説明

カラーフィルターの製造方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明はカラーフィルターの製造方法に関し、特に着色樹脂を使用してカラーディスプレイ用のカラーフィルターを形成する際の現像方法に関する。
[従来の技術]
従来、カラーフィルターとしては、基板上にゼラチン、カゼイン、グリューあるいはポリビニルアルコールなどの親水性高分子物質からなる媒染層を設け、その媒染層を色素で染色して着色層を形成する染色カラーフィルターが知られている。
このような染色法では、使用可能な染料が多くカラーフィルターとして要求される分光特性への対応が比較的容易であるが、媒染層の染色工程に、染料を溶解させた染色浴中に媒染層を浸漬するというコントロールの難しい湿式工程を採用しており、また各色毎に防染用の中間層を設けるという複雑な工程を有するため歩留りが悪くなる欠点を有している。また、染色可能な色素の耐熱性が150℃程度以下と比較的低く、該フィルターに熱的処理を必要とする場合には、使用が困難である上、染色膜自体の耐熱性、耐光性等の信頼性が劣るという欠点も有している。
これに対し、従来、ある種の着色材料が透明樹脂中に分散されてなる着色樹脂を用いたカラーフィルターが知られている。
例えば、特開昭58−46325号公報,特開昭60−78401号公報,特開昭60−184202号公報,特開昭60−184203号公報,特開昭60−184204号公報,特開昭60−184205号公報等に示されている様に、ポリアミノ系樹脂に着色材料を混合した着色樹脂膜を用いることを特徴とするカラーフィルターによれば、該ポリアミノ系樹脂自体は、耐熱性、耐光性等の特性に優れたものであるが、非感光性樹脂であるためカラーフィルターのパターン形成には、微細パターンに不利な印刷による方法、あるいは着色樹脂膜上にレジストによるマスクを設けた後に、該着色樹脂膜をエッチングするという製造工程の煩雑な方法をとらなければならなかった。
一方、特開昭57−16407号公報,特開昭57−74707号公報,特開昭60−129707号公報等に示されている様に、感光性樹脂に着色材料を混合した着色樹脂膜を用いることを特徴とするカラーフィルターによれば、カラーフィルターの製造方法によっては一般的なフォトリソ工程のみで微細パターン化でき、工程の簡素化は可能となる。
しかし、この様な感光性樹脂に着色材料を混合した着色樹脂を用いてカラーフィルターを形成する場合、一般に露光波長域における着色材料自体の光吸収があるため、感光性樹脂の光硬化に必要な露光エネルギーは通常よりかなり大きなものとなる。
一般に、感光性樹脂に対する露光時の光強度は、光照射面から深さ方向に入っていくに従い、指数関数的に減少していく。従って、感光性樹脂に、さらに光吸収特性をもつ着色材料の混入による光照射面から深さ方向に対する露光時の入射光強度の減衰は、著しく大きくなり、場合によっては感光性着色樹脂膜の底部に当たる基板との界面付近での光硬化が不充分となり、現像時に膜ハガレ等を生じることがあった。
また、この露光時の入射光強度の減衰を補うため、露光エネルギーを非常に大きくすると、着色材料自身の劣化を生じることもあった。
さらに、着色樹脂膜表面は、着色材料の混入により、表面の粗れが生じ、カラーフィルター表面における散乱を伴ない、カラーフィルターの光学的性能を落とす上、液晶表示素子内面に構成させる場合では、液晶分子の配向を乱すこともあった。
この様に、感光性樹脂に着色材料を混合した着色樹脂を用いてカラーフィルターを形成する場合、そのプロセスにおけるカラーフィルター膜の安定性、耐久性、そしてカラーフィルターとしての性能上の問題が残されていた。
上述の欠点を解消せしめるために、本出願人は既に特願昭62−22461号(特開昭63−191104号公報)を出願し、より少ない露光エネルギーで効率的にパターン形成できると共に、露光時の着色材料自体の劣化を防ぎ、膜の深さ方向での光硬化のバラツキを減らし、かつ表面状態のより平滑な着色樹脂膜を有するカラーフィルターを提案した。このカラーフィルターは、感光性樹脂中に少なくとも着色材料を分散してなる着色樹脂を用い、フォトリソ工程の繰り返しにより形成される複数のパターン状着色樹脂層を有するカラーフィルターにおいて、該着色材料を着色樹脂層の表面部から底部にかけて次第に多く分散させてなるものである。
[発明が解決しようとする課題]
上記カラーフィルターを基板上に形成するには、感光性樹脂中に少なくとも着色材料を分散した着色材料を用いてフォトリソ工程によりパターニングするが、このパターニングは通常塗布工程として、スピンナー法,印刷法,ロールコーター法等の手段を用いて着色樹脂を基板上に塗布し、その後オーブン等を用いて仮硬化(プリベーク)させ、次いでフォトマスクを通して露光し、現像液に浸漬させて現像してカラーフィルターのパターンを形成している。
