説明

カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインク

【課題】保存安定性に優れ、高輝度なカラーフィルタを実現可能なカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを提供する。
【解決手段】アクリル系樹脂、前記アクリル系樹脂とは異なるエポキシ樹脂、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を含有するカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクであって、
前記アクリル系樹脂が、(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーと(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする、カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式を用いて所定パターンの画素を形成するのに用いられるカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの発達、特に携帯用パーソナルコンピュータの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。
このような液晶ディスプレイのカラーフィルタにおいては、通常赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
従来より行われているカラーフィルタの製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBの画素を形成する。また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBの画素を形成する。さらに他の方法としては、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0003】
しかしながら、いずれの方法も、R、G、及びBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
これらの問題点を解決したカラーフィルタの製造方法として、特許文献1には、熱硬化性樹脂を含有する着色インクをインクジェット方式で基板上に吹き付け、加熱することにより画素部を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−21910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、熱硬化性樹脂を用いてカラーフィルタの画素部を形成する場合には、酸成分とエポキシ成分の重合及び/又は架橋反応を利用するのが一般的であった。しかしながら、酸成分とエポキシ成分の反応性は非常に高いため、経時で徐々に粘度が上昇し、保存安定性に問題があった。また、エポキシ樹脂を主体としてカラーフィルタの画素部を形成すると、高温下、熱履歴により、黄変を受けやすく、高輝度を達成できないという問題があった。
経時で徐々に粘度が上昇すると、インクジェット方式によるインクの安定的な吐出を損ね、インクジェットヘッドに目詰まりを生じさせる恐れがある。また、カラーフィルタの色特性としては、近年、特にカラーテレビの用途において、色域再現性、高コントラストおよび高輝度が要求されているが、画素部分のエポキシ樹脂等のバインダ成分が黄変すると、得られるカラーフィルタの輝度や色純度の低下を招く恐れがある。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明は、良好な硬化性を有しながら、保存安定性に優れ、且つ、高輝度なカラーフィルタを実現可能なカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクのバインダ成分として、エポキシ基含有モノマーと脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体とは異なるエポキシ樹脂とを組み合わせて用いることにより、上記課題が解決されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクは、アクリル系樹脂、前記アクリル系樹脂とは異なるエポキシ樹脂、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を含有するカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクであって、前記アクリル系樹脂が、(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーと(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクの熱硬化性バインダ成分として、エポキシ基含有モノマーと脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体とは異なるエポキシ樹脂とを組み合わせて用いることにより、良好な硬化性を有しながら、保存安定性に優れ、高輝度で色域再現性の良いカラーフィルタを実現可能である。
【0009】
本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクにおいては、前記アクリル系共重合体において、前記(A)エポキシ基含有モノマーが全共重合成分中20重量%〜80重量%であり、且つ前記(B)脂環式炭化水素含有モノマーが全共重合成分中20重量%〜80重量%であることが、硬化膜の硬化性及び密着性と高輝度のバランスの点から好ましい。
【0010】
本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクにおいては、前記(B)脂環式炭化水素含有モノマーが、有橋脂環式炭化水素基を有することが、高輝度の点から好ましい。有橋脂環式炭化水素基とは、脂環式炭化水素基内において橋かけ構造を有し、分子内に多環構造を有する多環状脂肪族炭化水素基をいう。
当該有橋脂環式炭化水素基としては、中でも、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクは、良好な硬化性を有しながら、保存安定性に優れ、高輝度なカラーフィルタを実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクは、アクリル系樹脂、前記アクリル系樹脂とは異なるエポキシ樹脂、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を含有するカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクであって、前記アクリル系樹脂が、(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーと(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする。
