説明

カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法

本発明は、A)カルボニル化合物をシアン化水素と反応させ、ヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するステップと、B)A)で得られたヒドロキシカルボン酸ニトリルを、二酸化マンガンを包含する触媒の存在下で加水分解するステップとを包含する、カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法に関し、この方法においてカルボニル化合物はシアン化水素に対してモル過剰で使用し、ステップA)に従ってカルボニル化合物をシアン化水素と反応させ、ステップA)で得られた反応混合物は、ステップB)に従って加水分解を実施するまで蒸留精製しない。さらに、本発明はポリマー類、成形材料及び成形体からアルキル(メタ)アクリレート類を製造する方法に関し、この方法においては、上述の方法に従って、カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法に関する。さらに、本発明はアルキル(メタ)アクリレート類及びポリマー類を製造する方法及び成形材料及びプラスチック成形品を製造する方法に関する。
【0002】
二酸化マンガンを包含する触媒の存在下でカルボン酸ニトリル類を加水分解することによるカルボン酸アミド類の製造方法は、かねてからの先行技術であった。実生産においては多くの場合中間体としてカルボン酸アミド類が必要とされる。たとえば、α−ヒドロキシイソブチルアミドを用いて、メタクリル酸又はメタクリル酸エステル類、特にメチルメタクリレートを製造することができる。
【0003】
特に好ましいカルボン酸アミド類の製造方法は、WO2008/061822A1号に記載がある。
【0004】
上ですでに詳述されている文書の教示内容によれば比較的コストのかからない製造が実現できるとはいえ、この方法をさらに改良する必要は常にある。通常、シアン化水素とカルボニル化合物、特にアセトンを反応させることによって得られるシアノヒドリンは、酸を添加することにより安定させる。通常は蒸留によって行うシアノヒドリンからカルボン酸アミドへの変換前には、この安定化を取り除く必要がある。WO2008/061822A1号は、アセトンとシアン化水素の反応後に得られた混合物を加水分解に使用できることを記載している。しかし、精製を実施する必要があるのかどうかについては記載していない。一般に、この精製は二段階の蒸留を包含し、未変換の反応物質は第一段階で除去する。第二段階では、通常、安定化に使用した酸をシアノヒドリンから除去する。たとえば蒸留などによって精製を実施しなければ、触媒の耐用期間が比較的短くなる。蒸留した反応混合物を使用した場合、触媒の耐用期間は著明に改善するが、蒸留にエネルギーが消費されることからこの方法の総体的な効率が低下する。
【0005】
このように先行技術を考慮し、本発明の目的は、特に簡単に、低コストかつ高収率で実施できるカルボン酸アミド類の製造方法を提供することである。より具体的には、特別な課題は、触媒の耐用期間が特に長く、カルボン酸アミドの製造工場の耐用期間が長くなる、高収率で、エネルギー消費量が少なく、収率損失が少ない方法を提供することであった。
【0006】
これらの目的及び、明確に記載はされていないが本明細書の緒言として検討される前後関係から導き出せるか、推測できる目的は、請求項1に記載のすべての特徴を有する方法によって達成される。本発明による方法の適切な改変方法は、従属項によって保護される。アルキル(メタ)アクリレート類及びポリマー類の製造方法及び成形材料及びプラスチック成形品の製造方法に関しては、請求項22、24、26及び27がこれらの目的に伴う課題に対して解決法を提供する。
【0007】
したがって、本発明は、
A)カルボニル化合物をシアン化水素と反応させ、ヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するステップと、
B)ステップA)で得られたヒドロキシカルボン酸ニトリルを、二酸化マンガンを包含する触媒の存在下で加水分解するステップと
を包含する、カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法を提供し、この方法は、ステップA)でカルボニル化合物をシアン化水素と反応させるためにカルボニル化合物をシアン化水素に対してモル過剰で使用し、ステップA)で得られた反応混合物を、ステップB)の加水分解を実施するまで蒸留精製しないことを特徴とする。このため、触媒の耐用期間が長い、特にエネルギー効率のよい方法を提供することが驚くべきことに可能になる。
【0008】
同時に、本発明による方法ではさらに一連の利点を達成することができる。このうちの一つは、本発明による方法が驚くほど著明にカルボン酸アミドの製造工場の耐用期間を延長することができるという点である。これにより、本方法を特に効率よく、低コストかつ高収率にて、少ないエネルギー消費量及び少ない収率損失で実施することができる。
【0009】
本発明による方法により、カルボン酸アミド類を効率よく製造することができる。本方法では、一般に式−CO−基を有するカルボニル化合物をとりわけ使用する。カルボン酸アミド類は式−CONH2基を少なくとも1個包含する。これらの化合物は当該技術分野で既知であり、例えばRoempp Chemie Lexikon 2nd Edition CD−ROM版に記載されている。
【0010】
使用する反応物質は、特に脂肪族又は脂環式カルボニル化合物、飽和又は不飽和カルボニル化合物及び芳香族及びヘテロ芳香族カルボニル化合物であることができる。反応物質として使用するカルボニル化合物は、1個、2個又はそれ以上のカルボニル基を有することができる。また、ヘテロ原子、特に塩素、臭素、フッ素、酸素原子、硫黄原子及び/又は窒素原子などのハロゲン原子を芳香族又は脂肪族基中に有するカルボニル化合物を使用することもできる。特に好適なカルボニル化合物は、好ましくは1〜100個、より好ましくは2〜20個、最も好ましくは2〜5個の炭素原子を包含する。
【0011】
特に好ましいカルボニル化合物には、3〜5個の炭素原子を有する例えばアセトンなどの脂肪族又はヘテロ脂肪族ケトン類及び2〜5個の炭素原子を有する例えば3−メチル−メルカプトプロピオンアルデヒド又はアセトアルデヒドなどの脂肪族又はヘテロ脂肪族アルデヒド類が含まれる。ここで特に反応物質として好ましいのはアセトンである。
【0012】
これらの化合物は個々に、又は混合物として、シアン化水素(HCN)と反応させ、α−ヒドロキシカルボン酸ニトリル類(シアノヒドリン類)、例えばα−ヒドロキシ−γ−メチルチオブチロニトリル(2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリル)、2−ヒドロキシプロピオニトリル(ラクトニトリル)及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニトリル(アセトンシアノヒドリン)、特に好ましくはアセトンシアノヒドリンを得ることができる。
【0013】
カルボニル化合物はシアン化水素に対してモル過剰で使用する。カルボニル化合物:シアン化水素のモル比は、好ましくは1.1:1〜7:1、好ましくは1.5:1〜5:1、最も好ましくは2:1〜3:1であるのがよい。
【0014】
好ましくは、ステップA)でカルボニル化合物とシアン化水素を塩基の存在下で反応させるのがよい。この場合は陰イオン交換体を使用することができる。好ましくは水酸化物又は酸化物を、より好ましくはアルカリ土類金属類又はアルカリ金属類から製造された水酸化物又は酸化物を使用するのがよい。これらには、Ca(OH)2及びMg(OH)2、MgO、CaO、NaOH、KOH、LiOH又はLi2Oが含まれる。この場合、LiOH又はLi2Oを使用するのが特に好ましい。好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜2質量%の水酸化物及び/又は酸化物を反応混合物に添加して、カルボニル化合物とシアン化水素を反応させるのがよい。本発明の特別な改変例においては、水酸化物及び/又は酸化物の比率を選択して、その後のステップB)における加水分解反応のpHを調節するためにさらに塩基を添加する必要をなくすことができる。
【0015】
理論的には、可溶性アミン類を使用してpHを調節することもできる。しかし、これらのアミン類の使用は、ステップB)の加水分解で使用する触媒の耐用期間に悪影響が生じることがあることが分かっている。ここでいうアミン類には、1個の窒素原子を有する有機化合物のほか、アンモニア(NH3)も含まれる。したがって、反応混合物における可溶性アミン類の比率は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、最も好ましくは0.001質量%以下であるのがよい。特別な態様において、これらのアミン類をわずかな比率で反応混合物に添加してpHを調節する。
【0016】
カルボニル化合物とシアン化水素を反応させる温度は、一般には−30〜70℃、好ましくは−20〜60℃、特に−10〜50℃、より好ましくは−5〜40℃であるのがよい。
【0017】
前記反応温度に従ってヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するためのステップA)における反応は、減圧下又は加圧下で実施することができる。この反応は好ましくは0.5〜10バール、より好ましくは0.8〜3バールの圧力で実施するのがよい。
【0018】
ステップA)におけるヒドロキシカルボン酸ニトリルの製造のための反応時間は、使用したカルボニル化合物、触媒の活性及び反応温度といったパラメータが幅広い範囲内であってよい場合、これらの因子によって左右される。カルボニル化合物とHCNの反応時間は、好ましくは30秒〜15時間、より好ましくは10分〜5時間、最も好ましくは30分〜3時間であるのがよい。
【0019】
連続プロセスにおいて、ステップA)の反応の滞留時間は、好ましくは30秒〜15時間、より好ましくは10分〜5時間、最も好ましくは30分〜3時間であるのがよい。
【0020】
ステップA)の反応後に製造された反応混合物は、先行技術の方法とは異なり、ステップB)の加水分解を実施する前に蒸留精製しない。この場合蒸留とは、混合された成分の異なる沸点を利用して反応混合物を分離することを意味する。これにより、その方法の効率性を著明に改善することができる。ステップA)の反応の特別な形態において、精製は必要とされない。その代わりに、ステップA)の反応後に得られた混合物を直接、ステップB)の加水分解反応へ至らせることができる。
【0021】
本発明によれば、ステップA)で得られたカルボン酸ニトリルの加水分解は、二酸化マンガンを包含する触媒の存在下で実施する。天然及び合成二酸化マンガンの化学量論的組成は、他の原子価状態のマンガンを結晶格子に組み込むことにより、好ましくはMnO1.7〜MnO2.0にするのがよい。二酸化マンガンにはいくつかの同素体が存在する。これらは触媒としての挙動が大きく異なる。最も安定な多形体であるパイロルース鉱(β二酸化マンガン)は結晶化度が最も高い。その他の多形体の結晶化度はこれより低く、α又はδ−MnO2をはじめとする非晶質生成物にまで及ぶ。X線回折法によりこれらの多形体を識別することができる。いくつかの化学的又は触媒的に特に活性の高い二酸化マンガンは、水和させて追加的にヒドロキシル基を含有させることができる。
