説明

カバーの取付構造、及び槓桿式秤

【課題】槓桿式秤が備えるカバーの天板に対する荷重の負荷面積や位置や大きさに応じて生じる計量値の誤差を抑えることのできるカバーの取付構造を提供する。
【解決手段】カバー2の天板部21とベース3の底板部31との間には、サイドスプリング9a〜9dが取り付けられている。サイドスプリング9a〜9dは、カバー2の前側で天板部21を支持するカバーエッジ23間を結ぶ前側変形支点と、カバー2の後側で天板部21を支持するカバーエッジ23間を結ぶ後側変形支点とで挟まれる縦荷重受位置側とその反対側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて配置され、また、カバー2の左側で天板部21を支持するカバーエッジ23間を結ぶ左側変形支点と、カバー2の右側で天板部21を支持するカバーエッジ23間を結ぶ右側変形支点とで挟まれる横荷重受位置側とその反対側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槓桿式秤が備えるカバーの天板をベースの底板側に付勢して天板を支持するカバーの取付構造、及び槓桿式秤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カバーをベースに取り付けて構成される槓桿式秤としては、下記の特許文献1に記載の体重計が開示されている。この体重計は、ベースの内面の4隅にある各支点エッジで、それぞれベースの中央部側に向けて延びた各槓桿の一端を支持している。ベースの前側隅部の支点エッジで支持された各長機槓桿は、ベースの後端部まで延びてその先端部を受け台で支持されている。ベースの後側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿の他端は、ベースの前側隅部の支点エッジで支持された各長機槓桿の中央部で支持されている。受け台はロードセルの可動部に取り付けられている。
【0003】
カバーの内面の4隅の中央部寄りに設けられたカバーエッジには、それぞれ重点エッジが取り付けられている。各重点エッジは、それぞれ各槓桿に支持されている。ベースとカバーとの間には引っ張りバネが介装されており、この引っ張りバネによりカバーがベース側に付勢されて、ベースに対するカバーの取付位置が所定の位置に保たれている。
【0004】
上方からカバーに加えられた荷重は、カバーエッジから重点エッジを介して各槓桿に伝達される。これにより、ベースの後側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿が、前側隅部の支点エッジで支持された長機槓桿を下方に付勢する。ベースの前側隅部の支点エッジで支持された長機槓桿は、カバーから直接加えられる荷重と、ベースの後側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿から加えられる荷重とを、受け台を介してロードセルに伝達する。これによりカバーに加えられた荷重がロードセルで検知され、体重が計量される。
【0005】
【特許文献1】特開平8−86686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の体重計では、カバーの上に足を載置する際に加えられる荷重により、各カバーエッジで囲まれた天板の荷重受位置が、各カバーエッジの取付位置を支点として下方に撓み、撓んだ部分でカバーを付勢している引っ張りバネの伸長量が短くなり、引っ張りバネによる付勢力が小さくなる。天板には荷重の負荷面積や位置や大きさに応じた撓みが生じることから、天板に対する荷重の負荷面積や位置や大きさに応じて引っ張りバネによる付勢力が変化し、これに伴い槓桿からロードセルに伝達される荷重も変化して、計量値に誤差が生じることがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することのできるカバーの取付構造、及び槓桿式秤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この欄の記載は特許請求の範囲の記載に応じて変更されます。
このような課題を解決するために、本発明のカバーの取付構造は、槓桿式秤が備えるベースの底板に荷重を受けるカバーの天板を対面させ、付勢手段により前記天板を前記底板側に付勢して、前記天板を支持するカバーの取付構造であって、荷重受位置で荷重を受けて変形する前記天板の変形支点を挟んだ前記荷重受位置側とその反対側とに、前記変形支点を支点とする前記天板の変形に伴い生じる付勢力の変化を互いに相殺する位置に、それぞれ前記付勢手段を配置したことを特徴とする。
また、本発明は、前記天板の前記変形支点を挟んだ前記荷重受位置側とその反対側とに、それぞれ前記変形支点から等しい距離をあけて、一対の前記付勢手段を配置したことを特徴とする。
