説明

カメラモジュールおよびその製造方法

【課題】レンズホルダへのガラス基板の接着に関して、接着およびガラス基板の位置合わせを高い精度で行うこと、ガラス基板の破損を抑制すること、ならびに小型化を可能とする、カメラモジュールおよびその製造方法を実現する。
【解決手段】レンズホルダ402は、ガラス基板403の位置を決定するためにガラス基板403に当接する当接部404と、ガラス基板403に接着剤406を介して接着される突出部405とを備えている。当接部404は、ガラス基板403に接着されておらず、突出部405の頂部は、ガラス基板403と離間されて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付き携帯電話機、デジタルスチルカメラ、セキュリティカメラ等に搭載されており、撮像を行うカメラモジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等に搭載されているカメラモジュールは、固体撮像素子、ガラス基板、端子を有する配線基板、レンズ、およびレンズを保持する保持具(レンズホルダ)を備えた構造となっている。固体撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサである。
【0003】
最近では、固体撮像素子の微細化プロセスが進んでいる。そのため、固体撮像素子の受光部分、ガラス基板における固体撮像素子に入射する光の光路上等に異物が存在していると、撮像した画像を表示する画面にこの異物の影が映る場合がある。この異物の影は、黒色の点、またはシミとして該画面に映り、カメラモジュールが撮像した画像の不良を発生させる要因となる。以下、この異物のことを「ダスト」と称する。さらに、ダストが30μm以下〜20μm程度の微小なものである場合、このダストは、該画面に影、または黒点を発生させると共に、カメラモジュールに一般的に設けられるマイクロレンズアレイの凹凸による隙間に侵入するため除去するのが困難である。
【0004】
ここで、カメラモジュールの内部に発生するダストを大まかに分類すると、工程起因のもの、および材料起因のものという、2種類のダストが挙げられる。
【0005】
工程起因のものとは、カメラモジュールの製造工程中に使用する装置の磨耗によって発生したもの、各製造工程での作業者の生体に起因して発生したもの(毛髪等)等が挙げられる。工程起因のダストは、比較的(視認できる程度に)大きく、検査等で検出して排除することが容易である。
【0006】
材料起因のものとは、カメラモジュールを構成する部品の入荷時点で該部品に付着するもの、樹脂成型物や接着剤の充填剤(フィラー)が剥がれ落ちたもの、オートフォーカス時やズーム時に動作する機構または部品がその動作中に磨耗して発生したもの等が挙げられる。材料起因のダストは、微小な樹脂片であったり、充填剤が剥がれ落ちたものであったりするので、微小である場合がしばしばある。
【0007】
視認できる程度に大きいダストがガラス基板上にある場合、ダストを除去することは簡単である。しかしながら、固体撮像素子の受光部分(マイクロレンズアレイ)以外である、レンズ保持具の壁面、または配線基板の表面等に微小なダストが付着している場合、このダストを検査等で検出することは困難である。このようなダストが検出されなかった場合、撮像した画像の不良を発生させる要因を内包したカメラモジュールを、良品として出荷してしまう虞がある。また、その後、このカメラモジュールは、搬送または運送の過程で、振動および/または衝撃が加えられることによってダストが固体撮像素子の受光部分(マイクロレンズアレイ)に移動すると、出荷先またはユーザ元で不良となる。
【0008】
このように、ガラス基板は、光学フィルタとしての機能をはじめとする光学的な機能を有する部品であり、固体撮像素子の受光部分(マイクロレンズアレイ)、レンズ保持具の壁面、または配線基板の表面等にダストが侵入することを防止する役目がある。
【0009】
上記ダストの侵入を防止する、ガラス基板の貼り付け構造に関しては、特許文献1〜3のそれぞれに開示された技術が挙げられる。
【0010】
特許文献1に開示された技術の目的は、撮像装置1bの光学系と撮像面211との間の距離、および光学系の撮像面211に対する傾きを精度良く決定することである。この目的を達成するために、特許文献1には、以下の技術が開示されている。すなわち、立体回路基板3の電極上に塗布された銀ペースト等の導電性接着剤上から、ボールバンプ221bを介して、ガラス基板22が立体回路基板3に対して押圧される。そして、ボールバンプ221bが該押圧による力により変形する(押し潰される)ことによって、ガラス基板22が突起部35bの端面である実装基準面351に当接した状態で、接着が行われる(図25参照)。
【0011】
特許文献1に開示された技術では、平面度が高いガラス基板22を介して撮像デバイス21を立体回路基板3に実装する。これにより、撮像デバイス21の立体回路基板3への実装を、容易かつ精度良く行うことができる。さらには、ガラス基板22の熱膨張係数(約8×10−6/℃)は、樹脂基板の熱膨張係数(約25×10−6/℃)に比べて小さい。このため、撮像デバイス21の接合部への熱応力を小さくすることができ、撮像デバイス21の接合信頼性を向上することができる。
【0012】
特許文献2には、以下の技術が開示されている。すなわち、枠状部材30のリング状接着部34の上面に、熱硬化型の接着剤40(斜線ハッチング部)を塗布する。このとき、接着剤40は、リング状接着部34の上面のうちの溝36が配置された溝領域Bを除く領域に選択的に塗布される(図26参照)。
【0013】
特許文献3には、以下の技術が開示されている。すなわち、カメラモジュールの台座は、側壁に離間して形成された当接部と、隣り合う2つの側壁によって構成される隅に形成された接着部と、堰提部とを備えている。当接部は、ガラスカバーに接着するためのものではなく、ガラスカバーに当接することによって、台座の搭載面に対するガラスカバーの位置、およびガラスカバーの傾きを決定するためのものである。当接部および堰提部はさらに、撮像領域に接着剤が流れ出るのをせき止める機能を有しており、これにより、良好な撮像品質を確保すると共に接着領域の広がりを抑制している。堰提部は、当接部と同様に、台座とガラスカバーとの接着時に、ガラスカバーに当接する。一方、接着部は、当接部より低く形成されており、台座とガラスカバーとの接着時に、ガラスカバーと接しない。このため、当接部にガラスカバーを当接させると、接着部とガラスカバーとの間に、間隙が形成される。接着部とガラスカバーとの接着は、この間隙にて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−292242号公報(2005年10月20日公開)
【特許文献2】特開2010−141123号公報(2010年6月24日公開)
【特許文献3】特開2009−3058号公報(2009年1月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に開示されている技術では、立体回路基板3とガラス基板22との接着に関して、これらの間に、実装基準面351より高く形成されたボールバンプ221bを設け、該ボールバンプ221bを押圧することにより変形させる必要がある。ここで、押圧する力が弱い場合、ボールバンプ221bの変形が不十分となる。これにより、ガラス基板22の実装基準面351への当接が不十分となり、立体回路基板3に対するガラス基板22の離間距離、およびガラス基板22の傾きがそれぞれ、所望の距離、および角度からずれる虞があるという問題が発生する。またこれにより、ボールバンプ221bの立体回路基板3への当接が不十分となり、ボールバンプ221bと立体回路基板3との導通が不良になる虞があるという問題が発生する。反対に、押圧する力が強い場合、ガラス基板22が実装基準面351を強く押圧することにより、実装基準面351が変形する、および/またはガラス基板22が破損する虞があるという問題が発生する。また、実装基準面351が変形した結果、立体回路基板3に対するガラス基板22の離間距離、およびガラス基板22の傾きがそれぞれ、所望の距離、および角度からずれる虞があるという問題が発生する。
【0016】
また、特許文献1に開示されている技術では、ガラス基板22の熱膨張係数(約8×10−6/℃)が、樹脂基板である立体回路基板3の熱膨張係数(約25×10−6/℃)に比べて非常に小さい。この結果、互いに接着されたガラス基板22および立体回路基板3に熱膨張が発生すると、ガラス基板22に対して立体回路基板3が大幅に伸び、接着部分またはガラス基板22に発生する応力が大きくなる。また、ボールバンプ221bと立体回路基板3とが密着した状態で接着されているため、ボールバンプ221bと立体回路基板3との接着部分において、この応力を緩衝することは困難である。そして、この応力に起因して、ガラス基板22には、剥れまたは割れが発生する虞があるという問題が発生する。
【0017】
特許文献2に開示されている技術は、そもそも枠状部品30に対するガラスキャップ50の位置、およびガラスキャップ50の傾きを決定することを実施していない。
【0018】
また、特許文献2に開示されている技術に関して、枠状部品30とガラスキャップ50の表面とが十分に平滑である場合、これらの隙間が狭すぎて十分に膨張空気を排出することができない。一方、枠状部品30とガラスキャップ50の表面との少なくとも一方に凹凸がある場合、膨張空気を排出することができるものの、隙間が広すぎるため、隙間に異物が侵入する虞が大きくなる。
