説明

カビ取り剤組成物

【課題】 高いカビ取り効果を示すカビ取り剤組成物を提供する。
【解決手段】 次亜塩素酸塩及び次亜塩素酸から選ばれる1種以上(A)と、両性界面活性剤及び陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上(B)と、pH調整剤(C)とを含有するカビ取り剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カビ取り剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】浴室の天井、タイル目地、プラスチックの壁や台所の三角コーナーなどの黒ズミ汚れはCladosporium属等のカビの生産する色素が原因であり、また、水洗便器を長期間継続使用すると、便器の内面と溜水面、特に水封部に着色した汚れの堆積が生ずるが、この汚れは主としてリン酸カルシウム、鉄酸化物等の無機物、粗蛋白や胆汁分解物等の有機排泄物、微生物或いはその代謝物等である。
【0003】これら硬質表面の汚れはクレンザーや界面活性剤だけでは落とすことが難しいため、現在は次亜塩素酸ナトリウム等を含む塩素系漂白剤を使用した液状又はスプレー状の漂白剤あるいは洗浄剤が使用されている。例えば、特開昭59−93799号には、次亜塩素酸塩と苛性アルカリとアミンオキシドとを含有するカビ汚れを洗浄するための液体洗浄剤が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に次亜塩素酸塩を使用した塩素系の洗浄剤、カビ取り剤、漂白剤等はアルカリ性の組成物として用いられる。しかしアルカリ性の組成物は、洗浄性能は優れているが、取り扱いの際の安全性の点では更なる改良が要望されている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、次亜塩素酸塩及び次亜塩素酸から選ばれる1種以上(A)〔以下、(A)成分という〕と、両性界面活性剤及び陽イオン界面活性剤から選ばれる1種種以上(B)〔以下、(B)成分という〕と、pH調整剤(C)〔以下、(C)成分という〕とを含有するカビ取り剤組成物に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】(A)成分の次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩や次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられ、次亜塩素酸アルカリ金属塩が好ましく、特に次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。(A)成分は、組成物の有効塩素濃度が好ましくは1〜5000ppm、より好ましくは10〜1000ppm、更に好ましくは50〜500ppmとなるように配合される。
【0007】(B)成分の両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド、アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のベタインなどが挙げられる。なかでも、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキシドが好ましい。また、(B)成分の陽イオン界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられるが、このうち第4級アンモニウム塩が特に好ましい。第4級アンモニウム塩としては、4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数8〜28のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい本発明の組成物は、(B)成分を1ppm〜5重量%、更に5ppm〜1重量%、特に10〜5000ppm含有することが好ましい。
【0008】また、本発明の組成物は、(A)成分と(B)成分の重量比が、(A)/(B)=10/1〜1/10であることが好ましく、より好ましくは5/1〜1/5、特に好ましくは5/1〜1/2である。
【0009】(C)成分としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、無機酸又はその塩、有機酸又はその塩等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。無機酸又はその塩としては、塩酸、硫酸、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。有機酸又はその塩としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の飽和二塩基酸又はその塩や、フマル酸、マレイン酸等の不飽和二塩基酸又はその塩等が挙げられる。好ましくは飽和二塩基酸又はその塩、より好ましくは炭素数3〜10の飽和二塩基酸又はその塩であり、特にコハク酸又はその塩が好ましい。
【0010】本発明の組成物は、pH(20℃)が3〜8、更に5〜8、特に5〜7であることが好ましい。(C)成分はpHをこの範囲にする量で用いられることが好ましい。
【0011】本発明の組成物では、従来のカビ取り剤に比べて低濃度、短時間の処理で優れたカビ取り効果が得られるが、これは、次亜塩素酸塩の高い酸化力による汚れ成分の分解と両性界面活性剤もしくは陽イオン界面活性剤の高い浸透力の相乗効果によるものと考えられる。また、一般に、次亜塩素酸塩の酸化還元電位がアルカリ領域に比べ中性領域の方が高いため、本発明の組成では、より安全性の高い中性領域での使用でも洗浄性能が維持されるものと考えられる。
【0012】また、本発明の組成物は、更に次亜塩素酸及び/又はその塩と安定な配合が可能で、洗浄効果を高めるために、陰イオン界面活性剤(D)〔以下、(D)成分という〕を含有することができる。陰イオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテル置換の酢酸塩、脂肪酸とアミノ酸の縮合物、脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、脂肪酸アミドのアルキル化スルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、アミドエーテルカルボン酸又はその塩、エーテルカルボン酸又はその塩、N−アシル−N−メチルタウリン又はその塩、アミドエーテル硫酸又はその塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、N−アミドエチル−N−ヒドロキシエチル酢酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸又はその塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルグリシン又はその塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボニルメチル硫酸又はその塩等が挙げられる。陰イオン界面活性剤の配合量は、組成物中に1ppm〜5重量%、更に10ppm〜0.5重量%、特に50〜500ppmが好ましい。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、通常のカビ取り剤と同様に用いることで、優れたカビ取り洗浄効果を示すカビ取り剤組成物が得られる。
【0014】
【実施例】実施例1〜5及び比較例1〜3表1に示す組成の成分からなる組成物を用いて、以下の試験を行った。結果を表1に示す。なお、表1中の有効塩素濃度は、JIS K−0101“ヨウ素法”により測定したものである。
【0015】なお、各組成物は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度60000ppm)と(B)成分又は(D)成分を所定量混合し得られたものを最終配合濃度の2倍までイオン交換水で希釈したものとコハク酸を最終配合濃度の2倍までイオン交換水で希釈したものを等量混合して得たものである。
【0016】以下の各試験では、表1の組成物を、表1の有効塩素濃度となるように希釈した試験水溶液を用いた。
【0017】(1)カビ取り試験(1−1)カビ汚れプレートの調製被験菌としてカビ(真菌、Aspergillus niger IFO6341)を、PDA培地を用い、25℃で7日間培養した。得られた菌体をガラス玉法を用い、均一にした後、滅菌ガーゼで異物を除去し、菌液を得た(約105cell/ml)。
【0018】この菌液0.5mlをABS樹脂製プレート(縦76mm×横26mm×厚さ1mm)に接種し、30℃、90%RHで3日間培養し、カビ汚れプレートを得た。
【0019】(1−2)カビ汚れ洗浄力表1の成分からなる組成物を更に滅菌したイオン交換水で希釈した水溶液(温度25℃)1mlをカビ汚れプレートに接種し、15分後水洗し風乾した後、プレートの状態を目視にて観察し、下記の5段階で評価した。結果を表1に示す。
5…カビ汚れが完全に落ちている。
4…カビ汚れが殆ど落ちている。
3…カビ汚れが半分程度落ちている。
2…カビ汚れが殆ど落ちていない。
1…カビ汚れが全く落ちていない。
【0020】(1−3)殺菌力上記(1−2)で、希釈水溶液(温度25℃)を接種し、水洗、風乾したプレートの所定面積(10mm×10mm)を滅菌綿棒で拭き取り、この綿棒を1ml滅菌水に浸漬し付着物を懸濁し、その懸濁液0.1mlをPDA培地(チオ硫酸ナトリウム3.3%含有)へ接種した。25℃で7日間培養し、カビが生育しているかどうかを肉眼で観察し、菌の生育がない場合を「◎」、ある場合を「×」とした。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】


