説明

カラーパッチ

【課題】本発明は、印刷物の色材の濃度調整判断を、機械的な測定ではなく目視判断で正しく行うことができるパッチを提供するものである。
【解決手段】特定の色材の量が、他の色材それぞれの量より多く、または少なく設定したうえで、同一の色再現を行うような色材の異なる掛け合わせのパッチを2つ以上組み合わせたパッチを作成する。ここでパッチの色のずれが生じている場合、パッチの色または形状によって示された色材の量が不正であると判断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の品質管理・制御用のカラーパッチに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の色再現が標準状態であることを確認・制御するために、印刷物の所定位置に色パッチ(カラーパッチ)やグレーパッチを濃度計で測定して品質判断と印刷機へのインキキーのフィードバックを行うことは一般的に行われている。(小森コーポレーション社製PDC−S・ハイデルベルグ社製CPC など)
これらは印刷物に付属させた各種のパッチを測定し、基準値との濃度差や色差をフィードバックして制御するものである。
【0003】
また、パッチ機械的測定機能やフィードバック機能がついていない印刷機においては、オペレータが目視するか、手動測定を行ってから、マニュアルで印刷濃度の調整を行う必要がある。機械的測定は手間と時間が必要で印刷機オペレーションにおける問題が生じる。また、目視調整では正確な判断が難しい問題があった。
【0004】
広く使われているインキバランスの判断方法としてシアン、マゼンタ、イエローの三色の掛け合わせでグレーのパッチを作り、ニュートラルグレーと考えられる色とのずれを目視判断する方法があるが、作業者によって判断が変わる問題がある。また、ニュートラルグレーの見本を印刷物の他に用意する必要がある。
【0005】
特許文献1〜3のように、インキの組み合わせ方を変えて光の吸収率の差を利用して一般的なカメラには写らないが人には見える、または赤外光で測定可能な潜像を埋め込み偽造防止等の用途とする手法が存在するが、印刷状態の判断や補正に適したものとはいえなかった。
【0006】
そこで、本発明は、印刷用インキなどの色材のバランスが崩れているときに、目視でどの色材量を調整すべきか正確に判断できるパッチを提供することで、機械測定の手間を省いた上で、正確な印刷機状態のフィードバックを行い生産効率の向上を期するものである。
また、パッチ作成時の計算処理には特許文献4によるソフトウェアを用いた。特許文献4には同一の色再現から色材のうち墨量を任意に設定できる特徴があるため掛け合わせの変更を、色再現を維持しつつ行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−4435号公報
【特許文献2】特開2009−44536号公報
【特許文献3】特開2009−268081号公報
【特許文献4】特許第4075408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷物の製造時には、印刷方式によらず、ジャパンカラーなどの各種印刷標準に適合するために、または過去の印刷物や刷色見本に見た目を一致させるために、各色材について基準の濃度での印刷を求められている。
【0009】
印刷が基準濃度でなされているかを確認するためには、前述したように、測定器でパッチを測定するか、複数色のインキを掛け合わせてグレーを作成し、そのグレーバランスが乱れていないかを目視判断して行っていた。また、その目視判断からオペレータが濃度を調整していた。
【0010】
ここで、測定器は高価であるためあまり普及していないこと、測定に時間がかかることといった問題がある。また、グレーの目視判断では、どのように調整したらよいかがわかりづらいということ、またオペレータによって調整方法の選択が異なる場合(たとえばグレーが黄色寄りになっていたとき、シアンインキ濃度を上げるという選択肢と、イエローインキ濃度を下げるという選択肢がある)があるということから、標準に合わせるという観点からは問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、印刷機の色材の濃度バランスを目視で判断できるパッチの作成法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは、複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
ある色材A0が、他の色材A1〜Anのいずれとも塗布量が異なるように設定した掛け合わせXにより作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
前記掛け合わせXと同一の色再現が可能で、かつ前記掛け合わせXとは色材A0〜Anのうち色材A0を含む2以上の色材の塗布量の値が異なっている掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項1に記載のカラーパッチは、特定の一つの色材A0の塗布量が、他全ての色材A1〜Anのいずれとも塗布量が異なっている領域1を有している。領域1と領域2は隣接しており基準通りに印刷されたときに同一の色再現を行うように計算されているが、特定の色材A0の塗布量は異なっている。色材A0と比べて色材A1〜Anのそれぞれの塗布量は全て相対的に少なくなるか、相対的に多くなるかのどちらかに偏るため、いずれかの色材の濃度に変動があった場合でも、設計されたパッチにおいては、色材A0の濃度の見た目の差のみが顕著に見えるため、色材A0の濃度に変動があったと判断することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
重視する色材A0の面積率が50%〜100%であり、
最も暗い色材A1の面積率が0〜50%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、それぞれ25%以上かつ色材A0より25%以上小さく、かつ色材A1の面積率より大きくなるように選択された掛け合わせX1により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX1とは異なっており、色材A0およびA2
〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX1と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
重視する色材A0の面積率が50%〜100%であり、
