説明

カメラおよびカメラの撮影方法

【課題】背景をぼかし、主要被写体を際立たせる撮影に適したカメラおよびカメラの撮影方法を提供する。
【解決手段】 露光期間中に撮影レンズ2aを介して得た被写体像の像信号を取得する撮像部2と、露光期間中に補助光発光を行うストロボ12と、撮像部2で得た画像を記録する記録部4と、背景ぼかしモードで撮影する場合には、ストロボ12の補助光発光を行うと共に、像信号の増幅率を通常撮影時より低下させ、撮像素子等を動かすことにより背景21をぼかした画像とする画像処理および制御部1と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラおよびカメラの撮影方法に関し、詳しくは、被写体を効果的に描写することの可能なカメラおよびカメラの撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムカメラの時代から、絞りによる被写界深度の調節や、低シャッタ速度による動きの表現や、さらには流し撮りなど、さまざまな撮影技法が模索されてきた。また、自動露出制御や自動焦点調節などの技術が発展してきたおり、これらはいずれも綺麗な写真を撮るために技術であった。また、デジタルカメラでは、ノイズ除去の技術が発展してきており、感度を向上させた製品が発売され、好評を博している。
【0003】
このようにカメラ分野では種々の技術が発展してきているが、その中で、主要被写体を抽出する技術も提案されている。例えば、特許文献1には、撮影環境に制限を受けることなく抽出対象の画像を被写体像から抜き出すことのできる撮影装置が開示されている。この撮影装置では、ストロボ発光時に適正露光となるように制御し、このときの被写体像を記憶し、次にストロボ未発光で同一の撮影条件で撮影を行って、このときの被写体像の記憶を行う。そして、記憶された両画像の差分に基づいて、抽出領域の画像を抽出するようにしている。
【特許文献1】特開2008−103809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように特許文献1に開示の撮影装置においては、主要被写体の切り出しを行っているが、背景の光の影響を受けることから、精度良く抽出するには限界があった。また、多くのユーザは主要被写体のみを切り出したいわけではなく、背景が雑然としている場合などに、背景をぼかすことにより、見栄えが良くすっきりした画像を求めている。また、プライバシーを考慮すると、すべてがはっきりと映るような画像表現が望まれているとは限らない。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、背景をぼかし主要被写体を際立たせる撮影に適したカメラおよびカメラの撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため第1の発明に係わるカメラは、露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得する撮像部と、上記露光期間中に補助光発光を行う補助光投光源と、上記撮像部で得た画像を記録する記録部と、上記露光期間中に上記補助光発光を行う場合に上記像信号を第1の増幅率で増幅して撮影を行う第1の撮影モードと、上記露光期間中に上記補助光発光を行う場合に上記像信号を上記第1の増幅率より高い増幅率で増幅して撮影を行う第2の撮影モードに、切り換え制御を行う切換制御部と、を有する。
【0007】
第2の発明に係わるカメラは、上記第1の発明において、さらに、上記第1の撮影モードの選択時には、画面周辺部で所定値に満たない像信号に対して画像処理を行う画像処理部を有する。
第3の発明に係わるカメラは、上記第1の発明において、さらに、上記第1の撮影モードの選択時には、上記補助光発光のタイミングで、上記撮影光学系と撮像部の相対関係を変更する変更部を有する。
【0008】
第4の発明に係わるカメラは、上記第1の発明において、上記補助光投光源が外付けの場合には、通信部を介して上記補助光投光源と通信を行う。
第5の発明に係わるカメラは、上記第1の発明において、上記補助光発光に先立って、上記補助投光源の発光量を決定するための予備発光時には、上記第1の撮影モードが選択されている場合であっても、上記第2の撮影モード選択時における増幅率で上記像信号を増幅する。
【0009】
