説明

カルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物

【課題】エネルギー貯蔵装置の電極特性を向上させることができるカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物を提供する。また、粘度特性を向上させたカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物を提供する。
【解決手段】本発明はエネルギー貯蔵装置の電極製造のためのスラリー組成物のカルボキシメチルセルロースに関するもので、本発明による実施形態によるカルボキシメチルセルロースは、1wt%前記スラリー組成物で100から500cPの粘度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物に関し、より詳細には、スーパーキャパシタ電極の構成物質のうちバインダーに用いられるカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、二次電池及びスーパーキャパシタのようなエネルギー貯蔵装置の電極製造のためのスラリー組成物は、大きく三種類の物質からなる。一例として、前記スーパーキャパシタの電極製造用スラリー組成物は活性炭、導電材、そしてバインダーを含む。前記バインダーはスーパーキャパシタ電極の容量増加、電極特性、スラリー組成物の硬度及び粘性、そして電極の製造容易性の向上などのために提供される。スーパーキャパシタ電極製造のために用いられるバインダーにカルボキシメチルセルロース(Carboxy Methyl Cellulose:CMC)がある。
【0003】
図1は従来に用いられるエネルギー貯蔵装置の電極製造用スラリー組成物のうち何れか一つの挙動特性を表す図面であり、図2は従来に用いられるエネルギー貯蔵装置の電極製造用スラリー組成物のうち他の一つの挙動特性を表す図面である。図1によるスラリー組成物は、1wt%スラリー組成物で約10cP以下の粘度を有するCMC(以下、第1CMC)を含む。図2によるスラリー組成物は、1wt%スラリー組成物で約1500から2000cPの粘度を有するCMC(以下、第2CMC)を含む。
【0004】
図1を参照すると、前記第1CMCを含むスラリー組成物は剪断速度(s-1)が相対的に増加する条件(Up)での粘度特性と剪断速度が相対的に減少する条件(Down)での粘度特性の差異が大きい。これは、前記第1CMCの分子が小さくて粘度が相対的に低いため、スラリー状態で活性炭などのパウダーに吸着されたCMCの挙動が高い剪断速度でも低い剪断速度でも類似になって、上記のような現象が表れると判断されている。従って、前記第1CMCを含むスラリー組成物は沈殿物が発生され、溶液の安定性が落ちて、電極製造のために集電体の表面に前記スラリー組成物をコーティングする時、前記集電体の表面に均一にコーティングされない現象が発生される。
【0005】
図2を参照すると、前記第2CMCを含むスラリー組成物は剪断速度が相対的に増加する条件(Up)と剪断速度が相対的に減少する条件(Down)での粘度特性の差異が大きくない。これは、前記第1CMCとは異なって、前記第2CMCは分子が大きく、粘度が相対的に高いため、低い剪断速度ではパウダーに撚れている形態で存在し、高い剪断速度では撚れているCMCが配列された形態で存在するようになって、上記のような現象が表れると判断されている。従って、前記第2CMCを含むスラリー組成物で電極を製造する場合、前記第2CMCの粘性確保のために、別途の溶媒(solvent)の使容量が増加するようになる。この場合、前記電極を製造する時、前記スラリー組成物内の水分が多量蒸発されることにより、前記電極内の活物質の含量が落ちて、エネルギー貯蔵装置の発現容量に問題が発生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許第10−1999−0005298号公報
【特許文献2】韓国特許第10−2006−0053484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、エネルギー貯蔵装置の電極特性を向上させることができるカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物を提供することにある。
本発明が解決しようとする課題は、粘度特性を向上させたカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるカルボキシメチルセルロースは、1wt%スラリー組成物で100から500cPの粘度を有する。
【0009】
本発明の実施形態によると、前記カルボキシメチルセルロースは45、000から70、000の平均分子量を有することができる。
【0010】
本発明の実施形態によると、前記カルボキシメチルセルロースは0.7から0.9の置換度を有することができる。
【0011】
本発明によるスラリー組成物は、電極活物質として用いられる活性炭、前記スラリー組成物に導電性を付与する導電材、そして前記スラリー組成物の1wt%溶液で100から500cPの粘度を有するカルボキシメチルセルロースを含む。
【0012】
本発明の実施形態によると、前記カルボキシメチルセルロースは45、000から70、000の平均分子量を有することができる。
【0013】
本発明の実施形態によると、前記カルボキシメチルセルロースは0.7から0.9の置換度を有することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるカルボキシメチルセルロースは、1wt%スラリー組成物で100から500cPの粘度を有することができる。前記カルボキシメチルセルロースは前記スラリー組成物の沈殿物の発生を防止し、高い安定性を有して、前記スラリー組成物によって電極製造工程を可能にする粘性特性を向上させることができる。このようなカルボキシメチルセルロースを含むスラリー組成物でエネルギー貯蔵装置の電極を製造する場合、前記電極の製造効率が向上されて、前記エネルギー貯蔵装置の発現容量を増加させることができる。
