説明

カラーフィルター作製用インキ組成物

【課題】凸版反転印刷法によって、インキ組成物を用いて繰り返し印刷行っても、シリコーンブランケット内にインキ組成物の浸透成分が残存することを抑制し、安定に転写性能を維持することの出来るカラーフィルター作製用インキ組成物を提供する。
【解決手段】シリコーンブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版にて画像化し、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法によりカラーフィルターを作製するためのインキ組成物であって、1種以上の樹脂を含み、この樹脂の80質量%以上がシリコーンブランケットに浸透しない材料から構成されたカラーフィルター作製用インキ組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFT型カラー液晶表示装置のカラーフィルターを凸版反転印刷法により作製する際に好適に使用できるカラーフィルター作製用インキ組成物、および、該インキ組成物を用い、凸版反転印刷法によって得られたカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、TFT型カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルターを製造する方法としては、カラーフィルターの画像として高い平坦性や解像度が得られるフォトレジスト法が主力である。
しかし、このフォトレジスト法では、色毎に塗布、露光、現像などの長工程を経るため、莫大な設備投資を要し、昨今要求される低製造コスト化並びに大面積化には不適であった。
このような欠点を解消する方法として、本出願人は、凸版反転印刷法と称する新しい製造方法を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この凸版反転印刷法について説明する。
この凸版反転印刷法では、まず。図1(a)に示すように、まずインキ塗布装置1によりブランケット2の表面に均一な厚みのインキ塗膜3を形成する。
次いで、図1(b)に示すように、表面に均一なインキ塗膜3が形成されたブランケット2の表面を、凸版4に押圧、接触させ、凸版4の凸部の表面に、ブランケット2の表面上のインキ塗膜3の一部を付着、転移させる。これにより、ブランケット2の表面に残ったインキ塗膜3には、印刷パターン(画像)が形成される。
次いで、図1(c)に示すように、この状態のブランケット2をガラス板、プラスチックシートなどからなる被印刷基材5の表面に押圧して、ブランケット2上に残ったインキ塗膜3を転写し、この被印刷基材5上に転写されたインキ塗膜3を乾燥することにより、所定のパターンを形成する。
【0004】
この凸版反転印刷法は、4色同時入色が可能で、色毎の乾燥が不要であるなどの短工程によって製造が行え、低製造コスト化および低設備コスト化を実現できるとともに、その得られる品質もフォトレジスト方法と同などになりつつある。
また、本出願人は、凸版反転印刷法に最低なインキ組成物として、特許文献2において、顔料、樹脂、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤を含有するインキ組成物を提案している。
【0005】
ところで、凸版反転印刷法によって、被印刷基材に対してカラーフィルターとなるインキ塗膜を形成するにあたっては、最初に被印刷基材に対して黒色インキ組成物を用いてブラックマトリックス膜を形成し、次いで、赤色、緑色、青色のカラーインキ組成物を用いてRGBのカラー膜を形成する。
【0006】
しかしながら、凸版反転印刷法では、インキ組成物を構成する樹脂が、溶剤と共にブランケット内に浸透して、ブランケット内に残存することがある。
このように、ブランケット内に樹脂が残存すると、この樹脂が、インキ組成物を転写する際に、ブランケットとインキ組成物との剥離性(ブランケットから被印刷基材に対するインキ組成物の転写の精度)を阻害したり、また、ブランケット表面に滲みだして、ブランケット表面のインキ組成物の組成を変えたりして、インキ組成物の転写性を劣化することがあった。このようなインキ組成物の転写性を劣化する現象としては、例えば、連続印刷に伴って、印刷線幅が太くなる現象が挙げられる。
【特許文献1】特開2001−56405号公報
【特許文献2】特開2005−128346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明における課題は、凸版反転印刷法によって、インキ組成物を用いて繰り返し印刷行っても、シリコーンブランケット内にインキ組成物の浸透成分が残存することを抑制し、安定に転写性能を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、
請求項1の発明は、シリコーンブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版にて画像化し、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法によりカラーフィルターを作製するためのインキ組成物であって、1種以上の樹脂を含み、この樹脂の80質量%以上がシリコーンブランケットに浸透しない材料から構成されたカラーフィルター作製用インキ組成物である。
