説明

カプセル超音波内視鏡、及びカプセル超音波内視鏡装置

【課題】薬液の搭載が可能で嚥下性に優れたカプセル本体を備えたカプセル超音波内視鏡を提供すること
【解決手段】カプセル超音波内視鏡2は、超音波振動子11を備えたカプセル本体10と、超音波振動子11から発生される超音波振動を伝達する超音波伝達媒体25を兼ねる薬液が充填される内部空間31と、内部空間31に充填された薬液を兼ねる超音波伝達媒体25をカプセル本体10の外部に放出させる薬液放出手段を構成する本体カバー21に設けられた電磁石27、及び振動子カバー22に設けられた磁性体である例えば金属製の当接片28とを具備している。電磁石27がOFF状態に切り替えられることによって、振動子カバー22が本体カバー21に対して開状態になる。すると、内部空間31内の薬液が外部に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を搭載するカプセル超音波内視鏡、及びカプセル超音波内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、体外、又は体内から生体組織へ観測用超音波信号を送受波し、この生体組織からのエコーデータを基に、超音波断層画像を構築して診断を行う超音波診断装置が利用されている。また、近年では、医療用に構成したカプセルを体腔内に送り込んで、体腔内の病変部の情報を収集したり、薬液を投与して処置を行える等の機能を有するカプセル型の内視鏡が提案されている。例えば、特開平5−228128号公報には、生体の体腔内へ、薬剤の放出ができる医療用カプセルが示されている。
【0003】
また、超音波観察の分野においても、超音波プローブ等が到達困難な深部の下部消化管等にカプセルを送り込んで、診断を行える超音波カプセル内視鏡が、例えば特開2004−275409号公報に提案されている。
【特許文献1】特開平5−228128号公報
【特許文献2】特開2004−275409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カプセル超音波内視鏡においては、特開5−228128号公報のように薬品による処置を行えるようにすると、超音波観察を行うための構成に加えて、カプセル内に薬液タンクを装備しなければならない。そして、その構成をとることによってカプセル超音波内視鏡が大型になって、嚥下性が悪化するという不具合が生じる。
【0005】
本発明は前述した問題に鑑みてなされたものであり、薬液の搭載が可能で嚥下性に優れたカプセル本体を備えたカプセル超音波内視鏡、及びそれを備えたカプセル超音波内視鏡装置を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカプセル超音波内視鏡は、超音波走査を行うための超音波振動を発生する超音波振動子を備えたカプセル本体と、このカプセル本体内に設けられ、前記超音波振動子から発生される超音波振動を伝達する超音波伝達媒体を兼ねる薬液が充填される内部空間と、前記カプセル本体に設けられ、前記内部空間に充填された前記薬液を該内部空間から該カプセル本体の外部に放出させる薬液放出手段とを具備している。
【0007】
この構成によれば、カプセル本体に、薬液を貯留するための薬液タンクを新たに設けることなく、薬液を搭載することによってカプセル超音波内視鏡の大型化が防止される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薬液の搭載が可能で嚥下性に優れたカプセル本体を備えたカプセル超音波内視鏡、及びそれを備えたカプセル超音波内視鏡装置を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図4は本発明の第1実施形態に係り、図1はカプセル超音波内視鏡、及び超音波観測装置の構成を説明するブロック図、図2はカプセル超音波内視鏡の構成を説明する長手方向断面図、図3はカプセル超音波内視鏡のカプセル本体を構成する本体カバーと振動子カバーとの構成を説明する斜視図、図4はカプセル超音波内視鏡に充填された薬液を放出している状態を説明する図である。
【0010】
図1に示すようにカプセル超音波内視鏡装置1は、カプセル超音波内視鏡2と、指示装置を兼ねる超音波観測装置(以下、観測装置と略記する)3とを備えて構成されている。
図1、及び図2に示すようにカプセル超音波内視鏡2は、端部を半球状に形成した筒状の本体カバー21、及び振動子カバー22とで構成されるカプセル本体10を備えている。カプセル本体10の振動子カバー22は、後述するように本体カバー21に対して開閉可能に構成される。本体カバー21は生体適合性を有する硬質な樹脂部材で形成される。振動子カバー22は、低密度ポリエチレン、又はポリメチルペンテンなどの超音波透過性と弾性力とを有する樹脂部材で形成される。
