説明

カバリング糸およびそれを用いた着圧ストッキング

【課題】着圧ストッキングに用いたとき、求められる柔らかい風合いを発現することができるカバリング糸とそれを用いたストッキングを提供すること。
【解決手段】カバリング糸の芯糸として、繊度が30〜80dtexの弾性繊維を用い、巻き糸として8〜15dtex、単糸繊度が0.6〜1.0dtex、扁平度が1.5〜5.0、かつ長軸に対して線対称であるカバリング糸。および該カバリング糸をレッグ部の少なくとも1部に用いたストッキング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着圧ストッキングに用いたとき、肌触りの柔らかさが極めて高く、太繊度の弾性繊維を使用することに由来する締め付け感の不快感を軽減することができるカバリング糸とそれを用いたストッキングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊度30dtex以上の弾性繊維をカバリング糸の芯糸に用いた着圧ストッキングは、脚を引き締める効果や脚のむくみ防止効果が評価されて広く用いられている。着圧ストッキングに用いるカバリング糸としては、芯糸として30〜80dtexの弾性糸を用い、巻き糸として繊度11dtex、フィラメント数8フィラメントや繊度13dtex、フィラメント数10フィラメントなどのポリアミドマルチフィラメント等が用いられている。一方、通常のストッキングは芯糸として22dtex程度の弾性繊維、巻き糸として繊度11dtex、フィラメント数5フィラメントや繊度13dtex、フィラメント数7フィラメントのポリアミドマルチフィラメントが一般的に用いられている。
【0003】
上記のとおり従来の着圧ストッキングは、弾性繊維の繊度が一般のストッキングに比べて太いもののポリアミドマルチフィラメントの繊度は、透明性を考慮して通常のストッキングと比較してそれほど変えられていない。かつ、単糸繊度を細くして肌触りを柔らかくしている。これは、締め付け感が強い着圧ストッキングは、肌への負担が大きいため、単糸繊度が細く、肌触りの柔らかいことが求められるからである。
【0004】
これに対して、特許文献1において凸レンズ型横断面形状のポリアミド長繊維を用いることによって、ストッキングの風合いをなめらかにして、さらさら感を高めることが提案されている。しかしながら、具体的に開示された芯糸は20dtex(18デニール)のポリウレタン弾性糸を用いていることからも判るように着圧ストッキングを狙いとしているものではない。そのため、具体的に示されたポリアミド長繊維は7デニール5フィラメントが用いられており、これを着圧ストッキングに転用しても風合いの柔らかさを追求という意味では、十分なものは得られない。
【0005】
また、特許文献2において、やわらかい風合いを発現させるために湾曲した長軸を有する単糸繊度が0.5〜7デニールであり、かつ扁平度が2〜5であり、扁平断面の弧の長さに対応する角度が70°〜180°の扁平型断面を有するポリアミド長繊維を用いた被覆弾性糸およびストッキングが提案されている。これも具体的に開示された芯糸は、20dtex程度であり、着圧ストッキングを狙いとしたものではない。また、具体的に開示された巻き糸としても12デニール7フィラメントおよび15デニール3フィラメントと単糸繊度が比較的太いものしか例示されていない。また、湾曲した長軸を有する扁平断面は、長軸に対して線対称な扁平断面に比べて曲げ易さにおいて劣るばかりか、曲げ易さに方向性があるため、カバリングの際、糸の反転が起きやすく、カバリングの被覆性を悪化させてしまうという問題点を有している。
【0006】
また、特許文献3には、着圧パンストの例が開示されている。かかる着圧ストッキングは、レッグ部に締め付け感を付与するものであるが、具体的例示として弾性糸(31dtex)を8dtex5フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを用いてシングルカバリング糸よりも被覆性の高いダブルカバリング糸としたり、弾性糸(33dtex)を太繊度である33dtexのウーリーナイロン糸を用いてシングルカバリング糸としている。これからも分かるように比較的太繊度の弾性糸をポリアミドマルチフィラメントでカバリングする場合、被覆性を上げるためにダブルカバリング糸としたり、比較的太繊度のポリアミドマルチフィラメントを用いることが行われていた。そのため、ラバータッチは軽減されるものの、風合いはダブルカバリング糸を用いた場合、単糸繊度も太いため、粗硬となり伸縮性は失われ、33dtexの太繊度のウーリーナイロン糸を用いた場合、タイツの風合いとなり、また共に透明感に劣るものしか得られていなかった。
【特許文献1】特開平10−331029号公報(段落番号[0008]〜[0015])
【特許文献2】特開平8−170221号公報(段落番号[0004]〜[0028])
【特許文献3】特開2005−273089号公報(段落番号[0003]〜[0007]、[0027]、[0029])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、着圧ストッキングに用いたとき、やわらかい風合いを発現するカバリング糸を提供することによって、さらに着圧ストッキングながら、着用時の不快感を低減するカバリング糸とストッキングを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、次の構成を採用するものである。
