説明

カバー水栓

【課題】
配管を覆うカバーについて壁面などの取付部に対する位置決め作業を省略し、施工現場での施工作業の簡略化を図り、また、配管を覆うカバーのカバー水栓の他の部品への組み付け精度を向上させて、カバー水栓の美観の向上を図ることのできるカバー水栓を提供すること。
【解決手段】
湯又は水を供給する配管36が接続される止水栓ユニット32a,32bと、止水栓ユニット32a,32bに対して取り付けられ湯水を混合する水栓本体20と、水栓本体20を立壁面Xに固定するための本体固定ステー50と、配管36を被覆するための配管カバー60とを備えたカバー水栓1において、止水栓ユニット32a,32b及び配管カバー60を本体固定ステー50に対して相互に位置決めされて固着可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカバーを備えたカバー水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室内などに設置された水栓であって、水栓本体などがカバーに覆われたカバー水栓が知られている。このようなカバー水栓には、水栓本体の下方などに引き回され、止水栓に接続される配管を覆うための配管カバーを備えたものが知られている。このようなカバー水栓において、前述した配管カバーは、水栓本体を覆う本体カバーなど他のカバーの係止部に対して係止固定などして、カバー水栓の他の部品である水栓本体などに対して位置決め固定されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−240307公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような従来のカバー水栓では、配管カバーは、本体カバーに対して係止固定されているだけであり、水栓本体などが固定される本体固定ステーに対しては位置決め固定されていない。このため、配管カバーの振動音発生抑制や、配管カバーと壁面などの取付部との隙間を解消するために配管カバー自体も壁面などの取付部にねじ止め固定などをする必要がある場合には、配管カバーの壁面などの取付部への位置決め固定と、本体固定ステーなどのカバー水栓の他の部品の壁面などの取付部への位置決め固定が正確になされないと、両部品の組み付けがずれた状態で組み付けられてしまったり、場合によっては両部品の組み付けができなくなるなどの問題があり、このため、施工現場での両部品の壁面などの取付部への位置決め固定作業の精度が高く要求されることとなっていた。よって、カバー水栓の壁面などへの取付作業も煩雑なものとなっていた。
【0005】
本発明は上記した従来のカバー水栓の問題点を解消するものであり、配管を覆うカバーについて壁面などの取付部に対する位置決め作業を省略し、施工現場での施工作業の簡略化を図り、また、配管を覆うカバーの他の部品への組み付け精度を向上させて、美観の向上を図ることのできるカバー水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段を以下に説明する。本発明の第一の手段のカバー水栓は、湯又は水を供給する配管が接続される止水栓等の水栓部品と、前記水栓部品に対して取り付けられ湯水を混合する水栓本体と、前記水栓本体を壁面などの取付部に固定するための本体固定ステーと、少なくとも前記配管を被覆するための配管カバーと、を備えたカバー水栓であって、前記水栓部品及び前記配管カバーが、前記本体固定ステーに対して相互に位置決めされて固着可能であることを特徴とするカバー水栓である。
【0007】
このように水栓部品及び配管カバーが本体固定ステーに対して相互に位置決めされるように固着可能に設けられることにより、水栓部品及び配管カバーは、本体固定ステーに対して適切・正確な位置決めをおこなうことができる。また同時に、水栓部品に取り付けられて固定される水栓本体についても、水栓部品を介して本体固定ステーに対して適切・正確な位置決めをおこなうことができる。本体固定ステーは、浴室の壁面などの「取付部」に固定されるものであるが、このような本体固定ステーに対して水栓部品、配管カバー及び水栓本体が適切・正確な位置決めをなすことができるので、壁面などの取付部に対して本体固定ステーを適切に位置決めするだけで、これらの水栓部品、配管カバー及び水栓本体についての壁面などの取付部に対する位置決めも適切になすことが可能となる。また、水栓部品、配管カバー及び水栓本体と本体固定ステーとの相互の位置決めを適切・正確になすことができるので、これらの各部品間における位置のずれを防止することができる。