【0009】
請求項2にかかる発明は、前記樹脂の重量平均分子量が、1500以上である請求項1に記載のインキ組成物である。
請求項3にかかる発明は、前記樹脂がメタノールに可溶である請求項1に記載のインキ組成物である。
【0010】
請求項4にかかる発明は、前記樹脂が、重量平均分子量が1500以上の樹脂と、重量平均分子量が1500以下かつメタノールに可溶な樹脂との混合物である請求項1に記載のインキ組成物である。
請求項5にかかる発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のインキ組成物を用い、凸版反転印刷法によって得られたカラーフィルターである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物によれば、1種以上の樹脂を含み、この樹脂の80質量%以上がシリコーンブランケットに浸透しない材料から構成されたものとしたので、このカラーフィルター作製用インキ組成物を用いて繰り返し印刷行っても、シリコーンブランケット内にカラーフィルター作製用インキ組成物の浸透成分が残存し難いから、安定に転写性能を維持することができる。したがって、本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物をガラス表面などに塗布した際に、ムラやスジがなく、均一な塗膜を形成できる。
【0012】
本発明のカラーフィルターによれば、本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物を用いているので、位置精度の高いカラーフィルターが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物は、1種以上の樹脂を必須成分として含み、この樹脂の80質量%以上がシリコーンブランケットに浸透しない材料から構成されたものである。本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物では、この樹脂は顔料の結着剤として機能する。
また、シリコーンブランケットに浸透しない材料の樹脂中の含有割合を85質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
【0014】
シリコーンブランケットに浸透しない材料の樹脂中の含有割合を80質量%以上とすることにより、このカラーフィルター作製用インキ組成物を用いて繰り返し印刷行っても、シリコーンブランケット内にカラーフィルター作製用インキ組成物の浸透成分が残存し難いから、安定に転写性能を維持することができる。したがって、このカラーフィルター作製用インキ組成物をガラス表面などに塗布した際に、ムラやスジがなく、均一な塗膜を形成できる。一方、シリコーンブランケットに浸透しない材料の樹脂中の含有割合を80質量%未満とすると、このインキ組成物を用いて繰り返し印刷行うと、シリコーンブランケット内にインキ組成物の浸透成分が残存し、安定に転写性能を維持することができない。したがって、このインキ組成物をガラス表面などに塗布した際に、ムラやスジが生じ、均一な塗膜を形成できない。
【0015】
また、この樹脂の重量平均分子量が1500以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。
樹脂の重量平均分子量が1500以上とすることにより、シリコーンブランケット内にインキ組成物の浸透成分がより蓄積し難くなる。
【0016】
また、樹脂は、メタノールに可溶であることが好ましい。樹脂がメタノールに可溶であれば、印刷工程終了後に、シリコーンブランケットに付着したカラーフィルター作製用インキ組成物をメタノールに溶解させて、除去することができる。すなわち、印刷工程終了後のシリコーンブランケットの洗浄を容易に行うことができる。
【0017】
さらに、樹脂は、重量平均分子量が1500以上の樹脂と、重量平均分子量が1500以下かつメタノールに可溶な樹脂との混合物であることが好ましい。これにより、シリコーンブランケット内にカラーフィルター作製用インキ組成物の浸透成分が蓄積し難いとともに、印刷工程終了後のシリコーンブランケットの洗浄を容易に行うことができるので、常に安定した転写性能を維持することができる。
【0018】
このような樹脂としては、カラーフィルターに要求される耐熱性、耐熱水性、耐アルカリ性、耐酸性などの物性を満足させるため、熱黄変性の少ない熱硬化性樹脂であって、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。これらの樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂あるいはエポキシ系樹脂のいずれか1つ以上と、メラミン系樹脂あるいはベンゾグアナミン系樹脂のいずれか1つ以上とを組み合わせたものが好ましい。さらに、ポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の組み合わせ、およびエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂およびベンゾグアナミン樹脂系を組み合わせたものがより好ましい。