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクにおいては、熱硬化性バインダ成分として、エポキシ基含有モノマーと脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体とは異なるエポキシ樹脂とを組み合わせて用いることにより、良好な硬化性を有しながら、保存安定性に優れ、高輝度なカラーフィルタを実現することができる。
また、本発明においては、熱硬化性樹脂を用いているため、光照射をはじめとする特別な附帯設備が不要となり、生産性が高いという利点もある。
【0013】
熱硬化性バインダ成分として、エポキシ基含有モノマーと脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体と、当該アクリル系共重合体とは異なるエポキシ樹脂とを組み合わせて用いることにより上述した効果を発揮する理由としては、以下のように推測される。
熱硬化性バインダ成分として、従来のエポキシ樹脂及び酸成分を主体として用いると、酸成分とエポキシ樹脂の反応性が非常に高いため、経時で徐々に粘度が上昇し、保存安定性に問題があった。また、エポキシ樹脂を主体としてカラーフィルタの画素部を形成すると、高温下、熱履歴により、黄変を受けやすく、高輝度を達成できないという問題があった。
それに対して、本願では、エポキシ基を有しながら安定性の高いアクリル系共重合体をエポキシ樹脂と組み合わせて用い、エポキシ基に酸成分を共存させないため、エポキシ基が反応し難く、保存安定性に優れる。
側鎖にエポキシ基と脂環式炭化水素を有するアクリル系共重合体は、エポキシ基が熱により反応して重合及び/又は架橋をし、脂環式炭化水素を有することで硬化性に優れ、また脂環式炭化水素を有することで熱履歴による黄変も受けにくいため、高輝度である。
本発明においては、側鎖にエポキシ基と脂環式炭化水素を有するアクリル系共重合体とエポキシ樹脂の組み合わせの相乗効果により、良好な硬化性を有しながら、保存安定性に優れ、高輝度で色域再現性の良いカラーフィルタを実現することができる。
【0014】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクは、少なくとも、アクリル系樹脂、前記アクリル系樹脂とは異なるエポキシ樹脂、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を含有し、必要に応じて他の成分を含有していてもよいものである。以下、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクに用いられる各成分を説明する。
【0015】
<アクリル系樹脂>
本発明において用いられるアクリル系樹脂は、(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーと(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体である。
本発明で用いられるアクリル系樹脂は、(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーと(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させれば、各モノマーをランダムに共重合させたものであっても、ブロック共重合体となるように共重合させたものであっても良い。
【0016】
共重合成分として(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーを含むことにより、アクリル系共重合体がエポキシ基を含有するようになる。これにより、熱による反応性が向上し、硬化膜の硬化性が向上し、且つ硬化膜の密着性が良くなるという作用をもたらす。(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも本発明においては、グリシジル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
(A)エポキシ基含有モノマーとしては、1種単独で用いても良いし、2種以上混合して用いられても良い。
【0017】
アクリル系共重合体において、前記(A)エポキシ基含有モノマーの含有量としては、当該アクリル系共重合体を所望の硬化膜の硬化性及び密着性を有することができれば良いが、全共重合成分中に20〜80重量%であることが好ましく、更に30〜60重量%であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、更に、硬化膜の硬化性及び密着性に優れたものとすることができるからである。
【0018】
共重合成分として(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーを含むことにより、アクリル系共重合体が脂環式炭化水素基を含有するようになる。これにより、高い輝度が得られるという作用をもたらす。脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−シクロヘキセニルメチル(メタ)アクリレート、4−イソプロピルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレートシクロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0019】
上記脂環式炭化水素含有モノマーとしては、中でも、高輝度の点から、有橋脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーであることが好ましい。有橋脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上であることが、高輝度の点から好ましい。中でも特に、本発明においては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
(B)脂環式炭化水素含有モノマーとしては、1種単独で用いても良いし、2種以上混合して用いられても良い。
【0020】