また、本発明は、矩形の前記天板の四隅に設けられた支持位置のうちの隣り合う隅部に設けられた前記支持位置同士を結んで向かい合う一対の前記変形支点を備え、前記一対の変形支点間に位置する前記天板の前記荷重受位置側と、その反対側の外側とに、それぞれ各前記変形支点から等しい距離をあけて、前記一対の付勢手段を配置したことを特徴とする。
また、本発明は、前記付勢手段は、前記天板及び前記底板の一方を貫通する貫通孔を挿通して一端を前記貫通孔の周縁部に係止されると共に、他方の前記天板又は前記底板に他端を固定されて、前記天板を前記底板側に付勢する引張コイルバネから構成され、前記貫通孔の周縁部が前記一方の天板又は底板の内側に向けて屈曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷重を受けて撓んだ天板に付勢手段により加えられる付勢力の変化を抑えられることから、天板に対する荷重の負荷面積や位置や大きさに応じて生じる計量値の誤差を抑え、精度の高い計量を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の体重計1を上方から見た斜視図である。また、図2は、体重計1のカバー2を内面側から見た斜視図である。また、図3は、体重計1のベース3を内面側から見た斜視図である。
【0011】
図1に示すように、体重計1は、荷重の加えられるカバー2を、ベース3に取り付けて構成されている。カバー2の外面は平坦に構成されており、後端部の左右方向の中央部には、カバー2に加えられた荷重を計量値として表示する表示部2aが設けられている。表示部2aは、カバー2の内面側からカバー2の外面側を臨んで配置されている。カバー2の外面の左右方向の両側部は、それぞれ被験者が左右の足を載置する載置部2bとなっている。
【0012】
図2に示すように、カバー2は、略四角形状の板状体から構成される天板部21と、この天板部21の縁部から内面側に延びる側壁部22a〜22dとを備えて構成されている。天板部21の内面の各側壁部22a〜22dの近傍には、後述するサイドスプリング9a〜9dが備えるフック部92の掛けられる係止片28a〜28dが形成されている。係止片28aは後側壁部22aの左端側の近傍に,係止片28bは右側壁部22bの後端側の近傍に,係止片28cは前側壁部22cの右端側の近傍に,係止片28dは左側壁部22dの前端側の近傍に、それぞれ1つずつ設けられている。
【0013】
また、天板部21の内面の四隅にはカバーエッジ23が固定されている。カバーエッジ23には、平板体から構成された重点エッジ24が、図2中の矢印A方向に揺動自在に取り付けられている。天板部21の前端側の左右の隅部に位置するカバーエッジ23は、重点エッジ24の一主面を天板部21の後端側の左右の幅方向の中央部に向けて天板部21に固定されている。また、天板部21の後端側の左右の隅部に位置するカバーエッジ23は、重点エッジ24の一主面を天板部21の前端側に向けて天板部21に固定されている。
【0014】
図3に示すように、ベース3は、略四角形状の板状体から構成される底板部31と、この底板部31の縁部から内面側に延びる側壁部32a〜32dとを備えて構成されている。底板部31の内面の各側壁部32a〜32dの近傍には、後述するサイドスプリング9a〜9dの係止部93の係止されるバネ固定孔35a〜35dが形成されている。
【0015】
バネ固定孔35a〜35dの周囲の底板部31は、ベース3の内側に屈曲しており、この屈曲部分には後述するサイドスプリング9a〜9dの係止部93が収容される。バネ固定孔35aは後側壁部32aの左端側の近傍に,バネ固定孔35bは右側壁部32bの後端側の近傍に,バネ固定孔35cは前側壁部32cの右端側の近傍に,バネ固定孔35dは左側壁部32dの前端側の近傍に、それぞれ設けられている。
【0016】
また、底板部31の内面の四隅には、ベースエッジ33が固定されている。各ベースエッジ33は、その上縁から下縁側に向けて延びる切込溝34aが形成された支点エッジ34を備えている。底板部31の前端側の左右の隅部に位置するベースエッジ33は、支点エッジ34の一主面を底板部31の後端側の左右の幅方向の中央部に向けて底板部31に固定されている。また、底板部31の後端側の左右の隅部に位置するベースエッジ33は、支点エッジ34の一主面を底板部31の前端側に向けて底板部31に固定されている。
【0017】
底板部31の前端側のベースエッジ33が備える各支点エッジ34は、それぞれ短機槓桿4の基端部4bを支点溝41で支持している。各短機槓桿4は、先端部4aに挿通された略四角環状の中間エッジ6を作用点溝43で受け、基端部4b寄りの中央部4cに形成された重点溝42で重点エッジ24を受ける。
【0018】
また、底板部31の後端側のベースエッジ33が備える各支点エッジ34は、それぞれ長機槓桿5の基端部5bを支点溝51で支持している。各長機槓桿5は、先端部5a寄りの中央部5cに挿通された中間エッジ6を作用点溝53で受け、基端部5b寄りの中央部5cに形成された重点溝52で重点エッジ24を受ける。また、各長機槓桿5は、先端部5aを連結片71に固定されている。短機槓桿4の先端部4aは、中間エッジ6を介して長機槓桿5の下方に吊り下げられた状態となっている。これにより、長機槓桿5には、短機槓桿4の受けた荷重が、中間エッジ6を介して伝達される。
