説明

カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法

【課題】被添加物にゼリー感と弾力性を与えるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法を提供する。
【解決手段】炭素数3以下の低級アルコールと水の混合比が75〜95:25〜5の反応溶媒を用い、水に対するアルカリ濃度35〜50重量%で、セルロースをアルカリセルロース反応させる工程と、無水グルコース単位当たり0.2〜0.5モルのアルカリ過剰下で、エーテル化反応させる工程と、エーテル化反応終了後に酸を添加し、過剰アルカリを中和して、pH=6.0〜6.5とする工程を含む、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法に係わり、とくに水溶液が特殊な物性を有するカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を得るための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー状食品や、ジャムなどのようにゼリー感を保持した食品が多く出回り、これらのゲル化剤、ゼリー化剤として、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナンなど天然糊剤を主に、食品メーカーは工夫をして配合処方を組んでいる。
【0003】
一方、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下、CMC−Naと称す)は、食品に対する安全性、品質の安定性から使用したい素材ではあるが、従来のCMC−Naはゼリー感が不足し、食品や医薬品分野での使用例は極めて少ない。
【0004】
CMC−Naの中から粘性を考慮して揺変性(チクソトロピー性)の強いものを選択して使用する例、または前述の天然糊剤と配合使用する例はあるが、充分ゼリー感を得るに至っていない。
【0005】
たとえば特許文献1では、2種のCMC−Naを配合使用することで揺変性を得ているがゼリー感は充分とはならない。
【0006】
特許文献2では電離性放射線、紫外線を照射することでCMC−Na溶液の改質をしているが、これでもゼリー感を得るには充分とは言えない。
【0007】
【特許文献1】特許第3405831号公報
【特許文献2】特開平7−48401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CMC−Naの合成方法を工夫することで、水溶液にゼリー感を与える方法を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被添加物にゼリー感と弾力性を与えるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法であって、炭素数3以下の低級アルコールと水の混合比が75〜95:25〜5の反応溶媒を用い、水に対するアルカリ濃度35〜50重量%で、セルロースをアルカリセルロース反応させる工程と、無水グルコース単位当たり0.2〜0.5モルのアルカリ過剰下で、エーテル化反応させる工程と、エーテル化反応終了後に酸を添加し、エーテル化反応終了後に酸を添加し、pH=6.0〜6.5を中和点として過剰アルカリを中和する工程(3)を含むカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法である。
【0010】
また、本発明のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法では、反応溶媒を回収したのち、反応物を100〜120℃で30〜120分間加熱処理してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、添加された食品等にゼリー感と弾力性を与えることができるCMC−Naを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の製造方法を用いて作製されたカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(以下、CMC−Naと称す)のエーテル化度は0.6〜1.0であることが好ましい。0.6以下では水に対する溶解性が充分でなく、本発明のゼリー成形作用が充分に発揮できない。一方、1.0以上では水溶液の流動性が増加することでゼリー感が発揮できない。
【0013】
また、本発明の製造方法を用いて作製されたCMC−Naの無水物換算で1%水溶液(1%溶液)の粘度は、100mPa・sを超える粘度であることが好ましい。粘度が100mPa・s以下では低重合度であるため、水溶液にゼリー感を与えるに必要とするに充分な粘度を得ることができない。一方、CMC−Naの1%溶液の粘度の上限はとくに限定されないが、5000mPa・s以上になると水溶液の固液濃度が低くなることにより固形分不足が不足し、ゼリー成形に好ましくないことがある。
【0014】
CMC−Naの反応法(アルカリセルロース化、エーテル化)には、水媒法と溶媒法があるが、本発明ではいずれの方法も使用することができる。反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ベンゾールおよびこれらの混合溶媒があげられる。なかでも、水との相溶性の点で、イソプロピルアルコール、イソプロピルアルコールと水、イソプロピルアルコールとメタノールと水の混合溶媒が好ましい。
【0015】
パルプをカルボキシメチル化する場合、苛性ソーダとモノクロール酢酸の使用量は、薬剤の有効利用のために、モルバランスを考慮して決定される。このカルボキシメチル化反応におけるエーテル化剤であるモノクロール酢酸に対する過剰の苛性ソーダを過剰アルカリという。この過剰アルカリの量は以下の式(1)、(2)によって計算することができる。
【0016】
過剰アルカリ(g)=アルカリ(g)−モノクロール酢酸(g)×0.845 (1)
0.845=NaOHのMW(2モル分)/ClCH2COOHのMW
※アルカリがNaOHの場合
【0017】
【数1】

