨内に前進されたならば、ブレードを更に回転させることにより、ねじ100は、骨内にトンネル掘削態様で侵入するにつれてブレードから離脱する。多ねじスクリュウドライバを使用するときは、該スクリュウドライバに対するねじ100のこの軸線方向移動により、ねじが保持スリーブから軸線方向に引離され、ねじがスリーブから自由にされ、スプリング300の力またはラチェットスライド470のラチェット移動により、スタックの次のねじ100がスクリュウドライバの遠位端に前進される。
【0051】
本発明のカニューレねじシステムは、単一ねじスクリュウドライバおよび/または1つ以上の多ねじスクリュウドライバ、複数のカニューレねじ、および任意であるが1つ以上の骨プレートを含むキットとして提供できる。多ねじスクリュウドライバでは、ねじは、スクリュウドライバシャフト上に予め装填しておくか、別々に供給することもできる。プレートがキットの一部として提供される場合には、プレートは、ステンレス鋼、チタン、ポリマーまたは生体適合性材料等の種々異なる材料で作ることができる。本発明は広範囲の使用を考えることができるが、カニューレねじシステムは、特に、顔面および頭蓋の骨折に適用できる。小プロファイルのねじは、ねじが、骨面を覆う筋肉組織(脂肪、筋肉等)が殆ど存在しない頭部領域に使用される場合に、ねじヘッドの突出を回避するのに特に有効である。更に、ねじおよび/またはプレートは、治癒が完了したときにこれらの固定要素を取出すための付加切開を形成する必要性を無くすことができる生吸収性材料で作ることもできる。
【0052】
また、本発明が関連する分野の当業者ならば、本発明の精神および範囲内で種々の変更が可能であることを理解すべきである。従って、本明細書の開示から当業者により容易に達成できかつ本発明の範囲および精神内に含まれるあらゆる好都合な変更は、本発明の他の実施形態として包含されるべきものである。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものである。
【0053】
本発明に関連する好ましい態様として、例えば、以下のものをあげることができる。
〔態様1〕少なくとも1つの第一カニューレファスナ部材と、第一端部および第二端部および中間部を備えたスクリュウドライバ部材とを有し、第一端部は、骨に孔をドリリングするように構成されたカッティングブレードを備えた骨ファスナシステムにおいて、前記中間部は、ファスナ部材のカニューレ部内に受入れられるように構成された外面を備え、該外面および前記カニューレ部は、前記中間部の少なくとも一部がカニューレ部内に配置されると、ファスナ部材およびスクリュウドライバが互いに回転しないように固定される構造を有していることを特徴とする骨ファスナシステム。
〔態様2〕前記ファスナ部材のカニューレ部およびスクリュウドライバの中間部は両方とも多角形形状を有し、スクリュウドライバの多角形セクションがファスナ部材の多角形カニューレ部と係合し、これによりファスナ部材は、スクリュウドライバに取付けられかつカッティングブレードが骨に孔をドリリングするときに骨内にねじ込まれることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様3〕前記ファスナ部材はヘッド部分を有し、該ヘッド部分は骨または骨プレート面と係合するように構成された下面を備えたフランジを有することを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様4〕前記ファスナ部材は、骨と係合しかつ骨に切込むための少なくとも1つの刃溝を有していることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様5〕前記ファスナ部材はセルフタッピングねじ部を有していることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様6〕少なくとも1つの第二カニューレファスナ部材を更に有し、前記中間部は第一長さを更に有し、第一ファスナ部材および第二ファスナ部材の各々が第二長さを有し、前記第一長さは、少なくとも第一ファスナ部材および第二ファスナ部材を中間部に受入れることを可能にする充分な長さであることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様7〕前記スクリュウドライバ部材は使い捨て可能であることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様8〕前記スクリュウドライバ部材は再使用可能であることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様9〕前記スクリュウドライバ部材は更に、第一端部および第二端部を備えたスプリングを有し、第一端部はスクリュウドライバの中間部と係合するように構成され、第二端部は第一ファスナ部材または第二ファスナ部材のヘッド部分と係合するように構成され、スプリング部材は更に、第一ファスナ部材および第二ファスナ部材をスクリュウドライバ部材の第一端部の方向に押圧するように構成されていることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様10〕前記スクリュウドライバ部材は更に、ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するためのスリーブを有していることを特徴とする上記態様9記載の骨ファスナシステム。
〔態様11〕前記スリーブの少なくとも一部は少なくとも部分的に透明であることを特徴とする上記態様10記載の骨ファスナシステム。
〔態様12〕前記スリーブは、一端に設けられたリップを有し、該リップは各ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする上記態様10記載の骨ファスナシステム。
〔態様13〕前記スリーブは更に、ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された少なくとも第一脚および第二脚を有することを特徴とする上記態様10記載の骨ファスナシステム。
〔態様14〕前記スクリュウドライバは更にラチェットシステムを有し、該ラチェットシステムは、凹部または突出部を備えた摺動部材と、スクリュウドライバの中間部を包囲する凹部または突出部を備えたスリーブと、前記摺動部材およびスリーブの凹部または突出部と係合するように構成された脚部材を備えたプランジャとを有し、スリーブ部材はスロットを備え、該スロット内で摺動部材が摺動して、骨ファスナ部材を、スクリュウドライバの第一端部の方向に軸線方向に前進させて骨内に挿入させることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様15〕前記スリーブは、一端に設けられたリップを有し、該リップは各ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする上記態様14記載の骨ファスナシステム。
〔態様16〕前記スリーブは更に、ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された少なくとも第一脚および第二脚を有することを特徴とする上記態様14記載の骨ファスナシステム。
〔態様17〕カニューレ部の少なくとも一部が多角形に形成されたカニューレセルフタッピング骨ねじを骨に取付ける方法において、第一端部および第二端部と、ドリリングチップと、ねじのカニューレ部の多角形部分と係合する形状を有するシャフトとを備えたスクリュウドライバを用意する段階と、第一端部および第二端部を備えたスクリュウドライバをねじのカニューレ部内に挿入する段階と、骨の表面に対してスクリュウドライバのドリリングブレードを回転させる段階と、ねじが骨内に完全に係合するまでドリリングブレードの回転を続ける段階と、ねじのカニューレ部からスクリュウドライバを取出す段階とを有することを特徴とする方法。
〔態様18〕前記ねじはヘッド部分を有し、該ヘッド部分は骨または骨プレート面と係合するように構成された下面を備えたフランジを有することを特徴とする上記態様17記載の方法。
〔態様19〕前記ねじは、骨と係合しかつ骨に切込むための少なくとも1つの刃溝を有していることを特徴とする上記態様17記載の方法。
〔態様20〕前記スクリュウドライバの多角形セクションは、使用前に多数のねじの装填を受入れるのに充分な長さを有することを特徴とする上記態様17記載の方法。
〔態様21〕前記スクリュウドライバは使い捨て可能であることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様22〕前記スクリュウドライバは再使用可能であることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様23〕前記スクリュウドライバは更に、シャフトの肩部と、該肩部と係合するように構成された第一端部および少なくとも1つのねじのヘッド部分と係合するように構成された第二端部を備えたスプリングとを有し、該スプリングは更に、少なくとも1つのねじをスクリュウドライバの第一端部の方向に押圧するように構成されていることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様24〕前記スクリュウドライバは更に、ねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するためのスリーブを有していることを特徴とする上記態様23記載の方法。
〔態様25〕前記スリーブは透明であることを特徴とする上記態様24記載の方法。