【0019】
加えて、枠状部品30とガラスキャップ50の表面との接触(接着)面積が大きい場合、接触面の平滑性を所望の性能で維持することが困難となり、高い接着精度を維持することが困難となる。すなわち、枠状部品30とガラスキャップ50の表面との接着面積を小さくすることが必要である。さらに、携帯電話機等の携帯機器の縮小化に対する要求から、カメラモジュールの組立時ののりしろとなる領域内においても、接着剤を塗布する領域を制限する必要がある。
【0020】
従来では、レンズ保持具(枠状部品30)にガラス基板(ガラスキャップ50)を接着するために、レンズ保持具の平面上に、ディスペンサ(塗布装置)により接着剤を塗布していた。しかしながら、ディスペンサから吐出される接着剤は、ディスペンサから押し出される速度、ならびにディスペンサの移動速度等に応じて発生する各種の力の影響から、一定の方向に吐出するのが困難である。この結果、接着剤を一直線に塗布するのが困難であり、塗布された接着剤の軌跡が蛇行する。
【0021】
そして、特許文献2に開示されている技術では、この接着剤の軌跡が蛇行する領域、ならびに接着時に接着剤が押し広げられる領域を確保する必要があるため、カメラモジュールの小型化が困難であるという問題が発生する。なお、特許文献1に開示されている技術においては、ボールバンプ221bと立体回路基板3との接着部分である1点を単位として、接着剤の塗布を行っているので、カメラモジュールの小型化に関する上記の問題に関しては、関連が薄い。
【0022】
特許文献3に開示されている技術では、接着部とガラスカバーとの接着時に、接着領域の広がりを抑制するために、当接部が接着剤をせき止める。つまり、特許文献3に係る当接部は、接着剤を付着させることによって、接着領域の広がりを抑制するものである。
【0023】
ここで、接着部とガラスカバーとの接着時に、当接部に接着剤が付着すると、当接部がガラスカバーに接着される虞がある。また、この場合、ガラスカバーに当接する当接部は、ガラスカバーと密着して接着され、この結果、ガラスカバーが強固に固定される。
【0024】
そして、特許文献3に開示されている技術では、当接部がガラスカバーに強固に固定されているため、台座および/またはガラスカバーの熱膨張に起因して台座とガラスカバーとの接着部分またはガラスカバーに発生した応力を吸収することが困難である。そして、この応力に起因して、ガラスカバーが破損する虞があるという問題が発生する。
【0025】
また、特許文献3に開示されている技術では、接着部とガラスカバーとの接着時における当接部とガラスカバーとの間隔が、接着剤が含有するフィラーの径および硬化剤の径より小さく、この小さい隙間に、接着剤が入り込む。従って、このとき、当接部とガラスカバーとの当接部分には、接着剤の主剤のみが濡れ広がる。この結果、特許文献3に開示されている技術では、接着剤の性能が低下したり、接着後の硬化が不十分である箇所が発生したりすることで、台座とガラスカバーとの接着の精度が低下する虞があるという問題が発生する。
【0026】
また、特許文献3に開示されている技術では、接着部が、隣り合う2つの側壁によって構成される隅に形成されており、該接着部の上方にある間隙に、接着剤が位置する。また、特許文献3に開示されている技術では、ガラスカバーが該側壁に当接するような構造となっているが、ガラスの加工(ダイシング等)による精度は、一般的に−0.05〜+0.05mm程度の範囲内のばらつきを許容する程度である。また、通常、該ばらつきに対応するため、ガラスカバーと該側壁との間に間隙(クリアランス)を設ける必要がある。このため、ガラスカバーと該側壁との間には、僅かな隙間が形成される。そして、該隙間に接着剤が入り込むことで、接着すべき部分からガラスカバーの裏側へと接着剤がはみ出す虞がある。この結果、特許文献3に開示されている技術では、接着部とガラスカバーとの接着が不十分になる虞があるという問題が発生する。
【0027】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、レンズホルダへのガラス基板の接着に関して、接着およびガラス基板の位置合わせを高い精度で行うこと、ガラス基板の破損を抑制すること、ならびに小型化を可能とする、カメラモジュールおよびその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明のカメラモジュールは、上記の問題を解決するために、レンズを保持するレンズホルダと、上記レンズホルダに接着されるガラス基板とを備えたカメラモジュールであって、上記レンズホルダは、上記ガラス基板の位置を決定するために上記ガラス基板に当接する当接部と、上記ガラス基板に接着剤を介して接着される突出部とを備えており、上記当接部は、上記ガラス基板に接着されておらず、上記突出部の頂部は、上記ガラス基板と離間されて形成されていることを特徴としている。
【0029】
上記の構成によれば、当接部にガラス基板が当接することにより、ガラス基板の位置を決定することが可能である。従って、レンズホルダへのガラス基板の接着に関して、ガラス基板の位置合わせを行うことが可能である。
【0030】
また、上記の構成によれば、レンズホルダへのガラス基板の接着に関して、当接部より高く形成された部材を、レンズホルダまたはガラス基板に設ける必要が無い。つまり、本発明のカメラモジュールは、ガラス基板を当接部に当接させるときに、レンズホルダまたはガラス基板を押圧する必要が無い。従って、レンズホルダに対するガラス基板の離間距離、およびガラス基板の傾きがそれぞれ、所望の距離、および角度からずれる虞を低減することが可能である。また、ガラス基板に導通不良を発生させる要因も削減することが可能である。
【0031】
また、上記の構成によれば、ガラス基板と当接するレンズホルダ部分である当接部は接着されず、該当接部より低く形成された突出部が、ガラス基板と接着される。ガラス基板を当接部に当接させた状態では、ガラス基板と突出部とが密着しない構成とすることが可能となるため、ガラス基板と突出部とを接着すると、これらの間隙に接着剤が介在する。接着力が非常に大きな(可撓性が非常に小さな)接着剤を使用しなければ、レンズホルダおよび/またはガラス基板の熱膨張に起因して発生した応力を、該接着剤の挙動により吸収することが可能となる。従って、本発明のカメラモジュールにおいては、ガラス基板の剥れまたは割れを抑制することが可能である。
【0032】
また、上記の構成によれば、突出部の頂部に向けてディスペンサ等の塗布装置により接着剤を塗布すると、接着剤は、突出部の頂部に当たり、そのまま突出部に付着する。従って、接着剤は、塗布装置から一定の方向に吐出されていなくても、突出部の頂部に当たれば一直線に塗布することが可能となる。以上のとおり、突出部は、接着剤をレンズホルダ上に一直線に塗布するための、ガイド機能を有している。従って、カメラモジュールは、接着剤の軌跡が蛇行する領域を確保する必要が無いので、小型化が可能となる。
【0033】
なお、本発明における「頂部」とは、任意の部材における上端部分を意味する用語であり、該上端部分が点である場合と、該上端部分が線である場合と、該上端部分が面である場合との全てを包含する文言であるものとする。
【0034】
また、上記の構成によれば、本発明のカメラモジュールは、そもそもガラス基板が当接部に接着されないように構成されるので、ガラス基板と当接部との当接部分に、接着剤が流れ込むことも無い。従って、接着剤の主剤のみが該当接部分に濡れ広がることがないので、接着後の硬化が不十分である箇所が発生する虞も、レンズホルダとガラス基板との接着の精度が低下する虞も低減することが可能となる。
【0035】
さらに、上記の構成によれば、突出部の機能により、接着剤を一直線に塗布することで、接着剤の塗布領域を小さくすることが可能となる。これにより、ガラス基板とレンズホルダの側壁との間に接着剤が流れる虞は低減されるため、レンズホルダとガラス基板との接着が不十分になる虞を抑制することが可能となる。
【0036】
一具体例として、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、上記レンズホルダの側壁から離間されて設けられており、かつ上記当接部と上記レンズホルダの側壁との間に設けられているのが好ましい。
【0037】
また、別の具体例として、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、上記ガラス基板の面と対向する位置に設けられているのが好ましい。
【0038】
また、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、上記突出部が突出する方向に沿った断面における幅が、底部から頂部に向かって小さくなる形状であるのが好ましい。
【0039】
上記の構成によれば、突出部に塗布された接着剤に働く表面張力が大きくなる。従って、より多くの接着剤を、突出部の近傍に留まらせることが可能となるため、接着剤の塗布領域の広がりをさらに抑制することが可能となり、カメラモジュールのさらなる小型化が可能となる。
【0040】
また、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、頂部が鋭利な形状であるのが好ましい。
【0041】
また、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、頂部が丸みを帯びた形状であるのが好ましい。
【0042】
また、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、頂部が平面を含む形状であるのが好ましい。
