説明

カラオケネットワークシステム及びカラオケ装置

【課題】コンテンツサービスのバックグラウンドでコンテンツの送受信を行う際に、実行中のコンテンツサービスに不具合を生じさせず、かつ、カラオケ装置間で円滑にコンテンツの送受信を行う。
【解決手段】コンテンツ未取得のカラオケ装置4b(要求側)は、他のカラオケ装置4a,4c,4d(被要求側)から未来に実行予定のコンテンツサービスの処理負荷に関する予測占有値を取得し、それぞれの予測占有値に応じた予測通信速度を算出する。要求側のカラオケ装置4bは、被要求側の各カラオケ装置4a,4c,4dの中から、配信状況が「取得済み」で、かつ自カラオケ装置4bの予測通信速度と直近の予測通信速度となるカラオケ装置4cを配信元に選択し、その選択した被要求側のカラオケ装置4cに対してコンテンツの配信要求を行う。これに応じて被要求側のカラオケ装置4cから要求側のカラオケ装置4bに対してコンテンツの配信が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して相互に接続された複数のカラオケ装置間でコンテンツの送受信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラオケサービスを提供するカラオケ装置では、利用客の趣味・嗜好の多様化に対応するため、多彩なコンテンツサービスが複合して実行されるようになっている。具体的には、MIDI音源やサンプリング音源(いわゆる生音楽曲)等の音声再生サービス、背景動画や、CM動画、プロモーションビデオ等の映像再生サービス、利用客の歌唱に対する採点やゲーム等の演出サービス、利用客に対してネットワーク空間内での擬似的な姿形を与えるいわゆる「アバター」等の表示サービスといったものが挙げられる。
【0003】
さらに、それぞれのコンテンツサービスにおいて、その利用頻度や人気度合に応じて、高品質(高ビットレート)のコンテンツを用意したり、アバターサービス向けのパーツやアイテムを充実させ、これらを多数表示可能にしたりといった具合に、サービス内容に応じてサイズの大きいコンテンツサイズが存在したり、サービス実行時における演算処理負荷の大きいコンテンツが増えている。
【0004】
また、上述のようなコンテンツの多様化や高品質化、利用者ごとの専用化等により、カラオケ装置で利用されるコンテンツは膨大な量となっている。これらのコンテンツは、一般的に、ブロードバンド回線を用いてコンテンツ配信用のホストサーバから各カラオケ店舗内の特定のカラオケ装置(マスタ機)に配信される(この処理を一次配信という)。つぎに、カラオケ店舗内のマスタ機以外のカラオケ装置(スレイブ機)は、マスタ機もしくはコンテンツの取得によりマスタ機と同等のコンテンツを保有するに至った他のスレイブ機から店舗内のLANを介してコンテンツを受信することで、マスタ機と同等のコンテンツを保有する状態になる(この処理を等価処理という)。このように、ホストサーバから各カラオケ店舗のマスタ機への一次配信と、カラオケ店舗内での等価処理を経ることで、市場全てのカラオケ装置に対するコンテンツの配信が実現する。
【0005】
また、ネットワークを介して相互に接続されたカラオケ装置間で大量のコンテンツを送受信するのに好適な手法として、ピアツーピア(Peer to Peer)型のファイル交換を行う技術も案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−197400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の一次配信や等価処理といったコンテンツの送受信に関する処理は、利用客からの操作によって制御される機能ではなく、例えば1日1回、カラオケサービスの利用状況の如何に関わらずバックグラウンドで動作する処理である。しかしながら、コンテンツの多様化や複合化により、コンテンツサービス実行による処理負荷の度合が高くなっている状況下において、バックグラウンドで一次配信や等価処理を行うと、その通信負荷の影響で実行中のコンテンツサービスに不具合が生じることがある。
【0008】
不具合としては、例えば、カラオケ楽曲の演奏中における音飛びや、動画やアバターの表示における遅延やコマ落ちといった現象がある。これらの現象は、カラオケ装置のCPUの演算処理能力の不足に起因するものであり、コンテンツサービスによる処理負荷に加えて一次配信や等価処理による処理負荷が加わることで、CPUの演算処理能力が一定時間に要求される計算量を満たせなくなる状態になることで発生する。
【0009】
カラオケサービスで提供されるコンテンツのように高いエンターテイメント性を求められるコンテンツでは、その実行中に上記のような不具合が発生すると、エンターテイメント性そのものが著しく低下してしまい、好ましくない。このような問題を解決するために、従来、利用客がコンテンツサービスを利用しているときには、一次配信や等価の処理を行わないようにし、利用客がコンテンツサービスを利用していないときに限り、一次配信や等価の処理を行うように制御し、コンテンツサービスの実行に支障をきたさないようにしていた。
【0010】
しかしながら、近年、各カラオケ装置に配信すべきコンテンツのデータ量は飛躍的に増加しており、利用客がコンテンツサービスを利用していない期間に限定して一次配信/等価処理を行っていたのでは、全てのコンテンツを配信するために必要な時間としては不十分になりつつある。そのため、一部のコンテンツが必要な時期までに全てのカラオケ装置に行き渡らないといった別の問題も発生している。このような情勢により、カラオケサービスを実行中であっても、コンテンツの一次配信や等価処理を行わざるを得ない状況になってきている。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、実行中のコンテンツサービスのバックグラウンドでコンテンツの送受信を行う際に、実行中のコンテンツサービスに不具合を生じさせず、かつ、カラオケ装置間で円滑にコンテンツの送受信を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のカラオケネットワークシステムは、複数のカラオケ装置がネットワークを介して通信可能に接続され、コンテンツサービスの実行中にカラオケ装置間でコンテンツの送受信を行うものである。
【0013】
本発明のカラオケネットワークシステムを構成するカラオケ装置は、自カラオケ装置が今後に実行を予定しているコンテンツサービスによる演算処理能力の占有度合の未来予測値を取得する占有度予測手段を備える。例えば、自カラオケ装置が保有するコンテンツに予め設定されている演算処理能力の占有度合(以下、処理占有度とも称する)を各コンテンツに対応付けて記憶装置等に保有しておく。そして、現在において実行を予定しているコンテンツの実行スケジュールを管理するための予約情報として登録されているコンテンツに該当の処理占有度を、記憶装置から読出すような方法が考えられる。
【0014】