【0011】
カプセル本体10の内部には、超音波振動子11と、振動子保持部材12と、隔壁部材13と、ブラシ部14と、エンコーダ15と、駆動モータである例えば超音波モータ16と、保持部材17と、電源部18と、無線送受信部(送受信部とも記載する)19と、カプセル制御部20等が収容されている。超音波振動子11は振動子保持部材12に固設される。
【0012】
隔壁部材13の中央部には貫通孔13aが形成されている。隔壁部材13には開閉当接部13bと、フランジ部13cとが設けられている。開閉当接部13bは円柱状であって、外周面には振動子カバー22の開口側端部が配設されるようになっている。開閉当接部13bより太径なフランジ部13cは、本体カバー21の開口側の所定位置に接着、或いは溶着等によって固定配置されるようになっている。
【0013】
開閉当接部13bの外周面には薬液放出手段を構成する少なくとも1つ(本実施形態においては複数)の電磁石27が配設される。一方、開閉当接部13bの外周面に配設される振動子カバー22の開口側端部は開閉凸部22aとして構成されている。開閉凸部22aの内周面が、開閉当接部13bの外周面に対して配置される。そして、開閉凸部22aには、電磁石27に対向するように薬液放出手段を構成する磁性体である例えば金属製の当接片28が配設されている。
【0014】
隔壁部材13の貫通孔13a内には、振動子保持部材12から突出する振動子シャフト12aが挿通される。貫通孔13a内に挿通された振動子シャフト12aの端部は、該振動子シャフト12aの回転を検出するエンコーダ15内に配置される。エンコーダ15は、本体カバー21内の所定位置に配置された保持部材17の中央凹部内に設けられている。
【0015】
振動子シャフト12aには、貫通孔13aの内周面に密着するOリング23が設けられている。Oリング23の内周面が振動子シャフト12aの外周面に密着し、かつ該Oリング23の外周面が貫通孔13aの内周面に密着する。このことによって、振動子シャフト12aと貫通孔13aとの間が液密状態に保持される。
【0016】
また、貫通孔13a内には振動子シャフト12aを回転可能に軸支するボールベアリング24が設けられる。ボールベアリング24は振動子シャフト12aをカプセル本体10の長手軸方向と平行に保持する。ボールベアリング24は、Oリング23より本体カバー21側に配置される。
【0017】
超音波モータ16はリング形状であり、分割して形成されたロータ部16a、及びステータ部16bによって構成されている。ステータ部16bには、ロータ部16aと接触する面側に、複数の突起(不図示)が形成されている。ステータ部16bの基端側には、交互に分極した複数の圧電素子を配列した圧電素子配列部(不図示)が設けられている。
【0018】
超音波モータ16のロータ部16aの一端面には回転力伝達部材26が、例えば接着等によって一体的に固定されている。回転力伝達部材26の中央部には振動子シャフト12aが挿通される透孔26aが形成されている。回転力伝達部材26は、振動子シャフト12aの所定位置に対して一体的に固定されている。
【0019】
一方、超音波モータ16のステータ部16bは、本体カバー21内の内周面所定位置に、直接、又は保持部材17を介して、配置されている。リング状に構成した超音波モータ16の内孔内にはブラシ部14、及びエンコーダ15が配置されている。
【0020】
振動子シャフト12aの基端部側には、スリップリング12bが設けられている。スリップリング12bにはブラシ部14の有するブラシ14aが付勢力によって電気的に接触している。したがって、振動子シャフト12aが回転状態において、導通状態が維持される。
【0021】
保持部材17には蓄電池、又は乾電池などが配置されるとともに、実装基板が配設されている。蓄電池、乾電池は、前記電源部18となる。蓄電池は、例えば外部からの電磁波などによって充電を行える、実装基板には、送受信部19を構成する送受信回路、及び振動子走査回路、電源制御回路、信号処理回路、開閉制御回路等が設けられている。
【0022】
図3に示すように振動子カバー22の開閉凸部22aと、隔壁部材13の開閉当接部13bとは斜線で示す結合範囲Aにおいて接着、熱溶着、永久磁石等によって一体的に構成されている。したがって、振動子カバー22が本体カバー21から分離状態になることが防止されている。
【0023】