(1)カバリング糸の芯糸として、繊度が30〜80dtexの弾性繊維を用い、巻き糸として8〜15dtex、単糸繊度が0.6〜1.0dtex、扁平度が1.5〜5.0、かつ繊維断面形状が長軸に対して線対称であることを特徴とするカバリング糸。
(2)請求項1記載のカバリング糸をレッグ部の少なくとも1部に用いることを特徴とする着圧ストッキング。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記の構成を採用したカバリング糸を、着圧ストッキング等に用いたとき、柔らかい風合いを発現し、着圧ストッキングを着用している時の不快感を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の構成としては、カバリング糸の芯糸として、繊度が30〜80dtexの弾性繊維を用い、巻き糸として8〜15dtex、単糸繊度が0.6〜1.0dtex、扁平度が1.5〜5.0、かつ繊維断面形状が長軸に対して線対称であることを特徴とするカバリング糸である。
【0011】
すなわち、繊度が30〜80dtexと比較的太繊度の弾性繊維を芯糸に使用すること、さらに巻き糸としてストッキングのカバリング糸用途として透明性と耐久性を満たす8〜15dtexとし、単糸繊度0.6〜1.0dtexと単糸繊度が細く、かつ扁平度が1.5〜5.0かつ長軸に対して長軸に対して線対称であるのポリアミドマルチフィラメントを用いることによって、極めて曲げ柔らかい巻き糸となる。
【0012】
ここで、単糸繊度を0.6〜1.0dtexとする理由としては、細くすることにより曲げ柔らかさを向上させるためである。細い方が効果は高いが、0.6dtex未満では摩耗耐久性を維持するため好ましくない。一方、1.0dtexを越える単糸繊度では柔らかさを実感し難いために好ましくない。
【0013】
また、扁平度を1.5〜5.0dtexとし、かつ繊維断面形状が長軸に対して線対称とする理由としては、曲げ柔らかくすると共に曲げ易さに異方性を作らないためである。単糸繊度を細く、かつ扁平断面とすることにより、曲げ柔らかくなる。特に短軸方向に曲げることは容易であるため、カバリングへの被覆性が向上すると共に触り心地が極めて柔らかくなる。さらに長軸に対して線対称とすることにより、曲げ柔らかく、曲げ易さの方向性も短軸方向に方向性がない。これは、カバリング糸の巻き糸としては重要であり、非対称で、曲げ易さに差がある場合、反転しやすく、カバリングの被覆性を悪化させてしまう。ここで、繊維断面形状とは繊維を繊維軸方向とは垂直に切断したときの断面形状を指す。また、扁平度は、繊維の任意の位置にて横断面方向に薄切片を切り出し、透過顕微鏡で繊維横断面を単糸本数として100本撮影し、倍率1000倍でプリントアウトした後、スキャナーを用いて取り込み(白黒写真、400dpi)、ディスプレー上で1500倍に拡大した状態で、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて外接円OLの直径Lと内接円ICの直径Sの比L/Sを算出し、100本から得られた値の数平均値から扁平度=L/Sを求めた。
【0014】
カバリング糸を用いるストッキングは大きく2つに区分される。レッグ部が全てカバリング糸から構成された、いわゆるゾッキと、カバリング糸と生糸(交編糸)が交互に編成された交編である。いずれにおいてもカバリング糸に用いる弾性繊維の繊度は20dtex程度が広く用いられている。
【0015】
ここで、繊度が30〜80dtexの弾性繊維とは、比較的太繊度であり、着圧ストッキングや補正効果の高いインナー用途等に用いられるものである。ここで着圧ストッキングとはハトラー社製靴下圧力測定機 mk.3を用いて足首部分における被服圧を測定したとき、11hPa程度以上と通常のストッキングでの7hPa程度と比べて高く、締め付け効果の高いストッキングである。締め付け感や補正効果の高さからニーズが高いものの、着圧が高く、締め付け感が強いために、通常の巻き糸(11dtex−5filや13dtex−7fil)では粗硬感が感じられ、従来は単糸繊度がやや細い(11dtex−8filや13dtex−10fil)丸断面のポリアミドマルチフィラメントが用いられてきた。しかしながら、風合いの柔らかさを求めるニーズは高く、単糸のさらなる細繊度化と共に繊維断面形状が長軸に対して線対称である扁平断面とするものである。
(1)単糸繊度を細繊度化すること、(2)繊維断面形状が長軸に対して線対称であること、(3)扁平断面であることの3つを同時に満たすことによって、単一または3つの内の2つを同時に満たすだけでは到達し得ない柔らかい風合いが得られ、芯糸に対して被覆性が良くなる。この理由としては、単糸繊度が細く、かつ扁平断面であるために短軸方向に曲げ易くなることである。また、長軸に対して線対称であるために、短軸の2方向どちらにも曲げやすいことも柔らかさに寄与している。さらに長軸に対して線対称でない場合のように曲げやすい方向性が生じてしまうことによるカバリング中の反転が起こることがないため、芯糸に対してきれいに巻き付き、被覆性が良くなるためである。なお、本発明において、線対称であるとは、単糸の一本一本が厳密に線対称である必要はなく、略線対称であればよい。その理由は線対称の断面形状の繊維を吐出するための口金を用いて吐出・製糸する際の条件のゆらぎ等の要因により若干変動する場合もあるためである。