この方法の場合、各コンテンツに対応する処理占有度は、コンテンツのビットレートやメモリ使用量といった物理量に基づいて設定したり、さらに、利用客に対するコンテンツの重要度等を加味して処理占有度の高低を決めることが考えられる。また、カラオケ装置がこれらの処理占有度を取得する方法としては、コンテンツ配信時に、配信側の装置からコンテンツのデータと共に処理占有度を配信したり、各カラオケ装置が外部の管理サーバ等から個別に取得するといった方法が考えられる。また、別の取得方法として、コンテンツサービスを実行中に自カラオケ装置のCPUの使用率を測定し、その測定結果を処理占有度として利用するものであってもよい。
【0015】
また、占有度合の未来予測値としては、例えば、実行を予定している複数のコンテンツサービスにおける処理占有度の平均としてもよいし、ある特定の時間帯に実行を予定しているコンテンツサービス処理占有度としてもよい。
【0016】
加えて、カラオケ装置は、他の被要求側のカラオケ装置からコンテンツを取得する要求側のカラオケ装置として実行する処理に関する構成として、算出手段と、要求側取得手段と、選択手段と、コンテンツ取得手段とを備える。
【0017】
算出手段は、自カラオケ装置の処理占有度合の未来予測値に相関する通信速度として、処理占有度合の未来予測値が小さいほど通信速度が大きくなり、処理占有度合の未来予測値が大きいほど通信速度が小さくなるように通信速度を算出する。要求側取得手段は、複数の他の被要求側のカラオケ装置から、各個の占有度関連値を取得する。選択手段は、占有度予測手段により取得した自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値に基づく所定の占有度関連値と、要求側取得手段により取得した被要求側のカラオケ装置の占有度関連値とに基づいて、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の占有度関連値に基づいて特定する所定の通信条件の度合が自カラオケ装置のものと直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択する。コンテンツ取得手段は、選択手段により選択したコンテンツ取得要求先のカラオケ装置から、算出手段により算出した通信速度によってコンテンツを取得する。
【0018】
さらに、カラオケ装置は、他の要求側のカラオケ装置からの要求に応答する被要求側のカラオケ装置として実行する処理に関する構成として、被要求側送信手段と、コンテンツ送信手段とを備える。
【0019】
被要求側送信手段は、要求側のカラオケ装置から占有度関連値の取得要求があった場合、占有度予測手段により取得した自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値に基づく所定の占有度関連値を当該要求側のカラオケ装置に対して送信する。コンテンツ送信手段は、要求側のカラオケ装置からコンテンツの取得要求があった場合、当該要求側のカラオケ装置の決定した通信速度でコンテンツを送信する。
【0020】
このように構成されたカラオケネットワークシステムによれば、コンテンツの取得を要求する要求側のカラオケ装置において、コンテンツを取得するための通信が実際に行われる未来において実行が予定されているコンテンツサービスによる処理占有度の未来予測値に応じた通信速度で、コンテンツを取得することができる。なお、ここでいう「処理占有度に応じた通信速度」とは、実行が予定されているコンテンツサービスに悪影響を及ぼさない程度の処理負荷で発揮できる通信速度であることが肝要である。それは必然的に、コンテンツサービスによる処理占有度が小さいほど通信速度は大きく、処理占有度が大きいほど通信速度が小さいという相関性を持っていることになる。このようにすることで、コンテンツサービスを実行中のカラオケ装置がバックグラウンドでコンテンツを取得する際、コンテンツサービスの実行に支障をきたすことなく、カラオケ装置間で効率よくコンテンツを送受信できる。
【0021】
なお、要求側のカラオケ装置が自ら決定した通信速度を満足してコンテンツを取得するためには、その取得先となる被要求側のカラオケ装置の選定が重要である。もし、要求側のカラオケ装置が自ら決定した通信速度を単純に満足させるだけでよければ、自カラオケ装置よりも通信条件の良好なカラオケ装置、すなわち、処理占有度が比較的に小さく、コンテンツサービスの実行に支障をきたさない範囲で高い通信速度を発揮できるカラオケ装置を選択すればよい。
【0022】
しかしながら、要求側のカラオケ装置が発揮できる通信速度に対して、被要求側のカラオケ装置が発揮できる通信速度があまりに大きい場合、いくら被要求側のカラオケ装置に余力があっても、結局、要求側のカラオケ装置が発揮できる通信速度でコンテンツの送受信が行われることになる。このような場合、被要求側のカラオケ装置にある余力は、他のカラオケ装置に対するコンテンツの送信に活用されることはなく、無駄になる。
【0023】
つまり、通信速度の小さい要求側のカラオケ装置が、分不相応に通信速度が大きい被要求側のカラオケ装置をコンテンツの取得先に選んでしまうことで、本来であれば通信速度がもっと大きい他の要求側のカラオケ装置がコンテンツ取得先として選択できるはずであったカラオケ装置を無駄に占有してしまうことになる。このような事態は、ネットワーク全体でコンテンツを迅速に配信するという観点からみれば非効率である。
【0024】
そこで、このような無駄を発生させないために、要求側のカラオケ装置は、複数の被要求側のカラオケ装置における通信条件の度合が自カラオケ装置のものと直近である被要求側のカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択する。なお、ここでいう通信条件の度合とは、カラオケ装置が処理占有度に応じて発揮できる通信速度を示すものであってもよいし、カラオケ装置が処理占有度に応じて発揮できる通信速度を類推し得る別の指標(例えば、処理占有度そのもの)であってもよい。
【0025】
よって、要求側のカラオケ装置は、自カラオケ装置の通信条件(例えば処理占有度や通信速度)とほぼ対等な通信条件の被要求側のカラオケ装置をコンテンツの取得先として選択できる。これにより、要求側のカラオケ装置が自ら決定した通信速度を満足させつつ、処理占有度に応じて発揮できる通信能力に無駄な余力を生じさせることなくコンテンツを取得できる。また、ネットワーク全体でコンテンツを迅速に配信するという観点からみても効率的である。
【0026】
つぎに、請求項2に記載のカラオケネットワークシステムは、以下の特徴を有する。まず、要求側のカラオケ装置としての構成として、算出手段により算出した通信速度と、他のカラオケ装置から取得予定のコンテンツのデータ量とに基づき、当該コンテンツの取得にかかる推定の通信時間を算出する通信時間推定手段を更に備える。そして、要求側取得手段は、通信時間推定手段により算出した通信時間を示す情報を含む取得要求を被要求側のカラオケ装置に対して送信して、占有度関連値を取得する。また、被要求側のカラオケ装置としての構成として、要求側のカラオケ装置から占有度関連値の取得要求があった場合、占有度予測手段は、現時点から、当該取得要求に含まれる通信時間の情報で示される時間長分だけ先までの期間に実行を予定しているコンテンツサービスによる演算処理能力の占有度合の未来予測値を取得する。
