説明

カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物およびフィルム、シート

【課題】 カレンダー成形性が良好なアクリル系樹脂組成物を提供し、アクリル樹脂の優れた透明性、耐候性を示し、かつ、柔軟性、耐ブロッキング性、耐ブリードアウト性、密着性の優れたフィルム、シートを提供する。
【解決手段】 25〜75重量%のアクリル樹脂と75〜25重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、190℃で測定したせん断粘度が1000Pa・s以下、溶融張力が100mN以下であるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物とした。また、該組成物からフィルムおよびシートを作製し、さらに、その少なくとも片面のぬれ張力を45mN/m以上とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレンダー成形により軟質フィルムまたはシートを製造するための材料として有用なアクリル系樹脂組成物及び該アクリル系樹脂組成物より形成されるフィルム、シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリ塩化ビニルからなるフィルムやシートは、透明性が良好でカレンダー成形も容易なことから、自動車内装用表皮レザー、建築用化粧シート、鋼鈑用化粧シート、表面保護フィルム、マーキングフィルム、粘着テープ、ラップフィルム、輸液バッグ、壁紙、農業用フィルム等として広く利用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル(PVC)は燃焼した際に有毒なダイオキシンや塩化水素ガスを排出すおそれが指摘され、また、軟質PVCに含まれる可塑剤が人体に悪影響を与えるともいわれている。特に近年においては、上記環境面での問題が重要視され、PVCの使用はあらゆる分野で問題視されている。さらに軟質PVCフィルムは、可塑剤のブリードアウト(滲出し)や移行による被着体の汚染や、印刷インキや粘着剤との密着性が経時で低下するなどの問題がある。
【0003】
一方、軟質ポリ塩化ビニルからなるフィルムやシートと同等以上の透明性と耐候性を示す事から、アクリル樹脂からなるフィルム、シートが注目されている。Tダイ押出成形法やインフレーション成形法などにより製造され、ポリカーボネートやPVCなどの成形品、フィルム、壁紙、金属鋼板などの表面保護に使用されている。しかし、一般に市販されているアクリル樹脂およびアクリルフィルムは、硬質で脆いため、使用できる分野が大きく制限されてしまう。
そこで、軟質アクリル系樹脂組成物やフィルム(例えば、特許文献1〜3参照。)などが提案されている。しかし、これらの樹脂組成物やフィルムは、カレンダー成形性、透明性、耐ブリードアウト性等に問題があった。
【0004】
即ち、特許文献1のものでは、アクリル系ゴム弾性体に塩化ビニル樹脂に使用される可塑剤の添加が提案されているが、この方法では、可塑剤の種類によっては透明性又はブリードアウト性(滲出し)の何れかが悪化する。例えば、フタル酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系の可塑剤を添加した場合には、透明性が低下してしまい、リン酸エステル系、ポリエステル系、塩素化パラフィン系の可塑剤を添加した場合には、耐ブリードアウト性が悪化する。
【0005】
また、特許文献2のものでは、アクリルポリマーにアルキレンエーテルグリコールのモノカルボン酸エステルを添加することが提案されている。この方法は、加工性及びブリードアウト性の改良が目的であり、これらは改良されるが、透明性が低下する傾向にある。
【0006】
また、特許文献3のものでは、アクリル系の多層構造重合体粒子が提案されており、この方法によれば透明性及び柔軟性については良好であるが、カレンダー成形性が悪くなる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−31287号公報
【特許文献2】特開2000−103930号公報
【特許文献3】特開2002−277601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述のような課題を解決しようとするものであり、アクリル樹脂の優れた透明性、耐候性を示し、かつ、カレンダー成形性、柔軟性、耐ブロッキング性、耐ブリードアウト性、密着性の優れたアクリル系樹脂組成物及び該アクリル系樹脂組成物より形成されるフィルム、シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、特定のアクリル系ゴム粒子比率を有し、その組成物が特定の範囲のせん断粘度、溶融張力である場合にのみカレンダー成形性が良好であり、かつ、得られたフィルム、シートが種々の優れた性能を示す事を見出した。
即ち、カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物としては25〜75重量%のアクリル樹脂と75〜25重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、該組成物の190℃で測定したせん断粘度が1000Pa・s以下、溶融張力が100mN以下である事を特徴とし(請求項1)、また、本発明のフィルムおよびシートが前記カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物より形成されることを特徴とし(請求項2)、さらに、その少なくとも片面のぬれ張力が45mN/m以上であることを特徴とするフィルムおよびシートである(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物によれば、外観が良好なフィルム、シートを容易に得ることができる。
