カバー部材
【課題】本発明の目的は、開口部をしっかりと封止した状態に維持することができ、開口部でのダニの通過を抑制することができるカバー部材を提供する。
【解決手段】このカバー部材10は、ダニの通過を制限する素材で袋状に形成されると共に、少なくとも一側辺に封止手段を有する開口部15が設けられており、内部に充填物を収容可能とされている。前記封止手段は、スライダー25によりエレメント23を噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナー20と、雌雄嵌合するシール条33によって開閉する構造のシールチャック30とを有する二重以上のファスナーで構成されている。
【解決手段】このカバー部材10は、ダニの通過を制限する素材で袋状に形成されると共に、少なくとも一側辺に封止手段を有する開口部15が設けられており、内部に充填物を収容可能とされている。前記封止手段は、スライダー25によりエレメント23を噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナー20と、雌雄嵌合するシール条33によって開閉する構造のシールチャック30とを有する二重以上のファスナーで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、まくら、マットレス、ふとん、座布団、クッション等に用いられるカバー部材に関し、特に、生きているダニや、その死骸、糞等に起因するいわゆるダニアレルギーを抑制できるカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息や、鼻炎、皮膚炎等のアレルギー性疾患は、いわゆるダニアレルギーが原因の一つであることが知られている。このダニアレルギーは、例えば、生きているダニや、その死骸、脱皮殻、卵等のダニ抗原をアレルゲンとして、体内に吸い込んだり、接触したりすることによって引き起こされる。また、ダニは、人のフケや垢等の有機物を餌に繁殖するため、前記ダニ抗原は、マットレス、布団、まくら等に多く存在している。
【0003】
これらのマットレスやまくら等のダニ対策として、例えば、下記特許文献1には、ダニ類を通さないシート状の布が用いられ、これを袋状に縫着し、かつ一側部に縫着に取付けられてダニ類を通さないスライドファスナーを有し、前記スライドファスナーを開閉して、ふとんを袋内に出し入れ可能とされており、更に、前記縫着された縫着部は、対峙する布の縁部分を重ねて二重折すると共に、返し縫いすることによりダニ類を通さないようにしたふとん用防ダニカバーが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、織布又は不織布のウェブと、ダニの排泄物等の通過を妨げる構成のファスナーとを含むアレルゲン阻害ケースであって、前記ウェブは、ポリウレタン−アクリレコートコポリマーフォームで被覆され、かつカレンダーによって1μmより小さい粒体をほぼ100%分離する程度に密度が高められている生地からなり、前記ファスナーは少なくとも三重になった生地を含む封止用帯状片の重なりによって、ケースの内面に封じ込められているアレルゲン阻害ケースが開示されている。なお、前記ファスナーは、スライダーにより開閉可能ないわゆるスライドファスナーであり、同スライドファスナーを構成する一対のテープの内側に前記封止用帯状片がそれぞれ積層されていて、一方の積層された封止用帯状片には、更に封止用帯が揺動可能に連結されている。そして、ケース内で過剰な圧力が生じると、前記封止用帯状片がファスナーの内側に当接すると共に、前記封止用帯が上方に揺動し、ファスナーの内側に当接して、ファスナーの封止が図られるようになっている。
【特許文献1】実公平4−37507号公報
【特許文献2】特許第3696088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ダニ類を通さないスライドファスナーによって、カバー開口部でのダニ類の通過が抑制されているが、スライダーによりエレメントを噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナーにおいては、ダニ類を通さない構造にすることが難しく、ダニ類を完全にシャットアウトすることが困難であった。また、就寝時等の使用中において、スライドファスナーが不意に開いてしまうこともあり、そのような場合にダニの通過を抑制することができなかった。
【0006】
一方、上記特許文献2では、ダニの排泄物等の通過を妨げる構成のファスナーと、その内側に積層された封止用帯状片と、封止用帯とによって、ケース開口部におけるダニの排泄物等の通過が抑制されている。しかしながら、封止用帯状片と封止用帯とをファスナーに密接させても、多少の隙間は生じてしまうので、やはりダニ類を完全にシャットアウトすることは困難であると考えられる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ファスナーによって開閉可能とされた開口部を有するカバー部材であって、開口部でのダニの通過をより確実に抑制することができるようにしたカバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のカバー部材は、ダニ抗原の通過を制限する素材で袋状に形成されると共に、少なくとも一側辺に封止手段を有する開口部が設けられており、内部に充填物を収容可能とされたカバー部材であって、前記封止手段は、スライダーによりエレメントを噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナーと、雌雄嵌合するシール条によって開閉する構造のシールチャックとを有する二重以上のファスナーで構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のカバー部材によれば、シールチャックを閉じることにより、開口部を気密的にシールしてダニの通過を制限することができると共に、スライドファスナーを閉じることによって、開口部を簡単に開かないように強固に閉じることができる。このように、スライドファスナーとシールチャックとを有する二重以上のファスナーからなる封止手段によって、開口部を封止するように構成したので、開口部をしっかりと封止した状態に維持することができ、生きているダニや死骸等のダニ抗原が開口部からカバー部材内へ入り込むことや、カバー部材内で繁殖したダニやその卵等のダニ抗原が、カバー部材内から外部へ排出されることが防止されて、ダニアレルギーを効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本発明のカバー部材においては、前記封止手段は、開口部に対して、外側に前記スライドファスナーが設けられ、内側に前記シールチャックが設けられていることが好ましい。これによれば、シールチャックの外側に設けられたスライドファスナーによってシールチャックを保護することができるので、シールチャックのシール状態を確実に保持することができ、開口部におけるダニの通過をより制限することができる。
【0011】
更に、本発明のカバー部材においては、前記シールチャックは、前記カバー部材の開口部の長さよりも長く形成されており、前記シールチャックの両端部は、前記カバー部材の開口部の両端部から前記カバー部材の内部に延出されて前記素材で覆われた構造をなしていることが好ましい。これによれば、カバー部材の開口部の両端部からカバー部材の内部に延出されたシールチャックの両端部によって、開口部両端のシール性が低下しやすい箇所を覆われるので、開口部をその全長に亘ってしっかりとシールすることができ、開口部でのダニの通過を一層制限することができる。
【0012】
また、本発明のカバー部材においては、前記スライドファスナーの前記エレメントの少なくとも片面には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティングが施されていることが好ましい。これによれば、スライドファスナーのエレメントの少なくとも片面には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティングが施されているので、シールチャックだけでなく、スライドファスナーによってもダニの通過を制限することができ、開口部でのダニの通過をより一層制限することができる。
【0013】
更に、本発明のカバー部材においては、まくら、マットレス、布団、座布団、クッション、から選ばれた1種のカバー部材として用いられることが好ましい。これによれば、ダニが生じやすい上記から選ばれたもののカバー部材として、好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカバー部材によれば、シールチャックにより開口部を気密的にシールしてダニの通過を制限すると共に、スライドファスナーにより開口部を強固に閉じて、二重以上のファスナーによって開口部を封止するように構成したので、開口部をしっかりと封止した状態に維持でき、ダニアレルギーを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜6を参照して、本発明のカバー部材の第1実施形態について説明する。