【0027】
このような構成によれば、処理占有度の未来予測値の算出対象を、コンテンツを取得するための通信期間と推定される期間に実行される予定のコンテンツに限定することができる。このようにすることで、コンテンツを取得するための通信期間から実行時期が外れるコンテンツは処理占有度の未来予測値の算出対象から除外されるため、コンテンツを取得するための通信期間における処理占有度の未来予測値を精度よく算出できる。
【0028】
つぎに、請求項3では、被要求側のカラオケ装置から要求側のカラオケ装置へ送信する占有度関連値の内容を更に具体的にした。すなわち、被要求側のカラオケ装置としての構成について、被要求側送信手段は、占有度関連値として、自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値を当該要求側のカラオケ装置に対して送信する。一方、要求側のカラオケ装置としての構成について、選択手段は、複数の被要求側のカラオケ装置から取得した処理占有度合の未来予測値に基づき、それら被要求側のカラオケ装置の処理占有度合の未来予測値に相関する通信速度として、処理占有度合の未来予測値が小さいほど通信速度が大きくなり、処理占有度合の未来予測値が大きいほど通信速度が小さくなるように、被要求側の各カラオケ装置の通信速度を算出する。そして、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の通信速度が自カラオケ装置の通信速度と直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択する。このような構成によれば、要求側カラオケ装置で各個の処理占有度の未来予測値に応じた通信速度が対等なカラオケ装置をコンテンツの取得先に選定できる。
【0029】
一方、請求項4では、請求項3に記載のものとは別の内容で、被要求側のカラオケ装置から要求側のカラオケ装置へ送信される占有度関連値の内容を更に具体的にした。すなわち、被要求側のカラオケ装置としての構成について、被要求側送信手段は、占有度関連値として、算出手段により算出した自カラオケ装置における通信速度を当該要求側のカラオケ装置に対して送信する。一方、要求側のカラオケ装置としての構成について、選択手段は、複数の要求側のカラオケ装置から取得した通信速度に基づき、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の通信速度が自カラオケ装置の通信速度と直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択する。このように、被要求側のカラオケ装置が各個の処理占有度の未来予測値に応じた通信速度を要求側のカラオケ装置に通知する方法によっても、通信速度が対等なカラオケ装置をコンテンツの取得先に選定できる。
【0030】
ところで、要求側のカラオケ装置の発揮できる通信速度と直近の通信速度を発揮できる被要求側のカラオケ装置をコンテンツの取得先に選定する場合、最善の条件は互いの通信速度が同一となる取得先を選択することである。この場合、要求側のカラオケ装置で決定した通信速度を満足させつつ、処理占有度に応じて発揮できる通信能力に無駄な余力を出さずにコンテンツを送受信できる。しかし、要求側のカラオケ装置と通信速度が同一となる被要求側のカラオケ装置が存在しない場合、次善策として、要求側のカラオケ装置よりも通信速度が大きいカラオケ装置の中で最も通信速度の小さいカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択することが考えられる(請求項5)。
【0031】
もし、要求側のカラオケ装置と通信速度が同一となる被要求側のカラオケ装置が存在しないのであれば、要求側のカラオケ装置の通信速度を満たした状態でコンテンツを取得するためには、要求側のカラオケ装置よりも通信速度の大きい被要求側のカラオケ装置を取得先に選択すればよい。これに加えて、要求側のカラオケ装置よりも通信速度の大きい被要求側のカラオケ装置の中で、通信速度の最も小さいカラオケ装置を取得先に選ぶことで、要求側のカラオケ装置の通信速度を満たしながらも無駄な余力を極力出さない。
【0032】
つぎに、請求項6に記載のカラオケ装置は、請求項1に記載のカラオケネットワークシステムを構成するカラオケ装置である。このカラオケ装置によれば、上記カラオケネットワークシステムを構築することができ、これにより上述した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】カラオケネットワークシステム1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】各カラオケ装置4におけるコンテンツサービス実施予定を示す説明図である。
【図3】カラオケ装置4同士による通信の手順を示すラダーチャートである。
【図4】予測占有値に応じた予測通信速度の算出方法等を示す説明図である。
【図5】サービス状況送信依頼処理、サービス状況返信処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】配信元選択処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[カラオケネットワークシステム1の構成の説明]
図1に示すように、カラオケネットワークシステム1は、カラオケサービスを提供するカラオケ店舗内に敷設されたLAN100を介して、各部屋に設置された複数のカラオケ装置4a〜4dが接続された構成を有する。また、カラオケネットワークシステム1は、広域ネットワークであるインターネット200を介してホストサーバ2と接続されている。図1においては、4台のカラオケ装置がネットワークを構成している事例を示すが、同一店舗内に更に多くのカラオケ装置4が接続されていてもよい。なお、以下の説明において、カラオケ装置4a〜4dを特に区別しない場合は、単にカラオケ装置4と表記する。
【0035】
ホストサーバ2は、カラオケ店舗内の特定のカラオケ装置4(マスタ機という)に対してカラオケ等の音声再生サービス、背景動画や、CM動画、プロモーションビデオ等の映像再生サービス、アバター等の表示サービス等といった、利用客向けの各種コンテンツを定期的に配信するカラオケサービス用のサーバ装置である。なお、ホストサーバ2からカラオケ店舗のマスタ機へのコンテンツの配信(一次配信)は、定期的(例えば1日1回)に行われる。このホストサーバ2は、適宜な処理能力を有する情報処理装置等で構成されており、外部記憶装置としてのハードディスクドライブ(以下、HDD)に利用客向けのサービスとして提供可能な全てのコンテンツを常に保有している。また、ホストサーバ2は、インターネット200及びカラオケ店舗側のルータ装置120を介して、カラオケ店舗側のLAN100に接続されている。
【0036】
ルータ装置120は、異なるネットワーク間を相互接続する通信機器である。このルータ装置120は、外部ネットワークであるインターネット200と、内部ネットワークであるLAN100との接続点に設置されており、LAN100側からの通信をインターネット200側に送出し、インターネット200側からの通信をLAN100側に送出する。