また、本発明のフィルムやシートは、上記カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物から形成されるため、透明性、耐候性、柔軟性、耐ブロッキング性、耐ブリードアウト性に優れる。
さらに、本発明のフィルムやシートは、表面のぬれ張力を45mN/m以上にすることで、各種印刷インキ、粘着剤との密着性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適実施の態様について詳細に説明する。
本発明に係るカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物は、25〜75重量%のアクリル樹脂と75〜25重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、該組成物の190℃で測定したせん断粘度が1000Pa・s以下、溶融張力が100mN以下である事が必要である。
【0012】
カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物中のアクリル樹脂とアクリル系ゴム粒子の比率は、柔軟性、加工性及び耐ブロッキング性を考慮すると、アクリル樹脂が25〜75重量%に対しアクリル系ゴム粒子が75〜25重量%であることが必要であり、より柔軟性を高めるには25〜50重量%のアクリル樹脂と75〜50重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなることがより好ましい。
アクリル樹脂が25重量%未満であると、フィルム及びシートの耐ブロッキング性が劣り、アクリル樹脂が75重量%より多いとフィルム及びシートの柔軟性、伸びが劣る。
【0013】
本発明で用いられるアクリル樹脂は、特に限定されないがメチルメタクリレートと共重合可能な不飽和単量体混合物を重合して得られる共重合体であって、本発明のアクリル系樹脂組成物に成形性及び剛性を付与する作用を有する。剛性を付与する作用は、メチルメタクリレートと不飽和単量体との比率に影響を受けるが、目的に合わせて適宜設定する事ができる。
【0014】
メチルメタクリレートと共重合可能な不飽和単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物、アクリルニトリルなどが挙げることができ、これらは単独あるいは2種以上を併用して用いられる。
【0015】
また、本発明で用いられるアクリル系ゴム状粒子は、特に限定されないがアクリル酸エステルとこれと共重合可能な多官能性単量体および他の単官能性単量体からなる単量体混合物によって形成されるゴム弾性を有する粒子であって、本発明のアクリル系樹脂組成物に成形性及び柔軟性を付与する作用を有する。
【0016】
前記アクリル系ゴム状粒子を形成するアクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のアクリル酸とC1〜C18の飽和脂肪族アルコールとのエステル; シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルアクリレート等のアクリル酸とフェノール類とのエステル;ベンジルアクリレート等のアクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。
【0017】
前記アクリル系ゴム状粒子を形成するために用いられる多官能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールとのエステル;前記の不飽和モノカルボン酸とエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコールとのジエステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールとのエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。なお、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリレート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
【0018】
前記アクリル系ゴム状粒子を形成する、アクリル酸エステル及び多官能性単量体以外に、アクリル酸エステルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用することができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート等のメタクリル酸とC1〜C22の飽和脂肪族アルコールとのエステル;シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸とC5又はC6の脂環式アルコールとのエステル;フェニルメタクリレート等のメタクリル酸とフェノール類とのエステル、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステルが代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0019】
本発明に使用するアクリル樹脂とアクリル系ゴム状粒子は、それぞれをブレンドして使用することもできるが、加工性の向上のためには、アクリル樹脂がアクリル系ゴム状粒子にグラフト共重合したもの(以下、アクリル系グラフト共重合体と称する。)を使用することが好ましい。この際、アクリル系グラフト共重合体の粒径がサブミクロン(0.1〜1μm)の均一なコアシェル型の多層構造であることが好ましい。粒径が1μmを超えるとロール加工時においてバンク回りが悪化し、0.1μm未満であるとコアシェル構造が小さくなり利点を活かすことができなくなる。