【0043】
また、本発明のカメラモジュールの、上記突出部は、頂部が窪みを有する形状であるのが好ましい。
【0044】
ここで、突出部の頂部を、鋭利な形状にすると、該頂部において表面張力が得られず、該頂部に接着剤が留まることができず、該頂部が露出する。
【0045】
そこで、実際の突出部の形状は、頂部に丸みを帯びた形状であるのが好ましい。これにより、突出部の頂部においても表面張力を得ることができ、該頂部に接着剤を留まらせることが可能となる。
【0046】
突出部が頂部に平面を含む構成である場合、該平面に接着剤を乗せることが可能となる。このため、接着剤の粘度が低い場合であっても、接着剤を突出部の近傍に留まらせることが容易となり、接着剤として使用可能な材料の選択肢を幅広くすることができる。
【0047】
また、突出部が頂部に窪みを有する構成である場合、該窪みに接着剤を留めることが可能となる。このため、接着剤の粘度が低い場合であっても、接着剤を突出部の近傍に留まらせることが容易となり、接着剤として使用可能な材料の選択肢を幅広くすることができる。
【0048】
また、本発明のカメラモジュールの、上記レンズホルダには、上記レンズと上記ガラス基板との間に、上記レンズを通過した光を上記ガラス基板に入射させるための開口部が形成されており、上記当接部および上記突出部のうちの少なくとも一方は、上記開口部を囲繞するように形成されているのが好ましい。
【0049】
上記の構成によれば、ガラス基板が当接される当接部、およびガラス基板との間隙部分に接着剤が介在する突出部のうち少なくとも一方が、開口部を囲繞する。これにより、ガラス基板を、当接部に当接させると共に突出部に接着することで、ガラス基板により開口部を塞ぐことが可能となる。そして、ガラス基板によって開口部を完全に塞ぐことにより、ガラス基板は、カメラモジュールの撮像部にダスト(ゴミ、シミ等)が侵入することを防止することができる。
【0050】
また、本発明のカメラモジュールの、上記レンズホルダには、上記レンズと上記ガラス基板との間に、上記レンズを通過した光を上記ガラス基板に入射させるための開口部が形成されており、上記突出部は、上記開口部を挟んで互いに対向する2箇所に設けられているのが好ましい。
【0051】
上記の構成によれば、突出部を設ける範囲を制限することにより、接着剤の使用量を少なくすることが可能となるので、カメラモジュールの製造コストを削減することが可能となる。
【0052】
また、上記の構成によれば、突出部を設ける範囲を制限することにより、突出部を設けるための工程を簡略化することが可能であるので、カメラモジュールの製造コストをさらに削減することが可能となる。
【0053】
また、本発明のカメラモジュールの、上記ガラス基板を透過した光を受光する撮像素子を少なくとも備えた撮像部を備えており、上記レンズホルダは、上記撮像部に存在する空気を上記カメラモジュールの外部に排出するための、上記当接部が断たれて成る空気抜き溝を備えているのが好ましい。
【0054】
上記の構成によれば、空気抜き溝を設け、膨張した空気を排出させることにより、カメラモジュールでは、該膨張した空気がガラス基板を加圧することに起因する、ガラス基板の破損を抑制することが可能である。
【0055】
また、本発明のカメラモジュールの、上記当接部および上記突出部は、いずれも直線に伸びる形状であり、かつ互いに平行であるのが好ましい。
【0056】
上記の構成によれば、当接部と突出部とを、互いに平行となるように設けることにより、接着領域の最小化を図ることが可能となる。
【0057】
また、本発明のカメラモジュールの、上記レンズホルダは、上記当接部と上記突出部との間に、上記当接部より低く形成された堰部をさらに備えているのが好ましい。
【0058】
上記の構成によれば、堰部は、接着剤の塗布時に、接着剤が突出部から当接部へと流れ出すのを防止する機能を有している。これにより、塗布された接着剤をレンズホルダとガラス基板との接着に効果的に寄与させ、該接着が不十分になる虞を低減することが可能となる。また、当接部に接着剤が付着する虞をさらに低減することが可能となる。
【0059】
また、本発明のカメラモジュールの製造方法は、本発明のカメラモジュールを製造する、カメラモジュールの製造方法であって、上記突出部に接着剤を塗布する工程と、上記ガラス基板を上記当接部に当接させると共に、上記ガラス基板と上記突出部とを上記接着剤により接着する工程とを含み、上記突出部に塗布された上記接着剤の頂部を、上記当接部の頂部より高くすることを特徴としている。
【0060】
また、本発明のカメラモジュールの製造方法は、本発明のカメラモジュールを製造する、カメラモジュールの製造方法であって、上記ガラス基板に接着剤を塗布する工程と、上記ガラス基板を上記当接部に当接させると共に、上記ガラス基板と上記突出部とを上記接着剤により接着する工程とを含み、上記ガラス基板に塗布された上記接着剤の高さを、上記当接部の高さと上記突出部の高さとの差より大きくすることを特徴としている。
【0061】
また、本発明のカメラモジュールの製造方法は、本発明のカメラモジュールを製造する、カメラモジュールの製造方法であって、上記ガラス基板を上記当接部に当接させる工程と、上記当接部に当接させた上記ガラス基板と、上記突出部との間隙から、該ガラス基板および突出部に接着剤を塗布する工程とを含むことを特徴としている。
【0062】
上記の各方法によれば、本発明のカメラモジュールにおける、レンズホルダとガラス基板との接着構造を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0063】
以上のとおり、本発明は、レンズを保持するレンズホルダと、上記レンズホルダに接着されるガラス基板とを備えたカメラモジュールであって、上記レンズホルダは、上記ガラス基板の位置を決定するために上記ガラス基板に当接する当接部と、上記ガラス基板に接着剤を介して接着される突出部とを備えており、上記当接部は、上記ガラス基板に接着されておらず、上記突出部の頂部は、上記ガラス基板と離間されて形成されている構成である。
【0064】
従って、本発明は、レンズホルダへのガラス基板の接着に関して、接着およびガラス基板の位置合わせを高い精度で行うこと、ガラス基板の破損を抑制すること、ならびに小型化が可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るカメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)は、従来技術に係るレンズホルダを、ガラス基板が搭載される側から見た平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示すレンズホルダから、接着剤およびディスペンサのみを抜粋して図示した平面図である。
【図3】図3(a)は、図1に示すレンズホルダを、ガラス基板が搭載される側から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すレンズホルダから、突出部、接着剤、およびディスペンサのみを抜粋して図示した平面図である。
【図4】突出部およびそれに付着した接着剤の一構成例を示す断面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の一実施の形態に係る当接部、突出部、および接着剤の構成を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)のa−a´線断面図である。
【図6】図6(a)および(b)は、レンズホルダにガラス基板を接着する様子を示す断面図である。
【図7】接着剤を塗布する領域の、一実施の形態を示す平面図である。
【図8】接着剤を塗布する領域の、別の実施の形態を示す平面図である。
【図9】接着剤を塗布する領域の、さらに別の実施の形態を示す平面図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、接着剤により、レンズホルダとガラス基板とが接着された状態を示す断面図であり、レンズホルダおよびガラス基板が、熱膨張または熱収縮したときの、応力吸収の原理を示す図である。
【図11】図11(a)は、突出部の外周領域に段差部を設けた、一実施の形態を示す断面図であり、図11(b)は、突出部の外周領域に段差部を設けた、別の実施の形態を示す断面図である。
【図12】当接部と突出部との間に堰部を設けた実施の形態を示す断面図である。
【図13】図11(a)および(b)に示す段差部と、図12に示す堰部とを組み合わせた形態を示す断面図である。
【図14】図14(a)は、突出部の形状の例を示す断面図であり、図14(b)は、突出部の頂部が鋭利である場合の、接着剤の挙動を示す断面図であり、図14(c)は、突出部の頂部が平面である場合の、接着剤の挙動を示す断面図である。
【図15】突出部を設ける領域の、別の実施の形態を示す平面図である。
【図16】図16(a)および(b)は、突出部を設ける領域の、さらに別の実施の形態を示す平面図である。
【図17】図17(a)および(b)は、突出部を設ける領域の、他の実施の形態を示す平面図である。
【図18】図18(a)および(b)は、突出部を設ける領域の、さらに他の実施の形態を示す平面図である。
【図19】当接部に空気抜き溝を形成する実施の形態を示す平面図である。
【図20】図20(a)および(b)は、レンズホルダにガラス基板を接着する別の様子を示す断面図である。
【図21】図21(a)および(b)は、レンズホルダにガラス基板を接着するさらに別の様子を示す断面図である。
