説明

カラー線量計

【課題】数Gyの放射線照射により発色する高感度であり、リアルタイムに発色し、エックス線透視においても観察を妨げないカラー線量計を提供する。
【解決手段】少なくとも、有機ハロゲン化物を含有するか或いは有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、且つ有機ハロゲン化物を骨格に有しないポリマー2とが接触しているカラー線量計。前記ポリマー1とポリマー2とが少なくとも二層以上に積み重なって接触していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー線量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明で指す放射線とは、荷電粒子であるベータ線(電子線)、および電磁波であるガンマ線、エックス線をいうが、これらの放射線は医療分野で広く利用されている。具体的には、医療器具や医療用具等の滅菌処理などの周辺領域にだけでなく、エックス線撮影などの診断手法などが挙げられる。最近では輸血用血液への照射やガン治療等の、間接的あるいは直接的な人体への治療方法として積極的に利用されるようになってきている。今後、その傾向はよりいっそう高くなるといわれている。
【0003】
その理由の一つとして、患者への身体的な負担の軽減が挙げられる。従来、外科手術でしか対処できなかった疾患あるいは外科手術が困難であった疾病などでは、執刀手術が採られるか対症療法で対応するしかできなかった。しかしエックス線を利用したコンピュータ断層撮影(CT)や、連続的なエックス線撮影(インターベンショナルラジオロジー、以下IVR)を利用したカテーテル手術等により、人体への負荷を大幅に軽減した方法で対応することが可能となった。
【0004】
しかし患者への放射線被ばくが伴うため、一部の患者には過剰照射による放射線皮膚障害が生じている(たとえば非特許文献1)。この現状を踏まえ、放射線を利用した医療行為に対して皮膚障害を発生させない環境を整え、万一障害が発生した場合においても的確な対処ができるような体制作りが急務となっている。
【0005】
従来利用されている放射線の測定方法では、次の方法が利用されている。電離箱、比例計数管、GM計数管、シンチレーション計数管、半導体検出器、熱蛍光線量計、蛍光ガラス線量計、写真フィルム、カラー線量計などである。これらの測定法には特殊な装置が必要なうえ、状況によって照射範囲の特定が難しく、照射線量が変動する医療現場では利用することが難しい。
【0006】
そこで最近、カラー線量計が注目されている。カラー線量計とは、ベータ線(電子線)やガンマ線、エックス線などの放射線のように人間の眼では捉えられないエネルギーの存在を、化学反応や物理反応等を利用して視覚的に照射量を検知できるようにしたものである。
【0007】
代表的なカラー線量計では次の3種の反応を利用している。即ち、(1)有機ハロゲン化物の放射線分解反応、(2)放射線重合反応、(3)シンチレーションを利用したフォトクロミック反応である。それぞれについて以下に具体的に説明する。
【0008】
(1)有機ハロゲン化物の放射線分解反応
この反応は有機ハロゲン化物の放射線分解により生成した酸性を示すハロゲン化水素を利用するものである。放射線照射によりハロゲン化水素が生成し、線量計中の水素イオン濃度が上昇する。このときpH指示薬を組み合わせることにより変色反応が生起する。この変色状態を利用して照射線量を定量する。
【0009】
具体的に使用されている材料の一つとして、ロイコ色素とポリ塩化ビニルを組み合わせたものがある(たとえば特許文献1)。この手法は放射線照射量が5,000から25,000Gy以上のとき変色する。また発生する酸に揮発性があるため、良好な再現性を得るためには環境設定が厳しくなる。
【0010】
(2)放射線重合反応
この反応は一分子内に二つのアルキニル基を有するジアセチレン系化合物の放射線重合を利用している(たとえば特許文献2)。この種の化合物は溶液を塗布するだけで自発的にアルキニル基が積み重なるように結晶化するため、エックス線などの外部刺激により連鎖的な重合反応が生起する。結果としてπ電子共役が発達した化合物が生成され、生成物は可視光領域に吸収を有するため視認性が発現される。
【0011】
この手法は100Gy程度の比較的低線量領域でも感度を示すものもあるが、反応終了までに1時間以上の時間がかかるため、即時性に劣る。
【0012】
(3)シンチレーションを利用したフォトクロミック反応
この反応は検出材料としてフォトクロミック特性を示すジアリールエテン系化合物を利用している(たとえば特許文献3)。
【0013】