〔態様26〕前記スリーブは、ねじが骨内に挿入されるまでねじを保持するリップを有していることを特徴とする上記態様24記載の方法。
〔態様27〕前記スリーブは更に、ねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された脚を有していることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様28〕前記スクリュウドライバはラチェットシステムを有し、該ラチェットシステムは、凹部および突出部を備えた摺動部材と、凹部および突出部を備えたスクリュウドライバのカニューレ部を包囲するスリーブと、摺動部材およびスリーブ部材の凹部または突出部と係合する脚部材を備えたプランジャとを有し、スリーブ部材はスロットを有し、該スロット内で前記摺動部材が摺動してねじを前進させ、骨内に挿入させることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様29〕前記スリーブは、一端に設けられたリップを有し、該リップはねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする上記態様28記載の方法。
〔態様30〕前記スリーブは更に、ねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された脚を有し、該脚は、スリーブ内のねじを視覚化できるように構成されていることを特徴とする上記態様28記載の方法。
〔態様31〕少なくとも1つのカニューレねじと、第一端部および第二端部および中間部を備えた少なくとも1つのスクリュウドライバ部材とを有し、第一端部は、骨に孔をドリリングするように構成されたカッティングブレードと、少なくとも1つのカニューレねじのカニューレ部内に受入れられるように構成されたシャフトとを備え、少なくとも1つの骨プレートを更に有することを特徴とするカニューレねじシステムキット。
〔態様32〕少なくとも1つのスクリュウドライバ部材は、中間部に沿って複数のねじを受入れるように構成されていることを特徴とする上記態様31記載のカニューレねじシステムキット。
〔態様33〕第一端部および第二端部および中間部を備えた少なくとも第二スクリュウドライバ部材を有し、中間部は、複数のカニューレねじを受入れるサイズを有しかつ構成されており、第二スクリュウドライバ部材は更に、第一端部および第二端部を備えたスプリング部材を備え、第一端部はスクリュウドライバの中間部と係合するように構成され、第二端部は1つのねじのヘッド部分と係合してねじをスクリュウドライバの第一端部の方向に押圧するように構成されていることを特徴とする上記態様31記載のカニューレねじシステムキット。
【符号の説明】
【0054】
100 骨ねじ
130 チップ
140 刃溝
152 ヘッドフランジ
200 単一ねじスクリュウドライバ
222 多角形シャフト
224 ドリリングチップ
300 スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ
400 ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ
450 プランジャ
470 ラチェットスライド
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年11月26日付けの米国仮特許出願第60/524,880号についての米国特許法(35 U.S.C.)第119条第e項の利益を主張する。尚、前記米国仮特許出願の全開示は本願に援用する。
【0002】
本発明は、広くは整形外科手術に使用するカニューレねじシステム(cannulated screw system)に関し、より詳しくは、ねじの前方にねじ孔をドリリングすることおよびねじを回転させて骨内に挿入することにも使用されるブレードを挿入できるカニューレねじに関する。ブレードは単一ねじを保持するように構成でき、または多数のねじを連続的にドリリングしかつ挿入すべく多数のねじのスタッキングを可能にするようにも構成できる。いずれのブレード形態であっても、ツールには、カッティングブレードと、ねじのカニューレ部(cannulation)の少なくとも一部の形状に一致する多角形のシャフトセクションとが設けられており、ツールを用いてねじを回転することができる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、広くは整形外科手術に使用するカニューレねじシステムに関する。一般に、骨ねじは、ねじ孔が別途にドリリングされた後に設置される。そうではあるが、現在のシステムは、一般に、別々の孔ドリリング器具と、ねじをねじ込む器具とを必要とする。また、例えば顎顔面用に使用される骨ねじは、一般に小さくて設置中に操作することが困難である。従って、このような小さいねじを使用する場合には、手術中にねじを喪失する虞れがあること、または手術部位内に落下してしまう虞れがあることに関心がある。本発明は、外科医が、単一器具を用いて、同時に、ねじ孔をドリリングすることおよび骨ねじを設置することを可能にする。また、本発明は、外科医が、多数のねじをスクリュウドライバに予め装填すること(予装填)を可能にすることにより、外科医が、スクリュウドライバを切開領域から取出すことなく多数のねじを迅速に操作しかつ設置できるようにする。ねじの予装填は、顎顔面手術に使用される小さい骨ねじの場合に特に有利である。なぜならば、予装填によって、外科医が、個々のベースに基いて多くの小さいねじを操作する必要性を無くすことができ、従って、ねじと器具とをインターフェースさせるのに要する使用者の注意の大きさを低減できるからである。従って、ねじの設置手順をより速くかつより安全に遂行でき、外科医および患者の双方にとって利益が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、整形外科手術に使用されるカニューレねじシステムに関する。ねじは、骨内に挿入されるシャフトの外面にねじ部を有し、ねじのチップには多数の刃溝を設けるのが好ましい。ねじのヘッド領域には、主としてフランジからなるヘッドを設けることができる。ねじを骨内に挿入するねじ込みトルクをスクリュウドライバから受けることができるように、シャフトおよび任意によりヘッドの少なくとも一部の長さを通って多角形のカニューレ部が延びている。
【0005】
カニューレねじシステムには、単一ねじを保持するように構成されたスクリュウドライバ、および/または、ねじがスタックされかつ連続的に分配される構成の多ねじスクリュウドライバがある。全ての形態のスクリュウドライバには、ねじの係合を開始させるべく骨面に切込むための遠位側チップの平らなブレード部分と、ねじのカニューレ部の多角形部分に一致する、ブレード部分の後方の多角形部分とを設けることができる。全ての形態のスクリュウドライバには、ドライバと係合させるための多角形ソケットまたは多角形外面が近位端に設けられている。
【0006】
多ねじスクリュウドライバの一実施形態は、ねじが骨内に挿入されると、ねじをスプリングで押出す(前進させる)という特徴を有している。スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバにはスクリュウドライバシャフトを設けることができ、該シャフトは、多数のねじおよびコイルスプリングを保持する平らなブレード部分の後方の長い多角形シャフトセクションを備え、保持スリーブは透明にすることができる。保持スリーブはスクリュウドライバシャフトを包囲し、ねじはスクリュウドライバシャフトを包囲しかつスクリュウドライバシャフトと保持スリーブとの間の環状スペースを占拠する。コイルスプリングは、多角形シャフトと保持スリーブとの間の環状領域を占拠し、かつスクリュウドライバシャフトの肩部と、多角形シャフトセクション上でのねじのスタックの最近位側ねじのフランジとの間に載置される。保持スリーブの遠位端には、スロットにより分離された保持スリーブの遠位端の別々の部分に充分な力が加えられるまで、ねじを保持するリップを設けることができる。コイルスプリングは、1つのねじが保持スリーブの遠位端から分配されると、次のねじのシャフトが保持スリーブから突出するようにねじを押圧する。保持スリーブの遠位端のリップは、保持スリーブからねじを引出すのに充分な力を加えるべくねじが骨内に充分に挿入されるまで、次のねじのフランジが保持スリーブから出ることを防止する。
【0007】
スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバには、ねじのカニューレ部内に嵌合される直径をもつチューブをドリリングチップ上で摺動させることにより、ねじを装填できる。次にねじは、コイルスプリングの力に抗してチューブ上および長い多角形シャフトセクション上に配置される。次に保持スリーブは、チューブ/シャフト/ねじ上に置かれかつスクリュウドライバシャフト上にねじ込まれるかスナップ嵌合されて、コイルスプリングの力を弱め、ねじをチューブからスクリュウドライバシャフト上に押しやる。次に、チューブがドリリングチップから取外される。
【0008】