また、アクリル系グラフト共重合体を使用する場合でも、更に、他のアクリル系グラフト共重合体やアクリル樹脂を添加することも可能である。
【0020】
更に、本発明に係るアクリル系樹脂組成物に、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、充填剤、帯電防止剤、安定剤、抗菌剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0021】
滑剤としては、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸アマイド系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、金属石鹸系滑剤などが挙げられる。脂肪酸エステル系滑剤として、高分子複合エステルワックス、モンタン酸エステルワックス、特殊脂肪酸エステル、グリセリンモノステアレートなどが挙げられる。脂肪酸アマイド系滑剤として、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。高級脂肪酸系滑剤としてステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられる。金属石鹸系滑剤としてベヘン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0022】
酸化防止剤としては、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、高分子型フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、燐酸系酸化防止剤などが挙げられる。モノフェノール系酸化防止剤として、2、6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどが挙げられる。ビスフェノール系酸化防止剤として、2、2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。高分子型フェノール系酸化防止剤として1、1、3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどが挙げられる。硫黄系酸化防止剤としてジラウリル3、3’−チオジプロピオネートなど、燐酸系酸化防止剤としてトリフェニルホスファイトなどが挙げられる。
【0023】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。サリチル酸系紫外線吸収剤としてフェニルサリシレートなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として2、4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤として2−エチルヘキシル−2−シアノ−3、3‘−ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0024】
フィルムやシートの成形法としては、一般的にインフレーション成形法、Tダイ押出成形法、カレンダー成形法等があるが、ゴム状粒子を多く含む材料は薄膜成形性が劣る傾向があるため、本発明のアクリル系樹脂組成物はカレンダー成形法により成形することが好ましい。インフレーション成形法、Tダイ押出成形法での成形の可能であるが、生産性が著しく低下し経済性に乏しい。
【0025】
本発明に係るカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物のせん断粘度及び溶融張力は、内径が9.55mm、温度190℃のシリンダーの最下部に口径1mm、口長20mmのオリフィスを設備したキャピログラフ(東洋精機製作所製社製)を用いて測定した。せん断粘度はシリンダー中の溶融樹脂をピストンにより押出す際のオリフィス部のせん断速度608s−1における見掛けのせん断粘度であり、溶融張力はピストンの下降速度が10mm/minの時にオリフィスから押出された溶融樹脂のストランドを滑車を介して速度10m/minで引取る際のストランドの張力である。
【0026】
カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物のせん断粘度は、カレンダー成形時の圧延負荷を考慮すると、1000Pa・s以下であることが必要である。
せん断粘度が1000Pa・sより大であると、カレンダー成形時の圧延ロールの駆動動力に対する負荷が著しく高くなり、容易に成形できない。せん断粘度の下限については必ずしも厳密な制限は無いが、圧延ロール間のバンク中の気泡の抜けやすさの観点から150Pa・s以上である事が好ましい。
【0027】
カレンダー成形用アクリル系樹脂組成物の溶融張力は、カレンダー成形時のバンク回転を考慮すると、100mN以下であることが必要である。
溶融張力が100mNより大であると、カレンダー成形時の圧延ロール間のバンクの回転が乱れ、フィルム外観にフローマークなどの不良を生じる。更に溶融張力が大きくなると薄膜成形性が悪化し、薄いフィルムを得る事が困難となる。溶融張力の下限については必ずしも厳密な制限は無いが、圧延ロールからの溶融樹脂の剥離性の観点から10mN以上である事が好ましい。
【0028】
せん断粘度、溶融張力は、アクリル樹脂の分子量や分子量分布、アクリル系ゴム粒子の粒径や配合量の影響を受けるが、目的に合わせて適宜選定する事ができる。
ここで示した様な特定の限られた範囲のせん断粘度及び溶融張力を示す樹脂組成物でのみ、良好なカレンダー成形性が達成でき、これらの範囲のせん断粘度及び溶融張力を示す樹脂組成物であれば、圧延ロールの温度を160℃〜220℃の範囲に調整する事で、従来のカレンダー設備を用いて、容易に良好な性能のフィルムおよびシートを得ることができる。