【図22】図22(a)は、当接部および突出部をいずれも備えていない従来技術に係るレンズホルダとガラス基板との接着の様子を示す平面図であり、図22(b)は、図22(a)のb−b´線における断面図である。
【図23】図23(a)は、図22(a)に示すレンズホルダとガラス基板との別の接着の様子を示す平面図であり、図23(b)は、図23(a)のc−c´線における断面図である。
【図24】図24(a)は、本発明に係るレンズホルダとガラス基板との接着の様子を示す平面図であり、図24(b)は、図24(a)のd−d´線における断面図であり、図24(c)は、図24(a)のe−e´線における断面図である。
【図25】従来技術に係るカメラモジュールの構成を示す図である。
【図26】別の従来技術に係るカメラモジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
〔カメラモジュールの構成〕
図1は、本発明に係るカメラモジュールの構成を示す断面図である。
【0067】
図1に示すカメラモジュール400は、レンズ401、レンズホルダ402、ガラス基板403、当接部404、突出部405、接着剤406、撮像素子407、ワイヤ408、および基板409を備えている。
【0068】
レンズ401は、カメラモジュール400に入射した光を集光するものである。
【0069】
レンズホルダ402は、樹脂から成り、レンズ401を保持する中空の部材である。
【0070】
レンズホルダ402は、基板409の表面に搭載されており、開口部410を有している。開口部410は、レンズ401とガラス基板403との間に形成されており、レンズ401を通過した光をガラス基板403に入射させるために開口するものである。また、レンズ401の光軸と略垂直な方向における、上記中空の部分の断面は、開口部410に対して基板409側より、開口部410に対して物体(図示しない)側のほうが小さくなっている。レンズ401は、上記中空の部分であって、開口部410に対して物体側にて保持されている。
【0071】
便宜上、基板409の面は、レンズホルダ402が搭載される面を「表面」と、レンズホルダ402が搭載されない面であって表面と平行である面を「裏面」と、レンズホルダ402が搭載されない面であって表面と垂直である各面を「側面」と称する。また、以下では、基板409の表面と対向するレンズホルダ402の面であって、開口部410を形成するために開口している面を「レンズホルダ402の天面」と称する。
【0072】
ガラス基板403は、レンズ401を通過した光が開口部410を通じて入射されると、この光を透過させる基板である。
【0073】
ガラス基板403は、開口部410を塞ぐように、レンズホルダ402に接着されている。ガラス基板403は、光学フィルタとしての機能をはじめとする光学的な機能を有する部品であり、撮像素子407の受光部分(マイクロレンズアレイ)、レンズホルダ402の壁面(側壁)、または基板409の表面等にダストが侵入することを防止する役目がある。
【0074】
当接部404は、レンズホルダ402の天面に対するガラス基板403の位置を決定するために、ガラス基板403に当接する突出部位である。
【0075】
当接部404は、レンズホルダ402の天面に設けられており、ガラス基板403の面と対向する位置に形成されている。そして、ガラス基板403が当接部404に当接すると、レンズホルダ402の天面に対するガラス基板403の離間距離は、当接部404の高さと略等しくなるように維持される。
【0076】
また、当接部404は、少なくとも、三角形をなす配置である3点にて、その高さが等しくなるように構成されている。これにより、当接部404は、ガラス基板403を、レンズホルダ402の天面に対して略水平な角度に維持することが可能となる。
【0077】
一方、レンズホルダ402とガラス基板403との接着時に互いに対向する、レンズホルダ402の天面部分およびガラス基板403の面には、いずれも、当接部404より高く形成された部材(突起)を備えていない。すなわち、カメラモジュール400は、レンズホルダ402とガラス基板403との接着に関して、これらの間に、当接部404より高く形成された部材を備えていない構造となっている。カメラモジュール400は、レンズホルダ402とガラス基板403との接着時に押圧が必要な部材を備えていない。従って、ガラス基板403の当接部404への当接が不十分となる虞を低減し、レンズホルダ402の天面に対するガラス基板403の離間距離、およびガラス基板403の傾きが、それぞれ所望の距離、および角度からずれる虞を低減することが可能である。同様に、ガラス基板403が当接部404を強く押圧する虞を低減し、当接部404が変形する、および/またはガラス基板403が破損する虞を低減することが可能である。結果、カメラモジュール400では、ガラス基板403の位置合わせを高い精度で行うことが可能となる。
【0078】
ここで、レンズホルダ402とガラス基板403とは、接着剤406によって接着されているが、この接着は、当接部404にて行われてはならない。すなわち、当接部404は、ガラス基板403に接着されない構成である必要がある。さらに、ガラス基板403は、当接部404に固定されず、これにより、当接部404に対する変位が可能となっている。
【0079】
突出部405は、レンズホルダ402とガラス基板403とを、接着剤406によって接着することを目的として設けられた突出部位である。
【0080】
突出部405は、レンズホルダ402の天面に設けられており、ガラス基板403の面と対向する位置に形成されている。また、突出部405は、当接部404の外周領域において当接部404を取り囲むように、レンズホルダ402の側壁から離間されて形成されている。さらに、突出部405は、当接部404より低く形成されている。当接部404が設けられている場合、レンズホルダ402とガラス基板403との接着後において、ガラス基板403と突出部405とは接触しない。つまり、このとき、突出部405の頂部は、ガラス基板403と離間されている。カメラモジュール400は、ガラス基板403と突出部405とにより形成された間隙に位置している接着剤406が、レンズホルダ402とガラス基板403とを接着する構成である。
【0081】
なお、突出部405は、当接部404より、25μm以上低く形成されているのが好ましい。これにより、フィラーおよび硬化剤が、ガラス基板403と突出部405とにより形成された間隙を通過することが容易となる。
【0082】
また、突出部405は、突出部405が突出する方向に沿った断面における幅が、突出部405の底部(根元、物体側)から突出部405の頂部(先端、基板409側)に向かって小さくなる形状である。以下、この形状を「先細り」と称する。突出部405を先細りとすることによる機能の詳細については、後述する。
【0083】
接着剤406は、ガラス基板403と、レンズホルダ402の天面に形成された突出部405とを接着する接着剤である。
【0084】
接着剤406は、塗布装置であるディスペンサ412(図2〜図5参照)によって突出部405に塗布され、上述したとおり、当接部404に付着しない。
【0085】
撮像素子407は、ガラス基板403を透過した光を受光して得られた光信号を電気信号に変換することによって、撮像を行うものであり、CCDイメージセンサ、またはCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子を用いて構成することができる。
【0086】
撮像素子407は、基板409の表面に搭載されており、レンズホルダ402における上記中空の部分に配置されている。撮像素子407は、ガラス基板403を透過した光を受光するための受光部分を備えており、該受光部分にマイクロレンズアレイ(図示しない)が設けられているのが好ましい。
【0087】
ワイヤ408は、周知のワイヤボンディング方式により、撮像素子407と基板409とを電気的に接続するものであり、撮像素子407および基板409の表面に接続されている。
【0088】
図1では、撮像素子407およびワイヤ408を撮像部411と称している。
【0089】
基板409は、配線を有している配線基板である。基板409は、側面または裏面に電極(図示しない)をさらに備えており、該電極により、カメラモジュール400の外部の機器(図示しない)と電気的に接続することが可能である。
【0090】
なお、カメラモジュール400は、以上の構成に加え、マクロ機能、ズーム機能、およびオートフォーカス機能を実現するための、複数のレンズおよびそれらを可動とする機構(図示しない)を備えていてもよい。
【0091】
また、ガラス基板403における光学フィルタとしての機能は、必須でない。
【0092】
また、ワイヤ408のかわりに、撮像素子407と基板409とを電気的に接続するための貫通電極が設けられてもよい。
【0093】
〔従来技術における接着剤塗布の問題点〕
図2(a)は、従来技術に係るレンズホルダ402Aを、ガラス基板403が搭載される側から見た平面図であり、レンズホルダ402Aにおける上記中空の部分を図示したものである。図2(b)は、図2(a)に示すレンズホルダ402Aから、接着剤406およびディスペンサ412のみを抜粋して図示した平面図である。
【0094】
なお、図2(a)に示すレンズホルダ402Aは、レンズホルダ402から当接部404および突出部405を省いた構成である。
【0095】