なお、水栓部品、配管カバー又は水栓本体以外の部品についても、同様に本体固定ステーに対して相互に位置決めされて固着可能なのであれば、壁面などの取付部に対して本体固定ステーを適切に位置決めするだけで、このような他の部品についての壁面などの取付部に対する位置決めも適切になすことが可能となり、また、このような他の部品と、水栓部品、配管カバー、水栓本体及び本体固定ステーとの相互の位置決めを適切・正確になすことができ、これらの部品間における位置のずれも防止することができる。なお、配管カバーは、少なくとも前述した配管を被覆するものであるが、カバー水栓の他の部品も被覆するものであっても良い。「固着手段」は、ねじにより螺合固定するもの、クリップなどにより固定するものなどの手段を例示することができるがこれらに限られるものではない。
【0008】
また、本発明の第二の手段のカバー水栓は、前記した第一の手段のカバー水栓において、 前記配管カバーは、前記本体固定ステーと固着される部位を基準にして、前記固着される部位に対する先端側の端部が、前記取付部に対して取り付け固定される前記本体固定ステーの取付面に対して、後方に傾斜して固着可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0009】
配管を被覆する配管カバーは壁面などの取付部との間に隙間が生じやすい。これは、成形時における配管カバーの背面側の部位の加工精度が適切でない場合の他、配管カバーが樹脂製とされることが多いため成形後に変形したり、また、カバー水栓の壁面などの取付部への取付精度が適切でない場合など、様々な理由から生ずる。特に、配管カバーの本体固定ステーと固着される部位に対する先端側の端部においては、変形などの影響が大きく出やすく壁面などの取付部との間に隙間が生じやすい。本発明では、配管カバーは、本体固定ステーと固着される部位を基準にして、固着される部位に対する先端側の端部が、本体固定ステーの取付面に対して後方に傾斜して固着可能に設けられており、本体固定ステーに固着される部位に対する先端側の端部を壁面などの取付部方向に押しつけるように傾斜されることになるので、隙間が生じやすい配管カバーの本体固定ステーと固着される部位に対する先端側の端部の隙間を抑えることができる
【0010】
また、本発明の第三の手段のカバー水栓は、前記した第一又は第二の手段のカバー水栓において、前記本体固定ステーに対して固定可能であるとともに前後方向に長い長孔が形成された化粧カバーステーと、前記化粧カバーステーに固定可能な化粧カバーを備え、前記化粧カバーステーは、前記本体固定ステーのねじ孔に対して、前記長孔に挿通されるねじを介して前後方向にスライド調整可能に固定されることを特徴とするものである。
【0011】
このように化粧カバーが固定可能な化粧カバーステーを設けるとともに、この化粧カバーステーが本体固定ステーに対して、長孔に挿通されたねじを介して前後方向にスライド調整可能に固定されるものとすることにより、壁面などの取付部との間に生じうる隙間については、化粧カバーステーを前後方向にスライド調整して固定することにより抑えることができる。また同時に、化粧カバーを取り付けることによりカバー水栓の美観を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の第四の手段のカバー水栓は、前記した第三の手段のカバー水栓において、前記化粧カバーが前記化粧カバーステーに固定された状態において、前記ねじの頭が前記化粧カバーの裏面に当接可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0013】
このように、化粧カバーステーを固定するねじ(化粧ねじ)の頭が化粧カバーの裏面に当接可能に設けられることにより、化粧カバーを化粧カバーステーに固定して取り付けられた状態において、化粧カバーをその裏面側からねじにより支持することができる。よって、使用者が化粧カバーに手をつくなど化粧カバーの表面側から力が加わったような場合であっても、化粧カバー表面の撓みなどを抑えることができ、化粧カバーの質感を向上させることができ、また、化粧カバーの損傷を防止することもできる。
【0014】
また、本発明の第五の手段のカバー水栓は、前記した第一から第四の手段のいずれかのカバー水栓において、前記配管カバーは、前記配管及び前記水栓部品を被覆可能に形成されたことを特徴とするものである。
【0015】