多ねじスクリュウドライバの第二実施形態は、ねじをラチェット押出しすることに特徴を有している。ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバはスクリュウドライバシャフトを有し、該スクリュウドライバシャフトは、平ブレード部分の後方に、多数のねじ、プランジャ、保持スリーブおよびラチェットスライドを保持するための長い多角形シャフトセクションを備えている。スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバと同様に、ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバのねじは、長い多角形シャフトセクションとスリーブとの間の環状スペースを占拠する。保持スリーブの内面には、直角三角形の形状を有する、等間隔を隔てた一連の凹部が設けられており、これらの凹部には細長い矩形のスロットが直接対向している。ラチェットスライドは、保持スリーブの凹部と同じ形状および間隔を有する一連の凹部を有している。ラチェットスライドは保持スリーブの細長い溝内で摺動できるサイズを有し、その両側面には溝が設けられている。或いは、保持スリーブの細長スロットの両側に溝を設け、該溝内で、ラチェットスライドの側面が摺動するように構成することもできる。プランジャは、長い多角形シャフトセクションと装填されたねじの近位側のスリーブとの間の環状スペースを占拠するサイズを有するシリンダであり、該シリンダからは2つの対向脚が延び、各脚の端部には、保持スリーブおよびラチェットスライドの直角三角形の凹部と係合する形状を有する単一タブが設けられている。
【0009】
装填されたねじを進めることは、スリーブの細長い溝内で、ラチェットスライドを遠位側方向に摺動させることにより達成できる。ラチェットスライドの1つの凹部の直角側面は、1つのプランジャ脚のマッチングタブと係合して、ラチェットスライドによりプランジャを押しやる。しかしながら、対向する側方脚のタブは、係合面が鋭角であることによりスリーブの凹部から離脱して脚を保持スリーブの中心に向けて押しやり、プランジャが保持スリーブ内で摺動できるようにする。ラチェットスライドが細長いスロットの近位端に戻ると、プランジャの脚のタブと保持スリーブおよびラチェットスライドの凹部との間の相対移動が反転され、プランジャをスリーブ内で所定位置に留めておく。このラチェッティング運動によりプランジャが押され、プランジャと、該プランジャの下面と接触するねじのフランジ上側面との間に力が加えられてねじが進められる。
【0010】
ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバは、プランジャを、ねじが後に続く長い多角形シャフトセクション上に摺動させることにより装填される。次に、保持スリーブ(ラチェットが既に取付けられている)が、ねじおよびプランジャ(プランジャの脚およびタブが保持スリーブおよびラチェットスライドの三角形凹部と整合している)上で摺動され、所定位置にスナップ嵌合される。保持スリーブ、スクリュウドライバシャフトおよびプランジャの全てがキー留めされ、組立て時に、プランジャの脚が保持スリーブおよびラチェットスライドの凹部と整合することを確保する。
【0011】
スクリュウドライバのどの実施形態においても、1つ以上のねじが、スクリュウドライバのシャフト上に装填される。スクリュウドライバの平ブレード部分には、骨面に適用される尖点およびカッティングエッジ(切刃)を設けることができる。スクリュウドライバが回転されかつ軸線方向の圧力が加えられ得られると、平ブレード部分が骨面内に穿孔し、スクリュウドライバのブレード部分がひとたび充分な深さに到達すると、ねじのセルフタッピングねじ部がいよいよ骨と係合することになる。ねじが骨に入ると、ねじは最終的にスクリュウドライバのブレードから離れ、多ねじスクリュウドライバの場合には保持スリーブから離れる。これにより、次のねじが、多ねじスクリュウドライバ内で押出される。
【0012】
スクリュウドライバシャフトは、外科用スチールまたは骨のカッティングに適した同様な材料で作ることができる。コイルスプリングは、ばね鋼または他の任意の適当なばね材料で作ることができる。保持スリーブ、プランジャおよびラチェットスライドはポリマー材料で作ることができるが、他の材料を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1a】本発明の例示ねじを示す側面図である。
【図1b】本発明のねじのロッキングヘッド設計を示す側面図である。
【図2】図1のねじを示す端面図である。
【図3】単一ねじスクリュウドライバを示す斜視図である。
【図4】図3の単一ねじスクリュウドライバのチップを示す詳細図である。
【図5a】図4に示したチップの詳細を示す側面図である。
【図5b】図4に示したチップを示す端面図である。
【図6】図3の単一ねじスクリュウドライバに取付けられた図1のねじを示す斜視図である。
【図7】スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバを示す斜視図である。
【図8】図7のスプリング進め型の多ねじスクリュウドライバの遠位端を示す詳細図である。
【図9】ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバを示す斜視図である。
【図10】図9の多ねじスクリュウドライバを示す断面図である。
【図11】図9の多ねじスクリュウドライバのラチェットスライドを示す側面図である。
【図12】図9の多ねじスクリュウドライバのラチェットスライドを示す端面図である。
【図13】図9の多ねじスクリュウドライバのプランジャを示す詳細図である。
【図14】図9の多ねじスクリュウドライバの保持スリーブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい特徴は、添付図面に開示されている。
図1aおよび図2を参照すると、ここには例示の骨ねじ100が示されている。この形式の骨ねじは、種々の整形外科用途に使用され、骨プレートを、顎または顔の破損した骨セグメントに取付けて、治癒の間に骨セグメントを所望相対位置に保持する。顎顔面に適用される場合には、骨プレートおよびねじは、治癒過程で患者の容貌に与えるあらゆる美的インパクトを最小にするため、「小さいプロファイル」をもつように設計される。
【0015】
骨ねじ100は、シャフト120の外径に設けられたねじ部110と、チップ130と、ヘッド領域150とを有している。チップ130には、骨内に切込むのに適した1つ以上の刃溝140を設けることができる。ヘッド領域150には更に、骨上または骨プレート面上にねじ100を座合させるためのフランジ152を設けることができる。フランジ152は、上側面156および下側面154を有している。上側面156は実質的に平らで、シャフト120の長手方向軸線に対して実質的に垂直な平面を形成している。フランジ152の下側面154も同様に実質的に平ら(すなわち、上側面156の平面に対して平行)にすることができ、或いはねじシャフトの軸線に対して垂直でなくかつ上側面156の平面に対して平行でないように構成できる。或いは、下側面154は、関連する骨プレートに形成された球状骨ねじ孔に一致するように球状にすることができる。一実施形態では、厚さ「t」は、約0.2mm〜約6.0mmにすることができる。傾斜した下側面154をもつねじの実施形態では、ヘッドフランジ152の厚さ「t」は変化させることができる(すなわち、フランジの外周部近くで厚くかつシャフト120近くで薄くすることができる)。また、ねじ100には、円錐状のねじ部セクションを備えたロッキングヘッドを設けることができる。
【0016】
図1bには、ねじ500が、ねじ部付骨ねじ孔を備えた骨プレートに関連して使用される他の実施形態が示されている。この実施形態のねじ500は、ねじを骨プレートにロックするため、骨プレート孔内に設けられたねじ部と係合するように構成されたねじ部を有している。図示の実施形態では、骨プレートの対応する円錐状ねじ部と係合するように構成された円錐状ねじ部を備えたロッキングヘッドを有している。この実施形態のねじ500には、骨プレートの対応する球状ねじ部と係合するように構成された球状ねじ部付ヘッドセクションを設けることができる。ねじ部付ヘッド領域を備えたねじが設けられるときは、このねじ部のピッチは、ねじ本体のねじ部のピッチに一致し、このため、プレート内にねじが係合する前進速度は、骨内へのねじ本体の前進速度と同じになる。
【0017】
多角形カニューレ部160はシャフト120の長さの少なくとも一部に亘って延びており、ねじ100を骨内にねじ込むための駆動トルクを伝達するツールを挿入できるようになっている。図示の実施形態では、カニューレ部160は六角形断面を有するが、任意の適当な多角形カニューレ部を設けることができる。同様に、非多角形カニューレ部を設けることができ、或いは、駆動要素に対してねじを回転的に固定できる駆動要素の対応する表面形状と係合するのに適した隆起部、溝、ノッチ等の種々の形状を有するカニューレ部を設けることができる。ねじ100は更に、長さ「L」(約2mm〜約60mmの範囲内で選択される)と、ねじの外径「d」(約1.5mm〜約5.0mmの範囲内で選択される)と、フランジの直径「D」(約2.0mm〜約6.0mmの範囲内で選択される)とを有している。
【0018】
ねじ100は複数の刃溝140を備えたチップ130を有し、各刃溝140は、ねじの長手方向軸線に対して角度αで配向されたトレーリングエッジ132を備えている。一実施形態では、角度αは、約35〜70°の範囲内で選択される。例示の実施形態では、αは約50°である。トレーリングエッジ132の角度αを上記範囲内に選択することの長所は、ねじから過大のねじ面を除去することなく合理的なサイズの刃溝が得られることにある(過大のねじ面が除去されてしまうと、骨からのねじの引出し強度が低下してしまう)。ねじ部110は、約0.15mm〜約2.0mmの範囲内で選択されるピッチを有する。他の実施形態では、ねじ部の高さは、約0.1mm〜約0.75mmの範囲内で選択される。当業者ならば明らかであろうが、本明細書で明示したものとは異なるねじ部角度、ねじ部ピッチおよびねじ部高さを有するねじを設けることができる。