【0029】
フィルムやシートをカレンダー成形法により作製する場合、その厚さについて用途に応じて適宜選定すればよいが、20μm〜1000μmの厚さが好適である。20μm未満や1000μmより厚くなると加工が困難となるため好ましくない。
【0030】
本発明のカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物より形成されるフィルムやシートは、各種粘着加工や印刷加工を施す事ができ、マスキングテープやマーキングフィルムなどの産業用途、ダイシング用粘着テープ、バックグラインド用粘着テープなど半導体製造用途、包装用、雑貨用、インクジェット印刷用、ステッカー用、防汚フィルム用途などの基材フィルムやシートに広く使用することがでる。
【0031】
さらに、本発明のカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物より形成されるフィルムやシートの少なくとも片面のぬれ張力を45mN/m以上にすることで、各種印刷インキや粘着剤との密着性が著しく向上する。ぬれ張力は、JIS K 6768に従いぬれ張力試験用混合液により判定した値であり、特に58mN/m以上とする事で、水性インキを用いた印刷加工品やエマルジョン系粘着剤を用いた粘着加工品において、本発明のフィルムまたはシートと各種印刷インキや粘着剤との密着性が著しく向上する。
ぬれ張力を45mN/m以上にする方法としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理等の公知の技術を用いる事ができるが、低コストで容易な方法としてコロナ放電処理が好ましい。
【0032】
フィルムやシート表面に印刷を行う場合、印刷用塗料には各種の顔料や染料を利用することができる。
例えば、白色系として酸化チタン、硫酸バリウム、黒色系として鉄黒、カーボンブラック、アニリンブラック、黄色系としてカドミエロー、オイルエロー2G、橙色系としてクロムバーミリオン、カドミオレンジ、赤色系としてカドミレッド、パーマネントレッド4R、オイルレッド、紫色系としてコバルトバイオレッド、アンスラキノンバイロレット、青色系として群青、紺青、コバルトブルー、緑色系としてフタロシアニングリーン、クロムグリーンなどの各種顔料、染料を使用できる。
【0033】
上記塗料に使用するビヒクル用の樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、アクリルゴム系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル系共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル系共重合樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンゴム系樹脂、変性シリコーン系樹脂、エポキシ−アクリル系樹脂、エポキシ−フェノール系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム系樹脂などの樹脂及び、これら樹脂の混合物などが挙げられる。また、塗料は水性タイプ、溶液タイプ、無溶剤タイプの何れも使用でき、印刷方法としては、グラビヤ印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷などを用いる事ができる。
【0034】
フィルムやシート表面に粘着剤層を形成する粘着剤としては、公知または慣用の粘着剤組成物を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等からなる粘着剤や、放射線硬化型や加熱発泡型の粘着剤を用いることができる。これら粘着剤層の厚さは、粘着剤の種類にもよるが、通常は3〜100μm、好ましくは3〜50μm程度である。
【0035】
前記粘着剤の中で、アクリル系粘着剤としては、通常、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合性コモノマーとの共重合体が用いられる。更にこれらの共重合体を構成するモノマーまたはコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、イソノニルエステル等)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(例えば、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、ヒドロキシヘキシルエステル)、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。主モノマーとしては、通常、ホモポリマーのガラス転移点が−50℃以下のアクリル酸アルキルエステルが使用される。
【0036】
また、紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、前記した(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合性コモノマーとの共重合体(アクリル系ポリマー)と、紫外線硬化成分(前記アクリル系ポリマーの側鎖に炭素−炭素二重結合を付加させる成分)および光重合開始剤と、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの慣用の添加剤を加えたものが使用される。
【0037】
