説明

カルボキシル官能性有機シリコーンを含有する防汚塗料組成物

(i)硬化性ポリマーおよび(ii)有機シリコーンポリマーを含む防汚塗料組成物。この防汚塗料組成物は、表面エネルギーが低く、適切な弾性を有し、付着する生物の定着およびそれらの付着力を低下させ、霧状または乳状の外観を呈すことのないクリアコートとして使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物、前記組成物で塗装された基材、および水域環境における基材の汚染抑制のための前記塗料組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水に浸される船体、ブイ、掘削用プラットフォーム、乾ドック設備、石油採掘リグおよびパイプ等の人工構造物には、緑藻類、褐藻類、フジツボ、イガイ等の水生生物が付着しやすい。このような構造物は金属製であることが一般的であるが、コンクリート等の他の構造材料を含んでいることもある。この付着が船体上にあると障害になる。なぜなら水中の移動の間の摩擦抵抗を増加させ、結果として、速度の低下および燃費の増加に繋がるからである。掘削用プラットフォームおよび石油採掘リグの脚等の固定構造物に付着があると、障害になる。なぜなら第一に、波および潮流に対する厚い付着層の抵抗は、予測不可能で潜在的に危険な応力を構造物に起こす恐れがあり、第二に、付着は、応力亀裂および応力腐食等の欠陥について構造物を検査することを困難にするためである。冷却水取水口および排水口等のパイプに付着があると、障害になる。なぜなら付着によって有効断面積が減少する結果、流量が減少するためである。
【0003】
商業的に最も成功している付着抑制方法では、水中生物に有毒な物質、例えば塩化トリブチルスズまたは酸化第一銅を含む防汚塗料が使用されてきた。しかし、このような塗料は、毒素が水域環境に放出された場合に及ぼす恐れのある損傷効果のため、次第に嫌悪の目で見られるようになっている。したがって、著しく毒性の高い物質を放出しない非汚染性塗料に対する必要性が存在する。
【0004】
シリコーンゴム塗料が水性生物による付着に抵抗力を持つことは、例えば、GB1,307,001およびUS3,702,778に開示されているように、長年知られてきた。このような塗料は、表面に生物が容易に固着できないようにすると信じられており、したがって、防汚塗料というより、むしろ付着物剥離塗料と呼ぶことができる。シリコーンゴムおよびシリコーン化合物は、一般に毒性が非常に低い。この防汚系を船体に施用したときの欠点は、海洋生物の蓄積は減少するが、すべての付着種を除去するには、比較的高い船速が必要とされることである。このため、場合によっては、このようなポリマーで処理された船体から効果的に付着物を剥離するには、少なくとも14ノットの速度で航行することが必要であることが示された。この理由のため、シリコーンゴムが得た商業的成功は限られており、これらの環境に優しい塗料の防汚性および付着物剥離性を改善する必要がある。
【0005】
FR2537985には、メチル有機シロキサン樹脂、シリコーンエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル系バインダー、および溶媒または希釈剤を含む防汚塗料組成物が開示されている。
【0006】
EP0903389には、光触媒酸化物、シリコーン樹脂またはシリカ、および撥水性フッ素樹脂を含む防汚組成物が開示されている。
【0007】
WO02/074870による液状のフッ素化されたアルキルまたはアルコキシ含有ポリマーを含む防汚組成物の提供により、さらなる改善が得られた。しかし、液体フッ素化アルキルもしくはアルコキシを含有するポリマーまたはオリゴマーには、クリアコートに使用するには適さないという欠点がある。なぜなら、そのような液体を含む塗料は透明ではなく、霧状または乳状の外観を呈すためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】GB1,307,001号明細書
【特許文献2】US3,702,778号明細書
【特許文献3】FR2537985号明細書
【特許文献4】EP0903389号明細書
【特許文献5】WO02/074870号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、表面エネルギーが低く、適切な弾性を有し、付着する生物の定着およびそれらの付着力を低下させ、霧状または乳状の外観を呈することのないクリアコートとして使用できる防汚塗料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(i)硬化性ポリマーおよび(ii)下記の一般式で表される有機シリコーンポリマーを含む防汚塗料組成物に関する。
【化1】

[式中、
R1は同じであっても異なってもよく、アルキル、アリールおよびアルケニル基から選択され、アミン基、式OR5(ただしR5は水素またはC1〜6アルキル)の酸素含有基、および下記式(I):
−R6−N(R7)−C(O)−R8−C(O)−XR9 (I)
に従う官能基で任意選択で置換されており
(式中、
6は、炭素原子1〜12個のアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、および炭素原子最大10個のポリオキシアルキレンから選択され、
7は、水素、炭素原子1〜6個のアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、および炭素原子1〜10個のポリオキシアルキレンから選択され、R7は、R8と結合して、環を形成してもよく、
8は、炭素原子1〜20個を有するアルキル基であり、
9は、水素、または酸素もしくは窒素を含有する基で任意選択で置換されている炭素原子1〜10個を有するアルキル基であり、
Xは、O、SおよびNHから選択され、
ただし、有機シリコーンポリマー中の少なくとも1つのR1基が上記式(I)に従う官能基またはその誘導塩であることを条件とする)、
R2は、同じであっても異なってもよく、アルキル、アリールおよびアルケニルから選択され、
R3およびR4は、同じであっても異なってもよく、アルキル、アリール、キャップドまたは非キャップドポリオキシアルキレン、アルカリール、アラルキレンおよびアルケニルから選択され、
aは、0から50,000までの整数であり、
bは、0から100までの整数であり、
a+bは、少なくとも25である。]
【0011】
R2、R3およびR4は好ましくはメチルおよびフェニルから独立して選択され、より好ましくはメチルである。
【0012】
6は、好ましくは炭素原子を1〜12個、より好ましくは2〜5個有するアルキル基である。
【0013】
7は、好ましくは水素、または炭素原子を1〜4個有するアルキル基である。
【0014】
8は、好ましくは炭素原子を2〜10個有するアルキル基である。
【0015】
9は、好ましくは水素、または炭素原子を1〜5個有するアルキル基である。
【0016】
Xは、好ましくは酸素原子である。
【0017】
a+bの範囲は、好ましくは100から300である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1つの実施形態では、R7は水素であり、R8は炭素原子1〜20個、好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個のアルキル基である。このような官能基の例としては、1−ブタン酸−4−アミドプロピル:
【化2】

および1−デカン酸−10−アミドプロピル:
【化3】

がある。
【0019】
別の実施形態では、R7はR8と連結し、ピロリン型の環を形成する。この実施形態による官能基の例としては、1−アミド−3−カルボキシピロリドン−1−プロピル:
【化4】

および1−アミド−3−メトキシピロリドン−1−プロピル:
【化5】

がある。
【0020】
好ましい実施形態では、有機シリコーンポリマーは塗料組成物および該塗料組成物を硬化させることで得られる塗膜のどちらにおいても液体として存在する。
【0021】
本発明の枠組みの中で、液状物質はASTM(1996)D4359−90:Standard Test Method for Determining Whether a Material Is a Liquid or a Solid(物質が液体であるかまたは固体であるか判定するための標準試験方法)に準拠して定義されている。この試験では、物質は緊密な密閉容器中で38℃に保たれる。蓋を外し、容器を倒立させる。容器からの材料の流出を観察し、それが固体であるか、液体であるかを判定する。3分以内の流出量が合計50mm以下の材料は、固体とみなされる。それ以外は液体とみなされる。
【0022】
好ましくは、(液状)有機シリコーンポリマーは、25℃において5〜1,500cStの粘度を有する。
【0023】
適切な有機シリコーンポリマーは、US6,565,837に従って調製することができる。
【0024】
有機シリコーンポリマーは、塗料組成物に同じく存在する硬化性ポリマーに対して反応性がなく、いかなる架橋反応にも参加しないことが好ましい。
【0025】
本明細書の中で、用語「有機シリコーンポリマー」は、有機シリコーン高ポリマーおよび有機シリコーンオリゴマーを含むものとして理解されるべきである。
【0026】
好ましい実施形態では、有機シリコーンポリマーは約500〜15,000の範囲の平均重量分子量を持つ。分子量が15,000を超えると、塗料の防汚性は低下する。
【0027】
有機シリコーンポリマーは、本発明の塗料組成物に好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、そして最も好ましくは少なくとも5重量%の量で存在する。塗料組成物が含有する有機シリコーンポリマーの量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、そして最も好ましくは10重量%以下である。すべての重量パーセント値は塗料組成物の総重量に基づいている。
【0028】
本発明の塗料組成物は、さらに硬化性ポリマーも含む。好ましくは、このポリマーは有機シロキサン含有ポリマーである。より好ましくは、この有機シロキサン含有ポリマーは一般構造−[SiR'R''−O]−の繰り返し単位を含み、式中、R'およびR''は、水素、アルキル、アリール、アラルキルおよびアルケニル基から独立して選択される。R'およびR''は、メチルおよびフェニルから独立して選択されることが特に好ましい。R'およびR''は、両方ともメチルであることがさらに好ましい。上記の式のものと類似した環状ポリジ有機シロキサンも使用するとができる。
【0029】
適切な有機シロキサン含有ポリマーのより具体的な例は、ジヒドロキシ官能性ポリジメチルシロキサンおよびシロキサン−アクリル系ハイブリッドポリマーである。最も好ましい有機シロキサン含有ポリマーは、骨格に炭素が実質的にない(これは炭素の含有量が1重量%未満であることを意味する)シロキサン基を含むポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。他の適切なポリマーは、WO99/33927に開示されているものであり、特に12ページ、23〜31行目に開示されているポリマー、すなわち有機水素化ポリシロキサンまたはポリジ有機シロキサンである。ポリシロキサンは、例えば、ジ有機シロキサン単位と有機水素化シロキサン単位とのコポリマー、および/またはジ有機シロキサン単位と他のジ有機シロキサン単位とのコポリマー、または有機水素化シロキサン単位もしくはジ有機シロキサン単位のホモポリマーを含むことができる。
【0030】
ヒドロシリル化反応によって架橋することのできるポリシロキサンもまた、本発明による塗料組成物中の硬化性ポリマーとして使用することができる。そのようなポリシロキサンは、「水素化シリコーン」としても知られ、例えば、EP874032−A2の3ページ、37〜53行目に開示されており、すなわち、式R'''−(SiOR'''2m−SiR'''3のポリジ有機シロキサンであり、ここで各R'''は独立して炭化水素またはフッ素化炭化水素基であり、1分子につき少なくとも2個のR'''基は水素であり、mは約10〜1,500の範囲の平均値を有する。水素化シリコーンは好ましくは水素ポリジメチルシロキサンである。水素化シリコーンの好ましい数平均分子量の範囲は、約1,000〜28,000の範囲にあり、約13〜380の範囲におけるmの値に対応する。
【0031】
硬化性ポリマーは、本発明の塗料組成物に好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、そして最も好ましくは少なくとも70重量%の量で存在する。塗料組成物が含有する硬化性ポリマーの量は、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、そして最も好ましくは80重量%以下である。
【0032】
本発明による塗料組成物は、好ましくは1つまたは複数の充填剤、顔料、触媒および/または溶媒も含む。
【0033】
適切な充填剤の例は、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカまたはケイ酸塩(タルク、長石および陶土等)、アルミニウムペースト/フレーク、ベントナイトまたは他の粘土である。充填剤によっては、塗料組成物にチキソトロピー効果を持つこともあり得る。充填剤の割合は、塗料組成物の総重量に基づいて0〜25重量%の範囲とすることができる。
【0034】
適切な顔料の例は、黒色酸化鉄および二酸化チタンである。顔料の割合は、塗料組成物の総重量に基づいて0〜10重量%の範囲とすることができる。
【0035】
適切な溶媒としては、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、エステルおよび上記のもの同士または上記のものと脂肪族炭化水素との混合物が挙げられる。環境上の理由から溶媒の使用を最小限に抑えるために、使用される塗装法と両立可能な、できるだけ濃縮された溶液を使用することが有利である。塗料組成物が含有する固形分の量は、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。固形分含量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、そして最も好ましくは80重量%以下である。
【0036】
適切な触媒の例は、様々な金属、例えばスズ、亜鉛、鉄、鉛、バリウムおよびジルコニウム等のカルボン酸の塩である。塩は、好ましくは長鎖のカルボン酸の塩、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ステアリン酸鉄、オクチル酸スズ(II)およびオクチル酸鉛である。適切な触媒のさらなる例としては、有機ビスマスおよび有機チタン化合物ならびに有機リン酸エステル、例えばリン酸水素ビス(2−エチル−ヘキシル)が挙げられる。他の可能性のある触媒としては、キレート、例えばジブチルスズアセトアセトネートが挙げられる。さらに、触媒は、少なくとも1個のハロゲン置換基を酸基に対してα位にある炭素原子上に有し、かつ/または少なくとも1個のハロゲン置換基を酸基に対しβ位にある炭素原子上に有するハロゲン化有機酸、または縮合反応の条件下そのような酸を生成するように加水分解可能である誘導体を含み得る。
【0037】
硬化性ポリマーの種類によっては、塗料組成物は架橋剤を必要とすることがある。架橋剤の存在は、硬化性ポリマーが縮合により硬化できないときのみ必要である。これは前記ポリマーに存在する官能基に依存する。一般に、ポリマーがアルコキシ基を含むとき、架橋剤の存在は必要とされない。ポリマーがアルコキシシリル基を含むならば、通常は、少量の縮合触媒および水があれば、施用後に塗料の完全な硬化を達成するのに十分である。これらの組成物の場合、硬化を誘発するのに、通常は大気中の湿気で十分であり、原則として、施用後、塗料組成物を加熱する必要はない。
【0038】
場合により存在することもある架橋剤は、官能性シランおよび/または1つもしくは複数のオキシム基を含む架橋剤であり得る。そのような架橋剤の例は、WO99/33927、19ページ9行目から21ページ17行目に示されている。種々の架橋剤の混合物もまた使用することができる。
【0039】
本発明による防汚塗料組成物は、通常の技術、例えば刷毛塗り、ローラー塗装または噴霧(無気噴霧および従来の噴霧)により基材に施用することができる。基材への適正な接着を達成するために、下塗りされた基材に塗料組成物を施用することが望ましい。プライマーは、任意の従来のプライマー/シーラー塗料系とすることができる。特に接着に関し、良好な結果は、アクリルシロキシ官能性ポリマー、溶媒、チキソトロピー剤、充填剤および場合によっては水分捕捉剤を含むプライマーを使用したときに見られた。このようなプライマーはWO99/33927に開示されている。本発明による塗料組成物を古くなった防汚塗料層を含む基材に施用することもまた可能である。本発明による塗料組成物をそのような古くなった層に施用する前に、この古い層は、付着物をすべて除去するために高圧水洗浄により清掃される。WO99/33927に開示されたプライマーは、古くなった塗膜層と本発明による塗料組成物との間のタイコートとして使用することができる。
【0040】
塗料は硬化した後、直ちに浸漬することができ、即時に防汚性および付着物剥離性の防護を示す。上述の通り、生成した塗膜は極めて良好な防汚性および付着物剥離性を有する。このため、本発明による塗料組成物は、海洋用途のための防汚塗料または非汚染性塗料としての使用に非常に適している。該塗料組成物は動的および固定的構造物の両方、例えば船体、ブイ、掘削用プラットフォーム、石油採掘リグおよび水に浸されるパイプ等に使用することができる。該塗料組成物は、これらの構造物に使用される任意の基材、例えば金属、コンクリート、木または繊維強化樹脂等に施用することができる。
【実施例】
【0041】
合成例A:1−メトキシピロリドン−3−アミド−1−プロピルポリジメチルシロキサンの合成
1−アミド−3−カルボキシピロリドン−1−プロピルポリジメチルシロキサンの液体をメタノール500mlおよびp−トルエンスルホン酸0.28gに添加した。得た混合物を60℃で5時間、還流加熱した。この結果、2層が形成された。上澄み液を除去し、真空下で濃縮してオレンジ油残渣を得た。
【0042】
合成例B:1−ブタン酸−4−アミドプロピルポリジメチルシロキサンの合成
無水コハク酸(1g、0.01mol)をテトラヒドロフランに溶解し、アミノ官能化したPDMS43.7g(0.01mol)に20分の期間にわたり、混合物を滴下添加した。得た溶液を80℃まで2時間、還流加熱した。この結果、2層が形成された。上澄み液を除去し、真空下で濃縮して油残渣を得た。
【0043】
合成例C:1−デカン酸−10−アミドプロピルポリジメチルシロキサンの合成
セバシン酸(2g、0.01mol)をテトラヒドロフラン60mlに溶解し、アミノ官能化したPDMS43.7g(0.01mol)に、混合物を攪拌しながら滴下添加した。得られた溶液を80℃まで5時間、還流加熱した。この結果、2層が形成された。上澄み液を除去し、真空下で濃縮し油残渣を得た。
【実施例1】
【0044】
3液型塗料組成物を以下の配合で製造した:
【表1】