このように配管カバーが配管及び水栓部品を被覆可能に設けられることにより、水栓部品を被覆する部位についてカバーを必要とする場合に、このようなカバーを、前述した配管カバーと一体化したものとすることができる。よって、配管を被覆する配管カバーと水栓部品を被覆するカバーとの組み付け作業を省略することができる。また、配管を被覆する配管カバーと水栓部品を被覆するカバーとの組み付け精度を問題とすることなく、当該部位の一体感を生ぜしめることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のように、水栓部品及び配管カバーが、本体固定ステーに対して、相互に位置決めされて固着可能であるものとして構成されており、壁面などの取付部に対して本体固定ステーを適切に位置決めするだけで、水栓部品、配管カバー及び水栓本体についての壁面などの取付部に対する位置決めを適切になすことが可能となるので、各部品を壁面などの取付部に対して位置決めするような作業を簡略化することができる。また、水栓部品、配管カバー及び水栓本体と本体固定ステーとの相互の位置決めを適切・正確になすことができるので、これらの部品間における位置のずれを防止することができ、カバー水栓の美観を向上させることができる。また、特に第二の手段のカバー水栓では、配管カバーの先端側の端部と壁面などの取付部との隙間を抑えることにより、カバー水栓の美観を向上させることもできる。また、特に第三の手段のカバー水栓では、化粧カバーステーによって壁面などの取付部との隙間を抑えることにより、カバー水栓の美観を向上させることもできる。また、特に第四の手段のカバー水栓では、化粧カバーの撓みを抑えて、カバー水栓の美観・質感を向上させ、損傷を防止することもできる。また、特に第五の手段のカバー水栓では、配管を被覆する配管カバーと水栓部品を被覆するカバーとの組み付け作業を省略することができ、また、配管を被覆する配管カバーと水栓部品を被覆するカバーとの組み付け精度を問題とすることなく、当該部位の一体感を生ぜしめることができ、施工現場での作業の簡素化、及びカバー水栓の美観を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のカバー水栓の斜視図である。
【図2】図1のカバー水栓の分解斜視図である。
【図3】図1のカバー水栓の右側面視縦断面図である。
【図4】図1のカバー水栓の平面視横断面図である。
【図5】図1のカバー水栓の要部拡大斜視図である。
【図6】図1のカバー水栓の本体固定ステー、化粧カバーステー及び化粧カバーの平面視一部透視図である。
【図7】図1のカバー水栓の右側面視要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を図を参考にして詳細に説明する。図1に示されるように、本発明のカバー水栓1は、上方の平面部2と、この平面部2の後方から下方に垂下される垂下部3とからなり、側面視において全体がほぼ倒立した「L字」状に形成されている。本例においては、このカバー水栓1は浴室内のカウンター(図示省略)上に載置されて、「取付部」の一例である立壁面Xに対して固定されるものである。
【0019】
カバー水栓1の平面部2の左右側面は、左に温度調節ハンドル4、右に切換ハンドル7が取り付けられている。両ハンドル4,7は、側面視下向きに膨出された「かまぼこ型」状に形成されている。また、温度調節ハンドル4は吐水温度が40℃に設定されるように回動操作された状態においてその上面の上面部5が、また、切換ハンドル7は止水状態に設定されるように回動操作された状態においてその上面の上面部8が、それぞれカバー水栓1の正面寄りの平面部2の上面と同一平面を構成するように形成されている。また、温度調節ハンドル4には高温吐水時に押動操作するための安全ボタン6が設けられている。
【0020】
切換ハンドル7よりも奥側のカバー水栓1の平面部2の右側面には、ビニール管であるシャワーホース10が接続されるエルボ12が突設されており、また、このシャワーホース10の先端にはシャワーヘッド14が接続されている。また、平面部2の正面側下部には吐水口16が突設されている。このように構成されたカバー水栓1は、温度調節ハンドル4の操作により、混合水は適宜の温度に調節され、この混合水は切換ハンドル7の操作により、シャワーヘッド14又は吐水口16のいずれかから、その吐水量を調節されて吐水されるように構成されている。
【0021】
図2から図4に示されるように、カバー水栓1の内部には、水栓本体20と、この水栓本体20を立壁面Xに固定するための本体固定ステー50と、水栓本体20にそれぞれ接続される湯側・水側の止水栓ユニット32a,32bなどが収容されている。
【0022】
図4に示されるように、水栓本体20は円筒状の水栓ボディ22が形成され、この水栓ボディ22内には、温度調節カートリッジ24及び切換弁カートリッジ26が収容されており、これらに接続固定される温度調節ハンドル4または切換ハンドル7の操作により、温度調節カートリッジ24に内蔵される温度調節弁または切換弁カートリッジ26に内蔵される切換弁が駆動操作される。また、図3に示されるように、この水栓ボディ22のほぼ中央部下面には、前述した吐水口16が突設されている。