アクリル系共重合体において、前記(B)脂環式炭化水素含有モノマーの含有量としては、上記アクリル系樹脂を所望の高輝度を有することができれば良いが、全共重合成分中に20〜80重量%であることが好ましく、更に30〜60重量%であることが好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、硬化膜の硬化性及び密着性に優れながら、高い輝度とすることができるからである。
【0021】
上記アクリル系共重合体は、本発明の効果が損なわれず、カラーフィルタの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、上記(A)エポキシ基含有モノマー及び上記(B)脂環式炭化水素含有モノマー以外の共重合可能なモノマーを更に用いて共重合させてなるものであっても良い。そのようなモノマーとして具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN置換マレイミド類等を例示することができる。
上記(A)エポキシ基含有モノマー及び上記(B)脂環式炭化水素含有モノマー以外の他の共重合可能なモノマーの含有量は、全共重合成分中に0重量%〜50重量%であることが好ましく、更に0重量%〜30重量%であることが好ましい。
【0022】
本発明のアクリル系共重合体においては、芳香環が含まれないことが、黄変を抑制する点から好ましい。また、本発明のアクリル系共重合体においては、(メタ)アクリル酸に誘導された構成単位等、実質的に酸成分が含まれないことが、保存安定性を良好にする点から好ましい。
【0023】
また、上記アクリル系共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000〜30,000であることが好ましく、更に3,000〜15,000であることが好ましい。上記アクリル系共重合体の重量平均分子量が1,000よりも小さすぎるとカラーフィルターの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易くなる恐れがある。一方、上記アクリル系共重合体の重量平均分子量が30,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなる恐れがあり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなる恐れや、長期保存の安定性が悪くなる恐れがあるからである。ここで、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0024】
本発明に用いられるアクリル系共重合体の合成方法としては、上記各モノマーが所望の割合で含まれるように共重合させる方法であれば良く、一般的な重合方法を用いることができる。具体的には、上記各モノマーおよび重合開始剤を溶媒に溶解または分散させた後、重合させる方法を挙げることができる。
【0025】
上記アクリル系共重合体の含有量は、インクの固形分に対して、10重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましく、更に20重量%〜50重量%の範囲内であること好ましい。上記範囲より少ないと、輝度が低下する恐れがあるからである。また、上記範囲より多いと、硬化膜の膜強度が低下する恐れがあるからである。また、上記アクリル系共重合体の含有量は、後述する顔料及び顔料分散剤以外の固形分中に、20〜80重量%含まれることが好ましく、更に30〜70重量%含まれることが、保存安定性、高輝度化及び硬化膜の膜強度の点から好ましい。
【0026】
<エポキシ樹脂>
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、前記エポキシ基を側鎖に有するアクリル系樹脂とは異なる樹脂である。本発明に用いられるエポキシ樹脂は、インクジェットインクにより形成された画素の耐溶剤性、密着性等の膜物性の点から、1分子中にエポキシ基を2個以上有することが好ましい。エポキシ基としては、エポキシド構造を有する基であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、硬化膜の架橋密度を高くしたり、低粘度化によりインクジェット吐出性能を向上させる点から、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3000〜20000であることが好ましく、更に好ましくは4000〜15000である。
上記エポキシ樹脂の分子量が3000よりも小さすぎるとカラーフィルタの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易く、当該分子量が20000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。
【0028】
エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0029】
より具体的には、商品名エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート807(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名EHPE3150(ダイセル化学工業社製)などの脂環式エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学工業社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0030】
これらのエポキシ樹脂の中でも、商品名EHPE3150(ダイセル化学工業社製)などの脂環式エポキシ樹脂、及び、エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂が好ましく、中でも更に商品名EHPE3150(ダイセル化学工業社製)などの脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0031】
上記エポキシ樹脂の含有量は、インクの固形分に対して、5重量%〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは10重量%〜15重量%である。エポキシ樹脂の含有量が少な過ぎると、充分な熱硬化性が得られない場合が生じるからである。また、エポキシ樹脂の含有量が多過ぎると、保存安定性が悪化する恐れがあるからである。
【0032】