【0016】
具体的には、カバリング糸の巻き糸として用いるポリアミドマルチフィラメントの繊度は8〜15dtexとするものである。中でも耐久性と透明性のバランスからポリアミドマルチフィラメントの繊度として、9〜13dtexがより好ましく、同様な理由から10〜12dtexが特に好ましい。8dtex未満では比較的太い弾性繊維に耐えうる強力が得られず、耐久性に問題となるため好ましくない。一方、15dtexを越える場合、耐久性には優れるものの透明性の低下が著しいことから、好ましくない。
【0017】
カバリング糸の巻き糸としてポリアミドマルチフィラメントを用いる理由は、破裂強さと共に摩耗特性、柔らかさから最も実用的であるためである。
【0018】
本発明でいうポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミドであることが好ましい。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではそれを構成するε−カプロアミド単位として、ポリヘキサメチレンアジパミドではそれを構成するヘキサメチレンアジパミド単位として80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に制限されないが、ポリカプロアミドの場合は、ヘキサメチレンアジパミド単位、ポリヘキサメチレンアジパミドの場合には、カプロアミド単位の他、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。
【0019】
本発明でいうポリアミドの重合度は、必要とする糸強度、初期引張抵抗度等を考慮して適宜選択して良いが、98%硫酸相対粘度で2.0〜3.5の範囲が好ましい。
【0020】
さらに必要に応じて光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、末端基調節剤、染色性向上剤等が添加されていてもよい。また、紫外線吸収や接触冷感、抗菌性等の付与のため、無機粒子や有機機能剤の添加を行うことも可能である。しかしながら、製糸性や耐久性が低下してしまうため、1μmを超える無機粒子の添加は好ましくなく、白色顔料も含めて無機粒子の添加は限定されるものではないが、繊維中2.0重量%以下であることが好ましく、繊維中1.0重量%未満であることがより好ましい。
【0021】
カバリング形態としては、本発明のカバリング糸はシングルカバリングとすることが好ましい。ダブルカバリングとした場合、被覆性は向上するため、ラバータッチは軽減するが、カバリング条件によってはカバリング糸の糸直径が太くなるため、透明性が低下すること、さらに伸長性が低下するため好ましくない場合があるので注意を要する。
【0022】
カバリング糸の芯糸として、繊度が30〜80dtexの弾性繊維を用いるものである。繊度が30dtex未満では、締め付け感が十分でなく、80dtexを越える繊度を用いる場合、芯糸が太いために芯糸が露出しないように、ダブルカバリングを行って被覆性を向上させたり、より太繊度のポリアミドマルチフィラメントを用いる必要があるため、適度な締め付け感を得ながら透明性を維持するためには、この範囲とする必要がある。同様な理由から透明性と締め付け感のバランスとして、33〜50dtexがより好ましく、35〜45dtexが特に好ましい。
【0023】
弾性繊維としては、ポリウレタン系弾性繊維、ポリアミド系エラストマ弾性繊維、ポリエステル系エラストマ弾性繊維、天然ゴム系繊維、合成ゴム系繊維、ブタジエン系繊維等が用いられ、弾性特性や熱セット性、耐久性等により適宜選択すればよい。中でも上記特性から好ましいのは、ポリウレタン系弾性繊維である。
【0024】
カバリング撚数としては被覆糸の繊度、収縮率や製品風合い、透明性、耐久性を考慮して設計すればよい。カバリング撚数を上げると見かけ太さが細くなるため、透明性が向上する方向にあるが、上げすぎると弾性糸を締め付けすぎて耐久性が落ちたり、カバリング工程の生産性が低下する傾向にあるため、好ましくない。また、カバリング撚数が低すぎると被覆性が低下して耐久性と透明性が低下する傾向にある。したがって例えば、11デシテックスの被覆糸をシングルカバリングする時には1800〜2400T/mを目安に設計することが好ましい。また、ドラフト倍率も使用する弾性繊維と狙いとする着圧に合わせて設計すればよく、一般に2.5〜3.5倍に設定することが好ましい。
【0025】
なお、カバリング糸を製造する場合は、常法のカバリング加工を実施すればよい。例えば、繊維の百科事典(丸善株式会社、平成14年3月25日発行、p439)に記載の加工を実施すればよい。すなわち一例を挙げると弾性繊維を定速で引きだし、2つのローラー間で一定のドラフトをかけた状態で、予めHボビンに巻き付けた巻き糸を弾性繊維に一定のカバリング撚数にて巻き付け、得られたカバリング糸をチーズに巻き取るものである。
【0026】
弾性繊維は丸断面であることが好ましく、透明性が得やすいため、モノフィラメントであることが好ましい。
【0027】
