説明

カラーフィルタの欠陥修正方法

【課題】カラーフィルタの製造工程で生じる突起欠陥、白欠陥、黒欠陥を全て容易に修正し、良品率を大幅に向上させることができるカラーフィルタの欠陥修正方法を提供することを目的とする.
【解決手段】カラーフィルタの欠陥修正方法において、レーザ光の照射によりカラーフィルタの欠陥部を除去する際に、レーザ光の径を欠陥部を含む円形修正領域に設定し、円形修正領域の除去後、円形修正領域にレーザCVD法によって厚み1000オングストローム以上の金属膜を蒸着させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用のカラーフィルタを製造する工程において、カラーフィルタに生じる突起欠陥や白黒欠陥を修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6により、カラーフィルタの製造方法の1例について説明する。ガラス等の透明基板2上に例えばスクリーン印刷にて、線幅20μm、ピッチ80μm、膜厚0.5μm程度のストライブ状パターンからなるブラック遮光層BMを形成する。次に、ブラック遮光層上に、レッドの着色用感材Rを塗布し、フォトマスクを配置し露光した後、現像を行いレッドのパターン層を形成し、次いで同様にグリーン、ブルーのパターン層を形成する。各カラーパターン層は長手方向の両側がブラック遮光層BMに対して10μm程度の重なりを持ち膜厚は2μm程度である。次に、物理化学的保護、表面の整面化、平坦化を目的として、カラーパターン層の上に光硬化性樹脂を塗布して保護膜層OPを膜厚2〜3μm程度に形成する。さらに、保護膜層OPの上に真空成膜法を用いて酸化インジウム錫(ITO)を成膜した後、マスク蒸着法、エッチング法等により電極パターン加工を行い、透明電極層を形成してカラーフィルタを製造する。
【0003】
上記カラーフィルタの製造工程において、図6に示すように着色用感材の塗布工程において、ゴミ等の異物aが混入し、これがカラーパターン層R、G、Bに残留したり、カラーパターン層の表面にゴミ等の異物が付着すると、カラーパターン層の上に保護膜層OPを形成したとき、ゴミ等の異物に対応する部分に突起欠陥bが形成されてしまう。また、フォトマスクにゴミが付着するとカラーパターン層に白欠陥cが生じたり、ブラック遮光層BMの黒欠陥が生じてしまう。このような欠陥は、カラーフィルタの表面に設けられる液晶セル内の液晶の配向を阻害したり、撮像した映像や表示する映像の欠陥になり、カラーフィルタを使用した製品が不良になってしまう。従来、上記欠陥を修正するために、欠陥部をレーザ光でカットしたり、テープで研磨したり、刃物で削り取った後、着色感材を塗布する方法が採用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の欠陥修正方法は、着色感材の塗布における作業性が悪く、また、修正後の良品率が低いという問題を有している。とくに、近年、基板の大型化が進んでおり、1つでも欠陥が生じるとその影響が大きいため、不良品の修正が重要な課題となっている。
【0005】
本発明は上記問題を解決するものであって、カラーフィルタの製造工程で生じる突起欠陥、白欠陥、黒欠陥を全て容易に修正し、良品率を大幅に向上させることができるカラーフィルタの欠陥修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために、本発明のカラーフィルタの欠陥修正方法は、レーザ光の照射によりカラーフィルタの欠陥部を除去する際に、液の浸透、拡散性が良く液の回り込み不足による色ムラを発生させないように、レーザ光の径を欠陥部を含む円形修正領域、好ましくは欠陥部に外接する外接円からなる円形修正領域に設定し、円形修正領域の除去後、円形修正領域にレーザCVD法によって厚み1000オングストローム以上の金属膜を蒸着させることにより、バックライト光を完全に遮光可能にすることを特徴とする。
また、本発明のカラーフィルタの欠陥修正方法は、レーザCVD法によって蒸着する金属膜は、クロム若しくはタングステンを主成分とすることを特徴とする。