【0015】
本発明によるスラリー組成物は、1wt%スラリー組成物で100から500cPの粘度を有するカルボキシメチルセルロースを含むことができる。この場合、前記スラリー組成物は沈殿物が発生されず、高い安定性を有して、前記スラリー組成物によって電極製造工程を可能にする粘性特性を向上させることができる。従って、本発明によるスラリー組成物でエネルギー貯蔵装置の電極を製造する場合、前記電極の製造効率が向上されて、前記エネルギー貯蔵装置の発現容量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来に用いられるエネルギー貯蔵装置の電極製造用スラリー組成物のうち何れか一つの挙動特性を表す図面である。
【図2】従来に用いられるエネルギー貯蔵装置の電極製造用スラリー組成物のうち他の一つの挙動特性を表す図面である。
【図3】本発明の実施形態によるスラリー組成物の挙動特性を表す図面である。
【図4】本発明の実施形態によるスラリー組成物とカルボキシメチルセルロースの挙動特性を表す図面である。
【図5】従来技術によるスラリー組成物で製造された電極と本発明の実施形態によるスラリー組成物で製造された電極の容量特性を比較する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを果たす技術などは、添付される図面とともに詳細に後述される実施形態を参照すると明確になるであろう。しかし、本発明は以下に開示される実施形態に限定されず、相異なる多様な形態で具現されることができる。本実施形態は、本発明の開示を完全にさせるとともに、本発明が属する技術分野にて通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に伝達するために提供されることができる。明細書全体において、同一参照符号は同一構成要素を示す。
【0018】
本明細書で用いられる用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書で、単数型は文句で特別に言及しない限り複数型も含む。明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」は言及された構成要素、段階、動作及び/または素子は一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0019】
以下、本発明によるカルボキシメチルセルロース及びこれを含むスラリー組成物に対して詳細に説明する。
【0020】
本発明の実施形態によるスラリー組成物は、所定のエネルギー貯蔵装置の電極製造のための流体であることができる。例えば、前記スラリー組成物は二次電池及びスーパーキャパシタの電極製造のために、金属板にコーティングされる溶液であることができる。
【0021】
前記スラリー組成物は活性炭、導電材、そしてバインダーを含むことができる。前記活性炭は電極活物質として用いられることができる。従って、前記活性炭はその表面積が大きいほどエネルギー貯蔵装置の電極電荷量の蓄積向上に有利であることができる。前記導電材は前記スラリー組成物に導電性を付与するための物質であることができる。前記導電材としては、電気伝導度が高い炭素系物質及び多様な種類の金属ナノ粒子が用いられることができる。
【0022】
前記バインダーは前記スラリー組成物の物質特性を向上させるために提供される。一例として、前記バインダーはカルボキシメチルセルロース(Carboxy Methyl Cellulose)を含むことができる。前記カルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」という)は、1wt%前記スラリー組成物で100から500cPの粘度を有することができる。前記CMCの粘度が100cPに比べて低い場合、前記CMCには沈殿物が発生され、溶液の安定性が落ちて、電極製造のために集電体の表面に前記スラリー組成物をコーティングする時、前記集電体の表面に均一にコーティングされない現象が発生される。これに反して、前記CMCの粘度が500cPに比べて大きい場合、前記CMCを含むスラリー組成物で電極を製造する時、前記CMCの粘性確保のために、多量の溶媒(solvent)が必要となる。この場合、前記電極の製造工程時、前記スラリー組成物内の水分が多量蒸発されることにより、前記電極内の活物質の含量が落ちて、エネルギー貯蔵装置の発現容量に問題が発生される可能性がある。従って、前記CMCの粘度は100cPから500cPに調節されることが好ましい。
【0023】
また、本発明によるCMCは45、000から70、000の平均分子量を有することができる。前記CMCの平均分子量が45、000未満の場合、前記CMCには沈殿物が発生され、溶液の安定性が落ちて、電極製造のために集電体の表面に前記スラリー組成物をコーティングする時、前記集電体の表面に均一にコーティングされない現象が発生される。これに反して、前記CMCの平均分子量が70、000を超過する場合、前記CMCを含むスラリー組成物で電極を製造する時、前記CMCの粘性確保のために、多量の溶媒(solvent)が必要となるため、前記電極の製造工程時、前記電極内の活物質の含量が落ちて、エネルギー貯蔵装置の発現容量に問題が発生される可能性がある。従って、前記CMCの平均分子量は45、000から70、000に調節されることが好ましい。
【0024】
一方、本発明によるCMCは0.7から0.9の置換度(degree of substitution)を有することができる。前記置換度は前記CMCのセルロース誘導体の置換基の数を表す数値であることができる。前記CMCの置換度が0.7から0.9を満足する場合、前記スラリー組成物で製造された電極の特性が高くなることができる。
【0025】