ちなみに、前記紫外線硬化成分としては、分子中に炭素−炭素二重結合を有しラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマー、ポリマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステルアクリレートオリゴマー、2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物などが挙げられる。なお、アクリル系ポリマーとして、ポリマー側鎖に炭素−炭素二重結合を有する紫外線硬化型ポリマーを使用する場合においては、特に上記の紫外線硬化成分を加える必要はない。
【0038】
前記の重合開始剤としては、その重合反応のきっかけとなり得る適当な波長の紫外線を照射することにより開裂し、ラジカルを生成する物質であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイル、ベンゾフェン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類、ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン類などを挙げることができる。
なお、前記架橋剤には、例えば、ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマーなどが含まれる。
【0039】
また本発明のカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物より形成されるフィルムやシートは、単層および多層で使用することができる。具体的にはカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物からなる層と合成樹脂組成物からなる層との2層構造や、さらに、これらの2層構造にさらに積層し3層以上の層構造を持つようにしてもよい。
積層方法(ラミネート方法)としては、特に制限は無く、従来より知られる各種の積層方法が採用できる。
【0040】
ここで使用する上記合成樹脂組成物は特には限定されないが、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS、MBS、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、天然ゴム、合成ゴムなどが挙げられる。
【0041】
また、本発明のフィルムやシートをカレンダー成形により作製する際には、樹脂および添加剤を単純に混ぜ合わせたものを材料として用いてもよく、予め混練機で溶融混練したものでもよい。更に、添加剤を樹脂に高濃度で配合した通常、マスターバッチと称される材料を前もって調整し、これらを単純に混合するか、または樹脂ペレットとマスターバッチを溶融混練したものを用いてもよい。ここで使用される混練機としては公知の装置が使用できるが、取り扱いが容易で均一な分散が可能であるロール、1軸または2軸押出機、ニーダー、コニーダー、プラネタリーミキサー、バンバリーミキサーなどが好ましく用いられる。
【実施例】
【0042】
次に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
各評価項目の良否に関する判定は下記の基準に従った。
[カレンダー成形性の評価:外観]
カレンダー成形において、圧延ロール間のバンク回転状態と、仕上がったフィルムまたはシートの外観の良否を下記の基準にて目視により評価した。
評価基準
○:バンク回転が均一で、フィルムまたはシートにフローマーク不良等が無い
×:バンク回転が不均一で、フィルムまたはシートにフローマーク不良等が有る
[カレンダー成形性の評価:圧延負荷]
カレンダー成形において、従来のPVC配合の中で、比較的圧延負荷が高い配合系(重合度1000のPVC樹脂100重量部に可塑剤としてジ(2−エチルヘキシル)フタレートを5重量部配合したもの)と同等以下の圧延負荷である場合を「○」、それ以外の場合を「×」とした。
[カレンダー成形性の評価:薄膜成形性]
カレンダー成形において、最終圧延ロールでのシート厚み(V1)と得られたフィルムまたはシートの厚み(V2)の比率(V1/V2)が1.5以上である場合を「○」、1.5未満である場合を「×」とした。
[耐ブロッキング性の評価]
カレンダー成形により得られたフィルムまたはシートの巻物を繰り出した際、無理無く繰り出せる場合を「○」、ブロッキングにより繰り出しができない、または不均一な繰り出しである場合を「×」とした。
[耐ブリードアウト性の評価]
カレンダー成形により得られたフィルムまたはシートを、60℃−90%RHの条件下で3週間エージングし、ブリードアウトの有無を目視により評価した。
評価基準
○:ブリードアウトが無い
×:ブリードアウトが有る
[柔軟性の評価]
カレンダー成形により得られたフィルムまたはシートの流れ方向(MD)に幅19mm、長さ120mmの試験片を切出し、引張試験機により引張初期弾性率の測定を行った。引張条件はチャック間距離50mm、引張速度5mm/minで行い、応力−歪曲線(S−Sカーブ)の初期歪の接線より引張初期弾性率を算出した。算出した引張初期弾性率の値を柔軟性の指標とし、下記の基準にて評価した。
評価基準
◎:引張初期弾性率が500MPa未満
○:引張初期弾性率が500MPa以上1000MPa未満
×:引張初期弾性率が1000MPa以上
[粘着剤の密着性の評価]
離型処理したPETフィルム上に形成したアクリル系粘着剤層を、カレンダー成形により得られたフィルムまたはシートに転写し、PETフィルムを剥離して粘着フィルムまたは粘着シートを作製。得られた粘着フィルムまたは粘着シートをステンレス板に貼り付け、24時間後に剥離した際のステンレス板へのアクリル系粘着剤の移行性(糊残り)を下記の基準にて評価した。
評価基準
◎:糊残りがない
○:糊残りが一部にある
×:糊残りがほぼ全面である
[印刷インキの密着性の評価]