【0037】
カラオケ装置4は、ホストサーバ2から配信された利用客向けのコンテンツを各自のHDD44に保有しており、この保有するコンテンツを再生する装置である。なお、各カラオケ装置4a,4b,4c,4dには、それぞれ固有の識別情報であるシリアル番号X00001,X00002,X00003,X00004が割当てられているものする。
【0038】
カラオケ装置4は、ハードウェア構成としてCPU41、RAM42、ROM43、HDD44、表示部45、再生部46、入力部47、LAN通信部48等を備える。
CPU41は、RAM42やROM43に記憶されたプログラムやデータに従って、カラオケ装置4各部に対する制御及び各種演算を実行する装置で、コンテンツ配信元のカラオケ装置4を選定するための後述の各種処理は、このCPU41によって実行される。RAM42は、CPU41から直接アクセスされるメインメモリ等として利用される記憶装置である。なお、後述のサービス実施予定のテーブルもここで記憶・管理される。ROM43は、不揮発性の記憶装置であり、通常は更新されない読み出し専用のデータ等を記憶している。HDD44は、音声再生や、映像再生、アバター表示等の利用客向けのコンテンツデータやプログラム等の各種データを保存しておくための装置である。
【0039】
表示部45は、カラオケの歌詞テロップや背景画像、各種映像等を表示するためのモニタ装置である。再生部46は、演奏データに基づく演奏再生を行うMIDI音源、MIDI音源から生成されたオーディオ信号及び入力部47から入力された音声信号をスピーカへ出力する音声制御部、画像データに基づく映像の再生を制御する映像再生部を備える。入力部47は、マイクロフォンによって歌唱者の歌唱音声を音声信号へ変換し、再生部46へ入力するためのものである。LAN通信部48は、カラオケ装置4をLAN100に接続して外部と通信を行うための通信インタフェースである。
【0040】
各カラオケ装置4が保有するコンテンツの配信手順は次のとおりである。まず、カラオケ店舗内の複数のカラオケ装置4のうちホストサーバ2との通信権限があるマスタ機に対してホストサーバ2からコンテンツが一次配信される。一次配信が行われると、カラオケ店舗内の各カラオケ装置4に対して新たに配信されたコンテンツを各自に取得させるための指示がなされる。つづいて、マスタ機からマスタ機以外のカラオケ装置4(スレイブ機)に対してコンテンツの配信が行われる(等価処理)。また、等価処理によりマスタ機と同等のコンテンツを保有するに至ったスレイブ機からも、コンテンツ未取得の他のスレイブ機に対する等価処理が行われる。なお、カラオケ装置4同士によるコンテンツの配信は、コンテンツ要求側のカラオケ装置4から配信元のカラオケ装置4に対して配信要求が行われることで成立する。カラオケ装置4同士で行われる等価処理が完了すると、カラオケ店舗内の全てのスレイブ機がマスタ機と同等のコンテンツを保有する状態になる。
【0041】
等価処理は、カラオケ装置4が利用客向けのコンテンツサービスを実行状況中であってもバックグラウンドで動作する処理である。そのため、本実施形態のカラオケ装置4では、等価処理で行われる通信による処理負荷が、利用客に向けて実行中のコンテンツサービスに悪影響を及ぼさないようにするための対策が行われる。
【0042】
具体的には、各カラオケ装置4は、実行を予定しているコンテンツサービスによる処理負荷を示す値を、サービス占有値と称する指標として管理している。ここでいうサービス占有値とは、同時期に並行して実行するまとまったコンテンツサービスごとに、各個のコンテンツを実行する際の演算処理能力の占有度合(コンテンツ占有値と称する)を合計した値である。
【0043】
コンテンツ占有値は、各個のコンテンツごとに予め設定された値を用いることが考えられる。この場合、カラオケ装置4が保有するコンテンツに対応するコンテンツ占有値をHDD44に記憶しておき、再生の予約状況に応じて読出すように構成すればよい。
【0044】
コンテンツ占有値は、例えば、コンテンツのビットレートやメモリ使用量、実際に再生したときの処理負荷の実測値といった物理量に基づいて設定することが考えられる。また、これらの物理量に加え、コンテンツの人気や需要、重要度といった人為的な要素を加味してその高低度合を決めてもよい。また、コンテンツ占有値の設定は、例えば、コンテンツをカラオケネットワークシステム1に流通させる前の段階で設定しておけばよい。その場合、各カラオケ装置4にコンテンツ占有値を流通させる方法としては、ホストサーバ2からの一次配信やカラオケ装置4間の等価処理の際に、配信側の装置からコンテンツのデータと共にコンテンツ占有値を配信したり、各カラオケ装置4がホストサーバ2から個別に取得することが考えられる。
【0045】
等価処理での取得対象となるコンテンツを取得する要求側のカラオケ装置4は、コンテンツのダウンロードが行われる未来において実行を予定しているコンテンツのサービス占有値から予測される予測占有値に応じた予測通信速度を算出し、その予測通信速度で被要求側のカラオケ装置4からコンテンツを取得する。ここでいう「予測占有値に応じた予測通信速度」とは、ダウンロード中に実行するコンテンツサービスに悪影響を及ぼさない程度の処理負荷で発揮できる通信速度の予測値であり、所定の算出方法(後述)に基づいて、予測占有値が小さいほど通信速度は大きく、予測占有値が大きいほど通信速度は小さくなるように算出される。さらに、要求側のカラオケ装置4は、他のカラオケ装置4からコンテンツを取得するにあたって、自カラオケ装置4の予測通信速度となるべく近い通信速度を発揮できるカラオケ装置4を特定し、そのカラオケ装置4をコンテンツの配信元として選択する。なお、これらの処理の詳細な内容については後述する。
【0046】
[カラオケ装置4が管理するサービス実施予定テーブルの説明]
つぎに、カラオケ装置4が管理するデータの概要について、図2に基づき説明する。
各カラオケ装置4は、利用客によって予約されたコンテンツや、予約のない空き時間に所定のスケジュールに沿って自動再生されるコンテンツといった、自カラオケ装置4で実行中及び実行を予定しているコンテンツごとに、各コンテンツによるサービス占有値、及び実行時間等の情報をサービス実施予定テーブルとしてRAM42に記憶している。このサービス実施予定テーブルは、同時に並行して実行する音声、映像、その他の複数のサービスをひとまとまりのコンテンツとし、そのコンテンツに関する所定の情報を実行順に羅列したものである。図2に示すテーブルは、各カラオケ装置4a〜4dにおけるサービス実施予定テーブルの一例である。
【0047】
例えば、カラオケ装置4aのサービス実施予定テーブルでは、現在のところ、コンテンツサービスの実行が何も予定されていない状況を想定しており、この時点でのサービス占有値は0となっている。
【0048】