従来技術に係るレンズホルダ402Aとガラス基板403とを接着する場合、接着剤406は、図2(a)に示すとおり、ディスペンサ412により、レンズホルダ402Aの天面における平面部分(塗布ライン)に塗布されていた。
【0096】
しかしながら、図2(a)に示す方法で接着剤406の塗布を行った場合、接着剤406は、ディスペンサ412から押し出される速度、ならびにディスペンサ412の移動速度等に応じて発生する各種の力の影響から、一定の方向に吐出するのが困難である。この結果、接着剤406を一直線に塗布するのが困難であり、塗布された接着剤406の軌跡が蛇行する(図2(b)参照)。この接着剤406の軌跡が蛇行する領域、ならびに接着時に接着剤406が押し広げられる領域を確保することが、接着剤406の塗布領域が広くなることにつながり、カメラモジュールの小型化の妨げとなっていた。
【0097】
〔本発明に係るカメラモジュールにおける接着剤塗布の作用効果〕
図3(a)は、図1に示すレンズホルダ402を、ガラス基板403が搭載される側から見た平面図であり、レンズホルダ402における上記中空の部分を図示したものである。図3(b)は、図3(a)に示すレンズホルダ402から、突出部405、接着剤406、およびディスペンサ412のみを抜粋して(すなわち、楕円413の内部のみを)図示した平面図である。また、説明および図示の便宜上、図3(a)に示すレンズホルダ402では、当接部404の図示を省略している。
【0098】
また、図4は、突出部405およびそれに付着した接着剤406の一構成例を示す断面図である。
【0099】
図3(a)に示すとおり、レンズホルダ402には突出部405が設けられている。突出部405の頂部に向けてディスペンサ412により接着剤406を塗布すると、ディスペンサ412から吐出された接着剤406は、突出部405の頂部に当たり、そのまま突出部405に付着する。従って、図3(b)に示すとおり、接着剤406は、ディスペンサ412から一定の方向に吐出されていなくても、突出部405の頂部に当たれば一直線に塗布することが可能となる。
【0100】
以上のとおり、突出部405は、ディスペンサ412から吐出された接着剤406をレンズホルダ402上に一直線に塗布するための、ガイド機能を有している。従って、カメラモジュール400は、接着剤406の軌跡が蛇行する領域を確保する必要が無いので、小型化が可能となる。
【0101】
また、例えば図3(a)に示すとおり、当接部404と突出部405とを、互いに平行となるように設けることにより、接着領域の最小化を図ることが可能となる。
【0102】
また、接着剤406は、図4に示すとおり、突出部405の頂部が露出しないように、突出部405に塗布されるのが好ましい。突出部405の頂部が露出しないように、接着剤406を塗布する具体的な構成の一例は、以下のとおりである。
【0103】
すなわち、突出部405の頂部を、鋭利な形状(尖端形状)に対して若干の丸みを帯びた形状にすると、接着剤406が突出部405の頂部に当たったときに、突出部405の頂部に付着した接着剤406に対して働く表面張力が大きくなる。また、突出部405を先細りとすることにより、突出部405の側面においても、表面張力が得られる。これらの表面張力によって、図4に示すとおり、接着剤406は、丸みを帯びた状態で、かつ突出部405を包み込むように突出部405に付着する。
【0104】
図4に示す構成によれば、突出部405の近傍に、より多くの接着剤406を留まらせることが可能となるため、接着剤406の塗布領域の広がりをさらに抑制することが可能となり、カメラモジュール400のさらなる小型化が可能となる。
【0105】
また、図4に示す構成によれば、接着剤406の塗布領域の広がりを十分に抑制するため、当接部404に接着剤406を付着させること無く、レンズホルダ402とガラス基板403とを接着する構成を実現することが容易となる。こうした構成を実現することにより、ガラス基板403と当接部404とが接着される虞が無い。このため、ガラス基板403が当接部404に固定されない。また、互いに接着される、ガラス基板403と突出部405とは密着しておらず、これらの間隙には、接着剤406が介在している。そして、接着力が非常に大きな(可撓性が非常に小さな)接着剤を使用しなければ、レンズホルダ402および/またはガラス基板403の熱膨張に起因して発生した応力を吸収することが可能となる。従って、カメラモジュール400においては、ガラス基板403の剥れまたは割れを抑制することが可能である。
【0106】
〔当接部および突出部の実施の形態〕
図5(a)は、本実施の形態に係る当接部404、突出部405、および接着剤406の構成を示す平面図である。図5(b)は、図5(a)のa−a´線断面図である。
【0107】
図5(a)に示すとおり、当接部404は、開口部410を囲繞するように、開口部410の周縁から、レンズホルダ402の天面に対して略垂直な方向に突出して形成されている。このため、開口部410を囲繞する当接部404の全域に関して、ガラス基板403を当接部404の頂部に当接させることにより、開口部410を完全に塞ぐことは容易である。そして、ガラス基板403によって開口部410を完全に塞ぐことにより、ガラス基板403は、カメラモジュール400の撮像部411にダスト(ゴミ、シミ等)が侵入することを防止することができる。
【0108】
また、突出部405は、当接部404の外周部分に、レンズホルダ402の側壁414から離間されて形成されている。突出部405は、開口部410を囲繞するように、かつ当接部404を取り囲むように形成されている。
【0109】
図5(b)に示すとおり、突出部405は当接部404より低く形成されているが、突出部405に塗布された接着剤406の頂部は、当接部404の頂部より高い位置となる(部材番号415参照)。なぜなら、レンズホルダ402とガラス基板403とを接着するためには、接着剤406をガラス基板403に接触させる必要がある。そして、塗布された接着剤406の頂部を、当接部404の頂部より高い位置とすることで、ガラス基板403を当接部404に当接させる動作を行うだけで、接着剤406をガラス基板403に接触させることができるためである。
【0110】
〔レンズホルダにガラス基板を接着する方法〕
図6(a)および(b)は、レンズホルダ402にガラス基板403を接着する様子を示す断面図である。
【0111】
突出部405に接着剤406を塗布すると、ガラス基板403が当接部404に当接する前の接着剤406は、上述したとおり、丸みを帯びた状態で、かつ突出部405を包み込むように突出部405に付着する(図6(a)参照)。
【0112】
その後、ガラス基板403が当接部404に当接するときに、ガラス基板403が接着剤406に触れると、ガラス基板403の親水性により、接着剤406はガラス基板403に吸い上げられ、ガラス基板403に付着する(図6(b)参照)。そして、接着剤406がガラス基板403に付着することにより、ガラス基板403と突出部405とが接着され、これを以ってレンズホルダ402とガラス基板403とが接着される。レンズホルダ402とガラス基板403との接着後、接着剤406が硬化され、接着は完了する。
【0113】
接着剤406の硬化により、レンズホルダ402とガラス基板403との接着が完了した後において、接着剤406は、突出部405の突出方向に垂直な方向へはほとんど広がっていない。このような接着剤406の挙動によって、当接部404に接着剤406が付着しない構造、すなわち、ガラス基板403が当接部404に接着されない構造を、比較的容易に実現することができる。
【0114】
〔接着剤を塗布する領域の実施の形態〕
図7は、接着剤406を塗布する領域の、一実施の形態を示す平面図である。
【0115】
図8は、接着剤406を塗布する領域の、別の実施の形態を示す平面図である。
【0116】
図9は、接着剤406を塗布する領域の、さらに別の実施の形態を示す平面図である。
【0117】
図7に示す形態では、当接部404および開口部410を囲繞するように形成された突出部405の頂部の全てに、接着剤406が塗布されている。
【0118】
図8に示す形態では、当接部404および開口部410を囲繞するように形成された突出部405の頂部の一部に、接着剤406が塗布されている。
【0119】
頂部の全てに接着剤406を塗布するか、それとも、頂部の一部に接着剤406を塗布するかについては特に限定されず、接着剤406による接着の強度、ならびに接着剤406の使用量等に鑑みて、適宜選択が可能である。
【0120】
図9に示す形態は、レンズホルダ402と同様の構成を有しており、平面形状が長方形であるレンズホルダ402Bにおける例である。レンズホルダ402Bは、紙面横方向がレンズホルダ402より長く(長手方向)、紙面縦方向がレンズホルダ402より短い(短手方向)。例えば、カメラモジュールが横長である場合、レンズホルダ402Bを用いることになる。
【0121】
ここで、レンズホルダ402Bの長手方向に沿って伸びる突出部405は、レンズホルダ402Bの短手方向を規定するレンズホルダ402Bの側壁に非常に近接しているため、接着剤406を塗布するのが困難である。このような場合、レンズホルダ402Bの短手方向に沿って伸びる突出部405の頂部のみ(2箇所)に、接着剤406を塗布すればよい。レンズホルダが縦長である場合も同様である。
【0122】
図8および図9に示す各構成によれば、接着剤406の使用量を少なくすることが可能となるので、カメラモジュールの製造コストを削減することが可能となる。
【0123】
〔熱膨張に起因して発生した応力の吸収〕