【0018】
反応溶媒中のアルコールと水の混合比は、(アルコール)/(水)=75〜95/25〜5が好ましい。混合比が75未満であると反応系中のアルカリ濃度が低下し、モノクロール酢酸のカルボキシメチル化に供する有効利用率が低下し好ましくない。一方、95%を超えると、反応系中の水分量が充分でなくなり、アルカリが完全溶解できず不均一反応となり好ましくない。
【0019】
まず、原料パルプ中のセルロースにアルカリを作用させることにより、アルカリセルロースを製造する(アルカリセルロース化)。アルカリセルロース反応時における反応溶媒中での水に対するアルカリ濃度は、35〜50重量%が好ましい。35重量%未満ではセルロースに対するアルカリ接触濃度が低いことにより均一反応性に欠け、50重量%を超えるとアルカリ溶解度の限度を超えることによるアルカリの不溶解が生じ、やはり均一反応性に欠ける。ここで、水に対するアルカリ濃度とは、反応溶媒中の水とアリカリの合計量に対するアルカリ量の比の意味である。
【0020】
つぎに、アルカリセルロースにエーテル化剤を反応させて、エーテル化する。このエーテル化反応は、通常、アルカリ過剰下で進行させる。CMC−Naの過剰アルカリ量は単位グルコース(C6105)当たりのモル数で0.2〜0.5モルが好ましい。0.2モル未満ではカルボキシメチル化反応が充分に進行しない場合が考えられる。0.5モルを超えると、カルボキシメチル化反応でモノクロール酢酸の副分解が進むため有効利用率が低下し、さらにセルロースの重合度を低下させることによる粘度低下が進み好ましくない。
【0021】
エーテル化反応終了後、過剰のアルカリを酸で中和する。中和に用いる酸は、酢酸、リンゴ酸、スルアミン酸、クエン酸などの有機酸でもよく、または塩酸、硝酸、硫酸でもよい。
【0022】
通常、過剰アルカリの中和点は中性であり、現実的にはpH7.0〜7.5となる(CMC−Naは理論的にはpH≒7.6である)が、本発明では中和点を若干酸性側にしている。好ましい中和点はpH6.0〜6.5である。
【0023】
中和終了後、反応溶媒を除去し、粗CMC−Na中の揮発分をパルプ量に対して重量比で1〜2倍とする。
【0024】
反応溶媒を除去した後の反応物を100〜120℃で30〜120分間撹拌機で撹拌しながら混練する。
【0025】
本発明の製造方法で製造したCMC−Naはゼリー食品、化粧品、医薬品、飼料などの粘結剤として使用される。とくに、食品、医薬品などの第3物質の使用が厳しく制限されている用途での使用に効果がある。
【実施例】
【0026】
1.分析および測定方法について
<水分の分析>
CMC−Na試料1〜2gを秤量ビンに精密にはかりとり、105±2℃の定温乾燥器中において4時間乾燥し、デシケーター中で冷却したのち蓋をして重さをはかり、その減量からつぎの式(3)によって乾燥減量を算出する。
【0027】
【数2】

【0028】
<エーテル化度の測定>
CMC−Na試料(無水物)0.5〜0.7gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁製ルツボ中で灰化する。冷却したのち、これを500mlビーカーに移し、水約250ml、さらにピペットで0.05モル/lの硫酸35mlを加えて30分間煮沸する。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1モル/lの水酸化カリウム水溶液で逆滴定して、次の式(4)、(5)によって置換度を算出する。
【0029】
【数3】