【0019】
この樹脂としては、熱硬化システムを利用する場合、カラーフィルターの製造に用いられる一般的な熱硬化性樹脂が使用できるが、他の硬化システムを利用する場合は、それぞれに最適な樹脂を選択できる。例えば、ラジカル型紫外線硬化型樹脂やカチオン型紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂なども使用できる。
【0020】
シリコーンブランケットに浸透しない樹脂の選定は、シリコーンブランケットのゴム層を2cm四方にカットし、それを試験対象の樹脂が酢酸イソプロピルにより不揮発分で10%となるように希釈された溶液に15時間浸漬し、その後5時間乾燥させ、その前後での重量変化による。
重量変化は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。重量変化は2%以下とすることにより、シリコーンブランケット内に樹脂組成物の浸透成分がより蓄積し難くなる。
【0021】
この特性を満足する樹脂の代表的なものを以下に例示する。
ポリエステル系樹脂としては、「25X1892:大日本インキ化学工業社製」などが挙げられる。アクリル樹脂としては、「アクリディックA−345:大日本インキ化学工業社製」などが挙げられる。
【0022】
エポキシ系樹脂としては、「エピクロンP−415」、「エピクロン830」、「エピクロン840」、「エピクロン860」、「エピクロン1050」、「エピクロン3050」、「エピクロン4050」、「エピクロンHP7200L」、「エピクロンHP7200」、「エピクロンN740」、「エピクロン604」(以上、大日本インキ化学工業社製)、「エピコート834ニス(固形分:80質量%)」、「エピコート828」、「エピコート834」、「エピコート1001」「エピコート1004」(以上、ジャパンエポキシレジン社製)などが挙げられる。メラミン系樹脂としては、「メランX81:日立化成工業社製」、「サイメル202」、「サイメル254」、「サイメル370」、「サイメル327」、「サイメル325」(以上、三井サイテック社製)、「スーパーベッカミンL−105−60」、「スーパーベッカミンJ−820−60」(以上、大日本インキ化学工業社製)、「ユーバン20SB」、「ユーバン20SE」、「ユーバン21R」、「ユーバン122」、「ユーバン225」(以上、三井化学社製)などが挙げられる。ベンゾグアナミン系樹脂としては、「スーパーベッカミン13−535:大日本インキ化学工業社製」、「マイコート105」、「マイコート106」、「マイコート1128」(以上、三井サイテック社製)などが挙げられる。
エポキシメラミン系樹脂としては、「TCM−01メジューム:大日本インキ化学工業社製」などが挙げられるポリエステルメラミン系樹脂としては、「99X0207:大日本インキ化学工業社製」などが挙げられる。
【0023】
また、顔料を予め分散剤、有機溶剤などに分散させた顔料分散体に含まれる分散剤も樹脂として機能する場合がある。顔料分散剤としては、「アジスパーPB−711」、「アジスパーPB−821」(以上、味の素ファインテクノ社製)、「BYK−2000」、「BYK−2001」(以上、ビックケミージャパン社製)などが挙げられる。
【0024】
さらに、このカラーフィルター作製用インキ組成物中の樹脂の配合量は、2〜15質量%、好ましくは3〜10質量%とされるが、これと同時に顔料と樹脂との配合容積比が、固形分比率で、顔料:樹脂で2:5〜1:1、好ましくは 1:2〜 2:3とする。この樹脂のインキ組成物中の含有量が2質量%未満では、インク膜が脆くなる。一方、15質量%を超えると、転写画像の鮮鋭度が低下する。
【0025】
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物は、この樹脂以外に、顔料、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤、表面エネルギー調整剤を含んでいる。
【0026】
顔料としては、カラーフィルター用顔料として用いることができる公知のものが挙げられるが、色純度と色濃度が高く、透明性の高いものが好適に用いられる。これらの顔料としては、例えば、赤、緑、青、墨の各色で使用できる顔料として、以下に示すものが挙げられる。顔料の種類を、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。
【0027】
赤色顔料としては、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215、254などが挙げられる。
緑色顔料としては、7、36、58などが挙げられる。
青色顔料としては、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64などが挙げられる。