【0019】
図3に示すように、連結片71には伝達槓桿72が取り付けられている。連結片71から突出した伝達槓桿72の先端部には、略四角形の環状を呈した終端エッジ73が挿通されている。終端エッジ73には取付片74が取り付けられており、伝達槓桿72は終端エッジ73を介して取付片74に吊り下げられた状態となっている。取付片74は、ロードセル75の可動部に固定されている。ロードセル75の固定部は、固定片76を介してベース3に固定されている。
【0020】
図4は、体重計1が備える各サイドスプリング9a〜9dの配置態様を説明する図である。図5は、カバー2とベース3との間にサイドスプリング9a〜9dが介装された状態を図4のA−A線断面で見た図である。図6は、カバー2が備える天板部21の各変形支点と荷重受位置との配置関係を説明する図である。
【0021】
図4及び図5に示すように、カバー2の天板部21とベース3の底板部31との間には、サイドスプリング9a〜9dが取り付けられている。サイドスプリング9a〜9dは、カバー2の天板部21をベース3の底板部31側に付勢するためのものであり、図5に示すように、コイル部91を挟んだ一端部にフック部92、他端部に係止部93を備えた引張コイルバネから構成されている。サイドスプリング9a〜9dは、コイル部91がバネ固定孔35a〜35dよりもやや小さく、係止部93がバネ固定孔35a〜35dよりも大きな外径を有している。サイドスプリング9a〜9dは、係止部93をバネ固定孔35a〜35dの周縁に係止され、コイル部91をバネ固定孔35a〜35dに挿通され、フック部92を天板部21の係止片28a〜28dに掛けられて、カバー2とベース3との間に介装されている。これにより、係止片28a〜28dがバネ固定孔35a〜35dに向けて付勢され、例えば、ベース3へのカバー2の取付位置が、所定の取付位置から垂直方向及び水平方向にずれたとしても、この付勢力により係止片28a〜28dがバネ固定孔35a〜35dと向かい合った図5に示す位置にカバー2が戻るようになっている。本実施形態では、サイドスプリング9a〜9dとして初張力及びバネ定数のそれぞれ等しい引張コイルバネが用いられている。
【0022】
図4に示すように、天板部21の前端側の各カバーエッジ23の取付位置を通って天板部21の左右方向に延びる、同図に一点鎖線で示す箇所は、前側変形支点となっている。また、天板部21の後端側の各カバーエッジ23の取付位置を通って天板部21の左右方向に延びる、同図に一点鎖線で示す箇所は、後側変形支点となっている。前後の両変形支点間に位置する天板部21は、縦荷重受位置となっている。天板部21の左端側の各カバーエッジ23の取付位置を通って天板部21の前後方向に延びる、同図に一点鎖線で示す箇所は、左側変形支点となっている。また、天板部21の右端側の各カバーエッジ23の取付位置を通って天板部21の前後方向に延びる、同図に一点鎖線で示す箇所は、右側変形支点となっている。左右の両変形支点間に位置する天板部21は、横荷重受位置となっている。垂直方向への荷重を載置部2bに加えられたカバー2は、前側,後側,左側,右側の各変形支点を支点として、各変形支点間で挟まれた縦及び横の各荷重受位置を、底板部31側に向けて下方に撓ませる。
【0023】
図4に示すように、ベース3の後側壁部32aの左端側の近傍に位置するバネ固定孔35aと、右側壁部32bの後端側の近傍に位置するバネ固定孔35bとは、後側変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側の外側とに、それぞれ後側変形支点から等しい距離をあけて配置されている。具体的には、後側変形支点からのバネ固定孔35aまでの前後方向での距離La1と、バネ固定孔35bまでの前後方向での距離Lb1とは、等しい値に設定されている。
【0024】
また、ベース3の前側壁部32cの右端側の近傍に位置するバネ固定孔35cと、左側壁部32dの前端側の近傍に位置するバネ固定孔35dとは、前側変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側の外側とに、それぞれ前側変形支点から等しい距離をあけて配置されている。具体的には、前側変形支点からのバネ固定孔35cまでの前後方向での距離Lc1と、バネ固定孔35dまでの前後方向での距離Ld1とは、等しい値に設定されている。
【0025】
また、バネ固定孔35aとバネ固定孔35dとは左側変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側の外側とに、バネ固定孔35bとバネ固定孔35cとは右側変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側の外側とに、それぞれ左側又は右側の各変形支点から等しい距離をあけて配置されている。具体的には、左側変形支点からの各バネ固定孔35a,35dまでの左右方向での距離La2,Ld2、及び、右側変形支点からの各バネ固定孔35b,35cまでの左右方向での距離Lb2,Lc2が、それぞれ等しい値に設定されている。