一般にフォトクロミック材料は放射線化学反応ではクロミック特性を示さない。そこで、放射線エネルギーをシンチレータにより、フォトクロミズムを生起させる光エネルギーに変換しているのが特徴である。
【0014】
この手法の高感度化には無機シンチレータが必要であるため、IVRのようなエックス線透視画象を利用する場合には画質劣化の問題が生じる。またこの反応は可視光による逆反応が起こるため、反応後の保存状態を厳密に管理することが必要である。
【特許文献1】特公平06−072929号公報
【特許文献2】特開2000−241548号公報
【特許文献3】特開2005−082507号公報
【非特許文献1】中村仁信・諸澄邦彦・富樫厚彦 著、「IVRの臨床と被曝防護」、株式会社医療科学社、東京(2004年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上説明したように、従来は数Gy程度の低線量領域における放射線照射で再現性良くリアルタイムに発色し、IVRのようなエックス線透視においても観察を妨げないカラー線量計は存在しなかった。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、高感度のカラー線量計を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するカラー線量計は、少なくとも、有機ハロゲン化物を含有するか或いは有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、且つ有機ハロゲン化物を骨格に有しないポリマー2とが接触していることを特徴とする。
【0017】
前記ポリマー1と前記ポリマー2は少なくとも二層以上に積み重なって接触していてもよく、前記ポリマー1が前記ポリマー2中へ分散していもよい。また前記ポリマー1中へポリマー2が分散している構造を形成していても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、高感度のカラー線量計を提供することができる。
本発明では、ポリマー1の有機ハロゲン化物に放射線照射することにより発生する酸と、ポリマー2の発生した酸を検出するpH指示薬とを別々の層に分離し、それぞれが接触する構造を形成することにより、酸(水素イオン)とpH指示薬とが反応する頻度が高くなり、結果として数Gyの照射量を検出する。そのために、従来よりも1/100以下の低線量照射で、リアルタイムに発色し、IVRのようなエックス線透視においても観察を妨げないカラー線量計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るカラー線量計は、少なくとも、有機ハロゲン化物を含有するか或いは有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、且つ有機ハロゲン化物を骨格に有しないポリマー2とが接触していることを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記のポリマー1とポリマー2とが分離され、且つそれぞれが接触した構造をとることによって、1/100以下の低線量照射でも変色する、高感度カラー線量計である。
【0021】
本発明は、カラー線量計における有機ハロゲン化物の放射線分解反応を利用したものである。従来の技術では、有機ハロゲン化物と、放射線照射により発生した酸を検出するpH指示薬とは同一層内に存在する形態をとっていたため、発生した酸(特に水素イオン)の濃度は層内全体において均一である。したがって酸の拡散はほとんど起こらない。
【0022】
それに対し本発明では、放射線分解反応により酸が発生する層と、その酸を検出する層とを分離させ、接触している構造をとることが特徴である。本発明で形成される界面は、前記ポリマー1と前記ポリマー2は少なくとも二層以上に積み重なって接触してもよい。また、前記ポリマー1が前記ポリマー2中へ分散していてもよいし、前記ポリマー1中へポリマー2が分散していてもよい。
【0023】
最も基本的な構成である、放射線分解反応により酸が発生する層と、その酸を検出する層とを分離させた二層構造を形成しているものでも検出可能な放射線感度は数Gy程度と、一層構造のものと比較しても二桁以上高感度化することを確認している。
【0024】
なおフォトレジトの分野でも、レジスト材料の高感度化の手法として類似の技術が用いられている(たとえば、文献A:Leo Schlegel,Takumi Ueno,Nobuaki Hayashi,Takao Iwayanagi,Japanese Journal of Applied Physics,30,1991、pp3132−3137.)。これによれば、レジスト材料に光酸発生剤を均一に溶解分散させた場合、発生された酸の移動距離はプロセス条件に依存するが、5nm程度と見積もられている。発生した酸が均一に分布している場合、濃度勾配が発生しないため、拡散距離が大きくならないからである。