墨顔料としては、カーボンブラック、チタンブラックなどが挙げられる。
【0028】
また、これら赤色顔料、緑色顔料、青色顔料の色調整およびインキの流動性を改善するために、次に挙げる顔料を必要量添加することができる。
例えば、黄色顔料として、17、83、109、110、128などが挙げられる。また、紫顔料として、19、23などが挙げられる。白顔料として、18、21、27、28などが挙げられる。橙顔料として、38、43などが挙げられる。
【0029】
ブラックマトリックスを形成するためのカラーフィルター作製用インキ組成物に用いられる顔料としては、チタンブラックが用いられる。
通常、フォトレジスト法では、ブラックマトリックスに必要とされる光遮蔽度(墨の光学濃度で代用:以下、「OD値」と言う。)をより高いレベルで達成しようとすると、露光工程で充分に光が浸透せず、露光不足、現像不良を発生しやすい。ところが、凸版反転印刷法では露光工程などを経ないため、前述のようなフォトレジスト法における問題も発生しない。よって、高いOD値のブラックマトリックスが得られる。
【0030】
また、本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物でも、カラーフィルターに一般的に用いられるカーボンブラックを使用できるが、チタンブラックあるいはチタンブラックとカーボンブラックを併用することが好ましい。このようにすれば、チタンブラックの顔料特性から良好な顔料分散が得られ、かつ低粘度であるため、カラーフィルター作製用インキ組成物中の含有量を高くできることから、TFT型液晶表示装置用カラーフィルターに要求されるOD値を薄膜で実現できる。
【0031】
さらに、顔料の分散性が高いほど、顔料の特性が発揮されやすいため、必要に応じて顔料への表面処理や、分散時に顔料分散剤や界面活性剤などの助剤を加えることができる。したがって、これらの顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。
例えば、青色顔料15:6の場合には、分散剤として、EXCEDIC BLUE 0565(商品名、大日本インキ化学工業社製)、EXCEDIC RED 0759、EXCEDIC YELLOW 0599、EXCEDIC GREEN 0358、EXCEDIC YELLOW 0648(以上いずれも商品名、大日本インキ化学工業社製)、チタンブラック分散液BT−1CA、BT−1CB、BT−1DA、BT−1DB、BT−1DC,BT−1DD(以上、三菱マテリアル社製)などを適用することができる。
【0032】
この顔料のカラーフィルター作製用インキ組成物中における含有量は、2〜15質量%、好ましくは3〜10質量%とされ、2質量%未満では着色度(光学濃度)が不足し、15質量%を越えると得られるインキ膜が脆くなる。さらに、このカラーフィルター作製用インキ組成物中の樹脂の配合量は、2〜15質量%、好ましくは3〜10質量%とされるが、これと同時に顔料と樹脂との配合容積比が、固形分比率で、顔料:樹脂で2:5〜1:1、好ましくは、1:2〜2:3とする。この樹脂のカラーフィルター作製用インキ組成物中の含有量が2質量%未満では、インク膜が脆くなる。一方、15質量%を超えると、転写画像の鮮鋭度が低下する。
【0033】
配合する樹脂によっても異なるが、顔料に対して必要以上の樹脂が存在すると、その樹脂のタック性やインキ塗膜の粘弾性が大きいことにより、凸版による画像形成時に、画線がビリついたりするなどシャープな画像が得られず好ましくない。一方、顔料に対して樹脂が不足すると、被印刷基材への転写時に、ブランケット表面からインキ塗膜が完全に転写しないなどの不具合が生じて好ましくない。
【0034】
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物において樹脂を溶解してビヒクルとし、顔料をこれに分散するための有機溶剤として、速乾性有機溶剤と遅乾性有機溶剤とを併用して使用する。速乾性有機溶剤としては、20℃における蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)以上かつ大気圧下における沸点が115℃未満のエステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤または炭化水素系溶剤のいずれか1つ以上が用いられる。
【0035】
この速乾性有機溶剤の全インキ組成物中の含有量は、凸版反転印刷法の印刷速度や各色の印刷順序によって調整されるが、5〜90質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは20〜40質量%とされる。速乾性有機溶剤の全インキ組成物中に対する含有量が5質量%未満ではブランケット上でのインキ塗膜の乾燥が不十分で凸版にて画像化されなくなる。一方、含有量が90質量%を超えるとブランケット上でインキ塗膜が乾燥しすぎて凸版に転写しない。
【0036】