カラオケ装置4bのサービス実施予定テーブルでは、最上位に現在実行中あるいは直近に実行する予定のコンテンツとして、CM3番の生音(音声)、CM動画A(映像)、アバターα(その他)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値(各コンテンツ占有値の合計)は70で、実行時間は260秒間である。また、2番目に実行する予定のコンテンツとして、CM4番の生音(音声)、CM動画B(映像)、アバターα(その他)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は50で、実行時間は20秒間である。また、3番目に実行する予定のコンテンツとして、CM5番の生音(音声)、CM動画C(映像)、アバターβ(その他)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は80で、実行時間は130秒間である。それ以降の実施予定については図示を省略している。
【0049】
カラオケ装置4cのサービス実施予定テーブルでは、最上位に現在実行中あるいは直近に実行する予定のコンテンツとして、選曲番号7番のMIDI及び選曲番号7番の生音(音声)、並びに選曲番号7番の歌詞テロップ及びPVクリップ7番(映像)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は68で、実行時間は300秒間である。また、2番目に実行する予定のコンテンツとして、選曲番号13番のMIDI及び選曲番号13番の生音(音声)、並びに選曲番号13番の歌詞テロップ及び背景動画A(映像)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は60で、実行時間は280秒間である。また、3番目に実行する予定のコンテンツとして、選曲番号2番のMIDI、並びに選曲番号2番の歌詞テロップ及び背景動画B(映像)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は35で、実行時間は360秒間である。それ以降の実施予定については図示を省略している。
【0050】
カラオケ装置4bのサービス実施予定テーブルでは、最上位に現在実行中あるいは直近に実行する予定のコンテンツとして、CM17番の生音(音声)、CM動画D(映像)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は35で、実行時間は200秒間である。また、2番目に実行する予定のコンテンツとして、CM18番の生音(音声)、CM動画E(映像)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は40で、実行時間は130秒間である。また、3番目に実行する予定のコンテンツとして、CM19番の生音(音声)、CM動画F(映像)のセットが登録されている。このコンテンツによるサービス占有値は70で、実行時間は120秒間である。それ以降の実施予定については図示を省略している。
【0051】
[カラオケ装置4同士で行われるコンテンツ配信の手順の説明]
つぎに、カラオケ装置4同士で行われるコンテンツ配信に関する一連の処理の流れを、図3のラダーチャートに基づいて説明する。
【0052】
図3においては、カラオケ装置4a,4cが配信対象のコンテンツを取得済みで、カラオケ装置4b,4dが配信対象のコンテンツを未取得であるとの状況を想定している。
ここでは、コンテンツを未取得であるカラオケ装置4bからコンテンツの取得を開始するものとする。カラオケ装置4bは、まず、LAN100に接続している他の全てのカラオケ装置4a,4c,4dに対して、各自の予測占有値の送信を依頼する。この依頼に応じて各カラオケ装置4a,4c,4dでは、各自のサービス実施予定テーブル(図2)に基づいて予測占有値が算出され、算出した予測占有値、シリアル番号、及び配信状況を含んだ情報が要求側のカラオケ装置4bへ返信される。
【0053】
なお、予測占有値とは、サービス実施予定テーブルにおいて、この先に実行を予定している複数のコンテンツにおけるサービス占有値の平均値とすることが一例として挙げられる。その場合、サービス実施予定テーブルにおいて実行を予定している全てのコンテンツを対象に、それらのサービス占有値の平均値を予測占有値として算出することが考えられる。あるいは、配信対象のコンテンツをダウンロードするために要する通信期間と推定される時間長分だけ先までの期間に実行を予定しているコンテンツのみを対象に、それらのサービス占有値の時間平均値を予測占有値として算出してもよい。本実施形態では、コンテンツをダウンロードするために要する通信期間を考慮した予測占有値の算出方法(後者)を採用するものとする。
【0054】
カラオケ装置4bは、被要求側の各カラオケ装置4a,4c,4dから予測占有値を取得すると、各カラオケ装置4a,4c,4dについてそれぞれの予測占有値に応じた予測通信速度を算出する。なお、本実施形態における予測通信速度は、図4(a)に示す式のとおり、通信速度の最大値(一例として、100Mbps)から予測占有値を減算した値として算出する。そして、このときの各カラオケ装置4a,4b,4c,4dの配信状況、予測占有値、予測通信速度の一覧を図4(b)に示す。なお、この事例における予測占有値は、コンテンツのダウンロードに要する時間を300秒間であると想定し、現時点から300秒の間に実行が予定されている各コンテンツによるサービス占有値の時間平均値を算出したものである。
【0055】
図3のラダーチャートの説明に戻る。要求側のカラオケ装置4bは、被要求側の各カラオケ装置4a,4c,4dの中から、配信状況が「取得済み」で、かつ自カラオケ装置4bの予測通信速度と直近となるカラオケ装置4を配信元に選択する。ただし、自カラオケ装置4bの予測通信速度より速いカラオケ装置4と遅いカラオケ装置4とでは、速い方のカラオケ装置4を優先して配信元に選択する。ここでは、カラオケ装置4bの予測通信速度31に対して直近上位の予測通信速度32で通信可能なカラオケ装置4cが配信元として選択される。
【0056】
要求側のカラオケ装置4bは、配信元に選択したカラオケ装置4cに対してコンテンツの配信要求を行う。これに応じてカラオケ装置4cからカラオケ装置4bに対してコンテンツの配信が開始される。コンテンツの配信を開始すると、カラオケ装置4b,4cは各自の配信状況を「通信中」に変更する。配信状況が通信中となっている間は、他のカラオケ装置4との間でコンテンツの配信は行わない。なお、コンテンツの配信が終了すると、カラオケ装置4b及びカラオケ装置4cの配信状況は、共に取得済みとなる。
【0057】
つづいて、カラオケ装置4b,4c間でコンテンツ配信が行われている最中に、カラオケ装置4dがコンテンツの取得を開始する場合を想定する。カラオケ装置4dは、他の全てのカラオケ装置4a,4b,4cに対して、各自の予測占有値の送信を依頼する。この依頼に応じて各カラオケ装置4a,4b,4cから、各自のシリアル番号、予測占有値、及び配信状況を含んだ情報が要求側のカラオケ装置4dへ送信される。
【0058】