本発明のポリアミドマルチフィラメントを直紡法にて得る方法は、本発明のポリアミドマルチフィラメントが得られる限り、限定されるものではない。一例を挙げると口金を保温しながら、口金近傍で糸条走行方向に対して垂直方向かつ一方向に冷却風を当てるユニフロー方式の冷却が挙げられる。
【0028】
一方、単糸細繊度の扁平断面ポリアミドマルチフィラメントを斑なく得るために、環状に吐出孔を配置した口金から溶融ポリマーを吐出させ、口金中心から放射状方向、または口金吐出孔を取り囲むように円周方向から口金中心方向に冷却風を流すいわゆる環状冷却装置を用いることが好ましく用いられる。冷却開始距離は口金面から10〜100mmと比較的近い距離が好ましい。また、冷却長としては、100〜1000mm程度とすることが好ましい。
【0029】
冷却後、給油ガイドにて給油を行い、1500〜4500m/min程度で引取り(第1ゴデーローラー)、次の第2ゴデーローラーとの間で1.0〜2.5倍程度の延伸を行った後で、3000m/min以上で巻き取ることができる。この際、第1ゴデーローラーと第2ゴデーローラーの間の延伸倍率(延伸倍率が高いと伸度は低くなる)、巻取速度(巻取速度が高いと低くなる)を適切に設計することにより、狙いとする伸度を得ることが可能となる。また、第2ゴデーロールを150〜170℃の加熱ロールとすることで熱処理を行うことは好ましく行われる。各ゴデーロールはネルソンローラー、駆動ローラーに従動型のセパレートローラがついたもの、さらに片掛けローラーのいずれでも問題はない。またローラーとフィラメントの滑りを抑制するためにローラーの表面状態を平滑にしたり、糸離れを良くするために第2ゴデーロールを溝付きにしたり、梨地としてもよい。
【0030】
油剤はガイド給油などによってマルチフィラメントに付与され、巻取時の有効成分付着量はマルチフィラメント重量当たり0.8〜1.3重量%程度が好ましい。油剤の付与は紡糸工程中、1度でも複数回に分けて行われても問題ない。複数回に分けて行う場合には、有効成分量が低い油剤を付与した後、有効成分量が高い油剤を付与することが好ましい。
【0031】
油剤としては、潤滑剤、制電剤、乳化剤、添加剤などを混合分散して用いることができる。潤滑剤の例としては、脂肪族エステル、ポリエーテル、鉱物油などがあげられる。制電剤の例としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などのイオン界面活性剤を適用できる。乳化剤としてはノニオン系乳化剤を適用でき、また添加剤としては、毛羽防止剤、浸透性向上剤、外観調整剤、抗酸化剤、防腐剤などを適宜使用することができる。
【0032】
ポリアミドマルチフィラメントとしても強度を高めることは、ストッキングの耐久性向上のためにも有効である。具体的には強度4.5cN/T以上、伸度40〜50%とすることが好ましい。強度は高いほうがより好ましいが、低伸度にしてまで強度を上げたとしても編み物においては、破裂の際、力を分担して負担する糸条数が減少してしまうため、逆に編物の破裂強さを低下させてしまう。同様な理由から伸度を維持しながら強度は5.0cN/T以上であることがより好ましく、5.5cN/Tであることが特に好ましい。一方、強度を高くすべく、低伸度に設計しすぎると、編成が難しくなること、さらに編物の風合いが粗硬となりやすくなるため、強度は7.5cN/T以下であることが好ましい。
【0033】
強度4.5cN/T以上、伸度40〜50%とする手段としては、下記に好ましい態様を示すが、これに限定されるものではない。ポリアミドの重合度は、98%硫酸相対粘度で2.5〜3.5の範囲が好ましい。また、1800〜3000m/min程度で引取り(第1ゴデーローラー)、次の第2ゴデーローラーとの間で1.3〜2.5倍程度の延伸を行った後で、3000〜4500m/min程度で巻き取る方法が好ましい。この際、第1ゴデーローラーと第2ゴデーローラーの間の延伸倍率(延伸倍率が高いと伸度は低くなる)、巻取速度(巻取速度が高いと低くなる)を適切に設計することにより、狙いとする伸度を得ることが可能となる。さらに、第2ゴデーロールを150〜170℃の加熱ロールとして熱処理を行うことで、強度を高くすることができる。
【0034】
本発明のカバリング糸は、ストッキングに用いることで、適度な締め付け感と共に透明性が得られると共に、着圧ストッキングとして問題となるラバータッチを軽減したやわらかい風合いのストッキングとなる。ここで、ストッキングとは、パンティーストッキング、ロングストッキング、ショートストッキングで代表されるストッキング製品が挙げられ、レッグ部とは、例えばパンティーストッキングの場合、ガーター部からつま先までの範囲を指す。
【0035】
また、ストッキングの編機として、通常の靴下編み機を用いることができ、制限はなく、2口あるいは4口給糸の編機を用い、本発明のカバリング糸を供給して編成するという通常の方法で編成すればよい。カバリング糸のみから構成されたいわゆるゾッキストッキングとする場合、S方向カバリングのシングルカバリング糸とZ方向カバリングのシングルカバリング糸とを交互に編む方法が好適である。その他シングルカバリング糸と生糸との交編が挙げられる。なかでもカバリング糸のみから構成されたいわゆるゾッキストッキングとした場合、いわゆる縞のないきれいな生地表面とすることができること、さらにやわらかい風合いが生かされることから好ましい。