【0019】
ねじ部110はセルフタッピングとして形成でき、他の実施形態では、ねじ100もセルフドリリングとして形成できる。カニューレねじ(cannulated screw)100は、ステンレス鋼、チタン、ポリマーまたは生吸収性材料等の種々の材料で形成できる。また、本発明はカニューレねじに限定されるものではなく、骨タック、リベット等の他の適当なカニューレ骨ファスナ(カニューレ骨緊締具)をも包含するものである。骨タック、リベットまたは他の骨ファスナが使用される場合には、これらは、金属(例えば、ステンレス鋼またはチタン)、ポリマーまたは生吸収性材料等の種々の材料で作ることができる。
【0020】
ヘッド領域152は非常に小さい厚さ「t」にすることができる。なぜならば、スクリュウドライバからの大部分のトルクは、シャフトのカニューレ部160を介してねじ100に伝達されるからである。これは、スクリュウドライバ係合面の殆ど全部がファスナのヘッド内に設けられており、従ってこれに応じた高強度を得るための大きいヘッド厚さを必要とする一般的な骨ファスナとは異なる点である。本発明のカニューレシャフト構造はこのような大きいヘッドの必要性をなくし、従って、ヘッド領域150のフランジ152は非常に小さいプロファイルを有している。このような小さいプロファイルのファスナは、例えば、骨プレートが、しばしば顔面の目立つ領域において皮下に取付けられる顎顔面適用のように、ねじおよび/または骨プレートと患者の皮膚との間に筋肉その他の組織が殆ど存在しない箇所に適用されるときに特に有利である。通常のヘッドプロファイルをもつ骨ねじは、関連する骨プレートの頂部から大きく突出し、従って、皮膚に目立つ隆起または不連続部を生じさせる。しかしながら、本発明のねじ100の薄いヘッドプロファイルは、骨プレートの頂面から全く突出しないか、突出しても極く僅かであり、従って、患者の顔面に大きい付加的不連続部を生じさせることはない。それどころか、小さいヘッドプロファイルは本発明の成功にとって重要なことではなく、装着する外科医の希望に従って、当業界で知られた任意のヘッドプロファイルをもつねじを使用することができる。
【0021】
本発明は顎顔面用に使用するねじに限定されるものではなく、他の整形外科用に使用される、任意の適当なねじまたは他のファスナをもカバーするものであることに留意されたい。このようなねじまたはファスナは、本明細書で特に開示するものより大きい寸法を有している。
【0022】
図3に示すように、単一ねじスクリュウドライバ200は、近位端210と、遠位端220と、シャフト部分202とを有している。近位端210には、ハンドドライバまたは動力ドライバ等の外的駆動ツールを雌型カップリングにより連結するためのツール係合部分212を設けることができる。或いは、ツール係合部分212は、駆動ツールの雄型端部を受入れるソケットで構成することもできる。ツール係合部分212に隣接して、シャフト部分202には、一般的な駆動ツールに設けられている標準型ボールデテント機構に適合するドライバ保持溝214を設けることができる。
【0023】
遠位端220には、長さ「L1」の多角形シャフト222およびドリリングチップ224が設けられている。ドリリングチップ224は、ねじ100の遠位端から約0.5mm〜約10.0mmの距離だけ突出させることができる。長さL1は、約2mm〜約60mmの範囲内で選択される。一実施形態では、長さL1は、約30mmである。ドリリングチップ224は、骨内への切込み(カッティング)を容易にするため、尖端部225を備えた平坦面で形成されている。多角形シャフト222は、ねじ100のカニューレ部160に一致するように構成された形状を有している。多角形シャフト222は、前述のように他の多角形を使用できるが、ねじ100のカニューレ部と同様に、六角形断面をもつものが示されている。図4および図5には、単一ねじスクリュウドライバ200の遠位端220の詳細が示されている。
【0024】
図示の実施形態では、ドリリングチップ224は、側方から見たときに開先角度βを形成する切削面を備えた2つの対向ブレード部分226、228を有している。開先角度βは、約90°〜約160°の範囲内で選択される。例示の一実施形態では、βは約130°である。ブレード部分226、228はまた、頂部(図5bに示す)から見たときに、リーディングエッジ246、248に対して角度γで傾斜した面236、238を有している。一実施形態では、γは約5°〜約30°の範囲内で選択される。例示の一実施形態では、角度γは約10°である。当業者には明らかなように、ドリリングチップには、本明細書に開示する角度とは異なった角度βおよびγを設けることができる。骨内への所望の切込みを行うには、当業界で知られた任意の適当なドリリングチップを使用できることも留意すべきである。
【0025】
他の一実施形態では、スクリュウドライバにはドリリングチップを設けないでおき、ねじをスクリュウドライバ上に取付けたときに、スクリュウドライバの遠位端がねじのチップから突出しないように構成できる。このような場合には、従来技術の方法(例えば、オール(awl:錐)、タップ等)を用いてパイロット孔を骨内ドリリングし、カニューレねじを備えたスクリュウドライバを使用してねじを骨にねじ込むことができる。このような構造は、大きいサイズのねじを使用する場合に有利である。
【0026】
スクリュウドライバ200のシャフト部分202には、直径の異なる少なくとも2つのセクションが設けられており、最小直径セクション260は。手術作業スペースの視認性を高めるため遠位端に隣接して設けられている。大きい方の直径セクション250は、約3.15mmの直径および約27mmの長さを有し、一方、小さい方の直径セクション260は、約1.2mm〜約2.5mmの範囲内で選択された直径を有し、かつ約10mmの長さを有している。再び断っておくと、これらの寸法は単なる例示に過ぎず、本発明にとって重要なものではないと考えるべきである。また、手術作業スペースの視認性が高いことは利益であるが、選択すべき小さい直径は、スクリュウドライバの構造的一体性および剛性を損なうほど小さくすべきではない。
【0027】
図6には、単一ねじスクリュウドライバ200の遠位端220に装着されたねじ100が示されている。多角形シャフト222(ねじにより隠れている)はカニューレ部160と係合し、かくして、スクリュウドライバ200およびねじ100を一緒に回転させることができる。多角形シャフト222の近位端223には、スクリュウドライバ200上にねじ100を維持すべくねじ100のヘッドフランジ152およびカニューレ部160と相互作用するフレア部分227を設けることができる。かくして、ねじ100のカニューレ部160がフレア部分227に対してクサビ作用して、両表面間に干渉を引起こし、両者を暫定的に軸線方向に一体にロックする。ひとたびねじ100がスクリュウドライバ200に装着されると、ねじ100の端部から遠位側に突出するスクリュウドライバ200の先端部225は、目標とした骨の表面に適用されて、回転される。軸線方向の力を加えつつ骨に対してブレード部分226、228を回転させると、ねじ100と一緒のスクリュウドライバ200の骨内への軸線方向前進により、骨が切削される。骨内の孔が、ねじ100が骨と係合するのに充分な深さに到達すると、ねじ100の刃溝150が骨面と係合して骨内の孔の直径が拡大される。
【0028】
次にセルフタッピングねじ部110が骨と係合し、骨ねじ100の回転につれて骨ねじ100が前進を続ける。ねじ部のセルフタッピングの性質により、スクリュウドライバの更なる軸線方向移動にかかわらずこの前進が続けられ、これにより、ねじが回転されると、ねじ自体がドリル孔内に切込まれていくことに留意すべきである。かくして、ねじの完全座合は、スクリュウドライバが回転するときにスクリュウドライバを軸線方向に固定された状態に保持して、ねじが骨内にトンネル掘削の態様で進むときに、ねじが六角表面に沿って直線移動できるようにすることにより達成される。骨ねじ100が所望深さまで骨内にねじ込まれたならば、スクリュウドライバ200は、該スクリュウドライバ200を骨ねじ100の多角形カニューレ部160から軸線方向に引抜くにより取出される。その後、次のドリリングおよび挿入を行うため、他のねじがスクリュウドライバ200の遠位端220に取付けられる。
【0029】
図7および図8には、スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ(spring-advance multiple screw screwdriver) 300が示されており、このスクリュウドライバ300では、多数のねじがスクリュウドライバ内に予め装填され、かつ手術部位での連続的挿入のためにスクリュウドライバに沿って自動的に押出される。スクリュウドライバ300は、スタック型スクリュウドライバシャフト302と、スプリング要素330と、スタック型スクリュウドライバシャフト302を受入れることができるように構成された近位端341を備えた透明なねじ保持スリーブ340とを有している。保持スリーブ340は、スクリュウドライバシャフト302の近位側セクションから遠位端320の近くまで延びており、これにより、シャフト部分、スプリング、および、ねじを覆っている。保持スリーブ340の遠位端342は、一列に配置された第一ねじ100と暫定的に係合するように構成されており、かくして、スタック状態のねじ100がスクリュウドライバシャフト302の端部から早期に離脱することを防止する。ねじ保持スリーブ340は、スクリュウドライバ300内に装填されるねじ100の数を使用者が決定できるように透明であるものが示されているが、ねじ保持スリーブ340は必ずしも透明にする必要はない。非透明保持スリーブ340が設けられる場合には、シャフトに残っているねじの数を使用者が決定できるように、他の形態のスリーブ340を設けることができる。このような他の形態として、ねじを異なる色に着色したカラーリングシステムが考えられる(色は、残っているねじの数を表示する)。或いは、各ねじの一部を使用者が見ることができるように、保持スリーブ340の長さに沿うスロットを設けることができる。当業者には明らかなように、他の同様なスタック視覚化を同様に考えることができる。