また、本発明のカラーフィルタの欠陥修正方法は、レーザ光の照射により除去する欠陥部は、黒欠陥であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カラーフィルタの製造工程で生じる突起欠陥、白欠陥、黒欠陥を全て容易に修正し、良品率を大幅に向上させることができる。また、バックライト光を完全に遮光することができる。また、円形修正領域がカラーパターン層であってもブラック遮光膜BMの金属膜を蒸着させることとなるが、製品となったカラーフィルタには問題はなく、黒欠陥だけではなく、カラーパターン層に生じる突起欠陥、白欠陥を修正することができる。また、レーザCVD法を用いた装置によると、蒸着させる金属膜の厚さを調整することができるため、膜厚にバラツキがないカラーパターン層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明におけるカラーフィルタの欠陥修正方法の1実施形態を説明するための構成図である。
【図2】図1におけるレーザ光の径の設定を説明するための図である。
【図3】図1の実施例1を説明するための図である。
【図4】図1の実施例2を説明するための図である。
【図5】図1の比較例を説明するための図である。
【図6】カラーフィルタの欠陥を説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明におけるカラーフィルタの欠陥修正方法の1実施形態を説明するための構成図である。
【0010】
図1において、XYθステージ(基板移動ステージ)1上には前述したカラーパターン層が形成された基板2が載置されている。このXYθステージ1は、駆動機構3によりXY平面および傾斜角θで移動可能にされている。欠陥検出装置4は、前述したカラーフィルタの欠陥を検査する装置であり、CCDカメラ5は、対物レンズ6、半透鏡7、結像レンズ8を介して基板2を撮像し、撮像された画像データは画像処理部9に送られ、ここで予め設定された閾値で2値化され、基板2上の欠陥部を抽出する。抽出された欠陥情報は、ディスプレイ10に表示されその確認が行われると同時に、演算処理部11に送られる。
【0011】
レーザ照射装置12は、欠陥検出装置で検出された欠陥部にレーザ光を照射し、領域内の物質を除去する装置である。紫外レーザ発振器13(YAGレーザであり出力15mj以上(波長1067nm)または2mj以上(波長533.5nm))から発射されたレーザ光は、密度調整器14により照射エネルギ密度が増減され、拡径器15で径が拡大されてレーザ光の強度が均一化され、ミラー16を経て開口調節器17に入射される。開口調節器17は、開口の周囲に複数の移動プレートを備えており、駆動機構18により移動プレートを移動させることにより開口の径を調節し、レーザ光の径を所望の大きさに調節可能にしている。すなわち、図2に示すように、CCDカメラの画素I上に欠陥部Dが抽出されたとき、欠陥部Dに外接する外接円からなる円形修正領域Mでレーザ光の径rを設定し、その中心を欠陥部Dの位置情報としている。なお、円形修正領域Mは欠陥部Dを含む円でもよい。径rは50〜150μm程度で変更可能にされている。開口調節器17により所望の径に調節されたレーザ光は、ミラー19、結像レンズ20、半透鏡7および対物レンズ6を経て、XYθステージ1上に載置された基板2に照射される。
【0012】
欠陥修正装置21は、レーザ照射装置12により物質が除去された除去部にパターン層を充填する装置であり、インク吐出装置22、これを駆動するための駆動回路23およびインク硬化装置24を備えている。なお、インク吐出装置22としては、ディスペンス装置またはインクジェット装置を用いることができる。このうちディスペンス装置の吐出方法としては、インクを連続して吐出する連続吐出法および液滴を作ってから間欠的に塗布させる間欠吐出法を適用することができる。また、インクジェット装置には、コンティニュアスタイプまたはオンデマンドタイプを採用することができ、前者はインクが出続けているところに電界をかけ、インクを捕集皿に回収してカラーフィルタ基板上に塗布されないようにする方法で、後者はカラーフィルタ基板を移動させ、その位置に応じてインク吐出のオンオフを行うものである。以上述べたインク吐出装置22としては、インクジェット装置が好ましい。このため以下にインクジェット装置を例に挙げて説明する。
【0013】
インクジェット装置22は、R、G、Bおよび黒色の4色の修正インクを滴下する装置であり、修正インクは表面張力が大きい熱硬化性樹脂または紫外線硬化樹脂からなるものが好ましい。また、インク硬化装置24は、加熱ブロックまたは紫外線照射スポット光源からなる。なお、インクジェット装置22およびインク硬化装置24は、昇降機構(図示せず)により基板2へ近接可能にされている。