最も暗い色材A1の面積率が25%以上かつ色材A0の面積率より小さく、
残りの色材A2〜Anの面積率は、色材A1の面積率より小さく、かつ色材A0の面積率より25%以上小さくなるように選んだ掛け合わせX2により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX2とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX2と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2、3に記載のカラーパッチは、重視する色材A0の面積率を大きくすることが可能な場合に適したものである。色材(インクなど)を印刷対象物(紙など)の表面に付着させた状態で定着させた印刷物(例えば油性オフセット印刷など)は、色材の面積率を大きく設定することが可能である。そのような印刷方式の場合は、重視する色材A0の面積率はなるべく大きく設定しておけば、色材の濃度が変動したとき色再現の変化が出やすいという利点がある。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
重視する色材A0の面積率が25〜50%であり、
最も暗い色材A1の面積率が0〜50%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、75〜100%となるように選択された掛け合わせX3により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX3とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX3と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
重視する色材A0の面積率が0〜25%であり、
最も暗い色材A1の面積率が25〜80%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、それぞれ色材A0より25%以上大きく、かつ色材A1〜Anの面積率の合計が150%以上になるように選択した掛け合わせX4により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX4とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX4と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4、5に記載のカラーパッチは、重視する色材A0の面積率をあまり大きくすることが出来ない場合に適したものである。色材(インクなど)を印刷対象物(紙など)にしみ込ませて定着させた印刷物(例えばインクジェット方式による印刷など)は、印刷対象物にしみ込ませることが可能な色材の量をそれほど多く出来ない。請求項4、5に記載のカラーパッチは、そのような印刷方式の場合でも適用可能としたものである。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A1〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が0〜100%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、それぞれ0%または色材A1より50%以上小さくなるように選択した掛け合わせX5により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX5とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX5と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6に記載のカラーパッチは、重視する色材が最も暗い色材である場合の条件を示したものである。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、
請求項1〜5のいずれかに記載のカラーパッチであって、第1の領域または第2の領域のいずれか一方の領域の形状が、前記色材A0の種類を判別できるような文字または記号の形状となっており、その周囲を、もう一方の領域が隣接して取り囲むように構成してあることを特徴とするものである。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、
請求項6に記載のカラーパッチであって、第1の領域または第2の領域のいずれか一方の領域の形状が、前記色材A1の種類を判別できるような文字または記号の形状となっており、その周囲を、もう一方の領域が隣接して取り囲むように構成してあることを特徴とするものである。
【0024】
請求項7〜8に記載の発明では、カラーパッチのどちらか一方の領域の形状が、色材の種類を示しているため、作業者は、問題のある色材を直ちに判断することができ、作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、特定の色材に濃度差があると目視される色に強く差が出るようなパッチになっているため、グレーパッチを用いて濃度に問題がある色材を選択する従来の手法と比較して、正確に早くフィードバックをかけるべき色材を判断でき、また時間がかかる測定器による手法ではなく目視手法であるため、製造物の品質と生産性の向上になる。さらに同一印面上に比較対象があるため別に見本を用意する必要がない。
また、濃度測定器での測定には一定の面積が必要だが、目視用ではさらに小さくすることも可能であるため材料の節約になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態におけるパッチパターンの例
【図2】本発明の第2実施形態におけるパッチパターンの例
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。簡単のため4色プロセス印刷を例にして説明するが、色材の数が増えた場合(例えば6色印刷など)でも同様の色材選択によって実施することができる。また、以下の説明では、オフセット印刷を例に説明しているが、オフセット印刷以外の方式でも同様に行うことができる。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のパッチの概略を示した図である。本実施形態のパッチは、2つの隣接する領域1および領域2を有している。領域1および領域2は、それぞれ複数色の色材を、互いに異なる所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されているが、同一の色再現をするように設計されている。
【0029】
同一の色再現をするが、使用する色材の割合が互いに異なる掛け合わせを選択する方法としては、例えば、ICCプロファイル(カラーマネジメントにおいて、インターナショナル・カラー・コンソーシアム(ICC)の公表した標準に従い、色材の掛け合わせと色表現の対応が記述されている)のルックアップテーブルを参照することによって算出する、という方法をあげることができる(図1)。
【0030】
以下では、各色材の塗布量の指標として、各色材の面積率を用いた場合について説明しているが、印刷方式によっては、面積率以外にも、色材の厚さや使用量などを用いることが可能である。
【0031】
まず、本実施形態のパッチの一方の領域(ここでは領域1とする)における、複数色の色材それぞれの面積率の組み合わせ(以下、単に掛け合わせと呼ぶ)を、次のようにして決定する。
【0032】
始めに、重視する色材A0を定めた上で、色材A0の面積率の目標値を定める。ここで、「重視する色材A0」とは、塗布量(ここでは面積率)の確認が最も必要な色材のことである、次に、重視する色材A0以外で、最も暗い色材A1(典型的には墨)を定める。
【0033】
重視する色材A0と最も暗い色材A1以外の、色材A2〜An(nは2以上の自然数)の面積率の目標値については、下記のように設定する、
重視する色材A0の面積率の目標値が大きいときには小さく設定しておく、
重視する色材A0の面積率の目標値が小さいときには大きく設定しておく、
重視する色材A0が墨の場合は、小さく設定しておく。
【0034】
色材A2〜Anの面積率の目標値を、このように設定しておくと、色材の置き換えの自
由度を増やすことができ、色材の置き換え処理が実行しやすくなる。
このようにして決めた領域1の掛け合わせを、掛け合わせXと呼ぶことにする。
【0035】
次に、本実施形態のパッチのもう一方の領域(ここでは領域2とする)における、複数色の色材の掛け合わせは、次のようにして決定する。
【0036】
まず、領域1の掛け合わせXからICCプロファイルの色材の掛けあわせからPCS上の値を求めるためのA2Bテーブルを参照し、PCS(プロファイル接続空間、profile connection space・デバイス独立空間上の色表現で記述されており、絶対的な色を表す)での色(例えばL*a*b*値など)を求める。その色からICCプロファイル中のPCS上の値から色材組み合わせが記述されているB2Aテーブルを参照し、掛け合わせXとは異なる掛け合わせで同一の色再現となる値を求める。
【0037】
または、墨インキの面積率の目標値を、掛け合わせXより多くまたは少なくなるよう決定して固定した状態で、ICCプロファイルのA2Bテーブルから同一L*a*b*値になる掛け合わせを探索することで、異なる掛け合わせで同一の色再現となる値を求めることも可能である。このとき、墨インキの面積率の目標値を複数設定することで、何通りもの同一色再現の掛け合わせを求めることができる。したがって、本実施形態のパッチにおいて、隣接させる領域の数は3つ以上にすることも可能である。
【0038】
このようなパッチが、印刷物の所定箇所に印刷されるようにしておく。
印刷を繰り返すうち、重視する色材A0のインキ膜厚や潰れ方などが変化(すなわち同じ面積率にもかかわらず意図せず濃度(=反射率)が変化)した場合、領域1と領域2の色再現は同一ではなくなる。この色再現のずれは、測定機器を使用せずとも、また、熟練した作業者でなくとも、目視により比較的簡単に作業者に知覚される。これにより、印刷に使用している各色材の濃度調整が必要なときがきたことを簡単に知ることができる。
【0039】
使用する色材の全てを、「重視する色材A0」として設定したい場合には、本実施形態のパッチを複数個形成するようにすればよい。すなわち、使用する色材がC、M、Y、Kの4色である場合には、「色材A0がCであるパッチ」、「色材A0がMであるパッチ」、「色材A0がYであるパッチ」、「色材A0がKであるパッチ」の4つを形成すれば、それぞれのパッチを使って、色材C、M、Y、K全ての塗布量のモニタリングが可能である。
【0040】
(第2実施形態)
本発明をより扱いやすくした第2実施形態の概略図を図2に示す。本実施形態は、四角形状の領域4の内部に、所定形状(図2ではM字形状)の領域3が含まれているものである(図2)。
【0041】
領域3と領域4の掛け合わせの決め方は、第1実施形態と同様であるが、掛け合わせX側の領域3の形状を、色材の種類を表す形状(図2の例ではM)としている。これによって、領域3の部分の色の寄り具合を見ることで、判断しにくい色のずれ(たとえば補色に近いシアンとイエローのどちらに問題があるか)を正確に判断することができる。
【0042】
本実施形態では、パッチの外側に色材の種類を表す情報を書き込む場合と比べて、パッチ全体のサイズを縮小できることや、相対的に文字サイズを大きくできるため視認しやすくできるという利点がある。
【0043】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例】
【0044】
油性オフセット印刷が標準を満たして刷れているかを確認するためにパッチを作成した。
シアン(C)インキ向けパッチの第1の領域と第2の領域の掛け合わせを、
(C,M,Y,K)=(100,50,50,0),(97,15,35,40)、
マゼンタ(M)インキ向けパッチの第1の領域と第2の領域の掛け合わせを、
(C,M,Y,K)=(50,100,50,0),(15,93,17,40)、
イエロー(Y)インキ向けパッチの第1の領域と第2の領域の掛け合わせを、
(C,M,Y,K)=(50,50,100,0),(16,27,88,45)、
ブラック(K)インキ向けパッチの第1の領域と第2の領域の掛け合わせを、
(C,M,Y,K)=(0,0,0,90),(80,74,69,35)
という組み合わせとした。(数値は面積率である。)
【0045】
上記の各色インキ向けパッチの第1の領域の掛け合わせは、本発明の請求項2または請求項6に従って設定した。また、第2の領域の掛け合わせは本発明の請求項2または請求項6に従って、Kインキの面積率を適宜の値に設定した上で、ICCプロファイルのA2Bテーブルを探索して、L*a*b*空間上で同一の色再現になるCMYの値の組み合わせを探索して発見し、設定した。
【0046】
上記4つの組み合わせそれぞれを用いて、4つのパッチを作成した。パッチの形状は図2のようなもので、一方の領域が各インキ名の頭文字の形状で、もう一方の領域がその周囲を取り囲むように隣接しているような構成のものである。このようなパッチを作成することで、オフセット印刷のCMYK各色の濃度ずれを、印刷機のデリバリで直ちに判断できるようになった。
【0047】
本発明は、印刷機の制御の正確性と容易性の向上に寄与できるので、印刷物の品質向上と生産性向上に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1、3…重視する色材A0を多く(少なく)含む領域
2、4…1、3と異なる掛け合わせで同じ色再現を行う領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
ある色材A0が、他の色材A1〜Anのいずれとも塗布量が異なるように設定した掛け合わせXにより作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
前記掛け合わせXと同一の色再現が可能で、かつ前記掛け合わせXとは色材A0〜Anのうち色材A0を含む2以上の色材の塗布量の値が異なっている掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項2】
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
重視する色材A0の面積率が50%〜100%であり、
最も暗い色材A1の面積率が0〜50%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、それぞれ25%以上かつ色材A0より25%以上小さく、かつ色材A1の面積率より大きくなるように選択された掛け合わせX1により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX1とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX1と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項3】
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
重視する色材A0の面積率が50%〜100%であり、
最も暗い色材A1の面積率が25%以上かつ色材A0の面積率より小さく、
残りの色材A2〜Anの面積率は、色材A1の面積率より小さく、かつ色材A0の面積率より25%以上小さくなるように選んだ掛け合わせX2により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX2とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX2と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項4】
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
重視する色材A0の面積率が25〜50%であり、
最も暗い色材A1の面積率が0〜50%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、75〜100%となるように選択された掛け合わせX3により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX3とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX3と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項5】
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A0〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
重視する色材A0の面積率が0〜25%であり、
最も暗い色材A1の面積率が25〜80%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、それぞれ色材A0より25%以上大きく、かつ色材A1〜Anの面積率の合計が150%以上になるように選択した掛け合わせX4により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX4とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX4と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項6】
印刷物の色管理を行うためのカラーパッチであって、
前記カラーパッチは複数色の色材A1〜An(nは自然数)を、所定割合の塗布量で掛け合わせて作成されており、
前記カラーパッチの第1の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が0〜100%であり、
残りの色材A2〜Anの面積率は、それぞれ0%または色材A1より50%以上小さくなるように選択した掛け合わせX5により作成されており、
前記カラーパッチの第2の領域は、
最も暗い色材A1の面積率が前記掛け合わせX5とは異なっており、色材A0およびA2〜Anの面積率を再計算して、前記掛け合わせX5と同一の色再現を行うようにした掛け合わせにより作成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域が隣り合うように配置されていることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のカラーパッチであって、第1の領域または第2の領域のいずれか一方の領域の形状が、前記色材A0の種類を判別できるような文字または記号の形状となっており、その周囲を、もう一方の領域が隣接して取り囲むように構成してあることを特徴とするカラーパッチ。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーパッチであって、第1の領域または第2の領域のいずれか一方の領域の形状が、前記色材A1の種類を判別できるような文字または記号の形状となっており、その周囲を、もう一方の領域が隣接して取り囲むように構成してあることを特徴とするカラーパッチ。

【図1】
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【図2】
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