【0016】
本発明のカバー部材は、ダニ抗原の通過を制限して、ダニアレルギーを効果的に抑制することを目的としている。なお、本発明におけるダニ抗原とは、生きているダニや、ダニの死骸、ダニの糞、ダニの卵等のダニアレルギーのアレルゲンを意味している。
【0017】
本発明のカバー部材は、例えば、まくら、マットレス、布団、座布団、クッション等のカバーとして用いることができる。以下に説明する第1実施形態は、まくら用のカバー部材に適用されるものである。
【0018】
図1及び図2に示すように、このカバー部材10は、ダニの通過を制限する素材で形成された一対の細長い布生地11,11を重ね合わせ、各布生地11の一対の長辺12,12どうしと、一方の短辺13,13どうしとを縫い合わせることにより、他方の短辺13側に開口部15が設けられた袋状に形成されている。このカバー部材10の内部には、図示しないまくら本体が挿入されるようになっている。適用されるまくら本体は、特に限定されないが、例えば綿、ポリエステル綿、アクリル綿、そば殻、もみ殻、樹脂パイプ等からなる詰め物を、袋体に充填したまくらなどが用いられる。
【0019】
また、一対の布生地11,11の各辺の縫着部分は、図3の断面図に示す構造となっている。図3は、図1における一対の布生地11,11の各長辺12の縫着部分をIII−III矢示線に沿って見た断面であるが、他の側辺の縫着部分も同様な構造をなしている。すなわち、この縫着部分においては、各長辺12の周縁部12aが内方に折り曲げられて互いに重ね合わせられていて、更に各周縁部12a,12aの外側には、所定長さで伸びる断面略U字状の連結生地17が被せられている。このU字状の連結生地17は、前記布生地11と同じく、ダニの通過を制限する素材からなり、その両端部は、それぞれ内方に折り返されて二重折部17a,17aをなしている。そして、図3に示すように、連結生地17の各二重折部17a,17aで、各長辺12の周縁部12a,12aを挟み込んで、糸18で縫い付けることにより、複数の生地が重ね合わされた状態で縫着されている。
【0020】
このように、布生地11,11の各辺(一対の長辺12及び一方の短辺13)の周縁部12a,13aは、連結生地17を介して複数の生地が積層された状態で縫着されているので、縫着部分からのダニの通過を効果的に抑制できるようになっている。
【0021】
また、布生地11の他方の短辺13側は、その両端部のみ縫着されていて、短辺13の長さ方向中間部は縫着されていない状態となっており、この部分が前記開口部15をなしている。すなわち、開口部15は、布生地11の短辺13の全長に亘って設けられておらず、短辺13の両端部を除いた中間部分に設けられている。
【0022】
上記の袋状をなしたカバー部材10には、更に開口部15を開閉可能とする封止手段が設けられている。本発明のカバー部材は、この封止手段として、スライダー25によりエレメント23を噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナー20と、雌雄嵌合するシール条33によって開閉する構造のシールチャック30とを有する二重以上のファスナー(この実施形態では二重ファスナー)を採用した点に特徴がある。
【0023】
まず、図4及び図5を参照して、スライドファスナー20について説明する。このスライドファスナー20は、細長く帯状に伸びる一対のテープ21,21と、各テープ21,21の表面側の内側縁に沿って固設されたエレメント23と、各テープ21の両エレメント23,23を跨るようにスライド可能に装着されて、両エレメント23,23を歯合及び離脱させるスライダー25(図1参照)とを有している。なお、スライドファスナー20自体の構造は、周知の構造であるため、その詳細な説明を省略する。
【0024】
そして、このスライドファスナー20は、カバー部材10の開口部15に対して、次のように取付けられている。すなわち、図5に示すように、一対の布生地11,11の、他方の短辺13は、両端部を除く中間の周縁部13b,13bがそれぞれ内方へ折り曲げられていて、各周縁部13b,13bの内側に、スライドファスナー20の各テープ21,21が重ね合わされている。そして、各周縁部13bの折り曲げ部近傍及び各テープ21のエレメント23が固設された方の側部を糸18で縫い付けると共に、各周縁部13bの先端部及び各テープ21の他方の側部を、前述した二重折部17a,17aを有する連結生地17で挟み込んで、糸18で縫い付けることにより、各テープ21,21が、各布生地11の短辺13側周縁にそれぞれ縫着されて、開口部15にスライドファスナー20が取付けられるようになっている。
【0025】
このように、スライドファスナー20の各テープ21,21は、短辺13の各周縁部13b,13bに、2箇所の縫着箇所で縫い付けられているので、スライドファスナー20を強固に取付けることができる。また、各テープ21,21及び各周縁部13b,13bの基端部が連結生地17でそれぞれカバーされて、この連結生地17を介して複数の生地が積層された状態で縫着されているので、開口部15の内側に位置する縫着部分からのダニの通過を効果的に抑制できるようになっている。
【0026】
上記のように開口部15には、スライドファスナー20が取付けられているが、この実施形態においては、その内側に更にシールチャック30が取付けられている。図4及び図6(A)を併せて参照すると、このシールチャック30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂からなる細長い帯状の一対のテープ31,31と、一対のテープ31,31の各先端部の対向する内面から突設して、互いに雌雄嵌合するシール条33,33と、一対のテープ31,31の各先端部を跨るようにスライド可能に装着され、各シール条33,33を雌雄嵌合させると共にその嵌合を解除させる、断面略E字状のスライダー35とを有している。
【0027】
また、この実施形態の場合、図6(A)に示すように、一方のテープ31の先端内側からは、2つのシール条33が突設していて、それらの先端が外方に屈曲した爪状をなしており、他方のテープ31の先端内側からは、3つのシール条33が突設していて、両側のシール条33,33の先端が内方に屈曲した爪状をなし、一方のテープ31の2つのシール条33にそれぞれ嵌合するようになっている。
【0028】
更に、このシールチャック30は、図5に示すように、一対の布生地11,11の他方の短辺13側であって、前記スライドファスナー20の取付け位置よりも内側部分に、両シール条33,33を互いに対向する位置となるように、各テープ31,31の基端部を配設して、糸18により縫い付けることにより、各テープ31,31が各布生地11の短辺13側周縁に縫着されて、前記スライドファスナー20よりも、開口部15の内側にシールチャック30が取付けられるようになっている。
【0029】
また、上記シールチャック30は、その長さが開口部15の長さよりも長く形成されている。そして、図1,2及び図4に示すように、シールチャック30の両端部は、カバー部材10の開口部15の両端部から、カバー部材10の内部に延出されている。そして、図4の破線イで示すように、シールチャック30の両端部を囲むように、一対の布生地11,11が袋状に縫着されている。その結果、シールチャック30の両端部は、布生地11の短辺13の縫着された両端部により覆われた構造をなしている。
【0030】
なお、シールチャック30としては、図6(B)に示すように、一方のテープ31の先端内側から突設した錨状のシール条33を設け、他方のテープ31の先端内側から略U字状に屈曲する2つのシール条33,33を設けて、その先端部を内方に屈曲させて爪状として、前記錨状のシール条33の両側段部にそれぞれ嵌合させるようにしてもよく、特に限定されるものではない。
【0031】
また、上述した縫着部分における糸18の縫い目は、6つ以上/1cmであることが好ましい。これによって各生地を強固に縫着できると共に、縫い目の間隔を小さくして、ダニの通過をより妨げやすくすることができる。また、上記のダニの通過を制限する素材としては、例えば、綿,カポック,亜麻等の天然セルロース繊維や、ビスコースレーヨン,銅アンモニアレーヨン等のセルロース再生繊維等のセルロース質からなる繊維に、タンニン酸等のアレルゲン不活性化剤を付着させてなるものを好ましく用いることができる。また、ダニの通過を制限する素材で形成された布生地11及び連結生地17の、繊維と繊維との間の隙間は50μm以下であることが好ましい。こうすると、生きているダニや、死骸、糞、卵等の布生地11又は連結生地17からの出入りが困難となり、ダニの通過を効果的に抑制することができる。
【0032】
次に、上記構成からなる本発明のカバー部材の使用方法について説明する。
【0033】
すなわち、図2に示すカバー部材10の開口部15が閉じられた状態から、スライダー25を矢印A方向にスライドさせると、両エレメント23,23が離脱してスライドファスナー20が開き、スライダー35を矢印B方向にスライドさせると、シール条33,33の嵌合が解除されてシールチャック30が開き、図1に示すように、カバー部材10の開口部15を開くことができ、ポリエステル綿等の充填物を収容できると共に適宜交換することができる。