第6の発明に係わるカメラは、露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得する撮像部と、上記露光期間中に補助光発光を行う補助光投光源と、上記補助光発光後であって上記露光期間中に、上記撮影光学系と撮像部の相対関係を変更する変更部と、上記補助光発光時およびその後の上記変更部による上記相対変更を行った際に、撮像部で得た画像を記録する記録部と、を有する。
【0010】
第7の発明に係わるカメラは、第6の発明において、上記変更部は、撮像素子もしくは上記撮影光学系の一部の光学系を移動させる。
第8の発明に係わるカメラは、第6の発明において、撮影時において上記補助投光源を発光する場合には、上記撮像部における増幅率を低下させる。
第9の発明に係わるカメラは、第6の発明において、上記補助光投光源が外付けの場合には、通信部を介して上記補助光投光源と通信を行う。
【0011】
第10の発明に係わるカメラの撮影方法は、露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得し、上記露光期間中に補助光発光を行い、上記露光期間中に、上記補助光発光を行う場合に、第1の撮影モードが設定されている場合には、上記像信号を第1の増幅率で増幅して撮影を行い、第2の撮影モードが設定されている場合には、上記像信号を上記第1の増幅率より高い増幅率で増幅して撮影を行い、上記第1の撮影モードまたは上記第2の撮影モードで得た像信号を記録する。
【0012】
第11の発明に係わるカメラの撮影方法は、露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得し、上記露光期間中に補助光発光を行い、上記補助光発光のタイミングで、上記撮影光学系と撮像部の相対関係を変更し、上記補助光発光時および上記相対変更を行った際に、上記像信号を記録する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、背景をぼかし主要被写体を際立たせる撮影に適したカメラおよびカメラの撮影方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に従って本発明を適用したデジタルカメラを用いて好ましい一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係わるカメラ10の回路構成を示すブロック図である。
【0015】
このカメラ10は、画像処理及び制御部1、撮像部2、撮影レンズ2a、動き制御部3、記録部4、操作判定部6、動き判定部7、表示部8、時計部9、およびストロボ12から構成されている。撮像部2は撮影レンズ2aや、シャッタ等の露出制御部や、撮像素子、撮像素子の駆動及び読出回路等を含み、撮影レンズによって形成された被写体像を撮像素子によって画像データに変換する。シャッタは開放することにより撮像素子に被写体光束を入射させ、閉鎖することにより撮像素子上への被写体光束を遮光するが、このタイプに限らず、閉じるためのシャッタでも良く、また、電子シャッタでも良い。
【0016】
画像処理及び制御部1は、記憶されているプログラムに従ってカメラ10の全体のシーケンスを制御する。また、画像処理及び制御部1内には、ゲイン切換部1bと画像処理部1cが設けられている。ゲイン切換部1bは、撮像部2から出力される画像信号のゲインを切り換えることにより感度の切り換えを行う。画像処理部1cは、撮像部2から出力される画像信号を取り込み、間引き処理、エッジ強調、色補正、画像圧縮等の種々の画像処理を行い、ライブビュー表示や記録部4に記録するため等の画像処理を行う。また、画像処理部1cは、撮影画像の背景のコントラストを落とす処理も行う。
【0017】
画像記録部4は、撮像部2から出力され、画像処理部1cで画像処理された画像データの記録を行う。また、記録にあたっては、後述する時計部9から出力される日時情報に基づく撮影日時情報等も併せて記録する。日時情報を用いて画像検索を行うことが可能となる。
【0018】
動き判定部7は、加速度センサ等、カメラ10に加えられた手ブレ等の動きの方向や動き量を判定する。動き制御部3は、動き判定部7によって検出された動きに基づいて、手ブレ等の動きを打ち消すように撮影レンズ2aまたは撮像部2中の撮像素子を移動させる。動き判定部7と動き制御部3によって手ぶれ補正を行うことができる。また、動き制御部3は、画像信号のコントラストが最大となるように動かすことにより、撮影レンズ2aをピント位置に移動させる。なお、焦点検出方法は、コントラストAFに限らず、例えば、位相差AF等、他の検出方法でも良い。