【0022】
二酸化マンガンを包含する触媒は、さらに化合物又はイオンを包含することができる。これらには特にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属イオンが含まれ、製剤の結晶格子に導入するか、触媒の表面に吸着させる。好ましいアルカリ金属イオンには、特にリチウム、ナトリウム及び/又はカリウムイオンが含まれる。好ましいアルカリ土類金属イオンには、カルシウム及び/又はマグネシウムイオンが含まれる。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含量は、好ましくはマンガン1原子につき0.6原子未満であるのがよい。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属:マンガンの原子比は、好ましくは0.01:1〜0.5:1、より好ましくは0.05:1〜0.4:1である。
【0023】
また、二酸化マンガンを包含する触媒は、プロモーターを包含することができ、該プロモーターは同様に結晶格子に導入するか、触媒の表面に吸着させてよい。好ましいプロモーターとしては、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Zn、Ga、In、Ge、Sn及びPtが挙げられる。プロモーターの含量は、好ましくはマンガン1原子につき0.3原子未満であるのがよい。プロモーター:マンガンの原子比は、好ましくは0.001:1〜0.2:1、より好ましくは0.005:1〜0.1:1である。二酸化マンガンを包含する触媒は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%のプロモーターを包含するのがよい。このパラメータは金属又は金属イオンとして測定した質量に基づくものである。
【0024】
また、EP−A−0956898号に詳細な例が記載されているように、好適な触媒は、機械的安定性を高めるためSiO2分画又は他の結合剤を包含することができる。
【0025】
特に好ましい触媒は、例えば0.0〜25質量%、特に0.1〜2質量%のSiO2;0.1〜10質量%、特に2〜7質量%のK2O;0.0〜5質量%、特に0.2〜4質量%のZrO2及び75〜99質量%、特に85〜98質量%のMnO2を包含する。この触媒はさらに上記に詳述したような成分を包含することができる。この触媒の組成は、半定量的蛍光X線分析によって確認することができる。
【0026】
二酸化マンガンを包含する好ましい触媒は、粉末としてX線スペクトル(XRD)で測定した場合、32.0〜42.0°で少なくとも1回の反射をみる。X線スペクトルは例えばPanalytical社のXpert pro systemを用いて得ることができる。32.0〜42.0°で得られたこの反射は、より好ましくは、20〜65°でさらに強度を上げることで最高強度となり、最大反射として測定されるのがよい。特に好ましい触媒は低結晶度を示し、これはとりわけX線スペクトルで認めることができる。特に好ましい触媒の構造としては、ICDD(国際回析データセンター)が示す構造番号44−0141又は72−1982が指定され、特に好ましいのは44−0141に係る構造を有する結晶である。
【0027】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属イオン及びプロモーターは、例えば塩の形態で触媒の製剤に添加することができる。例えば、特に上述の物質のハロゲン化物類、硝酸塩類、硫酸塩類、炭酸塩類、燐酸塩類及び水酸化物類を使用することができ、特に好ましいのは水溶性の化合物を用いることである。
【0028】
二酸化マンガンを包含する触媒は、実験式がMnOxで、[式中、xが1.7〜2.0である]二酸化マンガンを、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上包含するのがよい。
【0029】
本発明の特別な態様において、二酸化マンガンを包含する触媒は、比表面積(BET)が50〜1000m2/g、より好ましくは100〜300m2/g、最も好ましくは150〜250m2/gであるのがよく、DIN66131検査法に従って測定する。
【0030】
反応器の種類によって、触媒は例えば粉末又は顆粒の形態で使用することができ、粒径は多くの場合、使用する反応容器によって左右される。
【0031】
二酸化マンガンを包含する上述の触媒の製造は、それ自体既知であり、例えばEP−A−0379111号、EP−A−0956898号、EP−A−0545697号及びEP−A−0433611号に詳述されている。二酸化マンガンを包含し、本発明に基づいて使用するべき触媒は、好ましくは、MnSO4などのMn2+塩を過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩を用いて酸化させることにより得るのがよい(Biochem. J., 50p. 43 (1951)及びJ. Chem. Soc., p.2189, 1953参照)。また、好適な二酸化マンガンは、水溶液中で硫酸マンガンを電解酸化することにより得ることができる。
【0032】
44−0141に係る構造を有する触媒は、例えば、Mn(II)SO4 0.71モル(溶液中のMn2+ 合計15質量%)、Zr(IV)(SO42 0.043モル、濃縮硫酸0.488モル及び水13.24モルを含有する水溶液を、70℃にて迅速に水64.5モル中のKMnO4 1.09モル溶液に添加することにより得ることができる。沈殿物が生じた上澄液を3時間90℃まで加熱することができる。その後、沈殿物を濾過により除去し、水1Lで4回洗浄し、110℃で12時間乾燥させることができる。
【0033】
二酸化マンガンを包含する触媒に添加する反応混合物は、好ましくはpHが6.0〜11.0、好ましくは6.5〜10.0、最も好ましくは8.5〜9.5であるのがよい。この文脈において、pHはオキソニウムイオン活性の負の10を底とする対数として定義される(H3+)。したがって、このパラメータは、反応温度に基づくパラメータであることから、温度をはじめとする因子によって左右される。本発明の目的のためには、このパラメータは電気測定器具(pHメーター)で測定することで十分である場合が多く、多くの目的のためには反応温度の代わりに室温で測定することで十分である。pHは好ましくはステップA)のヒドロキシカルボン酸ニトリルの製造中できるだけ早く調節しておくのがよく、その場合、好ましくは上述の酸化物及び水酸化物を使用することができるのがよい。
【0034】
ここでは、二酸化マンガンを包含する触媒が多くの場合両性的性質を有することを強調しておく必要がある。したがって、反応において反応混合物のpHは、触媒の種類及び量によって大きく影響を受けることになる。「二酸化マンガンを包含する触媒に添加する反応混合物」とは、そのpHが触媒の不在下で測定されることを明確にした表現である。このほか、反応混合物の成分には、例えば溶媒、水、カルボン酸ニトリルなどが含まれる。
【0035】
驚くべきことに、リチウムイオンの存在下での加水分解は、二酸化マンガンを包含する触媒の耐用期間を特に長くすることが明らかになっている。したがって、本発明による方法は、リチウム化合物、特に水溶性のリチウム塩、例えばLiCl、LiBr、Li2SO4、LiOH及び/又はLi2Oを反応混合物に添加することによりさらに改善することができる。リチウム化合物の濃度は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜1質量%であるのがよい。この添加は、加水分解反応中又はその前に実施することができる。
【0036】
カルボン酸ニトリルからカルボン酸アミドへの加水分解は、好ましくは酸化剤の存在下で実施するのがよい。好適な酸化剤は当該技術分野で広く知られている。これらの酸化剤には、酸素ガス類;過酸化水素(H22)、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、過酸化ベンゾイル及び過酸化ジアセチルなどの過酸化物;過ギ酸、過酢酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウムなどの過酸類又は過酸塩類;及び過ヨウ素酸、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸、次亜塩素酸ナトリウムなどのオキソ酸類又はオキソ酸塩類、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム及び過マンガン酸リチウムなどの過マンガン酸塩及びクロム酸カリウム、クロム酸ナトリウム及びクロム酸アンモニウムなどのクロム酸塩類が含まれる。
【0037】
使用する酸化剤の量は広範囲にわたるが、反応物質及び反応生成物が酸化剤によって酸化されてはならない。したがって、これらの物質の酸化感受性によっては酸化剤の使用が制限されることがある。達成したい触媒の耐用期間の改善からその下限が導き出される。酸化剤:カルボン酸ニトリルのモル比は、好ましくは0.001:1〜2:1、より好ましくは0.01:1〜1.5:1である。
【0038】
これらの酸化剤は、例えば溶液及び/又はガスとして反応混合物に添加することができる。使用する酸化剤は、より好ましくは酸素を包含するガスであるのがよい。この場合、ガスは分子酸素(O2)又はオゾン(O3)を包含してよい。また、酸化剤として使用するガスは、さらに窒素又は希ガスなどのガス、特に不活性ガスを包含することができる。特別な態様において、ガスは好ましくは50〜98質量%の不活性ガス及び2〜50質量%の分子酸素(O2)を包含できる。好ましいガスには特に空気が含まれる。また、20質量%未満、特に10質量%未満の分子酸素を含有するガスを使用することも可能であり、これらのガスは一般には1質量%以上、好ましくは2質量%以上の酸素を含有する。
【0039】
酸素を包含し、反応混合物を通過させるガスの量は、二酸化マンガンを包含する触媒1kgにつき、好ましくは1〜5000L/時、より好ましくは10〜1000L/時であるのがよい。
【0040】
カルボン酸ニトリルを加水分解するのに必要な水は、多くの場合溶媒として使用される。水:カルボン酸ニトリルのモル比は好ましくは1:1以上、水:カルボン酸ニトリルのモル比はより好ましくは0.5:1〜25:1、最も好ましくは1:1〜10:1である。
【0041】
加水分解に用いる水は高純度であってよい。ただしこの特性は必須ではない。新鮮な水と同様、ある程度の量の不純物を包含する水道水又は工程水を使用することも可能である。したがって、加水分解にはリサイクル水を使用することもできる。
【0042】
また、カルボン酸ニトリルの加水分解のため、反応混合物にはさらなる成分が存在していてもよい。これらには、特に好ましくはカルボン酸ニトリルとして使用すべきシアノヒドリンを製造するのに使用するアルデヒド類及びケトン類などのカルボニル化合物が含まれる。例えば、アセトン及び/又はアセトアルデヒドが反応混合物に存在してもよい。これは、例えばUS 4018829−A号に記載されている。添加するアルデヒド類及び/又はケトン類の純度は、一般には特に重要でない。したがって、これらの物質は不純物、特にメタノールなどのアルコール類、水及び/又はメチルα−ヒドロキシイソブチレート(MHIB)を包含することができる。カルボニル化合物、特にアセトン及び/又はアセトアルデヒドの量は、反応混合物中で広範囲に使用することができる。カルボニル化合物は、カルボン酸ニトリル1モルにつき好ましくは0.1〜6モル、好ましくは0.1〜2モルの量で使用するのがよい。本発明の特別な改変例において、このカルボニル化合物はステップA)で完全に添加することができ、したがってこの超過分は循環する。