【0030】
保持スリーブ340はポリマーで作ることができ、かつスナップ嵌合または螺合を用いて、スタックされたスクリュウドライバブレード302上に保持できる。或いは、スリーブは、半部構成、または、当業界で良く知られた任意数の他の保持構成をなすスクリュウドライバシャフト上に溶着できる。
【0031】
スクリュウドライバシャフトは、外科用スチールまたは骨の切削に適した同様な金属で作ることができる。コイルスプリングは、ばね鋼、または、スプリングの形成に適した他の金属で作ることができる。多ねじスクリュウドライバは、一回の限定使用(すなわち、使い捨て可能)ツールとして提供するか、再使用可能(すなわち、殺菌可能および/または再装填可能)ツールとして提供することができる。一回の限定使用のスクリュウドライバとして提供するとき、保持スリーブは半部構成として形成し、ねじがスクリュウドライバシャフト上に装填された後に、スリーブの半部が、スクリュウドライバシャフトの周囲に一体に溶着される。保持スリーブには、該保持スリーブが半部内に装着されると、スクリュウドライバシャフトの外面に形成された溝と係合するように構成されたフランジを設けることができる。このアセンブリ手段はまた、ラチェットスライドを溶着前に半部間に配置できるようにして、スリーブ内でのスライドの取付けを容易にする。
【0032】
スクリュウドライバシャフト302は、長さ「L2」の長い多角形シャフト322(ねじにより見え難くなっている)を備えた遠位端部分320を有し、多角形シャフト322はドリリングチップ324を備えている。ドリリングチップ324は、多角形シャフト322の長さL2が、多数のねじの装填に適合するように図3の多角形シャフト222の長さより長い点を除いて、前述の単一ねじスクリュウドライバ200の多角形シャフト222およびドリリングチップ224と同じである。一実施形態では、長さL2は約15mm〜約75mmの範囲内で選択される。スクリュウドライバシャフト302の近位端310および多角形近位側セクション312も、前述のように、駆動ツールを受入れることができるように、前述の単一ねじスクリュウドライバ200(図2および図3)の近位端210および多角形セクション212と同様に構成できる。
【0033】
図8に示すように、透明スリーブ340の遠位端342はテーパ状をなしており、複数のスロット344を有している。スロット344は複数のセグメント346を形成しており、各セグメント346は軸線方向にかつ内方に延びたリップ要素348に終端している。これらのリップ要素348は、スタックの最も遠位側のねじ100のフランジ152の下面154と係合し、従ってコイルスプリング330の押圧力(付勢力)に抗してスクリュウドライバシャフト302上でねじ100を軸線方向に保持する(後述する)。
【0034】
コイルスプリング330は長い多角形シャフト322の一部に亘って配置されかつスクリュウドライバブレード内の第一ねじが手術部位に挿入されたときに、ねじをブレードに沿って前進させる押圧力(付勢力)を、装填されたねじスタックに付与するのに使用される。スプリング要素330の近位端332はスクリュウドライバシャフト302の肩領域314に当接し、スプリング要素330の遠位端334はスタックされたねじ100のうちの最近位のねじのヘッド150に当接する。かくして、ねじが多角形シャフト322上に装填されると、スプリング要素330が、ねじスタックと肩領域314との間で圧縮され、ねじスタックをスクリュウドライバシャフト302の遠位端に向けて軸線方向に押圧する。ねじはヘッドからチップへとスタックされているので、スプリングの押圧力(付勢力)は、スタックされたねじのうちの1つのねじ100のチップ130から次のねじ100のヘッド150へと伝達される。前述のリップ348は、コイルスプリング330の軸線方向の押圧力(付勢力)に抗して、ねじ100を透明スリーブ340内に暫定的に保持する。かくして、各ねじのドリリングおよび挿入前は、ねじのスタックは、リップ348によって保持スリーブ内に保持される。
【0035】
別の実施形態では、図8に関連して上述したセグメント346の代わりに、保持スリーブ340が、該スリーブの遠位端342に2つの幅が狭い脚を有している。これらの脚はスクリュウドライバ300の遠位端にねじ100を保持するように構成され、従って、セグメント346およびリップ348と同様に作動するが、これらの脚がねじスタックを包囲することはない。それどころか、これらの脚は、ねじスタックを大きな視認性が得られるように脚間に充分なスペースを有し、このことは、どれほどの数のねじ100がスタックに残っているかを判断するのに有利である。
【0036】
操作に際し、スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300のドリリングチップが骨面に対して回転されると、骨内に孔がドリリングされ、ねじ100が、単一ねじスクリュウドライバ200に関連して説明したようにして前進される。ねじ100が骨内に前進されると、フランジ152の下面154が保持スリーブ340のリップ348に対して軸線方向の力を加える。下面154は傾斜しているので、この下面154によりリップ348に加えられる軸線方向の力が僅かな横方向成分を有し、この横方向成分の力により、リップ348および関連するセグメント346を、ねじのヘッドから半径方向外方に離れるように押し、ねじおよびねじヘッドがリップ348を通って保持スリーブ340から出ることができるようにする。ひとたびこのねじが保持スリーブ340を出ると、連続する次のねじ100が、スプリング要素330の押圧力によって多角形シャフト上で最遠位位置に前進され、スプリング要素330は、次のねじ100を、そのフランジ152の下面154が保持スリーブ340のリップ348に当接するまでシャフトに沿って遠位側に移動させる。これにより、器具は、次のねじを適用する準備が整ったことになる。
【0037】
スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300への個々のねじの装填は、ドリリングチップ324上で一時的管状要素を摺動させることにより行われる。この管状要素はまた、ねじ100のカニューレ部160内に嵌合するサイズにすることができる。ねじ100は、次に、コイルスプリング330の力に抗して、チューブ上およびスクリュウドライバの長い多角形シャフトセクション上で個々に装填される。次に保持スリーブ340が、チューブ/シャフト/ねじ上に置かれ、スクリュウドライバシャフト上にねじ締め、または、スナップ留めされ、ねじ100をチューブから長い多角形シャフトセクション上に押しやり、かつ同時にコイルスプリングを押し下げる。
【0038】
図9から図14には、本発明による多ねじ装填型スクリュウドライバの他の実施形態が示されており、この実施形態では、前述の実施形態のスプリングではなくラチェット機構を使用して、骨内に挿入するカニューレねじ100のスタックを前進させるのに使用される。ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ400は、スタック型スクリュウドライバブレード402と、プランジャ450と、ねじ保持スリーブ460と、ラチェットスライド470とを有している。この実施形態では、指操作型ラチェット機構がプランジャ450に関連して作用し、使用者が、予め装填されたねじ100のスタックを手動で前進させ、ねじ100を所望通りに前記させることができるようにする。ねじ保持スリーブ460には、スクリュウドライバブレード402の遠位端からの早期離脱を防止するための、多ねじスクリュウドライバ300のスプリング付勢型の実施形態に関連して説明したのと同様な機構を設けることができる。
【0039】
スタック型スクリュウドライバブレード402自体は、スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300のスタック型スクリュウドライバブレード302に関連して説明したブレードと正確に同じであり、従って、ブレード402には、長さ「L3」の長い多角形シャフト422およびドリリングチップ424を設けることができる。多角形シャフト422およびドリリングチップ424は、単一ねじスクリュウドライバ200(図2および図3)の多角形シャフト222およびドリリングチップ224に関連して説明したシャフトおよびチップと同じ構成にすることができる。しかしながら、多角形シャフト422の長さL3は、図3のシャフト222より長くして、多数のねじの装填に適合させることができる。いずれにせよ、長さL3は、約15mm〜約75mmの範囲内で選択できる。スクリュウドライバシャフト402の近位端410および多角形近位側セクション412も、前述のようにして駆動ツールを受入れることができるように、単一ねじスクリュウドライバ200(図2および図3)の近位端210および多角形セクション212と同様に構成できる。
【0040】