【0034】
そして、図1に示す開口部15が開いた状態から、スライダー35を矢印A方向にスライドさせると、シール条33,33が互いに雌雄嵌合してシールチャック30が閉じ、スライダー25を矢印B方向にスライドさせると、エレメント23,23が互いに歯合してスライドファスナー20が閉じ、図2に示すように、カバー部材10の開口部15を閉じることができる。
【0035】
このとき、本発明のカバー部材10においては、シールチャック30を閉じることにより、開口部15を気密的にシールしてダニの通過を制限することができると共に、スライドファスナー20を閉じることによって、開口部15を簡単に開かないように強固に閉じることができる。このように、このカバー部材10においては、スライドファスナー20とシールチャック30とを有する二重以上のファスナーからなる封止手段によって、開口部15を封止するように構成したので、開口部15をしっかりと封止した状態に維持することができる。その結果、生きているダニや、死骸等のダニ抗原が、開口部15からカバー部材内へ入り込むことや、カバー部材10内で繁殖したダニやその卵等のダニ抗原が、カバー部材10内から外部へ排出されることを防止することができ、ダニアレルギーを効果的に抑制することができる。
【0036】
また、図4に示すように、この実施形態の開口部15においては、スライドファスナー20の内側にシールチャック30が設けられているので、スライドファスナー20によってシールチャック30を保護することができ、その結果、シールチャック30のシール状態をより確実に保持することができる。
【0037】
更に同図4に示すように、この実施形態においては、シールチャック30の両端部が、布生地11の短辺13の縫着された両端部により覆われた構造をなしているので、開口部15両端のシール性が低下しやすい箇所を覆うことができ、その結果、開口部15をその全長に亘ってしっかりとシールすることができ、開口部15でのダニの通過を一層制限することができる。
【0038】
図7には、本発明によるカバー部材の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この実施形態のカバー部材10は、前記実施形態と比べてスライドファスナーの構造が異なっている。すなわち、この実施形態におけるスライドファスナー20aは、一対のテープ21,21の裏面側の内周縁に沿って、エレメント23,23がそれぞれ配設されており、更に、このエレメント23,23の表面側には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティング24,24がそれぞれ施されている。そして、スライダー25をスライドさせエレメント23,23を歯合させて、開口部15を閉じた場合には、各エレメント23,23は、開口部15の内側に位置していて、コーティング24が開口部15の外側に位置するようになっている(図7参照)。この実施形態によれば、コーティング24によって、スライドファスナー20aの表面側でのシール性を向上させることができ、その結果、シールチャック30だけでなく、スライドファスナー20によってもダニの通過を制限することができるので、カバー部材10の開口部15でのダニの通過をより一層効果的に制限することができる。
【0040】
図8及び図9には、本発明によるカバー部材の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0041】
この実施形態のカバー部材10aは、マットレスM用のカバー部材10aとされている点が、前記第1,第2実施形態と相違している。すなわち、このカバー部材10aは、所定間隔を設けてほぼ平行に配設された一対の細長の布生地11,11と、該一対の布生地11,11の外周を囲む側生地19とを有している。また、前記側生地19は、一方の布生地11に対して、その全周縁に対して縫い付けられて縫着されており、他方の布生地11に対しては、下側の長辺12の周縁、及び、左右両側の一対の短辺13,13の長さ方向途中に至るまでの周縁が縫い付けられて縫着されていて、その他の部分が開口部15をなしている。また、この開口部15には、スライドファスナー20及びシールチャック30がそれぞれ取付けられている。
【0042】
ふとんにおいては、ダニ対策がなされたものが既に市販されているが、マットレスにおいては、ダニ対策を施すことがふとんより難しいという問題がある。しかし、マットレスMをカバー部材10aで覆うことにより、マットレスMに対してもダニ対策を施すことが可能となる。なお、このカバー部材10aは、上側の長辺12及び左右の短辺13,13の途中までを、図8に示すように大きく開かせることができるので、マットレスMのような大型の寝具でも容易にカバー部材10a内に収容することができる。
【0043】
図10及び図11には、本発明によるカバー部材の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0044】
この実施形態のカバー部材10bは、前記第3実施形態と同様に、マットレスM用のカバー部材として用いられるものである。そして、この実施形態においては、前記第1〜3の各実施形態と比較して、シールチャック自体の構造及び開口部15への取付け構造が異なっている。
【0045】
具体的に説明すると、このカバー部材10bは、一対の細長の布生地11,11と、該一対の布生地11,11の間に配設される側生地19とを有し、一対の布生地11,11の長辺12及び短辺13を、側生地19にそれぞれ縫い付けることにより袋状に縫製されたもので、更に、前記側生地19のほぼ中央に、布生地11の外周に沿って所定範囲で開口部15が設けられた構造をなしている。また、長辺12の周縁部12aと側生地19の周縁部19a、及び、短辺13の周縁部13aと側生地19の周縁部19aを、それぞれ内方へ折り曲げて重ね合わせて、略U字状の連結生地17で挟み込んで縫着することにより、布生地11の各辺12,13と側生地19とが連結されている(図11(a)参照)。
【0046】
また、前記側生地19に設けた開口部15に対して、スライドファスナー20及びシールチャック30aは、次のようにして取り付けられている。図11(a),(b)を参照して説明すると、開口部15により分割された側生地19の各辺は、それぞれ内方へ折り曲げられていて、開口部15内方に向かって所定長さで延出した延長片19b,19bをなしている。各延長片19b,19bの折り曲げ部近傍の内側には、一対のテープ21,21がそれぞれ縫着されていて、開口部15にスライドファスナー20が取り付けられている。
【0047】
開口部15に取り付けたスライドファスナー20の更に内側には、シールチャック30aが取り付けられている。前記実施形態においては、図5に示すように、シールチャック30を構成するテープ31が布生地11に直接縫着されていたが、この第4実施形態においては異なっている。
【0048】
すなわち、シールチャック30aを構成する細長帯状の一対のテープ31,31は、その各外面(対向する内面とは反対側の面)に、細長の帯状をなす取付片36が重ね合わされて、更に同取付片36の周縁部36a,36aが折り曲げられて、一対のテープ31,31の長さ方向の両側周縁部が覆われるようになっている。この取付片36は、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維から形成されたもので、ポリエチレン等の合成樹脂からなるシールチャック30aの各テープ31,31に、所定の溶着手段(超音波ミシン等)によって予め溶着できるようになっている。
【0049】
そして、各テープ31,31は、上記のように予め溶着された取付片36を介して、側生地19の各延長片19b,19bにそれぞれ縫着されるようになっている。すなわち、延長片19b,19bの各先端部、すなわち、前記スライドファスナー20の取付け位置よりも開口部15内側位置に、各テープ31,31を取付片36を介して配設する。そして、延長片19bの最先端部を折り曲げて、テープ31及び取付片36の一方の周縁部を挟み込んで糸18で延長片19bに縫着すると共に、同テープ31及び取付片36の他方の周縁部を延長片19bに糸18で縫着することにより、シールチャック30aが取り付けられるようになっている。
【0050】
ところで、テープ31を側生地19の延長片19bに直接縫着しようとすると、平滑なテープ31が延長片19b上で滑ってしまって縫着位置がずれてしまう恐れがある。また、テープ31を縫着した後、テープ31に過度の力が作用した場合には、テープ31表面が変形して、波打ったような状態となってシールチャックの動作がスムーズになされない恐れがある。
【0051】
これに対してこの実施形態における各テープ31,31は、延長片19b上で滑りにくい取付片36が予め溶着されていて、該取付片36を介して側生地19の延長片19bに縫着されるので、取付片36が延長片19b上で滑りにくく、所定の縫着位置に確実に取り付けることができる。また、取付片36を介してテープ31が延長片19bに取り付けられているので、テープ31の剛性を高めることができ、上記のような波打ち状態の変形を防止して、シールチャック30aの嵌着・解除動作を確実かつスムーズに行うことができる。
【0052】
そして、この第4実施形態における、前記実施形態のシールチャックとの最も大きな相違点は次の点にある。すなわち、前記実施形態においては、シールチャック30には、各シール条33,33を雌雄嵌合させるスライダー35が装着されていたが、この第4実施形態のシールチャック30aにおいては、一対のテープ31,31の各先端部から、スライダー37が取り外せる構造となっている。
【0053】
図10に示すように、このスライダー37は、帯状の底壁37aと、該底壁37aの両側縁から所定高さで立設した側壁37b,37bとからなる断面略U字状をなしている。そして、スライダー37をシールチャック30aから取り外し可能としたことにより、図10に示すように、前記一対の延長片19b,19bに取り付けられた、シールチャック30aのテープ31,31の対向する両端部(始端部及び終端部)どうしを突き合わせて、糸18によって縫着することができるようになっている。
【0054】
上記構成からなる第4実施形態の使用方法について説明すると、シールチャック30aを閉じる際には、図11(b)に示すように、両延長片19b,19bの先端部に設けた各テープ31,31を近接させつつ、対向するシール条33,33を整合させた状態とする。その状態で、図10に示すように、スライダー37の一対の側壁37b,37bにより、テープ31,31を挟み込むようにして、シールチャック30aのテープ31,31の始端部に装着する。そして、スライダー37をテープ31に沿ってスライドさせることにより、両シール条が雌雄嵌合してシールチャック30aが閉じることができる。次いでスライドファスナー20のスライダー25をスライドさせることによって、開口部15を閉じることができる。
【0055】
このとき、この第4実施形態においては、シールチャック30aが、雌雄嵌合するシール条33を有するテープ31,31と、シール条33,33を雌雄嵌合させるためのスライダー37とからなると共に、同スライダー37をテープ31,31から取り外し可能とされ、かつ、テープ31,31の両端部どうしが接合されるように構成されているので、スライダー37がテープ31先端に装着されることによって生じる、テープ31,31の両端部の隙間を完全になくすことができ、ダニ抗原が通過することをより確実に防止することができる。
【実施例】
【0056】
実施例のカバー部材の、ダニの通過量を測定した。
(1)試験準備
(a)ダミー収容体の作製
まず、カバー部材に充填される収容物の代わりとして、ダミー収容体50を作製した。すなわち、このダミー収容体50は、長方形状をなした枠状プレートからなる枠体51(長辺:1800mm,短辺:900mm)と、該枠体51の各辺に所定間隔をおいて複数配設されると共に、ダニトラップを収容した複数のダニトラップケース53(縦200mm、横130mm)とから構成されている。また、ダニトラップケース53は、その下方に開口部53aが形成されており、更に、90度のアングル55を介して、前記枠体51に固定されている。
(b)ダニトラップの準備
ダニトラップは、ダニが自由に通過できるようにポリエステルサテンで作製された袋(80mm×100mm)に、脱脂綿で包まれたダニ飼育用飼料(実権動物用粉末飼料及び乾燥酵母を等量混合してなる)が、羊毛と共に充填されて構成されている。
(c)カバー部材の選定
カバー部材としては、図10,11に示すマットレス用のカバー部材10bを用いた。その寸法は、横200cm、縦100、厚さ25cmである。
【0057】
(2)試験方法
(a)ダミー収容体の配置
上記カバー部材内に図12及び図13に示すように、ダニトラップを備えるダミー収容体50を収納し、シールチャック30a、及び、スライドファスナー20を閉じて、開口部15を閉じた状態にセットした。
(b)ダニ培地の設置
試験に用いるダニは、ヤケヒョウダニを用いた。これが生息するダニ培地0.025gを8回、飽和食塩水浮遊法によって生存ダニ数を計数し、その数から約10000匹相当のダニを含むダニ培地の分取量を計算によって求めた。次いで、ダニ培地を十分に攪拌した後、計算で求めた分取量分だけ量り取り、これを5つのガラス製シャーレS(直径40mm、高さ15mm)の中にそれぞればらまき、各シャーレSをカバー部材10bの四隅及び上面に各々配設した。
(c)試験条件
上記状態のカバー部材10bを、室温が約25℃、相対湿度が約84%の環境下とされた実験室内に配置して、これを4日間放置して、ダニがカバー部材のどの箇所に何匹、集まっているかを測定した。
【0058】
(3)試験結果
(a)ダニトラップ
図13に示すカバー部材の各側面E,F,G,Hの内側にそれぞれ配置したダニトラップにおけるダニ数を計数した。すなわち、ダニトラップに捕捉されたダニを、水洗い法及び飽和食塩水浮遊法によって分離して数えた。なお、側面Eがファスナー側の面である。この結果を下記表1に示す。ここで見つかるダニは、カバー部材を通過したダニを意味している。
(b)カバー部材の側面及び上面
図13に示すカバー部材の各側面E,F,G,H及び上面におけるダニ数を計数した。すなわち、ダニ採取用袋を装着した電気掃除機により吸い取って、これを水洗い法及び飽和食塩水浮遊法によって数えた。この結果を下記表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記表1,2の結果から、ダニ培地から這いだしてカバー部材の側面及び上面に付着したダニは合計で8745匹も確認できたものの、カバー部材内のダニトラップにおいては、僅か28匹しか確認できず、このカバー部材における、ダニの通過防止効果が極めて高いことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のカバー部材の第1実施形態を示しており、開口部が開いた状態の斜視図である。
【図2】同カバー部材の開口部が閉じた状態の斜視図である。
【図3】図1におけるIII-III矢示線に沿った断面図である。
【図4】同カバー部材の要部拡大斜視図である。
【図5】スライドファスナー取付け部の断面図である。
【図6】同カバー部材を構成するシールチャックを示しており、(A)はその拡大斜視図、(B)は他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明のカバー部材の第2実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】本発明のカバー部材の第3実施形態を示す斜視図である。
【図9】同カバー部材の要部拡大斜視図である。
【図10】本発明のカバー部材の第4実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図11】スライドファスナー及びシールチャック取付け部の断面図である。
【図12】カバー部材における、ダニ通過量の測定試験を説明するための斜視図である。
【図13】同ダニ通過量の測定試験の概略説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10,10a カバー部材
11 各布生地
12 長辺、12a 周縁部
13 短辺、13a,13b 周縁部
15 開口部
17 連結生地、17a 二重折部
18 糸
19 側生地
20,20a スライドファスナー
21 テープ
23 エレメント
24 コーティング
25 スライダー
30,30a シールチャック
31 テープ
33 シール条
35,37 スライダー
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、まくら、マットレス、ふとん、座布団、クッション等に用いられるカバー部材に関し、特に、生きているダニや、その死骸、糞等に起因するいわゆるダニアレルギーを抑制できるカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息や、鼻炎、皮膚炎等のアレルギー性疾患は、いわゆるダニアレルギーが原因の一つであることが知られている。このダニアレルギーは、例えば、生きているダニや、その死骸、脱皮殻、卵等のダニ抗原をアレルゲンとして、体内に吸い込んだり、接触したりすることによって引き起こされる。また、ダニは、人のフケや垢等の有機物を餌に繁殖するため、前記ダニ抗原は、マットレス、布団、まくら等に多く存在している。
【0003】
