説明

カーシート用布帛

【課題】超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈するだけでなく、優れた意匠性を有するカーシート用布帛を提供する。
【解決手段】カーシート用布帛であって、該布帛が、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径が1μmより大ののポリエステルフィラメント糸Bとを含み、かつ該布帛が、織物組織または編物組織を有することを特徴とするカーシート用布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いと優れた意匠性とを有するカーシート用布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーシート用布帛として、極細繊維を用いた不織布が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、かかる布帛では極細繊維特有のヌメリ感のある風合いは有するものの、布帛が不織布であるため、意匠性の点で十分なものではなかった。
なお近年では、ナノファイバーと称される単繊維径が1000nm以下のフィラメント糸を用いた織編物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−294572号公報
【特許文献2】特開2003−286666号公報
【特許文献3】特開2007−291567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈するだけでなく、優れた意匠性を有するカーシート用布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、超極細フィラメント糸と太繊度のフィラメント糸とを用いて織編物を得ることにより、超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いと優れた意匠性とを有するカーシート用布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「カーシート用布帛であって、該布帛が、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径が1μmより大のポリエステルフィラメント糸Bとを含み、かつ該布帛が、織物組織または編物組織を有することを特徴とするカーシート用布帛。」が提供される。
【0007】
その際、前記ポリエステルフィラメント糸Aとポリエステルフィラメント糸Bとが交織または交編されていることが好ましい。また、布帛が、ジャガード織物またはジャガード編物であることが好ましい。
【0008】
本発明の布帛において、前記ポリエステルフィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上であることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分とポリエステルからなりその径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去してなるフィラメント糸であることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメント糸Aが撚糸を施されていることが好ましい。また、前記ポリエステルフィラメント糸Bのフィラメント数が1〜300本の範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明のカーシート用布帛において、布帛中の全繊維重量に対して、前記ポリエステルフィラメント糸Aが20〜80重量%含まれることが好ましい。また、布帛の目付けが100〜700gr/mの範囲内であることが好ましい。また、布帛の耐摩耗性が3級以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈するだけでなく、優れた意匠性を有するカーシート用布帛が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、ポリエステルフィラメント糸A(以下、「ナノファイバー」と称することもある。)において、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜800nm、特に好ましくは550〜800nm)の範囲内であることが肝要である。かかる単繊維径を単繊維繊度に換算すると、0.000001〜0.01dtexに相当する。該単繊維径が10nmよりも小さい場合は繊維強度が低下するため実用上好ましくない。逆に、該単繊維径が1000nmよりも大きい場合は、布帛が超極細繊維特有の風合いを呈さないおそれがあり好ましくない。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0012】
前記ポリエステルフィラメント糸Aにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、超極細繊維特有の風合いを得る上で500本以上(より好ましくは2000〜10000本)であることが好ましい。また、ポリエステルフィラメント糸Aの総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。
【0013】
前記ポリエステルフィラメント糸Aの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。特にポリエステルフィラメント糸Aに撚糸が施されていると、布帛の剛性が向上し、また耐摩耗性が向上するため好ましい。その際、撚数としては100T/m以上(特に好ましくは100〜600T/m)であることが好ましい。