一方、振動子カバー22を構成する開閉凸部22aの側部先端部は、図4に示すように当接片28より本体カバー21側に突出している。振動子カバー22は樹脂部材で形成されているため、図3の結合範囲Aを支点にして図中の二点鎖線に示すように本体カバー21に対して開閉可能にする弾性力を有している。開閉凸部22aは振動子カバー22の形状をお椀型に保つため開口側端部の全周に渡って設けられている。
【0024】
振動子カバー22と本体カバー21とを一体にしてカプセル本体10を構成した状態において、振動子カバー22は自身の弾性力によって該振動子カバー22を本体カバー21に対して開状態にさせようとする。
【0025】
複数の電磁石27は、隔壁部材13の開閉当接部13bの外周面と略同一面を形成するように設けられる。各電磁石27は、開閉当接部13bに設けられた電磁石配設凹部内に例えば接着によって固設されている。これに対して、振動子カバー22の開閉凸部22aに設けられる各当接片28は、複数の電磁石27とそれぞれ対向する位置関係になるように接片配設凹部が設けられている。複数の当接片28は、開閉凸部22aの内周面と略同一面を形成している。
【0026】
図1に示すようにカプセル制御部20には薬液放出手段を構成する開閉制御部29や超音波駆動制御部30等が設けられている。開閉制御部29は電磁石27のON/OFF状態を制御する。開閉制御部29の制御に応じて、電磁石27がON/OFFされることによって、振動子カバー22が本体カバー21に対して閉状態から開状態、或いは開状態から閉状態に変化される。振動子カバー22が閉状態において、電磁石27はON状態であり、電磁石27と当接片28とが磁力によって吸着した状態に維持される。このとき、振動子カバー22の開閉凸部22aが、本体カバー21の開口側端面を付勢している。このことによって、振動子カバー22が本体カバー21に対して密着配置されて液密状態が保持される。
【0027】
そして、隔壁部材13、Oリング23、及び振動子カバー22が構成する内部空間31には、超音波振動子11が配置されると共に、超音波伝達媒体25が充填される。本実施形態における超音波伝達媒体25は、例えば超音波を伝達する特性を有する水に、例えば酸化マグネシウム、又はカルボキシメチルセルロースなどの下剤成分を含めた薬液である。つまり、内部空間31は、薬液を搭載するための薬液タンクを兼ねている。
【0028】
なお、振動子カバー22と本体カバー21とを液密状態に保持する構成として、振動子カバー22の開閉凸部22aの内部空間側に付勢部を設けるようにしてもよい。このことによって、付勢部は、隔壁部材13の開閉当接部13bの外周面を付勢した状態で密着する。
【0029】
超音波駆動制御部30には、超音波振動子11を回転させる超音波モータ16に振動子駆動信号を出力する振動子走査回路(不図示)、回転する超音波振動子11の回転状態を検出するエンコーダ15と電気的に接続された回転検出回路(不図示)、スリップリング12bなどを介して超音波振動子11との間で振動子駆動信号や該超音波振動子11で受診したエコー信号の送受を行う信号処理回路(不図示)、信号処理回路によって処理された超音波画像信号に対して所定の処理を施して超音波データを無線送受信部19から前記観測装置3に向けて送信する無線送信回路(不図示)等が設けられている。
【0030】
一方、観測装置3は、アンテナ部32と、無線送受信部33と、各種制御を行う観測装置制御部34と、指示部35と、設定部36と、超音波観察用画像処理部(以下、画像処理部と記載する)37と、各部に電源を供給する電源部38と、指示スイッチ39とを主に備えて構成されている。観測装置3には映像ケーブルを介してモニタ4が接続されている。
【0031】
アンテナ部32は、カプセル超音波内視鏡2に設けられている無線送受信部19との間で信号の授受を行う。無線送受信部33は、アンテナ部32から出力される信号の処理、及びアンテナ部32により受信された信号の処理を行う。画像処理部37は、カプセル超音波内視鏡2から送信された超音波観察用画像信号を、例えばBモード画像、ドップラー画像、ハーモニックイメージング像等の映像信号に生成する。モニタ4は、画像処理部37から出力される映像信号に応じた超音波観察用画像を表示する。なお、観測装置3には、少なくともカプセル超音波内視鏡2から送信された超音波観察用画像に関る信号の増幅を行う増幅回路(不図示)が設けられている。
【0032】
