説明

カプセル剤皮組成物

【課題】適度な硬度の植物性カプセル剤皮を提供すること。
【解決手段】カッパカラギーナン、ラムダカラギーナン、ローカストビーンガム及び化工デンプンを含有することを特徴とするカプセル剤皮組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品・医薬品等の分野に適用されるカプセル剤皮組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ソフトカプセルは牛、豚、魚などの動物性ゼラチンと可塑剤で成形されていた。しかし、近年、BSE(狂牛病)の発生により、豚及び魚ゼラチンによるソフトカプセルが増加し、さらに動物性剤皮の代替として植物性の剤皮が求められている。
植物性の剤皮としては、イオタカラギーナンとデンプンと可塑剤と緩衝剤からなるものが開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、カラギーナンの内、カッパカラギーナンは、これを含むデンプン溶液を調製するために多量の水を必要とし、且つ、そのデンプン溶液の粘度は高い。そして、この溶液から得られるカプセルは硬く脆く、溶着の弱いものとなる。
この問題を解決するために、カッパカラギーナンとイオタカラギーナンとを1:0.5〜1:10の重量比で配合し、デキストリン100重量部に対しカラギーナン類1〜50重量部配合したものが開示されている(特許文献2)。
一方、ラムダカラギーナンは、硫酸基が内部に入り、互いに反発し合い、らせん構造がとれない為、ゲル化能が無いことは周知であり、カプセル剤皮に使用することは考えられないものであった。
【特許文献1】特許第3947003号公報
【特許文献2】特開2005−176744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物原料であるデンプン素材を基剤としてカプセル剤皮を製造する際の問題点として、カプセル剤皮組成物の調製時、デンプン溶液の粘度をある程度高くしないとカプセル製造が不可能となるため、デンプン溶液の粘度が高く作業性が良くないという課題を抱えている。
一方、作業性をよくするためにデンプン溶液の粘度を低くした場合、フィルムにべたつきが発生し、カプセルの製造が不可能となる。
また、デンプン素材を基剤としたカプセル剤皮はカプセル同士が付着する現象所謂ブロッキングが発生し易いことも一つの課題となっている。また、ブロッキングは従来のゼラチンカプセル剤皮でも見られる現象であり、この問題の解決も望まれている。
本発明の目的は、適度な粘度のデンプン溶液を用い、適度な硬さを有するカプセル剤皮となり、ブロッキングが抑制されたカプセル剤となる植物性のカプセル剤皮組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
斯かる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行ったところ、意外にも硬度不足のカッパカラギーナンとゲル化能の無いラムダカラギーナンを組み合わせ、更に、ローカストビーンガム及び化工デンプンを組み合わせたカプセル剤皮組成物が、適度な硬さを有する良好なカプセル剤皮となることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、カッパカラギーナン、ラムダカラギーナン、ローカストビーンガム及び化工デンプンを含有することを特徴とするカプセル剤皮組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記カプセル剤皮組成物を用いて得られるカプセルを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、適度な硬度の植物性カプセル剤皮を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、適度な剤皮硬度を得るためカッパカラギーナンとラムダカラギーナンを併用する。カッパカラギーナンとラムダカラギーナンの重量比(カッパ:ラムダ)は、1:10〜10:10が好ましく、3:7〜5:5が更に好ましく、4:6〜5:5が特に好ましい。また、カッパカラギーナンとイオタカラギーナンには純粋の物が市販されているが、ラムダカラギーナンはカッパ/ラムダタイプとして市販されており、カッパカラギーナンを含んでいるが、本発明ではこれをそのまま使用してもよい。さらにカッパ/ラムダ/イオタの3種を含む市販品も用いることができる。
【0008】
本発明では、更に、フィルムのゲル化を上げ、ベタ付きをなくすためにローカストビーンガムを用いる。ローカストビーンガムは、ローカストビーンガム:カラギーナン=1:10〜10:10、特に1:2〜2:3の重量比で使用することにより、最適な効果を得ることができる。
【0009】
また、本発明で使用する化工デンプンは特に制限されず、例えば、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、カチオンデンプン、酢酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、リン酸デンプン、リン酸ジデンプン、グリセロールジデンプン、グラフト化デンプン、白色デキストリン、黄色デキストリン、ブリティッシュガム、マルトデキストリン、可溶性デンプン、未変性アルファ化デンプン、変性アルファ化デンプン、滅菌乾燥デンプン、局方デンプン、粒状デンプン、吸油性デンプン、ヒドロキシアルキルグアーガム、カチオングアーガム、カルボキシメチルグアーガム等が挙げられる。
この内、ヒドロキシプロピルデンプンが好ましく、特にヒドロキシプロピルデンプンの高粘度タイプと低粘度タイプを7:3〜3:7の重量比で併用したものが好ましい。ここでヒドロキシプロピルデンプンの高粘度タイプとは、粘度500以上のタピオカデンプンをいい、低粘度タイプとは粘度35〜200のタピオカデンプンを言う。
【0010】
化工デンプンと上記成分の配合比は、化工デンプン100重量部に対しカラギーナン(カッパ/ラムダタイプ)とローカストビーンガムからなるゲル化剤1〜50重量部とすることが好ましく、さらに20〜50重量部とすることが好ましく、特に20〜45重量部とすることが好ましい。また、化工デンプンとして、ヒドロキシプロピルデンプンを使用した場合は、さらにデキストリンを5〜30重量部配合することで化工デンプン溶液を低粘度化することができる。ここでデキストリンとしては、鎖状デキストリン、環状デキストリン又はそれらの混合物を用いることができるが、混合物が好ましい。
【0011】
また、カッパ/ラムダタイプのカラギーナンが含有する剤皮の弾性力を強くするため、これらのカラギーナンに対し、カリウム塩を0.1〜10%、特に0.25〜4.0%添加することが好ましい。カリウム塩としては、塩化カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウムが挙げられる。
【0012】
本発明において各成分の最適な重量比は、化工デンプン100重量部に対して、ゲル化剤〔カッパ/イオタタイプのカラギーナン(カリウム塩0.2〜10%添加)とローカストビーンガムの混合末〕1〜50重量部である。また、化工デンプンとしてヒドロキシプロピルデンプンを使用した場合には、さらにデキストリン5〜30重量部を配合するのが好ましい。
【0013】
本発明のカプセル剤皮組成物は、さらに任意成分を本発明の効果を妨げない限り添加することができる。このような成分としてタラガム、キサンタンガム、グァーガム等から選択される増粘剤、グリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリエチレングリコール等から選択される可塑剤等が挙げられるがその限りではない。これらの任意成分の配合量は、適宜決定すればよいが、可塑剤は、固形分に対して好ましくは、30〜50重量%である。
【0014】
本発明組成物を用いたカプセルは常法に従い製造することができる。カプセルとしては軟カプセルが好ましい。当該カプセルには、種々の医薬品、食品等を充填することができる。
【実施例】
【0015】
下記の処方1〜6の溶液を常法により調製し、ロータリーダイ式充填機の回転ドラムに展延することでフィルム状とする。このフィルム状のシートを金型(ダイロール)間に挿入し、常法により、軟カプセル剤を得た。実施例で使用したカラギーナンは、各タイプのカラギーナンの混合物の市販品を使用した。従って、下記の処方1〜6中の例えばラムダカラギーナンとカッパカラギーナンの配合量は混合物から換算して求めたものである。
処方1及び2は実施例でその他は比較例である。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
処方1に示したデンプン溶液は粘度が低く、優れたフィルムを形成し、カプセル同士のブロッキングのない良好なカプセル剤が得られた。また、処方2の溶液は処方1に比較し粘度が更に低く、溶液の流動性及び弾性力も更に良好であった。処方3はデンプン溶液の粘度が高く、弱いカプセル剤であった。
【0020】
【表4】