【0023】
図4に示されるように、水栓本体20の水栓ボディ22の背面側の左右両側には止水栓接続部27a,27bが突設されている。また、これらの止水栓接続部27a、27b間にはシャワー配管接続部30が突設されている。止水栓接続部27a,27bには、クランク形状に屈曲形成された止水栓ユニット32a,32bがそれぞれ接続されている。また、水栓本体20のシャワー配管接続部30にはシャワー配管28が接続されている。シャワー配管28の他端側は、カバー水栓1の正面視右側面から突設され、接続金具15を介してエルボ12に接続されている。前述したように、このエルボ12にはシャワーホース10が接続され、このシャワーホース10の先端にシャワーヘッド14が接続される。
【0024】
止水栓接続部27a,27bと止水栓ユニット32a,32bとの接続部分には、逆流防止弁ユニット31がそれぞれ内蔵されている。また、止水栓ユニット32a,32bには止水栓34がそれぞれ内蔵されている。そして、図2、図3、図7に示されるように、止水栓ユニット32a,32bの下方にはそれぞれ配管36が接続されている。配管36は、止水栓ユニット32a,32bの下方に向かって垂下され、カバー水栓1の下方に突設されて、さらに、図示しない浴室のカウンター内部に引き回されて、立壁面Xの外部から引き込まれた給湯配管・給水配管の端末(図示省略)に接続されている。
【0025】
また、図4に示されるように、止水栓ユニット32aの止水栓34の正面視右側,止水栓ユニット32bの止水栓34の正面視左側には、それぞれ、固定用のねじ42が挿通される固定用孔(図示省略)が開設された第一固定用片37が突設されている。また、止水栓ユニット32aの止水栓34の正面視上側,止水栓ユニット32bの止水栓34の正面視上側にも同様に、固定用のねじ42が挿通される固定用孔(図示省略)が開設された第二固定用片39が突設されている。本例では、第一固定用片37と第二固定用片39との二か所において各止水栓ユニット32a,32bを本体固定ステー50に対して固定することにより、一か所のみをねじ42で固定した場合にねじ42が緩んで止水栓ユニット32a,32bが本体固定ステー50に対して遊動するようなことのないように構成されている。また、止水栓ユニット32a,32bが本体固定ステー50に対して、少なくとも二か所固定されることにより、施工時に止水栓ユニット32a,32bが外力等によりズレてしまうことを防止できる。これらの第一・第二固定用片37,39は止水栓ユニット32bにおいては止水栓ユニット32aと左右対称となるように設けられている。
【0026】
ついで本体固定ステー50について説明する。図5に示されるように、本体固定ステー50は正面視横長の長方形の薄い板状の全体形状におおよそ形成されている。本体固定ステー50の中央付近には、後述する配管カバー60が固着されるためにねじ孔(図示省略)が設けられた固着片52が形成されている。固着片52は横長の長方形状に形成されており、その上辺のみを本体固定ステー50の本体に連設させ他の三辺を切り欠くとともに、本体固定ステー50の正面側に向けてその全体がせり出すように形成されている。
【0027】
また、本体固定ステー50の固着片52の上部の左右、及び下部の左右の四箇所には、前述した止水栓ユニット32a,32bのそれぞれの第一・第二固定用片37,39の第一・第二固定用孔38,40とねじ42により固定されるねじ孔(図示省略)が形成されている。止水栓ユニット32a,32bは、この第一・第二固定用片37,39がそれぞれ本体固定ステー50に対してねじ止めされ、相互に位置決めされて固着されることになる。
【0028】
また、図7に示すように、本体固定ステー50の上部には、その中央に、立壁面Xへの固定用の第一取付部54aが設けられている。また、本体固定ステー50の下部には、第二取付部54bが設けられている。本体固定ステー50は、この第一取付部54a,第二取付部54bが本発明に言う「取付面」として立壁面Xに固定されることになる。また、図5に示すように、第一取付部54aには三箇所の固定用孔55が開設されており、図3に示されるように、この固定用孔55に挿通されるねじ42によって、本体固定ステー50が立壁面Xに固定されることになる。また、図5に示されるように、この第一取付部54aの左右には、本体固定ステー50の正面側に向けて突設されるとともに化粧カバーステー80を固定するための第二固定部56a,56bが設けられている。第二固定部56a,56bには、ねじ42(化粧ねじ)が螺合されるねじ孔57がそれぞれ開設されている。