【0036】
さらに編機の針本数としてはおおむね300〜440本が用いられ、針本数が少ないほど、透明性は高くなるが、破裂強さは劣り、針本数が多くなるほど破裂強さは向上するが、透明性は低下する傾向にある。したがって、使用する巻き糸、弾性繊維の繊度と狙いとする耐久性、透明性、着圧に合わせて選択することができる。一例として巻き糸11デシテックス、弾性繊維42dtexのとき、針本数360〜400本とすることが好ましい。
【0037】
さらに編成後の染色やそれに続く後加工、ファイナルセット条件についても公知の方法にしたがい行えばよく、染料として酸性染料、反応染料を用いることやもちろん色なども限定されるものではない。
【0038】
また、上記カバリング糸は、発色性、被覆性、肌触りに優れ、肌着用の丸編にも好ましく用いられる。肌着として用いる場合は、丸編みの供給糸のうち一部、もしくは全部を本カバリング糸とすることにより、適度な締め付け感とやわらかい風合いが得られる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0040】
なお、実施例および比較例における各測定値は、次の方法で得たものである。
【0041】
A.繊度
JIS L 1013−1999 8.3.1繊度 正量繊度A法に準じて測定を行った。
【0042】
B.98%硫酸相対粘度(ηr)
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(2)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}。
【0043】
C.扁平度測定
被覆糸に用いる繊維の任意の位置にて横断面方向に薄切片を切り出し、透過顕微鏡で繊維横断面を単糸本数として100本撮影し、倍率1000倍でプリントアウト(三菱電機社製SCT−P66)した後、スキャナー(エプソン社製GT−5500WINS)を用いて取り込み(白黒写真、400dpi)、ディスプレー上で1500倍に拡大した状態で、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて外接円OLの直径Lと内接円ICの直径Sの比L/Sを算出し、100本から得られた値の数平均値から扁平度=L/Sを求めた。
【0044】
D.強度・伸度測定
JIS L 1013−1999 8.5.1引張強さ及び伸び率 標準時試験に準じて測定を行った。試験条件としては、試験機の種類としては定速緊張形、つかみ間隔50cmにて行った。なお、強度(cN/dtex)=引張強さ(cN)/繊度(dtex)
【0045】
E.ストッキング評価
ストッキング開発熟練者3名が大腿部まで着用し、着圧、透明性、風合いについて評価した。
【0046】
(a)柔らかさ:着用した状態でふくらはぎ部分を撫でるように触り、通常市販品(芯糸42T、巻き糸13dtex10フィラメントのカバリング糸を用いたゾッキパンスト)レベルを△とし、風合いの柔らかさの優れた方から◎→○→△→×としている。○は通常市販品レベルよりも柔らかさが優れているレベルであり、◎は通常市販品レベルよりも特に優れているレベルである。また×は通常市販品レベルよりも柔らかさが劣っているレベルである。
【0047】
(b)透明性:評価サンプルとして、精練を行い、染色せずにその後の仕上げ工程を行ったものを用い、白色生地で評価した。破裂強さに用いた足形に履かせた上で足形の色が透けてよく見えるレベルを◎とし、足形の色が見えなくなるにしたがって、○→△→×としている。商品特性として必要な透明性は、○レベル以上としており、△は商品特性として未達のレベルであり、×は商品特性として大きく劣るレベルである。
【0048】
(c)破裂強さ:ストッキング製品を足形に履かせ、踵から大腿部方向に60cmの位置にガーター部を合わせた上で、踵から大腿部方向に52.5cmの位置を中心として、足形の大腿部裏側に測定枠の大きさに合わせて円形の印を付けておく。測定枠に製品を固定する際には先につけた円形の印に合わせて固定することで、着用状態と同じ状態で破裂強さを測定するものである。破裂強さは、JIS L1018−1999 8.17.2 B法(定速伸長形法)に従い測定した。
【0049】
なお、足形は人間の足に似せて作成しており、つま先から踵までの長さが23.5cm、つま先から足の裏方向に13.5cm離れた土踏まず部分の周長が22.5cm、踵から大腿部方向に8cmの足首部の周長が22cm、踵から大腿部方向に25cmのふくらはぎ部の周長が34.5cm、踵から大腿部方向に43cmの膝裏部の周長が37cm、踵から大腿部方向に50cmの大腿部の周長が39.5cm、踵から大腿部方向に60cmの大腿部の周長が48cmとなっている。
【0050】
実施例1
98%硫酸相対粘度2.8で酸化チタンを含まないポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=1.3、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス16フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.3cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度2.5)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0051】