【0021】
【表5】

【0022】
【表6】

【0023】
処方4はフィルムにベタ付きが発生し、カプセル成形を阻害した。処方5もフィルムにベタ付きが少々発生した。また、カプセル同士のブロッキングも発生した。
処方6は高粘度HP化デンプンの比率を高くし、カプセル成形を実施した。処方2よりデンプン溶液の粘度が高く、ゲル化は弱いが、カプセルを得ることができたが、カプセル同士のブロッキングが発生した。
【0024】
上記処方1〜6の組成物から得られたカプセルの硬度を測定した。結果を表7に示す。測定方法:木屋式硬度計を用いて測定した。
【0025】
【表7】

【0026】
上記より、本発明品はカッパカラギーナンの硬さ、フィルムのベタ付きによるカプセル成形の阻害と言った問題を見事に解消した画期的なものであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッパカラギーナン、ラムダカラギーナン、ローカストビーンガム及び化工デンプンを含有することを特徴とするカプセル剤皮組成物。
【請求項2】
カッパカラギーナンとラムダカラギーナンの重量比(カッパ:ラムダ)が1:10〜10:10である請求項1記載のカプセル剤皮組成物。
【請求項3】
カラギーナン(カッパ及びラムダ)に対し0.1〜10%のカリウム塩を含む請求項1又は2記載のカプセル剤皮組成物。
【請求項4】
カプセル剤が軟カプセル剤である請求項1〜3の何れか1項記載のカプセル剤皮組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のカプセル剤皮組成物を用いて得られるカプセル。

【公開番号】特開2009−102293(P2009−102293A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131561(P2008−131561)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(507325585)ディー・エー・ユー株式会社 (1)
【出願人】(000101651)アリメント工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】