図13に示すように、プランジャ450は、カニューレ円筒状部分452と、軸線方向に延びている2つの脚454、456とを有している。各脚454、456は更に、それぞれの脚454、456の近位端から半径方向に突出する三角形のラチェットタブ455、457を有している。プランジャ450の円筒状部分452は、保持スリーブ460とスクリュウドライバブレード402の多角形セクション422との間に形成された管状領域480内で摺動するサイズを有している。プランジャ450の円筒状部分452は更に、第一直径をもつ大きい方の直径の近位側セクション458と、第二直径をもつ遠位側セクション459とを有している。第一直径は第二直径より大きく、第一直径セクション458は保持スリーブ460内で摺動できるサイズを有し、第二直径セクション459は、スタックの最近位側のねじ100のヘッド部分と軸線方向に係合できるサイズを有している。
【0041】
図11および図12には、ラチェットスライド470の細部が示されている。ラチェットスライド470は、該スライド470の両側に設けられた1対の長手方向溝472、474と、スライド470の底面に等間隔を隔てて設けられた複数の凹部476と、スライド470の頂部に軸線方向力を加えるべくスライド470をグリップするのに適した、スライドの頂面に設けられたギザギザ状隆起面478とを有している。長手方向溝472、474は、保持スリーブ460に設けられた長手方向ラチェットスライドスロット461内で摺動できるサイズを有しかつ構成されている。ラチェットスライドスロット461は、保持スリーブ460の長さの大きい部分に沿って延びており、かくして、使用者は、ラチェットスライド470を、スリーブ460の大きい部分に沿って軸線方向に移動させることができる。同様に、ラチェットスライドスロット461は、ラチェットスライドスロット461の側部が溝472、474と係合し、同時に、ラチェットスライド470がスリーブ460のスロット461内で容易に摺動するように構成されている。他の実施形態では、ラチェットスライドスロット461の側面に溝472、474を設け、ラチェットスライド470の側面が摺動可能にこれらの溝に受入れられるように構成できる。
【0042】
図11に示すように、各ラチェット凹部476は、側方から見て直角三角形を形成し、凹部476はこれらの近位側端部に実質的に垂直な面477を有している。ラチェット凹部476は、器具が組立てられたときに、プランジャ450(図13)の三角形ラチェット455、457の1つを受入れるように構成されている。凹部476はスライド470の底面に沿って規則的間隔で設けられており、凹部476間の距離は単一ねじ100の長さにほぼ等しい。或いは、凹部476間の距離は、スタック内に配置された異なる直径のねじに適合するように変えることができる。
【0043】
図10に示すように、保持スリーブ460の内周面には、ラチェットスライドスロット461から約180°の位置において、同様に等間隔に配置された一連の直角三角形が設けられている。各ラチェット凹部463は、該凹部463の近位端に設けられた実質的に垂直な面467を有し、凹部463は、器具が組立てられたときにプランジャ450のタブ455、457の1つを受入れるように構成されている。凹部463は、保持スリーブ460の内面に沿って規則的な間隔で設けられており、凹部463間の距離は、スライド470の凹部476間の距離より小さく、または大きく、或いはほぼ等しくすることができる。
【0044】
スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ300と同様に、ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ400のねじ100は、長い多角形シャフトセクション422(ねじにより見え難くなっている)と保持スリーブ460との間の環状スペースを占拠する。装填されたねじ100は、使用するため、ギザギザ状の隆起面478を掴み、保持スリーブ460のラチェットスライドスロット461内でラチェットスライドを遠位側方向に摺動させることにより前進される。
【0045】
ラチェットスライドスロット461およびラチェットスライド470の長さは、ラチェットスライド470が1つのねじ100の長さにほぼ等しい長さだけ摺動できる長さである。かくして、器具を操作するには、ラチェットスライド470をスロット461内で遠位側に移動させ、1つのねじの長さだけ、ねじスタックを前進させることにより、新しいねじをスクリュウドライバの遠位端に位置決めする。次にスライド470を近位側方向に移動させれば、スライドが、その元の非作動位置に戻される。次に、スタックの全てのねじが使用されてしまうまで、この移動が反復される。凹部およびタブは三角形として図示しかつ説明したが、部品の往復移動にラチェット作用を生じさせる任意の形状を考えることができる。例えば、タブおよび凹部は相互に対応する湾曲面または当業者に明白な他の適当な面にすることができる。
【0046】
図10には、ラチェットスライド470、プランジャ450、保持スリーブ460およびねじ100の初期位置が示されている。前述のように、ねじは、ギザギザ状の隆起面478をグリップし、ラチェットスライド470を遠位側方向に向かって軸線方向に移動させることにより、スクリュウドライバの遠位端に向かって前進される。ラチェットスライド470の凹部の1つの直角側面(垂直面)477はプランジャ脚454のマッチングタブ455の同様な垂直面と係合し、かくしてプランジャ450を、ラチェットスライド470と一緒に軸線方向に押しやる。この軸線方向の移動により、脚456のラチェットタブ457が、保持スリーブ460の凹部463から離脱する。タブ457および凹部463の係合面がそれぞれ鋭角であるため、脚456が半径方向内方に撓み、プランジャ450が保持スリーブ460内で遠位側方向に向かって軸線方向に摺動する。
【0047】
次に、ラチェットスライド470をラチェットスライドスロット461の近位端に戻すと、プランジャ450の脚454、456のタブ455、457と、保持スリーブ460の凹部463およびラチェットスライド470の凹部476との間の相対移動が反転される(すなわち、プランジャ脚457および凹部463のそれぞれの垂直面が係合し、タブ455およびラチェット凹部476の係合面のそれぞれの鋭角により脚454が外方に撓まされる)。これにより、プランジャ450が、保持スリーブ460内で所定位置に保持される。ラチェットスライドの各遠位側へのラチェット移動(すなわち操作)により、プランジャ450の小径セクション459が、最近位側の装填ねじのフランジ上側面156に軸線方向の力を加え、かくして、スプリング装填型の実施形態に関連して説明したようにスタック全体を移動させる。かくして、プランジャ450の大径セクション458は、保持スリーブ460の内面内にぴったり滑り嵌めされ、一方、小径セクション459は、セグメント466(図14)を引離すことなく、かつ最後のねじ100がスクリュウドライバ400から早期離脱されないようにして、プランジャ450が最後のねじ100を押出すことができるサイズを有する。
【0048】
ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ400は、ねじ100が後に続く長い多角形シャフトセクション422上でプランジャ450を摺動させることにより装填される。次に、プランジャ450の脚454、456およびラチェットタブ455、457を保持スリーブ460のラチェット凹部463およびラチェットスライド470のラチェット凹部476とを整合させて、保持スリーブ460がねじ100およびプランジャ450上で摺動され(ラチェットスライド470は既に取付けられている)、所定位置にスナップ嵌合される。保持スリーブ460のフランジ465はスクリュウドライバシャフト402の溝404と係合される。保持スリーブ460をスクリュウドライバシャフト402に取付ける他の手段は、留めねじ、または、当業界で良く知られた他の任意の取付け手段として使用できることに留意すべきである。
【0049】
また、また、スクリュウドライバシャフト402、プランジャ450および保持スリーブ460の全部に対応キー面を設けて、コンポーネンツが適正方向に組立てられるように(すなわち、凹部463、476が脚454、456とが整合するように)構成することもできる。ラチェットスライド470は、保持スリーブ460および/またはラチェットスライド470を構成する材料の可撓性により、ラチェットスライドスロット461内の所定位置にスナップ嵌合される。或いは保持スリーブ460は、2つの部品から作り、ラチェットスライド470が開端型ラチェットスライドスロット461内に滑り込ませた後に組立てることができる。
【0050】
使用に際し、スクリュウドライバのシャフトに予め装填された1つ以上のねじ100を備えたスクリュウドライバが用意される。次に、スクリュウドライバの平らなブレード部分の尖端部が、骨面上の目標部位に適用される。スクリュウドライバが回転されかつ平ブレード部分が骨面内に孔を穿けるにつれて、スクリュウドライバが骨内に前進される。次に、ねじ100の刃溝も骨内への切込みを開始する。ひとたびブレードおよびねじが、ねじ部と骨との係合を引起こすのに充分な距離だけ骨内に前進されたならば、ブレードを更に回転させることにより、ねじ100は、骨内にトンネル掘削態様で侵入するにつれてブレードから離脱する。多ねじスクリュウドライバを使用するときは、該スクリュウドライバに対するねじ100のこの軸線方向移動により、ねじが保持スリーブから軸線方向に引離され、ねじがスリーブから自由にされ、スプリング300の力またはラチェットスライド470のラチェット移動により、スタックの次のねじ100がスクリュウドライバの遠位端に前進される。