【0043】
加水分解反応を実施する温度は、一般には10〜150℃、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜80℃であるのがよい。
【0044】
反応温度に応じて、加水分解反応は減圧下又は加圧下で実施することができる。好ましくはこの反応は0.1〜10バール、より好ましくは0.5〜5バールの圧力で実施するのがよい。
【0045】
加水分解反応の反応時間は、使用するカルボン酸ニトリル、触媒の活性及び反応温度をはじめとする因子によって左右され、これらのパラメータは広範囲にわたっていてよい。加水分解反応の反応時間は好ましくは30秒〜15時間、より好ましくは15分〜10時間、最も好ましくは60分〜5時間であるのがよい。
【0046】
連続工程において、ステップA)の反応の滞留時間は、好ましくは30秒〜15時間、より好ましくは15分〜10時間、最も好ましくは60分〜5時間であるのがよい。
【0047】
カルボン酸ニトリルへの触媒担持量は広範囲にわたっていてよい。好ましいのは触媒1gにつき1時間当たり0.01〜2.0g、より好ましくは0.05〜1.0g、最も好ましくは0.1〜0.4gのカルボン酸ニトリルを使用するのがよい。
【0048】
ステップB)の反応は、例えば固定層反応器又は懸濁反応器で実施することができる。酸化剤としてガスを使用する場合、特にガス、固体及び液体をしっかり接触させることのできるいわゆるトリクルベッド反応器を使用することができる。トリクルベッド反応器では、触媒を固定層の形態で調整する。この場合、トリクルベッド反応器を並流又は向流モードで操作することができる。
【0049】
ステップB)で得られた反応混合物は、一般に所望のカルボン酸アミドのほか、さらなる成分、特に未変換のカルボン酸ニトリル又はシアン化水素及び過剰に使用したカルボニル化合物、特にアセトン及び/又はアセトアルデヒド及び過剰に使用した水を包含する。
【0050】
したがって、反応混合物は一般に分離して、すでに使用した反応物質を再変換できるようにする。本発明の改変例において、ステップB)で得られた反応混合物は二段階の蒸留で精製することができる。
【0051】
ステップB)で得られた反応混合物は一般に、依然としてある程度のヒドロキシカルボン酸ニトリルを包含する。ヒドロキシカルボン酸ニトリルの沸点は水の沸点よりも高い。これに伴う問題は、ヒドロキシカルボン酸ニトリルをカルボニル化合物とシアン化水素に分解することにより容易に解決できる。この分解反応は、例えば蒸留塔の塔底に供給された、例えば塩基、好ましくは陰イオン交換体の存在下で触媒される。
【0052】
この好ましい実施形態の第一の改変例では、第一蒸留ステップa)において、水、カルボニル化合物及びヒドロキシカルボン酸ニトリル及び/又はシアン化水素を包含する混合物から、カルボン酸アミドを分離することができる。この場合、ヒドロキシカルボン酸ニトリルは好ましくはカルボニル化合物及びシアン化水素に分割できるのがよい。こうして得られた混合物は、第二蒸留ステップb)で精製することができ、その場合カルボニル化合物及びシアン化水素は第二蒸留塔の塔頂から、水は塔底から除去することができる。
【0053】
ステップB)で得られた反応混合物をカルボン酸アミドと、水、カルボニル化合物及びヒドロキシカルボン酸ニトリル及び/又はシアン化水素を包含する混合物とに分離するための第一蒸留ステップa)は、好ましくは110〜260℃、より好ましくは140〜230℃で実施することができるのがよい。ここでの圧力は好ましくは0.002〜1バール、より好ましくは10〜500ミリバールであるのがよい。ここで言及する蒸留温度は特に塔底温度に基づく。
【0054】
ステップb)で水をカルボニル化合物及びシアン化水素から分離する温度は、一般に50〜150℃、好ましくは70〜120℃、より好ましくは90〜110℃であるのがよい。第二蒸留ステップb)は好ましくは0.2〜5バール、より好ましくは0.7〜1.5バールの圧力で実施するのがよい。
【0055】
特に好ましい実施形態において、カルボニル化合物及びシアン化水素は、ステップB)で得られた反応混合物から第一蒸留ステップa')で最初に塔頂から除去することができる。この場合、ヒドロキシカルボン酸ニトリルは最初にカルボニル化合物とシアン化水素に分離され、この方法では同様に混合物より塔頂から除去される。この方法で得られたシアン化水素及びカルボニル化合物を用いて、ステップA)でヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造することができる。塔底から得られた混合物は水及びカルボン酸アミドを包含する。この混合物は第二ステップb')で分離され、その場合カルボン酸アミドは多段階の蒸発として周知の多段階の蒸発濃縮により有利に水から分離することができる。この場合、一次エネルギーにより生成される蒸気量は、より低い圧力レベルの第二段階において液相の熱媒体として使用する。この原則を数段階にわたって継続してエネルギーを節約することができる。有益には、多段階の蒸発濃縮はこれらの分離ステップを2〜4ステップ包含する。多段階の蒸発濃縮の原則の詳細は、H.G. Hirschberg, Handbuch der Verfahrenstechnik und des Anlagenbau [工程技術及びプラント構築ハンドブック], Springer 1999に記載されており、この文書は開示目的で参照される。この構造は驚くべきことに、ステップB)で得られた反応混合物の特にエネルギー効率の高い精製を可能にする。得られた水はステップB)の加水分解に使用することができる。
【0056】
ステップB)で得られた反応混合物をカルボン酸アミドと水及びカルボニル化合物及びシアン化水素を包含する混合物に分離する第一蒸留ステップa')は、好ましくは50〜170℃、より好ましくは90〜120℃で実施することができるのがよい。このステップa')の圧力は好ましくは0.4〜5バール、より好ましくは0.7〜2バールであるのがよい。本明細書で言及する蒸留温度は特に塔底温度に関する。
【0057】
ステップb')で水及びカルボン酸アミドを分離することのできる温度は、一般には90〜260℃、好ましくは100〜180℃である。第二蒸留ステップb')は好ましくは10ミリバール〜20バール、より好ましくは100ミリバール〜10バールの圧力で実施するのがよい。高圧値は特に多段階の蒸発濃縮の初期段階に適用される。
【0058】
製造工場及び触媒の耐用期間に関する驚くべき利点は、ステップA)で使用し、水とシアン化水素を分離するのに用いる、蒸留塔への還流を介して導入されるカルボニル化合物を包含する組成物、すなわち蒸留塔の塔頂から除去される組成物よりもHCNの比率が低い還流へ導入される組成物を利用して特に達成することができる。還流に導入されるこの組成物におけるHCNの質量%は、蒸留塔の塔頂から除去される組成物中に存在するHCNの量が、質量に基づき好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下、最も好ましくは10%以下であるのがよい。蒸留塔の還流に導入される組成物は、主としてHCNを包含しないのがより好ましい。この点について、ヒドロキシカルボン酸ニトリルは除去したカルボニル化合物及びシアン化水素から製造することができ、さらに蒸留塔へ再循環してはならないことは強調しておく必要がある。したがって、蒸留塔へ戻すHCN量に関して先に言及した数値は、遊離HCN量及びヒドロキシカルボン酸ニトリルの形態で結合したHCN量の合計である。結合HCN量はヒドロキシカルボン酸ニトリルを分解することによって測定できる。したがって、蒸留塔の還流に導入する組成物は、主としてヒドロキシカルボン酸ニトリルも包含しない。
【0059】
本発明の好ましい改変例では、ステップA)で、水及びシアン化水素の分離過程で除去されるカルボニル化合物を用いてヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造する。したがって、好ましくは該当する蒸留ステップの塔頂生成物を用いて、ステップB)で用いるヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するのがよい。したがって、ステップB)のヒドロキシカルボン酸ニトリルの加水分解に得られた水を用いることができる。
【0060】
特に水とシアン化水素の分離過程において高分離能のカラムを用いることにより、特に触媒の耐用期間をさらに改善することができる。したがって、この目的のため2つ以上の分離ステップを有する単一蒸留カラムを用いる。本発明においては、規則充填物又は不規則充填物を用いたカラムの場合、分離ステップの数はトレイカラムのトレイ数又は理論段数である。
【0061】
トレイを用いた多段蒸留カラムの例としては、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、トンネルキャップトレイ、バルブトレイ、スロットトレイ、スロットシーブトレイ、バブルキャップシーブトレイ、ジェットトレイ、遠心トレイなどを用いたカラムが挙げられ、不規則充填物を用いた多段蒸留カラムの例としては、Raschigリング、Lessingリング、Pallリング、Berlサドル、Intaloxサドルなどを用いたカラムが挙げられ、規則充填物を用いた多段蒸留カラムの例としては、Mellapak(Sulzer)、Rombopak(Kuehni)、Montz−Pak(Montz)タイプの充填物を用いたカラム及びKata−Pakなどの触媒ポケットを用いた規則充填物を用いたカラムが挙げられる。
【0062】
トレイ領域、不規則充填物領域又は規則充填物領域の組み合わせを用いた蒸留カラムも同様に使用することができる。
【0063】
シアン化水素の含量が少ない還流を用いる高分離能蒸留カラムを使用することで、加水分解に使用する水相中のHCNの比率をきわめて低く保つことができる。好ましいのは、きわめて低比率のシアン化水素を例外的に包含する水相を再循環させて加水分解に用いることで、シアン化水素の値を、特に再循環させる水相に対して1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満とすることができる。
【0064】
特に水とシアン化水素を分離する蒸留ステップで添加するカルボニル化合物の量を選択することによって、ステップA)で予測されたヒドロキシカルボン酸ニトリル量を十分に製造することができるという驚くべき利点を達成することができる。したがって、好ましくはHCNの変換に必要なカルボニル化合物量すべてを、水、HCN及びステップA)で使用したカルボニル化合物を包含する混合物を蒸留するのに用いる蒸留塔の還流に添加するのがよい。その構造によっては、これは第一又は第二蒸留で行うことができる。
【0065】
また、精製カルボン酸アミドを包含する反応混合物は、イオン交換カラムを用いて精製することにより、さらに成分を取り除くことができる。
【0066】
この目的のため、特に陽イオン交換体及び陰イオン交換体を使用することができる。この目的のため好適なイオン交換体はそれ自体既知である。例えば、好適な陽イオン交換体はスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーをスルホン酸化することにより得ることができる。基本的な陰イオン交換体は、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーに共有結合した4級アンモニウム基を包含する。
