説明

カプセルトナーの製造方法、カプセルトナー、現像剤、現像装置および画像形成装置

【課題】 低ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立するカプセルトナーの製造方法、カプセルトナー、現像剤、現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 カプセルトナーの製造方法は、樹脂微粒子付着工程と噴霧液体と膜化工程とを含む。樹脂微粒子付着工程では、回転撹拌装置を用い、トナー母粒子とガラス転移温度が異なる複数の樹脂微粒子とを、回転撹拌手段を回転させることによって流動させて、トナー母粒子表面に前記複数の樹脂微粒子を付着させる。噴霧工程では、回転撹拌手段の回転が継続されて、流動状態にある、前記複数の樹脂微粒子が付着したトナー母粒子に、トナー母粒子および前記複数の樹脂微粒子を可塑化させる液体である噴霧液体を前記噴霧手段から噴霧する。膜化工程では、トナー母粒子に付着した前記複数の樹脂微粒子が軟化して膜化するまで前記回転撹拌手段の回転を継続させて、トナー母粒子表面に樹脂被覆層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルトナーの製造方法、カプセルトナー、現像剤、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、帯電手段によって像担持体表面を一様に帯電させ(帯電工程)、次いでこの像担持体表面を露光手段によって露光し、その露光させた部分の電荷を消散させることによって像担持体表面に静電潜像を形成させる(露光工程)。さらに該静電潜像に、電荷を有する着色微粉体であるトナーを付着させることによって可視画像を形成し(現像工程)、得られた可視画像を紙などの記録媒体に転写させる(転写工程)。その後、定着手段による加熱や圧力、またはその他の定着法で可視画像を記録媒体に定着させる(定着工程)。これによって記録媒体に画像が形成される。また、記録媒体に転写されずに像担持体表面に残留したトナー(残留トナー)を除去するため、像担持体のクリーニング(クリーニング工程)を行う。
【0003】
このような画像形成装置では、現像剤として、トナーを含む1成分現像剤またはトナーとキャリアとを含む2成分現像剤を用いる。ここで用いられるトナーは、マトリックスである結着樹脂中に着色剤および離型剤などを分散させて粒状化した樹脂粒子である。
【0004】
トナーの製造方法として、従来から混練粉砕法が汎用されている。混練粉砕法では、トナー成分から成る混練物を粉砕することでトナーを製造する。この方法で製造される粉砕トナーは、不定形形状であり、混練物の粉砕時の破砕面がトナー表面になるので表面組成が不均一になりやすく、トナーの物性を均一に制御するのが難しい。トナー形状が不定形形状であると、トナーの流動性の低下またはトナー組成の不均一化に伴う、かぶりやトナー飛散などが発生する。
【0005】
混練粉砕法に代わり、湿式法でトナーを製造する方法も提案されているが、湿式法の場合には分散安定剤を多用するため、その分散安定剤の成分の一部がトナー表面に残留して耐湿性の低下や帯電特性の悪化をもたらし、特に帯電特性が著しく不安定になりやすい。トナーに要求される性能の中でも、現像や転写(調色プロセスや転写プロセスの制御等)における挙動や品質に大きな影響を与える帯電特性は、特に重要である。
【0006】
一方、近年の高画質化の流れに伴い、トナーの小粒径化が進み、トナー中において、微粉である小粒径トナー粒子の含有割合が増加する傾向にある。小粒径トナー粒子を含む2成分現像剤においては、現像装置内でのストレスによる小粒径トナー粒子の割れや形状変化により、キャリアへのトナースペントとそれに伴う現像剤の帯電劣化が生じ、画質の劣化を招く要因となっている。
【0007】
このような問題を解決するために、流動性、転写性などが良好で、均一な帯電性能を有し、耐オフセット性および耐トラッキング性に優れ、その他の様々な機能を有するトナーの設計が必要とされ、表面を樹脂被覆層により被覆したカプセルトナーが提案されている。
【0008】
特許文献1には、コア−シェル構造のカプセルトナーを製造する方法として、ガラス転移温度の異なる2種類の樹脂を用いて被覆層を形成するケミカルトナーの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−201891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示の製造方法では、ガラス転移温度の異なる2種類の樹脂を均一にトナー母粒子表面に膜化することは難しく、被覆層はガラス転移温度の低い樹脂による層質の軟らかい領域と、ガラス転移温度の高い樹脂による層質が硬い領域とが局所的に存在し易く、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを充分に両立することができない。
【0011】
本発明の目的は、耐ブロッキンブ性と耐フィルミング性とを両立するカプセルトナーの製造方法、カプセルトナー、現像剤、現像装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子と、トナー母粒子表面に形成された樹脂被覆層とを有するカプセルトナーの製造方法において、
回転撹拌手段と噴霧手段とを備える回転撹拌装置を用い、トナー母粒子とガラス転移温度が異なる複数の樹脂微粒子とを、回転撹拌手段を回転させることによって流動させて、トナー母粒子表面に前記複数の樹脂微粒子を付着させる樹脂微粒子付着工程と、
前記回転撹拌手段の回転が継続されて、流動状態にある、前記複数の樹脂微粒子が付着したトナー母粒子に、トナー母粒子および前記複数の樹脂微粒子を可塑化させる液体である噴霧液体を前記噴霧手段から噴霧する噴霧工程と、
トナー母粒子に付着した前記複数の樹脂微粒子が軟化して膜化するまで前記回転撹拌手段の回転を継続させて、トナー母粒子表面に樹脂被覆層を形成する膜化工程とを含み、
前記トナー母粒子は、ガラス転移温度が45℃以上55℃以下であり、
前記複数の樹脂微粒子は、
ガラス転移温度が50℃以上65℃以下である第1樹脂微粒子と、
ガラス転移温度が65℃以上75℃以下である第2樹脂微粒子とを含み、
前記トナー母粒子のガラス転移温度をTgc、前記第1樹脂微粒子のガラス転移温度をTg、前記第2樹脂微粒子のガラス転移温度をTgとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とするカプセルトナーの製造方法である。
Tg<Tg<Tg …(1)
【0013】
また本発明は、前記カプセルトナーの製造方法によって製造されることを特徴とするカプセルトナーである。
【0014】
また本発明は、前記カプセルトナーを含むことを特徴とする現像剤である。
また本発明は、前記カプセルトナーと、キャリアとを含む2成分現像剤であることを特徴とする現像剤である。
【0015】
また本発明は、前記現像剤を用いて、像担持体に形成される静電潜像を現像してトナー像を形成することを特徴とする現像装置である。
【0016】
また本発明は、像担持体に形成される静電潜像を現像してトナー像を形成する前記現像装置と、
像担持体に形成されるトナー像が転写される中間転写体を備える転写手段とを有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カプセルトナーの製造方法では、結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子と、トナー母粒子表面に形成された樹脂被覆層とを有するカプセルトナーを製造する。カプセルトナーの製造方法は、樹脂微粒子付着工程と噴霧工程と膜化工程とを含む。樹脂微粒子付着工程では、回転撹拌手段と噴霧手段とを備える回転撹拌装置を用いて、トナー母粒子とガラス転移温度の異なる複数の樹脂微粒子とを、回転撹拌手段を回転させることによって流動させて、トナー母粒子表面に前記複数の樹脂微粒子を付着させる。噴霧工程では、回転撹拌手段の回転が継続されて流動状態にある、前記複数の樹脂微粒子が付着したトナー母粒子に、トナー母粒子および前記複数の樹脂微粒子を可塑化させる液体である噴霧液体を噴霧手段から噴霧する。膜化工程では、トナー母粒子に付着した前記複数の樹脂微粒子が軟化して膜化するまで回転撹拌手段の回転を継続させて、トナー母粒子表面に樹脂被覆層を形成する。
【0018】
回転撹拌手段の回転を継続し、流動状態にある、ガラス転移温度の異なる複数の樹脂微粒子が付着したトナー母粒子に噴霧液体を噴霧することによって、前記トナー母粒子に衝撃力を加えながら樹脂被覆層を形成することができる。そのため、前記複数の樹脂微粒子が均一に分散された樹脂被覆層をトナー母粒子表面に形成することができる。このような樹脂被覆層を有するカプセルトナーは、前記複数の樹脂微粒子のうち、ガラス転移温度の相対的に高い樹脂微粒子が耐ブロッキング性に寄与し、ガラス転移温度の相対的に低い樹脂微粒子が、ガラス転移温度の相対的に高い樹脂微粒子の樹脂被覆層からの脱離を抑制するので、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立することができるので、画像形成に用いると、画像欠けのない良好な画像を形成することができる。
【0019】
また、トナー母粒子は、ガラス転移温度が45℃以上55℃以下である。トナー母粒子のガラス転移温度が45℃以上55℃以下であることによって、保存安定性と低温定着性とを両立することができる。複数の樹脂微粒子は、ガラス転移温度が50℃以上65℃以下である第1樹脂微粒子と、ガラス転移温度が65℃以上75℃以下である第2樹脂微粒子とを含む。これによって、保存安定性と低温定着性とを両立することができる。
【0020】
さらに、トナー母粒子のガラス転移温度をTg、第1樹脂微粒子のガラス転移温度をTg、第2樹脂微粒子のガラス転移温度をTgとしたとき、上記式(1)を満たす。トナー母粒子に含まれる結着樹脂のガラス転移温度Tgcよりも樹脂被覆層を構成する第1樹脂微粒子のガラス転移温度Tgの方が高く、第1樹脂微粒子のガラス転移温度Tgよりも樹脂被覆層を構成する第2樹脂微粒子のガラス転移温度をTgの方が高いことによって、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立することができる。
【0021】
また本発明によれば、カプセルトナーは本発明のカプセルトナーの製造方法によって製造される。本発明のカプセルトナーの製造方法は、ガラス転移温度の異なる複数の樹脂微粒子が均一に分散された樹脂被覆層を、トナー母粒子表面に形成することができるので、このような製造方法によって製造されたカプセルトナーは、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立するカプセルトナーを実現することができる。このようなカプセルトナーを画像形成に用いると、画像欠けのない良好な画像を形成することができる。
【0022】
また本発明によれば、現像剤は本発明のカプセルトナーを含む。本発明のカプセルトナーは耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立することができるので、このような現像剤を画像形成に用いると、画像欠けのない良好な画像を形成することができる。
【0023】
また本発明によれば、2成分現像剤は本発明のカプセルトナーとキャリアとを含む。本発明のカプセルトナーは耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立することができるので、このような2成分現像剤を画像形成に用いると、帯電性を良好にすることができ、画像欠けのない良好な画像を形成することができる。
【0024】