この速乾性有機溶剤は、ブランケットにインキ塗膜が形成される時には、カラーフィルター作製用インキ組成物が良好な流動性を有するために用いられ、その後、凸版にて画像化されるまでの間に、空中に揮発もしくはブラケットに吸収されることで、インキ粘度が上昇し、画像化に最適な粘度と粘着性と凝集力を有するようにするために配合される。
【0037】
また、この速乾性有機溶剤の蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)未満の場合は、ブランケット上のインキ塗膜が充分に乾燥せず、凸版以外部分にもインキ塗膜が転移し、ブランケット上に良好な画像が形成されないなどの不具合が生じるため好ましくない。これら速乾性有機溶剤は、ビヒクルの溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例として次に挙げられるものが用いられる。
【0038】
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピルなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどが挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテルなどが挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
また、これらの速乾性有機溶剤は、それぞれの系内および複数の系の混合物でもよい。これらの速乾性有機溶剤の中でも、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、エタノールおよび2−プロパノールが、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
【0039】
遅乾性有機溶剤としては、25℃における蒸気圧が11.3×10Pa(8.0mmHg)未満かつ大気圧下における沸点が115℃以上のエステル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤または炭化水素系溶剤のいずれか1つ以上が用いられる。
この遅乾性有機溶剤の全インキ組成物中の含有量は、凸版反転印刷法の印刷速度や各色の印刷順序によって調整されるが、全インキ組成物中5〜90質量%、好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%とされる。
遅乾性有機溶剤の全インキ組成物中に対する含有量が5質量%未満ではブランケット上のインキ塗膜が乾燥しすぎて凸版に転写できなくなる。一方、含有量が90質量%を超えるとブランケット上でのインキ塗膜の乾燥が不十分で凸版にて画像化できなくなる。
【0040】
この遅乾性有機溶剤は、凸版によりブランケットに形成され画像化されたインキ塗膜が、被印刷基材上に転写されるまで、ブランケット上に残留することで、インキの粘度が一定以上に上昇することを防ぎ、被印刷基材上に良好な画像を得ることができるようにするために用いられる。
【0041】
また、この遅乾性有機溶剤の蒸気圧が11.3×10Pa以上の場合は、ブランケット上のインキ塗膜が乾燥し過ぎるため、凸版へインキが転移せず、ブランケット上に良好な画像化されたインキ塗膜が形成されないなどの不具合が生じるため好ましくない。これら溶剤は、ビヒクルの溶解性、顔料分散系への親和性を考慮し、それぞれに応じた溶剤が選択されるが、例えば次に挙げられるものが用いられる。
【0042】
エステル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)、3メトキシ−3メチル−ブチルアセテート(「ソルフィットAC」商品名、クラレ社製)、エトキシエチルプロピオネート(EEP)などが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、1−ブタノール、ダイヤドール135(商品名、三菱レーヨン社製)、3メトキシ−3メチル−1ブタノール、1−ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノールなどが挙げられる。
【0043】
エーテル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールノルマルプロピルエーテル、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
炭化水素系溶剤としては、ソルベッソ100、ソルベッソ150(商品名、エクソン化学社製)、その他にもN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0045】
また、これらの遅乾性有機溶剤は、それぞれの系内および複数の系の混合物でもよい。これらの遅乾性有機溶剤の中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールノルマルプロピルエーテル、プロピレングリコールノルマルブチルエーテル、3メトキシ−3メチル−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、およびダイヤドール135が、その蒸発速度や表面張力から見て好ましい。