【0067】
α−ヒドロキシカルボン酸アミド類の精製に関するより詳細な記述は、とりわけEP−A−0686623号にみられる。
【0068】
本発明の加水分解反応は、特に(メタ)アクリル酸を製造する方法における中間ステップとして役立てることができる。「(メタ)アクリル系モノマー類」という用語は、メタアクリル系モノマー類及びアクリル系モノマー類及びそれらの混合物を包含する。「(メタ)アクリル系モノマー類」という用語は、特に(メタ)アクリル酸類、特にアクリル酸(プロペン酸)及びメタアクリル酸(2−メチルプロペン酸)及びこれらの酸類のエステル類を含み、(メタ)アクリレート類とも呼ぶ。したがって、本発明は、本発明の方法に従った加水分解ステップを有する、アルキル(メタ)アクリレート類、特にメチルメタアクリレートを製造する方法も提供する。(メタ)アクリル酸及び/又はアルキル(メタ)アクリレート類を製造するためシアノヒドリン類の加水分解ステップを有することのできる方法の詳細は、とりわけEP−A−0406676号、EP−A−0407811号、EP−A−0686623号及びEP−A−0941984号に記載されている。
【0069】
特に好ましい実施形態においては、以下のステップを包含する方法により、簡便かつ安価にカルボニル化合物、シアン化水素及びアルコール類からアルキル(メタ)アクリレートを得ることができる。
A)1つ以上のカルボニル化合物をシアン化水素と反応させることにより、1つ以上のシアノヒドリンを製造する;
B)1つ以上のシアノヒドリンを加水分解して、1つ以上のα−ヒドロキシカルボン酸アミドを製造する;
C)1つ以上のα−ヒドロキシカルボン酸アミドをアルコール分解して、1つ以上のアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る;
D)1つ以上のアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルを(メタ)アクリル酸とエステル交換して、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート及び1つ以上のα−ヒドロキシカルボン酸を製造する;
E)1つ以上のα−ヒドロキシカルボン酸を脱水して、(メタ)アクリル酸を製造する。
【0070】
ステップA)及びB)の詳細は上で説明した。次のステップC)では、こうして得られたα−ヒドロキシカルボン酸アミドをアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルに変換することができる。これは、例えばアルキルホルメートを使用することにより達成することができる。特に好適な反応物質はメチルホルメート又はメタノールと一酸化炭素の混合物であり、この反応は例示の形でEP−A−0407811号に記載されている。
【0071】
好ましくは、α−ヒドロキシカルボン酸アミドをアルコール分解により、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜5個の炭素原子を包含するアルコール類と反応させるのがよい。好ましいアルコール類には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、特にn−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ノナノール及びデカノールが含まれる。使用するアルコールは、より好ましくはメタノール及び/又はエタノールであるのがよく、特に好ましいのはメタノールである。カルボン酸エステル類を得るためのカルボン酸アミド類とアルコール類の反応は、広く知られている。
【0072】
α−ヒドロキシカルボン酸アミド:アルコール、例えばα−ヒドロキシイソブチルアミド:メタノールのモル比はそれ自体重要ではなく、好ましくは3:1〜1:20であるのがよい。この比は、特にきわめて適切には2:1〜1:15であり、より好ましくは1:1〜1:10である。
【0073】
反応温度は同様に広範囲にわたっていてよく、一般に温度が上昇するほど反応速度は早くなる。上限温度は、一般に使用するアルコールの沸点から導き出される。反応温度は好ましくは40〜300℃、より好ましくは160〜240℃であるのがよい。反応温度に応じて、反応は減圧下又は加圧下で実施することができる。この反応は好ましくは0.5〜200バール、特に適切には1〜100バール、より好ましくは5〜30バールの圧力で実施するのがよい。
【0074】
特別な実施形態において、α−ヒドロキシカルボン酸アミドとアルコールの間の反応は、圧力反応器で実施することができる。これは原則的に、反応中に高圧状態を維持することができる反応チャンバーを意味するものと理解される。この文脈において、高圧は大気圧を超える圧力、すなわち特に1バール超の圧力を意味する。この圧力は好ましくは1バール超100バール未満であるのがよい。したがって、α−ヒドロキシカルボン酸アミドの反応/アルコール分解中及び混合生成物からのアンモニアの除去中の両方で、圧力は大気圧を超えるか、1バール超であってよい。したがって、この反応で製造されるアンモニアは、1バール超の加圧下で混合物から蒸留により分離することができ、アンモニアの蒸留による除去を、ストリッピングガスなどの補助手段を使用しないで完全に済ませることができる。
【0075】
混合生成物からアンモニアだけではなく未変換アルコールも枯渇させることができる。特にメタノールをアルコール分解に使用する場合、混合生成物はとりわけ、互いに分離することが原則的にきわめて困難なアンモニアとメタノール成分を包含することになる。最も単純な場合、前記の2つの成分を一つの物質として混合生成物から直接除去することにより、混合生成物からアンモニア及びアルコールを枯渇する。その後この2つの物質を分離、例えば精留の対象とする。また、この2つの成分、アルコール(メタノール)及びアンモニアは、一つの操作で混合生成物から分離することができ、同時にこの2つの成分、アンモニア及びアルコール(メタノール)を互いに分離することができる。
【0076】
この反応ステップ及び混合生成物からのアンモニア/アルコールの除去は、空間的に互いに個別に、異なる装置で実施することができる。この目的のため、例えば1つ以上の圧力反応器を準備し、これらを高圧蒸留カラム接続することができる。このシステムは、カラムの外部で個別の領域に配置された1つ以上の反応器を包含する。
【0077】
好ましくは、α−ヒドロキシカルボン酸エステル類の製造には連続工程を使用するのがよく、α−ヒドロキシカルボン酸アミド反応物質を触媒の存在下でアルコールと反応させて、α−ヒドロキシカルボン酸エステル、アンモニア、未変換α−ヒドロキシカルボン酸アミド及びアルコール及び触媒を包含する混合生成物を、以下のステップによって得る。
a')反応物質としてα−ヒドロキシカルボン酸アミド並びにアルコール及び触媒を包含する反応物質流を圧力反応器に供給する;
b')圧力反応器中で1バール超〜100バールの圧力下にてこの反応物質流を互いに反応させる;
c')ステップb')で結果生じるα−ヒドロキシカルボン酸エステル、未変換α−ヒドロキシカルボン酸アミド及び触媒を包含する混合生成物を、圧力反応器から取り出す;
d')混合生成物からアルコール及びアンモニアを枯渇させ、アンモニアを1バール超に常に保った圧力下で蒸留により除去する。
【0078】
この場合、特に適切な方法の改変例は以下のように提供される。
b1)圧力反応器中で5〜70バールの圧力下にて反応物質を互いに反応させる;
b2)ステップb1)で得られた混合生成物を、圧力反応器中の圧力よりも低いが1バールを超える圧力まで減圧する;
c1)ステップb2)で得られた減圧した混合生成物を蒸留カラムに供給する;
c2)蒸留カラムの圧力を1バール超から10バール未満に保ち、アンモニア及びアルコールを塔頂から除去する;
d1)ステップc2)で得られ、アンモニア及びアルコールを枯渇させた、α−ヒドロキシカルボン酸エステル、未変換α−ヒドロキシカルボン酸アミド及び触媒を包含する混合生成物をカラムから取り出す。
【0079】
この方法の好ましい変形において、反応物質の反応及びアンモニア/アルコールの除去は空間的に個別の2つの装置において実施される。換言すれば、反応器/反応チャンバー及びアンモニア/アルコールの混合生成物からの除去のための分離装置は、互いに分離されている。これにより、反応物質の反応及びその後のアンモニア/アルコールの除去で、異なる圧力範囲を使用することができるという利点が生まれる。工程を、いずれのステップも高圧下すなわち1バール超で実施するのであるが、反応器における高圧下での反応ステップと、それよりも低圧での高圧カラムにおける分離ステップに分離することで、驚くべきことに分離作用がさらに著明に改善され、アンモニア/アルコール混合物の除去の効率性が高まる。
【0080】
上述の品質特性は、分離カラム(高圧蒸留カラム)の塔底でアンモニア及びアルコールを枯渇させた混合生成物を用いて、圧力反応器での反応を1回以上反復することにより、さらに改善することができる。この反応ステップは連続で接続した複数の圧力反応器へ移動させて行う。
【0081】
この点において、きわめて好ましいのは以下を特徴とする方法の変形である。
e)ステップd1)で取り出した混合生成物を、5〜70バールまで加圧する;
f)ステップe)で加圧した混合物をさらに圧力反応器に供給し、再度反応させる;
g)ステップb2)、c1)、c2)及びd1)を上述のリストにしたがって反復する。
【0082】
したがって、アンモニア及びアルコールが枯渇した混合物を、第一蒸留カラムの塔底上のトレイから取り出し、蒸留カラムよりも高い圧力まで加圧し、その後第二の圧力反応器に供給し、高圧高温下でさらに反応させて2回の反応を経た混合生成物を得た後、今度は第二圧力反応器よりも低圧であるが1バール超の圧力まで減圧し、その後、第二の圧力反応器への供給を実施したトレイの下であってしかし塔底よりも上で第一蒸留カラムへと再循環させ、アンモニア及びアルコールを再度塔頂から蒸留によって除去して、アンモニア及びアルコールを2回枯渇させた混合物を得ることは特に有益である。
【0083】
この工程ステップは所望通りに反復することができる。例えば3〜4回の反復は特に好ましい。この点において好ましいのは、圧力反応器における反応、反応混合物の減圧、第一蒸留カラムへの供給、第一蒸留カラムにおけるアンモニア及びアルコールの枯渇、枯渇させた混合物の取り出し、枯渇した混合物の加圧及び圧力反応器へのさらなる供給を1回以上反復して、連続で接続した圧力反応器の数nに応じたn回数だけ、高圧蒸留カラムの底部にてアンモニア及びアルコールを枯渇させた混合生成物を得ることを特徴とする方法である。この文脈において、nは1以上の正の整数であることができる。nは好ましくは2〜10であるのがよい。
【0084】
適切な方法の改変例は、上に記述し定義したステップe)〜g)を1回以上反復することを検討する。
【0085】
きわめて特異的な方法の変形は、連続して接続した4つの圧力反応器を用いて、反応及び枯渇を4回行い、アンモニア及びアルコールを4回枯渇させた混合生成物を得るものである。したがってこの方法の変形は、連続で接続された合計4つ以上の圧力反応器において反応が実施されるように、ステップe)〜g)を2回以上反復することを特徴とする。
【0086】