カラオケ装置4dは、被要求側の各カラオケ装置4a,4b,4cから予測占有値を取得すると、各カラオケ装置4a,4b,4cについてそれぞれの予測通信速度を算出する。そして、その中から、配信状況が「取得済み」で、かつ自カラオケ装置4dの予測通信速度と直近となるカラオケ装置4を配信元に選択する。なお、カラオケ装置4cは、コンテンツを取得済みであったものの、この時点ではカラオケ装置4bとの間で通信中であるため、カラオケ装置4dに対するコンテンツの配信元の候補から外れる。
【0059】
ここでは、カラオケ装置4dの予測通信速度63に対して直近上位の予測通信速度100で通信可能なカラオケ装置4aが配信元として選択される。カラオケ装置4dは、配信元に選択したカラオケ装置4aに対してコンテンツの配信要求を行う。これに応じてカラオケ装置4aからカラオケ装置4dに対してコンテンツの配信が開始される。
【0060】
[要求側・被要求側の各カラオケ装置4が実行する処理の説明]
つぎに、各カラオケ装置4が、要求側及び被要求側の機能としてそれぞれ実行する処理の手順について、図5のフローチャートに基づき説明する。なお、図5(a)はサービス状況送信依頼処理のフローチャートであり、図5(b)はサービス状況返信処理のフローチャートである。これらの処理は、各カラオケ装置4内においてコンテンツサービスに係る処理のバックグランドで並行して実行される。
【0061】
まず、図5(a)のサービス状況送信依頼処理について説明する。カラオケ装置4のCPU41は、自カラオケ装置4におけるコンテンツの配信状況が未取得であるか否かを判定する(S101)。配信状況が「未取得」である場合(S101:YES)、S102の処理へ進み、配信状況が「取得済み」の場合(S101:NO)、本処理を終了する。
【0062】
配信状況が未取得である場合に進むS102では、自カラオケ装置4のサービス実施予定テーブル(図2)に基づいて、予測占有値を算出すると共に、その予測占有値に応じた予測通信速度を算出する。その算出手順の一例として次の(1)〜(4)の手順を挙げる。
【0063】
(1)サービス実施予定テーブルにおける実行順の早い1又は複数コンテンツのサービス占有値に応じて、暫定の通信速度を算出する。なお、暫定の通信速度は通信速度の最大値(100Mbps)からサービス占有値の平均値を差し引いた値として算出する。(2)算出した暫定の通信速度と配信対象のコンテンツのデータ量とから、コンテンツのダウンロードに要する時間(以下、ダウンロード時間とも称する)の暫定値を算出する。なお、ダウンロード時間の暫定値は、コンテンツのデータ量を暫定の通信速度で割った値として算出する。(3)サービス実施予定テーブルにおけるコンテンツの実行時間に基づき、暫定のダウンロード時間に該当の期間に実行される予定のコンテンツのみを対象に、それらのサービス占有値の時間平均値を予測占有値として算出する。(4)通信速度の最大値から予測占有値を減算して予測通信速度を算出する。
【0064】
つぎに、S103では、S102算出した予測通信速度と配信対象のコンテンツのデータ量とから、ダウンロード時間の正確な推測値を算出する。なお、ダウンロード時間の推測値は、コンテンツのデータ量を予測通信速度で割った値として算出する。S104では、LAN100を介して通信可能な他の全てのカラオケ装置4(被要求側)に対して、各自の予測占有値の送信を依頼する。この送信依頼には、要求元のカラオケ装置4のシリアル番号や、S103で算出したダウンロード時間を示す情報が含まれる。
【0065】
そして、被要求側のカラオケ装置4から送信依頼に対する返信を受信したか否かを判定する(S105)。返信を受信した場合(S105:YES)、返信内容をRAM42に保存し(S106)、S105の処理へ戻る。一方、返信を受信していない場合(S105:NO)、被要求側のカラオケ装置4に対して送信依頼を行った時点から返信を待つための所定時間が経過したか否かを判定する(107)。所定時間が経過していない場合(S107:NO)、S105の処理へ戻って更に返信を待つ。所定時間が経過している場合(S107:YES)、本処理を終了する。
【0066】
つぎに、図5(b)のサービス状況返信処理について説明する。カラオケ装置4のCPU41は、他の要求側のカラオケ装置4から予測占有値の送信依頼(図5(a)のS104)の受信を待ち受ける(S201)。要求側のカラオケ装置4から予測占有値の送信依頼を受信した場合(S201:YES)、自カラオケ装置4のサービス実施予定テーブル(図2)に基づいて、予測占有値を算出する(S202)。ここでは、予測占有値の送信依頼に含まれるダウンロード時間の情報と、サービス実施予定テーブルにおけるコンテンツの実行時間とに基づき、ダウンロードに要する時間長分だけ先のまで期間に実行を予定している各コンテンツのサービス占有値の時間平均値を予測占有値として算出する。
【0067】
つぎに、S203では、S202で算出した予測占有値と、シリアル番号と、コンテンツの配信状態とを併せて要求側のカラオケ装置4に対して返信する(S203)。返信後、S201の処理へ戻る。
【0068】
[要求側のカラオケ装置4が実行する配信元選択処理の説明]
つぎに、要求側のカラオケ装置4が、各被要求側のカラオケ装置4の中からコンテンツの配信元となる通信相手を選択する配信元選択処理の手順について、図6のフローチャートに基づき説明する。この処理は、上述のサービス状況送信依頼処理(図5(a)参照)の完了後に実行される。
【0069】
カラオケ装置4のCPU41は、サービス状況送信依頼処理において取得済みの全カラオケ装置4の予測占有値をメモリから読出す(S301)。そして、その読出した予測占有値から、被要求側の全カラオケ装置4について、それぞれの予測占有値に応じた予測通信速度を算出する(S302)。
【0070】
つぎに、被要求側の各カラオケ装置4から受信した配信状況を参照し、配信状況が「取得済み」となっているカラオケ装置4が存在するか否かを判定する(S303)。配信状況が取得済みとなっているカラオケ装置4が存在する場合(S303:YES)、S304の処理へ進み、存在しない場合(S303:NO)、本処理を終了する。
【0071】
取得済みのカラオケ装置4が存在する場合に進むS304では、その取得済みのカラオケ装置4の中で自カラオケ装置4と予測通信速度が等しくなっている機器が存在するか否かを判定する。自カラオケ装置4と予測通信速度の等しい取得済みのカラオケ装置4が存在する場合(S304:YES)、該当のカラオケ装置4を配信元に決定し(S305)、本処理を終了する。
【0072】
一方、自カラオケ装置4と予測通信速度の等しいカラオケ装置4が存在しない場合(S304:NO)、それら取得済みのカラオケ装置4の中で自カラオケ装置4より予測通信速度が速い機器が存在するか否かを判定する(S306)。自カラオケ装置4より予測通信速度の速いカラオケ装置4が存在する場合(S306:YES)、該当のカラオケ装置4の中で予測通信速度が最小(最も遅い)カラオケ装置4を配信元に決定し(S307)、本処理を終了する。
【0073】
一方、自カラオケ装置4より予測通信速度の速いカラオケ装置4が存在しない場合(S306:NO)、それら取得済みのカラオケ装置4の中で予測通信速度が最大(最も速い)カラオケ装置4を配信元に決定し(S308)、本処理を終了する。その後、要求側のカラオケ装置4は、S305,S307,S308の何れかのステップで決定した配信元のカラオケ装置4に対してコンテンツの配信要求を行い、コンテンツを取得する。