これらのマットレスやまくら等のダニ対策として、例えば、下記特許文献1には、ダニ類を通さないシート状の布が用いられ、これを袋状に縫着し、かつ一側部に縫着に取付けられてダニ類を通さないスライドファスナーを有し、前記スライドファスナーを開閉して、ふとんを袋内に出し入れ可能とされており、更に、前記縫着された縫着部は、対峙する布の縁部分を重ねて二重折すると共に、返し縫いすることによりダニ類を通さないようにしたふとん用防ダニカバーが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、織布又は不織布のウェブと、ダニの排泄物等の通過を妨げる構成のファスナーとを含むアレルゲン阻害ケースであって、前記ウェブは、ポリウレタン−アクリレコートコポリマーフォームで被覆され、かつカレンダーによって1μmより小さい粒体をほぼ100%分離する程度に密度が高められている生地からなり、前記ファスナーは少なくとも三重になった生地を含む封止用帯状片の重なりによって、ケースの内面に封じ込められているアレルゲン阻害ケースが開示されている。なお、前記ファスナーは、スライダーにより開閉可能ないわゆるスライドファスナーであり、同スライドファスナーを構成する一対のテープの内側に前記封止用帯状片がそれぞれ積層されていて、一方の積層された封止用帯状片には、更に封止用帯が揺動可能に連結されている。そして、ケース内で過剰な圧力が生じると、前記封止用帯状片がファスナーの内側に当接すると共に、前記封止用帯が上方に揺動し、ファスナーの内側に当接して、ファスナーの封止が図られるようになっている。
【特許文献1】実公平4−37507号公報
【特許文献2】特許第3696088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ダニ類を通さないスライドファスナーによって、カバー開口部でのダニ類の通過が抑制されているが、スライダーによりエレメントを噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナーにおいては、ダニ類を通さない構造にすることが難しく、ダニ類を完全にシャットアウトすることが困難であった。また、就寝時等の使用中において、スライドファスナーが不意に開いてしまうこともあり、そのような場合にダニの通過を抑制することができなかった。
【0006】
一方、上記特許文献2では、ダニの排泄物等の通過を妨げる構成のファスナーと、その内側に積層された封止用帯状片と、封止用帯とによって、ケース開口部におけるダニの排泄物等の通過が抑制されている。しかしながら、封止用帯状片と封止用帯とをファスナーに密接させても、多少の隙間は生じてしまうので、やはりダニ類を完全にシャットアウトすることは困難であると考えられる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ファスナーによって開閉可能とされた開口部を有するカバー部材であって、開口部でのダニの通過をより確実に抑制することができるようにしたカバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のカバー部材は、ダニ抗原の通過を制限する素材で袋状に形成されると共に、少なくとも一側辺に封止手段を有する開口部が設けられており、内部に充填物を収容可能とされたカバー部材であって、前記封止手段は、スライダーによりエレメントを噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナーと、雌雄嵌合するシール条によって開閉する構造のシールチャックとを有する二重以上のファスナーで構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のカバー部材によれば、シールチャックを閉じることにより、開口部を気密的にシールしてダニの通過を制限することができると共に、スライドファスナーを閉じることによって、開口部を簡単に開かないように強固に閉じることができる。このように、スライドファスナーとシールチャックとを有する二重以上のファスナーからなる封止手段によって、開口部を封止するように構成したので、開口部をしっかりと封止した状態に維持することができ、生きているダニや死骸等のダニ抗原が開口部からカバー部材内へ入り込むことや、カバー部材内で繁殖したダニやその卵等のダニ抗原が、カバー部材内から外部へ排出されることが防止されて、ダニアレルギーを効果的に抑制することができる。
【0010】
また、本発明のカバー部材においては、前記封止手段は、開口部に対して、外側に前記スライドファスナーが設けられ、内側に前記シールチャックが設けられていることが好ましい。これによれば、シールチャックの外側に設けられたスライドファスナーによってシールチャックを保護することができるので、シールチャックのシール状態を確実に保持することができ、開口部におけるダニの通過をより制限することができる。
【0011】
更に、本発明のカバー部材においては、前記シールチャックは、前記カバー部材の開口部の長さよりも長く形成されており、前記シールチャックの両端部は、前記カバー部材の開口部の両端部から前記カバー部材の内部に延出されて前記素材で覆われた構造をなしていることが好ましい。これによれば、カバー部材の開口部の両端部からカバー部材の内部に延出されたシールチャックの両端部によって、開口部両端のシール性が低下しやすい箇所を覆われるので、開口部をその全長に亘ってしっかりとシールすることができ、開口部でのダニの通過を一層制限することができる。
【0012】
また、本発明のカバー部材においては、前記スライドファスナーの前記エレメントの少なくとも片面には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティングが施されていることが好ましい。これによれば、スライドファスナーのエレメントの少なくとも片面には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティングが施されているので、シールチャックだけでなく、スライドファスナーによってもダニの通過を制限することができ、開口部でのダニの通過をより一層制限することができる。
【0013】
更に、本発明のカバー部材においては、まくら、マットレス、布団、座布団、クッション、から選ばれた1種のカバー部材として用いられることが好ましい。これによれば、ダニが生じやすい上記から選ばれたもののカバー部材として、好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカバー部材によれば、シールチャックにより開口部を気密的にシールしてダニの通過を制限すると共に、スライドファスナーにより開口部を強固に閉じて、二重以上のファスナーによって開口部を封止するように構成したので、開口部をしっかりと封止した状態に維持でき、ダニアレルギーを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜6を参照して、本発明のカバー部材の第1実施形態について説明する。
【0016】
本発明のカバー部材は、ダニ抗原の通過を制限して、ダニアレルギーを効果的に抑制することを目的としている。なお、本発明におけるダニ抗原とは、生きているダニや、ダニの死骸、ダニの糞、ダニの卵等のダニアレルギーのアレルゲンを意味している。
【0017】
本発明のカバー部材は、例えば、まくら、マットレス、布団、座布団、クッション等のカバーとして用いることができる。以下に説明する第1実施形態は、まくら用のカバー部材に適用されるものである。
【0018】
図1及び図2に示すように、このカバー部材10は、ダニの通過を制限する素材で形成された一対の細長い布生地11,11を重ね合わせ、各布生地11の一対の長辺12,12どうしと、一方の短辺13,13どうしとを縫い合わせることにより、他方の短辺13側に開口部15が設けられた袋状に形成されている。このカバー部材10の内部には、図示しないまくら本体が挿入されるようになっている。適用されるまくら本体は、特に限定されないが、例えば綿、ポリエステル綿、アクリル綿、そば殻、もみ殻、樹脂パイプ等からなる詰め物を、袋体に充填したまくらなどが用いられる。
【0019】
また、一対の布生地11,11の各辺の縫着部分は、図3の断面図に示す構造となっている。図3は、図1における一対の布生地11,11の各長辺12の縫着部分をIII−III矢示線に沿って見た断面であるが、他の側辺の縫着部分も同様な構造をなしている。すなわち、この縫着部分においては、各長辺12の周縁部12aが内方に折り曲げられて互いに重ね合わせられていて、更に各周縁部12a,12aの外側には、所定長さで伸びる断面略U字状の連結生地17が被せられている。このU字状の連結生地17は、前記布生地11と同じく、ダニの通過を制限する素材からなり、その両端部は、それぞれ内方に折り返されて二重折部17a,17aをなしている。そして、図3に示すように、連結生地17の各二重折部17a,17aで、各長辺12の周縁部12a,12aを挟み込んで、糸18で縫い付けることにより、複数の生地が重ね合わされた状態で縫着されている。
【0020】
このように、布生地11,11の各辺(一対の長辺12及び一方の短辺13)の周縁部12a,13aは、連結生地17を介して複数の生地が積層された状態で縫着されているので、縫着部分からのダニの通過を効果的に抑制できるようになっている。
【0021】
また、布生地11の他方の短辺13側は、その両端部のみ縫着されていて、短辺13の長さ方向中間部は縫着されていない状態となっており、この部分が前記開口部15をなしている。すなわち、開口部15は、布生地11の短辺13の全長に亘って設けられておらず、短辺13の両端部を除いた中間部分に設けられている。