【0046】
表面エネルギー調整剤は、ブランケット表面にインキ組成物が均一に良好に塗布できるように、インキ組成物の表面エネルギーを、ブランケットの表面における表面エネルギーよりも小さくするために添加されるものである。この表面エネルギー調整剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。本発明のインキ組成物にあっては、このフッ素系界面活性剤の1種または2種以上が用いられる。この表面エネルギー調整剤の具体的なものとしては、メガファックF−470、メガファックF−472、メガファックF−484、メガファックF−1159、メガファックF−1303(以上、商品名、大日本インキ化学工業社製)などが挙げられる。
【0047】
表面エネルギー調整剤のインキ組成物中の濃度を0.05〜5.0質量%とし、0.1〜1.0質量%とすることが好ましい。これにより、ブランケットへのインキ塗工時に、塗工された塗膜の平滑性が向上し、より均一な塗膜が得られる。表面エネルギー調整剤のインキ組成物中の濃度が0.05質量%未満では、ブランケット上でのインキはじきが発生したり、インキ塗膜が均一にならずムラが生じたりして好ましくない。一方、表面エネルギー調整剤のインキ組成物中の濃度が5.0質量%を超えると、被印刷基材上へ転写後、インキ塗膜中の表面エネルギー調整剤が被印刷基材とインキ塗膜との密着性を阻害する不具合が生じてこれも好ましくない。
【0048】
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物では、上述の顔料、樹脂、表面エネルギー調整剤、速乾性有機溶剤、遅乾性有機溶剤以外に、顔料分散剤、消泡剤、被印刷基材への接着付与剤などの各種添加剤を適宜適量配合することができる。このような組成のインキ組成物の製造は、黒色顔料、樹脂、有機溶剤および顔料分散剤を、ビーズミルなどの一般的な分散機を用いてカラーフィルター作製用インキ組成物に最適な分散状態まで分散し、これにさらに樹脂、有機溶剤および各種添加剤を混合後、粗大粒子を濾過して行われる。
【0049】
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物にあっては、上述の組成を有するものであるが、その物性も重要な因子である。この物性としては、まず温度が25℃におけるインキ粘度が、0.5mPa・s〜10.0mPa・sの範囲内にある。これは、ブランケットにカラーフィルター作製用インキ組成物を均一に塗布するために、塗布装置からのインキ吐出性を鑑みて決定されたものである。この範囲よりも高い粘度の場合、塗工装置からのインキ吐出が不均一になり、ブランケット上に分断されて塗工される不具合や、塗工されたインキ塗膜が不均一となるため好ましくない。逆に、この範囲より低い粘度では、カラーフィルターに要求される色濃度や塗膜耐性が得られないため好ましくない。中でも、1.0〜5.0mPa・sであることがより好ましい。カラーフィルター作製用インキ組成物の粘度の測定は、市販のコーンプレート型回転粘度計(例えば、東機産業社製、TV−20Lなど)によって行われる。
【0050】
次に、カラーフィルター作製用インキ組成物の表面エネルギーも重要な因子である。カラーフィルター作製用インキ組成物の表面エネルギーは、15mN/m〜25mN/mであることが好ましいが、概ね22mN/mより低表面エネルギーである程好ましい。この範囲より高い表面エネルギーの場合、ブランケットへのインキレベリング性が悪く、ブランケット上でインキがはじいたりするなど均一なインキ塗膜が得られず好ましくない。また、この範囲よりも低い表面エネルギーのインキ組成物は実質的に製造できない。表面エネルギーの測定は、市販の自動表面張力計(例えば、協和界面化学社製、CBYP−A3など)を用いて行われる。
【0051】
さらに、ブランケットに対する膨潤量も重要である。この膨潤量は100mg/cm以下、好ましくは40〜90mg/cmの範囲とされる。この膨潤量とは、カラーフィルター作製用インキ組成物をブランケットに塗布した際に、カラーフィルター作製用インキ組成物中に含まれる有機溶剤がブランケット表面に浸透し、ブランケットの表面がこの浸透した有機溶剤で膨潤する度合いを示すものである。この値は、カラーフィルター作製用インキ組成物中の有機溶剤が凸版と接触するまでの間にブランケット表面に吸収される量に関係するとともにブランケットの表面がこの吸収された有機溶剤によって膨潤し、適切なインキ塗膜の剥離性、転移性を得るためにも関係する。
【0052】
この膨潤量の具体的な測定法は、面積50cm、厚み0.5mmのブランケット材にインキ塗膜が10μmになるように、バーコーターを用いて塗布し、1分後に粘着紙などを用いて剥がし取る。この塗布、拭き取りの操作を同じブランケット材に対して10回繰り返し、最終的なブランケット材の重量増加から膨潤量を算出し、これをブランケット材の体積で除して膨潤量とするものである。この膨潤量が100mg/cmを超えるとブランケット表面のシリコーンゴム層とこれを支える支持層との間で剥離が生じ、平滑性が失われたりして良好な画像が得られなくなる。