【0014】
前記ポリエステルフィラメント糸Aを形成するポリマーの種類としてはポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。なお、ポリエステル以外のポリアミドなどのポリマーでは、布帛の耐光性や耐摩耗性が損われるため好ましくない。
【0015】
前記ポリエステルフィラメント糸Aは、後記のように、海成分とポリエステルからなりその径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去してなるフィラメント糸であることが好ましい。
【0016】
一方、ポリエステルフィラメント糸Bにおいて、単繊維径が1μmよりも大(好ましくは2〜25μm)の範囲内であることが肝要である。該単繊維径が1μm以下であると、布帛がナノファイバーのみからなる場合と同様、布帛の剛性がなくなるためカーシート用布帛として使用できず好ましくない。また、また加工性や取扱性も低下するおそれがあり、好ましくない。逆に該単繊維径が25μmよりも大きいと、超極細繊維が有するピーチタッチ状の独特の風合いが損われるおそれがある。ここで、単繊維の断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、前記と同様、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0017】
前記ポリエステルフィラメント糸Bにおいて、フィラメント数は特に限定されないが、1〜300本(好ましくは40〜200本)の範囲内であることが好ましい。また、かかるポリエステルフィラメント糸Bの繊維形態は特に限定されないが、長繊維(マルチフィラメント糸)であることが好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていてもさしつかえない。
【0018】
前記ポリエステルフィラメント糸Bを形成するポリマーの種類としては、ポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。なお、ポリエステル以外のポリアミドなどのポリマーでは、布帛の耐光性や耐摩耗性が損われるため好ましくない。
【0019】
本発明のカーシート用布帛は前記のポリエステルフィラメント糸Aとポリエステルフィラメント糸Bとで構成される。その際、布帛の全重量に対して30重量%以下(好ましくは0重量%)であれば他の繊維が含まれていてもさしつかえない。他の繊維が30重量%よりも多く布帛に含まれていると、布帛の耐摩耗性や耐光性が損われるおそれがある。また、本発明のカーシート用布帛において、前記ポリエステルフィラメント糸Aが、布帛中の全繊維重量に対して、20〜80重量%(好ましくは30〜70重量%)含まれることが好ましい。前記ポリエステルフィラメント糸Aの含有量が20重量%未満では、布帛が超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈さないおそれがある。逆に、前記ポリエステルフィラメント糸Aの含有量が80重量%を越えると布帛の剛性が低下し、カーシート用布帛として使用できないおそれがある。
【0020】
本発明の布帛において、前記のポリエステルフィラメント糸Aとポリエステルフィラメント糸Bとが空気混繊糸などの複合糸として含まれていてもよいし、両者が引き揃えられて含まれていてもよいし、両者が交織または交編されていてもよい。特に、両者が交織または交編されていることが好ましい。
【0021】
本発明のカーシート用布帛は例えば以下の製造方法により製造することができる。まず、海成分とポリエステルからなりその径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維(ポリエステルフィラメント糸A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、特開2007−2364号公報に開示された海島型複合繊維マルチフィラメント(島数100〜1500)が好ましく用いられる。
【0022】
すなわち、海成分ポリマーとしては、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
【0023】
一方、島成分ポリマーは、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0024】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、該径が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
【0025】
かかる海島型複合繊維マルチフィラメント糸は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型断面複合繊維マルチフィラメント糸は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。そして、必要に応じて撚糸を施す。かかる海島型複合繊維マルチフィラメント糸において、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊30〜170dtexの範囲内であることが好ましい。
【0026】
一方、単繊維繊度が0.1dtexより大(好ましくは0.2〜5dtex)であるポリエステルフィラメントBを用意する。最終的に得られる編地内のポリエステルフィラメント糸Bの単繊維径を1μmより大とする上で、単繊維繊度を前記の範囲内とすることが肝要である。
【0027】
次いで、前記海島型複合繊維フィラメント糸とポリエステルフィラメント糸Bとを用いて織物または編物を織編成する。その際、前記海島型複合繊維フィラメント糸とポリエステルフィラメント糸Bとは前記のように複合糸を形成していてもよいし、例えば、前記海島型複合繊維フィラメント糸とポリエステルフィラメント糸Bのうちどちらか一方が、織物の経(緯)に配され、他方が緯(経)に配されていてもよい。
【0028】
また、織物や編物の組織は特に限定されず、織物組織であれば、平織、斜文織、サテン織物等の三原組織、変化組織、変化斜文織等の変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。また、よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフ編、ハーフベース編、サテン編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等などが例示されるがこれらに限定されない。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。特に、ジャガード織物またはジャガード編物が、意匠性の点で特に好ましい。
【0029】
次いで、該布帛にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維フィラメント糸を単繊維径が10〜1000nmのポリエステルマルチフィラメント糸Aとする。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
【0030】
次いで、必要に応じて、常法の染色加工、バフ加工、起毛加工、裏面バックコーテイング、撥水加工、さらには、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0031】
かくして得られたカーシート用布帛において、目付けが100〜700gr/m(より好ましくは150〜650gr/m)の範囲内であることが好ましい。該目付けが100gr/mよりも小さいと剛性が小さくなりカーシート用布帛として使用できないおそれがある。逆に、該目付けが700gr/mよりも大きいと、目付けが大きすぎるためカーシートを作製する際の取扱い性が損われるおそれがある。
【0032】
かくして得られたカーシート用布帛には、前記ポリエステルフィラメント糸Aとポリエステルフィラメント糸Bとが含まれ、かつ布帛が織物組織または編物組織を有するので、超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈するだけでなく、優れた意匠性を有する。また、耐摩耗性や耐光性にも優れる。ここで、耐摩耗性としては、JIS L1096(テーバー法、荷重4.90N(500gf)、1,000回)で測定して3級以上であることが好ましい。また、耐光性としては、JIS L0843(キセノンアーク法、38サイクル)で測定して3級以上であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0034】
<溶解速度>
海・島ポリマーの各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1,000〜2,000m/分の紡糸速度で糸を巻き取りし、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製した。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0035】
<風合い>
布帛表面の風合いを試験者3人が官能評価し、3級:超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈する、2級:普通、1級:超極細繊維特有の風合いを呈さない、の3段階に評価した。
【0036】
<意匠性>
意匠性を試験者3人が目視判定し、3級:意匠性に優れる、2級:普通、1級:意匠性に劣る、の3段階に評価した。
【0037】
<耐摩耗性>
JIS L1096 8.17.3 C法(テーバー法、摩耗輪CS−10、荷重4.90N(500gf)、1,000回)で測定した。測定後、試験後片の表面状態を観察し、次の等級で判定し、判定等級で表す。
5級:表面の擦り切れが全く認められないもの
4級:表面の擦り切れがわずかに認められるが目立たないもの
3級:表面は擦り切れているが基布に破れに影響する糸切れのないもの
2級:基布の破れが少しでもあるもの
1級:基布の破れが著しいもの
【0038】
<耐光性>
JIS L0843 B法(キセノンアーク法準用、38サイクル)で測定し、判定はJIS L0804の変退色用グレースケールにて行った。
ここで言う1サイクルは、明サイクル(ブラックパネル温度89±3℃、相対湿度50±5%、サイクル時間3.8時間)と暗サイクル(ブラックパネル温度38±3℃、相対湿度95±5%、サイクル時間1.0時間)を繰り返し行うことである。
【0039】
<単繊維径>
布帛を電子顕微鏡で写真撮影した後、n数5で単繊維径を測定しその平均値を求めた。
【0040】
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレートを用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットしてポリエステルフィラメント糸A用海島型複合延伸糸として巻き取った。得られた海島型複合延伸糸は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は700nmであった。
次いで、該延伸糸を4本引きそろえて撚糸糸条(Z方向、250T/m)とし、スナール対策として温度70℃、時間30分の熱セットを行い経糸とした。