【0019】
操作判定部6はレリーズ釦、メニュー釦、再生釦等の操作部材の操作状態を判定し、判定結果は、画像処理及び制御部1に送信する。前述の画像処理及び制御部1は、操作判定部6による判定結果に応じてカメラ10の制御を行う。表示部8は、液晶モニタ等の表示パネルを有し、この表示部8に記録部4に記録されている画像を再生表示し、また撮影前には撮像部2からの画像データに基づいていわゆるライブビュー表示を行う。撮影者は表示部8上のライブビュー表示を観察しながら、構図や撮影タイミングの確認を行うことができる。
【0020】
時計部9は、日時情報を出力する。この日時情報は前述したように画像データを記録部4に記録する際に併せて記録される。ストロボ12は、被写体に対して補助光を照明する内蔵の補助照明装置である。なお、ストロボ12は、内蔵に限らず、外付け式であっても良い。外付け式の場合には、通信部を介して信号のやり取りを行う。
【0021】
次に、本実施形態におけるカメラ10の使用法と背景のぼかし方の原理について図2を用いて説明する。図2(a)はカメラ10を用いてユーザが撮影している時の様子を示し、図2(b)は撮影時の制御を示すタイミングチャートである。ユーザがカメラ10を用いて被写体20を撮影すると、被写体20と一緒に背景21も一緒に映しこまれる。背景21には、いつも見栄えの良いものばかりではなく、またプライバシーに係わるようなものの場合もある。本実施形態においては、背景21はぼかした画像とし、主要被写体が浮き上がったような画像で撮影することを可能としている。
【0022】
背景21をぼかして映し込むために、本実施形態においては、図2(b)に示すような制御を行っている。撮像部2内のシャッタが開くと(図2(b)ではL→Hのタイミング)露出が開始すると共にストロボ12が発光する。このストロボ光によって主要被写体を適正露光となるように調節する。このあと、シャッタが閉じるまでの時間の間、動き制御部3によって、撮影レンズ2aや撮像素子を光軸方向に沿って動かす。なお、光軸方向以外にも、光軸から外れた方向等に動かし、被写体像をぼかすようにしても良い。シャッタの開放時間は、最高束で1msec程度、ストロボ12の発光時間は200μsec程度であるから、ストロボ光で十分な露光ができなった背景21は、この残り時間に主として露光が行われる。残り時間の間、動き制御部3によって撮影レンズ2aや撮像素子が動かされると、動かした分だけ像が不明瞭となる。本実施形態においては、通常撮影に加えて、このような背景ぼかしモードでの撮影を可能としている。
【0023】
次に、図3乃至図5を用いて、ストロボ12による発光がない、一般的なゲインや感度の切り換えについて説明する。図3は、撮像部2によって得られる画像信号の分布を示し、横軸は撮像素子の位置を示し、縦軸は画像信号の強度を示す。同じ被写体の画像でも、露出時間がS1→S2→S3と長くなると、画像信号も大きくなる。同じ時間で露出した場合には、明るいと画像信号は大きく、暗いと画像信号は小さくなる。また、絞り径を大きくすると入射光量が増加し画像信号は大きくなり、一方、絞り径を小さくすると入射光量が減少し画像信号は小さくなる。以上の説明は、感度やゲインが一定の場合であり、感度を下げると画像信号は小さくなり、またゲインを下げると画像信号も小さくなる。なお、ゲインを増加させるとノイズは増えるが、感度を増加させてもノイズは増加しない。
【0024】
このように、これまでのフィルムカメラの技術では変更し難かった感度等を調節することによって画像データの大きさを最適化することが可能である。つまり、被写体輝度に従って、露光時間(シャッタ速度)や絞りを制御することにより(露出制御)、画像信号の大きさを調整することができ、デジタルカメラでは、さらにゲインや感度を変更することにより、画像信号の大きさを調整することが可能である。フィルムカメラでは、感度の異なるフィルムを選択することにより感度の変更はできたが、露出中に感度の変更は不可能であった。
【0025】