【0026】
また、バネ固定孔35a〜35dと向かい合って配置される係止片28a〜28dも、バネ固定孔35a〜35dと同様の配置態様で配置されている。具体的には、係止片28aと係止片28bとは後側変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側の外側とに、係止片28cと係止片28dとは前側変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側の外側とに、それぞれ後側,前側の各変形支点から等しい距離をあけて配置されている。また、係止片28aと係止片28dとは左側変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側の外側とに、係止片28bと係止片28cとは右側変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側の外側とに、それぞれ左側,右側の各変形支点から等しい距離をあけて配置されている。
【0027】
上述したような係止片28a〜28d及びバネ固定孔35a〜35dの配置態様を有する体重計1では、各係止片28a〜28d及び各バネ固定孔35a〜35dでカバー2とベース3との間に介装されたサイドスプリング9a〜9dは、前側及び後側の各変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側の外側とに、前側及び後側の各変形支点から等しい距離をあけて配置されている。また、サイドスプリング9a〜9dは、左側及び右側の各変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側の外側とに、左側及び右側の各変形支点から等しい距離をあけて配置されている。
【0028】
次に、本実施形態の体重計1での計量時の動作について説明する。ベース3が床面上に載置された状態において、図3に示すように、体重計1が備える各槓桿4,5は、支点エッジ34で基端部4b,5bを支持されると共に、先端部4a及び先端部5a寄りの中央部5cをそれぞれ中間エッジ6で支持されている。また、長機槓桿5は、先端部5aを連結片71で支持されている。このような状態で、各槓桿4,5は、重点エッジ24を介してカバー2を支持している。
【0029】
また、図5に示すように、カバー2の天板部21とベース3の底板部31との間に介装されたサイドスプリング9a〜9dの付勢力により、ベース3が備える底板部31のバネ固定孔35a〜35dに向けて、カバー2の天板部21の係止片28a〜28dが付勢されている。
【0030】
また、カバー2の重量やサイドスプリング9a〜9dの付勢力により、各槓桿4,5には、重点エッジ24を介して所定の大きさの荷重が加えられている。短機槓桿4で受けられたこの荷重は、中間エッジ6を介して長機槓桿5に伝達される。長機槓桿5は、重点エッジ24から直接受けた荷重と、中間エッジ6を介して短機槓桿4から伝達された荷重とを、先端部5aの固定された連結片71に伝達する。
【0031】
このようにして連結片71に伝達された荷重は、伝達槓桿72から終端エッジ73を介してロードセル75に伝達され、ロードセル75が撓む。撓んだロードセル75に生じた弾発力で、各槓桿4,5には重点エッジ24から加えられる荷重に抗してカバー2を上方に押し付ける力が働く。これにより、ベース3に対するカバー2の取付位置が所定の位置に保たれている。
【0032】
この状態で、被験者がカバー2の載置部2bに両足を載置する等して、カバー2に荷重が加えられると、カバー2のカバーエッジ23から重点エッジ24を介して各槓桿4,5に荷重が伝達される。このようにして加えられた荷重は、支点エッジ34との接触点を支点として各槓桿4,5をベース3の底板部31側に回動させるように働き、ロードセル75の撓み量が大きくなる。この撓み量の変化を検知することにより荷重の計量が行われる。
【0033】
被験者がカバー2の載置部2bに両足を載置する際等に、カバー2の載置部2bに対して垂直方向への荷重が働くと、ベース3の底板部31とほぼ平行に位置して水平方向に延びたカバー2の天板部21は、前側及び後側の各変形支点を支点として縦荷重受位置を、左側及び右側の各変形支点を支点として横荷重受位置を、それぞれベース3側に撓ませる。
【0034】
例えば、図5(a)に示すように、ベース3の底板部31と平行に延びたカバー2の天板部21が、同図(b)に示すように、前側及び後側の各変形支点を支点として、縦荷重受位置をベース3側(同図(b)中矢印B方向)に撓ませると、前側及び後側の各変形支点を挟んで縦荷重受位置と反対側の外側に位置する天板部21は、前側及び後側の各変形支点を支点として上方に移動する。
【0035】