【実施例2】
【0045】
3液型塗料組成物を以下の配合で製造した:
【表2−1】

【表2−2】

【実施例3】
【0046】
3液型塗料組成物を以下の配合で製造した:
【表3】

【実施例4】
【0047】
3液型塗料組成物を以下の配合で製造した:
【表4−1】

【表4−2】

【実施例5】
【0048】
2液型塗料組成物を以下の配合で製造した:
【表5】

【実施例6】
【0049】
2液型塗料組成物を以下の配合で製造した:
【表6−1】

【表6−2】

【実施例7】
【0050】
防汚性試験
実施例2、3および4の組成物を60cm×60cmの海用合板のパネルに刷毛で(乾燥膜厚が約300μmになるように)施用した。パネルには、エポキシプライマーおよびアクリル系タイコートの2種の塗料を下塗りしておいた。各組成物6サンプルを刷毛で施用した。相対的な性能および本発明による塗料上の付着物定着の量および多様性を評価するために、標準塗料および無毒対照を基準として施用した。
【0051】
試験パネルを実験的試験表面の浸漬用に設計された筏から浸漬し、その条件は娯楽用の小型船または大型船の船体が受ける条件を代表するものであった。
【0052】
パネルを試験フレームに取り付け、各試験場で水面から0.5から1.5m下に垂直に吊るした。生物付着の存在および塗膜の完全性について、パネルを定期的に検査した。
【0053】
試験場には、主要な付着クラス全部からの典型的な付着を示すイギリスのニュートンフェラーズ、および貝殻の付着(体の硬い動物)が圧倒的に多いスウェーデンのブラットンズ(Brattons)が含まれていた。
【0054】
生態学的に導き出される4つの主要な付着のカテゴリー、すなわち、微生物付着、海草、軟体動物および体の硬い動物について、付着の範囲を評価し、これら4つのカテゴリーについて目視によって分析した。これにより、試験場間でのある程度全体的な比較を可能にすると同時に、塗膜性能を識別するのに十分な情報が得られたためである。
【0055】
結果を以下の表に示す。この表のデータは試験パネル表面の付着範囲の合計をパーセント値で表している。
【0056】
【表7】

【0057】
この表は、イギリスの水域に4カ月浸漬後およびスウェーデンの水域に5カ月浸漬後、蓄積した付着物は、耐食性プライマーのみを塗装した対照基材に比べて著しく少なく、標準基材に比べて少なかったことを示している。実施例2〜4の塗料上の付着物はすべて軽く擦るだけで非常に容易に取り除けたが、対照基材上に蓄積した付着は類似の方法で取り除くことはできなかった。
【0058】
さらに、本発明によるすべての塗膜は透明で、霧状または乳状の外観を呈さなかったことにも言及しておくべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式:
【化6】

[式中、
R1は同じであっても異なってもよく、アルキル、アリールおよびアルケニル基から選択され、アミン基、式OR5(ただしR5は水素またはC1〜6アルキル)の酸素含有基、および下記式(I):
−R6−N(R7)−C(O)−R8−C(O)−XR9 (I)
に従う官能基で任意選択で置換されており
(式中、
6は、炭素原子1〜12個のアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、および炭素原子最大10個のポリオキシアルキレンから選択され、
7は、水素、炭素原子1〜6個のアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、および炭素原子1〜10個のポリオキシアルキレンから選択され、R7は、R8と結合して、環を形成してもよく、
8は、炭素原子1〜20個を有するアルキル基であり、
9は、水素、または酸素もしくは窒素を含有する基で任意選択で置換されている炭素原子1〜10個を有するアルキル基であり、
Xは、O、SおよびNHから選択され、
ただし、有機シリコーンポリマー中の少なくとも1つのR1基が上記式(I)に従う官能基またはその誘導塩であることを条件とする)、
R2は、同じであっても異なってもよく、アルキル、アリールおよびアルケニルから選択され、
R3およびR4は、同じであっても異なってもよく、アルキル、アリール、キャップドまたは非キャップドポリオキシアルキレン、アルカリール、アラルキレンおよびアルケニルから選択され、
aは、0から50,000までの整数であり、
bは、0から100までの整数であり、
a+bは、少なくとも25である。]
で表される有機シリコーンポリマー、および硬化性ポリマーを含む防汚塗料組成物。
【請求項2】
1つの実施形態において、R7が水素で、R8が炭素原子1〜20個を有するアルキル基である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
7がR8に連結し、ピロリドン型の環を形成する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記有機シリコーンポリマーが液体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記有機シリコーンポリマーの平均重量分子量が500〜15,000である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記硬化性ポリマーが有機シロキサン含有ポリマーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記硬化性ポリマーが一般構造−[SiR'R''−O]−の繰り返し単位(式中、R'およびR''は、水素、アルキル、アリール、アラルキルおよびビニル基から独立して選択される)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
R'およびR''がメチルおよびフェニルから独立して選択される、請求項7に記載の塗料組成物。
【請求項9】
水域環境における基材の汚染抑制のための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗料組成物の使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗料組成物を基材に施用した後、前記塗料組成物を硬化させることにより得ることができる塗装基材。

【公表番号】特表2010−525131(P2010−525131A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504718(P2010−504718)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055129
【国際公開番号】WO2008/132195
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】