特定された方法の変形では、さまざまな温度範囲がカラム及び反応器に特に適切であることが明らかになっている。
【0087】
例えば、高圧蒸留カラムは一般には及び好ましくは温度が約50〜約160℃である。正確な温度は、典型的には既存の圧力条件に応じて沸騰系によって設定される。
【0088】
反応器内の温度は好ましくは約120〜240℃であるのがよい。温度を反応器ごとに下げる、例えば数ステップで3〜15℃、好ましくは4〜10℃、きわめて特に適切には数ステップで5℃下げるのがきわめて特に適切である。これにより反応の選択性に好影響が及ぼされる。
【0089】
選択性を挙げるためのさらなる方法は、反応器の容量を反応器ごとに減少させることである。反応器の容量を減少させ、変換率を上げることで、同様に選択性が改善する。
【0090】
既に述べたとおり、カラムの特定のポイントで高圧蒸留カラムから取り出すべき混合生成物を取り出すのが好ましい。この文脈において、場所に関する関連記述としての位置確認に関しては、カラムの塔底部から取り出しポイントまでの距離を使用する。特に適切には、本発明の文脈における手順は、減圧した混合生成物をステップc1)にしたがって、新しい反応を行うたびに、その前のステップc1)の供給ポイントよりも、蒸留カラムの塔底により近い圧力反応器へと供給することである。
【0091】
α−ヒドロキシカルボン酸アミドとアルコールとの反応を、空間的には離れているが接続された2つの装置から得られた生成物の一つであるアンモニアを除去することで実施するという上述の方法の変形のほか、この反応ステップ及び除去ステップを単一の装置で実施するという工程改変例も好ましい。この場合、圧力反応器及び高圧蒸留カラムは単一の装置として実現され、有効に合致する。
【0092】
上述の本発明の変形例で、好ましくは反応器として働く反応蒸留カラムにおいて認められる圧力は、広範囲にわたる。本発明の好ましい実施形態では、ステップa)〜c)が反応蒸留カラムにおいて5〜40バールで同時に実施される。特に適切な方法は、ステップa)〜c)が反応蒸留カラムにおいて10〜30バールで同時に実施されることを特徴とするものである。
【0093】
好ましい方法の変形において、反応物質の反応は高圧カラムとして設計された反応蒸留カラムで実施され、製造されたアンモニアは、この反応中にカラムの塔頂から連続的に蒸留により除去される。これにより、アンモニアがきわめて簡便な方法で、減圧を必要とせず除去することができ、高純度で回収できるという驚くべき効果が達成される。また別の特に有益な方法の変形は、アンモニアを圧力下でカラムの塔頂から蒸留により除去し、アルコールをカラムの塔底又は側流から除去するというものである。反応蒸留カラムの分離作用を適切に構成することにより、アンモニア及びアルコールを直接分離することが可能になる。
【0094】
本発明の一つの変形においては、好ましくは2つ以上の分離ステップを有する任意の多段耐圧性反応蒸留カラムを使用することができる。こうした反応蒸留塔に関する説明は、ステップDの関連で詳述しており、これらはカルボン酸アミドとアルコールの反応にも使用することができる。
【0095】
アンモニアが枯渇した混合生成物は、とりわけ所望のα−ヒドロキシカルボン酸エステルを含有する。このエステルをさらに単離して精製することは、このアンモニアが枯渇した混合生成物を反応蒸留カラムの塔底から取り出して、それをさらに第二の蒸留カラムに供給し、そこでアルコールをカラムの塔頂から蒸留により除去し、好ましくは反応器に再循環させてアンモニアとアルコールの両方を枯渇した混合物を得るという適切な工程改変例で可能である。
【0096】
α−ヒドロキシカルボン酸エステルをアンモニア及びアルコールを枯渇させた混合物からさらに単離して回収するには、アンモニア及びアルコールを枯渇させた混合物を蒸留カラムの塔底から取り出し、さらに蒸留カラムに供給して、α−ヒドロキシカルボン酸エステルを塔頂から蒸留により除去して、アンモニア、アルコール及びα−ヒドロキシカルボン酸エステルを枯渇させた混合物を得て、場合によりさらなる精製ステップの後にこれを反応器に再循環させるという方法が好ましい。カラムの塔頂から得られたα−ヒドロキシカルボン酸エステル生成物は高純度であり、例えばきわめて有益にはさらなる反応ステップへと供給してアルキル(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0097】
概略を示した通り、蒸留装置は好ましくは反応器として周知の、1つ以上の触媒が供給される1つ以上の領域を有するのがよい。この反応器は、上述の通り、好ましくは蒸留カラムの内部に位置するのがよい。
【0098】
本発明では、反応相に存在する10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下のアルコールを、反応系のガス相から除去するのが有益である。この方法により、反応を特に低コストで実施することができる。
【0099】
この反応は、例えば塩基性触媒によって加速させることができる。これらには、均一触媒及び不均一触媒が含まれる。
【0100】
均一触媒には、アルカリ金属アルコキシド類及びチタン、錫及びアルミニウムの有機金属化合物が含まれる。好ましいのは、チタンアルコキシド又は錫アルコキシド、例えばチタンテトライソプロポキシド又は錫テトラブトキシドを使用することである。不均一触媒には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び上述のような塩基性イオン交換体が含まれる。
【0101】
本発明による方法を実施するのにきわめて特に有益な触媒は、耐水性のランタノイド化合物である。この種の均一触媒を使用することで驚くほど有益な結果が得られる。「耐水性」という表現は、その触媒が水の存在下でも触媒性能を維持することを意味する。したがって、本発明の反応は、2質量%以下の水の存在下では、触媒の触媒性能が著明に損なわれないまま実施することができる。この文脈において「著明に」という表現は、その反応速度及び/又は選択性が水の不在下での反応に比して最大50%低下することを意味する。
【0102】
ランタノイド化合物とは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及び/又はLuの化合物を指す。好ましいのは、ランタンを包含するランタノイド化合物を使用することである。ランタノイド化合物は、好ましくは25℃における水溶性が1g/L以上、好ましくは10g/L以上であるのがよい。好ましいランタノイド化合物は、酸化状態3において好ましくは存在する塩である。特に好ましい耐水性のランタノイド化合物は、La(NO33及び/又はLaCl3である。これらの化合物は、塩として反応混合物に添加するか、in situで製造させてよい。
【0103】
方法の特別な変形には、チタン及び/又は錫及びα−ヒドロキシカルボン酸アミドを包含する可溶性金属複合体を触媒として使用することが含まれる。
【0104】
また別の本発明の特異的な改変例は、金属トリフルオロメタンスルホネートを触媒として使用することを検討するものである。この場合、好ましいのは、周期表の1、2、3、4、11、12、13及び14族の元素からなる群から金属が選択された金属トリフルオロメタンスルホネートを使用することである。これらのうち好ましいのは、金属が1つ以上のランタノイド類に該当する金属トリフルオロメタンスルホネートを使用することである。
【0105】
均一系触媒作用のこの好ましい変形のほか、いくつかの状況においては不均一触媒を使用する方法も適切である。うまく使用することのできる不均一触媒には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム及び塩基性イオン交換体などが含まれる。例えば、触媒が、Sb、Sc、V、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Cu、Al、Si、Sn、Pb及びBiからなる群から選択される1つ以上の元素を包含する不溶性の酸化金属である方法が好ましい。あるいは、使用する触媒が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、In、Bi及びTeからなる群から選択される不溶性の金属である方法が好ましい。
【0106】
典型的には製造されるアンモニアをこの反応系から取り出し、多くの場合反応を沸点で実施する。
【0107】
アルコール分解で放出されるアンモニアは、全体の工程に容易に再循環させることができる。例えば、アンモニアをメタノールと反応させてシアン化水素を得ることができる。この詳細はEP−A−0941984号に記載がある。また、シアン化水素はBMA又はAndrussow工程によりアンモニア及びメタンから得ることができる。これらの工程はUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版CD−ROM、「無機シアノ化合物」の項に記載されている。
【0108】
ステップC)におけるα−ヒドロキシカルボン酸アミドのアルコール分解の好ましい構成は、2007年3月28日付で欧州特許庁に出願された出願番号PCT/EP2007/052951のWO2007/131829号に記載されている。本明細書に記載されたアルコールを用いたヒドロキシカルボン酸アミドの反応の実施形態は、本明細書に開示目的で組み入れている。
【0109】
次のステップD)では、アルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルを(メタ)アクリル酸と反応させて、アルキル(メタ)アクリレート及びα−ヒドロキシカルボン酸を得る。
【0110】
本発明のさらなる態様において、アルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルは(メタ)アクリル酸と反応させることができる。この目的で使用可能な(メタ)アクリル酸類はそれ自体既知であり、市販されている。アクリル酸(プロペン酸)及びメタクリル酸(2−メチルプロペン酸)のほか、これらには特に置換基を包含する誘導体が含まれる。好適な置換基には特にクロリン、フルオリン及びブロミンなどのハロゲン類及び好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜4個の炭素原子を包含するアルキル基類が含まれる。これらには、β−メチルアクリル酸(ブテン酸)、α,β−ジメチルアクリル酸、β−エチルアクリル酸及びβ,β−ジメチルアクリル酸が含まれる。好ましいのはアクリル酸(プロペン酸)及びメタクリル酸(2−メチルプロペン酸)、特に好ましいのはメタクリル酸である。
【0111】
この目的で用いるアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルはそれ自体既知であり、このエステルのアルコール基は好ましくは1〜20個、特に1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜5個の炭素原子を包含する。好ましいアルコール基は、特にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、特にn−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール及び2−エチルヘキサノールから派生するものであり、特に好ましいのはメタノール及びエタノールである。
【0112】