【0051】
本発明のカニューレねじシステムは、単一ねじスクリュウドライバおよび/または1つ以上の多ねじスクリュウドライバ、複数のカニューレねじ、および任意であるが1つ以上の骨プレートを含むキットとして提供できる。多ねじスクリュウドライバでは、ねじは、スクリュウドライバシャフト上に予め装填しておくか、別々に供給することもできる。プレートがキットの一部として提供される場合には、プレートは、ステンレス鋼、チタン、ポリマーまたは生体適合性材料等の種々異なる材料で作ることができる。本発明は広範囲の使用を考えることができるが、カニューレねじシステムは、特に、顔面および頭蓋の骨折に適用できる。小プロファイルのねじは、ねじが、骨面を覆う筋肉組織(脂肪、筋肉等)が殆ど存在しない頭部領域に使用される場合に、ねじヘッドの突出を回避するのに特に有効である。更に、ねじおよび/またはプレートは、治癒が完了したときにこれらの固定要素を取出すための付加切開を形成する必要性を無くすことができる生吸収性材料で作ることもできる。
【0052】
また、本発明が関連する分野の当業者ならば、本発明の精神および範囲内で種々の変更が可能であることを理解すべきである。従って、本明細書の開示から当業者により容易に達成できかつ本発明の範囲および精神内に含まれるあらゆる好都合な変更は、本発明の他の実施形態として包含されるべきものである。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるものである。
【0053】
本発明に関連する好ましい態様として、例えば、以下のものをあげることができる。
〔態様1〕少なくとも1つの第一カニューレファスナ部材と、第一端部および第二端部および中間部を備えたスクリュウドライバ部材とを有し、第一端部は、骨に孔をドリリングするように構成されたカッティングブレードを備えた骨ファスナシステムにおいて、前記中間部は、ファスナ部材のカニューレ部内に受入れられるように構成された外面を備え、該外面および前記カニューレ部は、前記中間部の少なくとも一部がカニューレ部内に配置されると、ファスナ部材およびスクリュウドライバが互いに回転しないように固定される構造を有していることを特徴とする骨ファスナシステム。
〔態様2〕前記ファスナ部材のカニューレ部およびスクリュウドライバの中間部は両方とも多角形形状を有し、スクリュウドライバの多角形セクションがファスナ部材の多角形カニューレ部と係合し、これによりファスナ部材は、スクリュウドライバに取付けられかつカッティングブレードが骨に孔をドリリングするときに骨内にねじ込まれることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様3〕前記ファスナ部材はヘッド部分を有し、該ヘッド部分は骨または骨プレート面と係合するように構成された下面を備えたフランジを有することを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様4〕前記ファスナ部材は、骨と係合しかつ骨に切込むための少なくとも1つの刃溝を有していることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様5〕前記ファスナ部材はセルフタッピングねじ部を有していることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様6〕少なくとも1つの第二カニューレファスナ部材を更に有し、前記中間部は第一長さを更に有し、第一ファスナ部材および第二ファスナ部材の各々が第二長さを有し、前記第一長さは、少なくとも第一ファスナ部材および第二ファスナ部材を中間部に受入れることを可能にする充分な長さであることを特徴とする上記態様1記載の骨ファスナシステム。
〔態様7〕前記スクリュウドライバ部材は使い捨て可能であることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様8〕前記スクリュウドライバ部材は再使用可能であることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様9〕前記スクリュウドライバ部材は更に、第一端部および第二端部を備えたスプリングを有し、第一端部はスクリュウドライバの中間部と係合するように構成され、第二端部は第一ファスナ部材または第二ファスナ部材のヘッド部分と係合するように構成され、スプリング部材は更に、第一ファスナ部材および第二ファスナ部材をスクリュウドライバ部材の第一端部の方向に押圧するように構成されていることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様10〕前記スクリュウドライバ部材は更に、ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するためのスリーブを有していることを特徴とする上記態様9記載の骨ファスナシステム。
〔態様11〕前記スリーブの少なくとも一部は少なくとも部分的に透明であることを特徴とする上記態様10記載の骨ファスナシステム。
〔態様12〕前記スリーブは、一端に設けられたリップを有し、該リップは各ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする上記態様10記載の骨ファスナシステム。
〔態様13〕前記スリーブは更に、ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された少なくとも第一脚および第二脚を有することを特徴とする上記態様10記載の骨ファスナシステム。
〔態様14〕前記スクリュウドライバは更にラチェットシステムを有し、該ラチェットシステムは、凹部または突出部を備えた摺動部材と、スクリュウドライバの中間部を包囲する凹部または突出部を備えたスリーブと、前記摺動部材およびスリーブの凹部または突出部と係合するように構成された脚部材を備えたプランジャとを有し、スリーブ部材はスロットを備え、該スロット内で摺動部材が摺動して、骨ファスナ部材を、スクリュウドライバの第一端部の方向に軸線方向に前進させて骨内に挿入させることを特徴とする上記態様6記載の骨ファスナシステム。
〔態様15〕前記スリーブは、一端に設けられたリップを有し、該リップは各ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする上記態様14記載の骨ファスナシステム。
〔態様16〕前記スリーブは更に、ファスナ部材をスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された少なくとも第一脚および第二脚を有することを特徴とする上記態様14記載の骨ファスナシステム。
〔態様17〕カニューレ部の少なくとも一部が多角形に形成されたカニューレセルフタッピング骨ねじを骨に取付ける方法において、第一端部および第二端部と、ドリリングチップと、ねじのカニューレ部の多角形部分と係合する形状を有するシャフトとを備えたスクリュウドライバを用意する段階と、第一端部および第二端部を備えたスクリュウドライバをねじのカニューレ部内に挿入する段階と、骨の表面に対してスクリュウドライバのドリリングブレードを回転させる段階と、ねじが骨内に完全に係合するまでドリリングブレードの回転を続ける段階と、ねじのカニューレ部からスクリュウドライバを取出す段階とを有することを特徴とする方法。
〔態様18〕前記ねじはヘッド部分を有し、該ヘッド部分は骨または骨プレート面と係合するように構成された下面を備えたフランジを有することを特徴とする上記態様17記載の方法。
〔態様19〕前記ねじは、骨と係合しかつ骨に切込むための少なくとも1つの刃溝を有していることを特徴とする上記態様17記載の方法。
〔態様20〕前記スクリュウドライバの多角形セクションは、使用前に多数のねじの装填を受入れるのに充分な長さを有することを特徴とする上記態様17記載の方法。
〔態様21〕前記スクリュウドライバは使い捨て可能であることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様22〕前記スクリュウドライバは再使用可能であることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様23〕前記スクリュウドライバは更に、シャフトの肩部と、該肩部と係合するように構成された第一端部および少なくとも1つのねじのヘッド部分と係合するように構成された第二端部を備えたスプリングとを有し、該スプリングは更に、少なくとも1つのねじをスクリュウドライバの第一端部の方向に押圧するように構成されていることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様24〕前記スクリュウドライバは更に、ねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するためのスリーブを有していることを特徴とする上記態様23記載の方法。
〔態様25〕前記スリーブは透明であることを特徴とする上記態様24記載の方法。
〔態様26〕前記スリーブは、ねじが骨内に挿入されるまでねじを保持するリップを有していることを特徴とする上記態様24記載の方法。