図4にゲイン切換のための回路例のブロック図を示す。撮像部2中の撮像素子は多数の画素2bを有しており、図4にはその内の1つの画素2bを示す。各画素2bには増幅用のアンプ2cがそれぞれ接続されており、画素2bから出力される光電流を増幅する。各アンプ2cは、それぞれコンデンサ等で構成される積分器2dに接続されており、増幅された光電流が画素2bごとに積分される。アンプ2cはゲイン可変タイプであり、前述のゲイン切換部1bに接続している。ゲイン切換部1bから各アンプ2cにゲイン信号を送信することにより、一括して全部のアンプ2cのゲインを切り換えることができる。したがって、ゲイン切換部1bからのゲイン信号を制御することにより、画像信号を明るくしたり暗くすることが可能である。
【0026】
なお、感度やゲインの変更方法としては、図4に示したような画素からの光電流の増幅率の変更以外にも例えば、図5に示すような画素そのものの数を変更するようにしてもよい。図5(a)では、画素2b1〜2b4のいずれの画素も画像信号として出力するが、図5(b)では画素2b1のみを画像信号として出力し、画素2b2〜2b4は画像信号としては使用しない。図5(a)の場合に比較し、図5(b)の場合には感度は1/4となる。
【0027】
このように、ゲインや感度の切り換えを行うことにより、露出時間を変更したことと同様な画像信号を得ることができ、実質的な露出時間の変更をより自由に切り換えることができる。
【0028】
次に、本実施形態におけるカメラ10の動作について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。カメラ制御のフローに入ると、まず、撮影モードか否かの判定を行う(S101)。この判定の結果、撮影モードに設定されていた場合には、露出演算を行う(S102)。ここでは、撮像部2からの画像データを取り込み、この画像データに基づいて被写体輝度を求め、被写体輝度から適正露光となるシャッタ速度や絞り値等の露出演算を行う。
【0029】
露出演算を行うと、次に、ライブビュー表示を行う(S103)。このステップでは、ライブビュー表示用に画像処理された画像データに基づいて、表示部8の表示パネルに被写体像を表示する。撮影者はこのライブビュー表示を見ながら、構図やシャッタタイミングを決定することができる。
【0030】
ライブビュー表示を行うと、次に、レリーズか否かの判定を行う(S107)。ここでは、操作判定部6の判定結果に基づいて、レリーズ釦が操作され、撮影を行うか否かの判定を行う。この判定の結果、レリーズではなかった場合には、次に、モード設定を行うか否かの判定を行う(S105)。このカメラ10は、メニュー画面や専用操作部材等により再生モードや背景ぼかしモード等の種々のモード設定を行うことができるので、このステップでは、モード設定のための操作がなされていた場合には、操作されたモードに応じて、モード設定を行う。モード設定を行うとステップS101に戻る。
【0031】
ステップS104における判定の結果、レリーズ釦が操作され撮影を行う場合には、次に、背景ぼかしモードが設定されているか否かの判定を行う(S131)。背景ぼかしモードは、図2を用いて説明したように、主要被写体をストロボ12による発光によって適正露光にすると共に、背景21をぼかした像となるように撮影するモードである。
【0032】
ステップS131における判定の結果、背景ぼかしモードでなかった場合には、ステップS132以下において、通常の露出制御を行う。まず、ストロボ発光か否かの判定を行う(S132)。ここでは、自動露出モードが設定されている場合には、ステップS102における露出演算の結果、被写体輝度が暗かった場合には、ストロボ発光を行う。また、強制発光モード等、ストロボ発光を行うモードが設定されている場合にも、ストロボ発光を行う。
【0033】
ステップS132における判定の結果、ストロボ発光を行う場合には、次に、予備発光で本発光量の決定を行う(S133)。ここでは、ストロボ12または外付けの外部ストロボで予備発光を行い、被写体からの反射光に基づいて、本発光時の発光量を決定する。なお、専用の測光素子を有していない場合には、予備発光時にはシャッタを開いておき、撮像素子によって測光を行うようにする。続いて、ストロボ発光を行うと共に、露出を行う(S134)。このステップでは、シャッタを開放すると共に、ストロボ12等の本発光を行う。また、シャッタの開放と共に撮像素子の露光を開始させ、画素2bからの光電流をアンプ2cで増幅し、これを積分器2dで積分する。ステップS102における露出演算で求めた適正露光となるシャッタ秒時が経過するとシャッタを閉じて、露出を終了する。なお、予備発光時に撮像素子によって測光を行った場合には、シャッタ開放のタイミングで、撮像素子の積分器の電荷リセットを行い、メカシャッタの開放と同様の効果を持たせればよい。専用の測光素子を有する場合にはこの動作は不要である。