【0025】
それに対し、レジスト材料層と、酸を発生する層とを分離させた場合における発生させた酸の移動距離は、プロセス条件にもよるが、2000nmを超える場合もあることが上記の文献Aに報告されている。
【0026】
その機構は、酸が発生している部位と酸が存在しない部位とが分離しているが、接触している構造に起因する。レジスト露光後、それぞれの層に含まれる水素イオンの濃度には大きな差が生じる。濃度差が生じた物質間ではその差を均一化する方向で熱力学的作用が生じ(ルシャトリエの平衡の法則)、水素イオンはフィックの法則にしたがって拡散する。結果として拡散距離が飛躍的に大きくなる。本発明ではこの原理を応用したものである。
【0027】
本発明のカラー線量計は、その態様に応じた方法で使用することができる。以下に本発明のカラー線量計の実施態様について、図1乃至図4を用いて説明するが、これらに限定されるものではない。図1及び図2は、本発明のカラー線量計における、積層体の層構成の例を模式的に示す断面図である。図3は、本発明のカラー線量計における、少なくとも、有機ハロゲン化物を含有するかあるいは有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1がpH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、有機ハロゲン化物を骨格に有しないポリマー2中へ分散した層構成の例を模式的に示す断面図である。図4は、本発明のカラー線量計における、前記ポリマー1中へ前記ポリマー2が分散した層構成の例を模式的に示す断面図である。
【0028】
[積層体]
積層体とは、少なくとも、有機ハロゲン化物を含有するかあるいは有機ハロゲン化物を骨格に有する前記ポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、有機ハロゲン化物を骨格に有しない前記ポリマー2とが少なくとも接触した構造をとっている。
【0029】
図1に示す積層体の層構成の例では、前記ポリマー1と、前記ポリマー2とが、それぞれ独立した層を構成し、それぞれの面を互いに向かわせて密着させ、接着して一つの積層体を作成している。図2はそれぞれの層が複数、互い違いに積み重なるようにして積層している。
【0030】
ポリマー1から放射線照射により発生する酸は揮発性があるため、前記ポリマー2がポリマー1を挟み込む構造にすることが望ましい。それにより酸の揮発効果を抑制することができ、再現性を向上させることが可能となる。
【0031】
有機ハロゲン化物を含有するポリマー1は、ポリマー1aと有機ハロゲン化物の混合物からなる。前記ポリマー1に含まれる有機ハロゲン化物は、脂肪族系炭化水素化合物に一つ以上のハロゲン原子を有するかあるいは芳香族系炭化水素化合物に一つ以上のハロゲン原子を有すればよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでも良いが、それぞれが単独で有してもよいし、複数有してもよい。
【0032】
具体的な有機ハロゲン化物として、脂肪族系炭化水素では四臭化炭素(以下、TBC)、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロヘキサン、トリブロモメチルフェニルスルホン(以下、TBS)等がある。芳香族系炭化水素では1,4−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1−ブロモナフタレン等が挙げられる。
【0033】
ポリマー1aと有機ハロゲン化物の混合物を構成するポリマー1aとしては、ポリスチレン(PS)や、アルキッド樹脂、変性ポリエステル等が用いられる。
次に、有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1は、主鎖にハロゲン原子を有するポリマーでも、側鎖にハロゲン原子を有するポリマーでもいずれでもよい。主鎖にハロゲン原子を有するポリマーの例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。また主鎖や側鎖にハロゲン原子を有するモノマーユニットが存在すれば、共重合体であっても良い。一例として、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体が挙げられる。