【0022】
上記の袋状をなしたカバー部材10には、更に開口部15を開閉可能とする封止手段が設けられている。本発明のカバー部材は、この封止手段として、スライダー25によりエレメント23を噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナー20と、雌雄嵌合するシール条33によって開閉する構造のシールチャック30とを有する二重以上のファスナー(この実施形態では二重ファスナー)を採用した点に特徴がある。
【0023】
まず、図4及び図5を参照して、スライドファスナー20について説明する。このスライドファスナー20は、細長く帯状に伸びる一対のテープ21,21と、各テープ21,21の表面側の内側縁に沿って固設されたエレメント23と、各テープ21の両エレメント23,23を跨るようにスライド可能に装着されて、両エレメント23,23を歯合及び離脱させるスライダー25(図1参照)とを有している。なお、スライドファスナー20自体の構造は、周知の構造であるため、その詳細な説明を省略する。
【0024】
そして、このスライドファスナー20は、カバー部材10の開口部15に対して、次のように取付けられている。すなわち、図5に示すように、一対の布生地11,11の、他方の短辺13は、両端部を除く中間の周縁部13b,13bがそれぞれ内方へ折り曲げられていて、各周縁部13b,13bの内側に、スライドファスナー20の各テープ21,21が重ね合わされている。そして、各周縁部13bの折り曲げ部近傍及び各テープ21のエレメント23が固設された方の側部を糸18で縫い付けると共に、各周縁部13bの先端部及び各テープ21の他方の側部を、前述した二重折部17a,17aを有する連結生地17で挟み込んで、糸18で縫い付けることにより、各テープ21,21が、各布生地11の短辺13側周縁にそれぞれ縫着されて、開口部15にスライドファスナー20が取付けられるようになっている。
【0025】
このように、スライドファスナー20の各テープ21,21は、短辺13の各周縁部13b,13bに、2箇所の縫着箇所で縫い付けられているので、スライドファスナー20を強固に取付けることができる。また、各テープ21,21及び各周縁部13b,13bの基端部が連結生地17でそれぞれカバーされて、この連結生地17を介して複数の生地が積層された状態で縫着されているので、開口部15の内側に位置する縫着部分からのダニの通過を効果的に抑制できるようになっている。
【0026】
上記のように開口部15には、スライドファスナー20が取付けられているが、この実施形態においては、その内側に更にシールチャック30が取付けられている。図4及び図6(A)を併せて参照すると、このシールチャック30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等の合成樹脂からなる細長い帯状の一対のテープ31,31と、一対のテープ31,31の各先端部の対向する内面から突設して、互いに雌雄嵌合するシール条33,33と、一対のテープ31,31の各先端部を跨るようにスライド可能に装着され、各シール条33,33を雌雄嵌合させると共にその嵌合を解除させる、断面略E字状のスライダー35とを有している。
【0027】
また、この実施形態の場合、図6(A)に示すように、一方のテープ31の先端内側からは、2つのシール条33が突設していて、それらの先端が外方に屈曲した爪状をなしており、他方のテープ31の先端内側からは、3つのシール条33が突設していて、両側のシール条33,33の先端が内方に屈曲した爪状をなし、一方のテープ31の2つのシール条33にそれぞれ嵌合するようになっている。
【0028】
更に、このシールチャック30は、図5に示すように、一対の布生地11,11の他方の短辺13側であって、前記スライドファスナー20の取付け位置よりも内側部分に、両シール条33,33を互いに対向する位置となるように、各テープ31,31の基端部を配設して、糸18により縫い付けることにより、各テープ31,31が各布生地11の短辺13側周縁に縫着されて、前記スライドファスナー20よりも、開口部15の内側にシールチャック30が取付けられるようになっている。
【0029】
また、上記シールチャック30は、その長さが開口部15の長さよりも長く形成されている。そして、図1,2及び図4に示すように、シールチャック30の両端部は、カバー部材10の開口部15の両端部から、カバー部材10の内部に延出されている。そして、図4の破線イで示すように、シールチャック30の両端部を囲むように、一対の布生地11,11が袋状に縫着されている。その結果、シールチャック30の両端部は、布生地11の短辺13の縫着された両端部により覆われた構造をなしている。
【0030】
なお、シールチャック30としては、図6(B)に示すように、一方のテープ31の先端内側から突設した錨状のシール条33を設け、他方のテープ31の先端内側から略U字状に屈曲する2つのシール条33,33を設けて、その先端部を内方に屈曲させて爪状として、前記錨状のシール条33の両側段部にそれぞれ嵌合させるようにしてもよく、特に限定されるものではない。
【0031】
また、上述した縫着部分における糸18の縫い目は、6つ以上/1cmであることが好ましい。これによって各生地を強固に縫着できると共に、縫い目の間隔を小さくして、ダニの通過をより妨げやすくすることができる。また、上記のダニの通過を制限する素材としては、例えば、綿,カポック,亜麻等の天然セルロース繊維や、ビスコースレーヨン,銅アンモニアレーヨン等のセルロース再生繊維等のセルロース質からなる繊維に、タンニン酸等のアレルゲン不活性化剤を付着させてなるものを好ましく用いることができる。また、ダニの通過を制限する素材で形成された布生地11及び連結生地17の、繊維と繊維との間の隙間は50μm以下であることが好ましい。こうすると、生きているダニや、死骸、糞、卵等の布生地11又は連結生地17からの出入りが困難となり、ダニの通過を効果的に抑制することができる。
【0032】
次に、上記構成からなる本発明のカバー部材の使用方法について説明する。
【0033】
すなわち、図2に示すカバー部材10の開口部15が閉じられた状態から、スライダー25を矢印A方向にスライドさせると、両エレメント23,23が離脱してスライドファスナー20が開き、スライダー35を矢印B方向にスライドさせると、シール条33,33の嵌合が解除されてシールチャック30が開き、図1に示すように、カバー部材10の開口部15を開くことができ、ポリエステル綿等の充填物を収容できると共に適宜交換することができる。
【0034】
そして、図1に示す開口部15が開いた状態から、スライダー35を矢印A方向にスライドさせると、シール条33,33が互いに雌雄嵌合してシールチャック30が閉じ、スライダー25を矢印B方向にスライドさせると、エレメント23,23が互いに歯合してスライドファスナー20が閉じ、図2に示すように、カバー部材10の開口部15を閉じることができる。
【0035】
このとき、本発明のカバー部材10においては、シールチャック30を閉じることにより、開口部15を気密的にシールしてダニの通過を制限することができると共に、スライドファスナー20を閉じることによって、開口部15を簡単に開かないように強固に閉じることができる。このように、このカバー部材10においては、スライドファスナー20とシールチャック30とを有する二重以上のファスナーからなる封止手段によって、開口部15を封止するように構成したので、開口部15をしっかりと封止した状態に維持することができる。その結果、生きているダニや、死骸等のダニ抗原が、開口部15からカバー部材内へ入り込むことや、カバー部材10内で繁殖したダニやその卵等のダニ抗原が、カバー部材10内から外部へ排出されることを防止することができ、ダニアレルギーを効果的に抑制することができる。
【0036】
また、図4に示すように、この実施形態の開口部15においては、スライドファスナー20の内側にシールチャック30が設けられているので、スライドファスナー20によってシールチャック30を保護することができ、その結果、シールチャック30のシール状態をより確実に保持することができる。
【0037】
更に同図4に示すように、この実施形態においては、シールチャック30の両端部が、布生地11の短辺13の縫着された両端部により覆われた構造をなしているので、開口部15両端のシール性が低下しやすい箇所を覆うことができ、その結果、開口部15をその全長に亘ってしっかりとシールすることができ、開口部15でのダニの通過を一層制限することができる。
【0038】
図7には、本発明によるカバー部材の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0039】