カバリング糸の芯糸として「モビロン」Kタイプ42dtex−1フィラメント(日清紡社製)を用いて、ドラフト倍率3.5倍、カバリング撚数2400T/mにてカバリングを行った。
【0052】
上記カバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数400本)で、S方向シングルカバリング糸とZ方向シングルカバリング糸とを交互に編機の給糸口に供給し、レッグ部編地がカバリング糸のみで編成した。精練・染色(98℃×20min)、仕上げ及び型板セット(スチームセット、110℃×60sec)してパンティーストッキング製品とした。
【0053】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有していた。また、透明性、耐久性とも商品特性をクリアーしていた。
【0054】
実施例2
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=1.3、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス12フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.5cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度2.5)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0055】
カバリング糸の芯糸として実施例1と同じ糸、同条件にてカバリングを行った。
上記カバリング糸を用いて実施例1と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0056】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有していた。また、透明性、耐久性とも商品特性をクリアーしていた。
【0057】
実施例3
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=1.3、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス18フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.3cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度2.5)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0058】
カバリング糸の芯糸として実施例1と同じ糸、同条件にてカバリングを行った。
【0059】
上記カバリング糸を用いて実施例1と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0060】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有していた。また、透明性、耐久性とも商品特性をクリアーしていた。
【0061】
実施例4
98%硫酸相対粘度2.8で酸化チタンを含まないポリヘキサメチレンジアミドチップを290℃で溶融した。実施例1とはポリマー吐出量を変更した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=1.3、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.22ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス14フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.3cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度3.0)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0062】
カバリング糸の芯糸として「モビロン」Kタイプ38dtex−1フィラメント(日清紡社製)を用いて、ドラフト倍率3.5倍、カバリング撚数2800T/mにてカバリングを行った。
【0063】
上記カバリング糸を用いて実施例1と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0064】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有していた。また、透明性、耐久性とも商品特性をクリアーし、透明性に優れていた。
【0065】
実施例5
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。吐出孔形状としては、ラグビーボール型のスリット形状を有する吐出孔(吐出孔のスリット長手方向長さ/幅方向長さ=3.5、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス16フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.3cN/dtex、伸度45%、断面形状凸レンズ型、扁平度1.8)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0066】