【0022】(1):( )内は有効塩素濃度を示す。
(2):アンヒトール20N(花王(株)製、有効分35%)を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(3):サニゾールC(花王(株)製、有効分50%)を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(4):エマール20C(花王(株)製、有効分25%)を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
(5):エマルゲン106(花王(株)製)を用いて有効分濃度が表1の数値となるようにした。
【0023】実施例6、比較例4隔膜方式で得られたいわゆる電解酸化水のうち、陽極側に発生した次亜塩素酸水(pH(25℃)2.7、有効塩素濃度50ppm)を用い、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH11に調整し、表2の比較例4の組成物を得た。また、上記の次亜塩素酸水を、1mol/Lのコハク酸二ナトリウム水溶液でpH5に調整後、ラウリルジメチルアミンオキシド(実施例1と同じもの)濃度が25ppmになるように添加し、表2の実施例6の組成物を得た。それらを用いて実施例1と同様にカビ汚れ洗浄力と殺菌力の試験を行った。結果を表2に示す。
【0024】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 次亜塩素酸塩及び次亜塩素酸から選ばれる1種以上(A)と、両性界面活性剤及び陽イオン界面活性剤から選ばれる1種以上(B)と、pH調整剤(C)とを含有するカビ取り剤組成物。
【請求項2】 20℃におけるpHが3〜8である請求項1記載のカビ取り剤組成物。
【請求項3】 pH調整剤(C)が有機酸及びその塩から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載のカビ取り剤組成物。
【請求項4】 更に陰イオン界面活性剤(D)を含有する請求項1〜3の何れか1項記載のカビ取り剤組成物。
【請求項5】 (B)成分としてアミンオキシドを含有する請求項1〜4の何れか1項記載のカビ取り剤組成物。

【公開番号】特開2001−302423(P2001−302423A)
【公開日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−130278(P2000−130278)
【出願日】平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】