上述のようなスラリー組成物を用いて、エネルギー貯蔵装置の電極を製造することができる。一例として、前記スラリー組成物をアルミニウム箔(foil)のような金属膜にコーティングし、前記スラリー組成物がコーティングされた前記金属膜をローラーで圧着させることができる。前記金属膜を集電体として用いられる電極ロッド(rod)をくるむように構成することができる。そして、前記金属膜を乾燥、切断及びパンチングし、エネルギー貯蔵装置用電極を製造することができる。ここで、上述のようなスラリー組成物はその粘度特性に優れ、前記アルミニウム箔の全般に均一な分布で形成されることができて、前記乾燥処理時に前記スラリー組成物内の水分の蒸発率が低く、前記電極製造工程の精密性及び容易性が高くなることができる。これによって、上述のようなスラリー組成物を用いて製造された電極を備えるエネルギー貯蔵装置は発現容量が向上されることができる。
【0026】
次に、以上で説明した本発明によるCMC及びこれを備えるスラリー組成物の物質特性、そして前記スラリー組成物で製造された電極の特性に対する測定結果を説明する。
【0027】
図3は本発明の実施形態によるスラリー組成物の挙動特性を表す図面である。図3を参照すると、本発明の実施形態によるスラリー組成物は、剪断速度(s-1)が相対的に増加する条件(Up)での挙動特性(粘度特性)と剪断速度が相対的に減少する条件(Down)での挙動特性(粘度特性)が殆ど一致する。これによって、本発明の実施形態によるスラリー組成物は、溶液安定性が高く、沈殿物が発生されず、電極製造のために集電体に前記スラリー組成物をコーティングする時、前記集電体の全般に均一にコーティングされることができるように安定的な物質特性を有する。
【0028】
図4は本発明の実施形態によるスラリー組成物とカルボキシメチルセルロースの挙動特性を表す図面である。図4を参照すると、本発明の実施形態によるカルボキシメチルセルロース(CMC)は、剪断速度(shear rate)が変化されても粘度が一定に維持される特性を有する。このようなCMCの粘度安定性によって、スラリー組成物の安定性が確保されることができる。これにより、以上で図3を参照して説明したように、本発明によるスラリー組成物は、剪断速度が相対的に増加する条件(Up)と剪断速度が相対的に減少する条件(Down)での挙動特性(粘度特性)が一致することによって、溶液安定性が非常に高い特性を有することができる。
【0029】
図5は従来技術によるスラリー組成物で製造された電極を備えるスーパーキャパシタと、本発明の実施形態によるスラリー組成物で製造された電極を備えるスーパーキャパシタの容量特性を表す図面である。図5で、図面符号10は従来の第1CMC(従来技術参照)を含むスラリー組成物で製造された電極を備えるスーパーキャパシタの容量特性を表すグラフである。図面符号20は従来の第2CMC(従来技術参照)を含むスラリー組成物で製造された電極を備えるスーパーキャパシタの容量特性を表すグラフである。図面符号100は本発明の実施形態によるスラリー組成物で製造された電極を備えるスーパーキャパシタの容量特性を表すグラフである。
【0030】
図5に図示されたように、本発明によるスラリー組成物で製造された電極100は従来技術による電極10、20に比べて、単位重量当たりエネルギー密度が顕著に高い。これによって、本発明によるスラリー組成物はエネルギー貯蔵装置の発現容量を増加させることができる。
【0031】
以上の詳細な説明は本発明を例示するものである。また、上述の内容は本発明の好ましい実施形態を示して説明するものに過ぎず、本発明は多様な他の組合、変更及び環境で用いることができる。即ち、本明細書に開示された発明の概念の範囲、述べた開示内容と均等な範囲及び/または当業界の技術または知識の範囲内で変更または修正が可能である。上述の実施形態は本発明を実施するにおいて最善の状態を説明するためのものであり、本発明のような他の発明を用いるにおいて当業界に公知にされた他の状態での実施、そして発明の具体的な適用分野及び用途で要求される多様な変更も可能である。従って、以上の発明の詳細な説明は開示された実施状態に本発明を制限しようとする意図ではない。また、添付された特許請求の範囲は他の実施状態も含むと解釈されるべきであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置の電極製造のためのスラリー組成物のカルボキシメチルセルロースにおいて、
前記カルボキシメチルセルロースは、1wt%スラリー組成物で100から500cPの粘度を有するカルボキシメチルセルロース。
【請求項2】
前記カルボキシメチルセルロースは45、000から70、000の平均分子量を有する請求項1に記載のカルボキシメチルセルロース。
【請求項3】
前記カルボキシメチルセルロースは0.7から0.9の置換度を有する請求項1または2に記載のカルボキシメチルセルロース。
【請求項4】
エネルギー貯蔵装置の電極製造のためのスラリー組成物において、
前記スラリー組成物は、
電極活物質として用いられる活性炭;
前記スラリー組成物に導電性を付与する導電材;及び
前記スラリー組成物の1wt%溶液で100から500cPの粘度を有するカルボキシメチルセルロースを含むスラリー組成物。
【請求項5】
前記カルボキシメチルセルロースは45、000から70、000の平均分子量を有する請求項4に記載のスラリー組成物。
【請求項6】
前記カルボキシメチルセルロースは0.7から0.9の置換度を有する請求項4または5に記載のスラリー組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−256358(P2011−256358A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235275(P2010−235275)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】