また、本発明に用いられる前記アクリル系樹脂とは異なるエポキシ樹脂の、前記アクリル系樹脂に対する含有比率としては、所望の高輝度と硬化膜の膜強度とすることができるものであれば良いが、上記カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクに含まれるエポキシ樹脂とアクリル系樹脂の重量比(エポキシ樹脂/アクリル系樹脂)が20/80〜70/30の範囲内であることが好ましく、なかでも、30/70〜60/40の範囲内であることが、インク粘度の安定性と高輝度と硬化膜の膜強度の点から好ましい。
【0033】
<顔料>
本発明に用いられる顔料としては、公知の顔料を用いることができる。本発明において使用可能な有機顔料の具体例を下記表1および表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
また、用いることができる無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、ベンガラ、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
なお、これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。
【0037】
また、本発明に用いられる顔料の分散平均粒径としては、当該カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、通常、0.01μm〜0.30μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.01μm〜0.10μmの範囲内であることが好ましい。本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを用いてカラーフィルタの着色層を形成した場合に、輝度、コントラストに優れた着色層とすることができるからである。なお、上記顔料の分散平均粒径は、光散乱方式の粒度分布測定装置により測定することができる。
【0038】
本発明に係るインクジェットインクにおいて、顔料の含有量としては、カラーフィルタの着色層を形成した場合に、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なり特に限定されない。顔料の含有量としては、インクの固形分中において、20重量%〜70重量%の範囲内であることが好ましく、なかでも30重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましい。上記顔料の含有量が、上記範囲より多くても少なくても、インクジェットインクの粘度の安定性を欠いたり、また分散粒径が適切な範囲でないものになる可能性があるからである。
【0039】
本発明に係るインクジェットインクにおいて、上記顔料(P)と顔料以外の固形分(V)の配合重量比(P/V)は、0.5〜1.2であることが、インクの吐出性能、インクの決壊防止、及び得られる膜物性のバランスの点から好ましい。P/V比が低すぎると、充分な着色力を得るためには画素形成領域に付着させるインクの液滴量を多くしなければならないため、画素形成領域からインクが決壊するなどの問題が起こる場合がある。一方、P/V比が高すぎると、吐出ヘッドで目詰まりや飛行曲がりが発生する等の吐出性能が低下したり、膜の表面が荒れるなどの問題が起こる場合がある。
【0040】
<顔料分散剤>
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクには、顔料を良好に分散させるために顔料分散剤を配合する。顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系等の界面活性剤などを使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、特殊アクリル系重合体などの分散補助樹脂を更に用いても良い。
すなわち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
上記顔料分散剤の含有量は、インクの固形分全体に対して5〜50重量%、更に固形分全体に対して10〜30重量%であることが好ましい。
【0041】
<溶剤>
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクには、当該インクを高濃度液又は直ちにヘッドから吐出できるように調製するために、溶剤を配合する。
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを、保存用の高濃度インク又は直ちに塗工可能な濃度のインクに調製するために、固形分を好適に溶解及び分散させる溶剤であれば、特に限定されない。
【0042】
溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等が挙げられる。
【0043】
また、本発明に係るカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクには顔料が含まれるため、溶剤としては、顔料の分散性、分散安定性の点から、水酸基を含有しないものを用いることが好ましい。
溶剤として好ましいものとしては、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アジピン酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、及び、コハク酸ジエチルなどを例示することができる。また、これらの溶剤は、3−メトキシブチルアセテートやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)のような従来から顔料分散液の調製に用いられている分散性の高い溶剤と混合し或いは混合せずそのまま分散溶剤として用い、顔料分散液を調製することができる。
【0044】
また、溶剤中に水分が混入している場合も溶剤中に水分子の水酸基が存在することになるので、水酸基を有する溶剤を用いる場合と同様の問題を生じるおそれがある。従って、酸−エポキシ間の架橋反応系から水分を実質的に排除するために、水との混和性の低い有機溶剤を用いてインクジェットインクを調製するのが好ましい。かかる観点から、インクジェットインクを調製する溶剤の水に対する溶解性は、液温が20℃の水100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。
具体例として挙げた上記溶剤の中では、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートは水酸基を有しておらず、また、液温が20℃の水100重量部に対する溶解性も6.5重量部と低い水混和性を示すので、特に好ましい。
【0045】