指示部35、及び設定部36は観測装置制御部34に接続されている。観測装置制御部34に、設定部36である例えばキーボード等によって設定内容等が適宜入力されるようになっている。指示部35からは観測装置制御部34に向けて、振動子カバー22の開閉を指示するカバー開閉指示信号や、超音波走査の開始、又は停止を指示する超音波観測指示信号等が出力されるようになっている。そして、指示部35には指示スイッチ39が接続されている。したがって、ユーザーが指示スイッチ39を適宜操作することによって、その操作に対応する超音波観測指示信号、又はカバー開閉指示信号等が観測装置3からカプセル超音波内視鏡2に出力される。
【0033】
カプセル超音波内視鏡2を含むカプセル超音波内視鏡装置1の作用を説明する。
超音波観察を行うに当たって、ユーザーはカプセル本体10の内部空間31内に薬液を兼ねる超音波伝達媒体25が充填されているカプセル超音波内視鏡2を用意する。被検者はカプセル超音波内視鏡2を嚥下する。カプセル超音波内視鏡2は、蠕動運動によって食道、胃を通過していく。そして、カプセル超音波内視鏡2が目的観察部位である例えば小腸近傍に到達する。ここで、術者は、超音波観測指示信号を出力させるため、観測装置3の指示スイッチ39を操作する。この操作により、観測装置3のアンテナ部32を介してカプセル超音波内視鏡2に向けて超音波観測指示信号が出力される。
【0034】
カプセル超音波内視鏡2の無線送受信部19において、超音波観測指示信号を受信する。すると、超音波モータ16が駆動状態になると共に、振動子駆動信号がブラシ14a、スリップリング12b等を介して超音波振動子11に出力される。振動子駆動信号を受けた超音波振動子11からは生体へ向けて、超音波パルスが繰り返し発振され、ラジアル走査が行われる。このとき、超音波振動子11は、生体組織において反射されたエコー信号を受信する。そのエコー信号は、スリップリング12b、ブラシ14a等を介して送受信部19に伝送され、信号処理回路によって超音波観察用画像信号に生成される。この超音波観察用画像信号は、無線送受信部19から観測装置3に向けて無線送信される。観測装置3では、無線送信された超音波観察用画像信号をアンテナ部で受信して、画像処理部37に伝送する。画像処理部37では超音波観察用画像信号を所定の映像信号に生成してモニタ4に出力する。すると、モニタ4の画面上に、超音波観察用画像が表示される。
【0035】
その後、術者が検査終了を確認したなら、観測装置3から電磁石27をOFF状態にするカバー開指示信号が出力されるように指示スイッチ39を操作する。この操作により、観測装置3のアンテナ部32を介してカプセル超音波内視鏡2に向けて所定のカバー開閉指示信号が出力される。そして、そのカバー開閉指示信号は、カプセル超音波内視鏡2の無線送受信部19において受信される。
【0036】
無線送受信部19において受信されたカバー開指示信号は、カプセル制御部20の開閉制御部29に入力される。すると、開閉制御部29は電磁石27に向けて所定の制御信号を出力してON状態の電磁石27をOFF状態にする。このことによって、電磁石27と当接片28との吸着状態が解除されて、振動子カバー22の開閉凸部22aからの付勢力によって、振動子カバー22が図3の二点鎖線、及び図4に示すように開状態になる。すると、内部空間31内に充填されていた薬液が体腔内へ放出される。放出された薬液の効能によって、カプセル超音波内視鏡2の体外への排出が促進され、該カプセル超音波内視鏡2がスムーズに体外に排出される。
【0037】
なお、超音波伝達媒体25の放出完了後、術者は再度、観測装置3の指示スイッチ39を操作して電磁石27をON状態にするカバー閉指示信号を出力させる。このことによって、複数配置されているOFF状態の電磁石27が再びON状態に切り換えられて、振動子カバー22が開状態から閉状態に変化する。
【0038】
このように、カプセル本体を構成する振動子カバーを本体カバーに対して開閉可能な構成にする。そして、本体カバーに固設される隔壁部材の所定位置に電磁石を設ける一方、振動子カバーを構成する開閉凸部に電磁石に対向するように当接片を設ける。そして、振動子カバーと本体カバーとを一体にした状態で電磁石をON状態にする。このことによって、振動子カバーが本体カバーに対して液密状態を保持して一体的に密着配置される。このとき、カプセル本体内には内部空間が形成され、この内部空間内に薬液を兼ねる超音波伝達媒体を充填する。この結果、薬液を貯留するためのタンクを設けることなく、つまり、カプセル本体を大型にすることなく、薬液をカプセル本体内に搭載したカプセル超音波内視鏡を構成することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、カプセル本体の内部空間内に充填される超音波伝達媒体を下剤成分を配合した薬液にしているので、検査終了後、被検者はカプセル超音波内視鏡を体外に排出するための下剤を飲むことが不要になる。このことによって、超音波検査の省力化を図れる。