これに伴い、後側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9a,9bのうち、縦荷重受位置側に位置するサイドスプリング9bの取り付けられた係止片28bが、図6(a)に示す底板部31からの高さH1の位置から、H1よりH11だけ低い図6(b)に示すH12の高さに移動し、サイドスプリング9bがH11だけ縮む。このため、サイドスプリング9bがカバー2をベース3側に付勢する力F1は、ΔF1=H11×k(k:バネ定数)だけ小さくなる。一方、縦荷重受位置と反対側の外側に位置するサイドスプリング9aの取り付けられた係止片28aは、図6(a)に示す底板部31からの高さH1の位置から、H1よりH21だけ高い図6(b)に示すH22の高さに移動し、サイドスプリング9bがH21だけ伸びる。このため、サイドスプリング9aがカバー2をベース3側に付勢する力F2は、ΔF2=H21×k(k:バネ定数)だけ大きくなる。
【0036】
ここで、両サイドスプリング9a,9bは、後側変形支点からの距離La1,Lb1が互いに等しく設定されていることから、各係止片28a,28bの配設位置の高さの変位量、つまり、各サイドスプリング9a,9bの伸長量の変化量H11及びH21は、互いにほぼ等しい値となり、両サイドスプリング9a,9bにより働かされる付勢力の変化量ΔF1及びΔF2も互いにほぼ等しい値となる。このため、後側変形支点から等しい距離をあけて配置されている両サイドスプリング9a,9bから重点エッジ24を介して各槓桿4,5に加えられる荷重の合計は、天板部21に撓みが生じる前後でほぼ等しい値に保たれる。つまり、後側変形支点を支点とする天板部21の変形に伴い、後側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9a,9bの付勢力に生じる変化は、サイドスプリング9a,9b同士で互いに相殺される。
【0037】
前側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9c,9dも、前側変形支点から等しい距離をあけて配置されており、前側変形支点からの距離Lc1,Ld1が互いに等しく設定されていることから、伸長量の変化量が互いにほぼ等しい値となり、付勢力の変化量も互いにほぼ等しい値となる。このため、両サイドスプリング9c,9dから重点エッジ24を介して各槓桿4,5に加えられる荷重の合計は、天板部21に撓みが生じる前後でほぼ等しい値に保たれる。つまり、前側変形支点を支点とする天板部21の変形に伴い、前側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9c,9dの付勢力に生じる変化は、サイドスプリング9c,9d同士で互いに相殺される。
【0038】
また、荷重を加えられた天板部21が、左側及び右側の各変形支点を支点として横荷重受位置をベース3側に撓ませると、左側及び右側の各変形支点を挟んで横荷重受位置と反対側の外側に位置する天板部21が、これらの各変形支点を支点として上方に移動する。
【0039】
これに伴い、左側及び右側の各変形支点を挟んで横荷重受位置側に位置したサイドスプリング9a,9cが縮み、横荷重受位置と反対側の外側に位置したサイドスプリング9b,9dが伸びる。ここで、右側変形支点から両サイドスプリング9b,9cまでの距離Lb2,Lc2が互いに等しく設定されていることから、各サイドスプリング9b,9cの伸長量の変化量も互いにほぼ等しい値となり、両サイドスプリング9b,9cにより働かされる付勢力の変化量も互いにほぼ等しい値となる。このため、両サイドスプリング9b,9cから重点エッジ24を介して各槓桿4,5に加えられる荷重の合計は、天板部21に撓みが生じる前後でほぼ等しい値に保たれる。つまり、右側変形支点を支点とする天板部21の変形に伴い、右側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9b,9cの付勢力に生じる変化は、サイドスプリング9b,9c同士で互いに相殺される。
【0040】
左側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9a,9dも、左側変形支点からの距離La2,Ld2が互いに等しく設定されていることから、伸長量の変化量が互いにほぼ等しい値となり、付勢力の変化量も互いにほぼ等しい値となる。このため、両サイドスプリング9a,9dから重点エッジ24を介して各槓桿4,5に加えられる荷重の合計は、天板部21に撓みが生じる前後でほぼ等しい値に保たれる。つまり、左側変形支点を支点とする天板部21の変形に伴い、左側変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9a,9dの付勢力に生じる変化は、サイドスプリング9a,9d同士で互いに相殺される。
【0041】