【0014】
演算処理部11は、欠陥部の形状およびその位置を示す情報を駆動機構18に送り、開口調節器17を駆動してレーザ光の径を変更するとともに、XYθステージ1を駆動してレーザ光の照射位置決めを行う。また、紫外レーザ発振器13および密度調整器14に信号を送り、照射時間、照射回数、照射エネルギ密度を制御する。また、駆動回路23にインキの色およびインキ滴下量の信号を送りインクジェット装置22を制御する。
【0015】
次に、本実施形態の実施例1、2および比較例について説明する。先ず、実施例1を図3により説明する。
【0016】
図3(A)は、グリーンのパターン層Gの欠陥部を含む円形修正領域Mをレーザ光のにより除去した状態を示している。なお、本例は、ブラック遮光層BMの線幅が20μm、BM間隔が80μm、着色層RGBの膜厚が1.4μm、円形修正領域Mの直径が55μmである。次に、円形修正領域Mにインクジェット装置22によりグリーンの修正インクG'を図3(B)に示すように滴下する。グリーン修正インクG'としては、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としては、バインダー樹脂:ベンジルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体多官能エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂多価カルボン酸:トリメット酸溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートG顔料:C.I.No.ピグメントグリーン36Y顔料:C.I.No.ピグメントイエロー150分散剤:アビシア社製ソルスパース24000紫外線硬化性樹脂としては、バインダー樹脂:メタクリ酸とベンジルメタクリレートの共重合体多官能モノマー:トリメチロールプロパントリアクリレート光重合開始剤:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製イルガーキュア907溶剤:エトキシエチルプロピオネートG顔料:C.I.No.ピグメントグリーン36Y顔料:C.I.No.ピグメントイエロー150分散剤:アビシア社製ソルスパース24000に示す成分の顔料分散組成物を用いた。
【0017】
このインクの吐出量(体積)は20PI/滴で4滴、すなわち80PIを滴下し、円形修正領域の上面に球状に膨らんだ状態とする(図3(B))。最後に、インク硬化装置24により修正インクG'を硬化させると、図3(C)に示すように、修正インクG'は収縮し、円形修正領域Mを略面一に充填、修正することにより、膜厚バラツキを0.1μmまで平坦化でき色ムラも実用上問題のないレベルを達成することができる。
【0018】
なお、修正インクG'を硬化させる際、熱硬化性樹脂の場合は、加熱ブロックにおいて、220℃、10分のベーキングを行った。この加熱処理により、インク滴下後に周辺部より5μm高い球状の膨らみが、周辺部より0.05μm低い凹レンズ状に減少した。紫外線硬化性樹脂の場合は、滴下面積をおおうように紫外線により1000mj/cm2のスポット照射を行った後、加熱ブロックにおいて200℃、30分のベーキングを行った。この加熱処理により、インク滴下後に周辺部より5μm高い球状の膨らみが、周辺部より0.09μm高い凸レンズ状に減少した。
【0019】
次に、実施例2を図4により説明する。図4(A)は、レッドのパターン層Rを示し、画素の大きさが100×300μm、膜厚が1μmで突起欠陥部Dが存在する状態を示している。図4(B)は、欠陥部Dを含む円形修正領域Mをレーザ光により除去した状態を示し、円形修正領域Mの直径は60μmである。次に、円形修正領域Mにインクジェット装置22によりレッドの修正インクR'図4(C)に示すように滴下する。レッド修正インクG'としては、熱硬化性樹脂を用いる。熱硬化性樹脂としては、バインダー樹脂:ベンジルメタクリレートとグリシジルメタクリレートの共重合体多官能エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂多価カルボン酸:トリメット酸溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートR顔料:C.I.No.ピグメントレッド254Y顔料:C.I.No.ピグメントイエロー139分散剤:アビシア社製ソルスパース24000このインクの吐出量(体積)は20PI/滴で4滴、すなわち80PIを滴下し、円形修正領域Mの上面に5μm高さの球状に膨らんだ状態とする(図4(C))。最後に、加熱ブロックにおいて、220℃、10分のベーキングを行った。この加熱処理により、インク滴下後に周辺部より5μm高い球状の膨らみが、周辺部より0.9μm低い凹レンズ状に減少した(図4(D))。レッドのパターン層Rと同一の色相を持つ修正インクを充填したため、修正部の色の違いは殆ど認められなかった。
【0020】
次に、比較例を図5により説明する。実施例2の図4(A)と同様に、画素の大きさが100×300μm、膜厚が1μmで突起欠陥部Dが存在するレッドパターン層Rについて修正を行った。図5(A)に示すように、矩形の開口を持つマスクを配置して欠陥部Dを含む修正領域M'をレーザ光により除去した。除去部の形状は100×300μmでほぼ一画素分である。次に、除去部の修正領域M'に、実施例2と同様の修正インクおよび方法でレッドの修正インクR'を滴下したところ、図5(B)に示すように矩形状の修正領域M'の四隅において、インク未充填部(または不足部)Xが生じてしまい、次に、実施例2と同様の方法でベーキングを行ったところ、図5(C)に示すように、白抜け部Cや膜厚不足による色ムラ部C'が生じてしまった。
【0021】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。前記実施形態においては、欠陥修正装置21は、インクジェット装置22、駆動回路23、インク硬化装置24からなるが、本実施形態においては、この欠陥修正装置の代わりに、レーザCVD法を用いた装置によって、Cr(C0)6、W(CO)6等のクロム若しくはタングステンを主成分とするブラック遮光膜BMの金属膜を厚み1000オングストローム以上で蒸着させる。この方法は、欠陥修正装置21と同様に演算処理部11から送られてきた情報により検出された円形修正領域Mの物質を除去し、この円形修正領域Mにブラック遮光膜BMの金属膜を蒸着させる。これにより、バックライト光を完全に遮光することができる。また、円形修正領域がカラーパターン層であってもブラック遮光膜BMの金属膜を蒸着させることとなるが、製品となったカラーフィルタには問題はなく、黒欠陥だけではなく、カラーパターン層に生じる突起欠陥、白欠陥を修正することができる。また、レーザCVD法を用いた装置によると、蒸着させる金属膜の厚さを調整することができるため、膜厚にバラツキがないカラーパターン層を形成することができる。
【符号の説明】
【0022】
2:基板、4:欠陥検査装置、12:レーザ照射装置、22:インク吐出装置(インクジェット装置)、24:インク硬化装置、D:欠陥部、G'、R':修正インク、M:円形修正領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の照射によりカラーフィルタの欠陥部を除去する際に、レーザ光の径を欠陥部を含む円形修正領域に設定し、円形修正領域の除去後、円形修正領域にレーザCVD法によって厚み1000オングストローム以上の金属膜を蒸着させることを特徴とするカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項2】
レーザCVD法によって蒸着する金属膜は、クロム若しくはタングステンを主成分とすることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。
【請求項3】
レーザ光の照射により除去する欠陥部は、黒欠陥であることを特徴とする請求項1または2記載のカラーフィルタの欠陥修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−160520(P2010−160520A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88451(P2010−88451)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【分割の表示】特願2000−159793(P2000−159793)の分割
【原出願日】平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】