エステル交換に使用するアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルの酸基は、好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸を脱水することにより得ることのできる(メタ)アクリル酸から派生したものである。例えばメタクリル酸を使用する場合は、α−ヒドロキシイソ酪酸エステルを使用する。例えばアクリル酸を使用する場合は、α−ヒドロキシイソプロピオン酸を使用するのが好ましい。
【0113】
使用するのが好ましいアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルはメチルα−ヒドロキシプロピオン酸エステル、エチルα−ヒドロキシプロピオン酸エステル、メチルα−ヒドロキシイソ酪酸エステル及びエチルα−ヒドロキシイソ酪酸エステルである。
【0114】
反応物質のほか、反応混合物は、例えば溶媒、触媒、重合阻害剤及び水などのさらなる成分を包含することができる。
【0115】
アルキルヒドロキシカルボン酸エステルと(メタ)アクリル酸との反応は、1つ以上の酸又は1つ以上の塩基によって触媒することができる。均一又は不均一触媒のいずれかを使用することができる。特に好ましい酸性触媒は、特に例えば硫酸又は塩酸などの無機酸及び例えばスルホン酸、特にp−トルエンスルホン酸などの有機酸及び酸性陽イオン交換体である。
【0116】
特に好適な陽イオン交換樹脂には、特にスルホン酸含有スチレン−ジビニルベンゼンポリマーが含まれる。特に好適な陽イオン交換樹脂は、Rohm&Haas社から商標Amberlyst(R)及びLanxess社から商標Lewatit(R)として市販されている。
【0117】
触媒の濃度は、使用したα−アルキルヒドロキシカルボン酸エステルと使用した(メタ)アクリル酸の合計に対して好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜15質量%である。
【0118】
使用するのが好ましい重合阻害剤としては、フェノチアジン、tert−ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル(TEMPOL)またはその混合物が挙げられ、これらの阻害剤の有効性は場合によっては酸素を使用することで改善することができる。重合阻害剤は、使用したα−アルキルヒドロキシカルボン酸エステルおよび使用した(メタ)アクリル酸の合計に対して、濃度0.001〜2.0質量%、好ましくは0.01〜0.2質量%で使用するのがよい。
【0119】
反応は好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜130℃、特に80〜120℃、最も好ましくは90〜110℃で実施するのがよい。
【0120】
反応は、反応温度に応じて減圧下又は加圧下で実施することができる。この反応は好ましくは0.02〜5バール、特に0.2〜3バール、より好ましくは0.3〜0.5バールの圧力で実施するのがよい。
【0121】
(メタ)アクリル酸:アルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルのモル比は、好ましくは4:1〜1:4、特に3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2であるのがよい。
【0122】
選択性は好ましくは90%以上、より好ましくは98%であるのがよい。選択性は、変換されたアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルと(メタ)アクリル酸の合計量に対する、製造されたアルキル(メタ)アクリレートとα−ヒドロキシカルボン酸の合計量として定義される。
【0123】
本発明の特別な態様において、エステル交換は水の存在下で実施することができる。水の含量は、使用したアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルの質量に対して好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、最も好ましくは1〜10質量%である。
【0124】
少量の水を添加することで、反応の選択性を驚くほど上昇させることができる。水を添加しても、メタノールの生成量は驚くほど低く保つことができる。使用したアルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルの質量に対して水の濃度が10〜15質量%の場合、反応温度120℃及び反応時間又は滞留時間5〜180分で、メタノールの生成量は好ましくは5%未満であるのがよい。
【0125】
エステル交換はバッチ式又は連続工程で実施することができるが、好ましいのは連続工程である。エステル交換では、好ましくは生成物を反応物質から除去して、反応の平衡状態をシフトさせるのがよい。
【0126】
エステル交換の反応時間は使用するモル質量及び反応温度によって左右され、これらのパラメータは広範囲にわたることがある。アルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルと(メタ)アクリル酸のエステル交換の反応時間は、好ましくは30秒〜15時間、より好ましくは5分〜5時間、最も好ましくは15分〜3時間である。
【0127】
連続工程において、滞留時間は好ましくは30秒〜15時間、より好ましくは5分〜5時間、最も好ましくは15分〜3時間である。
【0128】
メチルα−ヒドロキシイソ酪酸エステルからメチルメタクリレートを製造する場合、温度は好ましくは60〜130℃、より好ましくは80〜120℃、最も好ましくは90〜110℃であるのがよい。圧力は好ましくは50〜1000ミリバール、より好ましくは300〜800ミリバールであるのがよい。メタクリル酸:メチルα−ヒドロキシイソ酪酸エステルのモル比は、好ましくは2:1〜1:2、特に1.5:1〜1:1.5であるのがよい。
【0129】
特に好ましい実施形態において、エステル交換は蒸留塔で実施することができる。この場合、触媒を蒸留塔の任意の領域に添加することができる。例えば、触媒は塔底の領域又はカラムの領域に供給することができる。ただし、同時に反応物質をこの触媒に接触させるようにしなければならない。また、触媒は蒸留塔の離れた領域に供給することができ、その場合はこの領域を蒸留塔のさらなる領域、例えば塔底及び/又はカラムに接続しなければならない。このように触媒領域を離して配置するのが好ましい。
【0130】
この好ましい実施形態は、反応の選択性を驚くほど上昇させることができる。この文脈においては、蒸留カラム内部の圧力に関係なく、反応の圧力を調節できることを強調しておく必要がある。これにより、反応時間又は滞留時間が長くなるほど沸点が高くなることなく低く保つことができる。また、反応温度を広範囲にわたって変化させることができる。これにより、反応時間を短縮することができる。また、触媒の容量をカラムの配置を考慮に入れる必要なく所望の通り選択することができる。さらに、例えばさらなる反応物質を添加することができる。これらすべての方法は選択性及び生産性を高めるため、驚くべき相乗効果が達成される。
【0131】
この方法では、アルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステル、例えばメチルα−ヒドロキシイソ酪酸エステルを蒸留塔に供給する。また、(メタ)アクリル酸、例えばメタクリル酸を蒸留塔に導入する。蒸留条件は好ましくは、正確に1つの生成物を蒸留によって蒸留塔から取り出し、第二の生成物は塔底に残し、そこから連続的に除去されるように構成するのがよい。炭素原子数が少ないアルコール類、特にエタノール又はメタノールを使用する場合、反応混合物からアルキル(メタ)アクリレートを蒸留により取り出すのが好ましい。反応物質を触媒領域を通じて循環的に通過させる。これによりアルキル(メタ)アクリレート及びα−ヒドロキシカルボン酸が連続的に製造される。
【0132】
蒸留塔の好ましい実施形態を、図1に図式的に示す。反応物質は1つの共通ライン(1)又は2本のライン(1)及び(2)を介して蒸留カラム(3)に導入することができる。反応物質は好ましくは個別のラインから添加するのがよい。反応物質は同じステップ又は任意の位置でカラムに供給することができる。
【0133】
反応物質の温度は、フィード内の熱交換器を用いて調節することができる。この目的のために必要な装置は図1には図示されていない。好ましい方法の変形において、反応物質はカラム中に個別に計量して導入し、低沸点の成分は高沸点の成分の供給位置よりも下で計量して導入する。この場合、低沸点の成分は好ましくは蒸気の形態で添加するのがよい。
【0134】
本発明では、2つ以上の分離ステップを有する任意の多段蒸留カラム(3)を使用してよい。規則充填物又は不規則充填物を用いたカラムの場合、本発明で使用する分離ステップの数はトレイカラムのトレイ数又は理論段数である。
【0135】
トレイを用いた多段蒸留カラムの例としては、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、トンネルキャップトレイ、バルブトレイ、スロットトレイ、スロットシーブトレイ、バブルキャップシーブトレイ、ジェットトレイ、遠心トレイなどを用いたカラムが挙げられ、不規則充填物を用いた多段蒸留カラムの例としては、Raschigリング、Lessingリング、Pallリング、Berlサドル、Intaloxサドルなどを用いたカラムが挙げられ、規則充填物を用いた多段蒸留カラムの例としては、Mellapak(Sulzer)、Rombopak(Kuehni)、Montz−Pak(Montz)タイプの充填物を用いたカラム及びKata−Pakなどの触媒ポケットを用いた規則充填物を用いたカラムが挙げられる。
【0136】
トレイ領域、不規則充填物領域又は規則充填物領域の組み合わせを用いた蒸留カラムも同様に使用することができる。
【0137】
カラム(3)は内部装置を備えることができる。カラムは、好ましくは蒸気を凝結するためのコンデンサ(12)及び底部蒸発器(18)を有するのがよい。
【0138】
蒸留装置は好ましくは1つ以上の本明細書では反応器として周知の領域を有し、そこで1つ以上の触媒が供給されるのがよい。この反応器は蒸留カラムの内部にあってよい。ただし、この反応器は好ましくはカラム(3)の外部に個別の領域として配置されるのがよく、これらの好ましい実施形態の一つを図1に詳細に説明する。
【0139】
個別の反応器(8)でエステル交換反応を実施するため、カラム内部で下に流れる液相の一部を回収器を用いて回収し、それを側流(4)としてカラム外部へ通過させることができる。この回収器の位置は、個々の成分のカラムにおける濃度プロファイルによって決定する。濃度プロファイルは温度及び/又は還流によって制御することができる。回収器は好ましくは、カラムの外部へと導く流が両方の反応物質を含有するように、より好ましくは十分に高濃度の反応物質を含有するように、最も好ましくは酸:エステルのモル比が1.5:1〜1:1.5で反応物質を含有するように位置させるのがよい。また、複数の回収器を蒸留カラムのさまざまな地点に供給することができ、この場合、除去する反応物質の量を用いてモル比を調節することができる。
【0140】
また、例えば水などの追加の反応物質をカラムの外部へと導く流に計量して導入し、エステル交換(cross−transesterification)反応における酸/エステル生成物比を調節するか、選択性を高めることができる。水は外部から1本のライン(図1には示さず)を介して供給するか、相分離器(13)から除去することができる。水により強められる流(5)の圧は、例えばポンプなどの圧力増加装置(6)を用いて上昇させることができる。