〔態様27〕前記スリーブは更に、ねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された脚を有していることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様28〕前記スクリュウドライバはラチェットシステムを有し、該ラチェットシステムは、凹部および突出部を備えた摺動部材と、凹部および突出部を備えたスクリュウドライバのカニューレ部を包囲するスリーブと、摺動部材およびスリーブ部材の凹部または突出部と係合する脚部材を備えたプランジャとを有し、スリーブ部材はスロットを有し、該スロット内で前記摺動部材が摺動してねじを前進させ、骨内に挿入させることを特徴とする上記態様20記載の方法。
〔態様29〕前記スリーブは、一端に設けられたリップを有し、該リップはねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成されていることを特徴とする上記態様28記載の方法。
〔態様30〕前記スリーブは更に、ねじをスクリュウドライバに対して軸線方向に暫定的に保持するように構成された脚を有し、該脚は、スリーブ内のねじを視覚化できるように構成されていることを特徴とする上記態様28記載の方法。
〔態様31〕少なくとも1つのカニューレねじと、第一端部および第二端部および中間部を備えた少なくとも1つのスクリュウドライバ部材とを有し、第一端部は、骨に孔をドリリングするように構成されたカッティングブレードと、少なくとも1つのカニューレねじのカニューレ部内に受入れられるように構成されたシャフトとを備え、少なくとも1つの骨プレートを更に有することを特徴とするカニューレねじシステムキット。
〔態様32〕少なくとも1つのスクリュウドライバ部材は、中間部に沿って複数のねじを受入れるように構成されていることを特徴とする上記態様31記載のカニューレねじシステムキット。
〔態様33〕第一端部および第二端部および中間部を備えた少なくとも第二スクリュウドライバ部材を有し、中間部は、複数のカニューレねじを受入れるサイズを有しかつ構成されており、第二スクリュウドライバ部材は更に、第一端部および第二端部を備えたスプリング部材を備え、第一端部はスクリュウドライバの中間部と係合するように構成され、第二端部は1つのねじのヘッド部分と係合してねじをスクリュウドライバの第一端部の方向に押圧するように構成されていることを特徴とする上記態様31記載のカニューレねじシステムキット。
【符号の説明】
【0054】
100 骨ねじ
130 チップ
140 刃溝
152 ヘッドフランジ
200 単一ねじスクリュウドライバ
222 多角形シャフト
224 ドリリングチップ
300 スプリング進め型の多ねじスクリュウドライバ
400 ラチェット進め型の多ねじスクリュウドライバ
450 プランジャ
470 ラチェットスライド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨ファスナシステムであって、
少なくとも第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材を有し、これらの第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材のそれぞれは、ねじが設けられ、カニューレ部と、これらの第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材の遠位端で骨と係合しかつ骨に切込むことができる少なくとも1つの刃溝と、を備え、
前記骨ファスナシステムは、遠位端部、近位端部、及びこれらの遠位端部及び近位端部の間に位置する中間部を備えたスクリュウドライバ部材を有し、
前記スクリュウドライバ部材の遠位端部は、骨に孔をドリリングするように構成されたカッティングブレードを備えており、
前記スクリュウドライバ部材の中間部は、前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材のカニューレ部内に受入れられるように構成された外面を備え、
前記スクリュウドライバ部材の中間部の外面と前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材の前記カニューレ部とは、前記スクリュウドライバ部材が前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材に対して回転しないように固定され、前記第一ファスナ部材は、前記カッティングブレードが骨に孔をドリリングするときに骨内にねじ込まれることを特徴とする骨ファスナシステム。
【請求項2】
前記第一ファスナ部材のカニューレ部および前記スクリュウドライバ部材の中間部は、多角形形状を有し、前記スクリュウドライバ部材の多角形の中間部は、前記第一ファスナ部材の多角形のカニューレ部と係合することを特徴とする請求項1に記載の骨ファスナシステム。
【請求項3】
前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材は、ヘッド部分を備え、このヘッド部分は、骨または骨プレート面と係合するように構成された下面を備えたフランジを有し、前記スクリュウドライバ部材の中間部は第一長さを更に有し、第一ファスナ部材および第二ファスナ部材の各々が第二長さを有し、前記第一長さは、前記第一ファスナ部材および第二ファスナ部材を中間部に受入れることを可能にする充分な長さであることを特徴とする請求項1に記載の骨ファスナシステム。
【請求項4】
前記ファスナ部材はセルフタッピングねじ部を有していることを特徴とする請求項1記載の骨ファスナシステム。
【請求項5】
前記スクリュウドライバ部材は使い捨て可能であることを特徴とする請求項1記載の骨ファスナシステム。
【請求項6】
前記スクリュウドライバ部材は再使用可能であることを特徴とする請求項1記載の骨ファスナシステム。
【請求項1】
骨ファスナシステムであって、
少なくとも第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材を有し、これらの第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材のそれぞれは、ねじが設けられ、カニューレ部と、これらの第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材の遠位端で骨と係合しかつ骨に切込むことができる少なくとも1つの刃溝と、を備え、
前記骨ファスナシステムは、遠位端部、近位端部、及びこれらの遠位端部及び近位端部の間に位置する中間部を備えたスクリュウドライバ部材を有し、
前記スクリュウドライバ部材の遠位端部は、骨に孔をドリリングするように構成されたカッティングブレードを備えており、
前記スクリュウドライバ部材の中間部は、前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材のカニューレ部内に受入れられるように構成された外面を備え、
前記スクリュウドライバ部材の中間部の外面と前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材の前記カニューレ部とは、前記スクリュウドライバ部材が前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材に対して回転しないように固定され、前記第一ファスナ部材は、前記カッティングブレードが骨に孔をドリリングするときに骨内にねじ込まれることを特徴とする骨ファスナシステム。
【請求項2】
前記第一ファスナ部材のカニューレ部および前記スクリュウドライバ部材の中間部は、多角形形状を有し、前記スクリュウドライバ部材の多角形の中間部は、前記第一ファスナ部材の多角形のカニューレ部と係合することを特徴とする請求項1に記載の骨ファスナシステム。
【請求項3】
前記第一ファスナ部材及び第二ファスナ部材は、ヘッド部分を備え、このヘッド部分は、骨または骨プレート面と係合するように構成された下面を備えたフランジを有し、前記スクリュウドライバ部材の中間部は第一長さを更に有し、第一ファスナ部材および第二ファスナ部材の各々が第二長さを有し、前記第一長さは、前記第一ファスナ部材および第二ファスナ部材を中間部に受入れることを可能にする充分な長さであることを特徴とする請求項1に記載の骨ファスナシステム。
【請求項4】
前記ファスナ部材はセルフタッピングねじ部を有していることを特徴とする請求項1記載の骨ファスナシステム。
【請求項5】
前記スクリュウドライバ部材は使い捨て可能であることを特徴とする請求項1記載の骨ファスナシステム。
【請求項6】
前記スクリュウドライバ部材は再使用可能であることを特徴とする請求項1記載の骨ファスナシステム。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−5878(P2012−5878A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197472(P2011−197472)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【分割の表示】特願2006−541485(P2006−541485)の分割
【原出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【分割の表示】特願2006−541485(P2006−541485)の分割
【原出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(505377463)ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (186)
【Fターム(参考)】
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