【0074】
[特許請求の範囲に記載の構成との対応]
実施形態のカラオケネットワークシステム1の構成と、特許請求の範囲に記載の構成との対応は次のとおりである。所定のプログラムに沿って各種演算処理を行うカラオケ装置4のCPU41が、特許請求の範囲における占有度予測手段、算出手段、要求側取得手段、選択手段、コンテンツ取得手段、通信時間推定手段、被要求側送信手段、及び、コンテンツ送信手段に相当する。
【0075】
[効果]
上記実施形態のカラオケネットワークシステムによれば、次のような効果を奏する。
要求側のカラオケ装置4は、今後実行を予定しているコンテンツサービスによる予測占有値に応じた予測通信速度を算出し、その予測通信速度と直近の予測通信速度となるカラオケ装置4をコンテンツの配信元に選択することで、要求側のカラオケ装置4が自ら決定した予測通信速度を満足させつつ、サービス占有値に応じて発揮できる通信能力に無駄な余力を生じさせることなくコンテンツを取得できる。したがって、ネットワーク全体でコンテンツを迅速に配信するという観点からみても効率的である。
【0076】
例えば、図3に示すコンテンツの配信手順の事例について検討してみる。最初にコンテンツの取得を開始したカラオケ装置4b(予測通信速度31)は、予測通信速度が直近上位のカラオケ装置4c(予測通信速度32)を配信元の機器に選択した。そのおかけで、カラオケ装置4b,4cの通信中に遅れてコンテンツの取得を開始したカラオケ装置4d(予測通信速度63)が、更に予測通信速度の速いカラオケ装置4a(予測通信速度100)をコンテンツの配信元として選択することができた。よって、この場合、要求側のカラオケ装置4b,4dは両者とも、自ら決定した予測通信速度を満足した状態でコンテンツを取得できる。
【0077】
これに対し、最初にコンテンツの取得を開始したカラオケ装置4b(予測通信速度31)が、配信元としてカラオケ装置4c(予測通信速度32)ではなくカラオケ装置4a(予測通信速度100)を選択していたと仮定する(本実施形態では、本来このような動作はしない)。この場合、遅れてコンテンツを取得するカラオケ装置4d(予測通信速度63)は、自身の予測通信速度より遅いカラオケ装置4cからコンテンツを取得することを余儀なくされる。よって、この場合、カラオケ装置4bは自ら決定した予測通信速度を満足した状態でコンテンツを取得できるものの、カラオケ装置4dについては、配信元の予測通信速度の都合により自ら決定した予測通信速度を発揮できない。本実施形態では、要求側のカラオケ装置4が、自身の通信条件とほぼ対等な通信条件のカラオケ装置をコンテンツの取得先として選択することによって、このような事態を防止できる。
【0078】
さらに、本実施形態では、要求側のカラオケ装置4と予測通信速度が同一となる被要求側のカラオケ装置4が存在しない場合、次善策として、要求側のカラオケ装置4よりも予測通信速度が大きいカラオケ装置4の中で最も予測通信速度の小さいカラオケ装置を配信元に選択する。このようにすることで、要求側のカラオケ装置4と予測通信速度が同一となるカラオケ装置4が存在しない場合であっても、要求側のカラオケ装置4の予測通信速度を満たしながらも無駄な余力を極力発生させないようにできる。
【0079】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態においては、要求側のカラオケ装置4の依頼(図5(a)のS104)に応じて、被要求側のカラオケ装置4が各自の予測占有値を送信(図5(b)のS203)し、送信された予測占有値に基づいて要求側のカラオケ装置4が全カラオケ装置4の予測通信速度を算出する(図6のS302)構成となっていた。
【0081】
これに対し、被要求側のカラオケ装置4が、各自の予測占有値を送信する代わりに各自の予測占有値に基づいて算出した予測通信速度を要求側のカラオケ装置4に対して送信するように構成してもよい。この場合、上述の配信元選択処理(図6)において、要求側のカラオケ装置4は、自カラオケ装置4以外の予測通信速度を算出しなくてもよい。そして、被要求側の各カラオケ装置4から受信した各自の予測通信速度に基づいて配信元のカラオケ装置4を選択できる。
【符号の説明】
【0082】
1…カラオケネットワークシステム、2…ホストサーバ、4a,4b,4c,4d…カラオケ装置、41…CPU、42…RAM、43…ROM、44…HDD、45…表示部、46…再生部、47…入力部、48…LAN通信部、100…LAN、120…ルータ装置、200…インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ楽曲を少なくとも含むコンテンツを保有し、その保有しているコンテンツを用いたコンテンツサービスを実行する複数のカラオケ装置がネットワークを介して通信可能に接続され、コンテンツサービスの実行中に前記カラオケ装置間でコンテンツの送受信を行うカラオケネットワークシステムにおいて、
前記カラオケ装置は、
自カラオケ装置が今後に実行を予定しているコンテンツサービスによる演算処理能力の占有度合の未来予測値を取得する占有度予測手段を備え、
さらに、他の被要求側のカラオケ装置からコンテンツを取得する要求側のカラオケ装置として実行する処理に関する構成として、
自カラオケ装置の処理占有度合の未来予測値に相関する通信速度として、前記処理占有度合の未来予測値が小さいほど前記通信速度が大きくなり、前記処理占有度合の未来予測値が大きいほど前記通信速度が小さくなるように前記通信速度を算出する算出手段と、
複数の他の被要求側のカラオケ装置から、各個の占有度関連値を取得する要求側取得手段と、
前記占有度予測手段により取得した自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値に基づく所定の占有度関連値と、前記要求側取得手段により取得した前記被要求側のカラオケ装置の占有度関連値とに基づいて、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の占有度関連値に基づいて特定する所定の通信条件の度合が自カラオケ装置のものと直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択する選択手段と、
前記選択手段により選択したコンテンツ取得要求先のカラオケ装置から、前記算出手段により算出した通信速度によってコンテンツを取得するコンテンツ取得手段とを備え、
さらに、他の要求側のカラオケ装置からの要求に応答する被要求側のカラオケ装置として実行する処理に関する構成として、
前記要求側のカラオケ装置から占有度関連値の取得要求があった場合、前記占有度予測手段により取得した自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値に基づく所定の占有度関連値を当該要求側のカラオケ装置に対して送信する被要求側送信手段と、
前記要求側のカラオケ装置からコンテンツの取得要求があった場合、当該要求側のカラオケ装置の決定した通信速度でコンテンツを送信するコンテンツ送信手段とを備えること