図10(a)〜(c)は、接着剤406により、レンズホルダ402とガラス基板403とが接着された状態を示す断面図であり、レンズホルダ402およびガラス基板403が、熱膨張または熱収縮したときの、応力吸収の原理を示す図である。
【0124】
一般に、樹脂から成るレンズホルダ402と、ガラスにより構成されるガラス基板403とでは、ガラス基板403のほうが小さな熱膨張係数を示す。
【0125】
このため、例えばカメラモジュール400の製造段階において、カメラモジュール400全体を加熱する工程が存在する場合、ガラス基板403の熱膨張の度合に比して、レンズホルダ402の熱膨張の度合が大きくなる。反対に、カメラモジュール400全体を冷却する工程が存在する場合、ガラス基板403の熱収縮の度合に比して、レンズホルダ402の熱収縮の度合が大きくなる。これらの、レンズホルダ402とガラス基板403との間での、熱膨張の度合または熱収縮の度合の相違は、ガラス基板403に応力を発生させる要因となる。
【0126】
ここで、カメラモジュール400においては、レンズホルダ402の当接部404と、ガラス基板403とが接着されていない。また、レンズホルダ402の突出部405と、ガラス基板403とは接着されているが、ガラス基板403と突出部405との間には間隙が形成されており、この間隙には接着剤406のみが存在する。
【0127】
接着剤406が、上記熱膨張または熱収縮に起因して発生した応力を受けると変形する材質である場合、カメラモジュール400では、接着剤406が、該応力を吸収(緩衝)することが可能である。
【0128】
図10(a)は、カメラモジュール400が加熱も冷却もされていない状態にある場合の形態を示しており、例えばカメラモジュール400の組立時が、この形態に該当する。図10(a)に示す形態においては、レンズホルダ402およびガラス基板403に、目立った熱膨張または熱収縮が発生していない。
【0129】
図10(b)は、カメラモジュール400が加熱された状態にある場合の形態を示している。図10(b)に示す形態においては、ガラス基板403に比して、レンズホルダ402が大きく膨張しているが、接着剤406が変形することによって、該膨張に起因して発生した応力を吸収している。具体的に、接着剤406は、レンズホルダ402側からガラス基板403側へと向かう程に、レンズホルダ402の天面における中心方向(すなわち、当接部404および開口部410がある方向)に向かうように変形している。
【0130】
図10(c)は、カメラモジュール400が冷却された状態にある場合の形態を示している。図10(c)に示す形態においては、ガラス基板403に比して、レンズホルダ402が大きく収縮しているが、接着剤406が変形することによって、該収縮に起因して発生した応力を吸収している。具体的に、接着剤406は、レンズホルダ402側からガラス基板403側へと向かう程に、レンズホルダ402の天面における外周方向(すなわち、レンズホルダ402の側壁414がある方向)に向かうように変形している。
【0131】
こうして、接着剤406が、上記熱膨張または熱収縮に起因して発生した応力を吸収することにより、該応力に起因してガラス基板403に剥れまたは割れが発生する虞を低減することができる。
【0132】
なお、以上の説明では、レンズホルダ402を備えたカメラモジュール400を例に説明を行ったが、レンズホルダ402Bを備えたカメラモジュール(すなわち、横長または縦長のカメラモジュール)についても、同様のことが言える。
【0133】
〔突出部の外周領域に段差を設けた実施の形態〕
図11(a)は、突出部405の外周領域に段差部416を設けた、一実施の形態を示す断面図である。
【0134】
図11(b)は、突出部405の外周領域に段差部416を設けた、別の実施の形態を示す断面図である。
【0135】
図11(a)および(b)に示す段差部416は、開口部410を囲繞するように、かつ当接部404および突出部405を取り囲むように形成されている。段差部416は、ガラス基板403をも取り囲むように形成されている。
【0136】
段差部416は、接着剤406の塗布時に、接着剤406がレンズホルダ402の側壁414側に流れ出すのを防止する機能を有している。これにより、塗布された接着剤406をレンズホルダ402とガラス基板403との接着に効果的に寄与させ、該接着が不十分になる虞を低減することが可能となる。
【0137】
また、段差部416は、レンズホルダ402とガラス基板403との間隔を小さくする機能を有している。これにより、ダスト(接着剤406の添加剤であるフィラーが剥がれ落ちたもの、等)が、撮像部411に侵入する虞を低減することが可能となる。
【0138】
図11(a)は、図6等に示した構成に、段差部416をさらに設けた例である。
【0139】
一方、図11(b)は、突出部405を設けずに段差部416を設け、段差部416とガラス基板403とを接着剤406により接着した点が、図6等に示した構成と異なる例である。突出部405のかわりに段差部416を用いても、突出部405を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0140】
なお、図11(a)および(b)には、段差部416を、レンズホルダ402の側壁414に設けた例を示したが、段差部416は、レンズホルダ402の側壁414以外の箇所に設けられていてもよい。
【0141】
また、以上の説明は、レンズホルダ402を備えたカメラモジュール400であっても、レンズホルダ402Bを備えたカメラモジュール(すなわち、横長または縦長のカメラモジュール)であっても、同様のことが言える。
【0142】
〔当接部と突出部との間に堰を設けた実施の形態〕
図12は、当接部404と突出部405との間に堰部417を設けた実施の形態を示す断面図である。
【0143】
堰部417は、レンズホルダ402の天面に設けられた突出部位であり、当接部404と突出部405との間に設けられている。また、堰部417は、当接部404より低く形成されている。
【0144】
堰部417は、接着剤406の塗布時に、接着剤406が突出部405から当接部404へと流れ出すのを防止する機能を有している。これにより、塗布された接着剤406をレンズホルダ402とガラス基板403との接着に効果的に寄与させ、該接着が不十分になる虞を低減することが可能となる。また、当接部404に接着剤406が付着する虞をさらに低減することが可能となる。
【0145】
なお、ガラス基板403と当接部404とが接着されると、カメラモジュール400の加熱または冷却時における、応力の吸収機能が大幅に減少することとなる。また、当接部404を越えて、開口部410にまで接着剤406が流れ出すと、接着剤406は、カメラモジュール400が受光する光の光路上に流れ出し、撮像した画像の不良を発生させる要因となる。このような不具合を抑制するために、堰部417を設ける構成は有効である。
【0146】
堰部417は、段差部416と組み合わせて用いてもよい(図13参照)。
【0147】
また、以上の説明は、レンズホルダ402を備えたカメラモジュール400であっても、レンズホルダ402Bを備えたカメラモジュール(すなわち、横長または縦長のカメラモジュール)であっても、同様のことが言える。
【0148】
〔突出部の形状〕
図14(a)は、突出部405の形状の例を示す断面図である。
【0149】
図14(b)は、突出部405の頂部が鋭利である場合の、接着剤406の挙動を示す断面図である。
【0150】
図14(c)は、突出部405の頂部が平面である場合の、接着剤406の挙動を示す断面図である。
【0151】
図14(a)に示すとおり、突出部405の形状としては例えば、以下のものが挙げられる。
【0152】
突出部405A´は、自身が突出する方向に沿った断面における形状が、二等辺三角形である。突出部405B´は、同断面における形状が、直角三角形である。突出部405C´は、同断面における形状が、五角形である。突出部405D´および405E´は、同断面における形状が、台形である。突出部405F´は、同断面における形状が、六角形である。突出部405G´は、同断面における形状が、突出部405A´の形状における頂部に鋭角の窪みを設けた形状である。突出部405H´は、同断面における形状が、突出部405D´の形状における頂部に鋭角の窪みを設けた形状である。突出部405I´は、同断面における形状が、突出部405D´の形状における頂部に矩形の窪みを設けた形状である。
【0153】
ここで、突出部405の頂部を、鋭利な形状にすると、該頂部において表面張力が得られず、図14(b)に示すとおり、該頂部に接着剤406が留まることができず、該頂部が露出する。
【0154】
そこで、実際の突出部405の形状は、頂部に丸みを帯びた形状であるのが好ましい。これにより、突出部405の頂部においても表面張力を得ることができ、該頂部に接着剤406を留まらせることが可能となる。
【0155】
突出部405A´〜405I´の各々を、頂部に丸みを帯びた形状に変更した構成を、それぞれ突出部405A〜405Iとして、図14(a)に示した。
【0156】
なお、図14(a)に示す突出部405Jのように、突出部405の頂部が平面である場合、該頂部を構成する面上に、塗布された接着剤406が乗る(図14(c)参照)ため、他の突出部405と同様の効果を得ることができる。
【0157】
突出部405が平面を含む構成(すなわち、突出部405D〜405F、405H〜405J)である場合、該平面に接着剤406を乗せることが可能である。このため、接着剤406の粘度が低い場合であっても、接着剤406を突出部405の近傍に留まらせることが容易となり、接着剤406として使用可能な材料の選択肢を幅広くすることができる。