【0029】
ついで配管カバー60について説明する。図3に示されるように、配管カバー60は、カバー水栓1の下部寄りに配設された配管36と止水栓ユニット32a,32b、及び水栓ボディ22の両側面を覆うように構成されている。配管カバー60は、配管36のみならず止水栓ユニット32a,32b等も覆うように構成されており、配管36以外のカバー水栓1の部位を被覆するように設けられているので、これらの各部位を覆うカバーを個別に形成した場合のように、これらの各部位を覆うカバーを組み付ける必要が無い。
【0030】
配管カバー60には、図2に示すように正面視においてやや縦長の矩形状に形成された正面部62と、この正面部62の左右両側に沿って背面側に屈曲形成されて連設されるとともに、上部の幅は徐々に前方に迫り出す縦長扇状の下方側部64と、この下方側部64の上方に連設されて水栓ボディ22の両側をそれぞれ被覆する上方側部66が備えられている。図3、図5に示されるように、正面部62の上部には、前述した止水栓34が露呈されて操作可能にされるための開口63が湯側水側にそれぞれ開設されている。
【0031】
図3に示されるように、配管カバー60の下方側部64の下部は下方に向けて開放されており、配管36が下方に向けて突設可能に設けられている。また、下方側部64の下端部には、立壁面Xに対して配管カバー60の下端部を固定するために固定用孔65aが開設された固定用片65が突設されている。また、図4に示されるように、上方側部66のうち、右側の上方側部66には前述したシャワーホース10の接続用の接続金具15が取り付けられる開口67が開設されている。
【0032】
また、図3に示されるように、配管カバー60の背面側には、本体固定ステー50に配管カバー60を固定するためにその背面側に向けて突設された固定部68が設けられている。この固定部68の先端には、上方に向けて屈曲形成され二箇所の固定用孔(図示省略)が開設された固着部70が形成されている。配管カバー60は、この固着部70が本体固定ステー50に対してねじ止めされ、相互に位置決めされて固着されることになる。
【0033】
また、図7に示されるように、前述した本体固定ステー50の固着片52は、先端側(下端側)がやや後方に向くようにして傾けて形成され、本体固定ステー50の第一取付部54a,及び第二取付部54bとにより構成される取付面と平行な基準面Aに対して、傾きBで示すように傾けられるように設けられている。そして、この固着片52を介して固着部70によって本体固定ステー50に固着されている配管カバー60の先端側(下端側)の端部72は、前述した本体固定ステー50の第一取付部54a、第二取付部54bから構成される取付面に対して、配管カバー60の後方に傾斜して固着可能に設けられている。したがって、配管カバー60の先端側の端部72を立壁面X側に押しつけるように取り付けることができるので、端部72と立壁面Xとの間に隙間が生じ難くすることができる。また、本例の配管カバー60ではこのように端部72と立壁面Xとの隙間が生じ難くするように設けられているとともに、前述のようにさらに固定用片65により端部72を立壁面Xに固定しているので、通水時の端部72と立壁面Xとの接触音なども抑えることができる。なお、このような接触音が問題とならず端部72と立壁面Xとの隙間を解消させることのみを目的とするのであれば、固定用片65を省略することもできる。
【0034】
次いで化粧カバーステー80及び化粧カバー90について説明する。図2及び図6に示されるように、カバー水栓1の上部には、化粧カバーステー80及びこの化粧カバーステー80に固定されて水栓ボディ22の上部等を被覆する化粧カバー90が配設されている。化粧カバーステー80は、本体固定ステー50に対して、カバー水栓1の前後方向に沿って若干スライド調整可能に固定されており、化粧カバーステー80の後端が、立壁面Xとの間の隙間を抑えることができるように構成されるものである。そして、化粧カバー90は、水栓ボディ22に対して螺合されるとともに、化粧カバーステー80に対してはスライド自在に固定されており、前述したように化粧カバーステー80が本体固定ステー50に対してカバー水栓1の前後方向に沿ってスライド調整されても、水栓ボディ22に対しては所定の位置で螺合状態を保持するとともに、化粧カバーステー80に対しては、相対的にスライドされながらも保持固定されるように構成されるものである。
【0035】