A:試料1g中の結合アルカリに消費された0.05モル/l硫酸の量(ml)
a:0.05モル/l硫酸の使用量(ml)
f:0.05モル/l硫酸の力価
b:0.1モル/lの水酸化カリウムの滴定量(ml)
1:0.1モル/l水酸化カリウムの力価
162:グルコースのMW
80:CH2COONa−HのMW
【0030】
<酸度またはアルカリ度の測定>
CMC−Na試料(無水物)約1gを300ml三角フラスコに精密にはかりとり、約200mlの水を加えて溶かす。これに0.05モル/lの硫酸5mlをピペットで加え、10分間煮沸したのち冷却して、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.1モル/lの水酸化カリウム水溶液で滴定する(Sml)。同時に空試験を行い(Bml)、次の式(6)によってアルカリ度を算出する。
【0031】
【数4】

f:0.1モル/l水酸化カリウムの力価
なお、(B−S)f値が負の値となるときにはアルカリ度を酸度と読み変える。
【0032】
<pH測定>
CMC−Na試料の無水物換算1gを秤取し、水99mlを加えてよくかきまぜ、均等な糊状となるまで放置し、ガラス電極を備えたpHメーターで測る(温度は25℃とする)。
【0033】
上記工程において、使用する水はイオン交換法で製造した純水である。しかも、水中に溶解しているCO2ガスを駆逐するため、使用に先立ちアルカリを溶出しない容器中で5〜10分間煮沸し、再びガスを吸収しないようにして冷却し、比抵抗が2×104Ωm(25℃)以上である水を用いる。
【0034】
<粘度>
(溶液調製)
共栓付き300ml三角フラスコに、CMC−Na1%溶液の場合、約2.2gのCMC−Na試料を精密に秤量し、式(7)によって所要の水を加える。
1%溶液 試料(g)×(99−水分(%))=所要水(g) (7)
【0035】
(測定)
CMC−Naの上記水溶液を一夜間放置後、マグネチックスターラーで約5分間かきまぜ、完全な溶液とした。その後、口径約4.5mm、高さ約145mmの蓋付き容器に移し、30分間25±0.2℃の恒温槽に投入した。溶液温度が25℃になった溶液をガラス棒でゆるくかきまぜた。その上で、BM型粘度計の適当なローターおよびガードを取り付け、ローターを回転させ、回転開始3分後の目盛りを読みとる(回転数は50rpm)。なお、ローターNo.、およびローター回転数によって表1の係数を乗じて粘度値を算出した。
粘度=読取り目盛×係数(mPa・s)
【0036】
【表1】

【0037】
<ゼリー感測定>
水溶液粘度を50,000mPa・sに調整した。
【0038】
「ゼリー感」の指標として、レオメーターを用いて測定した、高粘度(50,000mPa・s)水溶液のゲル強度を用いた。高粘度水溶液のゲル強度測定条件は以下の通りである。
【0039】
レオメーター:レオナーRE3305((株)山電製)
プログラム:テキスチャー解析 Ver.1.1
プランジャー:円柱型、16mmφ使用
押し込み距離:15mm、速度:1mm/秒
単位:dyne/cm2
【0040】
2.CMC−Naの製造について
含水有機溶媒中でセルロース質原料にアルカリを作用させ、アルカリセルロースを調製した後、モノクロール酢酸によりエーテル化反応を行ない、CMC−Naを合成する。
【0041】
パルプ原料としては、たとえば、リンターパルプ、針葉樹材を主としたN材パルプ、広葉樹材を主としたL材パルプがあるが、本実施例では、下記のリンターパルプとL材パルプを用いた。
リンターパルプ:米国バッカイ・テクノロジーズ社製 HVE
L材パルプ:日本製紙ケミカル(株)製 LDPTT
【0042】
アルカリとしては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムが使用される。エーテル化剤としては、たとえば、モノクロール酢酸、モノクロール酢酸ナトリウム、モノクロール酢酸メチル、モノクロール酢酸エチル、モノクロール酢酸イソプロピルが使用される。有機酸としては、たとえば、酢酸、リンゴ酸、スルファミン酸、ギ酸、プロピオン酸が使用される。
【0043】
まず、アルカリセルロース反応について具体的に説明する。
【0044】
イソプロピルアルコールと水の配合比を(A:B)に調整した溶媒(C)gに、苛性ソーダを(D)gを溶解させたアルカリ溶液を作製する。このアルカリ溶液を容量5リットルの2軸ニーダー型反応機に仕込み、撹拌しながらチップ状の無水物パルプ(パルプ材種:E)200gを約5分かけて加える。25℃で50分間撹拌してアルカリセルロース反応を実施する。
【0045】
次に、アルカリセルロースにエーテル化剤を反応させて、エーテル化する反応について具体的に説明する。
【0046】
モノクロール酢酸(F)gを反応溶媒(イソプロピルアルコール80gと水20gの混合物)に溶解させたモノクロール酢酸溶液を25℃に調整した後、10分間かけて反応機内のアルカリセルロースに添加する。その後20分間かけて徐々に温度を上げ、78℃とする。78℃で90分間放置することで、エーテル化反応を進行させる。
【0047】
反応終了後、50℃以下まで冷却し、過剰の苛性ソーダを50重量%酢酸水溶液でpH6.0〜6.5(pH値:G)に中和する。
【0048】
なお、上記(A)〜(G)の具体的な数値については、表2に記載する。
【0049】
その後、減圧ろ過器を用いて中和終了物の反応溶媒を気化回収して、粗CMC−Na中の揮発分を1〜2倍量にする。なお、近似的には揮発分は33〜50%である。
【0050】
反応溶媒を回収後、同じニーダーを用いて反応物を110℃で過熱した。この加熱処理は、100〜120℃で30〜120分加熱することが好ましい。
【0051】
その後、CMC−Naを取り出し、含水率20wt%の含水メタノールを粗CMC−Naに対して10倍(重量比)量を加えて30分間、撹拌洗浄して副生塩等を取り除いた。
【0052】
撹拌洗浄後、減圧ろ過機で上記含水メタノールを気化回収し、粗CMC−Naを回収した。この操作を2回繰り返した後、粗CMC−Naを乾燥、粉砕して、粉末のCMC−Naを得た。
【0053】
上記方法により作製したCMC−Naは、エーテル化度が0.6〜1.0であり、1%粘度は100〜5000mPa・sとなる。
【0054】
3.実施例1〜13および比較例1〜8
実施例1〜13および比較例1〜8のそれぞれの条件で作製したCMC−Naについて、ゼリー感の指標となる、レオメーターによるゲル強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0055】
表2に示すように、実施例1〜13に示すCMC−Naは、いずれも下記(1)〜(5)の条件で作製される。
【0056】
(1)溶媒法によるアルカリセルロース反応およびエーテル化反応において炭素数3以下の低級アルコールと水の混合比が75〜95:25〜5の組成である。
(2)アルカリセルロース反応時の水に対するアルカリ濃度が35〜50重量%の範囲である。
(3)エーテル化反応時、無水グルコース単位当たり0.2〜0.5モルの過剰アルカリである。
(4)エーテル化反応終了後、過剰アルカリを中和後、さらに、pH=6.0〜6.5を中和点とすること。
(5)反応終了後、反応溶媒を回収し、次に100〜120℃で30〜120分加熱処理すること。
【0057】
その結果として得られた実施例1〜13のCMC−Naは、エーテル化度が0.6〜1.0の範囲であり、1%粘度が100〜5000mPa・sであった。適当なゲル強度が得られていることが分かった。
【0058】
これに対し、比較例1および2は、エーテル化反応時の無水グルコース単位当たりの過剰アルカリがそれぞれ0.10および0.60モルであり、上記条件(3)から外れている。また、比較例3および4は、中和点がそれぞれpH5.0および7.0であって、上記条件(4)から外れている。さらに、比較例5〜8は、アルカリセルロース反応時の水に対するアルカリ濃度が上記条件(2)から外れている。
【0059】
その結果として得られた比較例1、3および7のCMC−Naは、1%粘度が5000mPa・sを超えていた。また、比較例7および8のCMC−Naのエーテル化度は0.6〜1.0の範囲外であった。
【0060】
とくに、比較例1〜6および8のCMC−Naはゲル強度が、3.0〜5.5×104であるのに対し、実施例1〜13のCMC−Naはゲル強度が、6.2〜9.2×104と高く、より優れたゼリー感が得られることが分かった。
【0061】
なお、比較例7のゲル強度は、本発明の製造方法で製造したCMC−Naと同等レベルであったが、1%溶液の粘度が6000mPa・sを超えており、水溶液の固液濃度が低くなり過ぎるため、ゼリー成形の点で好ましくない。
【0062】
表2の結果から、ゲル強度はCMC−Naのエーテル化度、粘度との相関性が少ないことがわかる。例えば、実施例8と比較例6とは、いずれも1%水溶液粘度が3700mPa・s程度で近似している。一方、50000mPa・s水溶液でのゲル強度を測定すると一致しない。これは水溶液がゲル化する場合であっても、分子構造が密にからみ合っていない場合には、プランジャーの押し込みに対抗する抵抗力が不足することによるものと考えられる。
【0063】
【表2】