【0158】
また、突出部405が頂部に窪みを有する構成(すなわち、突出部405G〜405I)である場合、該窪みに接着剤406を留めることが可能である。このため、接着剤406の粘度が低い場合であっても、接着剤406を突出部405の近傍に留まらせることが容易となり、接着剤406として使用可能な材料の選択肢を幅広くすることができる。
【0159】
また、以上の説明は、レンズホルダ402を備えたカメラモジュール400であっても、レンズホルダ402Bを備えたカメラモジュール(すなわち、横長または縦長のカメラモジュール)であっても、同様のことが言える。
【0160】
〔突出部を設ける領域の実施の形態〕
突出部405は、接着剤406を塗布する箇所に設けられていれば十分であり、ここまで説明した実施の形態のように、開口部410を囲繞するように設けられていることは必須でない。
【0161】
図15は、突出部405を設ける領域の、別の実施の形態を示す平面図である。
【0162】
図16(a)および(b)は、突出部405を設ける領域の、さらに別の実施の形態を示す平面図である。
【0163】
図17(a)および(b)は、突出部405を設ける領域の、他の実施の形態を示す平面図である。
【0164】
図18(a)および(b)は、突出部405を設ける領域の、さらに他の実施の形態を示す平面図である。
【0165】
図15に示す形態では、突出部405が、開口部410を挟んで対向する2つの領域のみに設けられている。換言すれば、図15に示す形態では、突出部405が、開口部410を囲繞する略正方形のうちの1辺、およびそれと対向する1辺に設けられている。
【0166】
図16(a)に示す形態では、突出部405が、開口部410を囲繞する略正方形の四隅のみに設けられている。図16(a)に示す構成にガラス基板403を搭載した例を、図16(b)に示している。
【0167】
なお、図16(a)に示す形態では、突出部405が、上記の四隅の各々において、鉤型に形成されている。
【0168】
図17(a)に示す形態では、突出部405が、開口部410を囲繞する略正方形の四隅のみに設けられている。図17(a)に示す構成にガラス基板403を搭載した例を、図17(b)に示している。
【0169】
なお、図17(a)に示す形態では、突出部405が、上記の四隅の各々において、直線型に形成されており、かつ該直線は、該直線を延伸しても開口部410上を通過しないように形成されている。
【0170】
図18(a)に示す形態では、突出部405が、開口部410を囲繞する略正方形の四隅のみに設けられている。図18(a)に示す構成にガラス基板403を搭載した例を、図18(b)に示している。
【0171】
なお、図18(a)に示す形態では、突出部405が、上記の四隅の各々において、十字型に形成されており、かつ該十字型を構成する各直線は、該直線を延伸しても開口部410上を通過しないように形成されている。
【0172】
上記の各形態に係る構成によれば、接着剤406の使用量を少なくすることが可能となるので、カメラモジュールの製造コストを削減することが可能となる。
【0173】
また、上記の各形態に係る構成によれば、突出部405を設けるための工程を簡略化することが可能であるので、カメラモジュールの製造コストをさらに削減することが可能となる。
【0174】
なお、上記の各形態においては、レンズホルダの平面視が正方形である(すなわち、レンズホルダ402と同様の)場合の例を示したが、レンズホルダの平面視が横長または縦長である(レンズホルダ402Bの構成と同様の)構成であっても同様である。
【0175】
〔当接部に空気抜き溝を形成する実施の形態〕
図19は、当接部404に空気抜き溝418を形成する実施の形態を示す平面図である。
【0176】
空気抜き溝418は、当接部404を断つように形成されており、レンズホルダ402の側壁414に向けて開口する溝である。空気抜き溝418の幅は、接着剤406に含有されるフィラーの径と同程度、すなわち20〜30μm程度であるのが好ましい。
【0177】
空気抜き溝418は、カメラモジュール400の加熱時において、撮像部411にて膨張した空気を、カメラモジュール400の外部へと排出するものである。
【0178】
空気抜き溝418を設け、膨張した空気を排出させることにより、カメラモジュール400では、該膨張した空気がガラス基板403を加圧することに起因する、ガラス基板403の破損を抑制することが可能である。
【0179】
なお、空気抜き溝418を形成すると、空気抜き溝418を通じて、ダストが当接部404より内部に侵入する虞がある。しかしながら、このとき、突出部405を、開口部410を囲繞するように設けることにより、ダストが撮像部411に侵入することを防止することが可能である。
【0180】
また、以上の説明では、レンズホルダ402を備えたカメラモジュール400を例に説明を行ったが、レンズホルダ402Bを備えたカメラモジュール(すなわち、横長または縦長のカメラモジュール)についても、同様のことが言える。
【0181】
〔レンズホルダにガラス基板を接着する別の方法〕
本発明に係るカメラモジュールの製造方法としての、レンズホルダ402にガラス基板403を接着する方法について説明する。
【0182】
図20(a)および(b)は、レンズホルダ402にガラス基板403を接着する別の様子を示す断面図である。
【0183】
図21(a)および(b)は、レンズホルダ402にガラス基板403を接着するさらに別の様子を示す断面図である。
【0184】
図20(a)および(b)は、ガラス基板403に接着剤406を塗布し(図20(a)参照)、ガラス基板403を当接部404に当接させることによって該接着剤406を突出部405に接触させて(図20(b)参照)、ガラス基板403を突出部405に接着する方法を示している。このとき、突出部405と接着剤406とを確実に接触させるため、ガラス基板403に塗布する接着剤406の高さは、当接部404の高さと突出部405の高さとの差より大きくする。
【0185】
また、図21(a)および(b)は、ガラス基板403を当接部404に当接させた状態で(図21(a)参照)、ガラス基板403と突出部405との間隙から、ガラス基板403および突出部405に接着剤406を塗布し(図21(b)参照)、ガラス基板403を突出部405に接着する方法を示している。
【0186】
さらに、図6に示す接着方法が、レンズホルダ402にガラス基板403を接着する方法として挙げられる。
【0187】
上記の各方法によれば、カメラモジュール400における、レンズホルダ402とガラス基板403との接着構造を実現することが可能となる。
【0188】
なお、以上の説明では、レンズホルダ402を備えたカメラモジュール400を例に説明を行ったが、レンズホルダ402Bを備えたカメラモジュール(すなわち、横長または縦長のカメラモジュール)についても、同様のことが言える。
【0189】
〔付記事項〕
従来、ダストが撮像部411の画素内に入らないように、空気を抜くためのエアパス419(例えば、空気抜き溝418)が形成される領域を除いては、開口部410を囲繞するように接着を行う必要があった(図22(a)および(b)参照)。
【0190】
なお、図22(a)は、当接部404および突出部405をいずれも備えていない従来技術に係るレンズホルダ402Cとガラス基板403との接着の様子を示す平面図であり、図22(b)は、図22(a)のb−b´線における断面図である。
【0191】
カメラモジュールの小型化のため、開口部410を囲繞する領域の一部(図23(a)では、該領域における左右の端部)において接着を行わない場合、接着を行わない該領域では、塗布された接着剤406により持ち上げられたガラス基板403との間にダクト420が形成される。このダクト420は、ダストが撮像部411の画素内に入ることを許容するものとなるため、このようなダクト420は形成されるべきでない(図23(a)および(b)参照)。
【0192】
なお、図23(a)は、上記レンズホルダ402Cとガラス基板403との別の接着の様子を示す平面図であり、図23(b)は、図23(a)のc−c´線における断面図である。
【0193】
一方、カメラモジュール400においては、開口部410を囲繞するように当接部404および突出部405の少なくとも一方が設けられている。このため、接着剤406が塗布されていない領域においても、ダストが撮像部411の画素内に入ることを抑制することが可能となる(図24(a)〜(c)参照)。
【0194】
なお、図24(a)は、レンズホルダ402とガラス基板403との接着の様子を示す平面図であり、図24(b)は、図24(a)のd−d´線における断面図であり、図24(c)は、図24(a)のe−e´線における断面図である。
【0195】
また、従来、接着剤406を描画するときに、描画された接着剤406の軌跡が蛇行する虞があったが、突出部405は、接着剤406を狙った位置に描画するための「誘い」の機能を有していると言える。
【0196】
カメラモジュール400は、レンズ401を保持するレンズホルダ402と、レンズホルダ402に接着されるガラス基板403とを備えたカメラモジュールである。レンズホルダ402は、ガラス基板403の位置を決定するためにガラス基板403に当接する当接部404と、ガラス基板403に接着される突出部405とを備えている。当接部404は、ガラス基板403に接着されておらず、突出部405は、当接部404より低く形成されている。
【0197】