化粧カバーステー80には、図2及び図6に示されるように、化粧カバー90の端部が固定される外枠82と、本体固定ステー50に固定するための二つの固定片88とが備えられており、外形が平面視矩形のおおよそ板状に形成されている。固定片88には、化粧カバーステー80の前後方向、すなわちカバー水栓1の前後方向に長い長孔89がそれぞれ形成されている。化粧カバーステー80は、この長孔89に挿通されて本体固定ステー50の第二固定部56a,56bのねじ孔57にねじ込まれるねじ42を介して、本体固定ステー50に固定される。化粧カバーステー80は、本体固定ステー50に固定された状態においても、長孔89の長手方向に沿ってスライド自在に固定されるので、本体固定ステー50に対して、カバー水栓1の前後方向にスライド調整可能に固定されることになる。したがって、カバー水栓1の立壁面Xへの取付時において、カバー水栓1の上部と立壁面Xとの間に隙間が生ずるようなおそれのある場合には、本体固定ステー50に対して化粧カバーステー80を後方にスライドさせるなどして位置を調整し、立壁面Xと化粧カバーステー80との間の隙間を抑えることができる。
【0036】
化粧カバー90は、表面にメッキが施されており、正面側に水栓ボディ22の正面側を被覆する抱持部92が設けられ、この抱持部92の上部端部から背面側に板状の平面部94が連設されている。抱持部92の下面側の先端の中央には、水栓ボディ22の吐水口16が挿通されて突出される半円状の挿通部95が形成されている。また、挿通部95の両側には、水栓ボディ22に形成されたねじ孔(図示省略)にねじ42を介して螺合固定される固定片96がそれぞれ突設されている。
【0037】
また、化粧カバー90と化粧カバーステー80は、化粧カバーステー80の外枠82に対して、カバー水栓1の前後方向において、相互にスライド可能に嵌合固定されている。したがって、化粧カバー90は、本体固定ステー50を介して立壁面Xに対して位置決め固定されている水栓ボディ22に対して螺合固定されている一方、化粧カバーステー80は、化粧カバー90に対してもカバー水栓1の前後方向においてスライド可能に取り付けられている。
【0038】
以上のように構成されたカバー水栓1においては、水栓部品の一例である止水栓ユニット32a,32b、及び配管カバー60が、本体固定ステー50に対して相互に位置決めされるように固着されている。したがって、あらかじめ止水栓ユニット32a,32b及び配管カバー60が固着されて組付けられた本体固定ステー50を立壁面Xの適切な位置に固定するだけで、止水栓ユニット32a,32b、本体固定ステー50及び配管カバー60のすべてが立壁面Xに対して適切に位置決めして固定される。また、本例のように、水栓ボディ22を止水栓ユニット32a,32bを介して本体固定ステー50に対してあらかじめ固定し、化粧カバー90を水栓ボディ22に対してあらかじめ固定しておけば、これらも含めて、立壁面Xに対して適切に位置決めして固定することができる。また、前述したように、化粧カバーステー80と立壁面Xに対する隙間は、化粧カバーステー80を本体固定ステー50の前後方向にスライド調整することにより解消することができる。また、配管カバー60の端部72が後方側に傾けて本体固定ステー50に固定されているので、端部72と立壁面Xとの間に隙間が生じ難く設けられており、さらには立壁面Xに対してねじ42により固定される固定用片65が設けられているので、立壁面Xとの隙間や、吐水時などにおける端部72と立壁面Xとの接触による振動音も抑えることができる。
【0039】
本発明の実施の形態は前述のように構成されているが、本発明はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、止水栓ユニット32a,32bと本体固定ステー50との固着手段及び固着部位は他の手段及び他の部位でも良い。本例では固着手段としてねじ42を用いているがこれに限られず、例えば、クリップなど他の固着手段で固着しても良いが、本例のようにねじ42を用いると、簡便かつ低コストで固着することができる。配管カバー60と本体固定ステー50との固着手段及び固着部位についても同様である。また、本発明の本体固定ステーに固着される「水栓部品」は止水栓ユニット32a,32b以外の部品であっても良い。また、本体固定ステー50の取付面に対する配管カバー60の傾斜角度は適宜変更すれば良い。また、配管カバー60の先端側の端部72において、立壁面Xとの接触する部位にゴムなどの緩衝部材を取り付けて、通水時の振動などにより生じやすい配管カバー60と立壁面Xとの接触音を低減させることとしても良い。また、本体固定ステー50の取付面に対する配管カバー60の傾斜角度を付ける手段としては、本例のように、本体固定ステー50の固着片52を傾斜させて配管カバー60の固着部70を固着することに限られず、本体固定ステー50の取付面と平行に設けられた固着片52に変更すると共に、この固着片52に対して固着される配管カバー60の形状を、その先端側の端部72がカバー水栓1の後方に傾斜するような形状に形成することとして対応しても良い。