このため、天板部21の前側並びに後側の両変形支点で挟まれた縦荷重受位置、及び、左側並びに右側の両変形支点で挟まれた横荷重受位置の撓み具合に関わらず、つまり、これらの各荷重受位置に加えられる荷重の負荷面積や位置や大きさに関わらず、各サイドスプリング9a〜9dからロードセル75に伝達される荷重の合計は、天板部21に撓みが生じる前後でほぼ等しい値に保たれ、各変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9a〜9dの付勢力に生じる変化が、互いに相殺される。
【0042】
このように、本実施形態の体重計1によれば、天板部21の前側及び後側の各変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側の外側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて、また、左側及び右側の各変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側の外側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて、サイドスプリング9a〜9dが配置されていることから、荷重を加えられた天板部21の撓みに応じて生じるサイドスプリング9a〜9dの付勢力の変化を、各変形支点を挟んで配置された一対のサイドスプリング9a〜9d同士で相殺させることができる。このため、荷重を加えられて撓んだ天板部21にサイドスプリング9a〜9dから加えられる付勢力の変化を抑えることができる。従って、天板部21に対する荷重の負荷面積や位置や大きさに応じて生じる計量値の誤差を抑え、精度の高い計量を行うことができる。
【0043】
また、底板部31が備える各バネ固定孔35a〜35dの周縁部がベース3の内側に屈曲しており、この屈曲部分でサイドスプリング9a〜9dの係止部93を収容することから、係止部93が底板部31の外面よりも外側に突出した状態となるのを防止して、体重計1を取り扱い易くすることができる。
【0044】
上記実施形態では、サイドスプリング9a〜9dが、コイル部91を挟んだ一端部にフック部92、他端部に係止部93を備える構成を有した場合について説明したが、カバー2の天板部21をベース3の底板部31側に付勢するのであれば、その構成は任意である。例えば、サイドスプリング9a〜9dが、コイル部91を挟んだ一端部にフック部92に代えて係止部を備える構成としてもよい。また、サイドスプリング9a〜9dが、コイル部91を挟んだ他端部に係止部93に代えてフック部を備え、ベース3の底板部31にバネ固定孔35a〜35dに代えて設けられた係止片にこのフック部を掛ける構成としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、カバー2が備える4つの側壁部22a〜22dとベース3が備える4つの側壁部32a〜32dとの近傍に、それぞれサイドスプリング9a〜9dを1つずつ配置した場合について説明した。しかしながら、各変形支点を支点とする天板部21の変形に伴い生じるサイドスプリング9a〜9dの付勢力の変化を、各変形支点を挟んで配置されたサイドスプリング9a〜9d同士で相殺できるのであれば、サイドスプリングの数量、及び、配置位置は任意である。また、各変形支点を挟んで配置されるサイドスプリングの数量は、必ずしも同じである必要はない。例えば、上記実施形態では、天板部21を支持する前側及び後側の各変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて、また、左側及び右側の各変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて、サイドスプリング9a〜9dが配置されているのであれば、各側壁部22a〜22dと側壁部32a〜32dとの近傍に配置するサイドスプリングの個数、及び、配置位置は任意である。
【0046】
また、上記実施形態では、天板部21を支持する前側及び後側の各変形支点を挟んだ縦荷重受位置側とその反対側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけており、また、左側及び右側の各変形支点を挟んだ横荷重受位置側とその反対側とでこれらの各変形支点から等しい距離をあけて、サイドスプリング9a〜9dが配置されている場合について説明した。しかしながら、例えば、天板部21が前後方向のみで撓む構成を体重計1が有している場合には、縦荷重受位置側とその反対側とで前側及び後側の各変形支点から等しい距離をあけてサイドスプリング9a〜9dが配置されていればよく、横荷重受位置側とその反対側とで左側及び右側の各変形支点から等しい距離をあけた位置には、サイドスプリング9a〜9dが配置されている必要はない。
【0047】
また、ベース3の底板部31に荷重を受けるカバー2の天板部21を対面させ、付勢手段により天板部21を底板部31側に付勢して、天板部21を支持する構成を備えるのであれば、ベース3及びカバー2の形状は任意であり、ベース3及びカバー2が必ずしもそれぞれ4つの側壁部を備える必要はない。例えば、ベース3が円形の底板部を備える構成を有し、カバー2が円形の天板部を備える構成を有した他の槓桿式秤にも本発明を適用することができる。