溶剤は、当該溶剤を含むインクジェットインクの全量に対して、通常は40〜95重量%の割合で用いてインクジェットインクを調製する。溶剤が少なすぎると、インクジェットインクの粘度が高く、インクジェットインクの場合にはインクジェットヘッドからの吐出が困難になる。また、溶剤が多すぎると、所定のインク層形成部位からインクが決壊し、当該インク層形成部位に堆積させることのできるインク堆積量が不充分となり、乾燥後の膜厚が薄すぎて、それに伴い充分な透過濃度を得ることができなくなる。
【0046】
<熱重合開始剤>
本発明においては、熱により上記エポキシ樹脂、及び上記アクリル系共重合体中のエポキシ基を重合乃至架橋反応させることにより硬化させるため、熱重合開始剤を含有してもよい。本発明に用いられる熱重合開始剤は特に制限されないが、酸無水物であることが、保存安定性が高く、発熱量が少ない点から好ましい。酸無水物としては、例えば、多価カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリレイト、グリセリントリストリメリレイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
【0047】
上記の熱重合開始剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる場合の熱重合開始剤の配合量は、膜強度とインクの保存安定性の点から、上記エポキシ樹脂100重量部当たり、通常は1〜100重量部の範囲であることが好ましく、更に5〜50重量部であることが好ましい。
【0048】
<その他の成分>
更に、本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクには、必要に応じて、その他の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、次のようなものを例示できる。
a)充填剤:例えば、ガラス、アルミナなど。
b)密着促進剤:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランなど。
c)レベリング剤:例えば、ポリオキシアルキレン系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、特殊アクリル系重合体、ビニルエーテル系重合体等のビニル系重合体など。
d)凝集防止剤:例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなど。
e)硬化促進剤:例えば、第3級アミン類、有機金属錯体、トリフェニルホスフィンなど。
【0049】
<インクの製造方法>
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクは、各成分を溶剤に投入して混合し、固形成分を溶解又は分散させて製造しても良い。
しかしながら、顔料を樹脂等の他の成分と共に溶剤全体中に直接投入し攪拌混合すると、顔料を溶剤中に十分に分散させられないことが多い。そこで通常は、顔料の分散性及び分散安定性が良好な溶剤を用意し、そこに顔料を分散剤と共に投入してディソルバーなどにより十分攪拌し、顔料分散液を調製する。そして、得られた顔料分散液を、顔料以外の成分と共に、溶剤に投入し、ディソルバーなどにより十分に攪拌混合することによって、本発明に係るインクジェットインクとすることができる。
【0050】
顔料分散液を投入する残部の溶剤としては、最終的な溶剤全体の組成から顔料分散液の調製に用いた溶剤の分を差し引いた組成を有するものを用い、最終濃度にまで希釈してインクジェットインクを完成させても良い。また、顔料分散液を比較的少量の溶剤に投入して高濃度のインクジェットインクを調製しても良い。高濃度のインクジェットインクは、そのまま保存し、使用直前に最終濃度に希釈してインクジェット方式に使用することができる。
【0051】
本発明のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクの用途としては、カラーフィルタの着色層をインクジェット方式で形成する際に用いることができるが、なかでも、高輝度で色域再現性が良好であることが要求される着色層の形成に好ましく用いられる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。
<実施例1〜18、比較例1〜6>
1.顔料分散液の調製
顔料、顔料分散剤、及び溶剤を下記の割合で混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズを200重量部加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いて3時間分散し、顔料分散液を調製した。
【0054】
(1)赤色顔料分散液の調製
[顔料分散液の組成]
・C.I.ピグメントレッド254:4.5重量部
・C.I.ピグメントレッド177:7.5重量部
・C.I.ピグメントイエロー150:3.0重量部
・顔料分散剤(Disperbyk161:商品名、ビックケミー・ジャパン製、溶剤中に固形分30重量%):10.5重量部
・BDGAC(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):74.5重量部
【0055】
(2)緑色顔料分散液の調製
[顔料分散液の組成]
・C.I.ピグメントグリーン36:7.1重量部
・C.I.ピグメントイエロー150:7.9重量部
・顔料分散剤(Disperbyk161:商品名、ビックケミー・ジャパン製、溶剤中に固形分30重量%):10.5重量部
・BDGAC(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):74.5重量部
【0056】
(3)青色顔料分散液の調製
[顔料分散液の組成]
・C.I.ピグメントブルー15:6: 14.1重量部
・C.I.ピグメントバイオレット23: 0.9重量部
・顔料分散剤(Disperbyk161:商品名、ビックケミー・ジャパン製、溶剤中に固形分30重量%):10.5重量部
・BDGAC(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):74.5重量部
【0057】
2.アクリル系共重合体の合成
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に3プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を150重量部仕込み、窒素ガスで置換し、100℃に加熱した。そこに、グリシジルメタクリレート(GMA)50重量部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)50重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10重量部の混合液を2時間かけて滴下した。