【0034】
ステップS132における判定の結果、ストロボ発光を行わない場合には、通常の露出制御を行う(S135)。ここでは、シャッタを開放すると共に撮像素子の露光を開始させ、画素2bからの光電流をアンプ2cで増幅し、これを積分器2dで積分する。ステップS102における露出演算で求めた適正露光となるシャッタ秒時が経過するとシャッタを閉じて、露出を終了する。
【0035】
ステップS134におけるストロボ発光および露出が終わると、またはステップS135における通常露出制御が終わると、次に、記録動作を行う(S136)。ここでは、撮像素子中の各積分器2dから画像信号を読み出し、読み出された画像信号を画像処理部1cで画像処理を行った後に、記録部4に記録する。記録の際には、時計部9からの撮影日時情報等の情報を併せて記録する。記録が終わると、カメラ制御のフローを終了し、電源がオンであれば、ステップS101から再び実行する。
【0036】
ステップS131における判定の結果、背景ぼかしモードが設定されていた場合には、ステップS133と同様に、予備発光を行い本発光量の決定を行う(S121)。続いて、感度低下を行う(S122)。このステップでは、ゲイン切換部1bによって、ステップS134やS135における通常撮影時におけるゲインよりは低いゲインに設定する。ゲインを下げているのは、背景の像の影響を受けにくくするためである。
【0037】
感度低下を行うと、続いて、露出を開始する(S123)。このステップでは、シャッタを開放し、シャッタを開放すると共に撮像素子の露光を開始させ、画素2bからの光電流をアンプ2cで増幅し、これを積分器2dで積分する。露出を開始すると直ぐにストロボ12等を光量アップして発光させる(S124)。前述したようにアンプ2cにおけるゲインは、通常撮影より低く設定されているので、このままでは主要被写体も暗くなってしまうことから、ステップS121で決定した本発光量に対して、感度低下の分、増加させて本発光させる。
【0038】
ストロボ発光が終わると、次に、可動部の駆動を行う(S125)。ストロボ発光によって主要被写体は、ほぼ適正露光が得られている。しかし、背景21は一般には遠距離側にあることから、十分な露光となっていない。この状態で、動き制御部3によって、撮影レンズ2aや撮像素子を動かす。これによって、背景21は暗くなるだけでなく、ぼかされた画像となる。なお、動き制御部3によって撮影レンズ2aのみを駆動してもよく、また撮像素子のみを駆動してもよく、両方を駆動するようにしても良い。
【0039】
可動部の駆動を行うと、次に、所定時間が経過したか否かの判定を行う(S126)。可動部の駆動はシャッタを閉じるまでの時間内であれば良いことから、所定時間はこの範囲に収まる時間とする。ステップS126における判定の結果、所定時間が経過していない場合には、ステップS125に戻り、可動部の駆動を続行する。一方、所定時間が経過すると、可動部の駆動を停止し、次に、周辺所定量以下の像はコントラストを落として増幅を行う(S127)。ここでは、背景等の周辺では、光量が所定量以下であることから、このような所定光量以下の領域について、コントラストを低下させ、画像の平坦化を行う。ついで、コントラストを低下させた画像を増幅処理し、背景が真っ黒になるのを防止する。これらのコントラスト低下や増幅処理は、画像処理部1cによって行う。これらの一連の処理により、背景21が不明瞭な画像ができる。
【0040】
ステップS127における背景画像の処理を行うと、次に、前述したように、画像の記録を行う(S136)。背景ぼかしモードで撮影した、背景がぼかされ、主要被写体は鮮明な画像が記録される。記録が終わると、前述したように、ステップS101に戻る。
【0041】
ステップS101における判定の結果、撮影モードでなかった場合には、次に、再生モードか否かの判定を行う(S111)。この判定の結果、再生モードでなかった場合には、ステップS101に戻る。一方、判定の結果、再生モードであった場合には、選択再生を行う(S112)。ここでは、記録部4に記録されている画像データに基づいて、一覧表示を行い、指定された画像を表示部8に表示する。
【0042】