【0048】
上記実施形態では、サイドスプリング9a〜9dとして初張力及びバネ定数のそれぞれ等しい引張コイルバネが用いられていたため、各変形支点を挟んで等しい距離をあけて一対のサイドスプリング9a〜9dを配置した場合について説明した。しかしながら、各変形支点を支点とする天板部21の変形に伴い生じるサイドスプリング9a〜9dの付勢力の変化を、各変形支点を挟んで配置されたサイドスプリング9a〜9d同士で相殺できるのであれば、サイドスプリング9a〜9dの配置は任意である。つまり、各変形支点からサイドスプリング9a〜9dの配置位置までの距離は、サイドスプリング9a〜9dとして用いる引張コイルバネの初張力やバネ定数等に応じて、適宜選択することができる。例えば、後側変形支点を挟んだ縦荷重受位置側のサイドスプリング9aとその反対側のサイドスプリング9bとで引張コイルバネの初張力やバネ定数が異なる場合には、後側変形支点から両サイドスプリング9a,9bまでの距離が同じである必要はない。
【0049】
また、上記実施形態では、付勢手段として引張コイルバネから構成されたサイドスプリング9a〜9dを用いた場合について説明したが、付勢手段は必ずしも引張コイルバネから構成されている必要はなく、他の手段を用いることもできる。また、上記実施形態では、ロードセル75を用いて計量を行う体重計1に本発明を適用した場合について説明したが、他の槓桿式秤にも、本発明は適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態の体重計の外観構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す体重計が備えるカバーの構成の概略を示す斜視図である。
【図3】図1に示す体重計が備えるベースの構成の概略を示す斜視図である。
【図4】図1に示す体重計が備える各サイドスプリングの配置態様を説明する図である。
【図5】カバーとベースとの間にサイドスプリングが介装された状態を示す図である。
【図6】図5に示すサイドスプリングの伸長量とカバーの変形との関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1 体重計
2 カバー
21 天板部
22a〜22d 側壁部
28a〜28d 係止片
3 ベース
31 底板部
32a〜32d 側壁部
35a〜35d バネ固定孔
9a〜9d サイドスプリング
91 コイル部
92 フック部
93 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槓桿式秤が備えるベースの底板に荷重を受けるカバーの天板を対面させ、付勢手段により前記天板を前記底板側に付勢して、前記天板を支持するカバーの取付構造であって、
荷重受位置で荷重を受けて変形する前記天板の変形支点を挟んだ前記荷重受位置側とその反対側とに、前記変形支点を支点とする前記天板の変形に伴い生じる付勢力の変化を互いに相殺する位置に、それぞれ前記付勢手段を配置したことを特徴とするカバーの取付構造。
【請求項2】
前記天板の前記変形支点を挟んだ前記荷重受位置側とその反対側とに、それぞれ前記変形支点から等しい距離をあけて、一対の前記付勢手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載のカバーの取付構造。
【請求項3】
矩形の前記天板の四隅に設けられた支持位置のうちの隣り合う隅部に設けられた前記支持位置同士を結んで向かい合う一対の前記変形支点を備え、
前記一対の変形支点間に位置する前記天板の前記荷重受位置側と、その反対側の外側とに、それぞれ各前記変形支点から等しい距離をあけて、前記一対の付勢手段を配置したことを特徴とする請求項2に記載のカバーの取付構造。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記天板及び前記底板の一方を貫通する貫通孔を挿通して一端を前記貫通孔の周縁部に係止されると共に、他方の前記天板又は前記底板に他端を固定されて、前記天板を前記底板側に付勢する引張コイルバネから構成され、
前記貫通孔の周縁部が前記一方の天板又は底板の内側に向けて屈曲していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のカバーの取付構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の取付構造を備えることを特徴とする槓桿式秤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−145164(P2009−145164A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322089(P2007−322089)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)