また本発明によれば、現像装置は本発明の現像剤を用いて、像担持体に形成される静電潜像を現像してトナー像を形成する。現像装置は耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立することができる本発明の現像剤を用いてトナー像を形成するので、かぶりのない良好なトナー像を形成することができる。
【0025】
また本発明によれば、画像形成装置は、像担持体に形成される静電潜像を現像してトナー像を形成する本発明の現像装置と、像担持体に形成されるトナー像が転写される中間転写体を備える転写手段とを有する。画像形成装置は、かぶりのない良好なトナー像を形成することができる本発明の現像装置を備えるので、画像欠けのない良好な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態であるカプセルトナーの製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるカプセルトナー1の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】被覆工程S4においてトナー母粒子2表面に樹脂被覆層4を形成する方法を示す工程図である。
【図4】表面改質装置の一例である回転撹拌装置201の構成を示す正面図である。
【図5】図4に示す回転撹拌装置201を切断面線A200―A200からみた概略断面図である。
【図6】樹脂微粒子付着粒子1aの構成を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明のカプセルトナー1の製造方法で製造されたカプセルトナー1を用いるのに適した画像形成装置10の構成を模式的に示す図である。
【図8】現像手段24の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1、カプセルトナーの製造方法
図1は、本発明の第1の実施形態であるカプセルトナーの製造方法を示す工程図である。本実施形態のカプセルトナーの製造方法は、トナー母粒子作製工程S1と、樹脂微粒子作製工程S2と、噴霧液体調製工程S3と、被覆工程S4とを含む。
【0028】
図2は、本実施形態のカプセルトナーの製造方法で製造されるカプセルトナー1の構成を模式的に示す断面図である。カプセルトナー1は、トナー母粒子2とトナー母粒子2の表面に形成される樹脂被覆層4とを含む。
【0029】
(1)トナー母粒子作製工程
ステップs1のトナー母粒子作製工程では、結着樹脂、着色剤およびその他のトナー母粒子成分を含むトナー母粒子2を作製する。
【0030】
トナー母粒子2は、結着樹脂および着色剤を含有し、さらにその他のトナー母粒子成分として離型剤、帯電制御剤などを含有してもよい。
【0031】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が挙げられ、通常、構成モノマーとして、2価のアルコール単量体および3価以上の多価アルコール単量体から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸単量体および3価以上の多価カルボン酸単量体から選ばれる1種以上とを用いて、縮重合によって得られるものが使用される。
【0032】
2価のアルコール単量体としては、たとえばポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレン付加物、ビスフェノールAのエチレン付加物、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0033】
3価以上の多価アルコール単量体としては、たとえばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0034】
本実施形態においては、これらの2価のアルコール単量体および3価以上の多価アルコール単量体から単独あるいは複数の単量体を用いることができる。
【0035】
また酸成分としては、2価のカルボン酸単量体として、たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、およびこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0036】
3価以上の多価カルボン酸単量体としては、たとえば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0037】
本実施形態においては、これらの2価のカルボン酸単量体および3価以上の多価カルボン酸単量体から単独あるいは複数の単量体を用いることができる。
【0038】
本実施形態におけるポリエステルの製造方法は、特に限定されることなく、上記の単量体を用いてエステル化、エステル交換反応により製造することができる。
【0039】
(着色剤)
着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
【0040】
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
【0041】
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0042】
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0043】
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0044】
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0045】
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0046】
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0047】
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
【0048】
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.2〜10重量部である。
【0049】
(離型剤)
離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。ワックスの使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1.0〜8.0重量部である。
【0050】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用のものを使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。帯電制御剤は、トナー母粒子2中に含有させてもよく、後述のコーティング工程において樹脂微粒子からなる被覆層中に混ぜて使用してもよい。帯電制御剤を、トナー母粒子2中に含有させる場合、帯電制御剤は、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部であることが好ましい。
【0051】
トナー母粒子2は、一般的なトナーの製造方法に従って製造できる。一般的なトナーの製造方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法である。以下粉砕法によるトナー母粒子2の作製方法を説明する。
【0052】
粉砕法では、結着樹脂、着色剤およびその他のトナー母粒子成分を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕する。その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、トナー母粒子2を得る。
【0053】
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0054】
混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。
【0055】
粉砕機としては、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、および高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
【0056】
分級には、遠心力および風力による分級により過粉砕トナー母粒子を除去できる公知の分級機を使用でき、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用できる。
【0057】
着色剤などのトナー母粒子成分は、混練物中に均一に分散させるためにマスターバッチ化して用いてもよい。また着色剤などのトナー母粒子成分の2種以上を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、着色剤などのトナー母粒子成分の2種以上に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際に粉体混合物に混入される。
【0058】
トナー母粒子2は、ガラス転移温度が45℃以上55℃以下であることが好ましい。トナー母粒子2のガラス転移温度が45℃未満であると、トナー母粒子2表面に樹脂被覆層4を形成しても保存安定性が低下するおそれがある。トナー母粒子2のガラス転移温度が55℃を超えると、低温定着性が低下するおそれがある。トナー母粒子2のガラス転移温度が45℃以上55℃以下であることによって、保存安定性と低温定着性とを両立することができる。
【0059】
トナー母粒子2は、軟化温度が90℃以上140℃以下であることが好ましい。これによって、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを安定して両立することができる。トナー母粒子2のガラス転移温度および軟化温度は、トナー母粒子2に含まれる結着樹脂のガラス転移温度および軟化温度とする。
【0060】
得られるトナー母粒子2は、体積平均粒径が3μm以上10μm以下であることが好ましく、5μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。トナー母粒子2の体積平均粒径が3μm以上10μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。トナー母粒子2の体積平均粒径が3μm未満であると、トナー母粒子2の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にカプセルトナー1を安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナー母粒子2の平均粒径が10μmを超えると、トナー母粒子2の粒径が大きいので、高精細な画像を得ることができない。またトナー母粒子2の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、カプセルトナー1の帯電量が小さくなる。カプセルトナー1の帯電量が小さくなると、カプセルトナー1が感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0061】
(2)樹脂微粒子作製工程
ステップs2の樹脂微粒子作製工程では、少なくとも樹脂を含む、ガラス転移温度の異なる複数の樹脂微粒子を作製する。これらの樹脂微粒子はトナー母粒子2表面に樹脂被覆層4を形成する。トナー母粒子2表面に樹脂被覆層4が形成されることで、トナー母粒子のガラス転移温度を低めに設定することができ、カプセルトナー1の低温定着化が可能となる。