再生を行うと、次に、通信を行うか否かの判定を行う(S113)。この判定の結果、通信を行う場合には、画像送信を行う(S114)。ここでは、ステップS112において指定された画像を、通信部を介して無線や有線で外部のパーソナルコンピュータやテレビ等に送信する。画像送信を行うと、再生を終了するか否かの判定を行う(S115)。ここでは再生モードを終了するための操作部材が操作されたかを判定する。この判定の結果、終了操作がなされていなかった場合、またはステップS113における判定の結果、通信でなかった場合には、ステップS111に戻る。一方、終了操作されていた場合には、カメラ制御のフローを終了し、電源がオンであれば、再びステップS101から実行する。
【0043】
以上、説明したように、カメラ制御のフローでは、背景ぼかしモードが設定されると、背景がぼかされた画像を得ることができる。この画像は、劇画風に動きが表現されるので、誰が見ても動きを感じる効果的な画像を簡単に得ることができる。
【0044】
次に、図7に示すタイミングチャートを用いて、背景ぼかしモードと通常のストロボ撮影モードの差異を説明する。図7(a)〜(c)は、通常のストロボ発光による露出制御の例である。露出を開始する前に、タイミングt1〜t2において、ストロボ12による予備発光を行い、適正露光とするために本発光時における発光量を求める。続いて、タイミングt3になると、露出を開始する。ここでは、シャッタを開放し、撮像素子の各画素2bからの光電流の積分を行う。
【0045】
また、タイミングt3になると、ストロボ12の本発光を開始する。タイミングt4になると、ストロボ12の本発光は停止するが、シャッタ速度の関係から最高速度であっても、露出状態は続行し、タイミングt5において、露出を停止する。予備発光から露出の間、図7(c)に示すように、感度は一定のままである。
【0046】
次に、図7(d)〜(f)は、背景ぼかしモードにおける露出制御の例である。タイミングt1〜t2の間は、通常撮影の場合と同様に、ストロボ12による予備発光を行い、適正露光を得るための本発光量を演算する。タイミングt3になると露出を開始し、またストロボ12が本発光を行う。タイミングt3から感度(ゲイン)を低下させることから、本発光の発光量は、予備発光時に求めた発光量よりも感度低下分だけ増加させる。これによって主要被写体については適正露光となる。
【0047】
一方、背景21は、一般的にはストロボ12の光が十分届かないために、暗くなった画像を得るが、ステップS127で説明したように、露出中に可動部を駆動し、また画像処理にてコントラストを低下させ、平坦化させた後に、背景画像を明るくしている。なお、本実施形態においては、露出中の可動駆動と、コントラスト低下および増感の画像処理を行っているが、いずれか一方のみでも構わない。背景と主要被写体が混在している場合には、画像処理で明るくするのが不自然な被写体の場合もある。この場合には、露出時間を長めにとり、背景の画像を明るくするようにしても良い。
【0048】
次に、ステップS127における画像処理について、図8を用いて説明する。図8は、図2(a)に示すようなシーンでの撮影した画像の画像信号を示す。図8(a)における画像信号30aは、通常ストロボ撮影時に得られるものであり、画像信号30bは感度を低下させた状態で適正露光が得られるようにストロボ光の光量をアップさせた撮影時に得られるものである。被写体20は画面手前にいることから大量のストロボ反射光があることから明るく、画面中央にピークを形成している。一方、背景21はストロボ光が十分届かないことから、暗くなっている。
【0049】
背景21の暗い部分は、所定値(図中の破線)より下側が大半であることから、この部分について、画像処理部1cによってコントラスト低下処理を行うと、画像信号30cを得ることができる。次に、図8(b)に示すようにコントラスト低下処理を行った部分について、明るくなるように増感処理を行うと、画像信号30dを得ることができる。主要被写体20との境目が不自然にならないように、周辺になるほど増幅率が大きくなるようにした。増感処理を行うことにより、背景が真っ暗になることを防止することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態においては、露光期間中に、ストロボ21または外部ストロボにより補助光発光を行う場合には、撮像部での像信号を第1の増幅率で増幅する背景ぼかしモード(第1の撮影モード)と、撮像部での像信号を第1の増幅率より高い増幅率で増幅する通常撮影モード(第2の撮影モード)を設定可能としている。背景ぼかしモードでは、背景21の像信号の感度を低下させていることから、主要被写体に対して目立たなくすることができ、背景をぼかし主要被写体を際立たせる撮影となる。