【0141】
圧力の上昇により、例えば固定層反応器などの反応器における流の形成を抑えるか、予防することができる。これにより、反応器を通るフロー及び触媒粒子の湿潤が均一化する。この流が熱交換器(7)を通るように導き、反応温度を調節することができる。流は必要に応じて加熱するか冷却することができる。また、エステル:酸の生成物比を、反応温度を介して調節することもできる。
【0142】
エステル交換反応は、固定層反応器(8)の触媒の上で実施される。反応器を通るフローは下向きであっても上向きであってもよい。反応器の出力流(9)は生成物及び未変換の反応物質をある程度まで包含し、反応器廃流中の成分の含量は、滞留時間、触媒の質量、反応温度及び反応物質比及び添加する水の量に左右されるが、これは最初に熱交換器(10)を通過して、蒸留カラムに導入するのに有益な温度に調節される。この流の導入地点において蒸留カラム内の温度に該当する温度に設定するのが好ましい。
【0143】
反応器を離れる流がカラムに戻る位置は、反応器の供給物質を除去する位置の上であっても下であってもよいが、好ましくは上がよい。カラムへと再循環させる前に、この流をバルブ(11)を介して減圧して、好ましくはカラムと同じ圧力レベルにするのがよい。この文脈において、蒸留カラムは好ましくはより低い圧力であるのがよい。この構成により、分離すべき成分の沸点が下げられ、その結果として蒸留をより低い温度で実施することができ、その結果としてエネルギーが節約され、熱的により弱くすることができるという利点が生じる。
【0144】
蒸留カラム(3)では、混合生成物をその後分離する。低沸点生成物、好ましくはエステル交換で製造されたエステルを塔頂から除去する。蒸留カラムは好ましくは、固定層反応器の蒸留に添加する水を同様に塔頂生成物として除去できるように操作するのがよい。塔頂で除去した蒸気流をコンデンサ(12)で凝結し、デカンタ(13)で分離して、水相及び生成物のエステル含有相に戻す。この水相は、ライン(15)を介して排出させて精密検査に回すか、ライン(17)を介して完全又は部分的に反応中に戻すことができる。エステル含有相の流は、ライン(14)を介して部分的に還流(16)としてカラムに導くか、部分的に蒸留塔から排出させることができる。高沸点生成物、好ましくはエステル交換で製造された酸は、底流としてカラム(19)から排出させる。
【0145】
この反応で得られたα−ヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロイソ酪酸は、さらなるステップE)で既知の方法を用いて脱水することができる。一般に、α−ヒドロキシカルボン酸、例えばα−ヒドロキシイソ酪酸は、1つ以上の金属塩、例えばアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属塩の存在下で、160〜300℃、より好ましくは200〜240℃まで加熱し、一般に(メタ)アクリル酸及び水を得る。好適な金属塩には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及びリン酸二水素ナトリウムが含まれる。
【0146】
α−ヒドロキシカルボン酸の脱水は、好ましくは0.05〜2.5バール、より好ましくは0.1〜1バールの圧力で実施することができるのがよい。
【0147】
α−ヒドロキシカルボン酸の脱水方法は、例えばDE−A−1768253号に記載されている。
【0148】
こうして得られた(メタ)アクリル酸を用いて、アルキル(メタ)アクリレートを製造することができる。また、(メタ)アクリル酸は市販製品である。驚くべきことに、アルキル(メタ)アクリレートを製造する方法は、その結果同様に(メタ)アクリル酸を製造するにも役立てることができ、その場合、アルキル(メタ)アクリレート:(メタ)アクリル酸の生成物比は、アルキルα−ヒドロキシカルボン酸エステルのエステル交換における水の濃度及び/又は反応温度によって容易に制御することができる。
【0149】
本発明による方法は、ポリマー製造方法又は成形材料及びプラスチック成形品の製造方法の部分工程とみなすことができるため、本発明を用いて実施するこれらの方法も同様に新規であり本発明に関するものである。
【0150】
本発明に従って得ることのできる(メタ)アクリレート、特に好ましくは製造すべきメチルメタクリレートは、フリーラジカル法を用いてポリマーに変換することができる。
【0151】
これらのポリマーは一般に、メチルメタクリレートを包含する混合物のフリーラジカル重合によって得られる。一般にこれらの混合物は、モノマーの質量に対して40質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上のメチルメタクリレートを含有する。
【0152】
また、これらの混合物はさらにメチルメタクリレートと共重合できる(メタ)アクリレートを包含することができる。「(メタ)アクリレート」という表現は、メタクリレート類及びアクリレート及びこの2つの混合物を包含する。
【0153】
これらのモノマーは広く知られている。これらには、飽和アルコール類から派生した(メタ)アクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート;不飽和アルコール類から派生した(メタ)アクリレート、例えば、オレイル(メタ)アクリレート、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート;アリール基がそれぞれ未置換であるか最大四置換されたベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレートなどのグリコールジ(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレートなどのエーテルアルコール類の(メタ)アクリレート;N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(ジエチルホスフォノ)(メタ)アクリルアミド、1−メタクリロイルアミド−2−メチル−2−プロパノールなどの(メタ)アクリル酸のアミド類及びニトリル類;エチルスルフィニルエチル(メタ)アクリレート、4−チオシアナトブチル(メタ)アクリレート、エチルスルフォニルエチル(メタ)アクリレート、チオシアナトメチル(メタ)アクリレート、メチルスルフィニルメチル(メタ)アクリレート、bis((メタ)アクリロイロキシエチル)スルフィドなどの硫黄含有(メタ)アクリレート;トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能基(メタ)アクリレートが含まれる。
【0154】
上に詳述した(メタ)アクリレートに加えて、重合される組成物は、さらにメチルメタクリレート及び上述の(メタ)アクリレートと共重合できる不飽和モノマー類も包含することができる。
【0155】
これらには、ヘキセン−1、ヘプタン−1などの1−アルケン類;例えばビニルシクロヘキサン、 3,3−ジメチル−1−プロペン、3−メチル−1−ジイソブチレン、4−メチルペンテン−1などの分枝アルケン類;アクリロニトリル;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン類、例えばα−メチルスチレン及びα−エチルスチレン、ビニルトルエン及びp−メチルスチレンなどの環にアルキル置換基を有する置換スチレン類、ハロゲン化スチレン類、例えばモノクロロスチレン類、ジクロロスチレン類、トリブロモスチレン類及びテトラブロモスチレン類;2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリジン、3−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニロキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオランなどの複素環式ビニル化合物、ビニルチアゾール類及び水素化ビニルチアゾール類、ビニロキサゾール類及び水素化ビニロキサゾール類;ビニル及びイソプレニルエステル類;マレイン酸誘導体、例えば無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミド;及びジエン類、例えばジビニルベンゼンが含まれる。
【0156】
一般にこれらのコモノマー類は、モノマー類の質量に対して0〜60質量%、好ましくは0〜40質量%、より好ましくは0〜20質量%で使用するもので、化合物は個々に又は混合物として使用することができる。
【0157】
重合は一般に既知のフリーラジカル開始剤で開始させる。好ましい開始剤には、AIBN及び1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボン酸ニトリルなどの当該技術分野で広く既知のアゾ開始剤、過酸化メチルエチルケトン、過酸化アセチルアセトン、過酸化ジラウリル、tert−ブチルper−2−エチルヘキサノエート、過酸化ケトン、過酸化メチルイソブチルケトン、過酸化シクロヘキサノン、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペロキシベンゾエート、tert−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート、2,5−bis(2−エチルヘキサノイルペロキシ)−2,5−ジメチルへキサン、tert−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペロキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、過酸化ジクミル、1,1−bis(tert−ブチル−ペロキシ)シクロヘキサン、1,1−bis(tert−ブチルペロキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、bis(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネートなどのペロキシ化合物、上述の化合物の2つ以上を互いに混合した混合物及び上述の化合物を同様にフリーラジカルを形成することのできる不特定の化合物と混合した混合物が含まれる。
【0158】
これらの化合物は、モノマー類の質量に対し、多くは0.01〜10質量%、好ましくは0.5〜3質量%で使用する。
【0159】
重合は好ましくは20〜120℃で実施することができるのがよい。
【0160】
(メタ)アクリレートから種々のフリーラジカル重合法を用いて(メタ)アクリレートホモ及び/又はコポリマーを製造することは、それ自体既知である。例えば、ポリマー類はバルク、溶液、懸濁又は乳化重合によって製造することができる。バルク重合は、例示のかたちでHouben−Weyl, Volume E20, part 2 (1987), p. 1145ffに記載されている。溶液重合に関する価値ある情報は、同出版物のp.1156ffにみることができる。懸濁重合法の詳細は、同出版物のp.1149ffにみることができ、乳化重合に関しては同出版物のP.1150ffに詳細に記述され説明されている。
【0161】
上記に詳述したポリマー類を特に使用して、このポリマー類のほか通常は添加剤、例えば着色剤、顔料、例えば金属顔料、UV安定剤又は充填剤などを包含することのできる成形材料を製造することができる。これらの添加剤の比率は意図する応用例によって異なり、したがって広範囲にわたる。この比率は、添加剤が存在する場合は好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0.1〜5質量%であるのがよい。
【0162】
好ましい成形材料及びポリマー類は、通常の成形法、例えば射出成形又は押出成形を用いて成形品に加工することができ、本発明は同様に成形品を製造する方法も提供する。この方法は、本発明による方法によって得られたポリマーを用いて実施される。
【0163】
また、本発明による方法によって得られたアルキル(メタ)アクリレート、特にメチルメタクリレートを用いて、鋳造ガラスを製造することができる。鋳造チャンバー法で得られたこれらのポリマーは特に分子量が高く、したがって熱可塑性に加工可能なポリマーとは異なる機械的特性を示す。本発明は同様にこれらの成形品を製造する方法も提供する。この方法は、本発明の方法により得られた(メタ)アクリレートを用いて実施する。
【0164】
次に、本発明を実施例を示して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】蒸留塔の好ましい実施形態を示す図
【実施例】
【0166】
実施例1
HCN 1モル、アセトン2.5モル及びLi2O 200ppmを包含する混合物を製造し、20℃で平衡が確立されるまで反応させた。得られた反応混合物は、47.7質量%のアセトンシアノヒドリン及び51.5質量%のアセトンを包含していた。HCNの割合は8000ppm未満であった。
【0167】
この組成の混合物を連続的に加水分解反応器に移し、該反応器に38.6質量%の水を添加した。この間、HCNの割合は実質的に変化しなかった。
【0168】
水は、アセトンシアノヒドリンの加水分解後の反応混合物の精製に際して塔底から取得された還流から部分的に添加した。加水分解は、WO2008/061822号の実施例に特に詳細に説明されているMnO2触媒を使用して実施した。刊行物WO2008/061822号の実施例1に記載されているように、触媒を安定化させるために空気を使用した。pHは9.0であった。
【0169】
加水分解後に得られた反応混合物から、第一の蒸留ステップでカルボン酸アミドを塔底より分離し、この蒸留は175℃(塔底温度)及び0.4バールの圧力で実施した。
【0170】
52質量%の水、43質量%のアセトン、4.8質量%のアセトンシアノヒドリン及び0.2質量%のHCNを包含する塔頂生成物を、内部構造物を備えた蒸留カラムを用いて連続的に精製し、その際、1.2kg/hの流を添加した。アセトン0.3kgをカラムの還流を介して供給することで、高い分離能を達成した。蒸留装置は制限されない耐用期間を示し、すなわち60日以内に分離能の低下は認められなかった。塔底生成物中でHCNを検出することはできなかった。塔頂生成物は86質量%のアセトン、5.8質量%のアセトンシアノヒドリン、0.2質量%のHCN及び8質量%の水を包含していた。
【0171】
触媒の耐用期間は60日を超え、その際、触媒の耐用期間は、変換レベルが開始時の変換レベルの50%未満に低下するまでの期間と定義されている。
【符号の説明】
【0172】
1,2 ライン、 3 蒸留カラム、 4 側流、 5 流、 6 圧力増加装置、 7 熱交換器、 8 固定層反応器、 9 出力流、 10 熱交換器、 11 バルブ、 12 コンデンサ、 13 デカンタ、 14,15 ライン、 16 還流、 17 ライン、 18 底部蒸発器、 19 カラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)カルボニル化合物をシアン化水素と反応させ、ヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するステップ、
B)ステップA)で得られたヒドロキシカルボン酸ニトリルを、二酸化マンガンを包含する触媒の存在下で加水分解するステップ
を包含する、カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法において、ステップA)によるカルボニル化合物とシアン化水素との反応のために、カルボニル化合物をシアン化水素に対してモル過剰で使用し、ステップA)で得られた反応混合物を、ステップB)による加水分解を実施するまで蒸留精製しないことを特徴とする、カルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法。
【請求項2】
シアン化水素に対するカルボニル化合物のモル比が1.1:1〜7:1であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シアン化水素に対するカルボニル化合物のモル比が1.5:1〜5:1であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップB)で得られた反応混合物を二段階の蒸留で精製することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
得られたカルボン酸アミドを、水、カルボニル化合物及びヒドロキシカルボン酸ニトリル及び/又はシアン化水素を包含する混合物から分離し、この混合物をさらなる蒸留ステップで精製し、その際、カルボニル化合物及びシアン化水素を蒸留塔の塔頂より取り出し、水を蒸留塔の塔底から取り出すことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
得られたカルボン酸アミド及び水を、カルボニル化合物及びヒドロキシカルボン酸ニトリル及び/又はシアン化水素を包含する混合物から分離し、追加の蒸留ステップで水を得られたカルボン酸アミドから分離することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
多段階の蒸発濃縮でカルボン酸アミドを水から分離することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップA)で使用されるカルボニル化合物を包含する組成物を、水及びシアン化水素の分離のために使用される蒸留塔に還流を介して導入し、その際、還流中に導入された組成物が蒸留塔の塔頂を介して取り出された組成物より低い割合のHCNを有することを特徴とする、請求項4から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
添加されるカルボニル化合物の量を、ステップA)で予定される量のヒドロキシカルボン酸ニトリルの製造に十分であるように選択することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
精製によって得られたカルボニル化合物を、ステップA)によるヒドロキシカルボン酸ニトリルの製造のために使用することを特徴とする、請求項4から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
精製によって得られた水を、ステップB)によるヒドロキシカルボン酸ニトリルの加水分解のために使用することを特徴とする、請求項4から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ステップA)で使用されるカルボニル化合物がアセトンであることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップA)によるヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するためのカルボニル化合物とシアン化水素との反応を−10〜50℃の範囲の温度で実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップA)によるヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するためのカルボニル化合物とシアン化水素との反応を0.3〜3バールの範囲の圧力で実施することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
二酸化マンガンを包含する触媒にステップB)で加えられる反応混合物のpHが6.0〜11.0であり、加水分解を酸化剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
水酸化物又は酸化物の添加によりpHを調節することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
pHを調節するための添加を、ステップA)によるヒドロキシカルボン酸ニトリルを製造するためのカルボニル化合物とシアン化水素との反応に際して実施することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
加水分解をリチウムイオンの存在下で実施することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ステップB)による加水分解に際してのヒドロキシカルボン酸ニトリルに対する水のモル比が0.5:1〜25:1の範囲にあることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ステップB)による加水分解反応を10〜150℃の範囲の温度で実施することを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
加水分解反応を0.1〜10バールの範囲の圧力で実施することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
アルキル(メタ)アクリレートの製造方法に際して、請求項1から20までのいずれか1項に記載のカルボニル化合物及びシアン化水素からカルボン酸アミドを製造する方法を実施することを特徴とする、アルキル(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項23】
メチルメタクリレートを製造することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のアルキル(メタ)アクリレートを使用することを特徴とする、ポリマー類の製造方法。
【請求項25】
重合を20〜120℃の範囲の温度で実施することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項24又は25に記載のポリマーを使用することを特徴とする、成形材料の製造方法。
【請求項27】
請求項22又は23に記載のアルキル(メタ)アクリレート又は請求項26に記載の成形材料を使用することを特徴とする、プラスチック成形品の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−510485(P2012−510485A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538919(P2011−538919)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064279
【国際公開番号】WO2010/063520
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】