【0034】
次に、有機ハロゲン化物を含有せず、且つ有機ハロゲン化物を骨格に有しないポリマー2が用いられる。
pH指示薬は、メチルイエロー(以下、MY)やブロムクレゾールグリーン(以下、BCG)等が用いられる。
【0035】
積層体の調製方法としては、前記ポリマー1と前記ポリマー2を別々に調製し、加熱して貼り合わせても良い。またポリマー1あるいはポリマー2の層を形成した後、その上へポリマー2あるいはポリマー1の層を形成しても良い。層形成法としては、キャスト法、スピンコート法、バーコーター法、ダイキャスト法等の種々の公知技術を用いて成型加工することができる。膜の厚さは、カラー線量計の特性を引き出す範囲であれば特に限定されないが、0.01から1mmの範囲が好ましい。
【0036】
上述のように成型加工された積層体に放射線を照射すると、放射線の照射線量に応じて色調が変化する。この吸収透過スペクトルまたは反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率または反射率の変化量を計測することにより放射線の照射線量を見積もることができる。
【0037】
本発明のカラー線量計は、室内光等の環境光による着色を避けるため、紫外線吸収剤を併用してもよい。具体的には該紫外線吸収剤を上記組成物の一成分として含有させても良いし、該組成物より調製したカラー線量計の表面に紫外線カット層を形成しても良い。
【0038】
[分散体]
分散体とは、図3及び図4に示したように、有機ハロゲン化物を含有するかあるいは有機ハロゲン化物を骨格に有する前記ポリマー1が、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、有機ハロゲン化物を骨格に有しない前記ポリマー2中への分散した形態や、前記ポリマー1中へ前記ポリマー2が分散した形態を指す。
【0039】
前記ポリマー1および前記ポリマー2は、それぞれ、前記積層体と同一のものであってよい。
分散体の調製方法としては、前記ポリマー1と前記ポリマー2とを溶融状態で強攪拌しても良いし、前記ポリマー1の溶液と前記ポリマー2の溶液を混合して溶媒を除去しても良い。前記混合液はミセル状や乳化状のような不均一溶液系でも良いが、均一溶液系であっても良い。ただし後者の均一溶液系の場合、溶媒を除去する過程において、それぞれのポリマーがそれぞれの成分を保持した状態に相分離する必要がある。
【0040】
上述のように成型加工された分散体に放射線を照射すると、放射線の照射線量に応じて色調が変化する。この吸収透過スペクトルまたは反射スペクトルを測定し、吸光度、透過率または反射率の変化量を計測することにより放射線の照射線量を測定することができる。
【0041】
本発明のカラー線量計は、室内光等の環境光による着色を避けるため、紫外線吸収剤を併用してもよい。具体的には該紫外線吸収剤を上記組成物の一成分として含有させても良いし、該組成物より調製したカラー線量計の表面に紫外線カット層を形成しても良い。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
実施例1から2
有機ハロゲン化物を含有するポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、有機ハロゲン化物を骨格に有しない前記ポリマー2とが積層構造をしたフィルムに放射線を照射した。照射した放射線は、エックス線であり照射量は5Gy(管電圧5keV、管電流20mA)である。この時点で着色状態を目視評価し、さらに暗所で48時間放置後、目視評価した。
【0043】
以上の結果を表1に示した。
なお、フィルムの調製方法は次のとおりである。ポリマー1層およびポリマー2層の原料をそれぞれ別々にPETシート上に膜厚0.3mmに設定したアプリケータを用いて塗布した。次に80℃に加温したホットプレート上で30分かけて溶媒を除去した後、それぞれの層が向き合う形で貼り付けることにより、評価フィルムを調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
(注)
1)溶媒にはトルエンを用いた。
2)TBC(四臭化炭素)を1.0g添加した。
3)MY(メチルイエロー)0.006g/L(トルエン溶液)を0.1mL添加した。
4)TBS(トリブロモメチルフェニルスルホン)を1.0g添加した。
【0046】
表1の結果より、エックス線5Gy照射により、フィルムは変色し、カラー線量計としての高感度性能を示し、さらに暗所で48時間放置後、照射後48時間後も変色変化がないことがわかる。
【0047】
実施例3から4
