説明

カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物およびその製造方法

【課題】カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(B)で表されるエステル化合物に対して加水分解を行うことにより、カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物を製造する。


(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なN−スルフェニル置換複素環化合物であるカルボキシル基を有するN−スルフェニル置換ピロール化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子内に窒素−イオウ結合を有するスルフェンアミド化合物は、種々の機能性を持つことが報告されている(非特許文献1)。たとえば、ゴムの加硫化剤(特許文献1,2)、発芽前処理用除草剤(特許文献3)、殺菌剤(特許文献4)等が知られている。特に、含窒素複素環化合物の窒素上にスルフェニル置換基を有する場合は、殺菌作用を有する化合物として有効であるとされている(特許文献5)。また、複素環基を脱離基として働かせることによるスルフェニル化剤としての用途があり、アミン類と反応させることにより新たなスルフェンアミド化合物合成の出発原料となる(特許文献6、非特許文献2)。
このようなN−スルフェニル置換複素環化合物の中でも、N−スルフェニルピロール化合物は、その構造が他のN−スルフェニル置換複素環化合物と比較すると単純であるから、利用しやすいと考えられるにもかかわらず、従来からあまり知られていない。
【0003】
従来、N−スルフェニルピロール化合物を製造する場合には、ピロールとN−スルフェニルフタルイミド化合物やN−スルフェニルスクシンイミド化合物を塩基性条件下で反応させる方法が用いられてきた(非特許文献3)。しかしながら、この方法では、例えば反応を50%水酸化カリウム水溶液中で行なうなど、高濃度のアルカリ性溶液を使用することが必要とされている。
また、塩化スルフェニル化合物とピロールをカリウムt−ブトキシドの存在下に反応させて、N−スルフェニルピロール化合物を得る方法も報告されている(非特許文献4)。しかしながら、この方法の出発原料となる塩化スルフェニル化合物は、ジスルフィド類に対して塩素を反応させる方法を用いなければ製造できない化合物であるが、塩素は有毒なガスで、その取り扱いに注意が必要であり、その使用に際し、絶えず危険を伴う。そのため、塩化スルフェニル化合物の製造工程では、起こり得ると考えられる危険を回避する種々の手段を講ずる必要があった。また、塩素ガスは高い反応性を有していることから、原料の芳香環化合物に塩素分子が導入されるなど、塩素原子による副反応が起こる場合も考えられる。このようなことから、出発原料の製造工程も含め、反応に塩素を用いない製造方法の開発が望まれていた。
【0004】
このような、反応に塩素を用いない方法として、ベンゼンスルフェンアミド化合物と1,4−ジカルボニル化合物またはその等価体を反応させて目的とするN−スルフェニルピロール化合物を製造する方法が開発されている(特許文献7、特許文献8)。
この製造方法における出発物質であるベンゼンスルフェンアミド化合物は、主にチオサリチル酸エステルをヒドロキシルアミン−O−スルホン酸と反応させることにより得られる(特許文献9、非特許文献5)。この反応においては、以下に示すように、塩基性水溶液中に溶解していた出発原料が、反応後、水には不溶な生成物として析出することにより、副反応が抑えられ、高収率で目的物を得ることができる。
これに対し、例えばこの反応の出発原料にチオサリチル酸を用いた場合などのように、生成物であるベンゼンスルフェンアミド化合物が水に可溶なカルボキシル基のような置換基を有する場合は、目的生成物が析出することなく溶液中にとどまることから、副反応が進行してしまい、目的物は得られない。
【化1】