カレンダー成形により得られたフィルムまたはシートにインクジェットプリンターを使用して水性インクで印刷を行い、印刷面にセロハンテープを貼り、セロハンテープを剥離したときのインクの剥離性(残存塗膜面積)を下記の基準にて評価した。
評価基準
◎:残存塗膜面積が90%以上
○:残存塗膜面積が30%以上90%未満
×:残存塗膜面積が30%未満
【0044】
<実施例1>
アクリル樹脂としてとして住友化学社製スミペックスLG35(以下これを〔A−1〕と記す。)を、20重量%のアクリル樹脂と80重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなるアクリル系グラフト共重合体としてクラレ社製パラペットSA−1000−FP(以下、これを〔B−1〕と記す。)を選定し、〔A−1〕と〔B−1〕の混合比率を重量分率で40:60とし、さらに酸化防止剤として旭電化社製AO−60を0.1重量部、滑剤としてクラリアントジャパン社製リコワックスEを0.3重量部を配合してカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。得られたカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物は52重量%のアクリル樹脂と48重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、せん断粘度650Pa.s、溶融張力44mNであった。
一般的なカレンダー成形設備を用い、上記の樹脂組成物をヘンシェルミキサーで均一に混合し、バンバリーミキサーで樹脂温度が165℃になるまで混練して樹脂組成物を調製した。これを、逆L型形の4本圧延ロールを有するカレンダー成形機を用いて、圧延ロールを180℃に調整して圧延し、引き取り、冷却工程を経て、厚さ100μm、幅1300mmのフィルムを作製した。フィルムの表面は、片面を艶面に、他方の片面を梨地面に仕上げた。
【0045】
<実施例2>
実施例2は、実施例1における〔A−1〕に代えて、アクリル樹脂としてとしてクラレ社製パラペットEH(以下これを〔A−2〕と記す。)を用いた。また、〔A−2〕と〔B−1〕の混合比率を重量分率で10:90とし、28重量%のアクリル樹脂と72重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度613Pa.s、溶融張力58mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。はそれ以外は実施例1と同じである。
【0046】
<実施例3>
実施例3は、実施例1における〔A−1〕に代えて、50重量%のアクリル樹脂と50重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなるアクリル系グラフト共重合体としてクラレ社製パラペットGR−F−1000−P(以下、これを〔B−2〕と記す。)を用いた。また、〔B−2〕と〔B−1〕の混合比率を重量分率で60:40とし、38重量%のアクリル樹脂と62重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度963Pa.s、溶融張力61mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。AO−60を0.2重量部とし、カレンダー成形は圧延ロールを200℃に調整して圧延した。それ以外は実施例1と同じである。
【0047】
<実施例4>
実施例4は、実施例3における〔B−2〕に代えて、60重量%のアクリル樹脂と40重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなるアクリル系グラフト共重合体として三菱レイヨン社製メタブレンW341(以下、これを〔B−3〕と記す。)を用いた。また、〔B−3〕と〔B−1〕の混合比率を重量分率で60:40とし、44重量%のアクリル樹脂と56重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度950Pa.s、溶融張力55mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。それ以外は実施例3と同じである。
【0048】
<実施例5>
実施例5は、実施例1で用いたに〔A−1〕及び〔B−1〕に加えて〔B−3〕を用いた。また、〔A−1〕と〔B−1〕と〔B−3〕の混合比率を重量分率で30:40:30とし、56重量%のアクリル樹脂と44重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度920Pa.s、溶融張力60mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。AO−60を0.2重量部とし、カレンダー成形は圧延ロールを200℃に調整して圧延した。それ以外は実施例1と同じである。
【0049】
<実施例6>
実施例6は、実施例2で作製したフィルムの梨地面にコロナ処理を施した。コロナ処理は、ぬれ張力が50mN/mになるように条件を設定した。それ以外は実施例1と同じである。コロナ処理面を用いて密着性の評価を行った。
【0050】
<実施例7>
実施例7は、実施例3で作製したフィルムの梨地面にコロナ処理を施した。コロナ処理は、ぬれ張力が60mN/mになるように条件を設定した。それ以外は実施例1と同じである。コロナ処理面を用いて密着性の評価を行った。
【0051】
実施例1〜7の評価結果を表1に示す。表1から明らかな様に、いずれも良好なカレンダー成形性を示した。得られたフィルムは耐ブロッキング性、及び耐ブリードアウト性および柔軟性が良好であり、マスキングテープ、マーキングフィルムなど産業用途、バックグラインド用粘着テープ、ダイシング用粘着テープなどの半導体製造用途、雑貨用途、保護フィルム、印刷フィルムなどの基材フィルムおよびシート分野に広く利用することができる。