しかしながら、フォトリソ工程において、基板上に塗布した着色樹脂に露光する時に、着色材料自体の劣化や表面の粗れがなく、着色樹脂膜の深さ方向にも充分に光硬化が行なえる適正な露光エネルギーにより露光した後、現像液により現像する場合においても、室温(21〜22℃)程度の温度の現像液に浸漬させるのみでは未露光部の化学的な溶解速度が遅く、浸漬時間をかなり長くしなければならなかった。
また、特に基板との界面近くでは、光硬化部の着色樹脂と基板との密着性を向上させるために着色樹脂中にカップリング剤が含有されていることもあり、そのために光硬化部の表面に粗れが生じるまで現像液中での浸漬時間を長くしても、未露光部の着色材料を分散した着色樹脂を完全に除去することができず、基板との界面に残渣として残ってしまうという欠点があった。
本発明は、この様な従来技術の欠点を改善するためになされたものであり、フォトリソ工程における現像液によるウェット現像の際に、速い現像速度で未露光部の着色樹脂の残渣を完全に除去し、生産効率を向上させたカラーフィルターの製造方法を提供することを目的とするものである。
[課題を解決するための手段]
即ち、本発明は、感光性樹脂中に少なくとも着色材料を分散してなる着色樹脂を基板上に塗布し、加熱して仮硬化した後、フォトリソ工程によりパターニングしてカラーフィルターを形成する方法において、フォトリソ工程の現像液によるウェット現像時に周波数0.8〜1.5MHzの超音波振動を相乗させた現像液を基板上の着色樹脂に吹きつけて現像することを特徴とするカラーフィルターの製造方法である。
本発明のカラーフィルターの製造方法においては、フォトリソ工程の現像液によるウェット現像時に、超音波振動を照射して現像を行なうが、超音波振動の周波数は通常20KHz〜1.5KHz、好ましくは26KHz〜1.1MHzの範囲のものが望ましく、20KHz〜1.5MHzの超音波振動を照射することにより、現像液に物理的な力が付加され、更に未露光部の着色樹脂の除去スピードが速くなり、しかも基板との界面に至るまで未露光部の着色樹脂の残渣を完全に除去することができる。
また、本発明においては、カラーフィルターをフォトリソ工程によりパターニングする際の現像液によるウェット現像時に、現像液を25〜30℃に加温するのが好ましく、加温することにより未露光部の着色樹脂の溶解が促進されて除去スピードが速くなる。
また、超音波振動を照射する方法としては、少なくとも2つ以上の互に周波数の異なる超音波振動を、同時に、基板に対し垂直に照射して現像するのが好ましい。
また、他の超音波振動を照射する方法としては、周波数0.8〜1.5MHzの超音波振動を相乗させた現像液を基板上の着色樹脂に吹きつけて現像することもできる。
[実施例]
以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1 第1図は本発明のカラーフィルターの製造方法の一参考例を示す説明図であり、カラーフィルターパターニングの際の現像工程の概要を示している。
同図に於いて、1は板厚1.1mmのガラス基板であり、その片面上に感光性樹脂に着色材料を分散してなる着色樹脂(PA−1012R,PA−1012G,PA−1012B、宇部興産社製)2が形成されている。着色樹脂膜の形成は、フレキソ印刷法又はスピンナー法、ロールコーター法等によりガラス基板1上に着色樹脂2を塗布した後、ホットプレートオーブン等を用いて仮硬化(プリベーク)を行って膜厚1.6±0.1μmに全面に均一に形成した。次いで、フォトマスクを用いて波長365mmにピークをもつUV光で400〜800mJのエネルギーで露光し、光硬化がなされた部分と光硬化がなされていない部分(未露光部)とを形成した。3は着色樹脂の未露光の光硬化がなされていない部分(未露光部)を溶解させるための現像液(PA−AD宇部興産社製)であり、4はその現像液槽である。5は現像液3を加温し、温度を制御するための恒温槽である。
また、6,6aは26KHz及び40KHzの超音波振動を照射するための各々の超音波振動子であり、7はそれらの発振器である。
本参考例のカラーフィルターの製造方法は、上記の装置において、先ず恒温槽5によって25〜30℃に加温し制御された現像液3に、UV光を照射して露光までなされた着色樹脂2が片面に形成されたガラス基板1を、約60秒〜300秒間浸漬させたところ、着色樹脂2の未露光部はかなり溶解が進んだが、ガラス基板1との界面に至るまで完全には除去されていなかった。