カバリング糸の芯糸として「モビロン」Kタイプ56dtex−1フィラメント(日清紡社製)を用いて、ドラフト倍率3.5倍、カバリング撚数2400T/mにてカバリングを行った。
【0067】
上記カバリング糸を用いて永田精機(株)製 MODEL KT−S4(針数360本)を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0068】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、やわらかな風合いを有していた。また、透明性、耐久性とも商品特性をクリアーしていた。
【0069】
実施例6
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。実施例1とはポリマー吐出量を変更した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=1.3、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.35ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、13デシテックス18フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.3cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度2.5)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0070】
カバリング糸の芯糸として「モビロン」Kタイプ78dtex−1フィラメント(日清紡社製)を用いて、ドラフト倍率3.5倍、カバリング撚数2300T/mにてカバリングを行った。
【0071】
上記カバリング糸を用いて実施例5と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0072】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有していた。また、透明性、耐久性とも商品特性をクリアーしていた。
【0073】
比較例1
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。実施例1とはポリマー吐出量を変更した。紡糸口金において全面に配した丸型の吐出孔から吐出し、片面から一方向に冷却風を吹き出すユニフロー型冷却装置を用いて冷却し、給油ガイドから実施例1と同じ油剤を0.35ml/minを吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、13デシテックス10フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度6.0cN/dtex、伸度45%)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0074】
カバリング糸の芯糸として「モビロン」Kタイプ42dtex−1フィラメント(日清紡社製、密度1.20g/cm)を用いて、ドラフト倍率3.5倍、カバリング撚数2300T/mにてカバリングを行った。
上記カバリング糸を用いて実施例1と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0075】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、実施例1の製品と比較して柔らかな風合いに欠け、従来の商品レベルであった。
【0076】
比較例2
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=2.1、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス16フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.6cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度1.3)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0077】
カバリング糸の芯糸として実施例1と同じ糸、同条件にてカバリングを行った。
上記カバリング糸を用いて実施例1と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0078】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、実施例1の製品と比較して柔らかな風合いに欠け、従来の商品レベルであった。
【0079】
比較例3