例えば、実施例2、4及び6のフィルムは引張初期弾性率が500MPa未満であり、柔軟性に優れ、引張試験において降伏を示さず、バックグラインド用粘着テープ、ダイシング用粘着テープなどの半導体製造用途に使用することができる。特に実施例6のフィルムは、粘着剤との密着性の観点から本用途に好適である。
また、実施例1、3、5及び7のフィルムは適度な柔軟性(取り扱いが容易な硬さと、被着体へ貼り付ける際の良好な曲面追従性)を示し、マスキングテープ、マーキングフィルムやラベル、保護フィルム、印刷フィルムなどの基材フィルムとして使用する事ができる。特に実施例7のフィルムは、印刷インキとの密着性の観点から印刷フィルムの基材として好適であり、酸化チタンなどの白色顔料を高濃度配合し光線隠蔽性を付与する事で、マーキングフィルムやラベル、インクジェット印刷用などの基材フィルムとしても使用できる。
【0052】
<比較例1>
比較例1は、実施例1〜7で用いた〔B−1〕のみを使用した。20重量%のアクリル樹脂と80重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、せん断粘度491Pa.s、溶融張力38mNであった。それ以外は実施例1と同じである。
【0053】
<比較例2>
比較例2は、実施例3及び7で用いた〔B−2〕のみを使用した。50重量%のアクリル樹脂と50重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、せん断粘度1877Pa.s、溶融張力105mNであった。AO−60を0.2重量部とし、カレンダー成形は圧延ロールを200℃に調整して圧延した。それ以外は実施例1と同じである。
【0054】
<比較例3>
比較例3は、実施例4及び5で用いた〔B−3〕のみを使用した。60重量%のアクリル樹脂と40重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、せん断粘度1837Pa.sであった。溶融張力は測定条件下ではストランドが破断したために測定不能であった。AO−60を0.2重量部とし、カレンダー成形は圧延ロールを200℃に調整して圧延した。それ以外は実施例1と同じである。
【0055】
<比較例4>
比較例4は、実施例4における〔B−1〕に代えて〔A−1〕を用いた。76重量%のアクリル樹脂と24重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度1229Pa.s、溶融張力73mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。AO−60を0.2重量部とし、カレンダー成形は圧延ロールを200℃に調整して圧延した。それ以外は実施例1と同じである。
【0056】
<比較例5>
比較例5は、実施例2における〔A−2〕と〔B−1〕の混合比率を重量分率を40:60とし、52重量%のアクリル樹脂と48重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度996Pa.s、溶融張力142mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。AO−60を0.2重量部とし、カレンダー成形は圧延ロールを200℃に調整して圧延した。それ以外は実施例1と同じである。
【0057】
<比較例6>
比較例6は、比較例4における〔A−1〕と〔B−3〕の混合比率を重量分率を80:20とし、92重量%のアクリル樹脂と8重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなる、せん断粘度915Pa.s、溶融張力65mNであるカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を作成した。リコワックスEは1.0重量部配合した。それ以外は実施例1と同じである。
【0058】
比較例1〜6の評価結果を表2に示す。表2から明らかな様に、特定のアクリル系ゴム粒子比率を有し、その組成物が特定の範囲のせん断粘度、溶融張力でなければ、本発明が目的とするフィルム、シートは得られなかった。
比較例3及び5は薄膜成形性が不良であり、フィルムが得られなかった。実施例2〜4は圧延負荷が不良であり、通常のカレンダー設備での定常生産ができない。実施例1は耐ブロッキング性が、実施例4及び6は柔軟性が不良であった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物によれば、外観が良好なフィルム、シートをカレンダー成形により容易に得ることができる。
また、本発明のフィルムやシートは、透明性、耐候性、柔軟性、耐ブロッキング性、耐ブリードアウト性、密着性に優れるため、フィルムおよびシート分野に広く利用することができる。














【特許請求の範囲】
【請求項1】
25〜75重量%のアクリル樹脂と75〜25重量%のアクリル系ゴム状粒子とからなり、190℃で測定したせん断粘度が1000Pa・s以下、溶融張力が100mN以下である事を特徴とするカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のカレンダー成形用アクリル系樹脂組成物を成形して得られるフィルムおよびシート。
【請求項3】
請求項2において、その少なくとも片面のぬれ張力が45mN/m以上であることを特徴とするフィルムおよびシート。


【公開番号】特開2007−56226(P2007−56226A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246767(P2005−246767)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)
【Fターム(参考)】