このように、カルボキシル基を有するベンゼンスルフェンアミド化合物は容易には合成できないので、ベンゼンスルフェンアミドを出発原料とする上述の製造方法により、カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物を直ちに合成することはできず、カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物を製造する方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−48831号公報
【特許文献2】米国特許第2866777号
【特許文献3】特開昭53−31643号公報
【特許文献4】特開昭55−51053号公報
【特許文献5】米国特許第2888462号
【特許文献6】特開2004−51612号公報
【特許文献7】特開2004−196730号公報
【特許文献8】特開2006−225339号公報
【特許文献9】特開2000−95751号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L. Craine and M. Raban, Chem. Rev. 89, 689 (1989).
【非特許文献2】M. Shimizu, H. Fukazawa, S. Shimada, and Y. Abe, Tetrahedron, 62, 2157 (2006).
【非特許文献3】H. M. Gilow, Tetrahedron Lett., 27, 4689 (1986).
【非特許文献4】R. Silvestri, E. Pagnozzi, G. Stefancich, and M. Artico, Synthetic Commun., 24, 2685 (1994).
【非特許文献5】M. Shimizu, H. Kikumoto, T. Konakahara, Y. Gama, and I. Shibuya, Heterocycles, 51, 3005 (1999).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、新規なカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物、および、その工業的に有利な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、N−スルフェニル複素環化合物は、複素環基が良好な脱離能を示すために、さまざまな求核試薬と硫黄原子上で反応して、複素環基の脱離した生成物を与えることが知られている。例えば、求核試薬がアミン類の場合は、N−スルフェニル複素環化合物から複素環基が脱離して、当該アミンのスルフェンアミド化合物が生成する。ところが、本発明者らは、N−スルフェニルピロール化合物の場合は、ピロール基の脱離基としての性質が弱く、この化合物における窒素−硫黄結合が求核試薬に対し安定で、切断しにくいこと、そして、当該N−スルフェニルピロール化合物がエステル基を有する場合には、当該エステル基の部位で反応が起こることを見出した。本発明は、当該知見に基づいてなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明者らは、エステル基を有するN−スルフェニルピロール化合物に求核試薬を反応させると、意外にもスルフェニルピロール部位では反応は起こらないこと、そして、求核試薬としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を用いた場合には、エステル基の加水分解が進行し、カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物を収率よく確実に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)下記一般式(A)で表されるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物。
【化2】

(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。)
(2)下記一般式(B)で表されるエステル化合物に対して加水分解を行うことを特徴とする、下記一般式(A)で表されるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の製造方法。
【化3】

(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【化4】

(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。)
(3)塩基性条件下で加水分解を行うことを特徴とする、(2)記載のカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明で得られるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物は、新規物質であり、除草剤や殺菌剤として用いることができる。
本発明のカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の製造方法は、対応するエステル基を有するN−スルフェニルピロール化合物に対して、塩基性条件下、加水分解を行う新規な製造方法であり、カルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物を収率よく確実に製造することができる。この新規な製造方法は、出発原料の製造工程を含め、他の従来方法で用いられる塩素を用いることがないので、安全で、環境に優しい製造方法であり、従来の方法と比較して優れた方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的化合物であるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物は、以下の一般式(A)により示される化合物である。
【化5】

【0013】
上記一般式(A)の置換基は、以下の通りである。
〜Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルコキシル基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、シクロヘキシロキシル基等が挙げられる。
ハロゲン原子の具体例としては、塩素、フッ素、ヨウ素及び臭素が挙げられる。
、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ドデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(A)で表されるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物は、下記一般式(B)で表されるN−スルフェニルピロール化合物を塩基性条件で加水分解することにより、製造することができる。
【化6】

【0015】
上記一般式(B)の置換基は以下の通りである。
〜Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数6〜12の芳香族基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルコキシル基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、シクロヘキシロキシル基等が挙げられる。
ハロゲン原子の具体例としては、塩素、フッ素、ヨウ素及び臭素が挙げられる。
、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ドデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0016】
上記原料物質である化合物(B)は公知物質である。その製造法の一例を挙げれば、エステル基を有するベンゼンスルフェンアミド化合物とγ−ジカルボニル相当化合物を反応させることにより製造することができる。
【0017】
本発明の製造方法を、N−(2−メトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロール(b)(一般式(B)においてR〜R=H、R=メチル基)を加水分解させることによりN−(2−カルボニルベンゼン)スルフェニルピロール(a)(一般式(A)においてR〜R=H)を合成する場合を例にとり、説明する。
【化7】

上記式に示したように、本発明の製造方法における反応は、エステル基が水酸化物イオンの攻撃を受けて、カルボン酸に加水分解されるものである。この反応からみて、一般式(B)において置換基がR〜R=H、R=メチル基である化合物(b)だけでなく、R〜Rが水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子であり、R、Rが水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子であり、Rが炭素数1〜6のアルキル基である化合物についても、同様な反応性を示すことは明かである。
【0018】
従来報告されているN−スルフェニル複素環化合物において、求核剤であるアミン類を反応させると容易に複素環基が脱離してスルフェンアミド類を与えること、あるいはN−アシルピロール類やN−スルホニルピロール類が求核剤と反応してピロリル基が脱離することに鑑みると、本発明の反応が非常に特殊な例であることがわかる。
【化8】

【0019】
本発明によるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の製造は、塩基の存在下に行なわれる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物等が使用される。
【0020】
上記製造方法は、好ましくは反応溶媒の存在下で実施される。
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のプロトン性有機溶媒、あるいは水が用いられる。これらの溶媒は単独で、または混合溶媒の形で使用される。
【0021】
上記製造方法における反応温度は、40℃〜100℃付近の温度とすることができる。この温度範囲未満の反応温度では、反応時間が遅くなる。この温度範囲を超えて高すぎる条件下に反応させると、異常な分解反応や副反応が多くなる。上記温度範囲は、50℃〜80℃の範囲であると、さらに好ましい。
反応時間は反応温度により左右され、一概に定めることはできないが、通常は1〜3時間で十分である。
【0022】
本発明で得られるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の具体例としては、以下の化学式(1)から(8)で示される化合物を例示することができる。これらの化合物は、以下に記載する実施例により得られる化合物である。
【化9】

【0023】
本発明で得られるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物は、新規化合物であり、含窒素複素環化合物の窒素上にチオ置換基を有することにより、殺菌剤として有効なものであり、その他、ゴムの加硫化剤、発芽前処理用除草剤として有用な化合物である。
【0024】
実施例
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
本発明で得られる化合物は、この実施例に挙げた化合物に限定されるものではない。
下記実施例において得られたN−スルフェニルピロール化合物は、各種スペクトルと元素分析の結果を主要な判定基準として同定した。
また、製造された化合物(1)から(8)は、前記で示した化合物(1)から(8)に対応するもので、その物性値としては、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR,13C−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)の順にそれぞれ記した。
【0025】
実施例1
内容積50mlのガラス製容器中にエタノール(20mL)と水(10mL)を入れ、水酸化カリウム(337mg,3等量)を溶解させた。N−(2−メトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロール(466mg,2mmol)を加え、60℃で2時間攪拌した。室温まで冷却の後、反応溶液に水を加え、未反応の原料や副生成物を塩化メチレンで抽出することにより、取り除いた。水相に希塩酸を加えて溶液を酸性にし、塩化メチレンで生成物を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥の後、塩化メチレンを減圧下留去させて目的化合物(1)であるN−(2−カルボニルベンゼン)スルフェニルピロールを収率90%で得た。
1H NMR(CDCl3)δ6.04(1H,dd,J=8.2,0.9Hz), 6.38(2H,t,J=2.1 Hz), 6.83(2H,t,J=2.1Hz), 7.22(1H,ddd,J=8.2,7.4,0.9Hz), 7.41 (1H,ddd,J=8.2,7.4,1.4 Hz), 8.13(1H,dd,J=8.2,1.4Hz).
13C NMR (CDCl3) δ112.1, 122.0, 122.3, 125.1, 127.8, 131.6, 134.6, 149.0, 171.4.
IR (KBr) νmax 3061, 2839, 1678, 1423, 1273, 743, 721 cm-1.
HRMS C11H9NO2Sとしての計算値 : 219.0354. 実測値 : 219.0266.
【0026】
実施例2
内容積50mlのガラス製容器中にエタノール(20mL)と水(10mL)を入れ、水酸化ナトリウム(120mg,3等量)を溶解させた。N−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロール(247mg,1mmol)を加え、60℃で2時間攪拌した。室温まで冷却の後、反応溶液に水を加え、未反応の原料や副生成物を塩化メチレンで抽出することにより、取り除いた。水相に希塩酸を加えて溶液を酸性にし、塩化メチレンで生成物を抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥の後、塩化メチレンを減圧下留去させて目的化合物(1)であるN−(2−カルボニルベンゼン)スルフェニルピロールを収率87%で得た。
【0027】
実施例3
実施例1においてN−(2−メトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−メトキシカルボニルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロール(261mg,1mmol)を用いることにより目的化合物(2)であるN−(2−カルボニルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロールを収率76%で得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.19 (6H, s), 5.97 (1H, dd, J=8.2, 0.9 Hz), 6.01 (2H, s), 7.21 (1H, ddd, J=7.8, 7.3, 0.9 Hz), 7.40 (1H, ddd, J=8.2, 7.3, 1.4 Hz), 8.14 (1H, dd, J=7.8, 1.4 Hz).
13C NMR (CDCl3) δ12.9, 107.9, 122.3, 123.0, 124.7, 131.8, 133.2, 134.4, 148.2, 171.1.
IR (KBr) νmax 2979, 1682, 1423, 1274, 1232, 744 cm-1.
HRMS C13H13NO2Sとしての計算値 : 247.0667. 実測値 : 249.0615.
【0028】
実施例4
実施例1においてN−(2−メトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロール(275mg,1mmol)を用いることにより目的化合物(2)であるN−(2−カルボニルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロールを収率73%で得た。
【0029】
実施例5
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロール(522mg,2mmol)を用いることにより目的化合物(2)であるN−(2−カルボニルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロールを収率86%で得た。
【0030】
実施例6
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニル−5−メチルベンゼン)スルフェニルピロール(130mg,0.5mmol)を用いることにより目的化合物(3)であるN−(2−カルボニル−5−メチルベンゼン)スルフェニルピロールを収率78%で得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.24 (3H, s), 5.80 (1H, s), 6.37 (2H, t, J=2.1 Hz), 6.82 (2H, t, J=2.1 Hz), 7.01 (1H, d, J=8.0 Hz), 8.00 (1H, d, J=8.0 Hz).
13C NMR (DMSO-d6) δ21.7, 111.3, 121.0, 121.8, 125.4, 127.3, 130.6, 143.9, 147.3, 168.7.
IR (KBr) νmax 2840, 1678, 1426, 1284, 1184, 1069, 720 cm-1.
【0031】
実施例7
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニル−5−メチルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロール(145mg,0.5mmol)を用いることにより目的化合物(4)であるN−(2−カルボニル−5−メチルベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロールを収率80%で得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.19 (6H, s), 2.24 (3H, s), 5.74 (1H, s), 6.01 (2H, s), 7.00 (1H, dd, J=8.2, 0.9 Hz), 8.04 (1H, d, J=8.2 Hz).
13C NMR (CDCl3) δ12.9, 22.4, 107.9, 120.2, 122.7, 125.9, 132.1, 133.2, 145.8, 148.4, 171.8.
IR (KBr) νmax 2922, 1672, 1596, 1284, 1233, 775 cm-1.
【0032】
実施例8
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニル−5−メトキシベンゼン)スルフェニルピロール(277mg,1mmol)を用いることにより目的化合物(5)であるN−(2−カルボニル−5−メチルベンゼン)スルフェニルピロールを収率72%で得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ 3.52 (3H, s), 5.29 (1H, d, J=2.3 Hz), 6.26 (2H, t, J=1.8 Hz), 6.57-6.62 (1H, m), 6.73 (2H, t, J=1.8 Hz), 7.85 (1H, dd, J=8.7, 2.3 Hz).
13C NMR (DMSO-d6) δ54.9, 106.2, 110.8, 111.5, 116.4, 132.3, 132.8, 149.9, 163.5, 168.4.
IR (KBr) νmax 2835, 1655, 1592, 1244, 724 cm-1.
【0033】
実施例9
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルの代わりにN−(2−エトキシカルボニル−5−メトキシベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロール(153mg,0.5mmol)を用いることにより目的化合物(6)であるN−(2−エトキシカルボニル−5−メトキシベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロールを収率66%で得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.21 (6H, s), 3.62 (3H, s), 5.32 (1H, d, J=1.4 Hz), 6.03 (2H, s), 6.70 (1H, dd, J=8.7, 1.8 Hz), 8.27 (1H, d, J=8.7 Hz).
13C NMR (CDCl3) δ12.9, 55.4, 106.7, 108.2, 111.5, 115.4, 133.2, 133.8, 151.2, 164.8, 171.3.
IR (KBr) νmax 2835, 2543, 1670, 1592, 1423, 1287, 1234, 764 cm-1.
【0034】
実施例10
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニル−4−フルオロベンゼン)スルフェニルピロール(133mg,0.5mmol)を用いることにより目的化合物(7)であるN−(2−カルボニル−4−フルオロベンゼン)スルフェニルピロールを収率34%で得た。
1H NMR(CDCl3) δ 5.96(1H,dd,J=8.7,4.8Hz), 6.39(2H,t,J=2.1Hz), 6.83(2H, t, J=2.1 Hz), 7.13-7.17 (1H, m), 7.82 (1H, dd, J=8.7, 2.7 Hz), 9.19 (1H, brs).
13C NMR (CDCl3) δ112.3, 118.0 (d, J=22.0 Hz), 122.3 (d, J=22.0 Hz), 123.1 (d, J=6.7 Hz), 124.2 (d, J=6.7 Hz), 127.8, 144.2 (d, J=2.9 Hz), 160.2 (d, J=246.2 Hz), 170.5.
IR (KBr) νmax 2858, 2564, 1682, 1471, 1435, 1268, 1183, 1067, 723 cm-1.
【0035】
実施例11
実施例2においてN−(2−エトキシカルボニルベンゼン)スルフェニルピロールの代わりにN−(2−エトキシカルボニル−4−フルオロベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロール(147mg,0.5mmol)を用いることにより目的化合物(8)であるN−(2−カルボニル−4−フルオロベンゼン)スルフェニル−2,5−ジメチルピロールを収率73%で得た。
1H NMR(CDCl3) δ 2.18(6H,s), 5.88(1H,dd,J=8.7,4.6Hz), 6.02(2H,s), 7.13-7.16(1H, m), 7.85 (1H,dd, J=8.7,2.7
13C NMR(CDCl3)δ12.9, 108.3, 118.4(d,J=24.0Hz), 122.3(d,J=22.0Hz), 123.7(d,J=7.7Hz), 124.3(d,J=6.7Hz), 133.1, 143.8(d,J=2.8 Hz), 160.1(d,J=245.3 Hz),170.9.
IR(KBr) νmax 2912,2555,1682,1426,1258,1232,890cm-1.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されることを特徴とするカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物。
【化2】

(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。)
【請求項2】
下記一般式(B)で表されるエステル化合物に対してエステル基の加水分解を行うことを特徴とする、下記一般式(A)で表されるカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の製造方法。
【化3】

(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【化4】

(式中、R〜Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはシアノ基から選ばれる基又は原子を表す。R、Rは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる基又は原子を表す。)
【請求項3】
塩基性条件下で加水分解行うことを特徴とする、請求項2記載のカルボキシル基を有するN−スルフェニルピロール化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−162504(P2012−162504A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25810(P2011−25810)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】