次いで、現像液3に浸漬させたままの状態で、超音波振動子6,6aより26KHz,40KHzの2周波数の超音波振動を各々現像液3を介して着色樹脂2が形成されたガラス基板1に約30sec〜120sec間照射したところ、現像液3中に発生したキャビテーションの作用により、着色樹脂2の未露光部はガラス基板1との界面に至るまで全面にムラなく完全に除去された。この時の着色樹脂2の光硬化がなされた部分はその表面に粗れが生じることもなく所定のパターンが残った。この後、リンス、水洗、乾燥を行ったところ、きれいなカラーフィルターを形成することができた。
実施例1 第2図は本発明のカラーフィルターの製造方法の実施例を示す説明図であり、第3図は第2図の側面を表わす説明図である。第2図は前記実施例1と同じくカラーフィルターパターニングの際の現像工程の概要を示している。
同図においても、1はガラス基板であり、その上面に参考例1と同じ工程で露光までなされた感光性樹脂に着色材料を分散してなる着色樹脂(PA−1012R,PA−1012G,PA−1012B、宇部興産社製)2が形成されている。また、3は現像液(PA−AD宇部興産社製)、8は現像液3を供給するためのポンプであり、9は現像液3を吹きつけるためのノズルである。また、6は0.8〜1.5MHzの超音波振動を照射するための超音波振動子であり、7はその発振器であり、10は発生した超音波振動を集束させるためのホーンである。
同図において、まず参考例1と同様に、露光までなされた着色樹脂2が片面に形成されたガラス基板1を、25〜30℃に加温された現像液3中に1〜2分間浸漬させて着色樹脂2の未露光部をある程度溶解させた。
次いで、第2図に示す様に、現像液3をポンプ8によって供給し、超音波振動子6より0.8〜1.5MHzの超音波を発生させて超音波振動を相乗させ、更に超音波ホーン10によって超音波振動を集束させた現像液3を、ノズル9より直接ガラス基板1上の着色樹脂2に約10〜15mmの距離から全面的に約1分間吹きつけたところ、現像液3中に広がった強大な加速度による圧力により、着色樹脂2の未露光部はガラス基板1との界面に至るまで完全に除去された。この時も着色樹脂2の光硬化がなされた部分は、その表面に粗れが生じることもなく所定のパターンが残った。この後、リンス、水洗、乾燥を行ったところきれいなカラーフィルターを形成することができた。
[発明の効果]
以上説明したように、本発明によれば、感光性樹脂中に少なくとも着色材料を分散してなる着色樹脂を基板上に塗布し、加熱して仮硬化し、露光した後、現像液によるウェット現像時に周波数0.8〜1.5MHzの超音波振動を相乗させた現像液を基板上の着色樹脂に吹きつけて現像することにより、現像速度が速くなり、生産効率が向上する。また、未露光部の着色樹脂の残渣を完全に除去することができるので、ディスプレイに用いたときの表示品位等も良くなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のカラーフィルターの製造方法の参考例を示す説明図、第2図は本発明のカラーフィルターの製造方法の実施例を示す説明図、第3図は第2図の側面を表わす説明図である。
1……ガラス基板、2……着色樹脂
3……現像液、4……現像液槽
5……恒温槽、6……超音波振動子
7……超音波発振器、8……ポンプ
9……ノズル、10……超音波ホーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】感光性樹脂中に少なくとも着色材料を分散してなる着色樹脂を基板上に塗布し、加熱して仮硬化した後、フォトリソ工程によりパターニングしてカラーフィルターを形成する方法において、フォトリソ工程の現像液によるウェット現像時に周波数0.8〜1.5MHzの超音波振動を相乗させた現像液を基板上の着色樹脂に吹きつけて現像することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。

【第1図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【第3図】
image rotate


【特許番号】第2799629号
【登録日】平成10年(1998)7月10日
【発行日】平成10年(1998)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−211625
【出願日】平成2年(1990)8月13日
【公開番号】特開平4−96002
【公開日】平成4年(1992)3月27日
【審査請求日】平成8年(1996)6月19日
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭63−124002(JP,A)
【文献】特開 平2−176602(JP,A)