【0051】
また、本実施形態においては、露出時において補助光の発光が終わった後、例えば、手ぶれ防止用のレンズや撮像素子を移動させることにより、撮影光学系と撮像部の相対的関係を変更するようにしている。このため、明るい主要被写体像を得ると共に、背景が流れるように動くことにより、背景部分がぼやけ、主要被写体が際立った画像を得ることができる。
【0052】
さらに、本実施形態においては、背景等の画面周辺部で所定値に満たない像信号に対して、コントラストを低下させ、また増感処理により明るくする等の画像処理を行っている。このため、背景部分について、さらにぼかしたり、真っ暗にならないようにすることができる。
【0053】
さらに、本実施形態においては、本発光に先立って適正発光量を決定するための予備発光時には感度を低下させることがない。このため、小発光量でも十分測光することができ、本発光時の適正発光量を決定することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、動き制御部3としては、手ぶれ防止用の光学系や、手ぶれ防止用の撮像素子駆動機構を利用していた。しかし、これに限らず、通常の合焦駆動機構によって、ピントを少しずらしたり、またズームレンズによって焦点距離を変動させる等を利用してもよい。画像が流れたり、ピントがずれたり、ズーミング等により、画像がぼやける効果が生ずれば利用可能である。
【0055】
また、本実施形態においては、像信号の増幅を行うにあたって、撮像部において画素からの光電流の増幅率を制御するようにしていた。しかし、これに限らず、例えば、図5に示したように撮像素子の画素数の切り換えでも良い。また、積分器1cによって積分された後、撮像素子からの画像信号の読み出し後にアナログ信号の段階で増幅しても良く、またアナログデジタル変換後に増幅しても良い。
【0056】
さらに、本実施形態においては、撮像部2は、絞り兼用シャッタを備えていたが、シャッタとしてはメカシャッタに限らず電子シャッタでも良い。また、本実施形態においては、被写体輝度測定にあたっては、被写体像取得用の撮像部2からの画像信号に基づいて検出していたが、これに限らず測光用の光電変換素子を設けても良い。
【0057】
さらに、本実施形態においては、撮影のための機器として、デジタルカメラを用いて説明したが、カメラとしては、デジタル一眼レフカメラでもコンパクトデジタルカメラでもよく、ビデオカメラ、ムービーカメラのような動画用のカメラでもよく、さらに、携帯電話や携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assist)等に内蔵されるカメラでも構わない。
【0058】
本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係わるカメラの電気回路を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るカメラにおいて使用方法と背景のぼかし方の原理を説明する図であって、(a)はカメラの撮影時の様子を示し、(b)は撮影時の制御を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、撮像部によって得られる画像信号の分布を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、ゲイン切換のための回路のブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、ゲイン切換の変形例であり、(a)はすべての画素から画像信号として出力する例であり、(b)は一部の画素のみを画像信号として出力する例である。
【図6】本発明の一実施形態に係わるカメラにおけるカメラ制御の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、通常のストロボ撮影モードと背景ぼかしモードでの露出制御を示すタイミングチャートであり、(a)〜(c)は通常のストロボ撮影モード時であり、(d)〜(f)は背景ぼかしモード時である。