有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、有機ハロゲン化物を骨格に有しない前記ポリマー2とが積層構造をしたフィルムに放射線を照射した。
【0048】
照射した放射線は、エックス線であり照射量は5Gy(管電圧5keV、管電流20mA)である。この時点で着色状態を目視評価し、さらに暗所で48時間放置後目視評価した。
【0049】
以上の結果を表2に示した。
なお、フィルムの調製方法は次のとおりである。ポリマー1層およびポリマー2層の原料をそれぞれ別々にPETシート上に膜厚0.3mmに設定したアプリケータを用いて塗布した。次に80℃に加温したホットプレート上で30分かけて溶媒を除去した後、それぞれの層が向き合う形で貼り付けることにより、評価フィルムを調製した。
【0050】
【表2】

【0051】
(注)
1)塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体。溶媒は酢酸ブチル。
2)溶媒にはトルエンを用いた。
3)MY(メチルイエロー)0.006g/L(トルエン溶液)を0.1mL添加した。
4)BCG(ブロムクレゾールグリーン)0.004g/L(トルエン溶液)を0.1mL添加した。
【0052】
表2の結果より、エックス線5Gy照射によりフィルムは変色するカラー線量計としての感度性能を示し、さらに暗所で48時間放置後、変色変化がないことがわかる。
【0053】
比較例1から3
有機ハロゲン化物であるポリ塩化ビニルの酢酸ブチル溶液(濃度37wt%)100gを三点用意し、それぞれ別々にpH指示薬であるメチルイエローを0.04g、0.40g、0.80g溶解させた。これらの溶液をそれぞれPETフィルム上に0.3mmのアプリケータで塗布し、80℃のホットプレート上で30分かけて溶媒を除去してフィルムサンプルを調製した。これらのサンプルを二点ずつ用意し、エックス線を5Gyおよび5000Gy照射(管電圧5keV、管電流20mA)した。その結果を表3に示した。
【0054】
【表3】

【0055】
表3の結果より、有機ハロゲン化物であるポリ塩化ビニルの放射線分解反応を利用したpH指示薬の発色反応は、5000Gy程度の照射が必要であることがわかる。したがって、数Gy程度の放射線照射の検知をすることができない。
【0056】
比較例4
10,12−ペンタコサジイン酸0.19gをトルエン2mLに溶解させた。これをインクジェット用光沢紙へ2μL滴下させ、80℃のホットプレート上で30分かけて溶媒を除去してフィルムサンプルを調製した。
【0057】
このサンプルにエックス線を5Gy照射(管電圧5keV、管電流20mA)した。この時点で着色状態を目視評価し、さらに暗所で48時間放置後、目視評価した。その結果を表4に示した。表4の結果からわかるように、照射後も変色が終了せず、即時性に優れた線量の評価ができないことを示唆した。
【0058】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のカラー線量計は、エックス線を高感度で、リアルタイムに発色して測定でき、エックス線透視においても観察を妨げないので、IVRやCTなどの過剰照射防止検知ラベルとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のカラー線量計としての積層体の層構成の一実施態様を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のカラー線量計としての積層体の層構成の他の実施態様を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明のカラー線量計としての分散体の層構成の他の実施態様を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明のカラー線量計としての分散体の層構成の他の実施態様を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ポリマー1
2 ポリマー2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、有機ハロゲン化物を含有するか或いは有機ハロゲン化物を骨格に有するポリマー1と、pH指示薬を含有するが、有機ハロゲン化物を含有せず、且つ有機ハロゲン化物を骨格に有しないポリマー2とが接触していることを特徴とするカラー線量計。
【請求項2】
前記ポリマー1とポリマー2とが少なくとも二層以上に積み重なって接触していることを特徴とする請求項1に記載のカラー線量計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate