説明

カリン、マルメロ洗浄液及びその製造方法

【課題】天然のカリン又はマルメロの果実を原材料として利用することにより、手肌に優しく、安全であって、自然環境にも良好な洗浄液を低廉なコストで製造できるようにする。而して、ステンレス、アルミニウム等の金属製品、陶磁器製品、ガラス製品、木製品、皮革製品などの汚れ落とし及び艶出しに広く使用できるようにする
【解決手段】 カリン又はマルメロの果実を数ミリ程度の厚さに切断した果実片を、天日下に所要日数曝して十分に乾燥させたのち、沸騰後所要温度まで冷ました温水に2〜数日間浸漬し、その浸漬液から残渣を除去して製造する。
また、薄く切断し乾燥させたカリン又はマルメロの果実片を、所要時間煮沸し、所要期間放置した後、残渣を除去して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリン又はマルメロの果実を用いた洗浄液であって、ステンレス、アルミニウムなどの金属製品、木製家具製品、皮革製品、陶磁器製品、ガラス製品、繊維製品等の表面の汚れ及びカビ落とし、艶出しに好適な洗浄液及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カリン及びマルメロの果実は、石細胞が多く含まれていて水分が少ないために硬く、渋味や酸味が強いため生食には適しないので、殆ど利用されていないが、一部の果実は加工処理して商品化している。
例えば、果実の抽出液中に、抗菌作用、坑酸化作用等を有する成分が含まれているため、のど飴、花梨酒、花梨砂糖漬けなどが商品化されてる。しかし、カリン及びマルメロの果実を洗浄液として用いたものはなかった。
従来、金属製品、皮革製品、陶磁器製品、繊維製品等の表面の汚れ、カビを落とす為の洗浄液としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが適宜組合わされて使用されている。
【特許文献1】特開平10−46195
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の洗浄液は、被洗浄物の表面に吹き付けた後、束子やブラシなどで擦っていたために、表面を傷つけたり、汚れ落としに手間が掛かっていた。
また、界面活性剤などの色々な有機化合物を使用しているため、手肌を荒らしたり、環境に悪影響を及ぼす惧れが屡々あった。更に、その製造には種々の装置が必要であって、コスト高になっていた。
本発明は、上記の如き従来の難点に鑑み、天然のカリン又はマルメロの果実を原材料として利用することにより、手肌に優しく安全であって、色々な物の表面に付いた汚れを容易に落とすことが出来ると共に、自然環境にも良好な洗浄液を低廉なコストで製造できるようにしたものであり、金属製品、特にステンレス、アルミニウム製品、陶磁器製品、ガラス製品、木製品、皮革製品などの汚れ落とし及び艶出しに広く使用できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る洗浄液は、カリン又はマルメロの果実を数ミリ程度の厚さに切断し、天日下に所要日数曝して、十分に乾燥させた果実片を、沸騰後所要温度まで冷ました温水に2〜数日間浸漬し、その浸漬液を濾過し残渣を除去して製造するものである。
また、本発明に係る洗浄液は、カリン又はマルメロの果実を数ミリ程度の厚さに切断し、天日下に所要日数曝して、十分に乾燥させた果実片を冷水に入れ、所要時間煮沸した後2〜数日間放置し、残渣を除去して製造するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の洗浄液は、色々な物の表面に付着した汚れやカビを、手間を要せずに容易に洗浄除去することが出来る。また、洗浄後の被洗浄面に艶を出すことが出来ると共に、洗浄面には汚れが付着し難い特徴がある。
而して、特に靴、鞄などの皮革製品の洗浄に適するが、フローリング材、家具製品、ステンレスやアルミニウム等の金属製品、茶碗などの陶磁器製品、ガラス製品、繊維製品(動物、植物及び化学繊維からなるもの)、塩化ビニール製流し台の排水口の洗浄等に広く使用することが出来る。
また、天然の果実から製造することが出来るから、有害な添加物を含んでいないので安全であって、原液のまま使用しても手肌や人体に悪影響を及ぼす事がなく、自然環境にも良好である。なお、手肌に潤いを与え滑らかになるので化粧水としても利用する事が出来る。
更に、従来、用途が少なく捨てられていたカリン及びマルメロの果実を有効に使用することが出来るので資源利用の面からも有効であると共に、大掛かりな製造装置を必要としないので、低廉な価格で製造することが出来る利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(1)本発明に於ける洗浄液の製造工程1:
第1工程:カリン又はマルメロの果実を数ミリ程度の厚さに切断し、天日に数日間曝し て充分に乾燥させる。乾燥処理には、太陽光を利用した天日乾燥、電力を使用した強 制乾燥など色々な方法があるが、殺菌作用を有する天日干しを利用することが効果的 である。
第2工程:上記工程により得たカリン又はマルメロの果実片を、煮沸した後所要温度ま で冷ました温水に浸して、数日間放置する。なお、上記温水としては、出来るだけ不 純物を含まない水が好ましい。また、温水としては、沸騰 後90℃ 〜50℃ま で冷ましたものを使用するのが好ましい。
第3工程:上記第2工程で得た浸漬液を濾過して残渣を取り除き、洗浄液を得る。
而して、上記第2工程において、温水に浸す乾燥片の量及び浸漬時間を調整すること によって、洗浄液に含まれる成分(リンゴ酸、その他)の濃度を調整することができ る。
また、出来るだけ化学剤を使用しないほうが好ましいが、長期保存した場合に洗浄 液にカビが発生するのを防止するために、安息香酸メチルなどの防腐剤を少量添加し ても良い。
(2)本発明に於ける洗浄液の製造工程2:
第1工程:カリン又はマルメロの果実を数ミリ程度の厚さに切断し、天日下に数日間曝 して充分に乾燥させる。
第2工程:乾燥させたカリン又はマルメロの果実片を水に入れて所要時間煮沸する。そ して、煮沸後数日間放置する。
第3工程:放置した液を濾過して残渣を取り除き、洗浄液を得る。
而して、上記第2工程において、煮沸時間及び放置期間を調整することによって、洗 浄液に含まれる成分(リンゴ酸、その他)の濃度を調整することができる。
また、前記製造工程1と同様に、長期保存した場合に洗浄液にカビが発生するのを 防止するために、安息香酸メチルなどの防腐剤を少量添加しても良い。
(3)洗浄液の使用方法:
本発明に係る洗浄液は、従来品のように洗浄効果を高める為の化学剤を使用していな いので、原液をそのまま使用することが望ましい。
而して、洗浄される対象物及び汚染の程度に応じて異なるが、汚れを除く場合には、 本洗浄液を布やスポンジ等に適量含ませて、表面を軽く拭くようにすればよい。
また、汚れの酷い場合には、適量を被洗浄物の表面に吹き付け又は塗布し、暫く放置 した後、布やスポンジで軽く拭くようにすればよい。
次に、具体的な実施例を説明する。
【実施例1】
【0007】
カリンの果実を3〜5ミリ程度の厚さに薄くに切断し、天日に凡そ20日間曝して、充分に乾燥させる。次に、カリンの乾燥片40gを、沸騰後50℃まで下げた温水500mlに浸漬し、5日間放置した。次に、放置した浸漬液を濾過し残渣を取り除いて、カリン洗浄液を得た。
[使用例1]
上記実施例1より製造したカリン洗浄液を、適量布に含ませて靴、鞄の表面を拭いたところ、靴の汚れと、鞄の表面に発生したカビが簡単に落ちる事が分かった。また、洗浄した表面に艶が出るようになった。
[使用例2]
また、上記カリン洗浄液を、布に含ませてフローリングの床を拭いたところ、表面に付着した汚れが綺麗に落ちた。また洗浄した面は艶が出るようになり、しかも臭いがなく滑ることがない。また、木製の家具を拭いたところ、表面に艶が出るようになった。