【0062】
ガラス転移温度の異なる複数の樹脂微粒子は、第1樹脂微粒子および第2樹脂微粒子を含み、第1樹脂微粒子は、ガラス転移温度が50℃以上65℃以下であることが好ましく、第2樹脂微粒子は、ガラス転移温度が65℃以上75℃以下であることが好ましい。
【0063】
また、トナー母粒子2のガラス転移温度をTgc、第1樹脂微粒子のガラス転移温度をTg、第2樹脂微粒子のガラス転移温度をTgとしたとき、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Tg<Tg<Tg …(1)
【0064】
トナー母粒子2のガラス転移温度Tgcと第1樹脂微粒子(以下「低温度樹脂微粒子」とも記載する)のガラス転移温度Tgとは比較的値が近いので、トナー母粒子2と低温度樹脂微粒子とは互いに相溶性が高い。ここで相溶性とは、トナー母粒子2と低温度樹脂微粒子との親和し易さ、および低温度樹脂微粒子同士の親和し易さをいう。相溶性が高いと、トナー母粒子2と低温度樹脂微粒子との界面における密着性が高くなり、定着時に結着樹脂と樹脂被覆層4中の低温度樹脂微粒子とが混合しやすくなるので、樹脂被覆層4がトナー母粒子2に含まれる離型剤の染み出しを阻害しにくくすることができ、ホットオフセット性を高めることができる。
【0065】
トナー母粒子2のガラス転移温度Tgcと第2樹脂微粒子(以下「高温度樹脂微粒子」とも記載する)のガラス転移温度Tgとは比較的値が離れているので、トナー母粒子2と高温度樹脂微粒子とは互いに相溶性が低い。そのため、このような高温度樹脂微粒子を含むことで、高温下においてトナー母粒子2の成分が表面に露出することを抑制することができ、耐熱性を高めることができる。
【0066】
低温度樹脂微粒子のガラス転移温度が50℃未満であると、保存安定性が低下するおそれがある。高温度樹脂微粒子のガラス転移温度が75℃を超えると、低温定着性が低下するおそれがある。低温度樹脂微粒子のガラス転移温度は、低温度樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移温度であり、高温度樹脂微粒子のガラス転移温度は、高温度樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移温度である。
【0067】
また、トナー母粒子2に含まれる結着樹脂のガラス転移温度Tgcと樹脂被覆層4を形成する第1樹脂微粒子のガラス転移温度をTgと、結着樹脂のガラス転移温度Tgcと樹脂被覆層4を形成する第2樹脂微粒子のガラス転移温度をTgとの関係が上記式(1)を満たすことで、トナー母粒子2に含まれる結着樹脂と樹脂被覆層4に含まれる樹脂との相溶性を適度な値にすることができるので、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを両立することができる。
【0068】
したがって、第1樹脂微粒子のガラス転移温度Tgがトナー母粒子2のガラス転移温度Tgよりも高く、かつ第1樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが上記範囲であることによって、低温定着性と保存安定性とを両立しつつ、トナー母粒子2と第1樹脂微粒子との相溶性を適度な値にできる。さらに、第2樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが第1樹脂微粒子のガラス転移温度Tgよりも高く、かつ第2樹脂微粒子のガラス転移温度Tgが上記範囲であることによって、第1樹脂微粒子および第2樹脂微粒子の樹脂被覆層4からの脱離を防ぎ、耐フィルミング性を保ちつつ、保存安定性を維持することができる。
【0069】
このような樹脂微粒子から形成される樹脂被覆層4は、トナー母粒子2の表面の大部分に形成されることが好ましい。トナー母粒子2の表面の大部分に樹脂被覆層4が形成されるとは、トナー母粒子2の表面積の50%以上を占める部分に樹脂被覆層4が形成されることである。トナー母粒子2表面における樹脂被覆層4が形成される部分の面積が、トナー母粒子2の表面積の50%未満であると、トナー母粒子2が露出する面積が大きくなり、トナー母粒子2に含まれる離型剤などの低融点成分が軟化し、カプセルトナー1が凝集するおそれがある。したがってトナー母粒子2表面における樹脂被覆層4が形成される部分の面積は、トナー母粒子2の表面積の50%以上100%以下であることが好ましい。
【0070】
トナー母粒子2の表面積は、トナー母粒子2を球体とみなし、トナー母粒子2の体積平均粒径を測定することによって算出できる。また樹脂被覆層4が形成される部分のトナー母粒子2の面積は、電子顕微鏡による撮影画像から、画像解析装置などを用いて算出できる。
【0071】
トナー母粒子2の表面の大部分に樹脂被覆層4が形成される場合、トナー母粒子2の表面全面に樹脂被覆層4が形成される場合と同様の効果が得られるので、以下の記載では樹脂被覆層4がトナー母粒子2の表面全面に形成される場合を例に説明する。
【0072】
樹脂被覆層4において、個々の樹脂微粒子は、複数の部分で隣り合う樹脂微粒子と融着している。そのため、樹脂被覆層4から樹脂微粒子は脱離しにくい。また、樹脂微粒子からなる樹脂被覆層4は、樹脂被覆層4に含有される樹脂微粒子とトナー母粒子2とが非常に多くの部分でトナー母粒子2界面で融着するので、トナー母粒子2から樹脂被覆層4が剥離しにくい。そのため、現像容器内での撹拌による樹脂被覆層4のトナー母粒子2からの剥離を防止することができ、カプセルトナー1の性質が長期使用によって変化することを防止できる。
【0073】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子のガラス転移温度は、低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子を構成する樹脂の組成を適宜選択することによって調整することができる。
【0074】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子を構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂が用いられる。ポリエステルは、通常、構成モノマーとして、2価のアルコール単量体および3価以上の多価アルコール単量体から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸単量体および3価以上の多価カルボン酸単量体から選ばれる1種以上とを用いて、縮重合によって得られるものが使用される。
【0075】
2価のアルコール単量体としては、たとえばポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレン付加物、ビスフェノールAのエチレン付加物、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0076】
3価以上の多価アルコール単量体としては、たとえばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0077】
本実施形態においては、これらの2価のアルコール単量体および3価以上の多価アルコール単量体から単独あるいは複数の単量体を用いることができる。
【0078】
また、酸成分としては、2価のカルボン酸単量体として、たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸の無水物、もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0079】
3価以上の多価カルボン酸単量体としては、たとえば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0080】
本実施形態においては、これらの2価のカルボン酸単量体および3価以上の多価カルボン酸単量体から単独あるいは複数の単量体を用いることができる。
【0081】
本実施形態におけるポリエステルの製造方法は、特に限定されることなく、上記の単量体を用いてエステル化、エステル交換反応により製造することができる。
【0082】
高温度樹脂微粒子の樹脂としては、トナー母粒子2との相溶性やガラス転移温度が比較的高めという観点から、スチレンアクリル共重合樹脂を用いることもできる。
【0083】
スチレンアクリル共重合体樹脂のアクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有するアクリル酸、置換基を有するメタアクリル酸、置換基を有するアクリル酸エステル、置換基を有するメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーの具体例としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルなどのアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどのメタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基(水酸基)含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0084】
またスチレン系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられ、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などによって行われる。
【0085】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子は、たとえば、低温度樹脂微粒子原料および高温度樹脂微粒子原料をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができ、またモノマーの重合によって得ることもできる。
【0086】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子は、軟化温度が110℃以上140℃以下であることが好ましい。これによって、耐ブロッキング性と耐フィルミング性とを安定して両立することができる。低温度樹脂微粒子の軟化温度は、低温度樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化温度であり、高温度樹脂微粒子の軟化温度は、高温度樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化温度である。
【0087】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子は、体積平均粒径が0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子の体積平均粒径が、0.05μm以上1μm以下であることによって、均質な樹脂被覆層4を形成できる。これによってクリーニング時にカプセルトナー1がクリーニングブレードに引っ掛かり易くなり、クリーニング性が向上する。
【0088】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子の体積平均粒径が0.05μm未満であると、形成される樹脂被覆層4の厚さが薄くなるなど制御しにくくなり、トナー母粒子2表面を均一に覆うことが難しくなり、流動性、耐ブロッキング性、帯電安定性などのトナー特性が悪化するおそれがある。また形成される突起部の高さが小さくなり、クリーニング性が悪化するおそれがある。また低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子の大きさが小さくなり過ぎて樹脂微粒子の取扱性が低下する。
【0089】
樹脂微粒子の体積平均粒径が1μmを超えると、形成される突起部の高さが大きくなり、これによってカプセルトナー1中に占める樹脂被覆層4の割合が大きくなる。カプセルトナー1中に占める樹脂被覆層4の割合が大きくなると、樹脂被覆層4を形成する材料にもよるけれども、画像形成時における樹脂被覆層4の影響が大きくなり過ぎ、所望の画像を形成することができないおそれがある。
【0090】
(3)噴霧液体調製工程
ステップS3の噴霧液体調製工程では、トナー母粒子2、ならびに低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子に噴霧することで、トナー母粒子2、低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子を可塑化させて、トナー母粒子2と樹脂微粒子との付着力を増大させる噴霧液体を調製する。
【0091】
トナー母粒子2、低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子の付着を補助し、それらの粒子を溶解せず可塑化させる効果のある噴霧液体としては、特に限定されないけれども、液体の噴霧後にトナー母粒子2、低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子から除去される必要があるので、蒸発し易い液体であることが好ましい。このような液体としては、低級アルコールを含む液体が挙げられる。低級アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。液体がこのような低級アルコールを含むと、被覆材料である低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子のトナー母粒子2に対する濡れ性を向上させることができ、トナー母粒子2の表面全面または大部分に低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子を付着させ、さらに変形および膜化させることが容易となる。また低級アルコールは蒸気圧が大きいので、噴霧液体を除去するときの乾燥時間を一層短縮することができ、トナー母粒子2同士の凝集を抑制することができる。
【0092】
樹脂微粒子のトナー母粒子2に対する濡れ性を向上させてトナー母粒子2と低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子との付着力を増大させる噴霧液体を用いることによって、トナー母粒子2の表面全面または大部分に低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子を含む樹脂被覆層4を形成することが容易となるが、このような樹脂被覆層4は、トナー母粒子2と融着する低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子が存在することによってトナー母粒子2から剥離し難くなる。したがって長期使用によって樹脂被覆層4が剥離し、カプセルトナー1の性質が変化することを防止できる。
【0093】
また噴霧液体の粘度は、5cP以下であることが好ましい。粘度が5cP以下の噴霧液体で好ましいものとしてアルコールが挙げられる。粘度が5cPであるアルコールとしては、メタノール、エタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは粘度が小さく、また蒸発しやすいので、噴霧液体がアルコールを含むことによって、後述する噴霧手段から噴霧される噴霧液体の噴霧液滴径が粗大化することなく、微細な液滴径の液体の噴霧が可能となる。また均一な液滴径の噴霧液体の噴霧が可能となる。トナー母粒子2と液滴との衝突時には、さらに液滴の微細化を促進することができる。これによって、トナー母粒子2および樹脂微粒子表面を均一にぬらし、馴染ませて、衝突エネルギーとの相乗効果で樹脂微粒子を軟化し、均一性に優れたカプセルトナー1を得ることができる。
【0094】
噴霧液体の粘度は、25℃において測定される。噴霧液体の粘度は、たとえば、コーンプレート型回転式粘度計によって測定することができる。
【0095】
(4)被覆工程
ステップS4の被覆工程では、トナー母粒子2と樹脂微粒子との付着力を増大させる噴霧液体を用いて、トナー母粒子2に樹脂微粒子を付着させ融着させる。これによって、トナー母粒子2を樹脂微粒子で被覆させて、樹脂被覆層4を形成する。
【0096】
図3は、被覆工程S4においてトナー母粒子2表面に樹脂被覆層4を形成する方法を示す工程図である。図3に示すように、被覆工程S4は、混合工程S4aと、樹脂微粒子付着工程S4bと、噴霧工程S4cと、膜化工程S4dとを含む。
【0097】
被覆工程S4は、たとえば表面改質装置を用いて行われる。表面改質装置は、トナー母粒子2および樹脂微粒子を撹拌する撹拌手段を備える容器と、容器内部に噴霧液体を噴霧する噴霧手段とを備える装置である。
【0098】
撹拌手段としては、衝撃力を主体とする機械的および熱的エネルギーをトナー母粒子2および樹脂微粒子に付与することができる撹拌ロータなどが用いられる。
【0099】
撹拌手段を備える容器としては、市販品を用いることができ、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。このような混合機の容器内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、この混合機を本実施形態で表面改質装置として用いることができる。
【0100】
図4は、表面改質装置の一例である回転撹拌装置201の構成を示す正面図である。図5は、図4に示す回転撹拌装置201を切断面線A200―A200からみた概略断面図である。回転撹拌装置201は、粉体流路202と、噴霧手段203と、回転撹拌手段204と、温度調整用ジャケット224と、粉体投入部206と、粉体回収部207とを含んで構成される。
【0101】
粉体流路202は、回転撹拌室208と、循環管209とから構成される。回転撹拌室208は、内部空間を有する略円柱形状の容器状部材である。回転撹拌室208には、開口部210,211が形成される。開口部210は、回転撹拌室208の軸線方向一方側の面208aにおける略中央部において、回転撹拌室208の面208aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部211は、回転撹拌室208の前記軸線方向一方側の面208aに垂直な側面208bにおいて、回転撹拌室208の側面208bを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。循環管209は、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって回転撹拌室208の内部空間と循環管209の内部空間とが連通され、粉体流路202が形成される。この粉体流路202を、前混合工程においてはトナー母粒子2、樹脂微粒子および気体が流過する。粉体流路202の循環管209には、粉体投入部206と、粉体回収部207とが接続される。
【0102】
粉体投入部206には、トナー母粒子2および樹脂微粒子を供給する図示しないホッパと、ホッパと粉体流路202とを連通する供給管と、供給管に設けられる電磁弁とを備える。ホッパから供給されるトナー母粒子2および樹脂微粒子は、電磁弁によって供給管内の流路が開放されている状態において、供給管を介して粉体流路202に供給される。粉体流路202に供給されるトナー母粒子2および樹脂微粒子は、回転撹拌手段204による撹拌によって、一定の粉体流動方向に流過する。また電磁弁によって供給管内の流路が閉鎖されている状態においては、トナー母粒子2および樹脂微粒子が粉体流路202に供給されない。
【0103】
粉体回収部207には、回収タンクと、回収タンクと粉体流路202とを連通する回収管と、回収管に設けられる電磁弁とを備える。電磁弁によって回収管内の流路が開放されている状態において、粉体流路202を流過するカプセルトナー粒子は回収管を介して回収タンクに回収される。また電磁弁によって回収管内の流路が閉鎖されている状態において、粉体流路202を流過するカプセルトナー粒子は回収されない。
【0104】
回転撹拌手段204は、回転軸218と、円盤状の回転盤219と、複数の撹拌羽根220とを含む。回転軸218は、回転軸218を駆動する部分である図示しない回転軸部において、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転軸218は、回転撹拌室208の軸線に一致する軸線を有しかつ回転撹拌室208の軸線方向他方側の面208cに、面208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔221に挿通されるように設けられ、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤219は、その軸線が回転軸218の軸線に一致するように回転軸218に支持され、回転軸218の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根220は、回転盤219によって支持され、回転盤219の回転に伴って回転する。
【0105】
回転撹拌手段204の回転速度は、最外周における周速が50m/sec以上に設定される。回転撹拌手段204の最外周とは、回転撹拌手段204の回転軸218が延びる方向に垂直な方向において、回転軸218の軸線との距離がもっとも長い回転撹拌手段204の部分である。最外周における周速が50m/sec以上であると、トナー母粒子2および樹脂微粒子を孤立流動させることと、トナー母粒子2および樹脂微粒子の流路内壁に対する衝突頻度を低減することとを同時に達成することができる。最外周における周速が50m/sec未満であると、トナー母粒子2および樹脂微粒子を孤立流動させることができないためトナー母粒子2に樹脂被覆層4を安定して形成することができなくなる。
【0106】
回転撹拌手段204の回転数は、上記回転速度となるように、回転撹拌手段204の大きさに応じて適宜変更する。
【0107】
温度調整手段である温度調整用ジャケット224は、粉体流路202内壁の少なくとも一部に設けられる。温度調整用ジャケット224は、その内部に形成される流路225に水などの媒体を流すことによって、粉体流路202内壁温度を一定に調整し、トナー母粒子2の付着を防止する。温度調整用ジャケット224は、トナー母粒子2が付着しやすい粉体流路202の部分の外側に設けられることが好ましい。本実施の形態において温度調整用ジャケット224は、少なくとも粉体流路202における循環管209全体、回転撹拌室208および回転撹拌室壁面内部に設けられる。
【0108】
噴霧手段203は、噴霧液体を貯留する図示しない噴霧液体貯留部と、キャリアガスを貯留する図示しないキャリアガス貯留部と、噴霧液体とキャリアガスとを混合し、粉体流路202内を流動するトナー母粒子2および樹脂微粒子に向けて噴射し、噴霧液体の液滴をトナー母粒子2および樹脂微粒子に噴霧する液体噴霧ユニット203aとを備える。
【0109】
キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。キャリアガスの好ましい流量は、装置のスケールとトナー母粒子2および樹脂微粒子の量とによって異なる液体の噴霧速度に依存し、噴霧液体の噴霧速度に合わせて適宜調整する。液体噴霧ユニットとしては、市販品を用いることができ、たとえば、噴霧液体を送液ポンプ(商品名:SP11−12、株式会社フロム製)を通して二流体ノズル(商品名:HM−6型、扶桑精機株式会社製)に定量送液するように接続したものを使用することができる。
【0110】
このような回転撹拌装置201を用いると、トナー母粒子2と樹脂微粒子との使用割合が設定し易く、樹脂被覆層4の厚みを好適にすることができる。また、粉体流路202内のトナー母粒子2を撹拌する回転撹拌手段204を備えるので、トナー母粒子2に均一な量の樹脂微粒子を付着させることができ、帯電性が均一であるカプセルトナー1を得ることができる。
【0111】
回転撹拌装置201を用い、以下のようにしてトナー母粒子2表面に樹脂被覆層4を形成する。
【0112】
まず混合工程S4aで、低温度樹脂微粒子と高温度樹脂微粒子とを粉体投入部206から粉体流路202内に投入し、流動させて混合樹脂微粒子を得る。本工程で低温度樹脂微粒子と高温度樹脂微粒子とを混合して、これらの樹脂微粒子からなる混合樹脂微粒子を後の工程で用いることは、トナー母粒子2と低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子とを同時に混合する場合よりも好ましい。これによって、個々のトナー母粒子2表面に付着する低温度樹脂微粒子量と高温度樹脂微粒子量との割合がばらつくことを抑制することができるので、低温度樹脂微粒子量と高温度樹脂微粒子量との割合が均一な樹脂被覆層4を形成することができる。そのため、カプセルトナー1の定着領域を維持することができ、耐ブロッキング性を良好にすることができる。
【0113】
混合工程S4aは、低温度樹脂微粒子と高温度樹脂微粒子とを分散液に分散させて10wt%の懸濁液とし、この懸濁液をスプレードライ乾燥機にて乾燥処理することで行われてもよい。
【0114】
次に樹脂微粒子付着工程S4bで、トナー母粒子2と混合樹脂微粒子とを流動させて、トナー母粒子2表面に混合樹脂微粒子を付着させ、図6に示すような樹脂微粒子付着粒子1aを得る。図6は、樹脂微粒子付着粒子1aの構成を模式的に示す断面図である。図6に示すように、樹脂微粒子付着粒子1aは、トナー母粒子2表面に混合樹脂微粒子3が均一に付着されている。
【0115】
混合樹脂微粒子3の使用割合は、特に限定されないけれども、トナー母粒子2の表面全面を被覆することができる使用割合であることが必要であり、100重量部のトナー母粒子2に対して、1重量部以上30重量部以下が好ましい。このような割合で混合樹脂微粒子3が用いられると、トナー母粒子2の表面全面に混合樹脂微粒子3を付着させることができ、トナー母粒子2の表面全面に樹脂被覆層4を形成することができる。これによって、トナー母粒子2に含まれる低融点成分が浸出してカプセルトナー1が凝集することを確実に防止することができる。
【0116】
混合樹脂微粒子3が1重量部未満であると、トナー母粒子2の表面全面を樹脂被覆層4で被覆することができないおそれがある。混合樹脂微粒子3が30重量部を超えると、樹脂被覆層4の厚みが大きくなり過ぎ、樹脂微粒子の構成材料によっては、カプセルトナー1の定着性が低下するおそれがある。
【0117】
低温度樹脂微粒子および高温度樹脂微粒子は、低温度樹脂微粒子の重量Wおよび高温度樹脂微粒子の重量Wによって計算される樹脂微粒子重量比で1/9≦W/W≦9/1の使用割合で用いられることが好ましい。
【0118】
このような割合で低温度樹脂微粒子と高温度樹脂微粒子との重量比を制御することで、トナー母粒子2表面に付着する低温度樹脂微粒子量と高温度樹脂微粒子量との割合を適切な値に調整することが可能になる。これによってカプセルトナー1の定着温度幅を大きく維持することができるとともに、トナー母粒子2だけでは得られない耐ブロッキング性の調整が可能となる。
【0119】
噴霧工程S4cでは、流動状態にある樹脂微粒子付着粒子に、噴霧液体を噴霧手段203から噴霧する。樹脂微粒子付着粒子を興性するトナー母粒子2および樹脂微粒子は、噴霧液体が噴霧され、かつ撹拌の衝撃による熱的エネルギーが加えられることによって、その表面が膨潤軟化する。これによって、湿潤粒子を得る。
【0120】
膜化工程S4dでは、噴霧手段203からの噴霧液体の噴霧を継続しながら、湿潤粒子表面の樹脂微粒子が軟化して膜化するまで回転撹拌手段204の回転を継続させる。回転撹拌手段204による機械的衝撃力が付加されることによって、トナー母粒子2表面に樹脂微粒子が固着するとともに、樹脂微粒子の一部が、トナー母粒子2および隣合う樹脂微粒子の少なくともいずれか一方と融着する。これによってトナー母粒子2の表面の全面に樹脂微粒子を付着させることができ、トナー母粒子2の表面の全面に樹脂微粒子を融着、そして膜化させることができ、トナー母粒子2表面に樹脂被覆層4を形成することができる。
【0121】
噴霧液体の使用量は、特に限定されないけれども、トナー母粒子2の表面全面を濡らす程度の量であることが好ましい。噴霧液体の使用量は、トナー母粒子2の使用量によって決定される。また噴霧液体は、噴霧手段203による噴霧時間、噴霧回数などによってその量を調整することができる。したがってトナー母粒子2の平均粒径、トナー母粒子2と樹脂微粒子との使用割合、トナー母粒子2の材料および樹脂微粒子の材料などに応じて噴霧手段203による単位時間当りの噴霧量を設定し、たとえば粉体流路202内の樹脂微粒子のうちほとんどがトナー母粒子2に付着した時点で、噴霧手段203による噴霧液体の噴霧を終了すればよい。
【0122】
噴霧手段203による単位時間当りの噴霧量は、0.5g/分以上2.0g/分以下であることが好ましい。
【0123】
噴霧液体を噴霧する時間は、10分間以上60分間以下が好ましい。噴霧液体を噴霧する時間が10分未満と短すぎると、樹脂微粒子を充分に融着させることができない。噴霧液体を噴霧する時間が60分を超えると、カプセルトナー1の形状が変形しやすくなる。
【0124】
さらに噴霧液体は、樹脂微粒子付着粒子が粉体流路202内において浮遊する状態で噴霧されることが好ましい。樹脂微粒子付着粒子が粉体流路202内で浮遊する状態で噴霧されると、噴霧液体が噴霧された樹脂微粒子付着粒子同士が接触する時間を短縮することができ、樹脂微粒子付着粒子同士の凝集が防止されるので、粗大粒子の発生が防止され、粒径の均一なカプセルトナー1を得ることができる。樹脂微粒子付着粒子が粉体流路202内において浮遊する状態は、たとえば、回転撹拌手段204による撹拌、キャリアガスの供給などによって実現できる。
【0125】
粉体流路202内の温度は、トナー母粒子2に含まれる結着樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。これによって、カプセルトナー製造時に粉体流路202内でトナー母粒子2が溶融し過ぎることによって発生するトナー母粒子2同士の凝集を防止することができる。粉体流路202内の温度がトナー母粒子2に含まれる結着樹脂のガラス転移温度以上であると、粉体流路202内でトナー母粒子2が溶融し過ぎ、トナー母粒子2同士の凝集が発生するおそれがある。
【0126】
トナー母粒子2の表面全面において樹脂微粒子の膜化が終了すると、噴霧液体の除去を行う。噴霧液体の除去は、たとえば気流で噴霧液体を気化させることによって行われる。この際、噴霧液体としてアルコールを用いると、蒸気圧が大きいので、除去および乾燥が容易である。
【0127】
このようにして得られるカプセルトナー1は、トナー母粒子2と融着する樹脂微粒子によってトナー母粒子2の定着温度幅を大きく維持するとともに、トナー母粒子2では得られなかった耐ブロッキング性に優れる特性が得られる。
【0128】
またカプセルトナー1には、外添剤が添加されてもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられる。またこれらは、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤の使用量は、100重量部のカプセルトナー1に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0129】
カプセルトナー1は、の体積平均粒子径が5.0μm以上9.0μm以下であることが好ましく、変動係数が30未満であることが好ましい。カプセルトナー1の変動係数は、小さくなるほど、カプセルトナー1の粒度分布が単分散となるため好ましいが、トナー母粒子2が粉砕法で作製された粒子である場合には、カプセルトナー1の変動係数を20以下とすることは困難である。
【0130】
さらにカプセルトナー1は、1成分現像剤としても2成分現像剤としても使用することができる。1成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくカプセルトナー1のみで使用する。また1成分現像剤として使用する場合、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブで摩擦帯電させてスリーブ上にカプセルトナー1を付着させることによってカプセルトナー1を搬送し、画像形成を行う。
【0131】
2成分現像剤として使用する場合、カプセルトナー1をキャリアとともに用いる。キャリアとしては、公知のものを使用でき、たとえば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリア芯粒子を被覆物質で表面被覆したものなどが挙げられる。
【0132】
被覆物質としては公知のものを使用でき、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリエステル、ジターシャリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられ、トナー成分に応じて選択するのが好ましい。また被覆物質は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。キャリアの平均粒径は、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmである。
【0133】
2成分現像剤は、上記のような効果を奏するカプセルトナー1を含むことにより、定着性および帯電性などの経時安定性に優れる。また高濃度で高画質の画像を形成することができる。
【0134】
図7は、本発明のカプセルトナー1の製造方法で製造されたカプセルトナー1を用いるのに適した画像形成装置10の構成を模式的に示す図である。画像形成装置10は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置10においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置10は、トナー像形成手段20と、転写手段30と、定着手段40と、記録媒体供給手段50と、排出手段60とを含む。トナー像形成手段20を構成する各部材および転写手段30に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0135】
トナー像形成手段20は、像担持体である感光体ドラム21と、帯電手段22と、露光ユニット23と、現像手段24と、クリーニングユニット25とを含む。帯電手段22、現像手段24およびクリーニングユニット25は、感光体ドラム21まわりに、この順序で配置される。帯電手段22は、現像手段24およびクリーニングユニット25よりも鉛直方向下方に配置される。
【0136】
感光体ドラム21は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む潜像担持体である。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、少なくとも導電性粒子または導電性ポリマーのいずれかを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0137】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けることが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、少なくとも低温環境下または低湿環境下のいずれかにおける感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光層表面を保護する保護層を設けた耐久性に優れる三層構造の積層感光層であっても良い。
【0138】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、少なくともフローレン環またはフルオレノン環のいずれかを含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5重量部〜500重量部、さらに好ましくは10重量部〜200重量部である。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0139】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05μm〜5μm、さらに好ましくは0.1μm〜2.5μmである。
【0140】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送層中の結着樹脂100重量部に対して10重量部〜300重量部、さらに好ましくは30重量部〜150重量部である。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と記す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0141】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれることが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10μm〜50μm、さらに好ましくは15μm〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0142】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
【0143】
帯電手段22は、感光体ドラム21を臨み、感光体ドラム21の長手方向に沿って感光体ドラム21表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム21表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段22には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、鋸歯型帯電器、イオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段22は感光体ドラム21表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段22として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラム21とが圧接するように帯電ローラを配置しても良く、また帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いても良い。
【0144】
露光ユニット23は、露光ユニット23から出射される各色情報の光が、帯電手段22と現像手段24との間を通過して感光体ドラム21の表面に照射されるように配置される。露光ユニット23は、画像情報を該ユニット内でブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)、イエロー(y)の各色情報の光に分岐し、帯電手段22によって一様な電位に帯電された感光体ドラム21表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット23には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0145】
図8は、現像手段24の構成を模式的に示す断面図である。現像手段24は、本発明に係る現像装置であり、現像槽26とトナーホッパ27とを含む。現像槽26は感光体ドラム21表面を臨むように配置され、感光体ドラム21の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽26は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ26a、供給ローラ26b、撹拌ローラ26cなどのローラ部材またはスクリュー部材を収容して回転自在に支持する。現像槽26の感光体ドラム21を臨む側面には開口部が形成され、この開口部を介して感光体ドラム21に対向する位置に現像ローラ26aが回転駆動可能に設けられる。現像ローラ26aは、感光体ドラム21との圧接部または最近接部において感光体ドラム21表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ26a表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ26a表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御できる。供給ローラ26bは現像ローラ26aを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ26a周辺にトナーを供給する。撹拌ローラ26cは供給ローラ26bを臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ27から現像槽26内に新たに供給されるトナーを供給ローラ26b周辺に送給する。トナーホッパ27は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口(図示せず)と、現像槽26の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口(図示せず)とが連通するように設けられ、現像槽26のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ27を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成しても構わない。
【0146】
クリーニングユニット25は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム21の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム21の表面を清浄化する。クリーニングユニット25には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体ドラム21として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電手段22によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット25よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット25を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット25を設けなくてもよい。
【0147】
トナー像形成手段20によれば、帯電手段22によって均一な帯電状態にある感光体ドラム21の表面に、露光ユニット23から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像手段24からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト28に転写した後に、感光体ドラム21表面に残留するトナーをクリーニングユニット25で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0148】
転写手段30は、感光体ドラム21の上方に配置され、中間転写体である中間転写ベルト28と、駆動ローラ29と、従動ローラ31と、中間転写ローラ32b,32c,32m,32yと、転写ベルトクリーニングユニット33、転写ローラ34とを含む。中間転写ベルト28は、駆動ローラ29と従動ローラ31とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向、すなわち感光体ドラム21と接する面が感光体ドラム21yから21bに向う方向に移動するように回転駆動する。
【0149】
中間転写ベルト28が、感光体ドラム21に接しながら感光体ドラム21を通過する際、中間転写ベルト28を介して感光体ドラム21に対向配置される中間転写ローラ32から、感光体ドラム21表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト28上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム21y,21m,21c,21bで形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト28上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。駆動ローラ29は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト28を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ31は駆動ローラ29の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト28が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト28に付与する。中間転写ローラ32は、中間転写ベルト28を介して感光体ドラム21に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ32は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム21表面のトナー像を中間転写ベルト28に転写する機能を有する。転写ベルトクリーニングユニット33は、中間転写ベルト28を介して従動ローラ31に対向し、中間転写ベルト28の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム21との接触によって中間転写ベルト28に付着し、記録媒体に転写されずに残留するトナーは、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット33が中間転写ベルト28表面の残留トナーを除去し回収する。転写ローラ34は、中間転写ベルト28を介して駆動ローラ29に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ34と駆動ローラ29との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト28に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給手段50から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段40に送給される。転写手段30によれば、感光体ドラム21と中間転写ベルト28との圧接部において感光体ドラム21から中間転写ベルト28に転写されるトナー像が、中間転写ベルト28の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0150】
定着手段40は、転写手段30よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ35と加圧ローラ36とを含む。定着ローラ35は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ35の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ35表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ35を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着ローラ35表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ35の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。定着条件制御手段は、記憶部に書き込まれた検知結果に基づいて、加熱手段の動作を制御する。加圧ローラ36は定着ローラ35に圧接するように設けられ、定着ローラ35の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ36は、定着ローラ35によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ35と加圧ローラ36との圧接部が定着ニップ部である。定着手段40によれば、転写手段30においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ35と加圧ローラ36とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
【0151】
記録媒体供給手段50は、自動給紙トレイ37と、ピックアップローラ38と、搬送ローラ39a,39bと、レジストローラ41と、手差給紙トレイ42とを含む。自動給紙トレイ37は画像形成装置10の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ38は、自動給紙トレイ37に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ39aは互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ41に向けて搬送する。レジストローラ41は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ39aから送給される記録媒体を、中間転写ベルト28に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ42は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ42から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ39bによって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ41に送給される。記録媒体供給手段50によれば、自動給紙トレイ37または手差給紙トレイ42から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト28に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0152】
排出手段60は、搬送ローラ39cと、排出ローラ43と、排出トレイ44とを含む。搬送ローラ39cは、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段40によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ43に向けて搬送する。排出ローラ43は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置10の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ44に排出する。排出トレイ44は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0153】
画像形成装置10は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置10の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置10の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置10内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機、ビデオレコーダ、DVD(Digital
Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置10内部における各装置にも電力を供給する。
【0154】
画像形成装置10は、現像手段24を備え、本発明のカプセルトナー1を用いて画像形成するので、帯電性などの経時安定性不良やクリーニング不良による画質低下を起すことなく、高精細で高解像度の高画質画像を形成することができる。
【実施例】
【0155】
[樹脂の軟化温度(Tm)]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm(9.8×10Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
【0156】
[樹脂のガラス転移温度(Tg)]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
【0157】
[樹脂微粒子の体積平均粒径]
樹脂微粒子の体積平均粒径は、マイクロトラックMT3000(日機装株式会社製を用い、分散媒を水とし、屈折率を1.33とし、屈折率を1.49として樹脂微粒子の体積粒度分布から求めた。
【0158】
[カプセルトナーの体積平均粒径および変動係数]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、カプセルトナー20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤、キシダ化学株式会社製)1mlを添加し、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS−D100、アズワン株式会社製)にて超音波周波数20kHzで3分間超音波分散処理したものを測定用試料とした。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径100μm、測定粒子数50000カウントの条件下にカプセルトナー粒子の粒径の測定を行い、得られた測定結果からカプセルトナー粒子の体積粒度分布を求め、求めた体積粒度分布からカプセルトナーの体積平均粒径(μm)を算出した。また、体積粒度分布における標準偏差を求めて、下記式(2)に基づいてカプセルトナーの変動係数(CV値、%)を算出した。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒径(μm)}×100
…(2)
【0159】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
【0160】
トナー母粒子および樹脂微粒子の作製に用いられるポリエステル樹脂A〜E、およびポリエステル樹脂a〜jのガラス転移温度および軟化温度を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
上記ポリエステル樹脂A〜Eを用いて、以下のようにトナー母粒子を作製し、上記ポリエステル樹脂a〜jを用いて樹脂微粒子を作製した。
【0163】
〔トナー母粒子aの作製〕
ポリエステル樹脂Aを85重量部、着色剤として銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)を5重量部、離型剤(カルナウバワックス、東亜化成株式会社製、融点82℃)8重量部、帯電制御剤(商品名:ボントロンE84、オリエント化学工業株式会社製)2重量部をヘンシェルミキサーにて3分間混合分散し、トナー母粒子混合物を得た。得られたトナー母粒子混合物を、二軸押出機(商品名:PCM−30、株式会社池貝製)で溶融混練分散し、樹脂混練物を得た。
【0164】
得られた樹脂混練物を冷却ベルトにて冷却後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルにて粗粉砕した。得られた粗粉砕物をジェット式粉砕機(商品名:IDS−2、日本ニューマチック工業株式会社製)にて粉砕し、さらにエルボージェット分級機(商品名、日鉄鉱業株式会社製)にて微粉および粗粉を取除くことによって、体積平均粒径が6.9μmであり、変動係数が22であるトナー母粒子aを得た。
【0165】
〔トナー母粒子bの作製〕
ポリエステル樹脂Aの代わりにポリエステル樹脂Bを用いたこと以外はトナー母粒子aの作製方法と同様にしてトナー母粒子bを得た。
【0166】
〔トナー母粒子cの作製〕
ポリエステル樹脂Aの代わりにポリエステル樹脂Cを用いたこと以外はトナー母粒子aの作製方法と同様にしてトナー母粒子cを得た。
【0167】
〔トナー母粒子dの作製〕
ポリエステル樹脂Aの代わりにポリエステル樹脂Dを用いたこと以外はトナー母粒子aの作製方法と同様にしてトナー母粒子dを得た。
【0168】
〔トナー母粒子eの作製〕
ポリエステル樹脂Aの代わりにポリエステル樹脂Eを用いたこと以外はトナー母粒子aの作製方法と同様にしてトナー母粒子eを得た。
【0169】
〔樹脂微粒子a〕
ポリエステル樹脂aをメチルエチルケトンに溶解し、この溶液をアンモニア水溶液と混合して機械式分散機(商品名:クレアミックス(CLEARMIX)、エム・テクニック株式会社製)で乳化した。得られた乳化物からメチルエチルケトンを減圧溜去して、体積平均粒径が0.19μmである樹脂微粒子aを得た。
【0170】
〔樹脂微粒子b〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂bを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.17μmである樹脂微粒子bを得た。
【0171】
〔樹脂微粒子c〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂cを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.19μmである樹脂微粒子cを得た。
【0172】
〔樹脂微粒子d〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂dを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.21μmである樹脂微粒子dを得た。
【0173】
〔樹脂微粒子e〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂eを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.22μmである樹脂微粒子eを得た。
【0174】
〔樹脂微粒子f〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂fを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.18μmである樹脂微粒子fを得た。
【0175】
〔樹脂微粒子g〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂gを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.18μmである樹脂微粒子gを得た。
【0176】
〔樹脂微粒子h〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂hを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.20μmである樹脂微粒子hを得た。
【0177】
〔樹脂微粒子i〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂iを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.16μmである樹脂微粒子iを得た。
【0178】
〔樹脂微粒子j〕
ポリエステル樹脂aの代わりにポリエステル樹脂jを用いたこと以外は樹脂微粒子aの作製方法と同様にして、体積平均粒径が0.21μmである樹脂微粒子jを得た。
【0179】
(実施例1)
5重量部の樹脂微粒子bと5重量部の樹脂微粒子fとを含む10wt%懸濁液をスプレードライ乾燥機にて乾燥処理を行い、平均粒径が5〜7μmの混合樹脂微粒子を得た。
【0180】
容器内に噴霧液体を噴霧できる二流体ノズルを取付けた表面改質装置(商品名:ハイブリダイザーNHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、トナー母粒子100重量部、および前記混合樹脂微粒子を投入し、回転数8000rpmで10分間流動させた。その後、二流体ノズルに圧縮エアを送り、噴霧液体としてエタノールを0.5g/分で噴霧するように調整し、45℃で40分間噴霧してトナー母粒子の表面の樹脂微粒子Aおよび樹脂微粒子Bを膜化させた。
【0181】
樹脂微粒子が膜化されたトナー母粒子を乾燥させることによって、トナー母粒子表面全面に樹脂被覆層が形成された実施例1のカプセルトナーを得た。実施例1のカプセルトナーは、体積平均粒径が7.2μmであり、変動係数が25であった。
【0182】
(実施例2〜11)
表2に示すようにトナー母粒子および樹脂微粒子の種類を変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜11のカプセルトナーを得た。
【0183】
(比較例1〜6)
表3に示すようにトナー母粒子および樹脂微粒子の種類を変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例1〜6のカプセルトナーを得た。
【0184】
(比較例7)
樹脂微粒子fを添加せず、樹脂微粒子bの添加量を5重量部から10重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして比較例7のカプセルトナーを得た。
【0185】
実施例1〜11および比較例1〜7のカプセルトナーに用いられたトナー母粒子および樹脂微粒子の種類、トナー母粒子および樹脂微粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度、ならびにカプセルトナーの体積平均粒径および変動係数を表2,3に示す。
【0186】
【表2】

【0187】
【表3】

【0188】
〈2成分現像剤の作製〉
以上のようにして得られた実施例および比較例のカプセルトナー100重量部に、シランカップリング剤で疎水化処理された平均一次粒径20nmのシリカ粒子0.7重量部および酸化チタン1重量部を混合した。さらにこの外添トナーと、体積平均粒径60μmのフェライトコアキャリアとを、2成分現像剤全量に対する外添トナーの濃度が7%になるように調整して混合し、トナー濃度7%の2成分現像剤を作製した。
【0189】
上記2成分現像剤を用いて、耐久性(耐ブロッキング性)、耐フィルミング性および低温定着性を評価した。
【0190】
〔耐久性〕
市販の2成分現像装置を有する複写機(商品名:MX-2300G、シャープ株式会社製)の現像ユニットに上記2成分現像剤をセットし、感光体上に現像されないように調整した。この状態で、50℃の恒温中で現像器のみ5時間連続駆動して凝集物の発生の有無を確認した。
【0191】
耐久性の評価基準は以下のとおりである。
○:良好。凝集物の発生なし
×:不良。凝集物の発生あり
【0192】
[耐フィルミング性]
現像ローラへのトナー付着量が0.6〜0.7mg/cmとなり、記録用紙上に形成される未定着トナー画像の単色ソリッド部におけるトナー付着量が0.5mg/cmとなるように調整して、トナー単色で、画像ソリッド部および文字部を含む原稿濃度5%の評価チャートを記録用紙10000枚に形成する連続実写テストを行なった。10000枚の連続実写テスト後、現像ローラおよび感光体部材の長手方向の実使用する長さに相当するソリッド画像を出力させ、得られたソリッド画像を目視によって観察し、ソリッド画像への筋またはフィルミング痕の発生の有無を確認した。また感光体表面を目視によって観察し、フィルミングの有無を確認した。
【0193】
耐フィルミング性の評価基準は以下のとおりである。
○:良好。画像および感光体表面に問題が確認されない。
△:やや不良。画像には問題が確認されないが、感光体表面にフィルミングが確認される。
×:不良。画像および感光体表面に問題が確認される。
【0194】
〔低温定着性〕
市販複写機(商品名:MX−2300G、シャープ株式会社製)を改造したものを用い、上記2成分現像剤による定着画像を作製した。まず、記録媒体である記録用紙(商品名:PPC用紙SF−4AM3、シャープ株式会社製)に、べた画像部(縦20mm、横50mmの長方形)を含むサンプル画像を未定着画像として形成した。この際、べた画像部におけるカプセルトナーの記録用紙への付着量が0.5mg/cm2となるよう調整した。次に、前記複写機の定着部を利用した外部定着器を用いて定着画像を作製した。定着プロセス速度は220mm/secとし、定着ローラの温度を110℃から5℃刻みで上げ、低温オフセットの発生しない温度を定着下限温度とした。
【0195】
低温定着性の評価基準は以下のとおりである。
○:良好。定着下限温度が130℃未満である。
△:やや不良。定着下限温度が130℃以上140℃未満である。
×:不良。定着下限温度が140℃以上である。
【0196】
〔総合評価〕
以上の耐久性、耐フィルミング性および低温定着化の評価結果から、以下のような基準で総合評価を行った。
◎:大変良好。上記評価結果が全て○である。
○:良好。上記評価結果において×がなく、△が1個である。
△:やや不良。上記評価結果において×がなく、△が2個以上ある。
×:不良。上記評価結果に×がある。
評価結果および総合評価結果を表4に示す。
【0197】
【表4】

【0198】
実施例1〜11は、耐久性、耐フィルミング性および低温定着性が良好であった。
比較例1は、トナー母粒子のガラス転移温度Tgcが低すぎるので、トナー母粒子表面に樹脂被覆層が形成されてもブロッキングが発生した。
【0199】
比較例2は、トナー母粒子のガラス転移温度Tgcが高すぎるので、低温定着化が低下した。
【0200】
比較例3は、低温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgと、トナー母粒子のガラス転移温度Tgcとの差が近すぎるので、ブロッキングが発生した。また、低温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgと、高温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgとの差が大きいので、フィルミングが発生した。
【0201】
比較例4は、低温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgと、高温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgとの差が小さすぎるので、ブロッキングが発生した。
【0202】
比較例5は、低温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgと、高温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgとの差が大きすぎるので、フィルミングが発生した。
【0203】
比較例6は、トナー母粒子のガラス転移温度Tgcと、低温度樹脂微粒子のガラス転移温度Tgとの差が大きすぎるので、フィルミングが発生した。
【0204】
比較例7は、フィルミングは発生しないが、高温度樹脂微粒子を含まないのでブロッキングが発生した。
【符号の説明】
【0205】
1 カプセルトナー
2 トナー母粒子
4 樹脂被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含むトナー母粒子と、トナー母粒子表面に形成された樹脂被覆層とを有するカプセルトナーの製造方法において、
回転撹拌手段と噴霧手段とを備える回転撹拌装置を用い、トナー母粒子とガラス転移温度が異なる複数の樹脂微粒子とを、回転撹拌手段を回転させることによって流動させて、トナー母粒子表面に前記複数の樹脂微粒子を付着させる樹脂微粒子付着工程と、
前記回転撹拌手段の回転が継続されて流動状態にある、前記複数の樹脂微粒子が付着したトナー母粒子に、トナー母粒子および前記複数の樹脂微粒子を可塑化させる液体である噴霧液体を前記噴霧手段から噴霧する噴霧工程と、
トナー母粒子に付着した前記複数の樹脂微粒子が軟化して膜化するまで前記回転撹拌手段の回転を継続させて、トナー母粒子表面に樹脂被覆層を形成する膜化工程とを含み、
前記トナー母粒子は、ガラス転移温度が45℃以上55℃以下であり、
前記複数の樹脂微粒子は、
ガラス転移温度が50℃以上65℃以下である第1樹脂微粒子と、
ガラス転移温度が65℃以上75℃以下である第2樹脂微粒子とを含み、
前記トナー母粒子のガラス転移温度をTgc、前記第1樹脂微粒子のガラス転移温度をTg、前記第2樹脂微粒子のガラス転移温度をTgとしたとき、下記式(1)を満たすことを特徴とするカプセルトナーの製造方法。
Tg<Tg<Tg …(1)
【請求項2】
請求項1に記載のカプセルトナーの製造方法によって製造されることを特徴とするカプセルトナー。
【請求項3】
請求項2に記載のカプセルトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項4】
請求項2に記載のカプセルトナーと、キャリアとを含む2成分現像剤であることを特徴とする現像剤。
【請求項5】
請求項3または4の現像剤を用いて、像担持体に形成される静電潜像を現像してトナー像を形成することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
像担持体に形成される静電潜像を現像してトナー像を形成する請求項5に記載の現像装置と、
像担持体に形成されるトナー像が転写される中間転写体を備える転写手段とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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