滴下終了後100℃で3時間反応させることにより、GMA/DCPMA共重合体(溶液)を得た。
同様にして、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、1−アダマンチルメタクリレート(ADAMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を下記表3に示す割合としてアクリル系共重合体を合成した。
また、アクリル系共重合体a−3については、グリシジルメタクリレート(GMA)50重量部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)50重量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2重量部、1−ドデカンチオール 10重量部の混合液を2時間かけて滴下し、共重合体を得た。
得られたアクリル系共重合体a−1〜a−6について重量平均分子量(Mw)を、GPC測定装置(東ソー(株)製、HLC−8220GPC)にて、ポリスチレン標準の条件で測定した。
【0058】
【表3】

【0059】
3.インクの調製
上記で得られたアクリル系共重合体(a−1〜a−6)、エポキシ樹脂(1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ樹脂(製品名:EHPE−3150、ダイセル化学工業(株)製))、熱重合開始剤(酸無水物、リカシッドMTA−15:商品名、新日本理化社製)、溶剤(BDGAC)を下記表4に示すような組成で配合して樹脂組成物を調製した。
次に、赤色インクとしては上記赤色顔料分散液と上記樹脂組成物とを充分に混合し、顔料(P)と顔料以外の固形分(V)との配合重量比(P/V)が0.6、及び混合液中の固形分が20重量%となるようにBDGACを加えて、実施例1〜6及び比較例1〜2のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを調製した。
緑色インクとしては上記緑色顔料分散液と上記樹脂組成物とを充分に混合し、顔料(P)と顔料以外の固形分(V)との配合重量比(P/V)が0.6、及び混合液中の固形分が20重量%となるようにBDGACを加えて、実施例7〜12及び比較例3〜4のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを調製した。
青色インクとしては上記青色顔料分散液と上記樹脂組成物とを充分に混合し、顔料(P)と顔料以外の固形分(V)との配合重量比(P/V)が0.6、及び混合液中の固形分が20重量%となるようにBDGACを加えて、実施例13〜18及び比較例5〜6のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクを調製した。
【0060】
【表4】

【0061】
得られた各カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクについて、評価を行った。色度については下記のように樹脂硬化膜を形成して評価を行った。その評価結果を表5に示す。
(塗膜の形成)
厚み0.7mmのガラス基板(コーニング社製、1737)上に、スピンコートにより上記各インクジェットインクを塗布した。
その後、90℃のホットプレート上で10分間プリベークを行った。その後、クリーンオーブン内で、200℃で30分間加熱してポストベークを行い、更に240℃で30分加熱してポストベークを行って、着色層を形成した。
【0062】
〔評価方法〕
(1)粘度
落球式粘度計(日本シイベルへグナー社製、AMVn)を使用して、23℃におけるインクの粘度を測定した。
【0063】
(2)色度
顕微分光測定器(オリンパス(株)製、OSP200)を使用して測定した。
【0064】
(3)表面硬度(鉛筆硬度)
上記硬化膜層の表面の鉛筆硬度をJIS K 5400−1990 8.4.1に準じて「鉛筆引っかき試験」により評価した。
【0065】
【表5】

【0066】
表5の結果から、本発明に係る実施例で作製したインクジェットインクは、良好な硬化性を有しながら、保存安定性に優れ、高輝度であり、良好な色域再現性を実現できることが確認できた。実施例1〜5、7〜11、及び13〜17と実施例6、12、及び18とを比較すると、中でも脂環式炭化水素基が有橋脂環式炭化水素基である場合には、より高輝度を達成できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂、前記アクリル系樹脂とは異なるエポキシ樹脂、顔料、顔料分散剤、及び溶剤を含有するカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインクであって、
前記アクリル系樹脂が、(A)エポキシ基とエチレン性不飽和結合とを有するエポキシ基含有モノマーと(B)脂環式炭化水素基とエチレン性不飽和結合とを有する脂環式炭化水素含有モノマーとを少なくとも含んで共重合させてなるアクリル系共重合体であることを特徴とする、カラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインク。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体において、前記(A)エポキシ基含有モノマーが全共重合成分中20重量%〜80重量%であり、且つ前記(B)脂環式炭化水素含有モノマーが全共重合成分中20重量%〜80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体において、前記(B)脂環式炭化水素含有モノマーが、有橋脂環式炭化水素基を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
前記(B)脂環式炭化水素含有モノマーが、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、及び1−パーフルオロアダマンチル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用熱硬化性インクジェットインク。

【公開番号】特開2010−281951(P2010−281951A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133978(P2009−133978)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】