なお、本実施形態においては、超音波伝達媒体下剤成分を含む薬液としているが、薬液は下剤に限定されるものではなく、例えばインスリンや消炎剤等であってもよい。つまり、カプセル本体10に設けられる内部空間31内に超音波伝達媒体として例えばインスリンを充填してカプセル超音波内視鏡を構成する。このことによって、小腸に到達したカプセル超音波内視鏡から体腔内に対して直接インスリンを放出することができる。したがって、インスリンの吸収が向上されて、糖尿病患者への効果を高めることができる。また、糖尿病患者に見られる逆行性食道炎、又は胃の運動障害などの検査と平行してインスリンの投与を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態のカプセル超音波内視鏡2においては、予め、内部空間31内に、薬液を兼ねる超音波伝達媒体25が充填されている。このため、振動子カバー22は本体カバー21に対して閉状態である。したがって、電源部18からは、常に電磁石27に電力が供給されている状態である。そのため、電源部18の電力が検査前に浪費されて、検査の際、電力が不足するおそれがなる。
【0041】
この不具合を防止するため、ユーザーは、カプセル超音波内視鏡2を使用するに当たって、電源部18が蓄電池である場合にには必要に応じて充電作業を行う。一方、電源部18が使い捨ての乾電池である場合、ユーザーは、カプセル超音波内視鏡2を使用するに当たって、以下の作業を行う。つまり、ユーザーは、滅菌袋から薬液が搭載されたカプセル超音波内視鏡2を取り出す。その後、被検者はこのカプセル超音波内視鏡2を嚥下する。
【0042】
図5、及び図6は本発明の第2実施形態に係り、図5はカプセル超音波内視鏡の構成を説明する長手方向断面図、図6はカプセル超音波内視鏡から薬液を放出している状態を説明する図である。
本実施の形態のカプセル超音波内視鏡装置は、前記観測装置3と図5に示すカプセル超音波内視鏡50とで構成される。このため、カプセル超音波内視鏡50について説明を行い、観測装置3の説明は省略する。なお、指示スイッチ39を操作することによって、超音波観測指示信号が出力されるとともに、カバー開閉指示信号の代わりに、弁開閉指示信号が出力される。
【0043】
図5に示すカプセル超音波内視鏡50は、端部を半球状に形成した筒状の本体カバー21Aと振動子カバー22Aとを一体に構成したカプセル本体10Aを備えている。カプセル本体10Aの内部であって、主に本体カバー21A側には略円筒形状の本体部材51が配置されている。
【0044】
振動子カバー22Aは、本体部材51の一端側に対して液密状態で固定配置されている。また、本体部材51には本体カバー21Aが液密状態で固定配置されている。本体カバー21Aは生体適合性を有する硬質な樹脂部材で形成され、振動子カバー22Aは超音波透過性を有する樹脂部材で形成されている。
【0045】
本体部材51には部材配置用貫通孔(以下、貫通孔と略記する)52と、薬液放出手段を構成する流路用貫通孔(以下゛流路と略記する)53とが設けられている。貫通孔52は軸方向線Bに対して斜めの軸線Cに沿って形成され、太径孔52a、及び細径孔52bを備えている。本体部材51の先端面は、軸線Cに対して略直交する斜面51aとして形成されている。
【0046】
細径孔52bには振動子シャフト12aが挿通される。振動子シャフト12aにはOリング23が設けられている。Oリング23は、振動子シャフト12aの外周面、及び細径孔52bの内周面に密着して液密状態を確保すると共に、振動子シャフト12aを軸支している。そして、振動子カバー22A、本体部材51、及びOリング23によって形成される内部空間31A内には、薬液を兼ねる前記第1実施形態と同様の超音波伝達媒体25が充填される。
【0047】
一方、太径孔52a内には、超音波振動子11を回動させる回転駆動部55が設けられている。回転駆動部55は、スリップリング部56と、エンコーダ57と、駆動モータ58とで構成される。振動子シャフト12aは、スリップリング部56に設けられた例えば、ボールベアリング(不図示)によって回転可能に軸支されている。駆動モータ58の回転軸59と振動子シャフト12aとは機械的に一体に連結固定されている。
【0048】
また、本体部材51には電源部61と回路基板62とが設けられている。回路基板62には、電源部61から供給される電力によって駆動モータ58を回転制御する駆動モータ回転制御回路(不図示)、スリップリング部56を介して超音波振動子11に振動子駆動信号の送信や受信したエコー信号を超音波観察用画像信号に生成する信号処理回路(不図示)、信号処理回路で生成された超音波観察用画像信号に対して所定の処理を施して超音波データを無線送受信部から前記観測装置3に向けて送信する無線送信回路(不図示)等が設けられている。
【0049】
本体カバー21Aには開口63が設けられている。開口63は流路53に連通するように設けられている。流路53中には薬液放出手段を構成する弁部64が設けられている。弁部64は開口63近傍に設けられ、この流路53の閉鎖、開放を行う。本体部材51には、弁部64を制御する薬液放出手段を構成する弁制御部65が設けられている。
【0050】
なお、弁部64には例えば回転可能な円柱部66が備えられている。円柱部66には放出用孔66aが設けられている。図に示す閉鎖状態において、弁制御部65から制御信号が出力されると、円柱部66が回転されて放出用孔66aが流路53に対して連通状態に配置されて、開放状態に切り替わる。このことによって、振動子カバー22Aの内部空間31A内とカプセル本体10Aの外部とが、流路53、弁部64の放出用孔66a、及び開口63を介して、連通状態になる。弁部64によって流路53が閉鎖されているとき、内部空間31Aは液密状態である。
【0051】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
まず、超音波観察を行うに当たって、ユーザーは観測装置3の指示スイッチ39を操作して、カプセル超音波内視鏡50に向けて弁開信号を出力する。すると、弁開信号が弁制御部65に供給される。すると、弁部64の放出用孔66aが流路53に対して連通状態になることによって、カプセル超音波内視鏡50の内部空間31Aとカプセル本体10Aの外部とが連通状態になる。この状態において、ユーザーは、例えば注射器によって開口63、及び流路53を介して内部空間31A内に超音波伝達媒体25を充填する。超音波伝達媒体25の充填が完了したなら、ユーザーは、カプセル超音波内視鏡50に向けて弁閉信号を出力する。すると、弁閉信号が弁制御部65に供給されて、弁部64が開放状態から閉鎖状態になって、カプセル超音波内視鏡50が構成される。被検者はこのカプセル超音波内視鏡50を嚥下する。
【0052】
その後、前記第1実施形態と同様に検査が終了する。検査終了後、術者は、指示スイッチ39を操作してカプセル超音波内視鏡50に向けて弁開信号を出力する。すると、弁制御部65の制御の元、図6に示すように弁部64が閉鎖状態から開放状態に切り替わって、カプセル超音波内視鏡50の内部空間31Aとカプセル本体10Aの外部とが連通状態になる。すると、内部空間31A内の超音波伝達媒体25がカプセル本体10Aから体腔内へ放出される。
【0053】
このように、カプセル超音波内視鏡を構成するカプセル本体に流路を設けるとともに、その流路の中途部に弁部を設けている。そして、弁部を弁制御部によって閉鎖状態と開放状態とに切り換えられるように構成している。この結果、振動子カバーが例えば管腔壁等に当接している状況においても、弁部を開放状態に切り換えて薬液の放出を行うことができる。その他の作用、及び効果は前記第1実施形態と同様である。
【0054】
なお、カプセル超音波内視鏡に、前記第1実施形態の薬液放出手段、及び第2実施形態の薬液放出手段を共に設ける構成にしてもよい。このことによって、体腔内に位置するカプセル超音波内視鏡の向き等によって、薬液の放出を選択的に行えるようにしてもよい。そして、異なる薬液を搭載してもよい。
【0055】
また、振動子カバー22Aを伸縮性を有する超音波透過性部材で構成するようにしてもよい。このことによって、超音波伝達媒体25を放出した後、振動子カバー22Aが縮むことによってカプセル超音波内視鏡50が小さくなって排出性を向上させることができる。
【0056】
図7は本発明の第3実施形態に係るバルーンを備えるカプセル超音波内視鏡を説明する図である。
本実施形態のカプセル超音波内視鏡50Aは、第2実施形態と略同様の構成である。具体的に、超音波内視鏡50Aは、前記カプセル超音波内視鏡50に加えて、振動子カバー22Aを覆うバルーン71を本体カバー21の外周部に設けている。バルーン71は、超音波透過性を有する弾性部材で形成されている。そして、バルーン71と、振動子カバー22と、本体カバー21とで形成されるバルーン空間72は液密状態である。そして、本体部材51Aには内部空間31Aと外部とを連通させる流路53の代わりに、バルーン空間72と外部とを連通させる流路53Aが設けられている。そして、本実施形態においてはバルーン空間72内に下剤成分を含んだ超音波伝達媒体25の代わりに、消炎剤を含んだ超音波伝達媒体25aを充填している。その他の構成は前記第2実施形態と同様であり同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0057】