この実施形態のカバー部材10は、前記実施形態と比べてスライドファスナーの構造が異なっている。すなわち、この実施形態におけるスライドファスナー20aは、一対のテープ21,21の裏面側の内周縁に沿って、エレメント23,23がそれぞれ配設されており、更に、このエレメント23,23の表面側には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティング24,24がそれぞれ施されている。そして、スライダー25をスライドさせエレメント23,23を歯合させて、開口部15を閉じた場合には、各エレメント23,23は、開口部15の内側に位置していて、コーティング24が開口部15の外側に位置するようになっている(図7参照)。この実施形態によれば、コーティング24によって、スライドファスナー20aの表面側でのシール性を向上させることができ、その結果、シールチャック30だけでなく、スライドファスナー20によってもダニの通過を制限することができるので、カバー部材10の開口部15でのダニの通過をより一層効果的に制限することができる。
【0040】
図8及び図9には、本発明によるカバー部材の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0041】
この実施形態のカバー部材10aは、マットレスM用のカバー部材10aとされている点が、前記第1,第2実施形態と相違している。すなわち、このカバー部材10aは、所定間隔を設けてほぼ平行に配設された一対の細長の布生地11,11と、該一対の布生地11,11の外周を囲む側生地19とを有している。また、前記側生地19は、一方の布生地11に対して、その全周縁に対して縫い付けられて縫着されており、他方の布生地11に対しては、下側の長辺12の周縁、及び、左右両側の一対の短辺13,13の長さ方向途中に至るまでの周縁が縫い付けられて縫着されていて、その他の部分が開口部15をなしている。また、この開口部15には、スライドファスナー20及びシールチャック30がそれぞれ取付けられている。
【0042】
ふとんにおいては、ダニ対策がなされたものが既に市販されているが、マットレスにおいては、ダニ対策を施すことがふとんより難しいという問題がある。しかし、マットレスMをカバー部材10aで覆うことにより、マットレスMに対してもダニ対策を施すことが可能となる。なお、このカバー部材10aは、上側の長辺12及び左右の短辺13,13の途中までを、図8に示すように大きく開かせることができるので、マットレスMのような大型の寝具でも容易にカバー部材10a内に収容することができる。
【0043】
図10及び図11には、本発明によるカバー部材の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0044】
この実施形態のカバー部材10bは、前記第3実施形態と同様に、マットレスM用のカバー部材として用いられるものである。そして、この実施形態においては、前記第1〜3の各実施形態と比較して、シールチャック自体の構造及び開口部15への取付け構造が異なっている。
【0045】
具体的に説明すると、このカバー部材10bは、一対の細長の布生地11,11と、該一対の布生地11,11の間に配設される側生地19とを有し、一対の布生地11,11の長辺12及び短辺13を、側生地19にそれぞれ縫い付けることにより袋状に縫製されたもので、更に、前記側生地19のほぼ中央に、布生地11の外周に沿って所定範囲で開口部15が設けられた構造をなしている。また、長辺12の周縁部12aと側生地19の周縁部19a、及び、短辺13の周縁部13aと側生地19の周縁部19aを、それぞれ内方へ折り曲げて重ね合わせて、略U字状の連結生地17で挟み込んで縫着することにより、布生地11の各辺12,13と側生地19とが連結されている(図11(a)参照)。
【0046】
また、前記側生地19に設けた開口部15に対して、スライドファスナー20及びシールチャック30aは、次のようにして取り付けられている。図11(a),(b)を参照して説明すると、開口部15により分割された側生地19の各辺は、それぞれ内方へ折り曲げられていて、開口部15内方に向かって所定長さで延出した延長片19b,19bをなしている。各延長片19b,19bの折り曲げ部近傍の内側には、一対のテープ21,21がそれぞれ縫着されていて、開口部15にスライドファスナー20が取り付けられている。
【0047】
開口部15に取り付けたスライドファスナー20の更に内側には、シールチャック30aが取り付けられている。前記実施形態においては、図5に示すように、シールチャック30を構成するテープ31が布生地11に直接縫着されていたが、この第4実施形態においては異なっている。
【0048】
すなわち、シールチャック30aを構成する細長帯状の一対のテープ31,31は、その各外面(対向する内面とは反対側の面)に、細長の帯状をなす取付片36が重ね合わされて、更に同取付片36の周縁部36a,36aが折り曲げられて、一対のテープ31,31の長さ方向の両側周縁部が覆われるようになっている。この取付片36は、ポリエステル等の合成樹脂からなる繊維から形成されたもので、ポリエチレン等の合成樹脂からなるシールチャック30aの各テープ31,31に、所定の溶着手段(超音波ミシン等)によって予め溶着できるようになっている。
【0049】
そして、各テープ31,31は、上記のように予め溶着された取付片36を介して、側生地19の各延長片19b,19bにそれぞれ縫着されるようになっている。すなわち、延長片19b,19bの各先端部、すなわち、前記スライドファスナー20の取付け位置よりも開口部15内側位置に、各テープ31,31を取付片36を介して配設する。そして、延長片19bの最先端部を折り曲げて、テープ31及び取付片36の一方の周縁部を挟み込んで糸18で延長片19bに縫着すると共に、同テープ31及び取付片36の他方の周縁部を延長片19bに糸18で縫着することにより、シールチャック30aが取り付けられるようになっている。
【0050】
ところで、テープ31を側生地19の延長片19bに直接縫着しようとすると、平滑なテープ31が延長片19b上で滑ってしまって縫着位置がずれてしまう恐れがある。また、テープ31を縫着した後、テープ31に過度の力が作用した場合には、テープ31表面が変形して、波打ったような状態となってシールチャックの動作がスムーズになされない恐れがある。
【0051】
これに対してこの実施形態における各テープ31,31は、延長片19b上で滑りにくい取付片36が予め溶着されていて、該取付片36を介して側生地19の延長片19bに縫着されるので、取付片36が延長片19b上で滑りにくく、所定の縫着位置に確実に取り付けることができる。また、取付片36を介してテープ31が延長片19bに取り付けられているので、テープ31の剛性を高めることができ、上記のような波打ち状態の変形を防止して、シールチャック30aの嵌着・解除動作を確実かつスムーズに行うことができる。
【0052】
そして、この第4実施形態における、前記実施形態のシールチャックとの最も大きな相違点は次の点にある。すなわち、前記実施形態においては、シールチャック30には、各シール条33,33を雌雄嵌合させるスライダー35が装着されていたが、この第4実施形態のシールチャック30aにおいては、一対のテープ31,31の各先端部から、スライダー37が取り外せる構造となっている。
【0053】
図10に示すように、このスライダー37は、帯状の底壁37aと、該底壁37aの両側縁から所定高さで立設した側壁37b,37bとからなる断面略U字状をなしている。そして、スライダー37をシールチャック30aから取り外し可能としたことにより、図10に示すように、前記一対の延長片19b,19bに取り付けられた、シールチャック30aのテープ31,31の対向する両端部(始端部及び終端部)どうしを突き合わせて、糸18によって縫着することができるようになっている。
【0054】
上記構成からなる第4実施形態の使用方法について説明すると、シールチャック30aを閉じる際には、図11(b)に示すように、両延長片19b,19bの先端部に設けた各テープ31,31を近接させつつ、対向するシール条33,33を整合させた状態とする。その状態で、図10に示すように、スライダー37の一対の側壁37b,37bにより、テープ31,31を挟み込むようにして、シールチャック30aのテープ31,31の始端部に装着する。そして、スライダー37をテープ31に沿ってスライドさせることにより、両シール条が雌雄嵌合してシールチャック30aが閉じることができる。次いでスライドファスナー20のスライダー25をスライドさせることによって、開口部15を閉じることができる。
【0055】
このとき、この第4実施形態においては、シールチャック30aが、雌雄嵌合するシール条33を有するテープ31,31と、シール条33,33を雌雄嵌合させるためのスライダー37とからなると共に、同スライダー37をテープ31,31から取り外し可能とされ、かつ、テープ31,31の両端部どうしが接合されるように構成されているので、スライダー37がテープ31先端に装着されることによって生じる、テープ31,31の両端部の隙間を完全になくすことができ、ダニ抗原が通過することをより確実に防止することができる。
【実施例】
【0056】
実施例のカバー部材の、ダニの通過量を測定した。
(1)試験準備
(a)ダミー収容体の作製
まず、カバー部材に充填される収容物の代わりとして、ダミー収容体50を作製した。すなわち、このダミー収容体50は、長方形状をなした枠状プレートからなる枠体51(長辺:1800mm,短辺:900mm)と、該枠体51の各辺に所定間隔をおいて複数配設されると共に、ダニトラップを収容した複数のダニトラップケース53(縦200mm、横130mm)とから構成されている。また、ダニトラップケース53は、その下方に開口部53aが形成されており、更に、90度のアングル55を介して、前記枠体51に固定されている。
(b)ダニトラップの準備
ダニトラップは、ダニが自由に通過できるようにポリエステルサテンで作製された袋(80mm×100mm)に、脱脂綿で包まれたダニ飼育用飼料(実権動物用粉末飼料及び乾燥酵母を等量混合してなる)が、羊毛と共に充填されて構成されている。
(c)カバー部材の選定
カバー部材としては、図10,11に示すマットレス用のカバー部材10bを用いた。その寸法は、横200cm、縦100、厚さ25cmである。
【0057】
(2)試験方法
(a)ダミー収容体の配置
上記カバー部材内に図12及び図13に示すように、ダニトラップを備えるダミー収容体50を収納し、シールチャック30a、及び、スライドファスナー20を閉じて、開口部15を閉じた状態にセットした。
(b)ダニ培地の設置
試験に用いるダニは、ヤケヒョウダニを用いた。これが生息するダニ培地0.025gを8回、飽和食塩水浮遊法によって生存ダニ数を計数し、その数から約10000匹相当のダニを含むダニ培地の分取量を計算によって求めた。次いで、ダニ培地を十分に攪拌した後、計算で求めた分取量分だけ量り取り、これを5つのガラス製シャーレS(直径40mm、高さ15mm)の中にそれぞればらまき、各シャーレSをカバー部材10bの四隅及び上面に各々配設した。
(c)試験条件
上記状態のカバー部材10bを、室温が約25℃、相対湿度が約84%の環境下とされた実験室内に配置して、これを4日間放置して、ダニがカバー部材のどの箇所に何匹、集まっているかを測定した。
【0058】
(3)試験結果
(a)ダニトラップ
図13に示すカバー部材の各側面E,F,G,Hの内側にそれぞれ配置したダニトラップにおけるダニ数を計数した。すなわち、ダニトラップに捕捉されたダニを、水洗い法及び飽和食塩水浮遊法によって分離して数えた。なお、側面Eがファスナー側の面である。この結果を下記表1に示す。ここで見つかるダニは、カバー部材を通過したダニを意味している。
(b)カバー部材の側面及び上面
図13に示すカバー部材の各側面E,F,G,H及び上面におけるダニ数を計数した。すなわち、ダニ採取用袋を装着した電気掃除機により吸い取って、これを水洗い法及び飽和食塩水浮遊法によって数えた。この結果を下記表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記表1,2の結果から、ダニ培地から這いだしてカバー部材の側面及び上面に付着したダニは合計で8745匹も確認できたものの、カバー部材内のダニトラップにおいては、僅か28匹しか確認できず、このカバー部材における、ダニの通過防止効果が極めて高いことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のカバー部材の第1実施形態を示しており、開口部が開いた状態の斜視図である。
【図2】同カバー部材の開口部が閉じた状態の斜視図である。
【図3】図1におけるIII-III矢示線に沿った断面図である。
【図4】同カバー部材の要部拡大斜視図である。
【図5】スライドファスナー取付け部の断面図である。
【図6】同カバー部材を構成するシールチャックを示しており、(A)はその拡大斜視図、(B)は他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明のカバー部材の第2実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】本発明のカバー部材の第3実施形態を示す斜視図である。
【図9】同カバー部材の要部拡大斜視図である。
【図10】本発明のカバー部材の第4実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図11】スライドファスナー及びシールチャック取付け部の断面図である。
【図12】カバー部材における、ダニ通過量の測定試験を説明するための斜視図である。
【図13】同ダニ通過量の測定試験の概略説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10,10a カバー部材
11 各布生地
12 長辺、12a 周縁部
13 短辺、13a,13b 周縁部
15 開口部
17 連結生地、17a 二重折部
18 糸
19 側生地
20,20a スライドファスナー
21 テープ
23 エレメント
24 コーティング
25 スライダー
30,30a シールチャック
31 テープ
33 シール条
35,37 スライダー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダニ抗原の通過を制限する素材で袋状に形成されると共に、少なくとも一側辺に封止手段を有する開口部が設けられており、内部に充填物を収容可能とされたカバー部材であって、
前記封止手段は、スライダーによりエレメントを噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナーと、雌雄嵌合するシール条によって開閉する構造のシールチャックとを有する二重以上のファスナーで構成されていることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記封止手段は、開口部に対して、外側に前記スライドファスナーが設けられ、内側に前記シールチャックが設けられている請求項1記載のカバー部材。
【請求項3】
前記シールチャックは、前記カバー部材の開口部の長さよりも長く形成されており、前記シールチャックの両端部は、前記カバー部材の開口部の両端部から前記カバー部材の内部に延出されて前記素材で覆われた構造をなしている請求項1又は2記載のカバー部材。
【請求項4】
前記スライドファスナーの前記エレメントの少なくとも片面には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティングが施されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のカバー部材。
【請求項5】
まくら、マットレス、布団、座布団、クッションから選ばれた1種のカバー部材として用いられる請求項1〜4のいずれか1つに記載のカバー部材。
【請求項1】
ダニ抗原の通過を制限する素材で袋状に形成されると共に、少なくとも一側辺に封止手段を有する開口部が設けられており、内部に充填物を収容可能とされたカバー部材であって、
前記封止手段は、スライダーによりエレメントを噛み合わせたり離したりして開閉する構造のスライドファスナーと、雌雄嵌合するシール条によって開閉する構造のシールチャックとを有する二重以上のファスナーで構成されていることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記封止手段は、開口部に対して、外側に前記スライドファスナーが設けられ、内側に前記シールチャックが設けられている請求項1記載のカバー部材。
【請求項3】
前記シールチャックは、前記カバー部材の開口部の長さよりも長く形成されており、前記シールチャックの両端部は、前記カバー部材の開口部の両端部から前記カバー部材の内部に延出されて前記素材で覆われた構造をなしている請求項1又は2記載のカバー部材。
【請求項4】
前記スライドファスナーの前記エレメントの少なくとも片面には、ダニの通過を制限可能な合成樹脂からなるコーティングが施されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のカバー部材。
【請求項5】
まくら、マットレス、布団、座布団、クッションから選ばれた1種のカバー部材として用いられる請求項1〜4のいずれか1つに記載のカバー部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−95474(P2009−95474A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269847(P2007−269847)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(503247791)アクトインテリア株式会社 (4)
【出願人】(505342449)ヤマセイ株式会社 (5)
【出願人】(507343730)今井物流株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(503247791)アクトインテリア株式会社 (4)
【出願人】(505342449)ヤマセイ株式会社 (5)
【出願人】(507343730)今井物流株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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