【図8】本発明の一実施形態に係わるカメラにおいて、背景部分の画像処理を説明する図であり、(a)は感度一定の場合と感度を低下させた場合の画像信号の差異を示すグラフであり、(b)は背景部分について増感処理を行った場合を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1・・・画像処理及び制御部、1b・・・ゲイン切換部、1c・・・画像処理部、2・・・撮像部、2a・・・撮影レンズ、2b・・・画素、2c・・・アンプ、2d・・・積分器、3・・・動き制御部、4・・・記録部、6・・・操作判定部、7・・・動き判定部、8・・・表示部、9・・・時計部、10・・・カメラ、12・・・ストロボ、20・・・被写体、21・・・背景、30a〜30d・・・画像信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得する撮像部と、
上記露光期間中に補助光発光を行う補助光投光源と、
上記撮像部で得た画像を記録する記録部と、
上記露光期間中に上記補助光発光を行う場合に上記像信号を第1の増幅率で増幅して撮影を行う第1の撮影モードと、上記露光期間中に上記補助光発光を行う場合に上記像信号を上記第1の増幅率より高い増幅率で増幅して撮影を行う第2の撮影モードに、切り換え制御を行う切換制御部と、
を有することを特徴とするカメラ。
【請求項2】
さらに、上記第1の撮影モードの選択時には、画面周辺部で所定値に満たない像信号に対して画像処理を行う画像処理部を有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
さらに、上記第1の撮影モードの選択時には、上記補助光発光のタイミングで、上記撮影光学系と撮像部の相対関係を変更する変更部を有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項4】
上記補助光投光源が外付けの場合には、通信部を介して上記補助光投光源と通信を行うことを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項5】
上記補助光発光に先立って、上記補助投光源の発光量を決定するための予備発光時には、上記第1の撮影モードが選択されている場合であっても、上記第2の撮影モード選択時における増幅率で上記像信号を増幅することを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項6】
露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得する撮像部と、
上記露光期間中に補助光発光を行う補助光投光源と、
上記補助光発光後であって上記露光期間中に、上記撮影光学系と撮像部の相対関係を変更する変更部と、
上記補助光発光時およびその後の上記変更部による上記相対変更を行った際に、撮像部で得た画像を記録する記録部と、
を有することを特徴とするカメラ。
【請求項7】
上記変更部は、撮像素子もしくは上記撮影光学系の一部の光学系を移動させることを特徴とする請求項6に記載のカメラ。
【請求項8】
撮影時において上記補助投光源を発光する場合には、上記撮像部における増幅率を低下させることを特徴とすることを特徴とする請求項6に記載のカメラ。
【請求項9】
上記補助光投光源が外付けの場合には、通信部を介して上記補助光投光源と通信を行うことを特徴とする請求項6に記載のカメラ。
【請求項10】
露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得し、
上記露光期間中に補助光発光を行い、
上記露光期間中に、上記補助光発光を行う場合に、第1の撮影モードが設定されている場合には、上記像信号を第1の増幅率で増幅して撮影を行い、第2の撮影モードが設定されている場合には、上記像信号を上記第1の増幅率より高い増幅率で増幅して撮影を行い、
上記第1の撮影モードまたは上記第2の撮影モードで得た像信号を記録する、
ことを特徴とするカメラの撮影方法。
【請求項11】
露光期間中に撮影光学系を介して得た被写体像の像信号を取得し、
上記露光期間中に補助光発光を行い、
上記補助光発光のタイミングで、上記撮影光学系と撮像部の相対関係を変更し、
上記補助光発光時および上記相対変更を行った際に、上記像信号を記録する、
ことを特徴とするカメラの撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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