を特徴とするカラオケネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のカラオケネットワークシステムにおいて、
前記要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記算出手段により算出した通信速度と、他のカラオケ装置から取得予定のコンテンツのデータ量とに基づき、当該コンテンツの取得にかかる推定の通信時間を算出する通信時間推定手段を更に備え、
前記要求側取得手段は、前記通信時間推定手段により算出した通信時間を示す情報を含む取得要求を前記被要求側のカラオケ装置に対して送信して、前記占有度関連値を取得し、
前記被要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記要求側のカラオケ装置から占有度関連値の取得要求があった場合、前記占有度予測手段は、現時点から、当該取得要求に含まれる通信時間の情報で示される時間長分だけ先までの期間に実行を予定しているコンテンツサービスによる演算処理能力の占有度合の未来予測値を取得すること
を特徴とするカラオケネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカラオケネットワークシステムにおいて、
前記被要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記被要求側送信手段は、前記占有度関連値として、自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値を当該要求側のカラオケ装置に対して送信し、
前記要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記選択手段は、前記複数の被要求側のカラオケ装置から取得した処理占有度合の未来予測値に基づき、それら被要求側のカラオケ装置の処理占有度合の未来予測値に相関する通信速度として、前記処理占有度合の未来予測値が小さいほど前記通信速度が大きくなり、前記処理占有度合の未来予測値が大きいほど前記通信速度が小さくなるように、被要求側の各カラオケ装置の通信速度を算出し、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の前記通信速度が自カラオケ装置の前記通信速度と直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択すること
を特徴とするカラオケネットワークシステム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のカラオケネットワークシステムにおいて、
前記被要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記被要求側送信手段は、前記占有度関連値として、前記算出手段により算出した自カラオケ装置における通信速度を当該要求側のカラオケ装置に対して送信し、
前記要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記選択手段は、前記複数の要求側のカラオケ装置から取得した通信速度に基づき、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の前記通信速度が自カラオケ装置の前記通信速度と直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択すること
を特徴とするカラオケネットワークシステム。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のカラオケネットワークシステムにおいて、
前記要求側のカラオケ装置としての構成について、
前記選択手段は、前記複数の被要求側のカラオケ装置の中で自カラオケ装置と同じ通信速度のカラオケ装置がある場合は、そのカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択し、同じ通信速度のカラオケ装置がない場合は、自カラオケ装置よりも通信速度が大きいカラオケ装置の中で最も通信速度の小さいカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択すること
を特徴とするカラオケネットワークシステム。
【請求項6】
カラオケ楽曲を少なくとも含むコンテンツを保有し、その保有しているコンテンツを用いたコンテンツサービスを実行する複数のカラオケ装置がネットワークを介して通信可能に接続され、コンテンツサービスの実行中に前記カラオケ装置間でコンテンツの送受信を行うカラオケネットワークシステムに用いられる前記カラオケ装置であって、
自カラオケ装置が今後に実行を予定しているコンテンツサービスによる演算処理能力の占有度合の未来予測値を取得する占有度予測手段を備え、
さらに、他の被要求側のカラオケ装置からコンテンツを取得する要求側のカラオケ装置として実行する処理に関する構成として、
自カラオケ装置の処理占有度合の未来予測値に相関する通信速度として、前記処理占有度合の未来予測値が小さいほど前記通信速度が大きくなり、前記処理占有度合の未来予測値が大きいほど前記通信速度が小さくなるように前記通信速度を算出する算出手段と、
複数の他の被要求側のカラオケ装置から、各個の占有度関連値を取得する要求側取得手段と、
前記占有度予測手段により取得した自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値に基づく所定の占有度関連値と、前記要求側取得手段により取得した前記被要求側のカラオケ装置の占有度関連値とに基づいて、それら被要求側のカラオケ装置の中から、各個の占有度関連値に基づいて特定する所定の通信条件の度合が自カラオケ装置のものと直近であるカラオケ装置をコンテンツ取得要求先に選択する選択手段と、
前記選択手段により選択したコンテンツ取得要求先のカラオケ装置から、前記算出手段により算出した通信速度によってコンテンツを取得するコンテンツ取得手段とを備え、
さらに、他の要求側のカラオケ装置からの要求に応答する被要求側のカラオケ装置として実行する処理に関する構成として、
前記要求側のカラオケ装置から占有度関連値の取得要求があった場合、前記占有度予測手段により取得した自カラオケ装置における処理占有度合の未来予測値に基づく所定の占有度関連値を当該要求側のカラオケ装置に対して送信する被要求側送信手段と、
前記要求側のカラオケ装置からコンテンツの取得要求があった場合、当該要求側のカラオケ装置の決定した通信速度でコンテンツを送信するコンテンツ送信手段とを更に備えること
を特徴とするカラオケ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−203223(P2012−203223A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68053(P2011−68053)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】