前述した構成によれば、カプセル超音波内視鏡50Aで管腔壁73内を検査する際、バルーン71が該管腔壁73に密着する。検査中に、例えば潰瘍74などを発見した場合、術者は、指示スイッチ39を操作してカプセル超音波内視鏡50Aに向けて弁開信号を出力する。すると、カプセル超音波内視鏡50Aのバルーン空間72内の薬液が管腔内に放出される。このことによって、超音波検査を行うと同時に、ピンポイントに処置部位に対して薬液の放出を行えるので、患者の回復を促進させることができる。
【0058】
なお、カプセル本体に振動子カバーに穴を開ける針などの穴開け手段を設け、この穴開け手段によってカバーに穴を開けて薬液を放出させるようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態においてカプセル本体内に、薬液放出手段としてタイマを設けるようにしてもよい。このことによって、所定の時間経過後、術者等が指示スイッチを操作することなく、自動的に薬液をカプセル本体の外部に放出することができる。
【0060】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1乃至図4は本発明の第1実施形態に係り、図1はカプセル超音波内視鏡、及び超音波観測装置の構成を説明するブロック図
【図2】カプセル超音波内視鏡の構成を説明する長手方向断面図
【図3】カプセル超音波内視鏡のカプセル本体を構成する本体カバーと振動子カバーとの構成を説明する斜視図
【図4】カプセル超音波内視鏡に充填された薬液を放出している状態を説明する図
【図5】図5、及び図6は本発明の第2実施形態に係り、図5はカプセル超音波内視鏡の構成を説明する長手方向断面図
【図6】カプセル超音波内視鏡から薬液を放出している状態を説明する図
【図7】本発明の第3実施形態に係るバルーンを備えるカプセル超音波内視鏡を説明する図
【符号の説明】
【0062】
1…カプセル超音波内視鏡装置1 2…カプセル超音波内視鏡
3…超音波観測装置 10…カプセル本体 11…超音波振動子
13…隔壁部材 21…本体カバー 22…振動子カバー 25…超音波伝達媒体 27…電磁石 28…当接片 29…開閉制御部 31…内部空間
35…指示部 39…指示スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波走査を行うための超音波振動を発生する超音波振動子を備えたカプセル本体と、
このカプセル本体内に設けられ、前記超音波振動子から発生される超音波振動を伝達する超音波伝達媒体を兼ねる薬液が充填される内部空間と、
前記カプセル本体に設けられ、前記内部空間に充填された前記薬液を該内部空間から該カプセル本体の外部に放出させる薬液放出手段と、
を具備することを特徴とするカプセル超音波内視鏡。
【請求項2】
前記カプセル本体は本体カバーと振動子カバーとを備え、該振動子カバーが該本体カバーに対して開閉可能である構成において、
前記薬液放出手段は、
前記本体カバーに設けられた電磁石と、
前記振動子カバーに設けられた磁性体と、
前記カプセル本体内に設けられ、前記電磁石を制御する開閉制御部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のカプセル超音波内視鏡。
【請求項3】
前記薬液放出手段は、
前記内部空間と前記カプセル本体の外部とを連通する流路用貫通孔と、
前記流路中に設けられる弁部と、
前記弁部の開閉状態を制御する弁制御部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のカプセル超音波内視鏡。
【請求項4】
超音波振動子を備えたカプセル本体に設けられた内部空間内に充填された超音波伝達媒体を兼ねる薬液を、該カプセル本体の外部に放出させる薬液放出手段を有するカプセル超音波内視鏡と、
前記カプセル超音波内視鏡の薬液放出手段に対して、前記内部空間内の前記薬液を放出させる指示を行う指示装置と、
を具備することを特徴とするカプセル超音波内視鏡装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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