【0053】
また、カラーフィルター作製用インキ組成物のブランケット表面に対する接触角は35°以下、好ましくは25°〜35°とされる。ブランケットの表面材料は通常シリコーンゴムから構成されており、このシリコーンゴムに対してインキ組成物が良好に付着し、均一なインキ塗膜が形成されるために35°以下とすることが望ましい。接触角の測定は、市販の自動接触角計(例えば、協和界面化学社製、CA−W150など)を用いて行われる。
【0054】
本発明のカラーフィルターは、上述のカラーフィルター作製用インキ組成物を用い、凸版反転印刷法によって、被印刷基材上に、少なくともブラックマトリックス膜が形成されたものである。
【実施例】
【0055】
以下、具体例を示す。下記の表1の組成に従って、各カラーフィルター作製用インキ組成物を調製した。
【0056】
(実施例1)
顔料分散液として、EXCEDIC GREEN LC−TK−0358(大日本インキ化学工業社製)50部、重量平均分子量Mw>1500のエポキシ樹脂エピコート1004を1部、メラミン樹脂サイメル325を3部、表面エネルギー調整剤としてメガファックTF−1159を0.5部、溶剤IPAcを39部、PGMAcを6部、振とう攪拌して実施例1のインキ組成物を調製した。
【0057】
(実施例2−4)および(比較例1−4)
以下、実施例1と同様に、表1の組成に従って、実施例2−4および比較例1−4のインキ組成物を調製した。
【0058】
(印刷パターンの評価方法)
表1の印刷パターンの評価はDIC社内作の反転印刷試験機を用いてストライプおよび格子パターンの再現性によって行い、画線に直線性がある場合を良、画線が蛇行あるいはビリつく場合を不良とした。
【0059】
【表1】

【0060】
なお、シリコーンブランケットへの樹脂の浸透の度合いは以下の方法で判断した。
すなわち、シリコーンブランケットのゴム層を2cm四方にカットし、それを試験対象の樹脂が酢酸イソプロピルにより不揮発分で10%となるように希釈された溶液に15時間浸漬し、その後5時間乾燥させ、その前後での重量変化を測定した。重量変化は2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。表中の、エピコート1004(0.5%)などの()内の数値は、上記実験における重量変化の値である。
【0061】
ブランケットへの浸透が少ない樹脂の使用が、印刷パターン品質の良否に対応している。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のカラーフィルター作製用インキ組成物は、TFT型カラー液晶表示装置のカラーフィルターを凸版反転印刷法により作製する際に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明における凸版反転印刷法の一例を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 インキ塗布装置
2 ブランケット
3 インキ塗膜
4 凸版
5 被印刷基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンブランケット表面に形成された均一なインキ塗膜を凸版にて画像化し、これを被印刷基材に転写する凸版反転印刷法によりカラーフィルターを作製するためのインキ組成物であって、
1種以上の樹脂を含み、
この樹脂の80質量%以上がシリコーンブランケットに浸透しない材料から構成されたことを特徴とするカラーフィルター作製用インキ組成物。
【請求項2】
前記樹脂の重量平均分子量が、1500以上である請求項1に記載のカラーフィルター作製用インキ組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、メタノールに可溶な樹脂である請求項1に記載のカラーフィルター作製用インキ組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、重量平均分子量が1500以上の樹脂と、重量平均分子量が1500以下かつメタノールに可溶な樹脂との混合物である請求項1に記載のカラーフィルター作製用インキ組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルター作製用インキ組成物を用い、凸版反転印刷法によって得られたことを特徴とするカラーフィルター。


【図1】
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【公開番号】特開2009−265117(P2009−265117A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110626(P2008−110626)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(591097964)光村印刷株式会社 (14)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】