【0064】
4.応用例
つぎに、本発明の方法で作製したCMC−Naをイチゴジャムの粘結剤として用いた場合に、イチゴジャムに所望のゼリー感が発現されることを確認した。
【0065】
まず、実施例1〜13のCMC−Naを粘結剤としていちごジャムに添加しそれぞれ実施例J1〜J13のジャムを作製した。一方、比較例1〜8のCMC−Naを粘結剤として同等のジャムに添加してそれぞれ比較例JC1〜JC8のいちごジャムを作製した。まず、ジャムの作製方法を説明する。
【0066】
4.1 いちごジャムの処方
いちご 5 重量部
砂糖 35 重量部
クエン酸 0.25 重量部
CMC−Na 0.40 重量部
水 19.35 重量部
合計 100 重量部 (糖度50%に調整)
【0067】
4.2 いちごジャムの製造方法
(1)新鮮な成熟したいちごを十分に水洗し、ヘタを取り除く。
(2)いちごを鍋に入れ、砂糖の1/3量(11.7重量部)、粘結剤および水の全量を加えて混ぜ、しばらく放置する。
(3)砂糖の一部が溶けてきたら、木じゃくで静かに撹拌しながら中火で加熱する。沸騰したら、さらに1/3の砂糖を加え、やや煮詰ってきたところで、残りの1/3の砂糖とクエン酸を加えて加熱を続ける。
(4)煮詰ってきたら、屈折糖度計で糖度50%になるまで煮詰める。
(5)流水中で約30分間冷却する。
【0068】
4.3 作製したいちごジャムの評価方法
(1)ジャムのゼリー性評価する指標としてジャムの強度(保形性)を、レオメーターにて測定した。測定条件は下記の通り。
レオメーター:レオナー RE3305((株)山電製)
プログラム:テキスチャー解析Ver1・1
プランジャー:円柱型、16mmφ
押し込み距離:15mm
押し込み速度:1mm/秒
単位:dyne/cm2
【0069】
(2)伸展性‥‥ジャムをバターナイフでガラス板状に伸ばし、状態を評価した。
○:伸び易く滑らか
△:やや伸びにくく、少しゴツゴツする
×:伸びにくく、ゴツゴツする
【0070】
(3)離水性‥‥20gのジャムを濾紙に1時間おき、濾紙の重量変化から離水性を求めた。
0.5g以上/20g…離水あり
0.1gをこえて0.5g未満/20g…離水ややあり
0.1g以下/20g…離水なし
【0071】
(4)表面状態‥‥指で軽く押し、弾力の有無および付着の有無を評価した。
A:弾力があり、指に付着しない
B:弾力があり、指にわずかに付着する
C:弾力がなく、指に付着する
【0072】
4.4 作製したいちごジャムの評価
表3に示すように、比較例JC1〜JC8のジャムはジャム強度が4.9×104以下であり、本発明の実施例に比べてジャム強度が不十分であった。また、ジャムとしての伸展性が劣っており、ジャムからの水分脱離が生じやすかった。加えて、べとつき感が高いという性質を示した。
【0073】
これに対して、実施例J1〜J13のジャムは、いずれも5.7〜9.2×104のジャム強度を有しており、十分なゼリー感が確保できた。また、伸展性、離水性でも良好な結果が得られており、ジャムの指への付着もなくべとつき感がなかった。
【0074】
以上説明したように、本発明により、水分を含む食品等に添加すると、それらに強いゼリー感と強い弾力性を与えることができるカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を提供することができる。
【0075】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法であって、
炭素数3以下の低級アルコールと水の混合比が75〜95:25〜5の反応溶媒を用い、水に対するアルカリ濃度35〜50重量%で、パルプ中のセルロースをアルカリセルロース反応させる工程(1)と、
無水グルコース単位当たり0.2〜0.5モルのアルカリ過剰下で、エーテル化反応させる工程(2)と、
エーテル化反応終了後に酸を添加し、pH=6.0〜6.5を中和点として過剰アルカリを中和する工程(3)と、
を含むカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法。
【請求項2】
エーテル化反応終了後、反応溶媒を回収し、反応物を100〜120℃で30〜120分間加熱処理することを特徴とする請求項1記載のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の製造方法。

【公開番号】特開2009−144027(P2009−144027A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321640(P2007−321640)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】