例えば、前述の例では、配管カバー60の固定部68が固着部70に対して直交する方向(すなわち、立壁面Xに対して直交する方向)に突設されるように形成しているが、この固定部68が直交方向よりも下方にやや傾斜して取り付けられるような形状に配管カバー60を形成することにより、配管カバー60の先端側の端部72をカバー水栓1の後方に傾斜させることとしても良い。また、配管カバー60の固定部68に対する配管カバー60の下方側部64の角度をより後方に傾斜するように形成することにより、配管カバー60の先端側の端部72をカバー水栓1の後方に傾斜させることとしても良い。しかしながら、このように配管カバー60の各部の角度を変更することのない汎用的な配管カバー60によって本発明を実施するには、前述した例のように、本体固定ステー50を、その固着片52の角度が傾けられたものとすることにより対応することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明はカバーを備えたカバー水栓に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1;カバー水栓、2;平面部、3;垂下部、4;温度調節ハンドル、5;上面部、6;安全ボタン、7;切換ハンドル、8;上面部、10;シャワーホース、12;エルボ、14;シャワーヘッド、15;接続金具、16;吐水口、20;水栓本体、22;水栓ボディ、24;温度調節カートリッジ、26;切換弁カートリッジ、27a,27b;止水栓接続部、28;シャワー配管、30;シャワー配管接続部、31;逆流防止弁ユニット、32a,32b;止水栓ユニット、34;止水栓、36;配管、37;第一固定用片、39;第二固定用片、42;ねじ、50;本体固定ステー、52;固着片、54a;第一取付部、54b;第二取付部、55;固定用孔、56a,56b;第二固定部、57;ねじ孔、60;配管カバー、62;正面部、63;開口、64;下方側部、65;固定用片、65a固定用孔、66;上方側部、67;開口、68;固定部、70;固着部、72;端部、80;化粧カバーステー、82;外枠、88;固定片、89;長孔、90;化粧カバー、92;抱持部、94;平面部、95;挿通部、96;固定片、A;基準面、B;傾き、X;立壁面。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯又は水を供給する配管が接続される止水栓等の水栓部品と、
前記水栓部品に対して取り付けられ湯水を混合する水栓本体と、
前記水栓本体を壁面などの取付部に固定するための本体固定ステーと、
少なくとも前記配管を被覆するための配管カバーと、
を備えたカバー水栓であって、
前記水栓部品及び前記配管カバーが、前記本体固定ステーに対して相互に位置決めされて固着可能であることを特徴とするカバー水栓。
【請求項2】
前記配管カバーは、前記本体固定ステーと固着される部位を基準にして、前記固着される部位に対する先端側の端部が、前記取付部に対して取り付け固定される前記本体固定ステーの取付面に対して、後方に傾斜して固着可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のカバー水栓。
【請求項3】
前記本体固定ステーに対して固定可能であるとともに前後方向に長い長孔が形成された化粧カバーステーと、前記化粧カバーステーに固定可能な化粧カバーを備え、
前記化粧カバーステーは、前記本体固定ステーのねじ孔に対して、前記長孔に挿通されるねじを介して前後方向にスライド調整可能に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカバー水栓。
【請求項4】
前記化粧カバーが前記化粧カバーステーに固定された状態において、前記ねじの頭が前記化粧カバーの裏面に当接可能に設けられたことを特徴とする請求項3に記載のカバー水栓。
【請求項5】
前記配管カバーは、前記配管及び前記水栓部品を被覆可能に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のカバー水栓。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−108298(P2013−108298A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254738(P2011−254738)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】