[使用例3]
また、上記カリン洗浄液を適量スポンジに含ませて、ステンレス、アルミニウム金属製の鍋、ガラス製食器及び陶磁器製の茶碗の表面を擦ったところ、表面の汚れが簡単に落ちると共に、水を弾くようになり、汚れが付き難くなった。
また、適量をスポンジに含ませてステンレス製の流し台の排水口を擦ったところ、表面の汚れが簡単に落ちる事が分かった。
[使用例4]
更に、上記カリン洗浄液を適量布に含ませて、繊維製品の汚れを軽く擦ったところ、表面の汚れを繊維をいためることなく落とせることが分かった。
【実施例2】
【0008】
3〜5ミリ程度の厚さに薄く切断したカリン果実片を、天日下に凡そ20日間曝して充分に乾燥させた。次に、カリンの乾燥片6gを、沸騰させて90℃まで下げた温水160mlに浸漬し、2日〜3日間放置した。
次に、放置した浸漬液を濾過し残渣を取り除いて、カリン洗浄液を得た。
このようにして製造したカリン洗浄液は、長期間放置し場合、実施例1で製造した洗浄液により、カビの発生率が小さかった。
而して、上記条件により製造したカリン洗浄液を、上記使用例1〜3と同様に各種の製品の洗浄に使用した処、表面の汚れが簡単に落ちることが確認できた。また表面に艶が出るようになり、暫く放置しておいても汚れがつき難くなった。
【0009】
処で、上記実施例1及び2の製造工程で取り除いてカリン残渣物を、再び天日下で乾燥させた後、その乾燥片100〜130gを冷水1000ccに入れて凡そ40分間煮沸した後、数日間放置した。而して、放置した液を濾過し残渣を取り除いてカリン洗浄液を得た。このようにして得た洗浄液を適量布に含ませて、前記使用例1〜3と同様に各 種の製品の洗浄に使用した処、表面の汚れを除去できることが分かった。
【実施例3】
【0010】
カリンの果実を3〜5ミリ程度の厚さに薄くに切断し、天日下に凡そ20日間曝して、充分に乾燥させる。次に、カリンの乾燥片40gを冷水500ccに入れ凡そ30分間煮沸した後、数日間放置した。次に、放置した液を濾過し残渣を取り除いて、カリン洗浄液を得た。
而して、本実施例3より製造したカリン洗浄液を適量布に含ませて、前記使用例1〜3と同様に各種の製品の洗浄に使用した処、表面の汚れが簡単に落ちることが確認できた。
【0011】
なお、上記実施例及び使用例は、カリンの果実から製造したカリン洗浄液及びその使用例であるが、カリン果実と同じ成分を有するマルメロの果実を使用した場合でも、同じ製造工程で洗浄液を容易に製造することができると共に、その洗浄液もカリン洗浄液と同様の洗浄作用を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明に係る洗浄液は、金属製品、陶磁器製品、ガラス製品、木製製品、皮革製品、繊維製品等の表面の汚れを除去するために広く利用できると共に、環境に優しい洗浄液である。
また、本発明に係る洗浄液の製造方法は、天然のカリン又はマルメロの果実から低コストで容易に製造する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄く切断し乾燥させたカリン又はマルメロの果実片を、沸騰後所要温度まで冷ました温水に所要日数浸漬し、その浸漬液から残渣を除去したカリン、マルメロ洗浄液。
【請求項2】
薄く切断し乾燥させたカリン又はマルメロの果実片を、水に入れて所要時間煮沸して放置した後、残渣を除去したカリン、マルメロ洗浄液。
【請求項3】
カリン又はマルメロの果実を薄く切断した果実片を、天日下に所要日数曝して十分に乾燥させたのち、沸騰後所要温度まで冷ました温水に2〜数日間浸漬し、その浸漬液を濾過し、残渣を除去することを特徴とするカリン、マルメロ洗浄液の製造方法。
【請求項4】
カリン又はマルメロの果実を数ミリ程度の厚さに切断し乾燥させた果実片を、沸騰後90℃ 〜 50℃まで冷ました温水に2〜数日間浸漬し、その浸漬液を濾過し残渣を除去することを特徴とするカリン、マルメロ洗浄液の製造方法。