上記の構成によれば、当接部404にガラス基板403が当接することにより、ガラス基板403の位置を決定することが可能である。従って、レンズホルダ402へのガラス基板403の接着に関して、ガラス基板403の位置合わせを行うことが可能である。
【0198】
また、上記の構成によれば、レンズホルダ402へのガラス基板403の接着に関して、当接部404より高く形成された部材を、レンズホルダ402またはガラス基板403に設ける必要が無い。つまり、カメラモジュール400は、ガラス基板403を当接部404に当接させるときに、レンズホルダ402またはガラス基板403を押圧する必要が無い。従って、レンズホルダ402に対するガラス基板403の離間距離、およびガラス基板403の傾きがそれぞれ、所望の距離、および角度からずれる虞を低減することが可能である。また、ガラス基板403に導通不良を発生させる要因も削減することが可能である。
【0199】
また、上記の構成によれば、ガラス基板403と当接するレンズホルダ402部分である当接部404は接着されず、該当接部404より低く形成された突出部405が、ガラス基板403と接着される。ガラス基板403を当接部404に当接させた状態では、ガラス基板403と突出部405とが密着しない構成とすることが可能となるため、ガラス基板403と突出部405とを接着すると、これらの間隙に接着剤406が介在する。接着力が非常に大きな(可撓性が非常に小さな)接着剤406を使用しなければ、レンズホルダ402および/またはガラス基板403の熱膨張に起因して発生した応力を、該接着剤406の挙動により吸収することが可能となる。従って、カメラモジュール400においては、ガラス基板403の剥れまたは割れを抑制することが可能である。
【0200】
また、上記の構成によれば、突出部405の頂部に向けてディスペンサ412等の塗布装置により接着剤406を塗布すると、接着剤406は、突出部405の頂部に当たり、そのまま突出部405に付着する。従って、接着剤406は、塗布装置から一定の方向に吐出されていなくても、突出部405の頂部に当たれば一直線に塗布することが可能となる。以上のとおり、突出部405は、接着剤406をレンズホルダ402上に一直線に塗布するための、ガイド機能を有している。従って、カメラモジュール400は、接着剤406の軌跡が蛇行する領域を確保する必要が無いので、小型化が可能となる。
【0201】
なお、「頂部」とは、任意の部材における上端部分を意味する用語であり、該上端部分が点である場合と、該上端部分が線である場合と、該上端部分が面である場合との全てを包含する文言であるものとする。
【0202】
また、上記の構成によれば、カメラモジュール400は、そもそもガラス基板403が当接部404に接着されないように構成されるので、ガラス基板403と当接部404との当接部分に、接着剤406が流れ込むことも無い。従って、接着剤406の主剤のみが該当接部分に濡れ広がることがないので、接着後の硬化が不十分である箇所が発生する虞も、レンズホルダ402とガラス基板403との接着の精度が低下する虞も低減することが可能となる。
【0203】
さらに、上記の構成によれば、突出部405の機能により、接着剤406を一直線に塗布することで、接着剤406の塗布領域を小さくすることが可能となる。これにより、ガラス基板403とレンズホルダ402の側壁414との間に接着剤406が流れる虞は低減されるため、レンズホルダ402とガラス基板403との接着が不十分になる虞を抑制することが可能となる。
【0204】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明は、カメラ付き携帯電話機、デジタルスチルカメラ、セキュリティカメラ等に搭載されており、撮像を行うカメラモジュールおよびその製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0206】
400 カメラモジュール
401 レンズ
402 レンズホルダ
402B レンズホルダ
402C レンズホルダ
403 ガラス基板
404 当接部
405 突出部
405A〜405J 突出部
406 接着剤
407 撮像素子
410 開口部
411 撮像部
414 側壁
417 堰部
418 空気抜き溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持するレンズホルダと、上記レンズホルダに接着されるガラス基板とを備えたカメラモジュールであって、
上記レンズホルダは、上記ガラス基板の位置を決定するために上記ガラス基板に当接する当接部と、上記ガラス基板に接着剤を介して接着される突出部とを備えており、
上記当接部は、上記ガラス基板に接着されておらず、
上記突出部の頂部は、上記ガラス基板と離間されて形成されていることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
上記突出部は、上記レンズホルダの側壁から離間されて設けられており、かつ上記当接部と上記レンズホルダの側壁との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
上記突出部は、上記ガラス基板の面と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
上記突出部は、上記突出部が突出する方向に沿った断面における幅が、底部から頂部に向かって小さくなる形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
上記突出部は、頂部が鋭利な形状であることを特徴とする請求項4に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
上記突出部は、頂部が丸みを帯びた形状であることを特徴とする請求項4に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
上記突出部は、頂部が平面を含む形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項8】
上記突出部は、頂部が窪みを有する形状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項9】
上記レンズホルダには、上記レンズと上記ガラス基板との間に、上記レンズを通過した光を上記ガラス基板に入射させるための開口部が形成されており、
上記当接部および上記突出部のうちの少なくとも一方は、上記開口部を囲繞するように形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項10】
上記レンズホルダには、上記レンズと上記ガラス基板との間に、上記レンズを通過した光を上記ガラス基板に入射させるための開口部が形成されており、
上記突出部は、上記開口部を挟んで互いに対向する2箇所に設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項11】
上記ガラス基板を透過した光を受光する撮像素子を少なくとも備えた撮像部を備えており、
上記レンズホルダは、上記撮像部に存在する空気を上記カメラモジュールの外部に排出するための、上記当接部が断たれて成る空気抜き溝を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項12】
上記当接部および上記突出部は、いずれも直線に伸びる形状であり、かつ互いに平行であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項13】
上記レンズホルダは、上記当接部と上記突出部との間に、上記当接部より低く形成された堰部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のカメラモジュールを製造する、カメラモジュールの製造方法であって、
上記突出部に接着剤を塗布する工程と、
上記ガラス基板を上記当接部に当接させると共に、上記ガラス基板と上記突出部とを上記接着剤により接着する工程とを含み、
上記突出部に塗布された上記接着剤の頂部を、上記当接部の頂部より高くすることを特徴とするカメラモジュールの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のカメラモジュールを製造する、カメラモジュールの製造方法であって、
上記ガラス基板に接着剤を塗布する工程と、
上記ガラス基板を上記当接部に当接させると共に、上記ガラス基板と上記突出部とを上記接着剤により接着する工程とを含み、
上記ガラス基板に塗布された上記接着剤の高さを、上記当接部の高さと上記突出部の高さとの差より大きくすることを特徴とするカメラモジュールの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のカメラモジュールを製造する、カメラモジュールの製造方法であって、
上記ガラス基板を上記当接部に当接させる工程と、
上記当接部に当接させた上記ガラス基板と、上記突出部との間隙から、該ガラス基板および突出部に接着剤を塗布する工程とを含むことを特徴とするカメラモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−189910(P2012−189910A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54806(P2011−54806)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】