【0041】
一方、通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(総繊度167dtex/48fil、ポリエステルフィラメント糸B、帝人ファイバー社製)を用意し、緯糸とした。
次いで、前記経糸と緯糸を使用して、通常のジャガード織機でジャガード織物を、経密度162本/2.54cm、緯密度90本/2.54cmで製織した。
次いで、織り上がった生機を、50g/リットルの NaOH水溶液で80℃×20分で30%の減量加工を行うことにより、前記海島型複合延伸糸を単繊維径700nmのポリエステルフィラメント糸Aとした後、常法の染色加工を行った。染色後、乾燥し、150℃で熱セットを行い、その後、表面加工としてバフ加工を行った。そして最後にほつれ防止のための、裏面にアクリル樹脂でバックコーティングをおこない、カーシート用布帛を得た。その際、バックコーティング時のアクリル樹脂量は100g/mであった。
【0042】
得られた布帛において、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈する(3級)ものであり、また、意匠性に優れていた(3級)。また、目付け300g/m、耐光性は変退色4級、耐摩耗性は4級と耐光性と耐摩耗性に優れるものであった。また、得られた布帛において、全繊維重量200g/m中、単繊維径ポリエステルフィラメント糸Aが63重量%含まれ、ポリエステルフィラメント糸Bは37重量%含まれていた。また、ポリエステルフィラメント糸Bの単繊維径は18μmであった。
次いで、前記布帛を用いてカーシートを作製したところ、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈する(3級)ものであり、また、意匠性に優れていた(3級)。また、加工性も良好であった。
【0043】
[実施例2]
実施例1において、バフ加工にかえて起毛加工を行うこと以外は実施例1と同様にした。
得られた布帛において、超極細繊維(ナノファイバー)特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈する(3級)ものであり、また、意匠性に優れていた(3級)。また、目付け250g/m、耐光性は変退色4級、耐摩耗性は3級と耐光性と耐摩耗性に優れるものであった。
【0044】
[比較例1]
実施例1において緯糸に用いた、通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(総繊度167dtex/48fil、ポリエステルフィラメント糸B、帝人ファイバー社製)を経糸および緯糸に配すること以外は実施例1と同様にした。
得られた布帛において、意匠性に優れていた(3級)が、超極細繊維特有の風合いを呈さないもの(1級)であった。
【0045】
[比較例2]
実施例1において経糸に用いた撚糸糸条を経糸および緯糸に配すること以外は実施例1と同様にした。
得られた布帛において、剛性がないため加工性が悪く、カーシートを作製することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、超極細繊維特有の柔らかくヌメリ感のある風合いを呈するだけでなく、優れた意匠性を有するカーシート用布帛が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーシート用布帛であって、該布帛が、単繊維径が10〜1000nmのポリエステルフィラメント糸Aと単繊維径が1μmより大のポリエステルフィラメント糸Bとを含み、かつ該布帛が、織物組織または編物組織を有することを特徴とするカーシート用布帛。
【請求項2】
前記ポリエステルフィラメント糸Aとポリエステルフィラメント糸Bとが交織または交編されている、請求項1に記載のカーシート用布帛。
【請求項3】
布帛が、ジャガード織物またはジャガード編物である、請求項1または請求項2に記載のカーシート用布帛。
【請求項4】
前記ポリエステルフィラメント糸Aのフィラメント数が500本以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のカーシート用布帛。
【請求項5】
前記ポリエステルフィラメント糸Aが、海成分とポリエステルからなりその径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去してなるフィラメント糸である、請求項1〜4のいずれかに記載のカーシート用布帛。
【請求項6】
前記ポリエステルフィラメント糸Aが撚糸を施されている、請求項1〜5のいずれかに記載のカーシート用布帛。
【請求項7】
前記ポリエステルフィラメント糸Bのフィラメント数が1〜300本の範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載のカーシート用布帛。
【請求項8】
布帛中の全繊維重量に対して、前記ポリエステルフィラメント糸Aが20〜80重量%含まれる、請求項1〜7のいずれかに記載のカーシート用布帛。
【請求項9】
布帛の目付けが100〜700gr/mの範囲内である、請求項1〜8のいずれかに記載のカーシート用布帛。
【請求項10】
布帛の耐摩耗性が3級以上である、請求項1〜9のいずれかに記載のカーシート用布帛。

【公開番号】特開2009−249793(P2009−249793A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102347(P2008−102347)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】