実施例1で用いたポリカプロアミドチップを280℃で溶融した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=24.0、D/H=2.1、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、11デシテックス16フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度3.3cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度6.0)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0080】
カバリング糸の芯糸として実施例1と同じ糸、同条件にてカバリングを行った。
上記カバリング糸を用いて実施例1と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0081】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めて柔らかいものの、破裂強さが低く、実用レベルに達していなかった。
【0082】
比較例4
実施例4で用いたポリヘキサメチレンジアミドチップを290℃で溶融した。実施例1とはポリマー吐出量を変更した。吐出孔形状としては、スリットの両端に丸孔を有する吐出孔(吐出孔のスリット幅H、スリット方向の吐出孔長さをN、丸孔の直径をDとしたとき、N/H=4.4、D/H=1.3、スリット長手方向は冷却風に対して垂直方向に配置、実施例1に対して吐出孔数を変更)を用い吐出し、円柱状のフィルターから内向きに冷却風を吹き出す内吹き環状冷却装置(口金面からの冷却開始距離:36.5mm、冷却長:300mm)を用いて冷却し、その後給油ガイドから0.30ml/minの油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)を吐出させてマルチフィラメントに給油し、交絡ノズル(圧空圧0.2MPa)にて交絡を付与した後、第1ゴデーローラーに片掛けすることによって引取りを行い、引き続き、伸度が45%になるように第2ゴデーローラーとの間で延伸した後、155℃で加熱した第2ゴデーローラーに片掛けすることによって熱処理してから4000m/分で巻き取り、16デシテックス28フィラメントのポリアミドマルチフィラメントを得た(強度5.3cN/dtex、伸度45%、断面形状小判型、扁平度3.0)。ポリアミドマルチフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0083】
カバリング糸の芯糸として実施例1と同じ糸、同条件にてカバリングを行った。
上記カバリング糸を用いて実施例5と同じ靴下編み機を用いてストッキングを製編し、実施例1と同様に染色・仕上げを行い、パンティーストッキング製品とした。
【0084】
得られたパンティーストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有しているものの、ストッキングとしては透明性に乏しく、商品性を有していなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
製品として実施例のストッキングは、ふくらはぎを触った際、極めてやわらかな風合いを有していた。一方、比較例1、2は従来商品レベルの柔らかさであった。これは、実施例のストッキングに用いているカバリング糸の巻き糸が、単糸繊度が0.6〜1.0dtex、扁平度が1.5〜5.0、かつ長軸に対して線対称であるため、曲げ柔らかいためである。
【0088】
一方、比較例1は単糸繊度が太く、丸断面であるため、比較例2では扁平度が1.3と低いために肌触りの柔らかさが十分ではなかった。
【0089】
さらに比較例3では扁平度6と高いため、柔らかい風合いは有しているものの、糸強度が低く、ストッキングとしても実用強度を有していなかった。
【0090】
また、比較例4では、繊度が16dtexと太いためにストッキングとしては透明性に欠け、商品性に乏しかった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1のポリアミドマルチフィラメントの横断面図
【図2】吐出孔形状の一例
【符号の説明】
【0092】
OC:外接円、IC:内接円、L:外接円の直径、S:内接円の直径、H:スリット幅、N:吐出孔長さ、D:丸孔の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバリング糸の芯糸として、繊度が30〜80dtexの弾性繊維を用い、巻き糸として8〜15dtex、単糸繊度が0.6〜1.0dtex、扁平度が1.5〜5.0、かつ繊維断面形状が長軸に対して線対称であることを特徴とするカバリング糸。
【請求項2】
請求項1記載のカバリング糸をレッグ部の少なくとも1部に用いることを特徴とする着圧ストッキング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−203563(P2009−203563A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44537(P2008−44537)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】